説明

作業車両

【課題】トラクタ等の作業車両のドアを閉める際に発生する衝撃音を低減させることを課題とする。
【解決手段】操縦部を覆うキャビン6のドア7と本体との間に、ドア7側に設けられるラッチ14と、本体側に設けられるストライカ12とからなるロック機構を設けた作業車両において、ストライカ12と本体側との間に緩衝部材23を設け、該緩衝部材23を介してストライカ12を本体側に取り付ける。この緩衝部材23によって、ストライカ12とラッチ14との衝突による衝撃を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はドアのロック機構を備えたトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来操縦部を覆うキャビンが備えられた作業車両であるトラクタとして、キャビンのドアと本体との間に、ドア側に設けられるラッチと、本体側に設けられるストライカとからなるロック機構が設けられた機種が公知となっている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特公平4−76808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記ロック機構は、キャビンのドアを閉めると、ラッチとストライカとが係合してロックがかかる。ラッチとストライカとは、ドアが閉じられる時に衝突しながら係合する。このため特にストライカ及びラッチに金属を用いた場合、ドアを閉める際にストライカと本体側との衝突時の衝撃音が騒音として発生するという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明は、操縦部を覆うキャビン6のドア7と本体との間に、ドア7側に設けられるラッチ14と、本体側に設けられるストライカ12とからなるロック機構を設けた作業車両において、ストライカ12と本体側との間に緩衝部材23を設け、該緩衝部材23を介してストライカ12を本体側に取り付けた作業車両。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成される本発明によれば、ストライカと本体側との間に設けられた緩衝部材により、ドアを閉じる際ストライカとラッチとの衝撃が吸収され、衝撃音が低減されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明を適用した作業車両であるトラクタの側面図である。走行機体1は前輪2及び後輪3を備えている。走行機体の前方側には、図示しないエンジンを内装するボンネット4が備えられている。ボンネット4の後方にはキャビン6が設けられている。キャビン6には、左側面側に、室外に向かって開く開閉自在なドア7が設けられている。オペレータはドア7からキャビン6内に入り、キャビン6に覆われた操縦部によってトラクタを操縦することができる。
【0007】
キャビン6には骨格を形成するキャビンフレーム8が設けられている。キャビン6はキャビンルーフ9を備えている。キャビンルーフ9は室内の天井を形成している。上記ドア7は、後方のキャビンフレーム8にヒンジ11によって取り付けられている。ドア7は、ドア7とキャビン6の本体側となるキャビンフレーム8との間に設けられたロック機構によりロックされ、閉状態で維持される。
【0008】
図2(A)はストライカ12の取り付け状態を表わす断面側面図、(B)は(A)のA矢視図である。図3はドア7の開閉状態を示す要部平面図である。ロック機構は、キャビンフレーム8に取り付けられたストライカ12と、ドア側に設けられたロックユニット13とから構成されている。
【0009】
上記ロック機構は、ロックユニット13に設けられたラッチ14と、上記ストライカ12との係合によりドア7をロックする。ただしドア7のロックは、ドア7の外側に設置されたドアハンドル16上の解除ボタン17、又はキャビン6の室内側に位置する解除レバー18の操作により解除される。
【0010】
ストライカ12は、平面視において略コの字状をなすロッド部12aと、該ロッド部12aが一体的に取り付けられる取付座部12bとから構成される。取付座部12bには、キャビンフレーム8への取り付け用のボルト孔19が形成されている。
【0011】
一方キャビンフレーム8には、ブラケット21が溶接等によって一体的に取り付けられている。ブラケット21は、側面視において略コ字状をなすプレートからなる。ブラケット21の背面がストライカ12の取付部21aをなす。上記取付部21aとキャビンフレーム8との間には、所定の間隙が設けられている。
【0012】
上記取付部21aには、ストライカ12の取り付け用のボルト孔22が、上記ボルト孔19に対応して上下に設けられている。該ボルト孔22には、ゴム等の弾性部材からなる緩衝部材23が嵌め込まれている。緩衝部材23には、ボルト通過用の孔24が設けられている。
【0013】
ストライカ12の取付座部12bと、ストライカ12の取付け用の取付板26とによって、緩衝部材23を前後から挟持し、取付座部12bから取付板26に向かって、上記取付座部12bのボルト孔19と、緩衝部材23の孔24と、取付板26に形成されるボルト通過孔27とを通過させてボルト28を挿入し、該ボルト28の先端にナット29を螺合させて締め付けることによって、ストライカ12がブラケット21を介してキャビンフレーム8に取り付けられる。
【0014】
上記ストライカ12の取付構造によって、ストライカ12の取付座部12bとブラケット21の取付部21aとの間、取付板26とブラケット21の取付部21aとの間には、緩衝部材23が介在する。
【0015】
図4はロック機構の側面図であり、(A)はドア7がロックされる直前の状態を表す要部側面図であり、(B)はドア7がロックされた直後の状態を表す要部側面図である。図3、図4に示されるように、ロック機構のロックユニット13はドア7の室内側に設けられたベースフレーム31と、ベースフレーム31に取り付けられたロック部32と、ベースフレーム31に取り付けられたリンク機構33と、ベースフレーム31に取り付けられた解除レバー18とにより構成されている。
【0016】
ロック部32には案内溝32bを有するロックプレート部32aが設けられている。ロックプレート部32aにはラッチ軸34を介して板状のラッチ14が軸支されている。ラッチ14にはストライカ12のロッド部12aを収容保持する保持溝14aが設けられている。
【0017】
ドア7を閉める際、ストライカ12のロッド部12aがラッチ14と接し、ロッド部12aはラッチ14の保持溝14aに収容保持される。そしてラッチ14はラッチ軸34を支点に回転する。ラッチ14が回転するとロッド部12aが保持溝14aに収容保持された状態でロックプレート部32aの案内溝32bに噛み込まれていく。ロッド部12aが案内溝32bの一定深さまで達するとラッチ14がロック部32内部の機構により固定され、ドア7がロックされる。
【0018】
キャビン6室外の解除ボタン17と、室内の解除レバー18は、リンク機構33を介して、ラッチ14の上記固定を解除する。この解除によってストライカ12とラッチ14との係合が外れ、ドア7のロックが解除される。
【0019】
ロック機構においては、上記構成によって、ドア7を閉める際、ストライカ12とラッチ14とは衝突しながら係合する。これに対して上記のようにストライカ12とブラケット21との間には緩衝部材23が設けられているため、緩衝部材23によりストライカ12とラッチ14との衝撃時の衝撃が吸収される。このためドア7を閉める際の衝撃音が低減され、作業者は快適にキャビン6のドア7を開閉することができる。
【0020】
なお緩衝部材23の位置は上記実施例に限定されるものではなく、機体側とストライカ12との間に緩衝部材23を設けさえすればよい。例えば、キャビンフレーム8とブラケット21との間に設けてもよい。またストライカ12は取付座部12aを備えてないものを用いることもできる。
【0021】
前述のようにドア7は室外に向かって開くため、ドア7を閉じる際にはキャビン6室内に空気が送り込まれる。キャビン6の室内は、作業時の埃の侵入防止等を目的として気密性が高くなっており、送り込まれた空気は室外には容易に排気されず、室内の気圧は上昇する。
【0022】
本実施形態においては、図5に示されるように、キャビン6に排気孔36を設け、排気孔36に逆止弁37を取り付けている。逆止弁37は弾力性を有するゴム等の弾性部材からなる。逆止弁37の開閉部は上下に二分割され、外へ向かって突出し、先端部37aが重ね合わされている嘴形状に形成されている。
【0023】
キャビン6室内の圧力が上昇すると、上記重ね合わされた先端部37aに隙間が生じる。この隙間から室内の空気が室外に排気される。一方上記先端部37aは外に向けて開く形状となっているため、室外の気圧が高くなっても上記先端部37aに間隙は発生せず、埃の侵入等が防止され、室内の機密性も確保される。
【0024】
前述のキャビンルーフ9は、図6に示されるように、室外側である上面に、上面の端付近を一周する排水溝38が形成されている。排水溝38の前方の左側、右側、後方の左側、右側の計4箇所には排水口39が設けられている。
【0025】
図7はキャビンルーフ9に溜まった雨水等の排水機構を表す側面断面図である。キャビンフレーム8は中空構造をなす。排水口39はホース41を介してキャビンフレーム8の中空部分に繋がれている。
【0026】
キャビンルーフ9に溜まった雨水等は排水溝38に集水される。集水された雨水等は上記四隅に設けられた排水口39より、キャビンフレーム8の中空部へと流れ込み、中空部内を流下し、外部へと排水される。
【0027】
上記のように雨水等が排水されるため、キャビンルーフ4に溜まった雨水等がキャビン6のフロントガラス及びリアガラス上を流下することが防止される。これにより、雨天等の作業時において、フロントガラス及びリアガラスに付く水滴が減少し、作業者の視界が確保される。
【0028】
なお、上記排気機構や排水機構は作業車両のキャビン6等に限定されるものではない。逆止弁37を取り付けた排気孔36を設ける排気機構は高い気密性が要求される室内全般に適用することができる。また上記逆止弁37を設けた排気孔36は、室外から室内に配線を引き込む際にも利用することができる。キャビンルーフ9の排水機構もルーフを備えた作業車両であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】(A)はストライカの取り付け状態を表わす断面側面図、(B)は(A)のA矢視図である。
【図3】ドアの開閉状態を示す要部平面図である。
【図4】ロック機構の側面図であり、(A)はドアがロックされる直前の状態を表す要部側面図であり、(B)はドアがロックされた直後の状態を表す要部側面図である。
【図5】キャビンに設けた排気孔及び逆支弁を表す図面であり、(A)は側面断面図であり、(B)は正面図である。
【図6】キャビンルーフの斜視図である。
【図7】排水機構を表す側面断面図である。
【符号の説明】
【0030】
6 キャビン
7 ドア
12 ストライカ
14 ラッチ
23 緩衝部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦部を覆うキャビン(6)のドア(7)と本体との間に、ドア(7)側に設けられるラッチ(14)と、本体側に設けられるストライカ(12)とからなるロック機構を設けた作業車両において、ストライカ(12)と本体側との間に緩衝部材(23)を設け、該緩衝部材(23)を介してストライカ(12)を本体側に取り付けた作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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