説明

便器用マット

【課題】小便の雫がマットや床面に飛散するのを抑えて床面の汚れを防止し、マットの取替え頻度も軽減される。
【解決手段】起立姿勢での小便の用に供する便器Uに使用するための便器用マットMであって、便器Uの前方位置の床面F上に置かれ、床面F上に置かれた状態でマット本体1の上面41a,41bが便器方向へ向かって下り傾斜するように成形されている。マット本体1は左右の側縁13,14および後縁12を除いた中央部にマット載置面が形成されて、当該マット載置面上に吸水マット2が載置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器用マットに関し、特に起立姿勢で小便の用に供する便器について使用する便器用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設やホテル等では個室内に設置された着座姿勢で使用する便器の他に、起立姿勢で小便の用に供する便器が設置されている。ところが、このような便器では、小便の雫によって床面が汚れやすいために、特にホテル等においては便器用マットが使用されることが多い。例えば特許文献1には、吸水性紙、ないし吸水層と非吸水層の二層構造からなるシートで構成されて便器手前の床面上に置かれる便器用マットが示されている。
【0003】
ところで、便器用マットを使用すれば床面の汚れは改善されるものの、今度はマット自体が小便の雫で汚れるために頻繁な取替えが必要になるという問題がある。また、便器用マットと便器の前縁との間に隙があると、この部分から床面に小便が染み出るという問題があり、これに対しては、立ち上がり舌片を設け(特許文献2)、被せ布を設け(特許文献3)、あるいは襟部を設ける(特許文献4)等の対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−165729
【特許文献2】特開2001−258801
【特許文献3】特開2004−16301
【特許文献4】特開2009−183361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが特許文献2〜4に記載の対策を施こすことはマットの製造コストを上昇させるという問題があり、結局はマットの上面に人が立つ位置を示す足形を描いたり、「一歩前へ」等の文字を記載して、用を足す際に使用者が便器に近づくように注意を促すようにしている(特許文献1の[0005]欄)。しかし、足形や注意書きがあっても多くの使用者はこれを無視して、便器に近づくことなく小便の用を足す場合が多く、便器用マット取替えの手間はそれほど軽減されないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、起立姿勢で小便の用に供する便器に使用され、小便の雫がマットや床面に飛散するのを抑えて床面の汚れを防止し、マットの取替え頻度も軽減される便器用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本第1発明では、起立姿勢での小便の用に供する便器(U)に使用するための便器用マット(M)であって、前記便器(U)の前方位置の床面(F)上に置かれ、床面(F)上に置かれた状態でマット本体(1,3,4)の上面(13a,14a,3a,41a,41b)が便器方向へ向かって下り傾斜するように成形されていることを特徴とする。
【0008】
本第1発明において、小便の用を足す使用者はマット本体の上面上に両足をそれぞれ乗せる。上面は前方の便器方向へ適宜角度で下り傾斜する傾斜面となっているから、両足を載せた状態の使用者は自然に腰の位置が前方へ移動して無意識に便器方向へ接近させられる。これにより、使用者が十分に便器に接近して用を足すようになるから、小便の雫は殆どが便器内に落下し、便器外へ飛散する量は極めて少なくなる。これにより、床面の汚れが防止されるとともに、便器用マットの頻繁な取替えも軽減される。
【0009】
本第2発明では、前記マット本体(1)は少なくとも左右の側縁(13,14)を除いた中央部(15)にマット載置面(15a)が形成されて、当該マット載置面(15a)上に吸水マット(2)が載置されるようになっている。
【0010】
本第2発明においては、便器外へ飛散した雫が吸水マットによって効率的に浸透捕捉されるから、マット本体や床面の汚れが更に抑えられる。
【0011】
本第3発明では、前記マット本体(4)は左右に分離された足置き部(41,42)とこれら足置き部(41,42)を連結する連結部(43)より構成されており、前記各足置き部(41,42)の上面(41a、42a)が便器方向へ向かって下り傾斜するように成形されている。
【0012】
本第3発明においては、連結部の形状を種々変更することが可能であるから便器用マットのデザイン上の自由度が向上する。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の便器用マットによれば、小便の雫がマットや床面に飛散するのが抑えられて床面の汚れが防止されるとともに、マットの頻繁な取替えも不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における、便器用マットを付設した便器を前方から見た斜視図である。
【図2】マット本体の全体平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】吸水マットの全体平面図である。
【図5】吸水マットを装着した状態の便器用マットの断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態における、便器用マットを付設した便器を前方から見た斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態における、便器用マットを付設した便器を前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
[第1実施形態]
図1には本発明の第1実施形態における便器用マットMを付設した状態の便器Uを示す。便器UはフロアF上に起立姿勢で設置されている陶器製のもので、前方へ開放する縦長の容器状をなし、下端部U1は小便を受けるために前方へ平面視で山型に張り出した深皿状となっている。
【0018】
このような便器Uが置かれた床面Fは水平になっており、便器U前方の床面F上に便器用マットMが置かれている。便器用マットMはその本体1全体がゴム材の一体成形で製造されている。マット本体1の全体平面図を図2に示す。図2において、マット本体1は各コーナを緩やかに面取りした略四角形の板体で、その前縁(図2の上縁)11の中央部111は、便器下端部U1の張り出しを受け入れるように円弧状に後方へ凹陥している。マット本体1は図3に示すように全体の肉厚が後縁12から前縁11へ漸次薄くなっている。
【0019】
マット本体1は、前縁11の中央部111を除いた左右の側縁13,14と後縁12が前方へ向かってU字状に残されており、U字状をなす両側縁の上面13a,14aは前方へ下り傾斜する傾斜面となっている。上記上面13a,14aの傾斜角度は4°〜5°程度が好ましい。なお、マット本体1の寸法の一例は、横600mm、縦450mm、前縁11の厚み3.5mm、後縁12の厚み25mmである。
【0020】
U字状に残された両側縁13,14と後縁12に囲まれたマット本体1の中央内部15は一段と低くなって、前縁中央部111に連続する水平面状のマット載置面15aとなっている。なお、マット載置面15aを囲む両側縁13,14および後縁12との間の段付き部には、両側面と後側面にそれぞれ吸水マット係止用の矩形凹部16が形成されている。
【0021】
図4には、マット載置面に設置される吸水マット2の平面図を示す。吸水マット2はマット載置面15aとほぼ同形の平面形状をした板体で、その両側面と後側面には上記矩形凹部16に対応する位置に、これら矩形凹部16に挿入できる形状の矩形突起21が形成されている。吸水マット2をマット本体1に装着する場合には、吸水マット2を適当に湾曲させてその矩形突起21をマット本体1の矩形凹部16内に挿入し、吸水マット2の下面をマット載置面15aに当接させる。この状態で吸水マット2は、矩形凹部16内に挿入された矩形突起21によって前方へずれることなく位置決めされる(図5)。
【0022】
このような構造の便器用マットにおいて、小便の用を足す使用者はマット本体1の左右の側縁13,14の上面13a,14a上に両足をそれぞれ乗せる。この際、上面13a,14aは前方の便器U方向へ適宜角度で下り傾斜する傾斜面となっているから、マット本体1上に両足を載せた状態の使用者は自然にその腰の位置が前方へ移動して無意識に便器U方向へ接近させられる。これにより、使用者が十分に便器Uに接近して用を足すようになるから、小便の雫は殆どが便器U内に落下し、便器U外へ飛散する量は極めて少なくなる。便器U外へ飛散した雫は吸水マット2に浸透捕捉されるが、その量は充分少ないため、吸水マット2の取替え頻度を大幅に少なくすることができる。また、マット本体1は全体が比較的単純な形状であるから汚れ落しのための洗浄を簡単に行うことができる。
【0023】
[第2実施形態]
図6には本発明の第2実施形態における便器用マットMを付設した状態の便器Uを示す。便器Uの構造は第1実施形態と同様である。本実施形態における便器用マットMでは、マット本体3に第1実施形態におけるマット載置面15aが形成されておらず、したがって、吸水マット2は設けられていない。マット本体3はゴム材よりなる単純な略四角形の板体で、その上面3a全体が前方の便器U方向へ下り傾斜する傾斜面となっている。
【0024】
このような構造の便器用マットMで小便の用を足す場合、使用者はマット本体3の上面3a上の左右位置に両足を乗せると自然に腰の位置が前方へ移動して無意識に便器方向へ接近させられる。これにより、使用者は十分に便器Uに接近して用を足すようになり、小便の雫は殆どが便器U内に落下して、便器U外へ飛散する量は極めて少なくなる。したがって、マット本体3上に多少の雫が飛散しても汚れは少なく、便器用マットMの交換の頻度を大幅に少なくできる。また、本実施形態における便器用マットMはマット本体3の形状が非常に単純であるから製造コストが安い上に、汚れ落しの洗浄も極めて容易に行うことができる。
【0025】
[第3実施形態]
図7には本発明の第3実施形態における便器用マットMを付設した状態の便器Uを示す。便器Uの構造は第1実施形態と同様である。本実施形態における便器用マットMでは、マット本体4はゴム材の一体成形品で、左右の足置き部41,42とこれらを連結する連結部43より構成されている。各足置き部41,42は前後方向へ延びる長方形の板体で、その上面41a,42aは前方の便器方向へ下り傾斜する傾斜面となっている。連結部43は左右端がそれぞれ足置き部41,42の側面に連続する薄肉水平板状となっており、これの上に平面視で同形とした吸水マット5が載置されている。
【0026】
このような構造によれば、小便の用を足す使用者が左右の足置き部41,42の上面41a,42aに両足をそれぞれ乗せると自然に使用者の腰の位置が前方へ移動して無意識に便器方向へ接近させられる。これにより、使用者は十分に便器Uに接近して用を足すようになり、小便の雫は殆どが便器U内に落下して、便器U外へ飛散する量は極めて少なくなる。したがって、図7に示すようにマット載置部43が便器Uからある程度離れていても床面Fの汚れは少なく、したがって、本実施形態に示すように便器用マットMのデザイン上の自由度が向上する。
【0027】
なお、第1実施形態におけるマット載置面は必ずしも水平面にする必要はなく、第2実施形態における前方へ傾斜するマット本体上面の中央部をマット載置面としても良い。また、第3実施形態における連結部上に吸水マットを載置する必要は必ずしも無い。さらに、便器の構造は上記実施形態のものに限られず、例えば便器が壁に掛かっていて、床面との間に空間を形成しているような構造の便器にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…マット本体、11…前縁、12…後縁、13…側縁、13a…上面、14…側縁、14a…上面、15…中央内部、15a…マット載置面、2…吸水マット、3…マット本体、3a…上面、4…マット本体、41,42…足置き部、41a,42a…上面、5…吸水マット、M…便器用マット、U…便器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立姿勢での小便の用に供する便器に使用するための便器用マットであって、前記便器の前方位置の床面上に置かれ、床面上に置かれた状態でマット本体の上面が便器方向へ向かって下り傾斜するように成形されていることを特徴とする便器用マット。
【請求項2】
前記マット本体は少なくとも左右の側縁を除いた中央部にマット載置面が形成されて、当該マット載置面上に吸水マットが載置されるようになっている請求項1に記載の便器用マット。
【請求項3】
前記マット本体は左右に分離された足置き部とこれら足置き部を連結する連結部より構成されており、前記各足置き部の上面が便器方向へ向かって下り傾斜するように成形されている請求項1に記載の便器用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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