説明

保冷コンテナ

【課題】 密閉性が高く、結露により発生した水滴が浸入しにくいように改良した保冷コンテナを提供する。
【解決手段】 保冷コンテナの底板30の短辺側周壁部32Sの上面(側板の下端面との当接面)には、外側の平坦な上面部33と、上面部33の内側縁に沿って立ち上がる段部43が形成されている。また、長辺側周壁部32Lの上面(側板の下端面との当接面)には、外縁に沿って形成された溝部37と、溝部37の内側に沿って立ち上がる段部38が形成されている。段部38の高さは、溝部37の縁の高さよりも高い。各周壁部32S、32Lの上面に水がた溜まると、各段部34、38がダムのような作用をし、水滴が底板30の底部31側へ落下することを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵食品や冷凍食品用の保冷コンテナに関する。特には、密閉性が高く、結露により発生した水滴が浸入しにくい構造の保冷コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵食品や冷凍食品用の保冷コンテナは、冷気が外へ漏れださないよう、密閉性が高いことが要求される。特に側板が折り畳み式のコンテナにおいては、起立した側板間や側板と底板との間にスキマが生じないようにすることが必要である。また、コンテナ内の温度が低いため、コンテナ内の温度と外気温度との差により、温度の高い外面が結露する場合がある。コンテナの外面に付着した水滴が同面を伝って流れ落ちると、側板と底板とのスキマや側板間のスキマからコンテナ内部に浸入することがあり、衛生面の点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−285185
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてされたものであって、密閉性が高く、結露により発生した水滴が浸入しにくいように改良した保冷コンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の保冷コンテナは、 物品収容凹所を形成する、底板及び側壁を有する折り畳み式の保冷コンテナであって、 前記側壁は、 前記底板の一方の対向する辺に起立転倒自在に連結された一対の第1側板と、 前記底板の他方の対向する辺に起立転倒可能に連結された一対の第2側板と、 前記第1側板を起立させた後で前記第2側板を起立させた際に、前記第1側板と第2側板とを隅部で接続する接続手段と、を具備し、 前記底板の辺部の上面(前記側板の下端面との当接面)に、該上面内において最も高い、内側縁に沿って立ち上がる段部が形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の他の態様の保冷コンテナは、 物品収容凹所を形成する、底板及び側壁を有する折り畳み式の保冷コンテナであって、 前記側壁は、 前記底板の一方の対向する辺に起立転倒自在に連結された一対の第1側板と、 前記底板の他方の対向する辺に起立転倒可能に連結された一対の第2側板と、 前記第1側板を起立させた後で前記第2側板を起立させた際に、前記第1側板と第2側板とを隅部で接続する接続手段と、を具備し、 前記底板の辺部の上面(前記側板の下端面との当接面)に、該上面内において最も高い、内側の縁に沿って立ち上がる段部が形成されており、 前記側板の下端面(前記底板の辺部の上面との当接面)に、外側の縁に沿って立ち上がる下突条が形成されており、 前記側板が起立した際に、前記底板の辺部上面に形成した段部の高さが、前記側板の下端面に形成した下突条の下面の高さよりも高いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、底板に設けた段部がダムのような作用をし、底板の辺部の上面に溜まった水滴が凹所側へ落下することを防ぐことができる。
【0008】
本発明においては、 前記各側板の底部と前記底板の辺部との間に、該側板起立時に嵌合する凹部と凸部とが形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、起立した各側板と底板とが凹凸嵌合するので、起立した各側板は底板に対して上下方向において相対的に固定されるので、コンテナ本体の密閉性が高まる。なお、底板と側板との間の回転支点は、ある程度ガタを残さざるを得ず、この回転支点のみでは底板と側板との接続強さは十分ではない。底板と側板との固定をより強固にするためには、本発明の凹凸嵌合のような別の手段が必要となる。
さらに、各側板は凹凸嵌合により底板により噛み合うので、底板の中央部に荷重がかかった際の底板の変形を防止できるという効果も得られる。また、底板と各側板との連結部(ボス構造)の構造の強度を補完できるという効果も得られる。
【0010】
本発明においては、 前記第1側板及び/又は第2側板の外面下端部に、該側板の長手方向に延びる突条が形成されており、 該突条の両端部から内寄りの位置に、上角部を切り欠いた凹部が形成されていることが好ましい。
【0011】
コンテナ内部の温度と外気温度とに差が生じて、コンテナの外面に結露が発生した場合、外面に付着した水滴が外面を伝って突条まで落下する。そして、突条の上面を伝って流れる際に、凹部から下方へ落下する。つまり、付着した水滴は両側板間のスキマに達する前に下方に落下するので、水滴が凹所内へ浸入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、底板の周壁部の上面に設けた段部がダムのような作用をするので、底板の周壁部の上面に溜まった水滴が凹所側へ落下することを防ぐことができる。さらに、側板の下縁に沿って延びる突条などを形成した場合は、コンテナ外面に付着した水滴が凹所へ浸入しにくくなり、保冷コンテナとして衛生面などで特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンテナの外観斜視図である。
【図2】図1のコンテナの蓋の構造を示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は右側面図である。
【図3】図1のコンテナのコンテナ本体の外観斜視図である。
【図4】図1のコンテナのコンテナ本体の短側板を倒した状態を示す外観斜視図である。
【図5】図1のコンテナの底板の構造を示す図であり、図5(A)は平面図、図5(B)は短辺側側壁部の断面図、図5(C)は長辺側側壁部の断面図である。
【図6】図1のコンテナの底板の構造を示す斜視図である。
【図7】図1のコンテナの短側板の外面の構造を示す図であり、図7(A)は正面図、図7(B)は側面図である。
【図8】図1のコンテナの短側板の側部の構造を示す斜視図である。
【図9】図1のコンテナのロック機構を構成するロック部材の構造を示す図であり、図9(A)は正面図、図9(B)は平面図である。
【図10】図1のコンテナの長側板の構造を示す図であり、図10(A)は内面を示す正面図、図10(B)は側面図である。
【図11】図1のコンテナの長側板の側部の構造を示す斜視図である。
【図12】図1のコンテナの接続機構及びロック機構を説明する図である。
【図13】図1のコンテナのコンテナ本体の側板と底部との連結部を示す図であり、図13(A)は長側板と底部との連結部を示す側断面図、図13(B)は短側板と底部との連結部を示す側断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
保冷コンテナ1は、図1に示すように、物品収容凹所2(図3参照)を形成する底と側壁を有するコンテナ本体20を備える。さらに、コンテナ本体20の凹所2を閉じる蓋10を備える。以降の説明において、凹所2の側を内側(内方向)、その反対側を外側(外方向)という。
なお、本発明の保冷コンテナの「保冷」は、収容物の温度を保つことを意味し、「保温」も含む意味である。つまり、温かいものが収容される際には、保冷コンテナはその温度を保つ作用を有する。
【0015】
まず、蓋10の構造を説明する。
図2に示すように、蓋10は、平面形状が長方形で、所定の厚さを有する。蓋10の上面には、外縁に沿って高さの低い土手部11が形成されている。コンテナ積み重ね時、あるいは、蓋単体の積み重ね時には、この土手部11で囲まれた凹部内に、上に積み重ねられるコンテナ本体の下面に形成された下凸部、あるいは、蓋10の下面に形成された下凸部15(詳細後述)が嵌り込み、積み重ね時の安定を与える。また、土手部11の長辺の所定位置には凹部12が形成されており、この凹部12に、コンテナ本体20に蓋10をしたときに、蓋10をコンテナ本体20に留める留め部材13が取り付けられている。留め部材13には、弾性変形する係止片が設けられており、この係止片がコンテナ本体20に係止される。なお、この留め部材13は、折り畳んだコンテナ本体20に蓋10をしたときにも、蓋10とコンテナ本体20とを係止する。この例では、留め部材13は各長辺に2個ずつ取り付けられている。
【0016】
図2(B)に示すように、蓋10の下面には、蓋10の輪郭よりも一回り小さい輪郭の、下方に突出する下凸部15が形成されている。
【0017】
次に、図3、図4を参照してコンテナ本体20を説明する。
コンテナ本体20は、底を構成する平面形状が長方形の底板30と、側壁を構成する一対の短側板40及び一対の長側板60と、からなる。短側板40及び長側板60は、底板30に折り畳み可能に連結している。折り畳む際は、まず、図4に示すように、短側板40を内側に折り畳み、その後、長側板60を、折り畳まれた短側板40に重ねるように折り畳む。さらに、コンテナ本体20には、起立した短側板40と長側板60とを、コンテナ本体20の隅で接続する接続機構300(詳細後述)を備える。また、起立した短側板40と長側板60とをロックするロック機構400を備えてもよい(詳細後述)。
【0018】
底板30について、図5、図6を主に参照して説明する。
底板30は、平面形状が長方形の底部31と、底部31上面の周囲から立ち上がった周壁部32とを有する。周壁部32は、対向する一対の短辺側周壁部32Sと、一対の長辺側周壁部32Lとを有する。図3、4に示すように、短辺側周壁部32Sには、短側板40が起倒自在に連結され、長辺側周壁部32Lには、長側板60が起倒自在に連結されている。なお、短辺側周壁部32Sの高さは、長辺側周壁部32Lよりもが低くなっている。これは、コンテナ本体20を折り畳む際に、先に短側板40を折り畳み、折り畳まれた短側板40の上に長側板60を折り畳むためである。
【0019】
図5(B)に示すように、各短辺側周壁部32Sは、外側の平坦な平坦上面部33と、平坦上面部33の内側の縁に沿って立ち上がった段部34と、段部34の上端から底部31に向かって傾斜した傾斜面35とを有する。段部34は、平坦上面部33に水が溜まった場合に、ダムのような作用をして、水が底部31側へ流れ落ちるのを防ぐ。傾斜面35には、外方向に向かって凹んだ凹部36が2か所に形成されている。後述するように、この凹部36に、短側板40に形成された凸部46が嵌合する。
【0020】
また、図5(C)に示すように、長辺側側壁部32Lは、外側の縁に沿って形成された溝部37と、溝部37の内側の縁に沿って立ち上がる段部38とを有する。段部38の高さは、溝部の縁の高さよりも高く、長辺側側壁部32Lの上面の中で最も高くなっている。この段部38は、溝部37内に水が溜まった際に、この水が底部31側へ流れ落ちるのを防ぐためのものである。また、段部38の外側の面には、内方向に向かって凹んだ凹部39が2か所に形成されている。後述するように、この凹部39には、長側板60に形成された凸部79が嵌合する。
【0021】
短側板40について、図7を主に参照して説明する。
短側板40は、平面形状が略長方形の、ある程度の厚さを有する部材であり、幅は、底板30の短辺側周壁部32Sの長さよりも、長側板60の厚さの2倍程度短くなっている。これは、折り畳み時に、側板の厚さによる側板同士の干渉を避けるためである。
【0022】
図7(B)に示すように、上端面41の内側には、同端面41よりも一段低い内側端面42が形成されている。
【0023】
さらに、図7(B)に示すように、短側板40の下端面には、外縁に沿って立ち上がる下突条44と、その内側の凹部43が形成されている。凹部43の内側の部分は下突条44よりも下方に突出しており、底板30との連結部45となっている。この連結部45の外面には、凸部46が2か所に形成されている。これらの凸部46は、前述のように、短側板40が起立した際に、底板30の短辺側周壁部32Sに形成された凹部36(図5参照)に嵌合する。
【0024】
また、図7(A)に示すように、外面のほぼ中央には、持ち運び時に指先が入る凹部48が形成されている。この凹部48の上方には、ロック機構400を構成するロック部材100(詳細後述)を収容する凹部49が、短側板40の幅方向に渡って形成されている。さらに、外面には、上縁から凹部49に連通する溝部51が形成されている。この溝部51は、ロック部材100を操作する際に指を入り込ませて、ロック部材100を扱いやすくするためのものである。
【0025】
図8を参照して、短側板40の側部の構造を説明する。図8は、短側板30の側部を示す斜視図であり、図の紙面奥側の面が凹所2側の面(内側)、紙面手前側の面が反凹所側の面(外側)、右下側の面が側面である。
短側板40の外面40aと側面40bとの角は切り欠かれた形状となっており、外面40aから一段奥側の奥側外面40cと、側面40bから一段奥側の奥側側面40dとが形成されている。さらに、側面40bと奥側外面40cとの角の上部には、ほぼ直角に切り欠かれた形状の上凹部55が形成されている。この上凹部55は、短側板40の外面40aに形成された凹部49と連通しており、後述するように、ロック部材100のロック部104が収容される。
【0026】
上凹部55の下方には、奥側外面40cと側面40bとの間の角が切り欠かれた切欠き56が形成されている。この切欠き56は、短側板40と長側板60とのを隅部で接続するためのものである。切欠き56は、奥側外面40cから内方向(凹所方向)に延びるあり溝57と、あり溝57の側方において張り出したフランジ部58と、を有する。あり溝57の上下の端面と、フランジ部58の上下の端面は、端面間の幅が内側に向かうほど狭くなるように傾斜したテーパ面となっている。また、あり溝77の幅は、内側へ向かうほど狭くなっている。
なお、「あり溝」とは、二つの部材に、溝とそれにスライドして入る凸部が形成されており、溝は底広、凸部は頭広となっており、スライド方向と異なる方向には2部材が分離しないような溝をいう。
【0027】
図9を参照してロック部材の構造を説明する。
ロック部材100は、長尺状のある程度の硬さを有する樹脂成型品であり、長さは、短側板40の幅とほぼ等しい。ロック部材100は、図7に示すように、短側板40の外面の凹部49にスライド可能に収容されて、取り外し可能なカバー部材52、53で保持されている。
【0028】
図9に示すように、ロック部材100は、中央の波型バネ部101と、その両側のリング部103と、両端に配置されたロック部104と、リング部103とロック部104とを接続する接続部105とを有する。
波型バネ部101は、両リング部103及びロック部104を同バネ部に対して外方向に付勢している。
リング部103は、作業時に指を入れて互いに引き寄せて、波型バネ部101を圧縮させるためのものである。リング部103の内側の縁には、リング部103の内方向に張り出す張り出し部103aが形成されている。この張り出し部103aは、操作時に指を引っ掛けやすくするためのものである。さらに、両リング部103には、波型バネ部101の方向に延びるバネ片107が設けられている。これらのバネ片107は、リング部103を互いに引き寄せたときに下シール部材90に形成された突起(図示されず)に当接して弾性変形してバネ作用を生じる。
【0029】
ロック部104は、略直方体状の形状であり、図9(B)に示すように、外側の側面は、内から外に向かって広がるテーパ面104aとなっている。図9(B)に示すように、ロック部104は、ロック部材100のその他の部分と同一直線状ではなく、やや内側をこれらの部分と平行に外方向に延びている。
【0030】
各リング部103に指を挿入して、両リング部103を寄せると、波型バネ部101は収縮し、ロック部104は内方向に移動する。指を離すと、波型バネ部101はもとの形状に戻り、ロック部104は外方向へ移動する。
【0031】
長側板60について、図10を主に参照して説明する。図10(A)は、長側板60の内面を示す図である。
長側板60は、図10に示すように、平面形状が略長方形の、ある程度の厚さを有する部材であり、幅は、底板30の長辺側周壁部32Lの長さと等しい。
【0032】
長側板60の上端面61の内側には、同端面61よりも低い内側端面62が形成されている。図3に示すように、両側板40、60を起立させた状態においては、両側板の上端面41、61は同一面となり、内側端面42、62は同一面となる。そして、蓋閉時には、蓋10の下面に形成された下凸部15が、両側板40、60の内側端面42、62に乗り、下凸部15の外側の蓋10の下面が、両側板40、60の上端面41、61に乗る。
【0033】
図10に示すように、長側板60の下端面には、下方に突出した底板30との連結部63が同側板60の長手方向に沿って形成されている。連結部63の外面には、外方向に突出する外突条64が長側板60の長手方向に沿って形成されている。図3、図4に示すように、この外突条64の両端(短側板40との接続部)からやや内側の部分には、外突条64の上面と外面との角が斜めに切り欠かれた凹部65が形成されている。コンテナ使用時に長側板60の外面に結露が発生して、水滴が外面を伝って落下した際、水滴はいったん外突条64の上面に溜るが、その水滴は外突条64の上面を伝い、凹部65から底板30の周壁部32に落下する。つまり、水滴が外突条64の上面を伝って長側板60の側縁まで達し、両側板60、40のスキマから底部31側へ侵入することを防ぐことができる。
【0034】
さらに、図10に示すように、外突条64の下面には、下方に突出する下突条66が長側板60の長手方向に沿って形成されている。この下突条66の内面には凸部79が2か所に形成されている。これらの凸部79は、前述のように、長側板60が起立した際に、底板30の長辺側周壁部32Lに形成された凹部39(図5参照)に嵌合する。
【0035】
また、図4、図10に示すように、長側板60の外面の両側端部には、底板30の短辺側側壁部32Sに沿ってやや張り出した張り出し部67が形成されている。さらに、長側板60の外面の上端付近には、蓋10に取り付けられた留め部材13の係合片が係合する係合凹部71が形成されている。
【0036】
図11を主に参照して、長側板60の側部の構造を説明する。図11は、長側板60の側部を示す斜視図であり、紙面手前側の面が凹所2側の面(内側)、紙面奥側の面が反凹所側の面(外側)である。
図に示すように、長側板60の内面の張り出し部67からやや内寄りの位置には、短側板40に取り付けられたロック部材100(図9参照)のロック部104が係合する突部73が形成されている。この突部73とロック部材100により、短側板40と長側板60とがロックされる(詳細は後述する)。突部73は、ある程度の高さを有し、内側の側面は、長側板60の内面から斜め外方向に傾斜した傾斜面73aとなっており、外側の側面は、長側板60の内面にほぼ垂直な垂直面73bとなっている。この垂直面73bと、張り出し部67との間には所定のスキマが開いている。
【0037】
突部73の下方には、前述した短側板40に形成した切欠き56に係合する突片75が立設されている。この突片75と、短側板40の側部に形成した切欠き56により、短側板40と長側板60とが隅部で接続される。突片75は、長側板60の内面に突設された平面形状が長方形状の基部76と、基部76よりも長側板の上下方向において幅広の張出部77とを有する。基部76の上下端面と、張出部77の上下端面とは、端面間の幅が内側に向かうほど狭くなるように傾斜したテーパ面となっている。また、張出部77の厚さは、内側に向かうほど狭くなっている。
【0038】
次に、図12、図13を参照して、組み立て時の短側板と長側板との接続機構300、及び、両側板のロック機構400を説明する。
コンテナ本体20を組み立てる際は、まず長側板60を回動して起立させる。この際、図13(A)に示すように、長側板60の連結部63が底板30の長辺側側壁部32Lの段部38に乗り、外突条64は溝部37上に乗って、下突条66が溝部37に嵌り込む。そして、下突条66に形成された凸部79(図10参照)が、段部38に形成された凹部39(図5(C)参照)に嵌合する。この状態において、例えば、長側板60の外面に付着した水滴が長側板60の長辺側側壁部32Lとの間(溝部37)に浸入した場合、水滴は溝部37の外側の縁を超えて外に流れ落ちるが、内側には段部38が存在するのでせき止められ、底部31側へは流れ落ちない。
【0039】
その後、図12(A)に示すように、短側板40を回動する。すると、まず、図12(B)に示すように、短側板40の切欠き56に長側板60の突片75が係合し始める。すると、側板同士が離間し得なくなる。この状態となった後に、短側板40のロック部材100のロック部104が、長側板60の内面に形成された突部73に達し、ロック部材100のロック部104のテーパ面104aが突部73のテーパ面73aに沿って乗り上げ始める。これにより、ロック部104が内方向に押される。ロック部材100の姿勢は保持されているので、このロック部104の内方向への移動は、波型バネ部101の収縮により吸収される。
【0040】
さらに短側板40を回動させると、図12(C)に示すように、短側板40の切欠き56に長側板60の突片75が完全に係合する。この際、突片75の張出部77が、切欠き56のあり溝57に嵌り込み、基部76がフランジ部58間に嵌り込む。言い換えれば、短側板40のフランジ部58は、長側板60の内面と突片75の張出部77との間に挟み込まれる。
【0041】
突片75と切欠き56との係合面は、前述のようなテーパ面となっているので、楔効果により両側板40、60が引き寄せられるように固定される。これにより、両側板は高さ方向にも横方向にもガタつかないように接続される。さらに、突片75と切欠き56の位置や寸法を厳密に合わせておくことにより、接続された短側板40と長側板60の上端面41、61、及び、内側端面42、62を同一面に合わせることができる。この場合、上端面41、61間、及び、内側端面42、62間に段差がないので、蓋10と、内側端面42、62、及び、上端面41、61との間にスキマが生じず、密閉性が得られる。
【0042】
そして、図13(B)に示すように、短側板40の連結部45が、底板30の短辺側周壁部32Sの傾斜面35に当接する。そして、短側板40の下突条44が短辺側側壁部32Sの平坦上面部33に乗り、下突条44と連結部45の間の凹部43に短辺側側壁部32Sの段部34が嵌り込む。この際、短側板40の連結部45の外面に形成された凸部46が、短辺側周壁部32Sの傾斜面35に形成された凹部36に嵌合する。
【0043】
そして、短側板40の奥側外面40cが長側板60の張り出し部67に当接するとともに、ロック部材100のロック部104が突部73から離れて、波型バネ部101により外方向に付勢され、突部73の垂直面73bと長側板60の張り出し部67との間に嵌り込む。これにより、短側板40と長側板60が起立状態でロックされる。このように、起立した長側板60に対して短側板40を回動させるだけで起立した両側板60、40をロックできる。
【0044】
以上のように構成されたコンテナは、特に保冷コンテナとして有効な以下の特長を有する。
(1)長側板60の外面が結露して水滴が付着した場合、図13(A)に示すように、水滴は長側板60の外面を伝って外突条64の上面に溜るが、その水滴は外突条64の上面を伝い、凹部65から底板30の周壁部32の外面に落下する。つまり、水滴が外突条64の上面を伝って長側板60の側縁まで達し、両側板60、40のスキマから底部31側へ侵入することを防ぐことができる。
(2)水滴が長側板60の表面を伝って底板30の長辺側側壁部32Lの上面に流れ落ちた場合には、水滴は長辺側側壁部32Lの溝部37に溜まる。長辺側側壁部32Lの上面においては、段部38の高さが溝部37の縁の高さよりも高いので、溜まった水は溝部37の外側の縁から長辺側側壁部32Lの外面へ流れ出す。このように、段部38がダムのような作用をし、水滴が底部31側へ流れ落ちることを防ぐ。
(3)水滴が短側板40の表面を伝って底板30の短辺側側壁部32Sの上面に流れ落ちた場合には、水滴は短辺側側壁部32Sの平坦上面部33に溜まる。短辺側側壁部32Sの上面においては、段部34が平坦上面部33よりも高いので、溜まった水は平坦上面部33の外側の縁から短辺側側壁部32Sの外面へ流れ出す。このように、段部34がダムのような作用をし、水滴が底部31側へ流れ落ちることを防ぐ。
【0045】
(4)長側板60と短側板40とは、突片75と切欠き56との係合面の楔効果により引き寄せられるように固定され、両側板は高さ方向にも横方向にもガタつかないように接続される。また、突片75と切欠き56の位置や寸法を厳密に合わせておくことにより、接続された短側板40と長側板60の上端面41、61、及び、内側端面42、62を同一面に合わせることができ、蓋10との間にスキマが生じず、密閉性が得られる。
(5)また、両側板40、60と底板30とは、凹凸嵌合(短側板40の凸部46と短辺側周壁部32Sの凹部36、長側板60の凸部79と長辺側側壁部32Lの凹部39)する。底板30と両側板40、60との間の回転支点は、ある程度のガタが残っているので、この回転支点のみでは底板30と両側板40、60との接続強さは十分ではない。そこで、両者を凹凸嵌合により連結することにより、底板30と両側板40、60との固定をより強固にできる。
【0046】
一方、折り畳み時は、ロック部材100の両リング部103を中央に寄せる。この際、指を短側板40の外面に形成した溝部51に沿わせると、リング部103をつかみやすい。すると、ロック部104が、長側板60の突部73と張り出し部67との間から抜け出し、ロックが解除される。このように、ワンタッチ式でロック機構400を解除できる。その後、短側板40が長側板60の突部73を過ぎるまで両リング部103を中央に寄せたまま短側板40を倒せばよい。
【符号の説明】
【0047】
1 コンテナ 2 物品収容凹所
10 蓋 11 土手部
12 凹部 13 留め部材
15 下凸部
20 コンテナ本体
30 底板 31 底部
32 周壁部 33 平坦上面部
34 段部 35 傾斜面
36 凹部 37 溝部
38 段部 39 凹部
40 短側板 40a 外面
40b 側面 40c 奥側外面
40d 奥側側面 43 凹部
44 下突条 45 連結部
46 凸部 51 溝部
52、53 カバー部材 55 上凹部
56 切欠き 57 あり溝
58 フランジ部
60 長側板 61 上端面
62 内側端面 63 連結部
64 外突条 65 凹部
66 下突条 67 張り出し部
75 突片 76 基部
77 張出部 79 凸部
100 ロック部材 101 波型バネ部
103 リング部 104 ロック部
105 接続部 107 バネ片
300 接続機構 400 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品収容凹所を形成する、底板及び側壁を有する折り畳み式の保冷コンテナであって、
前記側壁は、
前記底板の一方の対向する辺に起立転倒自在に連結された一対の第1側板と、
前記底板の他方の対向する辺に起立転倒可能に連結された一対の第2側板と、
前記第1側板を起立させた後で前記第2側板を起立させた際に、前記第1側板と第2側板とを隅部で接続する接続手段と、を具備し、
前記底板の辺部の上面(前記側板の下端面との当接面)に、該上面内において最も高い、内側縁に沿って立ち上がる段部が形成されていることを特徴とする保冷コンテナ。
【請求項2】
物品収容凹所を形成する、底板及び側壁を有する折り畳み式の保冷コンテナであって、
前記側壁は、
前記底板の一方の対向する辺に起立転倒自在に連結された一対の第1側板と、
前記底板の他方の対向する辺に起立転倒可能に連結された一対の第2側板と、
前記第1側板を起立させた後で前記第2側板を起立させた際に、前記第1側板と第2側板とを隅部で接続する接続手段と、を具備し、
前記底板の辺部の上面(前記側板の下端面との当接面)に、該上面内において最も高い、内側の縁に沿って立ち上がる段部が形成されており、
前記側板の下端面(前記底板の辺部の上面との当接面)に、外側の縁に沿って立ち上がる下突条が形成されており、
前記側板が起立した際に、前記底板の辺部上面に形成した段部の高さが、前記側板の下端面に形成した下突条の下面の高さよりも高いことを特徴とする保冷コンテナ。
【請求項3】
前記各側板の底部と前記底板の辺部との間に、該側板起立時に嵌合する凹部と凸部とが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保冷コンテナ。
【請求項4】
前記第1側板及び/又は第2側板の外面下端部に、該側板の長手方向に延びる突条が形成されており、
該突条の両端部から内寄りの位置に、上角部を切り欠いた凹部が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の保冷コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−37500(P2011−37500A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188492(P2009−188492)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】