説明

保冷箱

【課題】貫通孔周囲の変形を防止して、保冷効果を維持させる保冷箱を提供する。
【解決手段】底面壁12Tと側面壁12A,12B,12C,12Dとを有する内ケース12と外ケース10との間に、真空断熱材14を含む断熱材を配設した保冷箱であって、前記真空断熱材は前記内ケースの外側面又は外ケースの内側面に沿い、前記真空断熱材の少なくとも2つの構成面部14T,14A,14Cが一体に連続していると共に屈曲部14K,14K’を介して折れ曲がっており、真空断熱材には、所定の部位12S又は部材を挿通させる貫通孔14Hを前記屈曲部に位置して設けているよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りやレジャーに使用できるクーラーボックス等の保冷箱(保温箱を含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
グラスウールや発泡ウレタン等の芯材をラミネート用の樹脂被覆材によって被覆し、被覆材の内部の空気を抜いて低気圧化させた、所謂、真空断熱材がある。従来から保冷箱にこうした真空断熱材が使用されており、その真空断熱材には、配線、配管等の部材を挿通させる貫通孔が設けられている。
例えば、特許文献1の公報には、ガスバリアー性包装材よりなる袋の中に断熱芯材が封入された真空断熱材が貫通孔を有し、この貫通孔の内周部に沿ってガスバリアー性包装材同士をシールした真空断熱材が開示されている。
【特許文献1】特開平8−303686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、上記のような真空断熱材を保冷箱に用いた場合、平面状の真空断熱材に貫通孔を設けているため、温度差に起因して貫通孔の周囲が変形して浮き上がった場合、ここから冷気が逃げ、所定の断熱性能が得られないという不具合があった。
依って解決しようとする課題は、真空断熱材を保冷箱に用いた場合、貫通孔周囲の変形を防止して、保冷効果を維持させることのできる保冷箱の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題解決のために第1の発明では、底面壁と側面壁とを有する内ケースと外ケースとの間に、真空断熱材を含む断熱材を配設した保冷箱であって、前記真空断熱材は前記内ケースの外側面又は外ケースの内側面に沿い、前記真空断熱材の少なくとも2つの構成面部が一体に連続していると共に屈曲部を介して折れ曲がっており、真空断熱材には、所定の部位又は部材を挿通させる貫通孔を前記屈曲部に位置して設けていることを特徴とする保冷箱を提供する。
保冷箱は保温箱にも使用できるのであり、本願の保冷箱は保温箱をも含む意味で用いている。
本願での挿通とは、真空断熱材の内側と外側とに亘って完全に突き抜けるように通っている場合の他、この真空断熱材の厚さ範囲内に侵入している場合も含む広い意味である。
【0005】
第2の発明では、第1の発明の貫通孔には少なくとも内ケース又は外ケースの一部分が挿通されている保冷箱を提供する。
第3の発明では、第2の発明の真空断熱材は、底面部と少なくとも1つの側面部とが連続していて、その屈曲部に前記貫通孔が位置して設けられており、該貫通孔に内ケースの底面壁に設けた水抜き用水路部が挿通されている保冷箱を提供する。
【発明の効果】
【0006】
例えば水抜き用の水路部や温度計等の所定の部位又は部材を、真空断熱材を挿通させる必要性がある。このための貫通孔を設ける場合、仮に真空断熱材を構成する構成面部の広がり面部に位置して設けた場合、保冷箱の実使用時には真空断熱材の外側と内側とでは温度差が大きくなり得て、この温度差のために貫通孔の縁部が変形する。温度差の無い状態での真空断熱材の貫通孔周辺領域は何れかのケース面に沿うように配設されていて、保冷効果を保持させようとしているが、実際の温度差によって貫通孔の縁部が変形した場合、ケースとの間に隙間を生じ、保冷箱の保冷効果が低減してしまう。これを防止するために、第1の発明では、貫通孔を、連続した2つの構成面部の屈曲部に位置して設ける。屈曲部はその形態に起因して変形し難い。従って、温度差が生じても貫通孔の縁部が変形し難くなるので、貫通孔周辺部はケースとの間に隙間を生じ難く、保冷効果を維持できる。
【0007】
第2の発明では、真空断熱材の貫通孔に内ケースか外ケースの一部分が挿通しているため、保冷箱を組み立てる際にこれらのケースに対する真空断熱材の位置決めができ、組み立てが容易になる。
【0008】
内ケースに設けた水抜き用水路部は、必然的に外ケースに連通させて水を外部に出す必要があるが、第3の発明では、水抜き用水路部を、側面壁に設けるよりも位置が低くて水抜き効果が高くなるように内ケースの底面壁に設けている。この位置の水抜き用水路部は、該内ケースと外ケースとの間に位置する真空断熱材の底面部と側面部とを連続させている屈曲部に貫通孔を位置させることを要するが、既述の如く、この屈曲部位置の貫通孔の縁部は変形し難く、その分、ケースとの間に隙間を生じ難くて保冷効果が維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る保冷箱の斜視図、図2は図1の保冷箱の排水口周辺の拡大断面図、図3は図1の保冷箱の主たる構成面部材の分解図、図4は図3の主たる構成部材の組立途中における排水口周辺の拡大断面図である。この保冷箱は、釣りやレジャー等に使用される、所謂、クーラーボックスである。直方体状の外ケース10と、直方体状の内ケース12と、これらの間に配設される真空断熱材14が主たる構成部材である。
【0010】
外ケース10における左右の側面壁10A,10Cには取付部10Sが設けられ、クーラーボックスを携帯する時に用いるショルダーベルト22やハンドル20が取り付けられている。また、外ケース10の内側には収納部10SNが形成され、その上方に開口部10KKを有し、該開口部10KKには、開閉操作部10Kを介して開閉自在な蓋体10Fが設けられている。前記収納部10SNには内ケース12が収納されている。この内ケース12は、上方に開口部12KKを有し、底面壁12Tと、側面壁12A,12B,12C,12Dとによって囲まれ、内部には収納部12SNが形成されており、各側面壁上端にはフランジ部12Fが形成されている。このフランジ部を外ケース10の各側面壁上端10Fに載置させて外ケース10と内ケース12の間に適宜な隙間空間KKを設けている。
【0011】
この隙間空間KKに断熱材を設けて保冷効果を維持させる。まず、内ケース12の外側各面に沿うように、真空断熱材14の各面部を形成、配設する。内ケース外側面に沿わせるのはホットメルト等の接着剤を用いて接着して行っている。ここでの真空断熱材14は、屈曲部14K,14K’を介して底面部14Tに対して左右の側面部14A,14Cを一体に連続させたコ字状部材KBと、前後の側面部14B,14Dとを別体で有している。内ケース12の底面壁12Tと1つの側面壁12Aとの連結折曲部の外側面に、コ字状部材KBの底面部14Tと一方の側面部14Aとを連結した屈曲部14K’の内側面が合致して配設され、これで相対移動が規制されてコ字状部材KBの内ケース12に対する位置決めが成される。コ字状部材と他の部材14B,14Dとは、当接する周縁部に沿ってフィルム状のテープを貼着して接合し両者の隙間を塞いでいる。
【0012】
底面部14Tに左右側面部14A,14Cを連続させたコ字状部材KBにおいて、底面部14Tと一方の側面部14Aとの屈曲部14Kに位置するように、所定の大きさの貫通孔14Hを形成している。これは、内ケース12の底面壁12Tの、側面壁12Aとの連結折曲部12ATに近い所から設けた水抜き用の水路部12Sを挿通させるためである。
【0013】
真空断熱材14は、発泡性ポリウレタン等の合成樹脂、又はグラスウール等の無機繊維集合体を板状に成形した芯材Sを、外側被覆材SZと内側被覆材UZのガスバリアー性のラミネートフィルム等の被覆材によって包み、被覆材の中の空気を抜き取り、10パスカル程度に減圧密封して形成する。貫通孔14Hを設ける領域には、芯材は無く、外側被覆材SZと内側被覆材UZとによって形成している。
【0014】
図2に現れているように、この例では、水路部12Sの構成壁部は内ケース12の底面壁12Tに対して下方に突出するようにして形成されており、この水路部12Sには、後述の通水管18のフランジ部が侵入する。この通水管18をできるだけ低い位置に装着することが、通水管18を介した水抜き効果を高めるため、水路部12Sは底面壁12Tの内側面に対して下方に掘り下げるように形成している。この水路部は、真空断熱材14の貫通孔14Hの内の、底面部14T側に延伸している孔部分14THに挿通しており、一方の側面部14A側に延伸している孔部分14AHには、円筒状部材の通水管18が挿通している。
【0015】
しかし、この例に限らず、水路部12Sを側面部14A側の孔部分にも挿通させるように、その方向に水路部12Sを突出形成しても良い。通水管18の一端部(フランジ部)は内ケース12の内部に位置し、他端部は外ケース10の一側面壁10Aの下部に設けた孔10Hを通過している。この孔10Hは凹部10Rに位置しており、通水管18の前記他端部はこの凹部10R内に収まっている。この他端部には、栓体STが着脱可能に装着されており、通水管18の排水口を塞いだり、開放したりできる。この栓体も凹部内に収まっている。参照番号STNは、栓体が保冷箱から紛失することを防止するストッパー部材である。このようにして貫通孔14Hには、内ケース12と外ケース10の少なくとも何れか一方の一部分、若しくは内ケース12と外ケース10の少なくとも何れか一方に設けられた部材が挿通している。
【0016】
図2に現れているように、外ケース12と内ケース10との間の隙間空間KKには、内ケース12の外側面に沿って真空断熱材14が配設されているが、この他の隙間部には発泡性ポリウレタンや珪酸カルシウム等の発泡断熱材16が注入、充填され、断熱効果を高め、真空断熱材14の移動をも規制する。また、図3の外ケースの参照番号10K’は、蓋体の開閉操作部10Kの収納凹部である。
【0017】
図5は真空断熱材14の底面部14Tを含んだコ字状部材KBの製法を説明する図である。真空断熱材14は、予め芯材Sに貫通孔(14h)を形成しておき、外側被覆材と内側被覆材とによるガスバリアー性のラミネートフィルムからなる袋体の中に芯材Sを挿入し、袋体開口部と貫通孔内周部をヒートシールして封止しつつ内部を減圧することで、図5のように、一辺が湾曲状となった略四角形(言わば弾丸状)の貫通孔14H’を所定位置に形成した平板状の真空断熱材用の部材を形成する。この部材は、底面部に左右の側面部14A,14Cを併せた大きさである。貫通孔を横断する位置の所定ライン14KLと、他の所定ライン14KL’に沿って折り曲げる。この各所定ラインが屈曲部14K,14K’となり、貫通孔14H’は貫通孔14Hとなる。芯材Sにおける真空断熱材14の貫通孔14H(又は14H’)に対応する位置に設けられた孔14hは、貫通孔14H(14H’)よりも大きく形成されている。また、貫通孔14Hはその中央側に、外側被覆材SZと内側被覆材UZの端部が突出して小さくなり、その厚さ方向両側で大きくなっている。
【0018】
屈曲部14Kの詳細を図6と図7に示す。屈曲部14Kの内側に位置して前記各ラインに沿って溝状部を押圧形成しておくのである。即ち、図6に示すように、貫通孔14Hの周辺部は外側被覆材SZと内側被覆材UZとのラミネート構造であるが、この内側被覆材UZに溝状部UZKを形成しておく。また、貫通孔14Hの周辺部以外では、内外被覆材UZ,SZに芯材Sを挟んでおり、図7に明瞭に現れているように、この芯材Sと内側被覆材UZとに溝状部SK,UZKを形成しておく。その後、図5に示すように、折り曲げるのである。
【0019】
図2に示すように、外ケースの凹部10Rの奥部も外側から貫通孔内に差し込まれているが、真空断熱材14の貫通孔14Hには、外ケース10又は内ケース12の何れかが挿通されていれば良く、また、内側から外側に通り抜けていなくても一部が差し込まれてる(侵入している)ものも挿通されたものとする。なお、真空断熱材14の貫通孔14Hに外ケース10又は内ケース12の何れかが通り抜けていて挿通されていてもよい。また、真空断熱材14は内ケース12の外側に沿わせたが、外ケース10の内側に沿わせてもよい。そして、保冷箱を使用していない時等、真空断熱材14の外側と内側の温度差の無い状態において、貫通孔14Hの周辺領域は、内ケース12の外側面又は外ケース10の内側面に接触又は近接しており、この保冷箱を使用して温度差が生じても、貫通孔14Hが屈曲部14Kに位置して設けられているため、変形し難く、真空断熱材14と内ケース12又は外ケース10との隙間が生じ難くて保冷効果を保持できる。
【0020】
更には、上記例では貫通孔を底面部14Tと側面部14Aとの屈曲部14Kに設けたが、真空断熱材14を構成する側面部同士が一体的に連続、例えば、側面部14Aと14Bとが連続しており、その屈曲部の適宜な高さ位置に貫通孔を設け、該貫通孔を介して外ケースから内ケースに亘って温度計等の温度センサー等を挿入配設することもできる。更に、底面部14Tや側面部14A等の一部を屈曲形状にして屈曲部を形成し、この屈曲部に貫通孔14Hを位置させることもできる。この場合も、貫通孔が屈曲部に位置しているため、貫通孔縁部の変形を抑えて保冷効果を維持できる。また、真空断熱材構成面部の側面部は、4側面部全てを有することが好ましいが、何れかが無い場合もありえる。
なお、保冷箱が複数の真空断熱材を有している場合は、少なくとも1つの真空断熱材に本願の構成を有していれば良い。また、真空断熱材の屈曲部は、内ケースの外側面又は外ケースの内側面に沿うようにL字状やコ字状やロ字状等、様々に屈曲させて形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、魚釣りやレジャーに使用するクーラーボックス等の保冷箱(や保温箱)に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明に係る保冷箱の斜視図である。
【図2】図2は図1の保冷箱の排水口周辺の拡大断面図である。
【図3】図3は図1の保冷箱の主たる構成部材の分解図である。
【図4】図4は図3の主たる構成部材の組立途中における排水口周辺の拡大断面図である。
【図5】図5は真空断熱材のコ字状部材の製法を説明図である。
【図6】図6は屈曲部の詳細を示し、貫通孔を通る位置の部分断面図である。
【図7】図7は屈曲部の詳細を示し、貫通孔を通らない位置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 外ケース
12 内ケース
12A,12B,12C,12D 側面壁
12S 水抜き用水路部
12T 底面壁
14 真空断熱材
14A,14B,14C,14D 側面部
14H 貫通孔
14K,14K’ 屈曲部
14T 底面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面壁と側面壁とを有する内ケースと外ケースとの間に、真空断熱材を含む断熱材を配設した保冷箱であって、
前記真空断熱材は前記内ケースの外側面又は外ケースの内側面に沿い、前記真空断熱材の少なくとも2つの構成面部が一体に連続していると共に屈曲部を介して折れ曲がっており、
真空断熱材には、所定の部位又は部材を挿通させる貫通孔を前記屈曲部に位置して設けている
ことを特徴とする保冷箱。
【請求項2】
前記貫通孔には少なくとも内ケース又は外ケースの一部分が挿通されている請求項1記載の保冷箱。
【請求項3】
前記真空断熱材は、底面部と少なくとも1つの側面部とが連続していて、その屈曲部に前記貫通孔が位置して設けられており、該貫通孔に内ケースの底面壁に設けた水抜き用水路部が挿通されている請求項2記載の保冷箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−195494(P2007−195494A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19899(P2006−19899)
【出願日】平成18年1月28日(2006.1.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(591025082)日泉化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】