説明

作業車両

【課題】メンテナンス性の良いコントロールバルブの配設技術の提供、さらには、操作性の良い作業機操作レバーの提供を目的とする。
【解決手段】前輪2・2と後輪3・3との間に操縦部7を配置し、左右の後輪3・3の間に操縦席8を配置し、該操縦席8の両側に後輪3・3の前部及び上方を覆うフェンダー10・10を設けたトラクタ1において、前記トラクタ1に装着する作業機を作動させる油圧機器のコントロールバルブ40を、前記フェンダー10の内側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。より詳細には、作業機が装着される作業車両における該作業機のコントロールバルブの配設技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両において、該作業車両に装着する作業機を作動させる油圧機器のコントロールバルブを、ミッションケース近傍に配置することとした作業機用コントロールバルブの配設技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。また、作業車両に複数のアクチュエータを装着可能とし、それらのアクチュエータの制御手段として、ミッションケース上方に複数のコントロールバルブを積層配置し、さらに補助コントロールバルブを積層配置可能とすることとした技術は公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1に開示された技術は、駆動源からの駆動力をミッションケース内の作業装置駆動用入力軸に入力し、ミッションケース内の上方位置又は該ケースの上面における車輌幅方向一方側に、作業装置用油圧装置と該油圧装置に対する圧油給排制御用バルブユニットとを車輌前後方向に沿って連結して配設し、入力軸を介して駆動される油圧ポンプを油圧装置及びバルブユニットの車輌幅方向に配設したものである。
特許文献2に開示された技術は、作業車両に複数の油圧アクチュエータを有する作業機を装着可能とし、該油圧アクチュエータと同数の操作手段、及び制御手段となるコントロールバルブをミッションケース上方に、積層配置したものである。
【特許文献1】特開2002−283861号公報
【特許文献2】特開2002−250303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に開示された構成では、油圧装置への油圧経路を短縮化させることができ、油圧ポンプの小型化、車両の小型化、及び油圧装置の反応速度の迅速化を図ることができる。
また、特許文献2に開示された構成では、比較的大容量の機械操作式バルブを用いてあらゆる油圧機器に対して利用できるようになり、作業機の選択に自由度が生まれる。また、複数のコントロールバルブを積層配置するため増設が容易であり、さらに、制御手段を集中配置するためメンテナンス性を向上できる。
しかし、制御手段であるコントロールバルブと操作手段である操作レバー等との距離が遠くなり、リンク機構が多く必要であったり、ワイヤが長くなったりしてしまう点で不利であった。
【0004】
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、メンテナンス性の良いコントロールバルブの配設技術の提供、さらには、操作性の良い作業機操作レバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、前輪と後輪との間に操縦部を配置し、左右の後輪の間に操縦席を配置し、該操縦席の両側に後輪の前部及び上方を覆うフェンダーを設けた作業車両において、前記作業車両に装着する作業機を作動させる油圧機器のコントロールバルブを、前記フェンダーの内側に配置したものである。
【0007】
請求項2においては、前記フェンダー上に操作パネルを設け、該操作パネルに鉛直方向に開口される開口部を設け、該開口部に前記コントロールバルブより上方に突設した作業機の操作レバーを貫通して設けたものである。
【0008】
請求項3においては、前記コントロールバルブをステップ後端よりも後方に設けたものである。
【0009】
請求項4においては、前記コントロールバルブを、フェンダー前部に配置するステップフレームにて支持したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1の如く構成したので、後輪とフェンダーの間の空間を有効利用して取り付けることができる。また、ミッションケース上部に取り付けるよりもメンテナンスや組立等の作業が容易にでき、ミッションケース上方のスペースが不要となって、車体の全高を抑えることができる。
【0012】
請求項2の如く構成したので、操縦席に着座して無理なく手の届く範囲に作業機操作レバーを配置でき、作業機の操作性を向上できる。作業機を装着しない作業用車両と操作パネルを共通化でき、機種毎の部品点数を削減できる。
【0013】
請求項3の如く構成したので、ステップ23においてコントロールバルブ40本体、及び該コントロールバルブ40に接続される配管等のスペースを考慮する必要がなく、作業車両への乗降や作業車両の操作の邪魔にならない。
【0014】
請求項4の如く構成したので、コントロールバルブの交換が容易にでき、メンテナンス性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る作業車両(本実施例ではトラクタ)について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例に係る作業機付トラクタの全体構成を示す側面図、図2はコントロールバルブの配設構造を示す拡大右側面図、図3はステップ及びコントロールバルブの取り付け構成を示す斜視図、図4は操作パネルの構成を示す斜視図である。
なお、図1における矢印Aをトラクタ1の進行方向、つまり前方向とし、以下における前後左右方向を規定する。
【実施例1】
【0016】
まず、図1を参照してトラクタ1の全体構成について説明する。
トラクタ1は、その前部にボンネット4を配置し、後部に操縦部7を配置してなり、機体フレーム14・14は、その前後に前輪2・2および後輪3・3を支承する。該ボンネット4の内部にはエンジン5が配置される。
また、トラクタ1は、その前方、中央下部、及び後方にそれぞれ作業機を装着可能に構成されており、本実施例では、その前方、中央下部にそれぞれ、フロントローダ28、モア装置29を装着している。そして、これら作業機の操作手段、及び制御手段として後述する作業機操作レバー13、及びコントロールバルブ40が設けられている。
【0017】
前記前輪2と後輪3との間に操縦部7が配置され、左右の後輪3・3の間に操縦席8が配置されている。該操縦席8の前方にはステアリングハンドル9が配置され、操縦席8の両側部には、後輪3・3の上方及び前方を覆うフェンダー10・10が設けられて、該フェンダー10・10の上部には主変速レバーや、作業機操作レバー13等の操作具が配設される操作パネル11・11がそれぞれ設けられている。
【0018】
エンジン5は、前記機体フレーム14・14上に防振支持されており、該エンジン5の後部にはエンジン5冷却用のラジエータ6が配置される。そして、エンジン5より後方にドライブシャフト15がミッションケース16に至るまで延設されている。該ミッションケース16は操縦席8の下方に配置され、エンジン5の駆動力は、該ドライブシャフト15によってミッションケース16へ伝達され、該ミッションケース16内の変速装置によって変速されて、リアアクスルを介して後輪3・3を駆動し、さらに前輪駆動軸等を介して前輪2・2にも駆動力を伝達できるようにしている。
【0019】
ボンネット4の後部には、上ダッシュボード17及び下ダッシュボード18が設けられ、上ダッシュボード17及び下ダッシュボード18には燃料タンク19、バッテリ20及びパワステバルブ等が装着され、上ダッシュボード17上には計器パネル21や前後進切換レバー22、キースイッチ等が配置されている。下ダッシュボード18の後下部から側方に至って、ステップカバーが配設されてステップ23が形成され、該ステップ23は後述するステップフレーム24を介して前記機体フレーム14・14に固設されている。
【0020】
また、機体フレーム14・14中途部にはステアリングハンドル9やハンドルコラム等のステアリング装置等を取り付けて支持するためのコラムブラケット25が設けられている。該コラムブラケット25の前方にはラジエータ6が支持され、コラムブラケット25には前記バッテリ20の取り付け部が設けられ、コラムブラケット25下端部には、前記燃料タンク19の取り付け部が形成されている。そして、前記燃料タンク19、バッテリ20、ステアリングハンドル9等がコラムブラケット25に取り付けられる。
そして、前記ハンドルコラムの前上部に計器パネル21が設けられ、ハンドルコラムの側部に前後進切換レバー22が配置され、上ダッシュボード17によって被装されている。
【0021】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の特徴部分に係るコントロールバルブ40の配設構造、及びその操作手段となる作業機操作レバー13の構成について説明する。
【0022】
トラクタ1に装着される前記フロントローダ28、モア装置29等の作業機(以下、単に「作業機」と言う)は、その作動源として油圧アクチュエータ等からなる一又は複数の油圧機器を備えている。トラクタ1には、該油圧機器に対する圧油給排制御手段としてコントロールバルブ40が設けられており、該コントロールバルブ40から配管を介してミッションケースに設けた油圧ポンプに接続されている。該コントロールバルブ40と前記油圧機器とは油圧配管等を介して適宜接続されており、オペレータによる操作を受けて圧油の送油方向を切り換えて油圧アクチュエータを作動させることによって作業機を作動させている。
【0023】
次に、コントロールバルブ40の配設位置について説明する。
図2及び図3に示す如く、機体フレーム14の前後中途部より側方に突設して固定されるステップフレーム24は、ステップ23の前側を支持するステップフレーム24a・24aと、ステップ23の後側(フェンダー10の前側)の左右一側(本実施例では左側)を支持するステップフレーム24bと、ステップ23の後側の他側(本実施例では右側)を支持し、さらにコントロールバルブ40取り付け用の取り付けステー41を固設可能なステップフレーム24cと、からなる。但し、ステップフレーム24の構成は限定するものではなく、ステップ23を機体フレーム14に十分に固定可能であればよく、例えば、一体的に構成することも、3本以上で構成することも可能である。そして、前記ステップ23は、上記四箇所に配置されるステップフレーム24(24a・24a・24b・24c)上に固定され、さらに該ステップフレーム24が機体フレーム14にそれぞれ固定されることにより、ステップ23が機体フレーム14に固設される。
また、該コントロールバルブ40は取り付けステー41を介してステップフレーム24cに支持されている。
一方、前記フェンダー10の前端部は該ステップフレーム24の後部(ステップフレーム24b・24c)に固定され、ステップ23とフェンダー10とが前後に連設される。つまり、ステップフレーム24b・24cにはステップ23の略後端部とフェンダー10の前端部が固定されている。そして、フェンダー10前下端の後側において、ステップフレーム24cの後端面に取り付けステー41の下端がボルト等で固設されて上方に延設され、該取り付けステー41の上部後面にコントロールバルブ40の前面がボルト等で固設され、フェンダー10の前上部裏側、かつ、ステップ23の後端部よりも後方側にコントロールバルブ40が位置する構成となっている。つまり、本実施例において、コントロールバルブ40は、ステップ23の後端よりも後方であって、フェンダー10の内側にステップフレーム24cを介して配設されているのである。
【0024】
以上のように、トラクタ1において、該トラクタ1に装着する作業機を作動させる油圧機器のコントロールバルブ40を前記フェンダー10の内側に配置したので、後輪3とフェンダー10との間の空いた空間を有効利用することができ、ミッションケース16上部に取り付けていた従来の作業車両よりメンテナンスや組立等の作業が容易になる。また、フロントローダ用のコントロールバルブ40をステアリングハンドル側方に配置する構成に比べて、油圧ポンプに近くコントロールバルブ40を配置できるので、油圧配管を短くすることができる。
また、前記コントロールバルブ40は、ステップ23の後端よりも後方に設けられるので、ステップ23においてコントロールバルブ40本体、及び該コントロールバルブ40に接続される配管等のスペースを考慮する必要がなく、作業車両への乗降の邪魔にならず、操作時のオペレータの姿勢に無理が生じず、操作の邪魔にならない。さらには、ステップ23を略水平、或いは操作時の姿勢に最適な形状に構成することが可能であり、意匠性にも優れている。
また、前記コントロールバルブ40は、フェンダー10前部に配置されるステップフレーム24cにて支持されるので、該コントロールバルブ40の交換が容易にでき、メンテナンス性を向上できる。
【0025】
ここで、図2に示すように、ステップフレーム24cの上方には前記フェンダー10が配設され、さらにその上方に操作パネル11が配設されている。
また、図4に示すように、操作パネル11前部であって、前記コントロールバルブ40の上方に鉛直方向に開口される開口部11aを設け、該開口部11aには前記コントロールバルブ40より上方に突出した作業機の操作具となる作業機操作レバー13が貫通して設けられる。つまり、フェンダー10の前上部に開口部が設けられ、コントロールバルブ40から上方に突出した作業機操作レバー13を貫通できるようにしている。そして、該開口部11aの上方に作業機操作レバー13下部を被装するレバーカバー45が設けられ、該レバーカバー45上端より作業機操作レバー13の略中途部より上側が上方に突出している。
オペレータはこの作業機操作レバー13を回動することにより、該作業機操作レバー13下端と接続されるコントロールバルブ40を切り換えて、作業機に備わる油圧アクチュエータの圧油の送油方向を切り換えて作動させることで、作業機を作動させるのである。
【0026】
以上のように、前記フェンダー10上に設けた操作パネル11に鉛直方向に開口される開口部11aを設け、該開口部11aに前記コントロールバルブ40より上方に突出した作業機操作レバー13を貫通して設けたので、操縦席8に着座して無理なく手の届く範囲に作業機操作レバー13を配置でき、作業機の操作性を向上することができる。つまり、オペレータが操縦席8に着座した状態で、作業機操作レバー13は膝から太股の上側方に位置し、手を伸ばしたり、腕を大きく曲げたりすることなくステアリングハンドル9と作業機操作レバー13に容易に持ち替えることができ、また、作業機操作レバー13はオペレータが前を向いた状態で大きく目をそらすことなく認識でき、操作性を向上できる。
また、作業機を装着しない作業車両においては、作業機操作レバー13は不要となるが、この開口部11aにカップホルダー等を設けることによって、作業機を装着する作業車両と作業機を装着しない作業用車両とにおいて操作パネル11を共通化でき、機種毎の部品点数を削減することができる。
【0027】
また、キャビン付の大型の作業車両には、一般的にアクセサリーソケット(シガーライターソケット)が備えられており、該アクセサリーソケットに車両アクセサリー等を差し込むことで電源を確保し、運転操作中のオペレータの様々な要望に応じている。しかし、アクセサリーソケットは電源となるバッテリ等と接続されるため、風雨にさらされると漏電、ショート等の不具合が生じてしまう。そのため、操縦席にキャビン等の屋根を備えない作業車両においては、その保護又は防水のために、該アクセサリーソケットを覆う特別な被装構造が必要となり、部品点数が多くなったり、配設位置に制限があったりする課題があった。
【0028】
係る課題を鑑みて、本実施例では図4に示す如く、左右一側(本実施例では右側)の操作パネル11における機体内側の側面(操縦席8側の側面)に、凹部を形成し、該凹部の底部にアクセサリーソケット46を設けることとした。なお、該凹部は本実施例では底面視において略台形状である。また、該アクセサリーソケット46は電源となるバッテリ20と接続されて、例えばシガーソケットに代表される車両アクセサリーを接続した場合に通電可能とすることで、オペレータの作業車両運転中における快適性を支援している。
該アクセサリーソケット46への差込部には簡易構造のソケットカバー47が設けられて、該差込部への水の浸入を防ぐ防水構造を実現している。
なお、本実施例に限らず操作パネル11の形状により防水効果が得られるものであれば足りる。例えば、操作パネル11の側面の一部を底面視において略凹字状に形成してもよい。また、操作パネル11の上面の一部を操縦席8側に延出して、該アクセサリーソケット46の庇としてもよい。
【0029】
このように構成したので、操作パネル11の上面によって、アクセサリーソケット46に雨水がかかることを防止できる。また、特別な被装構成等を設ける必要もなく防水構造が実現でき、部品点数も削減できる。さらに、操縦席8に着座するオペレータの手元に配置される操作パネル11に該アクセサリーソケット46を設けることで、容易に電源を確保することが可能となり、利便性が向上される。該アクセサリーソケット46は例えば、オーディオ機器の電源としたり、携帯電話等の充電のための電源としたり、イルミネーションや補助ライトの電源としたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る作業機付トラクタの全体構成を示す側面図。
【図2】コントロールバルブの配設構造を示す拡大右側面図。
【図3】ステップ及びコントロールバルブの取り付け構成を示す斜視図。
【図4】操作パネルの構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1 トラクタ
10 フェンダー
13 作業機操作レバー
24 ステップフレーム
40 コントロールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と後輪との間に操縦部を配置し、左右の後輪の間に操縦席を配置し、該操縦席の両側に後輪の前部及び上方を覆うフェンダーを設けた作業車両において、
前記作業車両に装着する作業機を作動させる油圧機器のコントロールバルブを、前記フェンダーの内側に配置したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記フェンダー上に操作パネルを設け、該操作パネルに鉛直方向に開口される開口部を設け、該開口部に前記コントロールバルブより上方に突設した作業機の操作レバーを貫通して設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントロールバルブをステップ後端よりも後方に設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の作業車両において、
前記コントロールバルブを、フェンダー前部に配置するステップフレームにて支持したことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193932(P2008−193932A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31198(P2007−31198)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】