説明

保守品一体型通信装置

【課題】通信装置と保守コンソールとの状態把握や状態比較を容易に行うことを実現した保守品一体型通信装置を提供すること。
【解決手段】通信装置3と、通信装置3が有する基板の予備基板4と、通信装置3とデータの送受信可能に接続され、通信装置3の状態把握及び各種の設定を行う保守コンソール5と、通信装置3の保守作業用の情報が記載された取扱説明書7と、通信装置3の保守作業用の保守工具6と、通信装置3、予備基板4、保守コンソール5、取扱説明書7及び保守工具6を収納する架台2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守コンソールによって稼働状況の監視や各種の設定が行われる通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伝送装置や交換装置といった通信装置においては、通信装置本体と保守コンソールとによって構成されているものが一般的である。通信装置の稼働状況の監視や、通信回線の増設、廃止などに伴う設定変更は、保守コンソールによって行われている。
【0003】
通信装置に障害等が発生すると、通信装置の状態を集中管理しているOA室の警報装置が発動する。そして、必要に応じて作業員が装置の設置場所に状況把握に出向き、装置本体の状態や、保守コンソールによって警報表示の確認を行う。また、作業員は、出向く際に、必要と推定される部品や保守工具を持参する。
【0004】
そして、作業員は、障害状況の詳細を把握するために、現地に保管されている取扱説明書を参照したり、保守工具を用いて点検作業を行ったりすることにより、障害原因を特定する。そして、障害原因が特定できた場合には、現地保管あるいは持参した予備部品と不良部品とを交換したり、交換するまでもなく修理可能であるならば、保守工具を用いて修理を行ったりして、障害を取り除いて通信装置を復旧させる。
【0005】
従来のこの種の技術としては、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、分散制御システムにおいて、制御装置の異常診断及び保守支援をする保守支援装置とホスト計算機を具備し、保守支援装置は、異常診断用知識ベースと制御装置に対する異常診断と保守支援を推論する推論機構を内蔵し、ホスト計算機は、保守支援に必要なデータベースを保有し、制御装置の異常診断を知識ベースの異常診断ルールと推論機構ないしは対話手段を使用して行い、異常個所部品を同定し、ホスト計算機の保守支援データベースから得られる当該部品に関連する制御装置名称、部品名称、部品形式、部品の取り付け位置、制御装置内部品の予備品の管理状況、交換来歴、部品別交換周期、部品交換作業手順をCRT画面上に表示及びプリンタする。これにより、分散型制御システムにおける制御装置の異常を診断した後、保守が容易にできるように、保守に関連する情報を集約して、CRT画面上に自動的に表示し、保守時間の短縮かつプラントの稼働率向上を図るようにするプラントの保守支援装置が提案されている。
【特許文献1】特開平5−168070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通信装置の障害が発生した場合、状況把握のため現地へ出向いて装置本体と保守コンソールにおける警報表示等を確認することになるが、例えば、図3に示すように、装置本体は通信機械室で、保守コンソールはOA室にあるなど設置場所が離れている場合が多い。このため、通信装置と保守コンソールとの両方の状態の把握や状態の比較に時間を要し、復旧に時間がかかるおそれがある。
【0007】
また、障害状況把握のためには、取扱説明書を参照する必要がある場合があることから、取扱説明書が、例えば現地の書棚に保管されている。しかしながら、時折、現地ではなく有人の管理箇所にのみ保管されている場合があり、現地での障害状況把握が困難になるおそれがある。
【0008】
しかも、通信装置の修理が必要となった場合には、予備基板や保守工具が必要となる。しかし、現地に、予備の基板が見あたらなかったり、あるいは無かったりするおそれがある。また、工具についても装置専用工具が必要となる場合があり、持参した工具に必要な工具がなかったり、また、使用頻度が少ない工具であれば、他の工具箱に紛れていて探し出すのに時間を要したりする、といった問題が発生するおそれがある。
【0009】
ところで、障害が発生した通信装置を復旧させる場合には、装置の管理者あるいはサービスマンといった専門的知識を有するものでなければ、復旧作業行うことは難しい。しかし、緊急を要する連絡を行う必要がある場合など、サービスマンが来るまで待てないような場合もあり、できるだけ早く復旧させることが望ましいことはいうまでもない。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、通信装置と保守コンソールとの状態把握や状態比較を容易に行うことを実現した保守品一体型通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、以下のような保守品一体型通信装置を提供する。
【0012】
(1) 通信装置と、当該通信装置が有する基板の予備基板と、前記通信装置とデータの送受信可能に接続され、前記通信装置の状態把握及び各種の設定を行う保守コンソールと、前記通信装置の保守作業用の情報が記憶された記憶部材と、前記通信装置の保守作業用の工具と、前記通信装置、前記予備基板、前記保守コンソール、前記記憶部材及び前記工具を収納する架台と、を備えることを特徴とする保守品一体型通信装置。
【0013】
(1)の保守品一体型通信装置によれば、通信装置と保守コンソールとが同一の架台内に設置されているため、通信装置と保守コンソールとの状態把握や状態比較を行うことができる。しかも、通信装置に不具合が発生している場合には、保守作業用の情報が記憶された記憶部材があるため、作業方法を容易に閲覧することが可能となり、しかも、工具や予備基板が備えられているため、迅速に、基板の交換や修理といった作業を迅速に進めることが可能になる。
【0014】
(2) (1)の保守品一体型通信装置において、前記架台に、前記通信装置を撮影し、撮影データを前記保守コンソールに送信する撮像装置を備え、前記保守コンソールは、前記撮影データに基づいて前記通信装置からの発生熱を監視することを特徴とする請求項1記の保守品一体型通信装置。
【0015】
(2)の保守品一体型通信装置によれば、保守コンソールが撮像装置の撮像データに基づいて通信装置からの発生熱を監視するため、例えば、通信装置が熱すぎると判定した場合には、警告を発生するなどによち、障害の発生を未然に防ぐことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通信装置と保守コンソールとの状態把握や状態比較を容易に行い、しかも迅速に、基板の交換や修理といった作業を迅速に進めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における保守品一体型通信装置の外観構成を示す説明図である。
【0019】
保守品一体型通信装置1は、上下方向に複数段の台座を有する架台2に、通信装置3、予備基板4、保守コンソール5、保守工具6、取扱説明書7を設置することによって構成される。架台2の最下段には取扱説明書7が収納され、その1つ上段には保守コンソール5及び保守工具6が配置されている。なお、保守工具6が最下段で取扱説明書7がその上段であっても、保守工具6及び取扱説明書7が最下段でも良いが、保守工具6が最下段で取扱説明書7がその上段であることが望ましい。保守コンソール5の上段には予備基板4が配置されている。さらにその上段にある二段には通信装置3が設置される。
【0020】
予備基板4を配置する段には、予備基板4を縦にした状態で保持しかつ前後方向に引き出し可能なスロット10aを複数有する収納箱10が設置されている。収納箱10には、各スロット10aに対応してそれぞれスロット部LED11が設置されている。また、通信装置3には、故障が発生した場合に点灯する警告表示パネル20が設けられている。また、架台2において通信装置3を撮影することが可能な位置に赤外線カメラ30が設置されている。
【0021】
図2は本実施形態の制御系を示すブロック図である。保守コンソール5は、接続ケーブルによって通信装置3、収納箱10、赤外線カメラ30に接続されている。さらに、保守コンソール5は、外部の有人の端末に有線又は無線によってデータの送受信が可能となっている。また、保守コンソール5と通信装置3とは、接続ケーブルを介してデータの送受信が可能であり、通信装置3を交換あるいは増設や廃止を行った場合の各種設定は保守コンソール5を操作することによって行われる。また、保守コンソール5には、赤外線カメラ30の撮像データに基づいて、通信装置3及びその周辺の温度を検出する。保守コンソール5は、通信装置3が異常に熱いと判定した場合には、警告を外部端末に向けて出力する。
【0022】
また、通信装置3は、自体において故障あるいは動作不良といった不具合を検知した場合には、不具合が発生した基板や動作内容のデータを保守コンソール5に送信すると共に、警告表示パネル20を点灯させる。
【0023】
保守コンソール5はノート型パーソナルコンピュータからなり、CPU100、ハードディスクドライブといった大容量記憶装置110、ディスプレイ120、マウス、キーボード等の入力装置130等が備えられている。大容量記憶装置110には、取扱説明書7のデータや通信装置3の各種設定データは保守コンソール5に記憶されている。このため、取扱説明書7の内容は、取扱説明書7以外でも入力装置130を操作して、取扱説明書7の情報をディスプレイ120に表示することによって、閲覧することが可能である。特に、通信装置3の基板の交換作業については、作業手順を示す写真あるいは動画のデータや音声ガイダンスのデータが記憶されている。また、大容量記憶装置110には、収納箱10に収納されている予備基板4の情報がスロット部LED11に関連付けて記憶されている。さらに、他にも大容量記憶装置110には、通信装置3の各種設定データや、保守に必要な工具に関する情報が記憶されている。
【0024】
保守コンソール5は、通信装置3からのデータに基づいて通信装置3の状態を監視する。通信装置3から不具合を検知した際のデータを受信した場合には、通信装置3からのデータに基づいて、不具合が発生した基板の種類を判別し、同じ種類の基板が予備基板4の中に存在する場合には、該当する基板に対応するスロット部LED11を点灯させる処理を行う。また、通信装置3の基板を取り外すために必要な工具や、取扱説明書7の中から取り外しの手順あるいは修理の手順が記載されている情報を検索し、ディスプレイ120に表示可能な状態にする。
【0025】
そして、作業員は、保守コンソール5を操作して、ディスプレイ120に不具合に関する情報を表示させる。この時、保守工具6や、取扱説明書7の中の不具合に関連する情報が記載されていると推定されるページなどをディスプレイに表示する。作業員は、これらの表示を見て、架台2に載置されている保守工具6の中から指定の工具を取り出し、スロット部LED11が点灯しているスロットから予備基板4を取り出し、取扱説明書7の内容に従って保守作業を進める。ディスプレイ120に表示された取扱説明書7の内容が読みにくい場合には、架台2に載置されている取扱説明書7を見ながら作業を進め、不具合を解消して、通信装置3を復旧させる。
【0026】
また、専門的知識を持っていない作業員であっても、基板の交換であれば作業を行うことができる。まず、必要とする工具に関する情報をディスプレイ120から得ることにより、保守工具6の中から必要な工具を取り出す。次に、動画を見ながら動画に示される手順と同じように作業を進めることにより、故障の可能性がある基板を新規の予備基板4に交換することが可能である。仮に、この交換作業によって、通信装置3が復旧しない場合には、専門的知識を持つ作業員に復旧作業を行ってもらうことが望ましい。
【0027】
なお、本実施形態においては、大容量記憶装置110に取扱説明書7のデータを記憶しているが、それに限らず、取扱説明書7のデータを、CD−ROMあるいはDVD−ROMといったディスク状記録媒体やUSBメモリといった外部記憶媒体に記憶し、必要に応じて保守コンソール5に取り付けて取扱説明書7のデータをディスプレイ120に表示させても良い。また、これらの外部記憶媒体を取扱説明書7と共に架台2に収納しても良い。
【0028】
さらに、保守コンソール5に、赤外線カメラ30の他に、外部の温度や湿度を計測する装置を接続し、通信装置3に適した環境であるか否かを判定し、適していない場合には注意を促す表示を行うようにしても良い。これにより、通信装置3の故障を未然に防ぐことが可能になる。さらには、不正電波を検知する検知装置を架台2内に設け、保守コンソール5に検知装置の状態を監視させるようにしても良い。これにより、盗聴や情報流出などを未然に防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態における保守品一体型通信装置の外観構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態における保守品一体型通信装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】従来の通信装置や保守コンソールの配置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 保守品一体型通信装置
2 架台
3 通信装置
4 予備基板
5 保守コンソール
6 保守工具
7 取扱説明書
8 通信装置
10 収納箱
10a スロット
11 スロット部LED
20 警告表示パネル
30 赤外線カメラ
100 CPU
110 大容量記憶装置
120 ディスプレイ
130 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置と、
当該通信装置が有する基板の予備基板と、
前記通信装置とデータの送受信可能に接続され、前記通信装置の状態把握及び各種の設定を行う保守コンソールと、
前記通信装置の保守作業用の情報が記憶された記憶部材と、
前記通信装置の保守作業用の工具と、
前記通信装置、前記予備基板、前記保守コンソール、前記記憶部材及び前記工具を収納する架台と、を備えることを特徴とする保守品一体型通信装置。
【請求項2】
前記架台に、前記通信装置を撮影し、撮影データを前記保守コンソールに送信する撮像装置を備え、
前記保守コンソールは、前記撮影データに基づいて前記通信装置からの発生熱を監視することを特徴とする請求項1記載の保守品一体型通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−141474(P2010−141474A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314196(P2008−314196)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】