説明

作業車のカバー取付構造

【課題】機体側の取付対象箇所に対して垂れカバーを着脱する際に、垂れカバーの着脱操作を簡便に行うことのできる作業車のカバー取付構造を提供する。
【解決手段】垂れカバー40側に取付用の係止孔を形成するとともに、取付対象箇所Aに係止突起34を備え、係止突起34を、取付対象箇所Aに固定される軸部よりも取付対象箇所Aから離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成するとともに、係止突起34の頭部は、弾性変形していない自由状態における係止孔の内径よりも大きく、かつ、拡径方向に弾性変形させた係止孔を通過可能な大きさの外径に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体側の取付対象箇所に対して上端側が止着され、下端側が垂下された弾性材料製の垂れカバーを装着した作業車のカバー取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、機体側の取付対象箇所に対して上端側が止着され、下端側が垂下された弾性材料製の垂れカバーを装着した作業車のカバー取付構造としては、従来より下記[1]に記載のものが知られている。
[1] 運転座席の横側方箇所に設けられたサイドコラムの右側面、及び左側面に対して、ゴム板からなる垂れカバーの上端側を止着したもの(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−178244号(段落「0020」、図2、図4、図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の構造のものでは、機体側の取付対象箇所となるサイドコラムに対して垂れカバーを取り付けることは開示されているが、その垂れカバーとサイドコラムとの連結構造は開示されていず、一般的な連結手段、つまり、垂れカバーにボルトの挿通孔を形成し、その挿通孔にボルトを通してサイドコラム側にボルト連結していたものと思われる。
【0005】
このような構造であると、機体側の取付対象箇所となるサイドコラムに対して垂れカバーを着脱する際に、ボルトの着脱操作が必要であり、ボルト着脱のためには工具を用意しなければならず、また、個々のボルトを着脱するための労力を要し、垂れカバーの着脱に際しての作業性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、機体側の取付対象箇所に対して垂れカバーを着脱する際に、ボルトの着脱操作を必要とせずに垂れカバーの着脱操作を簡便に行うことのできる作業車のカバー取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために講じた本発明における作業機の操作レバーガイド装置の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
機体側の取付対象箇所に対して上端側が止着され、下端側が垂下された弾性材料製の垂れカバーを装着した作業車のカバー取付構造であって、
前記垂れカバー側に取付用の係止孔を形成するとともに、前記取付対象箇所に係止突起を備え、
前記係止突起を、取付対象箇所に固定される軸部よりも取付対象箇所から離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成するとともに、
前記係止突起の頭部は、弾性変形していない自由状態における前記係止孔の内径よりも大きく、かつ、拡径方向に弾性変形させた前記係止孔を通過可能な大きさの外径に形成されていることを特徴とする。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、弾性材料で構成した垂れカバーに係止孔を形成し、その係止孔に対応する係止突起を、取付対象箇所に固定される軸部よりも取付対象箇所から離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成してある。係止突起の頭部は、自由状態における係止孔の内径よりも大きく、かつ、拡径方向に弾性変形させた係止孔を通過可能な大きさの外径に形成してある。
そして係止孔に係止突起を挿入する際には、弾性材料製の垂れカバーの係止孔存在箇所を係止孔の径方向に引き延ばすように弾性変形させて拡径し、その状態で係止突起の頭部を通過させて係止孔が係止突起の軸部に外嵌した状態とする。
その結果、垂れカバーの係止孔に対して、係止突起の頭部が通過可能となるような拡径方向への力が作用しない限り、係止孔に係止突起が挿入された止着状態が維持されることになる。
【0009】
したがって、係止突起を着脱可能な構造にして、専用の工具を用いて係止突起の着脱操作を行うような煩わしさを省いて、垂れカバーの着脱操作を簡便に行い得る利点がある。 また、そのカバー取付構造は、垂れカバー自体が弾性変形可能である機能を活かし、その垂れカバーに形成される係止孔と係止突起の頭部との径寸法を工夫するだけの簡単な構成とし得る利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、係止突起は、頭部の上下方向の外径が軸部の外径よりも大きく、頭部の水平方向での外径が軸部の外径と同径、またはぼぼ同径に形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、係止突起の頭部が、水平方向での外径は軸部の外径と同径、またはほぼ同径であることは、係止孔が軸部と同程度の大きさであれば、係止孔を水平方向には拡径する必要がないので、垂れカバーを上下方向に引っ張り操作するだけで、係止孔に対して係止突起の係脱操作を行うことができる。
したがって、例えば垂れカバーの上縁に沿う方向で複数の係合箇所が存在する場合に、特に、垂れカバーの上縁に沿う方向の端部ではなく中間に形成されている係止孔を係止突起に係合させる際に、垂れカバーを水平方向では引っ張り操作し難い状態での作業を余儀なくされるが、その際に、係止孔の上部を係止突起の上部側に係止させた状態にして、垂れカバーの下端側を下方へ引っ張り操作を行うだけで、係止孔は上下方向に引き延ばされるので係止突起の頭部を挿通させることができ、垂れカバーの係脱操作の簡便化を図り得る利点がある。
【0012】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、機体側の取付対象箇所が合成樹脂材料の成型品によって構成してあり、係止突起は機体側の取付対象箇所の成型加工に伴って一体に成形され、かつ、その係止突起の軸部が径方向内方側へ凹入する凹溝部分を備えた断面形状に形成されたものであることを特徴とする。
【0013】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、係止突起は、合成樹脂材料の成型品によって構成された機体側の取付対象箇所の成型加工に伴って一体に成形されたものであるため、機体側の取付対象箇所に対して設ける必要のある係止突起を別途用意する必要がない。
したがって、品点数の削減を図り得るとともに、その別部品としての係止突起の着脱作業も不要となり、作業性の改善も期待できる利点がある。
【0014】
そして、機体側の取付対象箇所の成型加工に伴って一体に成形される係止突起は、その軸部が径方向内方側へ凹入する凹溝部分を備えた断面形状に形成されたものであるから、その軸部が、一体に成形される他の取付対象箇所と比べて極端に厚肉になることを回避できる。
したがって、成形時にヒケが生じて軸部が変形するような不具合もなく、また全体の軽量化にも有効になる利点がある。
【0015】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、自由状態における係止孔の内径は、係止突起の軸部の径と同径、もしくは小径に形成されていることを特徴とする。
【0016】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、自由状態における係止孔の内径は、係止突起の軸部の径と同径、もしくは小径に形成されているので、この係止孔の内径が係止突起の軸部の径よりも大きい構造のものに比べて、より一層外れにくくなり、垂れカバーの使用中に係止孔が係止突起から外れて脱落してしまうような不具合を回避し易いという利点がある。
【0017】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、機体側の取付対象箇所に対して上端側が止着され、下端側が垂下された弾性材料製の垂れカバーを装着した作業車のカバー取付構造であって、
前記垂れカバー側に取付用の係止孔を形成するとともに、前記取付対象箇所に係止突起を備え、
前記係止突起を、取付対象箇所に固定される軸部よりも取付対象箇所から離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成するとともに、
前記係止孔を一方向に長いスリット状に形成し、
前記係止突起の頭部は、自由状態における前記係止孔のスリットを横切る方向の幅よりも大きい円形状に形成してあり、前記係止孔のスリットの長手方向の幅は、係止孔を拡開方向に弾性変形させることによって前記係止突起の頭部を通過させることが可能な大きさに形成されていることを特徴とする。
【0018】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、弾性材料で構成した垂れカバーに係止孔を形成し、その係止孔に対応する係止突起を、取付対象箇所に固定される軸部よりも取付対象箇所から離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成してある。係止突起の頭部は、自由状態における係止孔のスリットを横切る方向の幅よりも大きい円形状に形成してあり、係止孔のスリットの長手方向の幅は、係止孔を拡開する方向に弾性変形させることによって係止突起の頭部を通過させることが可能な大きさに形成されている。
そして係止孔に係止突起を挿入する際には、弾性材料製の垂れカバーの係止孔存在箇所を係止孔のスリットを横切る方向、あるいはスリットの長手方向に引き延ばすように弾性変形させて拡開し、その状態で係止突起の頭部を通過させて係止孔が係止突起の軸部に外嵌した状態とする。
その結果、垂れカバーに前述したような、係止孔を拡開する方向に引き延ばすような外力が加えられていない自由状態では、係止孔のスリットを横切る方向の幅は係止突起の頭部の径よりも小さいので、前述のような拡開方向への外力が作用しない限り、係止孔に係止突起が挿入された止着状態が維持されることになる。
【0019】
したがって、係止突起を着脱可能な構造にして、専用の工具を用いて係止突起の着脱操作を行うような煩わしさを省いて、垂れカバーの着脱操作を簡便に行い得る利点がある。 また、そのカバー取付構造は、垂れカバー自体が弾性変形可能である機能を活かし、その垂れカバーに形成される係止孔と係止突起の頭部との径寸法を工夫するだけの簡単な構成とし得る利点がある。
【0020】
〔解決手段6〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、係止孔及び係止突起は垂れカバーの上縁に沿って複数箇所に形成してあり、隣り合う位置の係止突起同士の間隔を、垂れカバーにおける隣り合う位置の係止孔同士の自由状態での間隔よりも大きく設定してあることを特徴とする。
【0021】
〔解決手段6にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段6で示した構成によると、隣り合う位置の係止突起同士の間隔を、垂れカバーにおける隣り合う位置の係止孔同士の自由状態での間隔よりも大きく設定してあるので、この垂れカバーの係止孔の複数個を、複数箇所の係止突起に止着するには、係止孔同士の間隔が広がるように垂れカバーを引っ張って弾性変形させる必要がある。
このため、引っ張られて係止孔同士の間隔を広げて係止突起に止着された垂れカバーは、前記引っ張り作用がなくなると、係止孔同士の間隔を自由状態での間隔となるように弾性復元しようとする作用が働いた状態で止着される。
したがって、垂れカバーには、係止突起に止着された状態で、ある程度の弾性復元力が作用しているおり、この状態を維持して止着された垂れカバーは、より一層、係止突起から外れ難い状態となり、垂れカバーの使用中に係止孔が係止突起から外れて脱落してしまうような不具合を回避し易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの前部を示す平面図である。
【図3】コンバインの刈取搬送装置部分を省略して前部を示す斜視図である。
【図4】操縦パネル部分を示す平面図である。
【図5】コンバインの刈取搬送装置部分を省略して前部を示す正面図である。
【図6】係止突起部分を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図7】垂れカバーを示す正面図である。
【図8】垂れカバーの係止孔部分を示す正面図である。
【図9】係止孔、及び係止突起の別実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るカバー取付構造を適用した作業車としてのコンバインに関して、図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構造〕
図1にコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L、1Rを機体フレーム10の下部に備え、前記走行装置1L、1Rの駆動により走行機体2が走行自在に構成されている。
前記走行機体2の前部に、昇降操作自在でかつ圃場の植立穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を後方に搬送する刈取搬送装置3が設けられ、機体フレーム10上に、前記刈取搬送装置3で刈り取られた穀稈を受け取って脱穀および選別処理する脱穀装置4と、脱穀装置4で脱穀および選別処理することにより得られた穀粒を貯留する穀粒タンク5とが搭載されるとともに、穀粒タンク5の前方箇所の走行機体2上に搭乗運転部20が形成されている。
【0024】
刈取搬送装置3は、刈取り部フレーム3aが昇降用の油圧シリンダ7によって走行機体2に対して上下に揺動操作されることにより、刈取搬送装置3の前端部に位置する複数の分草具3bが地面付近に下降した下降作業状態と、分草具3bが地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降作動するように構成されている。そして、刈取搬送装置3を下降作業状態にして走行機体2を走行させると、刈取搬送装置3が、刈り取り対象の複数の植付け条に位置する植立穀稈を対応する分草具3bによって隣接する植付け条の植立穀稈と分草し、各分草具3bからの植立穀稈を対応した引起し装置3cによって引起し処理するとともに一つのバリカン形の刈取り装置3dによって刈取り処理し、刈取り装置3dからの刈取り穀稈を搬送装置3eによって後方に搬送して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4Aの始端部に供給するように構成されている。
【0025】
脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン4Aによって刈取り穀稈の株元側を挟持して後方に搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給し、刈取り穀稈を回動する扱胴(図示せず)によって脱穀処理するように構成されている。又、脱穀装置4から搬出された脱穀粒を穀粒タンク5に回収して貯留し、穀粒タンク5に貯留された脱穀粒はスクリューコンベア式の穀粒排出装置5aによって外部に排出するように構成されている。又、脱穀処理されたあとの排ワラは機体後方に搬送されて排ワラ処理装置6により細断処理された後に機体後方から排出される。
【0026】
〔搭乗運転部の周辺構造〕
走行機体2の前部では、前記穀粒タンク5よりも前方側での右横側箇所に搭乗運転部20が備えられ、前記脱穀装置4の前方側で前記搭乗運転部20の左横側部に位置する状態で前記刈取搬送装置3が配設されている。
前記搭乗運転部20の下方側には原動部11が備えられている。原動部11には、図2に示すように、搭乗運転部20の搭乗部ステップ21a及び座席支持台21bを構成するフロアーパネル21の下方側に、エンジン12、冷却用のラジエータ13、及び冷却風生起用のファン14等が配設されている。
【0027】
図2乃至図4に示すように、搭乗運転部20では、フロアーパネル21の座席支持台21bの上側に運転座席22が配設され、その運転座席22の左横側部、及び運転座席22の前方側にわたって操縦部パネル30が立設されている。
前記操縦部パネル30は、運転座席22の左横側部に位置するサイドパネル31と、運転座席22の前方側に位置するフロントパネル32とを備えている。
【0028】
サイドパネル31には、刈取搬送装置3の作動速度を高低変更可能な刈取変速レバー23、走行機体2の走行速度を変速操作自在な主変速レバー24、走行速度が刈取作業に適した低速走行と路上走行に適した高速との2段階に変速操作可能な副変速レバー25などの各種操作レバーが備えられている。また、サイドパネル31の前端部近くには、エンジン回転数や燃料残量など、各種の情報を表示するための液晶表示装置26、及び、走行機体2が前進走行状態であるときに、単一の押しボタンによる押し操作で、エンジン12を定格回転にして、脱穀クラッチ(図外)ならびに刈取クラッチ(図外)を入り操作状態に切り換えるための統合スイッチ27等が設けられている。
【0029】
フロントパネル32には、走行機体2の操向操作を行うためのステアリングレバー28や、走行機体2が中立位置で停止している状態でも、押しボタンスイッチの押し操作で、刈取クラッチ(図外)を入り状態にして、刈取搬送装置3を所定速度で作動させるための掻き込みスイッチ29等が備えられている。
【0030】
前記サイドパネル31は、前記フロワーパネル21から立設されている金属製の支持枠21A(図5参照)の上側に合成樹脂材料製の一体成型品で構成された上部パネル体33をボルト止めして固定することにより構成したものであり、この上部パネル体33や、その近接箇所にある脱穀部カバー部材4Bが後述する垂れカバー40を装着するための機体側の取付対象箇所Aに相当する。
前記脱穀部カバー部材4Bは、前記搭乗運転部20の後部と脱穀装置4の前方側箇所との間の隙間を覆う部材であり、前記搭乗運転部20側から扱き口前方の入り口プレート4aとの間にわたって設けられている。この脱穀部カバー部材4Bの機体前後方向での前端部には、機体前方側ほど前記搭乗運転部20側に位置する傾斜部4BAが形成されている。
また、前記上部パネル体33の前部は、機体左右方向で刈取搬送装置3に対向する側の側縁部分が、機体前後方向での前方側に至るほど機体左右方向での反対側に至るように湾曲した側縁形状に形成されている。
前記垂れカバー40は、前記上部パネル体33の湾曲した前部から前記脱穀部カバー部材4Bの傾斜部4BAにわたって設けてあり、かつ、この垂れカバー40によって覆われる上下方向での範囲は、前記上部パネル体33や脱穀部カバー部材4Bで構成される取付対象箇所Aから、前記搭乗運転部20の下方側に配備される原動部11の下端部に至るように、その垂れカバー40の上下方向での高さ寸法を設定してある。
【0031】
〔カバー取付構造〕
図3乃至図5に示すように、前記上部パネル体33は、その下端縁近くの4箇所に、運転座席22が存在する側とは反対の刈取搬送装置3が存在する側へ向けて突出する係止突起34を、この上部パネル体33の成型加工時に一体成型することによって設けてある。 この係止突起34は、図6に示すように、突出先端側に頭部36を備え、基端側の軸部35が上部パネル体33に一体化されているものであるが、頭部36は単なる円形ではなく、上下方向に長い楕円状に形成され、軸部35の外径dp0に比べて、水平方向では頭部36も同径もしくはほぼ同径の外径dp1に形成され、上下方向ではかなり大きい(1.4〜3倍程度)外径dp2に形成されている。
【0032】
より詳細には、図6(a)に示すように、頭部36は、上端部と下端部が曲率半径の小さい部分円弧状の外周縁36aに形成され、上下方向の中間部が軸部35の外周と同様な曲率半径の円弧状外周縁36bを備え、かつ、前記上下の曲率半径の小さい部分円弧状の外周縁36aと、前記軸部35の外周と同様な曲率半径の円弧状外周縁36bとの間を直線的な外周縁36cによって繋ぐことにより、上下の端部側ほど先細りとなるテーパー部分を有している変形した楕円形状に形成されている。
上記の直線的な外周縁36cが左右に存在することで、左右の直線的な外周縁36c同士で形成されるテーパー部分が、この頭部36に後述する垂れカバー40の係止孔41を係入して垂れカバー40を下方へ引き操作したとき、係止孔41を楔作用で拡径方向に広げる役割を果たす。
【0033】
そして、前記軸部35に相当する箇所の下半側には、図6(a),(b)に示すように、軸部35の径方向での内方側へ凹入して、下向きに開放された凹溝部分35aを形成してある。
この凹溝部分35aを除いた軸部35の肉厚は、上部パネル体33の他の部位の肉厚と大差の無い肉厚となっており、軸部35が存在することで上部パネル体33の一部に極端に肉厚の大きい部分を生じさせないようにしている。
すなわち、軸部35としては、垂れカバー40を係止して支持するためにある程度の大きさの軸径が必要であるが、そのための軸径を比較的大きく確保しながらも、一体成型加工させる上部パネル体33の他の部分との肉厚の差が極端に大きくなることを、前記凹溝部分35aを設けることによって避けられるようにしてある。これは、部分的に肉厚が大きいことに起因してヒケが発生することを抑制するためのものである。
【0034】
図7及び図8に示すように、上記係止突起34に対して係脱される側の垂れカバー40は、その垂れカバー40の板面に交差する方向で屈曲変形可能であるとともに、その板面に沿う方向で体積弾性変形可能なゴム製の板材で構成され、その上端部に前記係止突起34を係入させるための係止孔41が形成されている。
この係止孔41は、垂れカバー40に対して引っ張りなどの外力を与えていない自由状態では前記係止突起34の頭部36の上下方向の外径dp2よりも小さく、その係止孔41が形成されている箇所周辺の垂れカバー40部分に拡径方向の外力を与えることによって前記係止突起34の頭部36が通過することを許し得る程度の内径dh1を有している。
この内径dh1は、垂れカバー40に対して引っ張りなどの外力を与えていない自由状態で、前記係止突起34の軸部35の外径dp0と同径、もしくはそれよりも少し小さい程度の内径dh1であるように形成してある。
そして、垂れカバー41の係止孔41の周辺を、係止孔41の径方向に引っ張っることにより、図8に仮想線で示すように、係止孔41は拡径方向に弾性変形して、係止突起34の頭部36が通過することを許し得る程度の内径dh2に広げられる。
【0035】
また、前記係止孔41は、図7に示すように垂れカバー40の上縁に沿って5箇所に形成してあり、各係止孔41同士の間隔Lh1,Lh2,Lh3,Lh4は、垂れカバー40の自由状態で、図4に示すところの各係止突起34同士の間隔Lp1,Lp2,Lp3,Lp4よりも少し短く設定してある。
換言すれば、各係止突起34同士の間隔Lp1,Lp2,Lp3,Lp4は、垂れカバー40の自由状態での各係止孔41同士の間隔Lh1,Lh2,Lh3,Lh4よりも大きく設定された状態となっている。
したがって、各係止孔41を係止突起34に係合させる際には、各係止孔41同士の間隔Lh1,Lh2,Lh3,Lh4を広げるように垂れカバー40を上縁に沿う方向で引っ張りながら係止突起34に係合させてゆくことで、取り付けられた垂れカバー40に水平方向の張りを持たせた状態で取り付けることができる。
【0036】
上記の垂れカバー40の上縁に沿って形成される各係止孔41は5箇所であるのに対して、前記機体側の取付対象箇所Aである上部パネル体33には係止突起34を4箇所しか形成していない。
これは、垂れカバー40の後端外方側の係止孔41に対応する箇所の取付対象箇所Aが、上部パネル体33ではなく、脱穀部カバー部材4Bに形成されたネジ孔(図示せず)であり、このネジ孔にノブ付きボルト37を螺合させるようにした係止構造によって、前記後端外方側の係止孔41を止め付けるようにしたことによる。
このように垂れカバー40の後端外方側の係止孔41部分のみをノブ付きボルト37で簡単に係脱できるようにすることで、この部位の係止孔41に対する脱着操作を簡便にして、垂れカバー40を着脱まではしない状態で部分的に開いて内部を覗き込み易くし、点検作業の容易化を図るためである。
【0037】
上記の垂れカバー40は、厚さ約1mm程度のゴム板材からなり、板面に沿う方向で200%〜300%程度の伸び量を得られるものを使用している。
前記係止突起34の軸部35の長さ、すなわち、上部パネル体33の横向き面と係止突起34の頭部36との間隔Sは、前記垂れカバー40の厚みよりも少し大きい1.5mm程度に設定されている。
したがって、図6(b)に仮想線で示すように、係止孔41を係止突起34の上側に引っ掛けた状態で、垂れカバー40の下端側を引っ張って係止孔41を上下方向に拡径する操作などを行う際に、垂れカバー40の上部が垂れカバー40の厚みよりも少し大きい前記間隔S内で多少傾斜した姿勢となることができる。これによって、垂れカバー40の下端側を多少斜め外方側から引き操作しても、無理なく垂れカバー40の板面に沿う方向での引っ張り作用を与えて、係止孔41を変形させ易く構成してある。
また、前記係止突起34の頭部36が、水平方向での外径dp1は軸部35の外径dp0と同じか同程度であることは、係止孔41を水平方向には拡径する必要がないので、垂れカバー40を上下方向に引っ張り操作するだけで、係止孔41に対して係脱操作を行い得る利点がある。特に、垂れカバー40の上縁に沿う箇所で端部ではなく中間に形成されている係止孔41の係脱操作を行う際に便利である。
【0038】
〔別実施形態の1〕
垂れカバー40、及び係止突起34の形状や大きさに関しては、上述の実施形態に示した構造のものに限らず、例えば図9(a)に示した構造を採用してもよい。
図9(a)に示す構造では、垂れカバー40の係止孔41を、上下方向、又は水平方向の一方向に長いスリット状に形成し、係止突起34を、その軸部35及び頭部36が自由状態における前記係止孔41のスリットを横切る方向の幅sh1よりも大きい円形状に形成してあり、係止孔41のスリットの長手方向の幅sh2が、係止孔41を拡開させることによって係止突起34の頭部36を通過させることが可能な程度の大きさである。
この構造では、垂れカバー40の自由状態における係止孔41のスリットの長手方向の幅sh2が、係止突起34の円形の頭部36の外径dp3と同程度に設定されている。
【0039】
〔別実施形態の2〕
垂れカバー40、及び係止突起34の形状や大きさに関しては、上述の実施形態に示した構造のものに限らず、例えば図9(b)に示した構造を採用してもよい。
図9(b)に示す構造では、垂れカバー40の係止孔41を、上下方向、又は水平方向の一方向に長いスリット状で、前記図9(a)示す構造のものよりもさらに細く、自由状態では係止孔41が開口していない切れ目状に形成されている。
この構造においても、係止突起34は、その軸部35及び頭部36が自由状態における前記係止孔41の切れ目を横切る方向の幅sh1(ほとんど零)よりも大きい円形状に形成してあり、係止孔41の切れ目の長手方向の幅sh2が、係止孔41を拡開させることによって係止突起34の頭部36を通過させることが可能な程度の大きさである。
この構造では、垂れカバー40の自由状態における係止孔41の切れ目の長手方向の幅sh2が、係止突起34の円形の頭部36の外径dp3よりも大きく設定されている。
【0040】
〔別実施形態の3〕
係止突起34の頭部の外径dp1,dp2と軸部35の外径dp0との関係については、上述の実施形態では、頭部36が上下方向に長い楕円状に形成され、軸部35の外径dp0に比べて、水平方向では頭部36も同径もしくはほぼ同径の外径dp1に形成され、上下方向ではかなり大きい(1.4〜3倍程度)外径dp2に形成されているものであるが、これに限らず、上下方向の外径dp2の大きさの度合いは、係止孔41の大きさや、垂れカバー40の肉厚の大きさなどに応じて適宜変更することは可能であり、要は、使用状態では簡単に係止孔41が係止突起34から外れず、装着時には拡径方向の外力を加えることによって比較的容易に係脱操作を行える程度に設定されていればよい。
また、係止突起34は、頭部36が水平方向と上下方向で差の無い円形の外径dp3に形成されたものであってもよく、頭部36が水平方向に長い楕円状に形成され、軸部35の外径dp0に比べて、上下方向では頭部36も同径もしくはほぼ同径の外径dp1に形成されたものであってもよい。
【0041】
〔別実施形態の4〕
係止突起34は、上部パネル体33等の機体側の取付対象箇所と一体に形成されたものであるに限らず、別部材と構成されたものであってもよい。
この場合、係止突起34は個々に機体側の取付対象箇所に取り付けられるが、その取り付けた後では、係止突起34自体の着脱操作を要さずに、垂れカバー40の係止孔41を抜き差しできるように係止孔41の内径dh1と係止突起34の頭部36の外径dp1,dp2,dp3あるいは形状を工夫しておく必要がある。
【0042】
〔別実施形態の5〕
垂れカバー40としては、上記の実施の形態で示したようなゴム板で構成されたものに限らず、屈曲変形可能で、係止孔41の拡径が可能であるように、適度に体積弾性変化可能な合成樹脂材などで構成してもよい。
【0043】
〔別実施形態の6〕
垂れカバー40を取り付けるための機体側の取付対象箇所Aは、実施の形態で例示したように、上部パネル体33と、その近接箇所にある脱穀部カバー部材4Bとの組み合わせで構成したものである必要はなく、上部パネル体33のみで構成してもよい。
また、取付対象箇所A側の係止手段を、上部パネル体33側の係止突起34と、脱穀部カバー部材4B側のノブ付きボルト37との組み合わせで構成する必要もなく、全体を係止突起34で構成してもよい。
【0044】
〔別実施形態の7〕
垂れカバーを設ける箇所は、搭乗運転部20の横脇に限らず、排ワラ搬送部や排ワラ放出部など、適宜の箇所であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、実施形態で示したような自脱型のコンバインに限らず、普通型のコンバイン、あるいは、トラクタや田植機などの各種の作業機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
33 上部パネル体
34 係止突起
35 軸部
36 頭部
40 垂れカバー
41 係止孔
A 取付対象箇所
dh1 係止孔の内径
dp0 軸部の外径
dp1 頭部の水平方向での外径
dp2 頭部の上下方向での外径
dp3 円形の頭部の外径
sh1 スリットを横切る方向の幅
sh2 スリットの長手方向の幅
Lp1,Lp2,Lp3,Lp4 係止突起同士の間隔
Lh1,Lh2,Lh3,Lh4 係止孔同士の自由状態での間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体側の取付対象箇所に対して上端側が止着され、下端側が垂下された弾性材料製の垂れカバーを装着した作業車のカバー取付構造であって、
前記垂れカバー側に取付用の係止孔を形成するとともに、前記取付対象箇所に係止突起を備え、
前記係止突起を、取付対象箇所に固定される軸部よりも取付対象箇所から離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成するとともに、
前記係止突起の頭部は、弾性変形していない自由状態における前記係止孔の内径よりも大きく、かつ、拡径方向に弾性変形させた前記係止孔を通過可能な大きさの外径に形成されていることを特徴とする作業車のカバー取付構造。
【請求項2】
係止突起は、頭部の上下方向の外径が軸部の外径よりも大きく、頭部の水平方向での外径が軸部の外径と同径、またはぼぼ同径に形成されたものである請求項1記載の作業車のカバー取付構造。
【請求項3】
機体側の取付対象箇所が合成樹脂材料の成型品によって構成してあり、係止突起は機体側の取付対象箇所の成型加工に伴って一体に成形され、かつ、その係止突起の軸部が径方向内方側へ凹入する凹溝部分を備えた断面形状に形成されたものである請求項1又は2記載の作業車のカバー取付構造。
【請求項4】
自由状態における係止孔の内径は、係止突起の軸部の径と同径、もしくは小径に形成されている請求項1、2、又は3記載の作業車のカバー取付構造。
【請求項5】
機体側の取付対象箇所に対して上端側が止着され、下端側が垂下された弾性材料製の垂れカバーを装着した作業車のカバー取付構造であって、
前記垂れカバー側に取付用の係止孔を形成するとともに、前記取付対象箇所に係止突起を備え、
前記係止突起を、取付対象箇所に固定される軸部よりも取付対象箇所から離れる側へ突出する頭部が大きい頭付きピンによって構成するとともに、
前記係止孔を一方向に長いスリット状に形成し、
前記係止突起の頭部は、自由状態における前記係止孔のスリットを横切る方向の幅よりも大きい円形状に形成してあり、前記係止孔のスリットの長手方向の幅は、係止孔を拡開方向に弾性変形させることによって前記係止突起の頭部を通過させることが可能な大きさに形成されていることを特徴とする作業車のカバー取付構造。
【請求項6】
係止孔及び係止突起は垂れカバーの上縁に沿って複数箇所に形成してあり、隣り合う位置の係止突起同士の間隔を、垂れカバーにおける隣り合う位置の係止孔同士の自由状態での間隔よりも大きく設定してある請求項1〜5の何れか1項記載の作業車のカバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60953(P2012−60953A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209450(P2010−209450)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】