作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体
【課題】工場内の生産ラインにおいて、作業者が右手と左手とに別々の動きをさせて一つの部品の組み付け作業を行う場合においても正確な作業判定を行わせる。
【解決手段】作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定するため、当該両手に装着されるセンサ21R、21Lを有するモーションキャプチャ2と、2つのセンサ間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部32と、各センサで検出された作業動作検出データを受信して、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、当該相対距離算出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データに基づき相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能33aを有する作業解析部33とを備えている。
【解決手段】作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定するため、当該両手に装着されるセンサ21R、21Lを有するモーションキャプチャ2と、2つのセンサ間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部32と、各センサで検出された作業動作検出データを受信して、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、当該相対距離算出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データに基づき相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能33aを有する作業解析部33とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業者の作業状態を判定するための作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品や自動車の製造メーカーの生産技術部門においては、生産性を向上させる目的のために、モーションキャプチャを使用して作業者の作業が正常に行われたか否かを判定することができる作業訓練支援システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この作業訓練支援システムは、モーションキャプチャからの3次元の空間座標位置と、標準作業時間、手の動きのぶれ(蛇行)あるいは手の動きの基準値とを比較して、その基準値から外れる場合には習熟総合判定をNGにするものである。モーションキャプチャは、作業者の動作状態をリアルに反映させることができるので、作業者の作業判定の精度を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−134536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術に記載した作業訓練支援システムでは、絶対座標で手の動きのぶれ(蛇行)あるいは手の動きを数値化しているので、必ず決められた位置に部品を組み付ける作業では特に問題はないが、例えば左手に持っている部品に右手の部品を組み付ける等、毎回組み付ける位置が異なることになる組み付け作業では絶対座標で判定しようとすると、実際には組み付け作業が正常終了しているのにも拘わらず異常終了と判定してしまう難点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、工場内の生産ラインにおいて、作業者が両手で任意の位置において組み付け作業を行う場合においても正確な作業判定を行うことができる作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である作業判定システムは、工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定して、その測定結果である作業動作データを送信するために当該両手に装着されるセンサを有するモーションキャプチャと、モーションキャプチャの2つのセンサ間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部と、モーションキャプチャから送信されてきた各センサで検出された作業動作データを受信して、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、当該相対距離算出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データに基づき相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能を有する作業解析部とを備えているものである。
【0008】
本発明の第2の態様は第1の態様である作業判定システムにおいて、モーションキャプチャの2つのセンサ間の相対角度の閾値である相対角度閾値データが予め作業工程毎に登録された相対角度閾値データ記憶部を備え、作業解析部は、相対距離データ判定機能で相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、当該相対角度算出データの作業工程と一致する相対角度閾値データ記憶部に登録された相対角度データに基づき相対角度算出データが所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対角度データ判定機能を有するものである。
【0009】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である作業判定システムにおいて、作業者の両手それぞれの作業動作の標準である作業動作標準データが予め作業工程毎に登録された作業動作標準データ記憶部を備え、作業解析部は、モーションキャプチャの2つのセンサそれぞれから時系列で受信する作業動作検出データと、作業動作データの作業工程と一致する作業動作標準データ記憶部に登録された作業動作標準データとを比較して、何れか一方のセンサからの作業動作データが作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには相対距離データ判定機能に移行することなく作業解析を終了する作業動作データ判定機能を有するものである。
【0010】
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である作業判定システムにおいて、モーションキャプチャは、センサは作業者の手指に装着される複数の磁気式3次元位置姿勢センサで、磁気式3次元位置姿勢センサ群で検出された作業者の作業動作情報を受信して作業動作データを3次元座標データとして作業解析部に送信する信号処理部を備えているものである。
【0011】
本発明の第5の態様は第1の態様乃至第4の態様のうち何れか1つの態様である作業判定システムにおいて、作業解析部による解析結果に基づき作業者の作業状態の判定結果を報知する報知部を備えているものである。
【0012】
また、本発明の第6の態様である作業判定方法は、工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれモーションキャプチャの両手に装着されるセンサによって経時的に測定し、その測定結果である作業動作データを作業解析部に送信して作業者の作業状態を解析する作業判定方法であって、作業解析部は、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出する第1のステップと、第1のステップで算出された相対距離算出データに対応する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データを呼び出す第2のステップと、第1のステップで算出された相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する第3のステップとを有するものである。
【0013】
本発明の第7の態様は第6の態様である作業判定方法において、第3のステップで、相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出する第4のステップと、第4のステップで算出された相対角度算出データに対応する相対角度閾値データ記憶部に登録された相対角度閾値データを呼び出す第5のステップと、第5のステップで算出された相対角度算出データが所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する第6のステップとを有するものである。
【0014】
本発明の第8の態様は第6の態様又は第7の態様である作業判定方法において、第1のステップの前に、モーションキャプチャの2つのセンサそれぞれから時系列で受信する作業動作データに対応する作業動作標準データ記憶部に登録された作業動作標準データを呼び出すステップと、何れか一方のセンサからの作業動作データがステップで呼び出した作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには第1のステップに移行することなく作業解析を終了するステップとを有するものである。
【0015】
さらに、本発明の第9の態様である記録媒体は、第6の態様乃至第8の態様のうち何れか1つの態様である作業判定方法によって実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能なものである。
【0016】
このような本発明の作業判定システム及び作業判定方法は、量産中の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれモーションキャプチャの両手に装着されているセンサによって経時的に測定し、その測定結果である作業動作データを作業解析部に送信すると、作業解析部は相対距離データ判定機能により、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、そのセンサ間の相対距離算出データに対応する相対距離閾値データを相対距離閾値データ記憶部から選択する。このセンサ間の相対距離で作業者の作業中における両手の動きを経時的に把握することができるので、作業者が両手で任意の位置において組み付け作業を行ってもその作業状態を把握することができる。したがって、作業解析部は、そのセンサ間の相対距離算出データに対応する相対距離閾値データを相対距離閾値データ記憶部から呼び出して、相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した否かで、作業者の作業状態を正確に判定することができる。
【0017】
なお、作業解析部は相対距離データ判定機能の前に作業動作データ判定機能を実行させるように設定されている場合には、モーションキャプチャの2つのセンサそれぞれから時系列で受信する作業動作データに対応する作業動作標準データを作業動作標準データ記憶部から選択する。作業解析部は、何れか一方のセンサからの作業動作データと選択した作業動作標準データとを比較して、何れか一方のセンサからの作業動作データが、選択された作業動作標準データの閾値から外れたときには、相対距離データ判定機能に移行することなく作業解析を終了させる。このように、両手の作業状態を個別に把握することができるので、相対距離データ判定機能では検出できない各々の手の作業状態を把握することができる。したがって、作業者の作業状態をより正確に判定することができる。
【0018】
また、作業判定システムに相対角度閾値データ記憶部を備え、作業解析部に相対角度データ判定機能を備えた場合には、作業解析部は相対距離データ判定機能で相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達すると、さらに、相対角度データ判定機能により、2つのセンサで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、その2つのセンサから得られた相対角度算出データに対応する相対角度閾値データを相対角度閾値データ記憶部から選択する。この2つのセンサから得られた相対角度及びセンサ間の相対距離で作業者の作業中における両手の動きを経時的に把握することができるので、作業者の作業状態を相対角度閾値データ記憶部及び相対角度データ判定機能を備えていない場合に比べてより正確に把握することができる。
【0019】
さらに、モーションキャプチャのセンサが磁気式3次元位置姿勢センサの場合には、作業動作データを3次元座標データとすることができるので、位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及び姿勢を示すオイラー角の情報を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体によれば、工場内の生産ラインにおいて、作業者が両手で任意の位置において組み付け作業を行う場合においても正確な作業判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の作業判定システムにおける好ましい実施の形態例を示すシステム構成のブロック図である。
【図2】図1のモーションキャプチャに使用されるセンサのキャリブレーションの例を示す説明図である。
【図3】モーションキャプチャで検出した位置情報の例を示す説明図である。
【図4】(A)は工場内における作業工程の例を示す説明図で、(B)はデータ記憶部のデータベースに格納されている作業工程の一例を示すデータベースモデル図である。
【図5】作業解析部における座標値の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図6】作業解析部における座標値の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図7】生産ラインにおける具体的な作業工程を示す説明図である。
【図8】生産ラインにおける具体的な作業工程を示す説明図である。
【図9】作業解析部における回転角の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図10】作業解析部における回転角の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図11】本発明の作業判定方法の好ましい実施の形態例を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の作業判定方法の好ましい他の実施の形態例を示すフローチャート図である。
【図13】本発明の作業判定方法の好ましい他の実施の形態例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体を実施するための最良の形態例について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の作業判定システムは図1に示すように、工場内における量産中の生産ラインにおいて、自動車等の製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定して、その測定結果である作業動作データを送信するモーションキャプチャ2と、モーションキャプチャ2から送信された作業動作データを受信して、その作業動作データと標準データとを比較することで作業者の作業状態を判定するデータ処理装置3とを備えている。また、作業判定システムは、データ処理装置3による判定結果を報知する報知部4を備えている。
【0024】
モーションキャプチャ2は、汎用のものを用いることができ、動体に装着された光学マーカの位置情報により動体の動きを検出する光学式や、動体に装着された磁気センサの動きを検出する磁気式が一般的である。特に、経時的に測定する対象が、部品を組み付ける作業を行っている作業者の作業動作の場合には、モーションキャプチャ2としては、作業者の手指に装着されるデバイスである複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21と、磁気式3次元位置姿勢センサ群21で検出された作業者の作業動作情報として受信してデータ処理装置3に送信する信号処理部22とを備えているものが好適である。このモーションキャプチャ2の場合、複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21を手指の繊細な動きを検出できるように柔軟性のあるグローブに配置するので、作業者の両手の作業動作を精度よく再現することが可能になる。
【0025】
この磁気式3次元位置姿勢センサ21とデータ処理装置3とは、有線、無線の何れの接続手段でもよく、設置状況に応じて選択する。このようなモーションキャプチャとして、例えば、特開2007−236602号公報に開示された磁気式位置姿勢センサを用いた手指用モーションキャプチャ装置が好適である。
【0026】
この手指用モーションキャプチャ装置は図2、図3に示すように、例えば親指の先端に位置するセンサ21aの中心に原点を仮定すると、信号処理部22の固定基準点から見たそれらの位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報が得られ、データ処理装置3に記録される。この場合におけるセンサ装着時の位置及び角度のズレのキャリブレーションは、特開2007−236602号公報に詳述されているので、説明は省略する。
【0027】
なお、グローブは作業者の両手に装着するので、以下、右手に装着した磁気式3次元位置姿勢センサをセンサ21R、左手に装着した磁気式3次元位置姿勢センサをセンサ21Lとして説明する。
【0028】
データ処理装置3はコンピュータが好ましく、内部にCPU等の演算処理装置を備えると共に、ブラウン管モニタや液晶ディスプレイ等の表示画面を有する表示装置や、キーボード、マウス等の入力デバイス、さらに、ハードディスクドライブ等の記憶装置等で構成されている。
【0029】
このようなデータ処理装置3は図1に示すように、作業者の両手それぞれの作業動作の標準である作業動作標準データが予め作業工程毎に登録された作業動作標準データ記憶部31と、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21L間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部32と、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lそれぞれから時系列で受信する作業動作検出データを作業動作標準データ記憶部31の作業動作標準データや相対距離閾値データ記憶部32の相対距離閾値データと比較して、作業者の作業状態を解析する作業解析部33とを備えている。なお、作業動作標準データ記憶部31に登録された作業動作標準データは、位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報である。
【0030】
作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値データ記憶部32は、それぞれデータを更新自在に記憶できるRAMや固定データを記憶するROM等で構成され、例えば図4(A)に示すように、工場内において、ヘッドランプを車両の所定位置に組み付ける組付工程が作業工程(1)、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を組み付け後、オーディオを車両の元の位置に収納して組み付ける組付工程が作業工程(2)、サイドミラーを車両の所定位置に組み付ける組付工程が作業工程(3)とすると、作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値データ記憶部32のデータベースは、それぞれ図4(B)に示すようなデータベースモデルとなる。
【0031】
作業解析部33は、モーションキャプチャ2から送信されてきた各センサ21R、21Lで検出された各作業動作検出データを受信して、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、当該相対距離検出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部32に登録された相対距離閾値データに基づき相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能33aを有している。さらに、作業解析部33は、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lそれぞれから時系列で受信する作業動作検出データと、作業動作検出データの作業工程と一致する作業動作標準データ記憶部31に登録された作業動作標準データとを比較して、何れか一方のセンサからの作業動作検出データが作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには相対距離データ判定機能33aに移行することなく作業解析を終了する作業動作データ判定機能33bを有している。
【0032】
また、作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lのうち何れか一方だけを装着して作業を行う場合には、例えば、モーションキャプチャ2のセンサ21Rから作業動作検出データを時系列で受信すると、その作業動作検出データによる作業工程と一致する作業動作標準データを作業動作標準データ記憶部31のデータベースから検出し、その作業動作標準データと作業動作検出データとを比較して、差異がある場合にはその差異から作業上の不具合を検出する作業不具合検出機能33cを有している。
【0033】
このような作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lのうち何れか一方だけを装着して部品を所定の位置に組み付けるだけの作業を行う場合には、作業不具合検出機能33cで、その部品が所定位置まで移動したか否かを検出できればよいので、図5に示すような横軸が時間値で縦軸が座標値である曲線グラフの作業波形を利用して、作業動作検出データの作業波形と作業動作標準データの作業波形とを比較するとよい。なお、図中、右側のグラフは作業位置における標準作業波形を示し、左側のグラフはモーションキャプチャ2からの作業動作検出データの作業波形で、点線で形成された楕円部が作業位置を示すものである。作業解析部33は比較した結果、作業動作検出データの作業波形が作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値から所定方向に離れて位置するときには作業上の不具合を検出する。
【0034】
具体的には、例えば作業工程(1)において、作業者が磁気式3次元位置姿勢センサであるセンサ21R、21Lを両手の手指に装着した状態で、クイックリリースタイプの結合クリップでヘッドランプを自動車のフロント部分に組み付けるために当該結合クリップをフレームの結合穴に押圧すると、モーションキャプチャ2の例えばセンサ21Rがその作業動作の情報を時系列で作業動作検出データとして出力する。作業解析部33がモーションキャプチャ2のセンサ21Rから時系列で作業動作検出データを受信した場合、例えば図5に示すように、グラフの時間軸上の作業位置において、検出された作業動作検出データのX軸成分の作業波形が、X軸成分の標準作業波形を基準に設定された閾値ラインTH1から上方に突出した軌跡や座標値を示した場合には、結合クリップが完全には嵌め込み固定されたことを示すので、作業解析部32はX軸成分においては作業者がヘッドランプの組付工程(1)の作業を正常に完了させたことを検出する。したがって、作業解析部32は、X軸成分についてはヘッドランプの組付工程(1)が正常終了したことを示す検出情報を報知部4に送信する。
【0035】
また、検出された作業動作検出データのY軸成分の作業波形が、Y軸成分の標準作業波形を基準に設定された閾値ラインTH2から下方に突出した軌跡や座標値を示した場合には、結合クリップが完全には嵌め込み固定されたことを示すので、作業解析部32はY軸成分においては作業者がヘッドランプの組付工程(1)の作業を正常に完了させたことを検出する。したがって、作業解析部32は、Y軸成分についてはヘッドランプの組付工程(1)が正常終了したことを示す検出情報を報知部4に送信する。
【0036】
また、検出された作業動作検出データのZ軸成分の作業波形が、Z軸成分の標準作業波形を基準に設定された閾値ラインTH3から下方に突出した軌跡や座標値を示さない場合には、結合クリップがZ軸成分において完全には嵌め込み固定されていないことを示すので、ヘッドランプの組付工程(1)において作業上の不具合が発生したことを検出する。したがって、作業解析部32はZ軸成分において作業上の不具合が発生したことを示す検出情報を報知部4に送信するので、ヘッドランプの組付工程(1)において作業上の不具合が発生したと判定する。
【0037】
なお、作業解析部32はX軸成分、Y軸成分及びZ軸成分の何れの作業波形においても、ヘッドランプの組付工程(1)が正常終了したことを示す検出情報の場合には、ヘッドランプの組付工程(1)において作業上の不具合はなかったと判定する。
【0038】
さらに、作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lを両手に装着して、車両の所定位置に仮組み付けされている第1の部品をその位置から引き出して第2の部品を組み付け後、第1の部品を車両の元の位置に収納して組み付ける作業の場合には、相対距離データ判定機能33aで、作業者が両手に装着した2つのセンサ21R、21L間の相対距離を検出して両手の相対的な動きを把握できればよいので、図6(A)に示すような横軸が時間値で縦軸が座標値である曲線グラフの作業波形を利用して、例えばセンサ21Rからの作業動作検出データを原点にしてセンサ21Lからの作業動作検出データとの相対距離を算出し、当該相対距離検出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部32に登録された相対距離閾値データを呼び出す。そして、相対距離データ判定機能33aは相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達している場合にはその作業が正常に行われたと判定し、閾値の幅内から外れている場合には作業が正常に行われていないと判断する。
【0039】
なお、図6(A)は作業動作検出データのX軸成分の作業波形のみが示されているが、モーションキャプチャ2のセンサ21が磁気式3次元位置姿勢センサなので、作業動作検出データのY軸成分、Z軸成分の各作業波形も検出される。したがって、X軸成分、Y軸成分、Z軸成分のうち何れか1つでも相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達していない場合には、作業が正常に行われていないと判断する。
【0040】
具体的には図7、図8に示すように、例えば作業工程(2)において、作業者は生産ラインFLの近傍に設置されている収納ラックSLからオーディオ6を左手で取り出し(図8)、生産ラインFL上で移動している車両Cが備えているセンターコンソールボックス5内に配線されているワイヤーハーネスW/Hから、予め仮組みされている結線用コネクタ7を(図7(A))当該センターコンソールボックス5から右手で引き出してオーディオ6と結線し(図7(B))、そのオーディオ6を再びセンターコンソールボックス5に収納して組み付ける作業(図7(C))が該当する。
【0041】
この作業においては図8に示すように、種々の部品を組み付ける車両Cが生産ラインFL上で移動しているので、絶対座標で手の動きを数値化すると上述した背景技術で説明したように正確な作業判定を行うことができないが、作業解析部33の相対距離データ判定機能33aでは、2つのセンサ21R、21L間の相対距離で作業者の作業中における両手の動きを経時的に把握することができるので、作業者が右手に持っている部品と左手に持っている部品とを任意の位置で組み付ける組み付け作業を行ってもその作業状態を把握することができる。
【0042】
報知部4は、作業者の作業解析結果を表示する表示画面にすることで、作業者は作業解析結果を視覚的に捉え易くなる。なお、報知部4は表示装置の表示画面に限らず、スピーカ等の音声発生装置によって聴覚によって作業解析結果を確認できるようにしてもよく、さらには、表示装置の表示画面と音声発生装置とを用いて作業解析結果を確認できるようにしてもよい。なお、報知部4は生産ラインFLの近傍ではなく検査ラインに設けるようにしてもよく、この場合は、生産ラインFLを停止することなく不良の車両を検出することが可能になる。
【0043】
なお、モーションキャプチャ2から時系列で受信する座標データである作業動作検出データが、データ処理装置用の座標データとデータ形式が異なる場合には図1に示すように、モーションキャプチャ2と作業解析部32に、データ形式変換部33dを組み込むとよい。データ形式変換部33dは、モーションキャプチャ2から時系列で受信する作業動作検出データをデータ処理装置用の座標データに変換する機能を有している。
【0044】
このようなデータ処理装置3は、作業解析部33の判定機能の判定精度を高めるために、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21L間の相対角度の閾値である相対角度閾値データが予め作業工程毎に登録された相対角度閾値データ記憶部34を備え、作業解析部33に相対角度閾値データと相対距離算出データとを比較する相対角度データ判定機能33eを備えるとよい。この相対角度データ判定機能33eは、相対距離データ判定機能33aで相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサ21R、21Lで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、当該相対角度算出データの作業工程と一致する相対角度閾値データ記憶部34に登録された相対角度データに基づき相対角度算出データが相対距離データ判定機能33aと同じ所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定するものである。
【0045】
相対角度閾値データ記憶部34は、作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値データ記憶部32と同様に、データを更新自在に記憶できるRAMや固定データを記憶するROM等で構成されている。また、相対角度データ判定機能33eで対象とする相対角度は、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの角度を算出する演算処理方法によって求められるが、この演算処理方法には限られず、既知の相対角度の演算処理方法ならば何れの演算処理方法を使用してもよい。
【0046】
このような相対角度データ判定機能33eを有する作業解析部33は、相対角度データ判定機能33eを有する作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lを両手に装着して、車両の所定位置に仮組み付けされている第1の部品をその位置から引き出して第2の部品を組み付け後、第1の部品を車両の元の位置に収納して組み付ける作業の場合には、相対距離データ判定機能33aが相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達していると判定すると、さらに、相対角度データ判定機能33eにより、2つのセンサ21R、21Lで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、その2つのセンサ21R、21Lから得られた相対角度算出データに対応する相対角度閾値データを相対角度閾値データ記憶部34から選択する。
【0047】
この際、相対角度データ判定機能33eは、図9に示すような横軸が時間軸で縦軸が相対角度である曲線グラフの作業波形を利用して、相対角度算出データが相対距離データ判定機能33aに設定された所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達している場合にはその作業が正常に行われたと判定し、閾値の幅内から外れている場合には作業が正常に行われていないと判断する。なお、図9は相対角度算出データのX軸成分の作業波形のみが示されているが、相対角度算出データのY軸成分、Z軸成分の各作業波形も得ることができる。したがって、X軸成分、Y軸成分、Z軸成分のうち何れか1つでも相対角度算出データが所定時間経過後にその相対角度閾値の幅内に到達していない場合には、作業が正常に行われていないと判断する。
【0048】
また、相対角度データ判定機能33eを有する作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lのうち何れか一方だけを装着して部品を所定の位置に組み付けるだけの作業を行う場合には、作業不具合検出機能33cで、その部品が所定位置まで正常移動したことを検出すると、さらに、作業不具合検出機能33cで、その正常移動位置におけるモーションキャプチャ2の一方のセンサの回転角が既定角度範囲内で回転しているか否かを検出できればよいので、図10に示すような横軸が時間値で縦軸が回転角である曲線グラフの作業波形を利用して、モーションキャプチャ2からの作業動作検出データから算出された回転角データの作業波形と作業動作標準データの作業波形とを比較するとよい。
【0049】
なお、センサの回転角は位置座標に基づき作業解析部33によって算出される。また、図10中、右側のグラフは作業位置における標準作業波形を示し、左側のグラフは回転角データの作業波形で、点線で形成された楕円部が作業位置を示すもので、上からX軸成分、Y軸成分及びZ軸成分のグラフとなっている。作業解析部33は比較した結果、回転角データの作業波形が作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値から所定方向に離れて位置するときには作業上の不具合を検出する。
【0050】
上述したデータ処理装置3の各構成部は図1に示すように、それぞれ電気的に接続され、モーションキャプチャ2はセンサ21R及びセンサ21Lがそれぞれ信号処理部22に接続され、データ処理装置3は作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値記憶部32がそれぞれ作業解析部33に接続されている。また、データ処理装置3の作業解析部33にはモーションキャプチャ2の信号処理部22及び報知部4が接続されている。なお、データ処理装置3に相対角度閾値データ記憶部34を備えた場合には、当該相対角度閾値データ記憶部34を作業解析部33に接続させる。
【0051】
このように構成された作業判定システム1におけるデータ処理装置3の各構成は、演算処理装置によって実行されるプログラムによって実現されるものである。このプログラムによるデータ処理手順について図11のフローチャートに基づき説明する。なお、データ処理装置3は、相対角度閾値データ記憶部34を備えず、作業解析部33に相対角度データ判定機能33eを有していないものとする。
【0052】
例えば、作業者が両手の手指にセンサ21R、21Lを装着した状態で、上述した作業工程(2)の作業を行うと(ステップ101)、その作業動作をセンサ21R、21Lが検出して作業者の作業動作情報である作業動作検出データを信号処理部22に送信する。信号処理部22は、この作業動作検出データをデータ処理装置3の作業解析部33に時系列で送信する。
【0053】
作業解析部33は、モーションキャプチャ2のセンサ21Rから時系列で受信する作業動作検出データを取り込むと共に、センサ21Lから時系列で受信する作業動作検出データを取り込むと(ステップ102、103)、データ形式変換部33dでデータ処理装置用の3次元座標データに変換する(ステップ104)。作業解析部33は、このデータ処理装置用のデータ形式に変換された各センサからの作業動作検出データに基づき、相対距離データ判定機能33aで、センサ21Rを原点にしてセンサ21Lとの相対距離を算出する(ステップ105)。
【0054】
相対距離データ判定機能33aは、ステップ105で算出された相対距離算出データに対応する相対距離閾値データ記憶部32に登録された相対距離閾値データを呼び出して(ステップ106)、ステップ105で算出された相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けたと判定して、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ107、108、109)。一方、ステップ105で算出された相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達していない場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けられなかったと判定して、報知部4で警報を出力することで作業者や検査員に知らせて、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ107、108、110、109)。
【0055】
このように、作業解析部33は、そのセンサ21R、21L間の相対距離算出データに対応する相対距離閾値データを相対距離閾値データ記憶部から呼び出して、相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した否かで、作業者の作業状態を正確に判定することができる。
【0056】
また、作業者が例えば右手の手指にセンサ21Rを装着した状態で、上述した作業工程(1)の作業を行うと(ステップ101)、その作業動作をセンサ21Rが検出して作業者の作業動作情報である作業動作検出データを信号処理部22に送信する。信号処理部22は、この作業動作検出データをデータ処理装置3の作業解析部33に時系列で送信する。
【0057】
作業解析部33は、モーションキャプチャ2のセンサ21Rから時系列で受信する作業動作検出データを取り込んでいるがセンサ21Lから時系列で受信する作業動作検出データを取り込んでいない場合には(ステップ102、103)、ステップ104ではなくてステップ111に移行して、データ形式変換部33dでデータ処理装置用の作業動作検出データに変換する。
【0058】
作業解析部33は、このデータ処理装置用のデータ形式に変換されたセンサ21Rからの作業動作検出データに基づき、作業動作標準データ記憶部31のデータベースからヘッドランプの組付工程である作業工程(1)の作業動作標準データを呼び出して(ステップ112)、作業動作検出データと作業動作標準データとを比較する(ステップ113)。
【0059】
作業解析部33は作業波形の照合の結果、作業動作検出データの作業波形と作業動作標準データの作業波形との間に差異が生じている場合には、その差異から作業者の作業上の不具合を検出する。この差異として作業動作検出データの作業波形が作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値から所定方向に離れて位置するときには作業上の不具合を検出し(ステップ114)、それに基づく作業不具合情報が報知部4に送信されるので、報知部4は作業上の不具合を警報することができる(ステップ115)。報知部4が作業上の不具合を警報することで、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ116)。
【0060】
また、作業動作検出データの作業波形と作業動作標準データの作業波形との間に差異が生じていない場合には、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ116)。
【0061】
なお、作業解析部33の作業動作データ判定機能33bを併用する場合には、プログラムによるデータ処理手順は図12に示すフローチャートのようになる。
【0062】
即ち、例えば、作業者が両手の手指にセンサ21R、21Lを装着した状態で、上述した作業工程(2)の作業を行うと、図11のフローチャートと同様に作業解析部33でステップ101〜ステップ104までが実行される。ステップ104が実行されると、作業解析部33は作業動作データ判定機能33bで、データ処理装置用のデータ形式に変換されたセンサ21R、21Lからの作業動作検出データに基づき、作業動作標準データ記憶部31のデータベースから上述した作業工程(2)の作業動作標準データを呼び出して(ステップ201)、作業動作検出データと作業動作標準データとを比較する(ステップ202)。
【0063】
作業動作データ判定機能33bは図6(B)、(C)に示すように、各センサ21R、21Lからの作業動作検出データの作業波形が、所定時間経過後にステップ201で呼び出した作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値の幅内に位置している場合にはステップ105に移行し、所定時間経過後にステップ201で呼び出した作業動作標準データの閾値の幅内から外れている場合にはステップ110に移行する(ステップ203)。したがって、ステップ105に移行した場合には、相対距離データ判定機能33aが開始され、ステップ110に移行した場合には、プログラムによるデータ処理は終了する。
【0064】
このように、作業工程(2)の作業開始から終了までの作業動作検出データの作業波形を監視することにより両手の作業状態をそれぞれ把握することができるので、相対距離データ判定機能33aでは検出できない各々の手の作業状態を把握することができる。したがって、作業者の作業状態をより正確に判定することができる。
【0065】
なお、データ処理装置3が、相対角度閾値データ記憶部34を備え、作業解析部33に相対角度データ判定機能33eを有する場合には、図13に示すようなデータ処理手順が追加される。この図13に示すデータ処理手順は図11のデータ処理手順及び図12のデータ処理手順の何れにも適用され、図11、図12のステップ108で車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けたと判定すると、作業解析部33は、このデータ処理装置用のデータ形式に変換された各センサからの作業動作検出データに基づき、相対角度データ判定機能33eで、例えばセンサ21Rを原点にしてセンサ21Lとの相対角度を算出する(ステップ120)。
【0066】
相対角度データ判定機能33eは、ステップ120で算出された相対角度算出データに対応する相対角度閾値データ記憶部34に登録された相対距離閾値データを呼び出して(ステップ121)、ステップ120で算出された相対角度算出データが相対距離データ判定機能33aと同じ所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達した場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けたと判定して、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ122、123、109)。一方、ステップ120で算出された相対角度算出データが所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達していない場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けられなかったと判定して、報知部4で警報を出力することで作業者や検査員に知らせて、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ122、123、110、109)。
【0067】
このように、作業解析部33は、相対距離と共に相対角度でも作業者の作業状態を判定することができるので、作業解析部33の判定機能の判定精度を高めることができるようになる。
【0068】
また、図11、図12のフローチャートにおいて、ステップ104は、データ形式変換部33dが組み込まれていない場合には省略される。
【0069】
このようなデータ処理手順がデータ処理装置3の演算処理装置によって実行されるプログラムは、コンピュータ読み取り可能なCD、DVD等の記録媒体に記録させておくことで、複数のデータ処理装置3で利用可能になる。
【0070】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0071】
1……作業判定システム
2……モーションキャプチャ
21R、21L……センサ
31……作業動作標準データ記憶部
32……相対距離閾値データ記憶部
33……作業解析部
33a……相対距離データ判定機能
33b……作業動作データ判定機能
33e……相対角度データ判定機能
34……相対角度閾値データ記憶部
4……報知部
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業者の作業状態を判定するための作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品や自動車の製造メーカーの生産技術部門においては、生産性を向上させる目的のために、モーションキャプチャを使用して作業者の作業が正常に行われたか否かを判定することができる作業訓練支援システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この作業訓練支援システムは、モーションキャプチャからの3次元の空間座標位置と、標準作業時間、手の動きのぶれ(蛇行)あるいは手の動きの基準値とを比較して、その基準値から外れる場合には習熟総合判定をNGにするものである。モーションキャプチャは、作業者の動作状態をリアルに反映させることができるので、作業者の作業判定の精度を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−134536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術に記載した作業訓練支援システムでは、絶対座標で手の動きのぶれ(蛇行)あるいは手の動きを数値化しているので、必ず決められた位置に部品を組み付ける作業では特に問題はないが、例えば左手に持っている部品に右手の部品を組み付ける等、毎回組み付ける位置が異なることになる組み付け作業では絶対座標で判定しようとすると、実際には組み付け作業が正常終了しているのにも拘わらず異常終了と判定してしまう難点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、工場内の生産ラインにおいて、作業者が両手で任意の位置において組み付け作業を行う場合においても正確な作業判定を行うことができる作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である作業判定システムは、工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定して、その測定結果である作業動作データを送信するために当該両手に装着されるセンサを有するモーションキャプチャと、モーションキャプチャの2つのセンサ間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部と、モーションキャプチャから送信されてきた各センサで検出された作業動作データを受信して、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、当該相対距離算出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データに基づき相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能を有する作業解析部とを備えているものである。
【0008】
本発明の第2の態様は第1の態様である作業判定システムにおいて、モーションキャプチャの2つのセンサ間の相対角度の閾値である相対角度閾値データが予め作業工程毎に登録された相対角度閾値データ記憶部を備え、作業解析部は、相対距離データ判定機能で相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、当該相対角度算出データの作業工程と一致する相対角度閾値データ記憶部に登録された相対角度データに基づき相対角度算出データが所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対角度データ判定機能を有するものである。
【0009】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である作業判定システムにおいて、作業者の両手それぞれの作業動作の標準である作業動作標準データが予め作業工程毎に登録された作業動作標準データ記憶部を備え、作業解析部は、モーションキャプチャの2つのセンサそれぞれから時系列で受信する作業動作検出データと、作業動作データの作業工程と一致する作業動作標準データ記憶部に登録された作業動作標準データとを比較して、何れか一方のセンサからの作業動作データが作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには相対距離データ判定機能に移行することなく作業解析を終了する作業動作データ判定機能を有するものである。
【0010】
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である作業判定システムにおいて、モーションキャプチャは、センサは作業者の手指に装着される複数の磁気式3次元位置姿勢センサで、磁気式3次元位置姿勢センサ群で検出された作業者の作業動作情報を受信して作業動作データを3次元座標データとして作業解析部に送信する信号処理部を備えているものである。
【0011】
本発明の第5の態様は第1の態様乃至第4の態様のうち何れか1つの態様である作業判定システムにおいて、作業解析部による解析結果に基づき作業者の作業状態の判定結果を報知する報知部を備えているものである。
【0012】
また、本発明の第6の態様である作業判定方法は、工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれモーションキャプチャの両手に装着されるセンサによって経時的に測定し、その測定結果である作業動作データを作業解析部に送信して作業者の作業状態を解析する作業判定方法であって、作業解析部は、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出する第1のステップと、第1のステップで算出された相対距離算出データに対応する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データを呼び出す第2のステップと、第1のステップで算出された相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する第3のステップとを有するものである。
【0013】
本発明の第7の態様は第6の態様である作業判定方法において、第3のステップで、相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出する第4のステップと、第4のステップで算出された相対角度算出データに対応する相対角度閾値データ記憶部に登録された相対角度閾値データを呼び出す第5のステップと、第5のステップで算出された相対角度算出データが所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する第6のステップとを有するものである。
【0014】
本発明の第8の態様は第6の態様又は第7の態様である作業判定方法において、第1のステップの前に、モーションキャプチャの2つのセンサそれぞれから時系列で受信する作業動作データに対応する作業動作標準データ記憶部に登録された作業動作標準データを呼び出すステップと、何れか一方のセンサからの作業動作データがステップで呼び出した作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには第1のステップに移行することなく作業解析を終了するステップとを有するものである。
【0015】
さらに、本発明の第9の態様である記録媒体は、第6の態様乃至第8の態様のうち何れか1つの態様である作業判定方法によって実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能なものである。
【0016】
このような本発明の作業判定システム及び作業判定方法は、量産中の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれモーションキャプチャの両手に装着されているセンサによって経時的に測定し、その測定結果である作業動作データを作業解析部に送信すると、作業解析部は相対距離データ判定機能により、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、そのセンサ間の相対距離算出データに対応する相対距離閾値データを相対距離閾値データ記憶部から選択する。このセンサ間の相対距離で作業者の作業中における両手の動きを経時的に把握することができるので、作業者が両手で任意の位置において組み付け作業を行ってもその作業状態を把握することができる。したがって、作業解析部は、そのセンサ間の相対距離算出データに対応する相対距離閾値データを相対距離閾値データ記憶部から呼び出して、相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した否かで、作業者の作業状態を正確に判定することができる。
【0017】
なお、作業解析部は相対距離データ判定機能の前に作業動作データ判定機能を実行させるように設定されている場合には、モーションキャプチャの2つのセンサそれぞれから時系列で受信する作業動作データに対応する作業動作標準データを作業動作標準データ記憶部から選択する。作業解析部は、何れか一方のセンサからの作業動作データと選択した作業動作標準データとを比較して、何れか一方のセンサからの作業動作データが、選択された作業動作標準データの閾値から外れたときには、相対距離データ判定機能に移行することなく作業解析を終了させる。このように、両手の作業状態を個別に把握することができるので、相対距離データ判定機能では検出できない各々の手の作業状態を把握することができる。したがって、作業者の作業状態をより正確に判定することができる。
【0018】
また、作業判定システムに相対角度閾値データ記憶部を備え、作業解析部に相対角度データ判定機能を備えた場合には、作業解析部は相対距離データ判定機能で相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達すると、さらに、相対角度データ判定機能により、2つのセンサで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、その2つのセンサから得られた相対角度算出データに対応する相対角度閾値データを相対角度閾値データ記憶部から選択する。この2つのセンサから得られた相対角度及びセンサ間の相対距離で作業者の作業中における両手の動きを経時的に把握することができるので、作業者の作業状態を相対角度閾値データ記憶部及び相対角度データ判定機能を備えていない場合に比べてより正確に把握することができる。
【0019】
さらに、モーションキャプチャのセンサが磁気式3次元位置姿勢センサの場合には、作業動作データを3次元座標データとすることができるので、位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及び姿勢を示すオイラー角の情報を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体によれば、工場内の生産ラインにおいて、作業者が両手で任意の位置において組み付け作業を行う場合においても正確な作業判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の作業判定システムにおける好ましい実施の形態例を示すシステム構成のブロック図である。
【図2】図1のモーションキャプチャに使用されるセンサのキャリブレーションの例を示す説明図である。
【図3】モーションキャプチャで検出した位置情報の例を示す説明図である。
【図4】(A)は工場内における作業工程の例を示す説明図で、(B)はデータ記憶部のデータベースに格納されている作業工程の一例を示すデータベースモデル図である。
【図5】作業解析部における座標値の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図6】作業解析部における座標値の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図7】生産ラインにおける具体的な作業工程を示す説明図である。
【図8】生産ラインにおける具体的な作業工程を示す説明図である。
【図9】作業解析部における回転角の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図10】作業解析部における回転角の曲線グラフを利用した解析手法を示す図である。
【図11】本発明の作業判定方法の好ましい実施の形態例を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の作業判定方法の好ましい他の実施の形態例を示すフローチャート図である。
【図13】本発明の作業判定方法の好ましい他の実施の形態例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、作業判定システム及び作業判定方法並びに該作業判定方法を記録した記録媒体を実施するための最良の形態例について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の作業判定システムは図1に示すように、工場内における量産中の生産ラインにおいて、自動車等の製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定して、その測定結果である作業動作データを送信するモーションキャプチャ2と、モーションキャプチャ2から送信された作業動作データを受信して、その作業動作データと標準データとを比較することで作業者の作業状態を判定するデータ処理装置3とを備えている。また、作業判定システムは、データ処理装置3による判定結果を報知する報知部4を備えている。
【0024】
モーションキャプチャ2は、汎用のものを用いることができ、動体に装着された光学マーカの位置情報により動体の動きを検出する光学式や、動体に装着された磁気センサの動きを検出する磁気式が一般的である。特に、経時的に測定する対象が、部品を組み付ける作業を行っている作業者の作業動作の場合には、モーションキャプチャ2としては、作業者の手指に装着されるデバイスである複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21と、磁気式3次元位置姿勢センサ群21で検出された作業者の作業動作情報として受信してデータ処理装置3に送信する信号処理部22とを備えているものが好適である。このモーションキャプチャ2の場合、複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21を手指の繊細な動きを検出できるように柔軟性のあるグローブに配置するので、作業者の両手の作業動作を精度よく再現することが可能になる。
【0025】
この磁気式3次元位置姿勢センサ21とデータ処理装置3とは、有線、無線の何れの接続手段でもよく、設置状況に応じて選択する。このようなモーションキャプチャとして、例えば、特開2007−236602号公報に開示された磁気式位置姿勢センサを用いた手指用モーションキャプチャ装置が好適である。
【0026】
この手指用モーションキャプチャ装置は図2、図3に示すように、例えば親指の先端に位置するセンサ21aの中心に原点を仮定すると、信号処理部22の固定基準点から見たそれらの位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報が得られ、データ処理装置3に記録される。この場合におけるセンサ装着時の位置及び角度のズレのキャリブレーションは、特開2007−236602号公報に詳述されているので、説明は省略する。
【0027】
なお、グローブは作業者の両手に装着するので、以下、右手に装着した磁気式3次元位置姿勢センサをセンサ21R、左手に装着した磁気式3次元位置姿勢センサをセンサ21Lとして説明する。
【0028】
データ処理装置3はコンピュータが好ましく、内部にCPU等の演算処理装置を備えると共に、ブラウン管モニタや液晶ディスプレイ等の表示画面を有する表示装置や、キーボード、マウス等の入力デバイス、さらに、ハードディスクドライブ等の記憶装置等で構成されている。
【0029】
このようなデータ処理装置3は図1に示すように、作業者の両手それぞれの作業動作の標準である作業動作標準データが予め作業工程毎に登録された作業動作標準データ記憶部31と、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21L間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部32と、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lそれぞれから時系列で受信する作業動作検出データを作業動作標準データ記憶部31の作業動作標準データや相対距離閾値データ記憶部32の相対距離閾値データと比較して、作業者の作業状態を解析する作業解析部33とを備えている。なお、作業動作標準データ記憶部31に登録された作業動作標準データは、位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報である。
【0030】
作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値データ記憶部32は、それぞれデータを更新自在に記憶できるRAMや固定データを記憶するROM等で構成され、例えば図4(A)に示すように、工場内において、ヘッドランプを車両の所定位置に組み付ける組付工程が作業工程(1)、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を組み付け後、オーディオを車両の元の位置に収納して組み付ける組付工程が作業工程(2)、サイドミラーを車両の所定位置に組み付ける組付工程が作業工程(3)とすると、作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値データ記憶部32のデータベースは、それぞれ図4(B)に示すようなデータベースモデルとなる。
【0031】
作業解析部33は、モーションキャプチャ2から送信されてきた各センサ21R、21Lで検出された各作業動作検出データを受信して、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの相対距離を算出し、当該相対距離検出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部32に登録された相対距離閾値データに基づき相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能33aを有している。さらに、作業解析部33は、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lそれぞれから時系列で受信する作業動作検出データと、作業動作検出データの作業工程と一致する作業動作標準データ記憶部31に登録された作業動作標準データとを比較して、何れか一方のセンサからの作業動作検出データが作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには相対距離データ判定機能33aに移行することなく作業解析を終了する作業動作データ判定機能33bを有している。
【0032】
また、作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lのうち何れか一方だけを装着して作業を行う場合には、例えば、モーションキャプチャ2のセンサ21Rから作業動作検出データを時系列で受信すると、その作業動作検出データによる作業工程と一致する作業動作標準データを作業動作標準データ記憶部31のデータベースから検出し、その作業動作標準データと作業動作検出データとを比較して、差異がある場合にはその差異から作業上の不具合を検出する作業不具合検出機能33cを有している。
【0033】
このような作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lのうち何れか一方だけを装着して部品を所定の位置に組み付けるだけの作業を行う場合には、作業不具合検出機能33cで、その部品が所定位置まで移動したか否かを検出できればよいので、図5に示すような横軸が時間値で縦軸が座標値である曲線グラフの作業波形を利用して、作業動作検出データの作業波形と作業動作標準データの作業波形とを比較するとよい。なお、図中、右側のグラフは作業位置における標準作業波形を示し、左側のグラフはモーションキャプチャ2からの作業動作検出データの作業波形で、点線で形成された楕円部が作業位置を示すものである。作業解析部33は比較した結果、作業動作検出データの作業波形が作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値から所定方向に離れて位置するときには作業上の不具合を検出する。
【0034】
具体的には、例えば作業工程(1)において、作業者が磁気式3次元位置姿勢センサであるセンサ21R、21Lを両手の手指に装着した状態で、クイックリリースタイプの結合クリップでヘッドランプを自動車のフロント部分に組み付けるために当該結合クリップをフレームの結合穴に押圧すると、モーションキャプチャ2の例えばセンサ21Rがその作業動作の情報を時系列で作業動作検出データとして出力する。作業解析部33がモーションキャプチャ2のセンサ21Rから時系列で作業動作検出データを受信した場合、例えば図5に示すように、グラフの時間軸上の作業位置において、検出された作業動作検出データのX軸成分の作業波形が、X軸成分の標準作業波形を基準に設定された閾値ラインTH1から上方に突出した軌跡や座標値を示した場合には、結合クリップが完全には嵌め込み固定されたことを示すので、作業解析部32はX軸成分においては作業者がヘッドランプの組付工程(1)の作業を正常に完了させたことを検出する。したがって、作業解析部32は、X軸成分についてはヘッドランプの組付工程(1)が正常終了したことを示す検出情報を報知部4に送信する。
【0035】
また、検出された作業動作検出データのY軸成分の作業波形が、Y軸成分の標準作業波形を基準に設定された閾値ラインTH2から下方に突出した軌跡や座標値を示した場合には、結合クリップが完全には嵌め込み固定されたことを示すので、作業解析部32はY軸成分においては作業者がヘッドランプの組付工程(1)の作業を正常に完了させたことを検出する。したがって、作業解析部32は、Y軸成分についてはヘッドランプの組付工程(1)が正常終了したことを示す検出情報を報知部4に送信する。
【0036】
また、検出された作業動作検出データのZ軸成分の作業波形が、Z軸成分の標準作業波形を基準に設定された閾値ラインTH3から下方に突出した軌跡や座標値を示さない場合には、結合クリップがZ軸成分において完全には嵌め込み固定されていないことを示すので、ヘッドランプの組付工程(1)において作業上の不具合が発生したことを検出する。したがって、作業解析部32はZ軸成分において作業上の不具合が発生したことを示す検出情報を報知部4に送信するので、ヘッドランプの組付工程(1)において作業上の不具合が発生したと判定する。
【0037】
なお、作業解析部32はX軸成分、Y軸成分及びZ軸成分の何れの作業波形においても、ヘッドランプの組付工程(1)が正常終了したことを示す検出情報の場合には、ヘッドランプの組付工程(1)において作業上の不具合はなかったと判定する。
【0038】
さらに、作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lを両手に装着して、車両の所定位置に仮組み付けされている第1の部品をその位置から引き出して第2の部品を組み付け後、第1の部品を車両の元の位置に収納して組み付ける作業の場合には、相対距離データ判定機能33aで、作業者が両手に装着した2つのセンサ21R、21L間の相対距離を検出して両手の相対的な動きを把握できればよいので、図6(A)に示すような横軸が時間値で縦軸が座標値である曲線グラフの作業波形を利用して、例えばセンサ21Rからの作業動作検出データを原点にしてセンサ21Lからの作業動作検出データとの相対距離を算出し、当該相対距離検出データの作業工程と一致する相対距離閾値データ記憶部32に登録された相対距離閾値データを呼び出す。そして、相対距離データ判定機能33aは相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達している場合にはその作業が正常に行われたと判定し、閾値の幅内から外れている場合には作業が正常に行われていないと判断する。
【0039】
なお、図6(A)は作業動作検出データのX軸成分の作業波形のみが示されているが、モーションキャプチャ2のセンサ21が磁気式3次元位置姿勢センサなので、作業動作検出データのY軸成分、Z軸成分の各作業波形も検出される。したがって、X軸成分、Y軸成分、Z軸成分のうち何れか1つでも相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達していない場合には、作業が正常に行われていないと判断する。
【0040】
具体的には図7、図8に示すように、例えば作業工程(2)において、作業者は生産ラインFLの近傍に設置されている収納ラックSLからオーディオ6を左手で取り出し(図8)、生産ラインFL上で移動している車両Cが備えているセンターコンソールボックス5内に配線されているワイヤーハーネスW/Hから、予め仮組みされている結線用コネクタ7を(図7(A))当該センターコンソールボックス5から右手で引き出してオーディオ6と結線し(図7(B))、そのオーディオ6を再びセンターコンソールボックス5に収納して組み付ける作業(図7(C))が該当する。
【0041】
この作業においては図8に示すように、種々の部品を組み付ける車両Cが生産ラインFL上で移動しているので、絶対座標で手の動きを数値化すると上述した背景技術で説明したように正確な作業判定を行うことができないが、作業解析部33の相対距離データ判定機能33aでは、2つのセンサ21R、21L間の相対距離で作業者の作業中における両手の動きを経時的に把握することができるので、作業者が右手に持っている部品と左手に持っている部品とを任意の位置で組み付ける組み付け作業を行ってもその作業状態を把握することができる。
【0042】
報知部4は、作業者の作業解析結果を表示する表示画面にすることで、作業者は作業解析結果を視覚的に捉え易くなる。なお、報知部4は表示装置の表示画面に限らず、スピーカ等の音声発生装置によって聴覚によって作業解析結果を確認できるようにしてもよく、さらには、表示装置の表示画面と音声発生装置とを用いて作業解析結果を確認できるようにしてもよい。なお、報知部4は生産ラインFLの近傍ではなく検査ラインに設けるようにしてもよく、この場合は、生産ラインFLを停止することなく不良の車両を検出することが可能になる。
【0043】
なお、モーションキャプチャ2から時系列で受信する座標データである作業動作検出データが、データ処理装置用の座標データとデータ形式が異なる場合には図1に示すように、モーションキャプチャ2と作業解析部32に、データ形式変換部33dを組み込むとよい。データ形式変換部33dは、モーションキャプチャ2から時系列で受信する作業動作検出データをデータ処理装置用の座標データに変換する機能を有している。
【0044】
このようなデータ処理装置3は、作業解析部33の判定機能の判定精度を高めるために、モーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21L間の相対角度の閾値である相対角度閾値データが予め作業工程毎に登録された相対角度閾値データ記憶部34を備え、作業解析部33に相対角度閾値データと相対距離算出データとを比較する相対角度データ判定機能33eを備えるとよい。この相対角度データ判定機能33eは、相対距離データ判定機能33aで相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサ21R、21Lで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、当該相対角度算出データの作業工程と一致する相対角度閾値データ記憶部34に登録された相対角度データに基づき相対角度算出データが相対距離データ判定機能33aと同じ所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、作業者の作業状態を判定するものである。
【0045】
相対角度閾値データ記憶部34は、作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値データ記憶部32と同様に、データを更新自在に記憶できるRAMや固定データを記憶するROM等で構成されている。また、相対角度データ判定機能33eで対象とする相対角度は、何れか一方のセンサを原点にして他方のセンサとの角度を算出する演算処理方法によって求められるが、この演算処理方法には限られず、既知の相対角度の演算処理方法ならば何れの演算処理方法を使用してもよい。
【0046】
このような相対角度データ判定機能33eを有する作業解析部33は、相対角度データ判定機能33eを有する作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lを両手に装着して、車両の所定位置に仮組み付けされている第1の部品をその位置から引き出して第2の部品を組み付け後、第1の部品を車両の元の位置に収納して組み付ける作業の場合には、相対距離データ判定機能33aが相対距離検出データが所定時間経過後にその相対距離閾値の幅内に到達していると判定すると、さらに、相対角度データ判定機能33eにより、2つのセンサ21R、21Lで検出された作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、その2つのセンサ21R、21Lから得られた相対角度算出データに対応する相対角度閾値データを相対角度閾値データ記憶部34から選択する。
【0047】
この際、相対角度データ判定機能33eは、図9に示すような横軸が時間軸で縦軸が相対角度である曲線グラフの作業波形を利用して、相対角度算出データが相対距離データ判定機能33aに設定された所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達している場合にはその作業が正常に行われたと判定し、閾値の幅内から外れている場合には作業が正常に行われていないと判断する。なお、図9は相対角度算出データのX軸成分の作業波形のみが示されているが、相対角度算出データのY軸成分、Z軸成分の各作業波形も得ることができる。したがって、X軸成分、Y軸成分、Z軸成分のうち何れか1つでも相対角度算出データが所定時間経過後にその相対角度閾値の幅内に到達していない場合には、作業が正常に行われていないと判断する。
【0048】
また、相対角度データ判定機能33eを有する作業解析部33は、作業者がモーションキャプチャ2の2つのセンサ21R、21Lのうち何れか一方だけを装着して部品を所定の位置に組み付けるだけの作業を行う場合には、作業不具合検出機能33cで、その部品が所定位置まで正常移動したことを検出すると、さらに、作業不具合検出機能33cで、その正常移動位置におけるモーションキャプチャ2の一方のセンサの回転角が既定角度範囲内で回転しているか否かを検出できればよいので、図10に示すような横軸が時間値で縦軸が回転角である曲線グラフの作業波形を利用して、モーションキャプチャ2からの作業動作検出データから算出された回転角データの作業波形と作業動作標準データの作業波形とを比較するとよい。
【0049】
なお、センサの回転角は位置座標に基づき作業解析部33によって算出される。また、図10中、右側のグラフは作業位置における標準作業波形を示し、左側のグラフは回転角データの作業波形で、点線で形成された楕円部が作業位置を示すもので、上からX軸成分、Y軸成分及びZ軸成分のグラフとなっている。作業解析部33は比較した結果、回転角データの作業波形が作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値から所定方向に離れて位置するときには作業上の不具合を検出する。
【0050】
上述したデータ処理装置3の各構成部は図1に示すように、それぞれ電気的に接続され、モーションキャプチャ2はセンサ21R及びセンサ21Lがそれぞれ信号処理部22に接続され、データ処理装置3は作業動作標準データ記憶部31及び相対距離閾値記憶部32がそれぞれ作業解析部33に接続されている。また、データ処理装置3の作業解析部33にはモーションキャプチャ2の信号処理部22及び報知部4が接続されている。なお、データ処理装置3に相対角度閾値データ記憶部34を備えた場合には、当該相対角度閾値データ記憶部34を作業解析部33に接続させる。
【0051】
このように構成された作業判定システム1におけるデータ処理装置3の各構成は、演算処理装置によって実行されるプログラムによって実現されるものである。このプログラムによるデータ処理手順について図11のフローチャートに基づき説明する。なお、データ処理装置3は、相対角度閾値データ記憶部34を備えず、作業解析部33に相対角度データ判定機能33eを有していないものとする。
【0052】
例えば、作業者が両手の手指にセンサ21R、21Lを装着した状態で、上述した作業工程(2)の作業を行うと(ステップ101)、その作業動作をセンサ21R、21Lが検出して作業者の作業動作情報である作業動作検出データを信号処理部22に送信する。信号処理部22は、この作業動作検出データをデータ処理装置3の作業解析部33に時系列で送信する。
【0053】
作業解析部33は、モーションキャプチャ2のセンサ21Rから時系列で受信する作業動作検出データを取り込むと共に、センサ21Lから時系列で受信する作業動作検出データを取り込むと(ステップ102、103)、データ形式変換部33dでデータ処理装置用の3次元座標データに変換する(ステップ104)。作業解析部33は、このデータ処理装置用のデータ形式に変換された各センサからの作業動作検出データに基づき、相対距離データ判定機能33aで、センサ21Rを原点にしてセンサ21Lとの相対距離を算出する(ステップ105)。
【0054】
相対距離データ判定機能33aは、ステップ105で算出された相対距離算出データに対応する相対距離閾値データ記憶部32に登録された相対距離閾値データを呼び出して(ステップ106)、ステップ105で算出された相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けたと判定して、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ107、108、109)。一方、ステップ105で算出された相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達していない場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けられなかったと判定して、報知部4で警報を出力することで作業者や検査員に知らせて、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ107、108、110、109)。
【0055】
このように、作業解析部33は、そのセンサ21R、21L間の相対距離算出データに対応する相対距離閾値データを相対距離閾値データ記憶部から呼び出して、相対距離算出データが所定時間経過後に相対距離閾値の幅内に到達した否かで、作業者の作業状態を正確に判定することができる。
【0056】
また、作業者が例えば右手の手指にセンサ21Rを装着した状態で、上述した作業工程(1)の作業を行うと(ステップ101)、その作業動作をセンサ21Rが検出して作業者の作業動作情報である作業動作検出データを信号処理部22に送信する。信号処理部22は、この作業動作検出データをデータ処理装置3の作業解析部33に時系列で送信する。
【0057】
作業解析部33は、モーションキャプチャ2のセンサ21Rから時系列で受信する作業動作検出データを取り込んでいるがセンサ21Lから時系列で受信する作業動作検出データを取り込んでいない場合には(ステップ102、103)、ステップ104ではなくてステップ111に移行して、データ形式変換部33dでデータ処理装置用の作業動作検出データに変換する。
【0058】
作業解析部33は、このデータ処理装置用のデータ形式に変換されたセンサ21Rからの作業動作検出データに基づき、作業動作標準データ記憶部31のデータベースからヘッドランプの組付工程である作業工程(1)の作業動作標準データを呼び出して(ステップ112)、作業動作検出データと作業動作標準データとを比較する(ステップ113)。
【0059】
作業解析部33は作業波形の照合の結果、作業動作検出データの作業波形と作業動作標準データの作業波形との間に差異が生じている場合には、その差異から作業者の作業上の不具合を検出する。この差異として作業動作検出データの作業波形が作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値から所定方向に離れて位置するときには作業上の不具合を検出し(ステップ114)、それに基づく作業不具合情報が報知部4に送信されるので、報知部4は作業上の不具合を警報することができる(ステップ115)。報知部4が作業上の不具合を警報することで、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ116)。
【0060】
また、作業動作検出データの作業波形と作業動作標準データの作業波形との間に差異が生じていない場合には、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ116)。
【0061】
なお、作業解析部33の作業動作データ判定機能33bを併用する場合には、プログラムによるデータ処理手順は図12に示すフローチャートのようになる。
【0062】
即ち、例えば、作業者が両手の手指にセンサ21R、21Lを装着した状態で、上述した作業工程(2)の作業を行うと、図11のフローチャートと同様に作業解析部33でステップ101〜ステップ104までが実行される。ステップ104が実行されると、作業解析部33は作業動作データ判定機能33bで、データ処理装置用のデータ形式に変換されたセンサ21R、21Lからの作業動作検出データに基づき、作業動作標準データ記憶部31のデータベースから上述した作業工程(2)の作業動作標準データを呼び出して(ステップ201)、作業動作検出データと作業動作標準データとを比較する(ステップ202)。
【0063】
作業動作データ判定機能33bは図6(B)、(C)に示すように、各センサ21R、21Lからの作業動作検出データの作業波形が、所定時間経過後にステップ201で呼び出した作業動作標準データの作業波形に基づき予め定められた閾値の幅内に位置している場合にはステップ105に移行し、所定時間経過後にステップ201で呼び出した作業動作標準データの閾値の幅内から外れている場合にはステップ110に移行する(ステップ203)。したがって、ステップ105に移行した場合には、相対距離データ判定機能33aが開始され、ステップ110に移行した場合には、プログラムによるデータ処理は終了する。
【0064】
このように、作業工程(2)の作業開始から終了までの作業動作検出データの作業波形を監視することにより両手の作業状態をそれぞれ把握することができるので、相対距離データ判定機能33aでは検出できない各々の手の作業状態を把握することができる。したがって、作業者の作業状態をより正確に判定することができる。
【0065】
なお、データ処理装置3が、相対角度閾値データ記憶部34を備え、作業解析部33に相対角度データ判定機能33eを有する場合には、図13に示すようなデータ処理手順が追加される。この図13に示すデータ処理手順は図11のデータ処理手順及び図12のデータ処理手順の何れにも適用され、図11、図12のステップ108で車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けたと判定すると、作業解析部33は、このデータ処理装置用のデータ形式に変換された各センサからの作業動作検出データに基づき、相対角度データ判定機能33eで、例えばセンサ21Rを原点にしてセンサ21Lとの相対角度を算出する(ステップ120)。
【0066】
相対角度データ判定機能33eは、ステップ120で算出された相対角度算出データに対応する相対角度閾値データ記憶部34に登録された相対距離閾値データを呼び出して(ステップ121)、ステップ120で算出された相対角度算出データが相対距離データ判定機能33aと同じ所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達した場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けたと判定して、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ122、123、109)。一方、ステップ120で算出された相対角度算出データが所定時間経過後に相対角度閾値の幅内に到達していない場合には、車両の所定位置に仮組み付けされているオーディオをその位置から引き出して付属部品を正常に組み付けられなかったと判定して、報知部4で警報を出力することで作業者や検査員に知らせて、このプログラムによるデータ処理は終了する(ステップ122、123、110、109)。
【0067】
このように、作業解析部33は、相対距離と共に相対角度でも作業者の作業状態を判定することができるので、作業解析部33の判定機能の判定精度を高めることができるようになる。
【0068】
また、図11、図12のフローチャートにおいて、ステップ104は、データ形式変換部33dが組み込まれていない場合には省略される。
【0069】
このようなデータ処理手順がデータ処理装置3の演算処理装置によって実行されるプログラムは、コンピュータ読み取り可能なCD、DVD等の記録媒体に記録させておくことで、複数のデータ処理装置3で利用可能になる。
【0070】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0071】
1……作業判定システム
2……モーションキャプチャ
21R、21L……センサ
31……作業動作標準データ記憶部
32……相対距離閾値データ記憶部
33……作業解析部
33a……相対距離データ判定機能
33b……作業動作データ判定機能
33e……相対角度データ判定機能
34……相対角度閾値データ記憶部
4……報知部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定して、その測定結果である作業動作検出データを送信するために当該両手に装着されるセンサを有するモーションキャプチャと、
前記モーションキャプチャの前記2つのセンサ間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部と、
前記モーションキャプチャから送信されてきた前記各センサで検出された前記作業動作検出データを受信して、何れか一方の前記センサを原点にして他方の前記センサとの相対距離を算出し、当該相対距離算出データの作業工程と一致する前記相対距離閾値データ記憶部に登録された前記相対距離閾値データに基づき前記相対距離算出データが所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能を有する作業解析部とを備えていることを特徴とする作業判定システム。
【請求項2】
前記モーションキャプチャの前記2つのセンサ間の相対角度の閾値である相対角度閾値データが予め作業工程毎に登録された相対角度閾値データ記憶部を備え、
前記作業解析部は、前記相対距離データ判定機能で前記相対距離算出データが所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、前記2つのセンサで検出された前記作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、当該相対角度算出データの作業工程と一致する前記相対角度閾値データ記憶部に登録された前記相対角度データに基づき前記相対角度算出データが前記所定時間経過後に前記相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する相対角度データ判定機能を有することを特徴とする請求項1記載の作業判定システム。
【請求項3】
前記作業者の前記両手それぞれの前記作業動作の標準である作業動作標準データが予め作業工程毎に登録された作業動作標準データ記憶部を備え、
前記作業解析部は、前記モーションキャプチャの前記2つのセンサそれぞれから時系列で受信する前記作業動作検出データと、前記作業動作検出データの作業工程と一致する前記作業動作標準データ記憶部に登録された前記作業動作標準データとを比較して、前記何れか一方のセンサからの前記作業動作検出データが前記作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには前記相対距離データ判定機能に移行することなく作業解析を終了する作業動作データ判定機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業判定システム。
【請求項4】
前記モーションキャプチャは、前記センサは前記作業者の手指に装着される複数の磁気式3次元位置姿勢センサで、前記磁気式3次元位置姿勢センサ群で検出された前記作業者の作業動作情報を受信して前記作業動作検出データを3次元座標データとして前記作業解析部に送信する信号処理部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の作業判定システム。
【請求項5】
前記作業解析部による解析結果に基づき前記作業者の作業状態の判定結果を報知する報知部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載の作業判定システム。
【請求項6】
工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれモーションキャプチャの前記両手に装着されるセンサによって経時的に測定し、その測定結果である作業動作検出データを作業解析部に送信して前記作業者の作業状態を解析する作業判定方法であって、
前記作業解析部は、
何れか一方の前記センサを原点にして他方の前記センサとの相対距離を算出する第1のステップと、
前記第1のステップで算出された相対距離算出データに対応する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データを呼び出す第2のステップと、
前記第1のステップで算出された前記相対距離算出データが所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する第3のステップとを有することを特徴とする作業判定方法。
【請求項7】
前記第3のステップで、前記相対距離算出データが前記所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサで検出された前記作業動作検出データに基づき相対角度を算出する第4のステップと、
前記第4のステップで算出された相対角度算出データに対応する相対角度閾値データ記憶部に登録された相対角度閾値データを呼び出す第5のステップと、
前記第5のステップで算出された前記相対角度算出データが前記所定時間経過後に前記相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する第6のステップとを有することを特徴とする請求項6記載の作業判定方法。
【請求項8】
前記第1のステップの前に、前記モーションキャプチャの前記2つのセンサそれぞれから時系列で受信する前記作業動作検出データに対応する作業動作標準データ記憶部に登録された作業動作標準データを呼び出すステップと、
前記何れか一方のセンサからの前記作業動作検出データが前記ステップで呼び出した前記作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには前記第1のステップに移行することなく作業解析を終了するステップとを有することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の作業判定方法。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のうち何れか1項に記載の作業判定方法によって実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれ経時的に測定して、その測定結果である作業動作検出データを送信するために当該両手に装着されるセンサを有するモーションキャプチャと、
前記モーションキャプチャの前記2つのセンサ間の相対距離の閾値である相対距離閾値データが予め作業工程毎に登録された相対距離閾値データ記憶部と、
前記モーションキャプチャから送信されてきた前記各センサで検出された前記作業動作検出データを受信して、何れか一方の前記センサを原点にして他方の前記センサとの相対距離を算出し、当該相対距離算出データの作業工程と一致する前記相対距離閾値データ記憶部に登録された前記相対距離閾値データに基づき前記相対距離算出データが所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する相対距離データ判定機能を有する作業解析部とを備えていることを特徴とする作業判定システム。
【請求項2】
前記モーションキャプチャの前記2つのセンサ間の相対角度の閾値である相対角度閾値データが予め作業工程毎に登録された相対角度閾値データ記憶部を備え、
前記作業解析部は、前記相対距離データ判定機能で前記相対距離算出データが所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、前記2つのセンサで検出された前記作業動作検出データに基づき相対角度を算出し、当該相対角度算出データの作業工程と一致する前記相対角度閾値データ記憶部に登録された前記相対角度データに基づき前記相対角度算出データが前記所定時間経過後に前記相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する相対角度データ判定機能を有することを特徴とする請求項1記載の作業判定システム。
【請求項3】
前記作業者の前記両手それぞれの前記作業動作の標準である作業動作標準データが予め作業工程毎に登録された作業動作標準データ記憶部を備え、
前記作業解析部は、前記モーションキャプチャの前記2つのセンサそれぞれから時系列で受信する前記作業動作検出データと、前記作業動作検出データの作業工程と一致する前記作業動作標準データ記憶部に登録された前記作業動作標準データとを比較して、前記何れか一方のセンサからの前記作業動作検出データが前記作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには前記相対距離データ判定機能に移行することなく作業解析を終了する作業動作データ判定機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業判定システム。
【請求項4】
前記モーションキャプチャは、前記センサは前記作業者の手指に装着される複数の磁気式3次元位置姿勢センサで、前記磁気式3次元位置姿勢センサ群で検出された前記作業者の作業動作情報を受信して前記作業動作検出データを3次元座標データとして前記作業解析部に送信する信号処理部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の作業判定システム。
【請求項5】
前記作業解析部による解析結果に基づき前記作業者の作業状態の判定結果を報知する報知部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載の作業判定システム。
【請求項6】
工場内の生産ラインにおいて、製品に部品を組み付ける作業を行っている作業者の両手の作業動作をそれぞれモーションキャプチャの前記両手に装着されるセンサによって経時的に測定し、その測定結果である作業動作検出データを作業解析部に送信して前記作業者の作業状態を解析する作業判定方法であって、
前記作業解析部は、
何れか一方の前記センサを原点にして他方の前記センサとの相対距離を算出する第1のステップと、
前記第1のステップで算出された相対距離算出データに対応する相対距離閾値データ記憶部に登録された相対距離閾値データを呼び出す第2のステップと、
前記第1のステップで算出された前記相対距離算出データが所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する第3のステップとを有することを特徴とする作業判定方法。
【請求項7】
前記第3のステップで、前記相対距離算出データが前記所定時間経過後に前記相対距離閾値の幅内に到達した場合には、さらに、2つのセンサで検出された前記作業動作検出データに基づき相対角度を算出する第4のステップと、
前記第4のステップで算出された相対角度算出データに対応する相対角度閾値データ記憶部に登録された相対角度閾値データを呼び出す第5のステップと、
前記第5のステップで算出された前記相対角度算出データが前記所定時間経過後に前記相対角度閾値の幅内に到達したか否かで、前記作業者の作業状態を判定する第6のステップとを有することを特徴とする請求項6記載の作業判定方法。
【請求項8】
前記第1のステップの前に、前記モーションキャプチャの前記2つのセンサそれぞれから時系列で受信する前記作業動作検出データに対応する作業動作標準データ記憶部に登録された作業動作標準データを呼び出すステップと、
前記何れか一方のセンサからの前記作業動作検出データが前記ステップで呼び出した前記作業動作標準データの閾値の幅内から外れたときには前記第1のステップに移行することなく作業解析を終了するステップとを有することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の作業判定方法。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のうち何れか1項に記載の作業判定方法によって実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【公開番号】特開2010−271927(P2010−271927A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123271(P2009−123271)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】
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