説明

作業車輌

【課題】複数のコントローラを、それぞれの制御対象となる操作手段又は作動手段に近接して配置した作業車輌を提供する。
【解決手段】トラクタは、主変速操作スイッチを備えた副変速レバーの下方側に、変速を制御する変速コントロールユニットC2を有し、サイドスイッチパネル18の下方部分に、作業機の昇降を制御する昇降コントロールユニットC3を有し、表示パネル15の裏側に、走行情報及び作業情報を表示する表示パネル15を制御する表示コントロールユニットC4を有し、表示パネル15の機体前方側に備えられ、これらコントロールユニットに通信回線によって接続されると共に操作レバー・スイッチや各種センサ等からの入力情報に基づいて指令信号を発する操作コントロールユニットC1を有して構成されている。これにより、各コントロールユニットと操作手段及び作動手段とを近接して配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは走行機体に配置した複数のコントローラの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、トラクタ等の作業車輌は、走行系コントローラ、作業機昇降系コントローラ等のそれぞれマイコンからなる複数のコントローラが用いられている。
【0003】
従来、走行機体に、走行系コントローラ、作業機系コントローラ、操作パネル用コントローラ及びメータパネル用コントローラを搭載したトラクタが案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−130798号公報(図8、図9、図10、図11参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記複数のコントローラを搭載したトラクタは、変速レバー、副変速レバー、作業機の高さを変更するポジションレバー、その他の作業機制御用の各スイッチが全て操縦席の右側方の操作パネルに配置され、かつ作業機系コントローラがホストコントローラとなることからも明らかなように、各コントローラが1箇所又は数箇所にまとめて配置されてコントロールユニットを構成している。
【0006】
従って、各コントローラがそれぞれ受け持つ制御対象の操作手段及び作動手段から離れて配置される構成となり、配線の取回しが面倒で複雑な構成となっている。
【0007】
そこで本発明は、複数のコントローラを、それぞれの制御対象となる操作手段又は作動手段に近接して配置し、もって上述した課題を解決した作業車輌を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、走行機体(5)に、エンジン(6)からの動力を変速して走行回転体(2,3)に伝達する変速装置(20)と、作業機を昇降する昇降用油圧装置(101)と、走行情報及び作業情報を表示する表示装置(15)と、複数の操作手段(17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g)を前記走行機体(5)の前部にまとめて配置した操作パネル(17)とを配設した作業車輌(1)において、
前記変速装置(20)を制御する変速系コントローラ(C2)を、該変速装置の操作手段(16a)に近接して配置し、
前記昇降用油圧装置(101)を制御する昇降系コントローラ(C3)を、該昇降用油圧装置の操作手段(18)に近接して配置し、
前記表示装置(15)を制御する表示系コントローラ(C4)を該表示装置に近接して配置し、
前記操作パネル(17)の前記複数の操作手段(17a,・・・,17g)からの指令に基づき前記変速系コントローラ(C2)、昇降系コントローラ(C3)及び表示系コントローラ(C4)に指令信号を発する操作系コントローラ(C1)を前記操作パネル(17)に近接して配置した、
ことを特徴とする作業車輌(1)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は、走行機体(5)に、エンジン(6)からの動力を変速して走行回転体(2,3)に伝達する変速装置(20)と、作業機を昇降する昇降用油圧装置(101)と、走行情報及び作業情報を表示する表示装置(15)と、複数の操作手段(17a,・・・,17g)を前記走行機体(5)の前部にまとめて配置した操作パネル(17)とを配設した作業車輌(1)において、
前記変速装置(20)を制御する変速系コントローラ(C2)を、該変速装置を変速作動する作動手段(71,81,91)に近接して配置し、
前記昇降用油圧装置(101)を制御する昇降系コントローラ(C3)を、該昇降用油圧装置を作動する作動手段(102)に近接して配置し、
前記表示装置(15)を制御する表示系コントローラ(C4)を該表示装置に近接して配置し、
前記操作パネル(17)の前記複数の操作手段(17a,・・・,17g)からの指令に基づき前記変速系コントローラ(C2)、昇降系コントローラ(C3)及び表示系コントローラ(C4)に指令信号を発する操作系コントローラ(C1)を前記操作パネル(17)に近接して配置した、
ことを特徴とする作業車輌(1)にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記変速系コントローラ(C2)、前記昇降系コントローラ(C3)、前記表示系コントローラ(C4)及び前記操作系コントローラ(C1)を通信回線で接続し、前記各コントローラの情報を共有してなる、
請求項1又は2記載の作業車輌(1)にある。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、表示系コントローラ及び操作系コントローラをそれぞれ表示装置及び操作パネルに近接して配置し、かつ変速系コントローラを変速装置の操作手段に近接して配置すると共に、昇降系コントローラを作業機昇降用油圧装置の操作手段に近接して配置したので、各コントローラの配線の取回しが容易となる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、表示系コントローラ及び操作系コントローラをそれぞれ表示装置及び操作パネルに近接して配置し、かつ変速系コントローラを変速装置の変速作動手段に近接して配置すると共に、昇降系コントローラを作業機昇降用油圧装置の作動手段に近接して配置したので、各コントローラの配線の取回しが容易となる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、各コントローラを通信回線で接続し、各コントローラの情報を共有したので、配線の取回しが容易になると共に、きめ細かい制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図9に沿って説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る作業車輌としてのトラクタ1は、左右に配置された一対の前輪2,2と後輪3,3とにより支持された機体5を有している。該機体5の前方部分には、内部にエンジン6を収納したボンネット7が配置されており、該ボンネット7の後方部分には、キャビン10に囲まれた運転席部8等を有している。また、機体5の後端には、作業機(図示せず)を取付け可能なリンク機構110が備えられている。さらに、機体5の下部には、該機体5に一体に固定されたミッションケース11が配置されている。上記エンジン6の出力は、該ミッションケース11内に配置された変速装置20を介して上記前輪2,2及び後輪3,3に伝達され、トラクタ1を前後方向に所要の速度で走行させるように構成されている。
【0017】
また、上記運転席部8には、図1及び図7に示すように、操作部12とその後方に運転席13とが備えられている。該操作部12は、ステアリングハンドル14と該ステアリングハンドル14の前方に設けられた表示パネル(表示装置)15を有しており、該表示パネル15の下方部分には、図6(a)に示すように、左フロントスイッチパネル17A及び右フロントスイッチパネル17Bからなるフロントスイッチパネル(操作パネル)17が備えられている。さらに、運転席部8には、図7に示すように、運転席13の機体進行方向左方側に、副変速レバー16が備えられており、また該運転席13の機体進行方向右方側に、サイドスイッチパネル(操作手段)18が備えられている。
【0018】
さらに、トラクタ1は、図8及び図9に示すように、副変速レバー16の下方部分に備えられ、変速を制御する変速コントロールユニット(変速系コントローラ)C2、サイドスイッチパネル18の下方部分に備えられ、作業機の昇降を制御する昇降コントロールユニット(昇降系コントローラ)C3、表示パネル15の裏側に備えられ、走行情報及び作業情報を表示する表示パネル15(図1等参照)を制御する表示コントロールユニット(表示系コントローラ)C4、及び表示パネル15の機体進行方向前方側に備えられ、これらコントロールユニットに通信回線によって接続されると共に、操作レバー・スイッチや各種センサ等からの入力情報に基づいて指令信号を発する操作コントロールユニット(操作系コントローラ)C1を有して構成されている。
【0019】
次に、トラクタ1の変速制御について説明する。
【0020】
変速装置20は、図2に示すように、上記エンジン6の出力軸から、クラッチ31、出力軸32及びギヤを介して動力が伝達されると共に、歯数の異なる4つのギヤが一体に固定されている入力軸33を有している。また、該変速装置20は、ミッションケース11(図1参照)内に、該入力軸33と隣接配置された前部主変速装置21aと、該前部主変速装置21aから出力され下流側に伝達される動力を断続する主クラッチ22と、該主クラッチ22の下流側に接続された前後進切換え装置23と、該前後進切換え装置23の下流側に接続された後部主変速装置21bと、該後部主変速装置21bの下流側に配置された副変速装置24等が配置され、走行駆動系を構成している。なお、前部主変速装置21a及び後部主変速装置21bは、上記副変速レバー16に設けられた主変速操作スイッチ(操作手段)16a(図5参照)によって変速操作される、主変速装置21を構成している。
【0021】
なお、ミッションケース11内には、入力軸33と隣接配置されたPTO主変速部25と、該PTO主変速部25の下流側にPTO軸46の正逆回転を行わせるPTO回転切換え装置45とが配置され、上記運転席部8に備えられたPTO変速レバー19(図5,7参照)の操作に基づいて、動力がPTO軸46を介して作業機(図示せず)に出力できるように構成されている。
【0022】
上記前部主変速装置21aは、ミッションケース11に対して回転自在に支持された伝動軸34を有しており、該伝動軸34には、上記出力軸33に固定された4つのギヤのそれぞれと常時噛合う歯数の異なるギヤが回転自在に支持されている。また、機体前方側と後方側のそれぞれ2つのギヤの間には、シンクロメッシュ方式によりこれら2つのギヤにそれぞれ選択的に係合・離脱可能なシフト部材が、伝動軸34の軸方向に移動自在に配置されている。主クラッチ22は、前部主変速装置21aと前後進切換え装置23との間に配置された油圧クラッチで構成され、油圧の供給・排出により走行駆動系の動力の接断を行っている。
【0023】
上記前後進切換え装置23は、上記主クラッチ22を介して伝動軸34に接続されると共に歯数の異なる2つのギヤが固定された伝動軸35を有しており、該2つのギヤのうち一方のギヤは中間軸に固定されたギヤと噛合っている。また、前後進切換え装置23は、該中間軸に固定されたギヤと、上記2つのギヤのうち他方のギヤとにそれぞれ噛合う2つのギヤが回転自在に支持された伝動軸36を有しており、該伝動軸36に支持された2つのギヤの間には、シンクロメッシュ方式によりそれぞれに選択的に係合・離脱可能なシフト部材が伝動軸36の軸方向に移動自在に配置されている。
【0024】
上記後部主変速装置21bは、上記説明した伝動軸36の後半部分と、上記伝動軸35と同一軸心上に位置するようにミッションケース11に回転自在に支持された伝動軸37とを備えている。該伝動軸36の後半部分には、歯数の異なる2つのギヤが回転自在に支持されており、該2つのギヤの間には、シンクロメッシュ方式によりそれぞれ選択的に係合・離脱可能なシフト部材が、伝動軸36の軸方向に移動自在に配置されている。また、該伝動軸37は、該2つのギヤのそれぞれと常時噛合うと共に歯数の異なる2つのギヤが一体に固定されている。
【0025】
上記伝動軸37の後半部分には、歯数の異なる2つのギヤが固定されており、上記伝動軸36と同一軸心上にミッションケース11に回転自在に支持された伝動軸38に回転自在に支持された2つのギヤと噛合っている。該伝動軸38には、これら2つのギヤの他に1つのギヤが一体的に固定されていると共に、伝動軸38の軸方向に移動自在となるギヤが配置されている。
【0026】
上記副変速装置24は、ミッションケース11に対して回転自在に支持された出力軸39を備えている。該出力軸39には、上記伝動軸38に支持された2つのギヤとそれぞれ噛合う2つのギヤが回転自在に支持されており、該2つのギヤの間にはシンクロメッシュ方式によりこれらのギヤとそれぞれ選択的に係合・離脱可能なシフト部材が出力軸39の軸方向に移動自在に配置されている。また、該出力軸39には、上記伝動軸38の軸方向に移動自在となるように配置されたギヤと噛合うギヤが固定されている。
【0027】
上記出力軸39は、ディファレンシャルギヤ41及び駆動車軸42等を介して後輪3,3に接続され、トラクタ1を走行駆動可能にしている。また、上記伝動軸38は、上記ギヤによって回転が伝達され、該伝動軸38に一体に回転するように固定された2つのギヤを介してクイックターン装置43に伝達される。該クイックターン装置43では、クラッチの作動により選択された回転がディファレンシャルギヤ44等を介して前輪2,2に伝達され、トラクタ1を走行駆動可能にしている。なお、上記伝動軸38の軸方向に移動自在となるように配置されたギヤを軸方向に移動させることにより、前輪2,2への動力の伝達を遮断することもできる。
【0028】
ついで、上記トラクタ1の主変速装置21及び主クラッチ22に係る油圧制御装置50について説明する。
【0029】
図3に示すように、オイルポンプ51から吐出された圧油は走行操作用として利用され、逆止弁52を介して、上記主変速装置21及び主クラッチ22を油圧により制御する油圧制御装置50に供給される。
【0030】
油圧制御装置50に流入した圧油は、油温センサ53及び油圧センサ54によりその温度と圧力が検出され、変速コントロールユニットC2へフィードバックされる。また、フィルタ55,57は逆止弁52と油圧センサ54との間に配置されている。
【0031】
フィルタ55を通った圧油の一部は、比例圧力制御ソレノイドバルブ56へ供給されている。該比例圧力制御ソレノイドバルブ56は、電気信号による作動によって、調圧され、該調圧された圧油は、フィルタ61及びシャトル弁62を介して主クラッチ22に送られ、上記前部主変速装置21aと前後進切換え装置23とが接続される。
【0032】
ソレノイドバルブ(作動手段)71は、上記後部主変速装置21bのシフト部材の位置を変位させるための油圧アクチュエータ72を制御する。該油圧アクチュエータ72のシフトピストン73は、ソレノイドバルブ71から供給される圧油により伸縮し、その停止位置は、ピン75により保持される。チェックバルブ77は、シフトピストン73が移動してピン75がシフトピストン73の切欠き部から軸部へ移動したとき解放され、主クラッチ22に供給される油圧を減圧して、該主クラッチ22の切り操作を行う。
【0033】
ソレノイドバルブ(作動手段)81とソレノイドバルブ82とは、上記前部主変速装置21aのシフト部材の位置を変位させるための油圧アクチュエータ83を制御する。該油圧アクチュエータ83のシフトピストン85は、各ソレノイドバルブ81,82から供給される圧油により伸縮し、その停止位置は、ピン86により保持される。チェックバルブ87は、シフトピストン85が移動してピン86がシフトピストン85の切欠き部から軸部へ移動したとき解放され、主クラッチ22に供給される油圧を減圧して、該主クラッチ22の切り操作を行う。
【0034】
ソレノイドバルブ(作動手段)91とソレノイドバルブ92とは、上記ソレノイドバルブ81とソレノイドバルブ82とが油圧アクチュエータ83を制御する場合と略々同様の構成によって油圧アクチュエータ93を制御する。
【0035】
なお、上記前部主変速装置21aにおいては、該シフト部材を移動させるシフトピストン85,95の切欠き部のいずれか1箇所に、ピン86又はピン96が係合したときに該前部主変速装置21aでの変速が完了するように構成されており、シフト部材がそれぞれ同時に係合することができない構成になっている。従って、シフトピストン85,95の切欠き部のいずれか1箇所に、ピン86又はピン96が係合した場合に、主クラッチ22が入り状態となるように、チェックバルブ87,97は、直列に接続されている。
【0036】
以上説明した油圧制御装置50においては、図3に示すように、主変速操作スイッチ16a(図5参照)からの変速操作に基づく、変速コントロールユニットC2(図8及び図9参照)からの指令信号に基づいて、ソレノイドバルブ71から油圧アクチュエータ72に圧油が供給されると、シフトピストン73が伸長し、後部主変速装置21bのシフト部材を伝動軸36(図2参照)に沿って移動させる。これにより、該後部主変速装置21bのシフト部材をギヤと噛合うように位置決めする。
【0037】
また、主変速操作スイッチ16aからの変速操作に基づく、変速コントロールユニットC2からの指令信号に基づいて、ソレノイドバルブ81から油圧アクチュエータ83に圧油が供給されると、シフトピストン85が伸長し、該ソレノイドバルブ82から油圧アクチュエータ83に圧油が供給されると、シフトピストン85が収縮し、前部主変速装置21aのシフト部材を伝動軸34(図2参照)に沿って移動させる。これにより、該前部主変速装置21aの一方のシフト部材をギヤと噛合わせる。また、シフトピストン85が中間位置にあるときには、該一方のシフト部材は、ギヤと噛合わないニュートラル位置に位置決めされる。
【0038】
さらに、主変速操作スイッチ16aからの変速操作に基づく、変速コントロールユニットC2からの指令信号に基づいて、ソレノイドバルブ91から油圧アクチュエータ93に圧油が供給されると、シフトピストン95が伸長し、該ソレノイドバルブ92から油圧アクチュエータ93に圧油が供給されると、シフトピストン95が収縮し、前部主変速装置21aのシフト部材を伝動軸34に沿って移動させる。これにより、該前部主変速装置21aの他方のシフト部材をギヤと噛合わせる。また、シフトピストン95が中間位置にあるときには、該他方のシフト部材は、ギヤと噛合わないニュートラル位置に位置決めされる。
【0039】
上記主変速装置21は、以上説明したように前部主変速装置21aと後部主変速装置21bとが主変速操作スイッチ16aの操作に基づいて、変速動作されることにより、変速比の異なる8段の変速段を設定することができる。また、上記副変速装置24は、該主変速操作スイッチ16aを備えた副変速レバー16の操作に基づいて、変速比の異なる2段の変速段を設定することができる。これにより、該主変速装置21及び該副変速装置24によって、変速比の異なる16段の変速段を設定することができる。
【0040】
また、トラクタ1は、図4,5,8,9に示すように、操作手段としての主変速操作スイッチ16aを備えた副変速レバー16、作動手段としてのソレノイドバルブ71,81,91を備えた(油圧制御装置50を有する)変速装置20、及び変速コントロールユニットC2を近接した位置に配置している。これにより、各コントロールユニットの配線の取回しを容易にすることができる。
【0041】
次に、トラクタ1の作業機の昇降制御について説明する。
【0042】
トラクタ1は、図1に示すように、機体5の後端に作業機を取付け可能なリンク機構110を有しており、該リンク機構110は、1個のアッパリンク(図示せず)と左右一対のロアリンク111とを有する三点式のものである。また、トラクタ1に作業機を装着した場合には、リンク機構110のロアリンク111は、リフトロッド112を介してリフトアーム(図示せず)に吊り下げ支持され、該リフトアームはその根元側に配置されたリフトシリンダ(昇降用油圧装置)101(図5参照)の伸長・収縮動作によって上下に回動される。即ち、該リフトシリンダ101は、バルブユニット(作動手段)102(図5参照)を作動させることにより、リフトシリンダ101に圧油が供給・排出されることで作業機を上昇・下降動作させる。これにより、リフトシリンダ101を油圧駆動して作業機を上昇・下降動作させたり、任意の耕耘深さを設定したりすることが可能である。さらに、リフトロッド112は、リフトロッドシリンダ(図示せず)を介してリフトアームに吊り下げ支持されており、バルブユニット102を作動させることにより、リフトロッドシリンダを油圧駆動して左右のリフトロッド112の長さを異ならせることによって、作業機の左右傾き角度を任意に設定することが可能である。
【0043】
図7に示すように、運転席部8の運転席13の機体進行方向右方側には、上述したサイドスイッチパネル18が備えられている。該サイドスイッチパネル18は、図6(b)に示すように、作業機の高さ(ポジション)を調節するポジションコントロールレバー18a、作業機の耕耘深さを調節する深さ設定ダイヤル18b、及び該深さ設定ダイヤル18bにより設定された耕耘深さによって行う耕深自動制御を入切切換えする深さ自動スイッチ18cを有している。また、サイドスイッチパネル18は、傾き設定スイッチ18dにより設定した作業機の傾きによって行う傾斜自動制御を入切切換えする傾き自動スイッチ18e、自動制御等により作業機が上昇する際の高さを設定する上げ高さボリューム18f、耕深自動制御中に作業機による作業内容を切換える作業切換スイッチ18g、及び任意に設定した各種自動制御機能を入切切換えするお好みスイッチ18hを有している。なお、各種自動制御機能の説明については後述する。
【0044】
さらに、トラクタ1は、図5,7,8,9等に示すように、操作手段としてのサイドスイッチパネル18、作動手段としてのバルブユニット102、及び昇降コントロールユニットC3が近接した位置に配置されている。これにより、各コントロールユニットの配線の取回しを容易にすることができる。
【0045】
以上説明したように、トラクタ1は、サイドスイッチパネル18に配置された各種スイッチやボリューム等の操作に基づく昇降コントロールユニットC3からの指令信号に基づいて、バルブユニット102からリフトシリンダ101に圧油が供給・排出されることで作業機を上昇・下降動作させることができ、また、リフトロッドシリンダに圧油が供給・排出されるとリフトロッド112の長さを伸長・短縮させ、作業機の左右傾き角度が設定される。
【0046】
次に、トラクタ1の表示装置について説明する。
【0047】
図7に示すように、運転席部8の操作部12には、ステアリングハンドル14の前方側に表示パネル15が備えられている。該表示パネル15は、図6(a)に示すように、目盛り123からなる文字盤と、該文字盤上で値を指示する指針124とからなるアナログ式メータ121、液晶パネル122、インジケータ125、及びその他の走行情報や作業情報を表示する表示灯にて構成されている。
【0048】
また、表示パネル15は、トラクタ1が作業状態の際、アナログ式メータ121にエンジン回転数を表示し、液晶パネル122の表示部122aに車速を表示しており、トラクタ1が走行状態の際は、インジケータ125が点灯状態にされると共にアナログ式メータ121に車速を表示し、液晶パネル122の表示部122aにエンジン回転数を表示している。
【0049】
さらに、トラクタ1は、図8等に示すように、表示装置としての表示パネル15及び表示コントロールユニットC4が近接した位置に配置されている。
【0050】
以上説明したように、トラクタ1は、エンジン回転センサ(図示せず)や車軸回転センサ(図示せず)等の情報に基づく表示コントロールユニットC4からの指令信号に基づいて、表示パネル15にエンジン回転数や車速等の情報が表示される。
【0051】
次にトラクタ1の操作パネル(フロントスイッチパネル17)について説明する。
【0052】
上記表示パネル15の下方部分には、図6(a)に示すように、左フロントスイッチパネル17A及び右フロントスイッチパネル17Bからなるフロントスイッチパネル17が備えられている。左フロントスイッチパネル17Aは、前輪倍速制御とオートブレーキ制御との切換えをする倍速旋回・オートブレーキ旋回切換えスイッチ(操作手段)17a、バックアップ制御を入切切換えするバックアップスイッチ(操作手段)17b、4輪駆動状態と2輪駆動状態とを切換える4駆切換えスイッチ(操作手段)17c、旋回アップ制御を入切切換えする旋回アップスイッチ(操作手段)17d、及びコーナーライトスイッチ(操作手段)17eを有している。また、右フロントスイッチパネル17Bは、上記液晶パネル122の表示切換えを行うスイッチ(操作手段)17f及び前輪倍速制御、傾斜自動制御、耕深自動制御等の作業状態において作業機もしくは車輌に必要な各種自動制御を一括して作動状態もしくは無効状態にする、おまかせスイッチ(操作手段)17gを有している。
【0053】
さらに、トラクタ1は、図8等に示すように、操作パネルとしてのフロントスイッチパネル17及び操作コントロールユニットC1が近接した位置に配置されている。
【0054】
以上説明したように、トラクタ1は、フロントスイッチパネル17上のスイッチの操作や各種センサ等からの情報に基づき、操作コントロールユニットC1から変速コントロールユニットC2、昇降コントロールユニットC3、及び表示コントロールユニットC4に指令信号を発することで各種自動制御機能の設定を可能にしている。
【0055】
ここで、各種の自動制御機能を説明する。
【0056】
〔耕深自動制御〕
耕深設定ダイヤル18bの設定耕深の入力信号と、耕深センサ(図示せず)により作業機のリヤカバー(図示せず)の回転角を検出することで得られた検出信号は昇降コントロールユニットC3に送られ、該昇降コントロールユニットC3からの制御指令に基づき、リフトシリンダ101を油圧駆動して作業機を上昇・下降動作させる。これにより適正な作業耕深に耕深制御することが可能となる。
【0057】
〔Sモード〕
耕深自動制御の実行中に、昇降コントロールユニットC3では、耕耘負荷変動に伴うエンジン回転数変化量を演算したり、予め検出した基準データと比較するなどして制御指令を決定する。この制御指令に基づき、リフトシリンダ101を油圧駆動して作業機の耕深の深さを制御させる。つまり、耕耘負荷の増大に伴うエンジン回転の低下にあわせて作業機の深さが自動的に浅くされることになる。これにより、耕耘負荷の増大に伴うエンスト等の不都合を回避できる。
【0058】
〔傾斜自動制御〕
傾き設定スイッチ18dの設定傾斜角度の入力信号と、傾斜センサ(図示せず)及び角速度センサ(図示せず)により機体5のローリング角度から得られた検出信号は昇降コントロールユニットC3に送られ、該昇降コントロールユニットC3からの制御指令に基づき、リフトロッドシリンダを油圧駆動で伸長・短縮して左右のリフトロッド112の長さを異ならせる。これにより作業機の左右傾き角度が適正に傾斜制御することが可能となる。
【0059】
〔クイックアップ制御〕
クイックアップスイッチ(又はクイックアップレバー)(図示せず)が操作され、その入力信号を受けた昇降コントロールユニットC3からの制御指令に基づき、上げ高さボリューム18fにより設定された上限位置まで自動的に上昇させる。これにより簡単な操作で作業機を設定上限位置まで上昇させることが可能となる。
【0060】
〔バックアップ制御〕
例えば、前後進切換操作レバー(図示せず)の後進位置への操作が検出されると、昇降コントロールユニットC3からの制御指令に基づき、作業機を設定された上限位置まで自動的に上昇させる。このバックアップ制御を行えば、例えば操作者が作業機を上昇操作し忘れるということがなくなり安全性を向上させることが可能となる。
【0061】
〔旋回アップ制御〕
ステアリングハンドル14により一定角以上の操舵角を与えられたことが検出されると、昇降コントロールユニットC3からの制御指令に基づき、作業機を上げ高さボリューム18fにより設定された上限位置まで自動的に上昇させる。これにより例えばUターンする場合などでも、ステアリングハンドル14の操作だけで作業機を設定上限位置まで上昇させることができ、操作の容易化が可能となる。
【0062】
〔前輪増速制御〕
ステアリングハンドル14により一定角以上の操舵角を与えられたことが検出されると、変速コントロールユニットC2からの制御指令に基づき、前輪2が後輪3よりも高速で駆動される。これにより小回り旋回が可能となっている。なお、本実施の形態では略々2倍に増速されるので、例えば左フロントスイッチパネル17Aなどには「倍速」と表記されているが、増速の程度を限定するものではない。
【0063】
〔オートブレーキ制御〕
ステアリングハンドル14により一定角以上の操舵角を与えられると、その操舵量に基づき機械的な連繋機構(図示せず)を介して旋回内側の後輪3のブレーキ装置(図示せず)が制動作動される。すなわち、ステアリングハンドル14を操作することにより、旋回内側の後輪3にブレーキが作用する。これにより小回り旋回が可能となっている。
【0064】
なお、本実施の形態では作業車輌の一例であるトラクタについて説明したが、各種の自動制御機能が使用可能な作業車輌(例えばコンバインなど)であれば、どのような作業車輌であっても本発明を適用することが可能である。
【0065】
また、本実施の形態においては、自動制御機能として、耕深自動制御、Sモード、傾斜自動制御、クイックアップ制御、バックアップ制御、旋回アップ制御、前輪増速制御、オートブレーキ制御等を例に説明したが、これらに限らず、どのような自動制御機能であっても本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態に係るトラクタを示す側面図。
【図2】トラクタの伝動系統を示す伝動系統図。
【図3】トラクタの油圧系統を示す油圧回路図。
【図4】トラクタの一部を側面から示す構造図。
【図5】トラクタの一部を上面から示す構造図。
【図6】表示パネル及び操作パネルを示す図で、(a)は運転席に位置する表示パネル及び操作パネルの正面図、(b)は運転席右方側に位置する操作パネルの上面図。
【図7】トラクタの運転席部を示す上面図。
【図8】トラクタの運転席部を上面から示す構造図。
【図9】トラクタの後半部分を側面から示す構造図。
【符号の説明】
【0067】
1 作業車輌(トラクタ)
2,3 走行回転体(前輪、後輪)
5 走行機体
6 エンジン
15 表示装置(表示パネル)
16a 操作手段(主変速操作スイッチ)
17 操作パネル(フロントスイッチパネル)
17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g 操作手段
18 操作手段(サイドスイッチパネル)
20 変速装置
71,81,91 作動手段(ソレノイドバルブ)
101 昇降用油圧装置(リフトシリンダ)
102 作動手段(バルブユニット)
C1 操作系コントローラ(操作コントロールユニット)
C2 変速系コントローラ(変速コントロールユニット)
C3 昇降系コントローラ(昇降コントロールユニット)
C4 表示系コントローラ(表示コントロールユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、エンジンからの動力を変速して走行回転体に伝達する変速装置と、作業機を昇降する昇降用油圧装置と、走行情報及び作業情報を表示する表示装置と、複数の操作手段を前記走行機体の前部にまとめて配置した操作パネルとを配設した作業車輌において、
前記変速装置を制御する変速系コントローラを、該変速装置の操作手段に近接して配置し、
前記昇降用油圧装置を制御する昇降系コントローラを、該昇降用油圧装置の操作手段に近接して配置し、
前記表示装置を制御する表示系コントローラを該表示装置に近接して配置し、
前記操作パネルの前記複数の操作手段からの指令に基づき前記変速系コントローラ、昇降系コントローラ及び表示系コントローラに指令信号を発する操作系コントローラを前記操作パネルに近接して配置した、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
走行機体に、エンジンからの動力を変速して走行回転体に伝達する変速装置と、作業機を昇降する昇降用油圧装置と、走行情報及び作業情報を表示する表示装置と、複数の操作手段を前記走行機体の前部にまとめて配置した操作パネルとを配設した作業車輌において、
前記変速装置を制御する変速系コントローラを、該変速装置を変速作動する作動手段に近接して配置し、
前記昇降用油圧装置を制御する昇降系コントローラを、該昇降用油圧装置を作動する作動手段に近接して配置し、
前記表示装置を制御する表示系コントローラを該表示装置に近接して配置し、
前記操作パネルの前記複数の操作手段からの指令に基づき前記変速系コントローラ、昇降系コントローラ及び表示系コントローラに指令信号を発する操作系コントローラを前記操作パネルに近接して配置した、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項3】
前記変速系コントローラ、前記昇降系コントローラ、前記表示系コントローラ及び前記操作系コントローラを通信回線で接続し、前記各コントローラの情報を共有してなる、
請求項1又は2記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−154838(P2009−154838A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338770(P2007−338770)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】