説明

作業機の燃料残量表示装置

【課題】燃料残量表示管が破損しても、外部に流出する燃料を抑えることが可能となる作業機の燃料残量表示装置を提供する。
【解決手段】燃料タンクに上下に向けて添設される燃料残量表示管7を、透明の内管8とその内管8の外側に空気層9を介して嵌合される透明の外管10とにより2重管構造とする。燃料残量表示管7の下端、上端をそれぞれ燃料タンク1の上部を、燃料タンク1の上部、下部に設ける上部接続管2と下部接続管3に接続する。下部接続管3に燃料タンク1と内管8とを連通、遮断可能な切換弁6を設ける。圧力センサ15により空気層の圧力低下が検出された際に切換弁6を連通位置から遮断位置に切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルや高所作業車等の作業機の燃料タンクに残る燃料の量を表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機においては、車体フレーム上にエンジン用の燃料タンクを設置し、エンジンにより駆動される油圧ポンプを油圧アクチュエータの駆動流体として用いる。このような作業機の燃料タンクに残る燃料の量を直視により知るため、図3に示すように、燃料タンク1の上部と下部に、燃料タンク1の内部に連通する接続管2,3を設け、これらの接続管2,3間に、透明材料により製造された燃料残量表示管4を設け、この表示管4に現れる液面を直視することにより、燃料タンク1内の燃料残量が分かるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−234351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示管4は作業機の外部から目視できるような位置に配置されるため、油圧ショベル等のように屋外で走行、旋回動作等を行ないながら作業を行なう作業機においては、作業中に表示管4に何らかの物体が衝突したり引っ掛かった場合、破損部4aを生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、燃料残量表示管が破損しても、外部に流出する燃料を抑えることが可能となる作業機の燃料残量表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の作業機の燃料残量表示装置は、
燃料タンクに上下に向けて添設され、透明の内管とその内管の外側に空気層を介して嵌合される透明の外管とからなる2重管構造の燃料残量表示管と、
前記燃料残量表示管の下端、上端をそれぞれ前記燃料タンクの下部、上部に接続して前記内管を前記燃料タンクに連通させる下部接続管および上部接続管と、
前記下部接続管に設けられ、前記燃料タンクと前記内管とを連通、遮断可能な切換弁と、
前記空気層の空気を加圧する加圧装置と、
前記空気層の空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより前記空気層の圧力低下が検出された際に前記切換弁を連通位置から遮断位置に切換える切換弁とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の作業機の燃料残量表示装置は、請求項1に記載の作業機の燃料残量表示装置において、
前記加圧装置として作業機のエンジンにより駆動されるかまたはエンジンにより駆動される油圧ポンプの吐出油を作動流体とするコンプレッサを用いたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の作業機の燃料残量表示装置は、請求項1または2に記載の作業機の燃料残量表示装置において、
前記燃料残量表示管の下端と前記下部接続管との間に、前記空気層への圧搾空気導入用の接続具を備え、
前記接続具は、前記加圧装置に接続する接続口を有する導入管部と、前記導入管部に直交し、前記内管の外径より大きい内径を有する表示管接続管部とを有し、
前記表示管接続管部を可撓性ホースでなる前記内管に外嵌すると共に、前記表示管接続管部の一端に可撓性ホースでなる前記外管を外嵌して固定し、かつ前記表示管接続管部の他端に下部接続管連絡用の可撓性ホースの一端を外嵌して固定し、
前記連絡用可撓性ホースの他端を、前記下部接続管に接続した内管の端部に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、燃料残量表示管を内管、外管からなる2重管として内管、外管との間に空気層を形成し、この空気層の空気を加圧装置により加圧すると共に、空気層の空気圧力を圧力センサで監視し、燃料残量表示管が破損して空気層の圧力が低下すると、燃料タンクの下部接続管に設けた切換弁を遮断位置に切換えるように構成したので、燃料残量表示管が破損しても、燃料タンクから外部に流出する燃料を最初の流出分だけの最小限に抑えることができる。
【0010】
また、燃料タンクの上下に接続管を有する従来の1重管構造の燃料残量表示管の構造を用い、従来の1重管を内管として用いることによって、本発明の2重管構造に変更することが可能である。
【0011】
請求項2の発明によれば、エンジンが停止することにより、コンプレッサが停止した状態では、内管と外管との間の空気層の空気の圧力が低下するので、切換弁が遮断位置となる。このため、故意に燃料残量表示管を破損させても、燃料残量表示管を通して燃料を流出させることはできず、燃料残量表示管を介しての燃料の盗難を防止することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、連絡用可撓性ホースが万一破損した場合であっても、この破損により空気層の圧力が低下するため、切換弁が遮断位置となり、燃料の流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の燃料残量表示装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】従来の燃料残量表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の燃料残量表示装置の一実施の形態を示す断面図である。1は燃料5を入れた燃料タンクであり、2は燃料タンク1の上部に燃料タンク1の内部に連通して設けた上部接続管である。3は燃料タンク1の下部に設けた下部接続管、6はこの下部接続管3に設けた切換弁である。この例の切換弁6はソレノイド6aを有する電磁弁でなる。
【0015】
7は燃料タンク1の側部に上下に向けて添設された燃料残量表示管である。この燃料残量表示管7は、透明の可撓性ホースでなる内管8と、その内管8の外側に空気層9を介して嵌合される透明の可撓性ホースでなる外管10とにより構成される2重管構造を有する。燃料残量表示管7の上端は、内管8の上端を上部接続管2に外嵌し、外管10と共に締結具11により固定して取付ける。
【0016】
13は空気層9に圧搾空気を送り込むためのコンプレッサであり、これは作業機の車体に搭載するエンジン(図示せず)により駆動されるか、あるいはエンジンによって駆動される油圧ポンプ(図示せず)から供給される作動油により駆動されるものである。このコンプレッサ13は、例えば作業機の掃除等の補助的作業に用いるものを流用するか、あるいはこの燃料残量表示装置のために設けるものである。
【0017】
14はコンプレッサ13からの圧搾空気を空気層9に導入するためのT字形の接続具である。15は空気層9の空気圧を検出し、かつスイッチ機能を有する圧力センサである。この圧力センサ15は、空気層9の空気圧力が一定値以上であればオンとなって、作業機の車体に搭載するバッテリ16からの回路を閉じ、これにより電磁弁でなる切換弁6のソレノイドに電流を流して切換弁6を右側の連通位置とする。反対に空気層9の空気圧力が一定値未満になると圧力センサ15はオフとなり、バッテリ16から切換弁6のソレノイドへの通電が停止し、切換弁6は図示の左側位置、すなわち遮断位置に切換わり、下部接続管3と燃料タンク1との間が遮断される。
【0018】
図2は燃料残量表示管7を下部接続管3に接続する部分を拡大して示す断面図である。前記接続具14は、コンプレッサ13の吐出管18に接続する接続口14aを有する導入管部14bと、この導入管部14bに直交し、内管8の外径より大きい内径を有する表示管接続管部14cとを有する。そして表示管接続管部14cを可撓性ホースでなる内管8に外嵌すると共に、表示管接続管部14cの一端に可撓性ホースでなる外管10を外嵌し、この外管10を表示管接続管部14cに締結具19により固定する。また、表示管接続管部14cの他端に下部接続管3に連絡するための可撓性ホース20の一端を外嵌し、締結具21により固定する。そしてこの連絡用可撓性ホース20の他端を、下部接続管3に外嵌接続した内管8の端部と共に、締結具22により固定する。この構造により、連絡用可撓性ホース20と内管8との間にも空気層9が形成される。
【0019】
この実施の形態においては、燃料残量表示管7を内管8と外管10とからなる2重管として内管8と外管10との間に空気層9を形成し、この空気層の空気をコンプレッサ13により加圧すると共に、空気層9の空気圧力を圧力センサ15で監視し、空気圧力が低下すると燃料残量表示管7が破損したものとして、燃料タンク1の下部接続管3に設けた切換弁6を遮断位置に切換えるように構成したので、燃料残量表示管7が内管8まで破損しても、外部に流出する燃料を最初の流出分だけの最小限に抑えることができる。
【0020】
また、燃料タンク1の上下に接続管を有する従来の1重管構造の燃料残量表示管の構造を用い、従来の1重管を内管8として用いることによって、本発明の2重管構造に変更することが可能である。
【0021】
本発明は、空気層9の空気を加圧する装置として例えばアキュムレータを用いることができる。しかしながら、上記実施の形態においては、加圧装置としてコンプレッサ13を用いたので、作業機の車体に搭載したエンジンが停止することにより、コンプレッサが停止し、このコンプレッサが停止した状態では、内管8と外管10との間の空気層9の空気圧力が低下するので、切換弁6が遮断位置となる。このため、故意に燃料残量表示管7を破損させても、燃料残量表示管7を通して燃料を流出させることはできず、燃料残量表示管7を介しての燃料の盗難を防止することができる。
【0022】
また、上記実施の形態においては、連絡用可撓性ホース20と内管8との間に空気層9が形成される構成であるため、連絡用可撓性ホース20が万一破損した場合であっても、この破損により空気層9の圧力が低下するため、切換弁6が遮断位置となり、燃料の流出を防止することができる。
【0023】
本発明において、切換弁6としては空圧操作式または油圧操作式のものを用いることができる。そして、空圧操作式または油圧操作式のものを用いる場合も、エンジン停止により切換弁6が遮断位置に切換わる構成を採用することにより、前記実施の形態と同様に燃料残量表示管7からの燃料の盗難を防止することができる。
【0024】
本発明は、油圧ショベルや高所作業車のみならず、油圧ショベルのアーム先端に解体用破砕具やブレーカ等の作業具を取付けた各種作業機に用いることができる。また、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1:燃料タンク、2:上部接続管、3:下部接続管、5:燃料、6:切換弁、7:燃料残量表示管、8:内管、9:空気層、10:外管、11:締結具、13:コンプレッサ、14:接続具、14a:接続口、14b:導入管部、14c:表示管接続管部、15:圧力センサ、16:バッテリ、18:吐出管、19:締結具、20:連絡用可撓性ホース、21,22:締結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに上下に向けて添設され、透明の内管とその内管の外側に空気層を介して嵌合される透明の外管とからなる2重管構造の燃料残量表示管と、
前記燃料残量表示管の下端、上端をそれぞれ前記燃料タンクの下部、上部に接続して前記内管を前記燃料タンクに連通させる下部接続管および上部接続管と、
前記下部接続管に設けられ、前記燃料タンクと前記内管とを連通、遮断可能な切換弁と、
前記空気層の空気を加圧する加圧装置と、
前記空気層の空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより前記空気層の圧力低下が検出された際に前記切換弁を連通位置から遮断位置に切換える切換弁とを備えたことを特徴とする作業機の燃料残量表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機の燃料残量表示装置において、
前記加圧装置として作業機のエンジンにより駆動されるかまたはエンジンにより駆動される油圧ポンプの吐出油を作動流体とするコンプレッサを用いたことを特徴とする作業機の燃料残量表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機の燃料残量表示装置において、
前記燃料タンクの下方に、前記空気層への圧搾空気導入用のT字形の接続具を備え、
前記接続具は、前記加圧装置に接続する接続口を有する導入管部と、前記導入管部に直交し、前記内管の外径より大きい内径を有する表示管接続管部とを有し、
前記表示管接続管部を可撓性ホースでなる前記内管に外嵌すると共に、前記表示管接続管部の一端に可撓性ホースでなる前記外管を外嵌して固定し、かつ前記表示管接続管部の他端に下部接続管連絡用の可撓性ホースの一端を外嵌して固定し、
前記連絡用可撓性ホースの他端を、前記下部接続管に接続した内管の端部に固定したことを特徴とする作業機の作業機の燃料残量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225305(P2012−225305A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95151(P2011−95151)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】