説明

作業機の油圧システム及び作業機の油圧制御方法

【課題】制御バルブの中立時で且つ作動油の温度が所定温度以下である時にドレン油路を開いて制御バルブ内で作動油を流すことで、スプールの動作に支障がないよう事前に制御バルブのヒートアップができる作業機の油圧システム及び作業機の油圧制御方法を提供する。
【解決手段】ポンプ吐出量Qを調整可能な可変容量ポンプ3の吐出回路4と、吐出回路4に制御バルブ5を介して接続されたアクチュエータ6と、可変容量ポンプ3のポンプ吐出圧を制御するコントローラ7とを備え、コントローラ7は、制御バルブ5の操作量から算出した予定のブリードオフ面積値に応じた指令吐出圧とすべく吐出回路4を制御する。制御バルブ5の中立時で且つ作動油の温度が所定温度T以下である時に、吐出回路4の作動油を制御バルブ5を通って作動油タンク8に排油させるドレン油路9を開いて制御バルブ5内で作動油を流す油流動手段10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー、トラクタ等の作業機において、ポンプ吐出量を調整可能な可変容量ポンプの吐出回路を、吐き出される作動油のポンプ吐出圧が制御バルブの操作量から算出した予定のブリードオフ面積値に応じた指令吐出圧となるように制御する作業機の油圧システム及び作業機の油圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可変容量ポンプを備えた作業機の油圧システムの制御方法が知られている。
この油圧システムの制御方法は、外部からポンプ吐出量の調整可能な可変容量ポンプの吐出回路に、複数のアクチュエータを制御バルブを介して接続した油圧システムを制御するものであって、余分な作動油をタンクに流す(ブリードする)ことがなく、アクチュエータを動作させるために必要な作動油のみを可変容量ポンプから吐き出しており、エネルギーロスを抑制している。
【0003】
従来の油圧システムは、吐出回路のポンプ吐出圧に基づく圧力信号と、各制御バルブの操作量に基づく操作量信号と、可変容量ポンプのポンプ吐出量に基づくアクチュエータ流量の流量信号とを検出でき、コントローラによって、操作量信号の総和値から予定のブリードオフ面積値を算出する。
さらに、コントローラは、前記ブリードオフ面積値と、可変容量ポンプの最大吐出量から流量信号によるアクチュエータ流量を減算した流量値とから指令吐出圧を算出し、可変容量ポンプのポンプ容量を指令吐出圧と吐出圧信号を減算した算出値をパラメータとして算出された吐出量指令により油圧システムを制御する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−047306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の油圧システムの制御方法は、無駄な作動油をタンクにブリードしないように、吐出回路と作動油タンクとを連通するドレン油路を有さない型(クローズドセンター型)の制御バルブを用いているため、制御バルブの中立時には制御バルブの内部で作動油が流れない。
作動油が流れなければ制御バルブの温度は上がらず、特に寒冷地などでは制御バルブが冷えたままとなり、スプールの動きに支障をきたす。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みて、可変容量ポンプの吐出回路をポンプ吐出圧が制御バルブの操作量から算出した予定のブリードオフ面積値に応じた指令吐出圧となるように制御する際に、吐出回路の作動油を制御バルブを通って作動油タンクに排油させるドレン油路を設けて、制御バルブの中立時で且つ作動油の温度が所定温度以下である時にドレン油路を開いて制御バルブ内で作動油を流すことで、スプールの動作に支障がないよう事前に制御バルブのヒートアップができる作業機の油圧システム及び作業機の油圧制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、本発明に係る作業機の油圧システムは、以下の技術的手段を採用した。
第1に、ポンプ吐出量Qを調整可能な可変容量ポンプ3の吐出回路4と、この吐出回路4に制御バルブ5を介して接続されたアクチュエータ6と、前記可変容量ポンプ3から吐き出される作動油のポンプ吐出圧Pを制御するコントローラ7とを備え、
このコントローラ7は、前記制御バルブ5の操作量sから算出した予定のブリードオフ面積値Bに応じた指令吐出圧SPとすべく吐出回路4を制御する作業機の油圧システムであって、
前記吐出回路4の作動油を制御バルブ5を通って作動油タンク8に排油させるドレン油路9を有し、
このドレン油路9に、前記制御バルブ5の中立時で且つ作動油の温度が所定温度T以下である時にドレン油路9を開いて制御バルブ5内で作動油を流す油流動手段10を備えていることを特徴とする。
【0008】
第2に、前記油流動手段10は、前記ドレン油路9の最下流に設けられていて前記吐出回路4の作動油が所定のリリーフ圧Rを越えた時にドレン油路9を開くリリーフ弁11と、前記ドレン油路9を開閉する切替弁12とを有していると共に、前記コントローラ7で吐出回路4を制御バルブ5の中立時に指令吐出圧SPが所定のリリーフ圧Rより高くなるように制御し、且つ前記コントローラ7で切替弁12を可変容量ポンプ3からアクチュエータ6への油路PC及びアクチュエータ6から作動油タンク8への油路CTが開く前にドレン油路9を閉じるように制御していることを特徴とする。
【0009】
第3に、前記制御バルブ5は、前記可変容量ポンプ3からアクチュエータ6への油路PC及びアクチュエータ6から作動油タンク8への油路CTが開く前に前記ドレン油路9を閉じるように構成され、
前記油流動手段10は、前記ドレン油路9の最下流に設けられていて前記吐出回路4の作動油が所定のリリーフ圧Rを越えた時にドレン油路9を開くリリーフ弁11を有していると共に、前記コントローラ7で吐出回路4を制御バルブ5の中立時に指令吐出圧SPが所定のリリーフ圧Rより高くなるように制御していることを特徴とする。
【0010】
第4に、前記油流動手段10は、前記作動油の温度が所定温度Tを越えた時にはコントローラ7で吐出回路4を制御バルブ5の中立時に指令吐出圧SPが所定のリリーフ圧Rより低くなるように制御することを特徴とする。
第5に、前記油流動手段10は、前記ドレン油路9を開閉する切替弁12を有し、この切替弁12をコントローラ7で制御バルブ5の中立時であって作動油の温度が所定温度T以下である時にドレン油路9を開き、且つ作動油の温度が所定温度Tを越えた時にドレン油路9を閉じるように制御していることを特徴とする。
【0011】
第6に、前記油流動手段10は、前記作動油タンク8内に作動油の温度を検出する温度センサ14を有すると共に、この温度センサ14で検出した作動油の温度に基づいてコントローラ7でドレン油路9の開きを制御していることを特徴とする。
第7に、前記可変容量ポンプ3は、エンジン2駆動式であって、
前記油流動手段10は、前記エンジン2の始動時にもドレン油路9を開くことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る作業機の油圧制御方法は、第1に、ポンプ吐出量Qを調整可能な可変容量ポンプ3を有していて制御バルブ5を介してアクチュエータ6が接続された吐出回路4を、前記可変容量ポンプ3のポンプ吐出圧Pが制御バルブ5の操作量sから算出した予定のブリードオフ面積値Bに応じた指令吐出圧SPとなるように制御する作業機の油圧制御方法であって、
前記制御バルブ5の中立時で且つ作動油の温度が所定温度T以下である時に、前記吐出回路4の作動油を制御バルブ5を通って作動油タンク8に排油させるドレン油路9を開い
て制御バルブ5内に作動油を流すことを特徴とする。
【0013】
第2に、前記可変容量ポンプ3は、エンジン2駆動式であって、
前記エンジン2の始動時にもドレン油路9を開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、コントローラで制御バルブの操作量から算出した予定のブリードオフ面積値に応じた指令吐出圧とすべく吐出回路を制御する作業機の油圧システムが、吐出回路の作動油を制御バルブを通って作動油タンクに排油させるドレン油路を有し、制御バルブの中立時で且つ作動油の温度が所定温度以下である時にドレン油路を開いて制御バルブ内で作動油を流す油流動手段を備えていることで、制御バルブを操作する前に内部に作業油を流してヒートアップすることが可能となり、寒冷地等で制御バルブが低温であってもスプール動作への影響を低減できる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、吐出回路の作動油が所定のリリーフ圧を越えた時にドレン油路を開くリリーフ弁と、ドレン油路を開閉する切替弁とを有していると共に、コントローラで制御バルブの中立時に指令吐出圧が所定のリリーフ圧より高く且つ可変容量ポンプからアクチュエータへの油路及びアクチュエータから作動油タンクへの油路が開く前にドレン油路を閉じるように制御することで、リリーフ弁及び切替弁を後付けして、制御バルブ中立時の指令吐出圧と切替弁とをコントロールするだけでよいため、組付け容易化、制御システムの簡略化を図りながら、低温の制御バルブをヒートアップでき、スプール動作をスムースにできる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、可変容量ポンプからアクチュエータへの油路及びアクチュエータから作動油タンクへの油路が開く前にドレン油路を閉じるように制御バルブを構成し、吐出回路の作動油が所定のリリーフ圧を越えた時にドレン油路を開くリリーフ弁を有していると共に、コントローラで制御バルブの中立時に指令吐出圧が所定のリリーフ圧より高くなるように制御することによって、追加する部品点数を可及的に少なくしてシステムの小型化を図り、制御バルブ中立時の指令吐出圧をコントロールするだけで、制御バルブを内部で作動油を流動させてヒートアップできる。
【0017】
請求項4に係る発明によると、作動油の温度が所定温度を越えた時には制御バルブの中立時に指令吐出圧が所定のリリーフ圧より低くなるように制御することで、制御バルブをヒートアップした後、指令吐出圧のコントロールだけで余計に作動油をタンクにブリードすることがなくなり、無駄を省くことができる。
請求項5に係る発明によると、ドレン油路を開閉する切替弁を、コントローラで制御バルブの中立時であって作動油の温度が所定温度以下である時にドレン油路を開き、且つ作動油の温度が所定温度を越えた時にドレン油路を閉じるように制御することで、制御バルブの中立時でも制御バルブ内へ作業油を流してヒートアップできる。
【0018】
請求項6に係る発明によると、作動油タンク内の温度センサで検出した作動油の温度に基づいてコントローラでドレン油路の開きを制御することで、制御バルブの温まり具合を油圧システムが自動的に認識でき、運転者を介さずに、冷えた時にはヒートアップし、温まれば無駄なブリードを止めることができる。
請求項7に係る発明によると、エンジン駆動式の可変容量ポンプを有する油圧システムにおける問題として、エンジン始動時には、作動油をタンクへ逃がせず作動油が高圧になってしまう状況下でセルモータに大電流を流してエンジンを始動させていたため、セルモータに電流を供給するバッテリに負荷がかかっていたが、エンジン始動時にドレン油路を開くことで、作動油をタンクに排油してセルモータにかかる負荷を減らすことができ、エンジン始動用の別バッテリ等を設ける必要がないため、バッテリの小型化が図れる。
【0019】
請求項8に係る発明によると、可変容量ポンプのポンプ吐出圧が制御バルブの操作量から算出した予定のブリードオフ面積値に応じた指令吐出圧となるように制御する場合に、制御バルブの中立時で且つ作動油の温度が所定温度以下である時に、吐出回路の作動油を制御バルブを通って作動油タンクに排油させるドレン油路を開いて制御バルブ内に作動油を流すことで、寒冷地等で低温となった制御バルブをヒートアップでき、スプールの動作に支障がなくなる。
【0020】
請求項9に係る発明によると、可変容量ポンプがエンジン駆動式であっても、エンジン始動時にかかるセルモータ及びバッテリの負担をドレン油路を開くことで低減し、バッテリを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る作業機の油圧システムの油圧回路図である。
【図2】油圧システムのブロック図である。
【図3】油圧システムの制御バルブにおけるスプールストロークと各油路の開口面積を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る油圧システム1を示しており、図1における21は、油圧システム1を備えたバックホーやトラクタ等の作業機21であって、作業機21は、機体中にエンジン2、作動油タンク8、バッテリ22等の補器を有している。
図1中の6はアクチュエータ(油圧アクチュエータ)であって、油圧アクチュエータ6は、作業機(バックホー)21の掘削作業装置におけるブーム、アーム及びバケット等を揺動駆動している。
【0023】
図1、2を参照して、作業機21に装備されたいくつかの油圧アクチュエータ6を作動させるための油圧システム1について説明する。
図1に示すように、油圧システム1は、前記エンジン2によって駆動され且つポンプ吐出量Qを調整可能な可変容量ポンプ3と、この可変容量ポンプ3の吐出回路4と、この吐出回路4に制御バルブ5を介して接続された油圧アクチュエータ6と、可変容量ポンプ3から吐き出される作動油のポンプ吐出圧Pを制御するコントローラ7とを有する。
【0024】
さらに油圧システム1は、吐出回路4の作動油を作動油タンク8に排油させるドレン油路9と、エンジン2の始動時にドレン油路9を開く油流動手段10(10A1、10A2、10B、10C)と、作動油の温度を検出する温度センサ14とを備えている。
なお、油流動手段10は、エンジン2の始動時にドレン油路9を開くのであれば、10A1(図1中のA−1)、10A2(同A−2)、10B(同B)、10C(同C)で示された例のいずれでもよく、まずは、油流動手段10が、ドレン油路9の最下流に設けられたリリーフ弁11と、このリリーフ弁11の直前に設けられた切替弁12とを備えている10A1(A−1)の場合を、以下に述べる。
【0025】
前記可変容量ポンプ3は、エンジン2を駆動源とし且つ傾斜板17等のポンプ容量制御機構を備えたアキシャルピストンポンプなどの公知のもので、エンジン2停止時などには、傾斜板17の一端に連結されたポンプバネ23の付勢によって傾斜板17が、所定角(例えば、最大角)となるように構成されている。
なおこれは、急遽バッテリ22からの電流が途絶えた等の非常時でも、可変容量ポンプ3が所定のポンプ吐出量Qを確保して油圧アクチュエータ6に必要な作動油を供給し、油圧システム1をダウンさせないためである。
【0026】
可変容量ポンプ3の傾斜板17他端には、ポンプアクチュエータ18のロッド18aが連結されており、ポンプアクチュエータ18のロッド18aを出退させることで、可変容量ポンプ3のポンプ吐出量Qを調節できる。
前記吐出回路4は、可変容量ポンプ3のポンプ吐出圧Pを制御するポンプ圧力制御部24を備えている。
【0027】
このポンプ圧力制御部24は、ポンプ吐出圧Pが指令吐出圧SPとなるように、可変容量ポンプ3のポンプ吐出量をポンプアクチュエータ18を介してコントロールするものである。ポンプ圧力制御部24の入力は、可変容量ポンプ3の吐出口3aからの作動油、及び上述したコントローラ7からの指令吐出圧SPであり、出力として、ポンプアクチュエータ18へ作動油を供給する。
【0028】
ポンプ圧力制御部24は、ポンプアクチュエータ18への作動油の流れを制御するポンプ制御弁25と、このポンプ制御弁25のスプール25a一端に所定の圧を立てる電磁リリーフ弁26とを備えている。
この電磁リリーフ弁26は、入力電流が上がるとポンプリリーフ圧Prが下がるネガティブ型であって、弁体を油路閉じ方向に付勢する調節バネ26aと、この調節バネ26aの付勢方向と拮抗するように配備された比例ソレノイド26bとを有している。
【0029】
上述のポンプ制御弁25のスプール25aの一端には、可変容量ポンプ3の吐出口3aから直接届く作動油によってポンプ吐出圧P(自己圧)がかかり、スプール25aの他端には、ポンプ制御弁25に備え付けられたバネ25bによる付勢力、及び電磁リリーフ弁26により制御されるポンプリリーフ圧Prがかかっている。
このポンプリリーフ圧Prを電気的に(後述の圧力出力信号D1で)調節することによって、コントローラ7は、ポンプアクチュエータ18への作動油の流入・流出でポンプアクチュエータ18のロッド18aを出退させて傾斜板17を操作でき、可変容量ポンプ3をポンプ吐出圧Pが指令吐出圧SPとなるように制御できると共に、ポンプ吐出量Qの制御も可能となる。
【0030】
なお、ポンプ圧力制御部24は、可変容量ポンプ3の傾斜板17の傾斜角(後述の傾斜入力信号H1)を電気的に検出する傾斜センサ27を有しており、コントローラ7で、可変容量ポンプ3のポンプ吐出量Qが換算される。
前記制御バルブ5は、油圧アクチュエータ6の出退方向を切り換えるセンターオープン型(6ポート)の方向制御弁であって、各方向制御弁は、吐出回路4から供給される作動油の油路がそれぞれのPポートへ分岐しているパラレル型である(図1参照)。
【0031】
制御バルブ5は、スプール15を一端側から付勢する付勢バネ5aと、この付勢バネ5aの付勢方向と拮抗するように配備された比例ソレノイド5bとを有している。
図1に示したように、比例ソレノイド5bは、操作レバー等の操作手段28の操作量s(傾角)に比例して電流が流れることで制御バルブ5内部のスプール15を動かす。スプール15の動かされた量(ストローク)に応じた面積だけ、可変容量ポンプ3から油圧アクチュエータ6の各油室への油路PCが開口し、この開口面積に応じて油圧アクチュエータ6の作動速度が制御される。
【0032】
なお、油圧アクチュエータ6への油路PCは、ドレン油路9が閉じる前に開くように制御バルブ5が構成されている。
また、操作手段28は、操作レバーの傾角などの指令量又は制御バルブ5のスプール15の移動量である制御バルブ5の操作量s(後述の操作入力信号H2)を電気的に検出する操作センサ29を有している。
【0033】
上述したドレン油路9は、可変容量ポンプ3の吐出口3aと作動油タンク8とを連通して、可変容量ポンプ3からの作動油を作動油タンク8に直接排油(ドレン)させる油路であって、各制御バルブ5の中央のポート(センターポート)を貫通するように設けられている。
なお、ドレン油路9は、センターポートに設けられていなくとも、センターポート脇のポートなど、制御バルブ5内部のいずれかを通過していればよい。
【0034】
ドレン油路9の最下流(最下流側の制御バルブ5と作動油タンク8との間)には、吐出回路4からの作動油が所定のリリーフ圧Rを越えた時にドレン油路9を開くリリーフ弁11が設けられ、このリリーフ弁11の直前(リリーフ弁11と最下流側の制御バルブ5との間)には、ドレン油路9を開閉する切替弁12が設けられている。
なお、リリーフ弁11の所定のリリーフ圧Rは、後述の中立指令吐出圧SP’(=(SQ/Kq×B)2)よりも高く設定されており、本実施形態においては、40(Kgf/cm2)である。
【0035】
前記切替弁12は、内部のスプール12aをドレン油路9が閉じる側へ付勢する付勢バネ12bと、この付勢バネ12bの付勢方向と拮抗するように配備されたON/OFFソレノイド12cとを有している。このソレノイド12cにコントローラ7によって電流が流された(後述の開き出力信号D2)時だけ、切替弁12はドレン油路9を開く。
前記温度センサ14は、半導体抵抗温度センサや、白金等の金属測温抵抗体を用いたものであって、作動油タンク8内に設けられている。タンク8内の作動油の温度を電気的に検出して、温度に応じた後述の温度入力信号H6をコントローラ7へ送る。
【0036】
なお、油圧システム1は、可変容量ポンプ3の吐出口3aのポンプ吐出圧P(後述の圧力入力信号H3)を電気的に検出する圧力センサ30を有している。
また、作業機21は、エンジン2の始動時に運転者が使用するエンジンキー等のエンジン始動手段31(始動入力信号H4)を有している。
前記コントローラ7は、A/D変換器、演算器、D/A変換器等で構成され、可変容量ポンプ3の傾斜板17の傾斜角をポテンショメータ、ロータリエンコーダ等から傾斜入力信号H1として入力し、制御バルブ5の操作量sを操作センサ29から操作入力信号H2として入力し、可変容量ポンプ3のポンプ吐出圧Pを圧力センサ30から圧力入力信号H3として入力する。
【0037】
本発明に係るコントローラ7は、上記に加えて、作動油の温度を温度センサ14から温度入力信号H6として入力する。
また、コントローラ7の出力は、ポンプ圧力制御部24のポンプ制御弁25のポンプリリーフ圧Prを圧力出力信号D1とすると共に、切替弁12のスプール12aを開き位置とする開き出力信号D2(又は閉じ位置とする閉じ出力信号D3)も出力する。
【0038】
なお、コントローラ7は、圧力出力信号D1の代わりに、可変容量ポンプ3に対してポンプ吐出量Qを指令する容量出力信号D1’を出力することとしてもよい。
コントローラ7は、以下の3つの制御C1〜C3を行う。
1つは、ドレン油路9閉鎖時において、制御バルブ5の操作量s(スプール15のストローク)に応じて指令吐出圧SPを算出し、必要なポンプ吐出圧Pとなるように可変容量ポンプ3を制御(吐出圧制御C1)することである。
【0039】
その他には、ドレン油路9を開く制御(開閉制御C2)と、ポンプ吐出圧Pを所定値まで上げる制御(昇圧制御C3)であるが、まずは指令吐出圧SPの算出方法を以下に述べる。
指令吐出圧SPは、以下の式1〜4に基づいて決定される。
【0040】
【数1】

【0041】
式1では、まず設定吐出量SQを求めているが、この設定吐出量SQとは、最大ポンプ吐出量Qmaxを上限とする設定値であって、作業機21の走行、ブーム揺動などの使用状態に応じて必要となるアクチュエータ流量Qa及びブリードオフ流量Qbと、生じうる差流量ΔQとの和として計算される。
式1におけるブリードオフ流量Qbは、流量係数Kqと、使用状態に応じて予定されるブリードオフ面積値Bと、その使用状態に応じた指令吐出圧SPとを用いて、式2の関係式で表せる。
【0042】
【数2】

【0043】
ここで、式2中のブリードオフ面積値Bとは、コントローラ7内に予め用意され且つ制御バルブ5の操作量sを入力とする関数によって算出される値であって、この関数の出力値である作動油タンク8に連通する通路(ブリードオフ通路)の開口面積値をいう。
式1における差流量ΔQはほとんど0に近いので無視すると、指令吐出圧SPは、以下の式3によって静的に求めることができる。
【0044】
【数3】

【0045】
式3において、ドレン油路9を閉じている際には作動油がタンク8に排油されないのであるから、回路上のわずかな漏れを無視すれば、可変容量ポンプ3のポンプ吐出量Q(つまり、傾斜板17の傾斜入力信号H1)を、式1、3中のアクチュエータ流量Qaを表す信号として代替できる。
【0046】
【数4】

【0047】
以下で吐出圧制御C1を説明する。なお、式4における右辺中の分子を流量値Xa(=SQ−Q)と、分母をブリードオフ特性値Xb(=Kq×B)とする。
図2のブロック図に示すように、コントローラ7は、流量値Xaを、設定吐出量算出部7aで使用状態に応じて設定した設定吐出量SQから、可変容量ポンプ3からの傾斜入力信号H1をポンプ吐出量換算部7bによって換算したポンプ吐出量Qを算出する。
【0048】
次にコントローラ7は、制御バルブ5の操作量s(操作入力信号H2)に応じた予定のブリードオフ面積値Bに対して、流量係数Kqを乗じてブリードオフ特性値Xbを算出する。
上述した流量値Xaを、ブリードオフ特性値Xbで除し、その値を2乗する演算を行い、指令吐出圧SPを求める(式4参照)。
【0049】
そして、この指令吐出圧SPに基づき、ポンプ吐出圧Pのクローズドループ制御を行う。つまり、指令吐出圧SPとポンプ吐出圧P(圧力入力信号H3)を減算し、指令吐出圧SPとポンプ吐出圧Pとの差に対して位相補償機能を持ったゲイン(G)を掛けた圧力出力信号D1を、ポンプ圧力制御部24へ出力する。
ポンプ圧力制御部24は、圧力出力信号D1に従って電磁リリーフ弁26のポンプリリーフ圧Prを調節して、ポンプアクチュエータ18を介して傾斜板17を操作することによって、可変容量ポンプ3のポンプ吐出圧Pが指令吐出圧SPに収束するように制御する。
【0050】
なお、前記クローズドループ制御を行うことで、式1における差流量ΔQに影響するポンプ配管ボリューム及び漏れ分を補償し、打ち消すことができる。
制御バルブ5の中立時には、コントローラ7へ操作入力信号H2として0が入力される。この場合、コントローラ7で計算されるブリードオフ面積値Bは最大、つまり式4における右辺中の分母であるブリードオフ特性値Xbが、分子である流量値Xaに比べて相対的に大きくなって、指令吐出圧SPの値は小さくなる。
【0051】
実際には、ポンプ吐出量Qは回路のわずかな漏れ分しか必要とせず、アクチュエータ速度(つまり、アクチュエータ流量Qa)もほとんど0と入力されるため、可変容量ポンプ3は、最低限必要な中立指令吐出圧SP’(=(SQ/Kq×B)2)分だけの圧を保てばよく、エネルギーの浪費が低減される。
なお、本実施形態において中立指令吐出圧SP’の値は、ポンプ制御弁25のバネ25bや、電磁リリーフ弁26による圧損分や漏れ分を考慮して、35(Kgf/cm2)となり、この値となるように設定吐出量SQを設定すればよい。
【0052】
また、可変容量ポンプ3に中立指令吐出圧SP’を指令する際、電磁リリーフ弁26がネガティブ型であるため、コントローラ7からの圧力出力信号D1として電流値0の信号を送ればよい。
制御バルブ5を操作位置に移動すると、コントローラ7上のブリードオフ面積値Bが小さくなって、指令吐出圧SPの値はいったん大きくなる。
【0053】
しかし、指令吐出圧SPが油圧アクチュエータ6にかかる負荷圧よりも高くなり、油圧アクチュエータ6のピストンを押して油室へ作動油が流入し始めると、指令吐出圧SPの値を保持すべくポンプ吐出量Q(アクチュエータ流量Qa)が増大して、油圧アクチュエータ6の作動速度が上がる。
ポンプ吐出量Qが増大するということは、式4における右辺中の分子である流量値Xa(=SQ−Q)が、分母であるブリードオフ特性値Xbに比べて相対的に小さくなるから、指令吐出圧SPの値は逆に小さくなる。
【0054】
このように、指令吐出圧SPが上下して徐々に操作量sに見合ったアクチュエータ速度を維持するポンプ吐出圧P、ポンプ吐出量Qに収束して、制御バルブ5の操作量sから算出した予定のブリードオフ面積値Bに応じて必要なだけの指令吐出圧SPとすべく吐出回路4を制御できる。
よって、実際のポンプ吐出量Qは、回路上の漏れを無視すれば、油圧アクチュエータ6に供給された分に限られ、エネルギーの無駄が減る。
【0055】
この吐出圧制御C1と共に、本発明の油圧システム1は、ドレン油路9の開閉制御C2と、ポンプ吐出圧Pの昇圧制御C3とを行っている。
図2のブロック図に示す如く、開閉制御C2及び昇圧制御C3は、寒冷地等にて作業機21を使用する場合に、作動油(及び制御バルブ5)が冷えている際に、両方が行われる。
【0056】
これら制御C2、C3は、制御バルブ5の中立時(つまり、スプール15を摺動させる前)で且つ作動油の温度が所定温度T(例えば、0℃から20℃)以下である時には、操作センサ28から送られる制御バルブ5の操作量sが0である旨の操作入力信号H2及び温度センサ14から送られる温度入力信号H6が、コントローラ7に同時に入力された時に開始される(ヒートアップモード)。
【0057】
また、制御C2、C3を開始する信号のうち温度入力信号H6は、別途、運転者のボタン操作(ヒートアップ開始手段)などによって、コントローラ7に入力されてもよい。
コントローラ7では、入力信号H2、H6が開閉指令部7c及び昇圧指令部7dの両方に入力される。このうち、開閉指令部7cは、油流動手段10A1における切替弁12へ、開き出力信号D2(ON/OFFソレノイド12cを励起させる電流)を送って、切替弁12のスプール12aを開き位置にしてドレン油路9を開く。
【0058】
これと平行して、昇圧指令部7dは、ポンプ吐出圧Pがリリーフ弁11のリリーフ圧R(40(Kgf/cm2))よりも高くなるように、指令吐出圧SPを上げる。
詳しくは、式4に基づき、制御バルブ5中立時における流量値Xa及びブリードオフ特性値Xbから求めた値(中立指令吐出圧SP’=35(Kgf/cm2))に対して、リリーフ圧Rよりも高くなるように昇圧値α(例えば、15(Kgf/cm2))を足す。
【0059】
この足した値(中立指令吐出圧SP’+昇圧値α=50(Kgf/cm2))を、あらたに指令吐出圧SPとし、この指令吐出圧SPとポンプ吐出圧Pとの差に対して位相補償機能を持ったゲイン(G)を掛けた圧力出力信号D1を、ポンプ圧力制御部24へ出力する。
圧力出力信号D1を受けたポンプ圧力制御部24は、電磁リリーフ弁26及びポンプアクチュエータ18を介して、ポンプ吐出圧Pを指令吐出圧SPの50(Kgf/cm2)に昇圧すべく、可変容量ポンプ3のポンプ吐出量Qを上げるが、ドレン油路9から作動油
がタンク8へ漏れるため、いつまでたってもポンプ吐出圧Pを50(Kgf/cm2)に収束させることができない。
【0060】
その結果、例え中立時であっても、制御バルブ5内のドレン油路9を通って作動油が流れ続ける(流動する)こととなり、作動油の流動による摩擦熱で制御バルブ5がスプール操作に先だってヒートアップされ、スプール15の動作への影響を低減できる。
なお、制御バルブ5の温まり具合は、作動油の温度を検知していれば判断がつくため、温度センサ14からの温度入力信号H6をモニタしていればよい。
【0061】
つまり、作動油の温度が所定温度Tを越えた時に、は、コントローラ7は、制御C2、C3を終了(ヒートアップモードを解除)して、吐出圧制御C1のみに戻る。
ヒートアップ解除時に、コントローラ7は、昇圧指令部7dで中立指令吐出圧SP’に昇圧値αを足すことを止め、制御バルブ5中立時の指令吐出圧SPが本来の35(Kgf/cm2)となる。
【0062】
実際のポンプ吐出圧Pもクローズドループ制御によって、35(Kgf/cm2)に近づき、リリーフ弁11のリリーフ圧R40(Kgf/cm)を下回れば、作動油の流動が止まり、無駄に作動油タンク8へ排油されることはない。
ヒートアップ後の制御バルブ5操作時においては、可変容量ポンプ3からアクチュエータ6への油路PC及びアクチュエータ6から作動油タンク8への油路CTが開く前に、切替弁12によってドレン油路9を閉じれば、上述した吐出圧制御C1と同様に指令吐出圧SPをコントロールできる。
【0063】
なお、ドレン油路9を閉じる際には、開閉指令部7cから切替弁12のソレノイド12cへ送っていた開き出力信号D2の出力を中断するだけでよく、中断後は、付勢バネ12bの付勢によって切替弁12のスプール12aが閉じ位置に移動し、ドレン油路9は閉じる。
また、図1中の(A−2)で示す油流動手段10A2は、10A1の変形例であって、ドレン油路9の最下流に設けられたリリーフ弁11と、このリリーフ弁11の直前に設けられた切替弁12とを備えている。
【0064】
油逃がし手段の変形例10A2は、油流動手段10A2における切替弁12を、コントローラ7からの開き出力信号D2がない場合には、付勢バネ12bによってスプール12aが開き位置となるように構成しており、ドレン油路9を閉じる際には、開閉指令部7cから切替弁12のソレノイド12cへ閉じ出力信号D3を出力することとなる。
図1中の(B)で示す油流動手段の変形例10Bは、他の例10A1、10A2と同様に、ドレン油路9の最下流に設けられたリリーフ弁11を備えていると共に、制御バルブ5が、可変容量ポンプ3からアクチュエータ6への油路PC及びアクチュエータ6から作動油タンク8への油路CTが開く前にドレン油路9を閉じるように構成されていることが大きな特徴である(図4参照)。
【0065】
したがって、コントローラ7は、可変容量ポンプ3からアクチュエータ6への油路PC及びアクチュエータ6から作動油タンク8への油路CTが開く前にドレン油路9を閉じる制御をしなくともよく、制御系の簡素化が図れる。
そして、図1中の(C)で示す油流動手段の変形例10Cは、ドレン油路9の最下流に、コントローラ7でドレン油路9の開度を調節可能な電磁比例弁13を備えている。
【0066】
この電磁比例弁13は、制御バルブ5中立時で且つ作動油が所定温度T以下である時には開閉指令部7cからの開き出力信号D2によってドレン油路9を開く。
また、上述の変形例10A1、10A2、10Bの場合と同様に、可変容量ポンプ3からアクチュエータ6への油路PC及びアクチュエータ6から作動油タンク8への油路CTが開く前(操作入力信号H2)、又は作動油が所定温度Tを越えた時(温度入力信号H6)には、開閉指令部7cからの閉じ出力信号D3によってドレン油路9を閉じる。
【0067】
なお、ドレン油路9を閉じる際に、電磁比例弁13を徐々に閉じることによって、油圧システム1内にサージ圧が立つことを防止できる。
また、電磁比例弁13の代わりに、パイロット圧による比例弁や、上述した切替弁12であってもよい。切替弁12の場合、開き出力信号D2及び閉じ出力信号D3を受けるタイミングは、上述した電磁比例弁13と同様である。
【0068】
これまで述べた油流動手段10は、制御バルブ5をヒートアップする時だけでなく、エンジン始動時にドレン油路9を開くこととしてもよい。
これは、従来の油圧システムではエンジン始動させる際に、作動油をタンクへ逃がせず作動油が高圧になり、エンジン始動用のセルモータやバッテリ22に負荷がかかっていたからであり、このバッテリ22等の高負荷には開閉制御C2によって対応することができる。
【0069】
運転手によるエンジン始動時には、エンジン始動手段31が操作されて始動入力信号H4がコントローラ7に入力される。このとき、コントローラ7は、油流動手段10へ開き出力信号D2を送ってドレン油路9を開き、油圧システム1内の作動油が昇圧する前にドレン油路9から作動油が逃げるため、小さい力でエンジン2を始動できる。
したがって、セルモータにかかる負荷を減らすことができるため、バッテリ22の電圧容量を増やしたり、エンジン始動用に別バッテリを設ける必要がなくなり、バッテリ22を小型化できる。
【0070】
なお、図1中の変形例10A1、10A2、10Bのようにドレン油路9にリリーフ弁11を設けていれば、エンジン始動後に切替弁12が開き位置等であっても、制御バルブ5の中立時における中立指令吐出圧SP’がリリーフ弁11のリリーフ圧Rより低いため、作動油が無駄にタンク8に排油されることはない。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。作業機の油圧システム1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0071】
油圧システム1は、作業機21に搭載したエンジン2を駆動源とする可変容量ポンプ3を有していたが、バッテリ22を駆動源とした可変容量ポンプ3を有していてもよい。さらに、作業機21は、バッテリ22を全駆動源とした電気バックホー、電気トラクタ等の電気作業機であってもよい。
可変容量ポンプ3は、油圧によって出退するポンプアクチュエータ18で傾斜板18を調整して容量を変化させる油圧式であるが、エンジン2等からギアなどの機械的な伝達機構で駆動力を伝えて傾斜板18を調整する機械式や、リニア駆動アクチュエータ等の電気的な機構で容量を変化させる電気式などであってもよい。
【0072】
制御バルブ5は、パラレル型であったが、上流側の制御バルブ5のセンターポート出力から、下流側の制御バルブ5のPポートが順次分岐しているタンデム型であってもよい。
このとき、上述した切替弁12は、ドレン油路9における各制御バルブ5間でなければ、吐出回路4の吐出口4aの直後や、リリーフ弁11直後のドレン油路9の最下流に設けてもよい。
【0073】
中立指令吐出圧SP’は35(Kgf/cm2)とし、リリーフ弁11の所定のリリー
フ圧Rは40(Kgf/cm2)としていたが、中立指令吐出圧SP’30(Kgf/cm2)に対してリリーフ圧Rを35(Kgf/cm2)とするなど、リリーフ圧Rが中立指令吐出圧SP’よりも高く設定されていればよい。
【符号の説明】
【0074】
1 作業機の油圧システム
2 エンジン
3 可変容量ポンプ
4 吐出回路
5 制御バルブ
6 アクチュエータ
7 コントローラ
8 作業油タンク
9 ドレン油路
10 油流動手段
11 リリーフ弁
12 切替弁
13 電磁比例弁
14 温度センサ
Q 可変容量ポンプのポンプ吐出量
P 可変容量ポンプのポンプ吐出圧
s 制御バルブの操作量
B 予定のブリードオフ面積値
SP 指令吐出圧
PC 可変容量ポンプからアクチュエータへの油路
CT アクチュエータから作動油タンクへの油路
T 所定温度
R 所定のリリーフ圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ吐出量(Q)を調整可能な可変容量ポンプ(3)の吐出回路(4)と、この吐出回路(4)に制御バルブ(5)を介して接続されたアクチュエータ(6)と、前記可変容量ポンプ(3)から吐き出される作動油のポンプ吐出圧(P)を制御するコントローラ(7)とを備え、
このコントローラ(7)は、前記制御バルブ(5)の操作量(s)から算出した予定のブリードオフ面積値(B)に応じた指令吐出圧(SP)とすべく吐出回路(4)を制御する作業機の油圧システムであって、
前記吐出回路(4)の作動油を制御バルブ(5)を通って作動油タンク(8)に排油させるドレン油路(9)を有し、
このドレン油路(9)に、前記制御バルブ(5)の中立時で且つ作動油の温度が所定温度(T)以下である時にドレン油路(9)を開いて制御バルブ(5)内で作動油を流す油流動手段(10)を備えていることを特徴とする作業機の油圧システム。
【請求項2】
前記油流動手段(10)は、前記ドレン油路(9)の最下流に設けられていて前記吐出回路(4)の作動油が所定のリリーフ圧(R)を越えた時にドレン油路(9)を開くリリーフ弁(11)と、前記ドレン油路(9)を開閉する切替弁(12)とを有していると共に、前記コントローラ(7)で吐出回路(4)を制御バルブ(5)の中立時に指令吐出圧(SP)が所定のリリーフ圧(R)より高くなるように制御し、且つ前記コントローラ(7)で切替弁(12)を可変容量ポンプ(3)からアクチュエータ(6)への油路(PC)及びアクチュエータ(6)から作動油タンク(8)への油路(CT)が開く前にドレン油路(9)を閉じるように制御していることを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
前記制御バルブ(5)は、前記可変容量ポンプ(3)からアクチュエータ(6)への油路(PC)及びアクチュエータ(6)から作動油タンク(8)への油路(CT)が開く前に前記ドレン油路(9)を閉じるように構成され、
前記油流動手段(10)は、前記ドレン油路(9)の最下流に設けられていて前記吐出回路(4)の作動油が所定のリリーフ圧(R)を越えた時にドレン油路(9)を開くリリーフ弁(11)を有していると共に、前記コントローラ(7)で吐出回路(4)を制御バルブ(5)の中立時に指令吐出圧(SP)が所定のリリーフ圧(R)より高くなるように制御していることを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記油流動手段(10)は、前記作動油の温度が所定温度(T)を越えた時にはコントローラ(7)で吐出回路(4)を制御バルブ(5)の中立時に指令吐出圧(SP)が所定のリリーフ圧(R)より低くなるように制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の作業機の油圧システム。
【請求項5】
前記油流動手段(10)は、前記ドレン油路(9)を開閉する切替弁(12)を有し、この切替弁(12)をコントローラ(7)で制御バルブ(5)の中立時であって作動油の温度が所定温度(T)以下である時にドレン油路(9)を開き、且つ作動油の温度が所定温度(T)を越えた時にドレン油路(9)を閉じるように制御していることを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項6】
前記油流動手段(10)は、前記作動油タンク(8)内に作動油の温度を検出する温度センサ(14)を有すると共に、この温度センサ(14)で検出した作動油の温度に基づいてコントローラ(7)でドレン油路(9)の開きを制御していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項7】
前記可変容量ポンプ(3)は、エンジン(2)駆動式であって、
前記油流動手段(10)は、前記エンジン(2)の始動時にもドレン油路(9)を開くことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項8】
ポンプ吐出量(Q)を調整可能な可変容量ポンプ(3)を有していて制御バルブ(5)を介してアクチュエータ(6)が接続された吐出回路(4)を、前記可変容量ポンプ(3)のポンプ吐出圧(P)が制御バルブ(5)の操作量(s)から算出した予定のブリードオフ面積値(B)に応じた指令吐出圧(SP)となるように制御する作業機の油圧制御方法であって、
前記制御バルブ(5)の中立時で且つ作動油の温度が所定温度(T)以下である時に、前記吐出回路(4)の作動油を制御バルブ(5)を通って作動油タンク(8)に排油させるドレン油路(9)を開いて制御バルブ(5)内に作動油を流すことを特徴とする作業機の油圧制御方法。
【請求項9】
前記可変容量ポンプ(3)は、エンジン(2)駆動式であって、
前記エンジン(2)の始動時にもドレン油路(9)を開くことを特徴とする請求項8に記載の作業機の油圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−137156(P2012−137156A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290706(P2010−290706)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】