説明

保護壁パネルの構築方法と、この方法に用いる支柱およびアンカー、保護壁の構築構造

【課題】簡素に、かつ破損が生じにくい保護壁を構築する。
【解決手段】水平方向断面視T字型の支柱3を、その接面32にて発泡樹脂ブロック2の露出面21に当接するとともに、発泡樹脂ブロック2に当接させた支柱3へ向けてアンカー4を打ち込んで、その頭部41の形状により、支柱3の上下方向への滑動を可能としつつ、左右方向への動きを規制し、支柱3の定着部31の取付溝31aへ、保護壁パネル1の継ぎ手11を引っ掛けるようにして取り付け、発泡樹脂ブロック2と保護壁パネル1とを一体化して保護壁パネル1によって発泡樹脂ブロック2の露出面21を被覆保護し、支柱3が発泡樹脂ブロック2に対して上下方向に滑動可能であることにより、発泡樹脂ブロック2の沈下する或いは変形する挙動が支柱3に伝達せず、そのような挙動に起因して保護壁パネル1の破損、保護壁W1の破損を起こさせないような構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築する保護壁の構築方法と、この方法に用いる支柱およびアンカー、保護壁の構築構造に関し、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因した保護壁パネルの破損が起きないようにした保護壁の構築方法と、この方法に用いる支柱およびアンカー、保護壁の構築構造に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、各種の土木工事、特に、軟弱地盤や地滑り地で盛り土する等の構造物を構築する際、発泡ポリスチレン等の材質からなる軽量の発泡樹脂ブロックが使用されるケースが多い。この発泡樹脂ブロックは、直方体状に成形され、盛り土の代わりに使用される。具体的には、まず、地盤上に基礎コンクリートを設け、基礎コンクリート上に複数の支柱が水平方向に適当な間隔をあけて垂直に配置される。さらに、各支柱は倒れないようにアンカー部材等によって固定される。続いて隣接する支柱間に、上下方向にスライド可能に支持されて、複数の壁面パネルが上下方向に積み重ねられて垂直な壁面が構築され、その壁面と山の斜面との間に発泡樹脂ブロックが積み重ねられ、盛り土の代わりになるのである。
【0003】
しかし、このような工法では、壁面を構築するために、各支柱を垂直に固定するために重機等が必要になり、支柱の固定、壁面パネル積み重ね等の作業が煩わしいという問題がある。下記特許文献1乃至特許文献4は、上記問題を解決しようとして提案された発明であって、概略、発泡樹脂ブロック内に支持材の一部を埋没させて、この支持材に壁面保護パネルを取り付けて壁面を構築するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−168909号公報
【特許文献2】特開平11−140875号公報
【特許文献3】特開平11−140877号公報
【特許文献4】特開2006−169764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1乃至特許文献4にて提案された発明は、重機の不使用、作業の煩わしさの解消等、工法の簡略化が期待できるものであるが、いずれも発泡樹脂ブロック内に支持材の一部を埋没させて、この支持材に壁面保護パネルを取り付けて壁面を構築しようとするものであるため、程度の差こそあれ、発泡樹脂ブロックの沈み込みに伴って壁面保護パネルが破損する虞を回避することは難しいという問題が新たに生じている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築する保護壁の構築方法と、この方法に用いる支柱およびアンカーに関し、工法の簡略化という目的を達成しながら、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因した保護壁パネルの破損が起きないようにした保護壁の構築方法と、この方法に用いる支柱およびアンカー、保護壁の構築構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、裏面の所定位置に継ぎ手が設けられている矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築する保護壁の構築方法であって、前記保護壁パネルの継ぎ手が取り付けられる定着部が設けられている支柱を、前記発泡樹脂躯体の露出面に当接し、この当接させた前記支柱がある前記発泡樹脂躯体の所定位置へ向けてアンカーを打ち込んで、前記支柱の上下方向への滑動を可能としつつ左右方向への動きを規制し、かつ、前記支柱の定着部に前記保護壁パネルの継ぎ手を取り付けて前記発泡樹脂躯体と前記保護壁パネルとを一体化し、前記発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護することで、前記支柱が前記発泡樹脂躯体に対して上下方向に滑動可能であることにより、前記発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動が前記支柱に伝達せず、前記挙動に起因した前記保護壁パネルの破損が起きないようにして前記保護壁を構築することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記保護壁の構築方法に用いる支柱であって、発泡樹脂躯体の露出面に平面的に当接する接面を有し、この接面は、発泡樹脂躯体の露出面に対して滑動するのに必要な平滑性と耐圧面積とが確保され、かつ、接面の長手方向の中心線と定着部の位置とが概略一致するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記保護壁の構築方法に用いるアンカーであって、頭部の形状により、支柱の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する作用を具備させたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、裏面の所定位置に継ぎ手が設けられている矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築する保護壁の構築構造であって、前記保護壁パネルの継ぎ手が取り付けられる定着部が設けられている支柱を、前記発泡樹脂躯体の露出面に当接させ、この当接した前記支柱がある前記発泡樹脂躯体の所定位置へ向けてアンカーを打ち込み、前記支柱の上下方向への滑動を可能としつつ左右方向への動きを規制してなり、かつ、前記支柱の定着部に前記保護壁パネルの継ぎ手を取り付けて前記発泡樹脂躯体と前記保護壁パネルとを一体化させ、前記発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る保護壁の構築方法では上記構成より、発泡樹脂躯体の当接させた支柱がある位置へ向けてアンカーを打ち込むことで、発泡樹脂ブロック内に支持材の一部を直接埋没させるようなことを回避することができる。さらに、支柱の定着部に保護壁パネルの継ぎ手を取り付けて発泡樹脂躯体と保護壁パネルとを一体化しているので、その一体化、すなわち保護壁パネルによる発泡樹脂躯体の露出面の被覆保護を簡単に済ますことができる。これらの特徴によって、裏面の所定位置に継ぎ手が設けられている矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築することができるものとなる。すなわち、このようにして矩形状の保護壁パネルによって発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護することで、支柱が発泡樹脂躯体に対して上下方向に滑動可能となることにより、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動が支柱に伝達せず、挙動に起因した保護壁パネルの破損が起きないようにして保護壁を構築することができ、工法の簡略化という目的を達成しながら、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因した保護壁パネルの破損が起きないようにした保護壁の構築方法として提供することができる。
【0012】
本発明の上記保護壁の構築方法に用いる支柱では、発泡樹脂躯体の露出面に平面的に当接する接面を有し、この接面において発泡樹脂躯体の露出面に対して滑動するのに必要な平滑性と耐圧面積とが確保され、かつ、接面の長手方向の中心線と定着部の位置とが概略一致するように構成されている。したがって、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因して上下方向に動くということがない支柱の構造とすることができ、支柱の定着部に取り付けた保護壁パネルに対し、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動が影響することを確実に回避することができる。
【0013】
また、本発明の上記保護壁の構築方法に用いるアンカーでは、頭部の形状により、支柱の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する作用を具備させている。したがって、アンカーの頭部の形状により、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因して支柱が上下方向に動くことをなくしているので、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動が保護壁パネルに影響することを確実に回避することができる。支柱の発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因した上下方向の動きを、アンカーの頭部の形状によって防ぐことができるということは、工法の簡略化という目的をまさに達成しているというべきである。
【0014】
このほか、本発明に係る保護壁の構築構造では上記構成より、発泡樹脂躯体の当接させた支柱がある位置へ向けてアンカーを打ち込むことで、発泡樹脂ブロック内に支持材の一部を直接埋没させるようなことを回避することができ、支柱の定着部に保護壁パネルの継ぎ手を取り付けて発泡樹脂躯体と保護壁パネルとを一体化しているので、保護壁パネルによる発泡樹脂躯体の露出面の被覆保護を簡単に済ますことができる。さらに、支柱が発泡樹脂躯体に対して上下方向に滑動可能となることにより、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動が支柱に伝達せず、挙動に起因した保護壁パネルの破損が起きないようにしてなる保護壁の構築構造とすることができ、工法の簡略化という目的を達成しながら、発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動に起因した保護壁パネルの破損が起きない保護壁の構築構造として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る保護壁の構築方法によって構築される保護壁の要部の一例を説明する概略要部斜視図である。
【図2】本発明に係る保護壁の構築方法におけるアンカー打込工程を説明する説明斜視図である。
【図3】本発明に係る保護壁の構築方法における一体化工程を説明する説明斜視図である。
【図4】本発明に係る保護壁の構築方法によって構築される保護壁の一例を説明する概略断面図である。
【図5】本発明に係る保護壁の構築方法によって構築される保護壁の他例を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明は、図1に示すように、裏面の所定位置、例えば、裏面の上部および下部のほぼ中央の各1個所に、コの字状の継ぎ手11が設けられている矩形状の保護壁パネル1により、発泡樹脂躯体、例えば、軽量の発泡樹脂ブロック2の露出面21を被覆保護して保護壁W1を構築する保護壁の構築方法である(図4も参照のこと)。
【0018】
具体的には、保護壁パネル1の継ぎ手11が取り付けられる定着部31と発泡樹脂ブロック2との接面32とが設けられている支柱3を、その接面32にて発泡樹脂ブロック2の露出面21に当接し、発泡樹脂ブロック2の当接させた支柱3のある位置へ向けてアンカー4を打ち込んで、支柱3の上下方向への滑動を可能としつつ左右方向への動きを規制するアンカー打込工程(図2も参照のこと。)と、支柱3の定着部31に形成された上下逆のL字状の取付溝31aへ保護壁パネル1の継ぎ手11を取り付けて発泡樹脂ブロック2と保護壁パネル1とを一体化する一体化工程(図3も参照のこと。)とからなる。
【0019】
そして、上記一体化工程によって構築される保護壁W1は、発泡樹脂ブロック2の露出面21を保護壁パネル1によって被覆保護され、その一体化された構造において、支柱3が発泡樹脂ブロック2に対して上下方向に滑動可能であることにより、発泡樹脂ブロック2の沈下する或いは変形する挙動が支柱3に伝達せず、そのような挙動に起因して保護壁パネル1の破損が起きない、すなわち保護壁W1の破損が起きないようにしている。
【0020】
以下、本発明に係る保護壁の構築方法に用いる各構成部品について例示して説明する。なお、下記説明は図1〜図4に示した1つの実施形態を説明する限りであって、本発明は、この実施形態に限定されるものではないことに留意すべきである。
【0021】
保護壁パネル1は、鉄筋を埋設させたコンクリート製で、背面の上部および下部の幅方向のほぼ中央に、埋設させた鉄筋を突設させ、コの字状の上下方向に開放させた継ぎ手11が設けられている。保護壁パネルの大きさは、構築しようとする保護壁W1の大きさ等に鑑みて適宜決定すればよく、例えば、図示を省略したが、正面の高さが300mmで、横幅が900mmで、厚さが35mmの長方形をし、背面の上部および下部の左右(横幅)の端から1/4ずつの2個所、すなわち225mm内側へ寄った2個所の合計4個所に継ぎ手を設けたものを例示することができる。また重量は、作業性に鑑み、一枚当たり40kg以下の薄板状の軽量のものであることが好ましく、同20kg以下となればさらに好ましい。なお、裏面に設ける継ぎ手の位置は、構築しようとする保護壁の大きさ、安定性等に鑑みて適宜決定すればよい。また、継ぎ手は、別部材として設けてもよいものであるが、製造の簡素化、コスト削減等の観点から、保護壁パネルに埋設された鉄筋の一部を突出させて設けることが好ましい。
【0022】
発泡樹脂ブロック2は、発泡ポリスチレン等の材質からなる軽量の発泡樹脂ブロックであって直方体状のものである。すなわち、公知の材質又は手段により形成した発泡樹脂ブロックを用いればよい。
【0023】
支柱3は、金属製の水平方向断面視T字状として構成され、保護壁パネル1の継ぎ手11が取り付けられる定着部31と、発泡樹脂ブロック2の露出面21に平面的に当接する接面32とからなる。接面32は、発泡樹脂ブロック2の露出面21に平面的に当接する面であり、発泡樹脂ブロック2の露出面21に対して滑動するのに必要な平滑性と耐圧面積とが確保されるように形成されている。また、金属製の水平方向断面視T字状であるので、定着部31の位置は、接面32の長手方向の中心線と一致するように決まるものである。定着部31には、保護壁パネル1のコの字状の上下方向に開放させた継ぎ手11が引っ掛けるようにして取り付けられる上下逆にしたL字状の取付溝31aが設けられている。なお、接面32は、その材質により、または、磨く等の手段を講じることで発泡樹脂ブロック2の露出面21に対して滑動するのに必要な平滑性を確保すればよい。また、その材質とともに大きさを適宜調整して、その耐圧性を確保すればよい。
【0024】
アンカー4は、金属製で、頭部の形状により、支柱3の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する作用を具備させたものを用いる。具体的には、アンカー4の頭部41をU字状とし、このU字状により、水平方向断面視T字状の支柱3を挟み込みつつ、脚部42を発泡樹脂ブロック2に打ち込んで、支柱3の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する構成である。
【0025】
以下、上述した各構成部品を用い、本発明に係る保護壁の構築方法を実施するための各工程について例示して説明する。なお、上述したように、本発明は、この実施形態に限定されるものではないことに留意すべきである。
【0026】
まず、アンカー打込工程では、図2に示すように、水平方向断面視T字型の支柱3を、その接面32にて発泡樹脂ブロック2の露出面21に当接するとともに、発泡樹脂ブロック2に当接させた支柱3へ向けてアンカー4を打ち込む。アンカー4が打ち込まれると、その頭部41の形状により、支柱3は上下方向への滑動を可能としつつ、左右方向への動きが規制されるようになる。
【0027】
次に、一体化工程では、図3に示すように、支柱3の定着部31に形成された上下逆のL字状の取付溝31aへ、保護壁パネル1の継ぎ手11を引っ掛けるようにして取り付けて、発泡樹脂ブロック2と保護壁パネル1とを一体化し、保護壁パネル1によって発泡樹脂ブロック2の露出面21を被覆保護する。
【0028】
なお、保護壁W1を構築しようとする現場、例えば、法面Sにおいては、例えば、地盤上に基礎コンクリートを設け、基礎コンクリート上にまず、所望の高さまで発泡樹脂ブロック2を積み上げ、アンカー打込工程を一通り済ませた後、順次一体化工程を実施するといった保護壁W1の構築方法を採用することができる。また、基礎コンクリート上に積み上げた1段目の発泡樹脂ブロック2に対し、アンカー打込工程および一体化工程を行い、さらに、2段目、3段目の発泡樹脂ブロック2に対しアンカー打込工程および一体化工程を順次行うといった保護壁W1の構築方法も採用することができる。そして、上述したアンカー打込工程および一体化工程を繰り返し行うことにより、図4に示すような保護壁W1を構築すればよい。
【0029】
図4に示す発泡樹脂ブロック2と保護壁パネル1とが一体化されて構築された保護壁W1は、発泡樹脂ブロック2の露出面21が保護壁パネル1によって被覆保護され、その構造において、支柱3が発泡樹脂ブロック2に対して上下方向に滑動可能であることにより、発泡樹脂ブロック2の沈下する或いは変形する挙動が支柱3に伝達しないので、そのような挙動に起因して保護壁パネル1の破損が起きない、すなわち保護壁W1の破損が起きないような構造となる。
【0030】
したがって、本発明では、アンカー打込工程および一体化工程を繰り返し行うことにより、矩形状の保護壁パネル1によって発泡樹脂ブロック2の露出面21を被覆保護して保護壁W1を構築することができる。その構造は、支柱3が発泡樹脂ブロック2に対して上下方向に滑動可能であることにより、発泡樹脂ブロック2の沈下する或いは変形する挙動が支柱3に伝達せず、そのような挙動に起因して保護壁パネル1の破損が起きず、その結果、保護壁W1の破損が起きないようにすることができる。特に、支柱3は、その接面32が発泡樹脂ブロック2の露出面21に対して滑動するのに必要な平滑性と耐圧面積とが確保され、かつ、接面32の長手方向の中心線と定着部31の位置とが概略一致するように構成されるため、発泡樹脂ブロック2の挙動に起因して上下方向に動くということがない。アンカー4は、支柱3の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する作用を頭部41の形状によって果たすので、工法の簡略化も確実に達成することができる。
【0031】
ここで、本発明は、上記実施形態に限らず、例えば、図5に示すような保護壁W2を構築するための保護壁の構築方法としても採用することができる。
【0032】
図5に示す保護壁W2において、上記実施形態と異なるところは、支柱3の定着部31に、保護壁パネル1の継ぎ手11を取り付ける取付溝31aを設けることに代えて、支柱3の定着部31に孔を設け、この孔と保護壁パネル1の継ぎ手11とをつなぐ媒介部材5によって保護壁パネル1と発泡樹脂ブロック2との一体化する点である。
【0033】
具体的には、上記実施形態におけるアンカー打込工程の後に、支柱3の定着部31に孔に媒介部材5の一端を挿入する工程を設けることで、本発明に係る保護壁の構築方法を実施することができる。支柱3の定着部31の孔に媒介部材5の一端を挿入した後は、媒介部材5の他端に保護壁パネル1の継ぎ手11を取り付けることで保護壁パネル1と発泡樹脂ブロック2との一体化することが可能となる。
【0034】
図5に示す保護壁W2の構造は、図4に示すものと比べれば、媒介部材5の数だけ部品点数が多くなるものの、支柱3の定着部31の成形が、上下逆のL字状の取付溝31aを不要とするために簡素となることや、保護壁パネル1の背面に継ぎ手11を多数設けた場合等に、上下逆のL字状の取付溝31aに引っ掛けて取り付ける作業が困難となるケースもあることから、本発明に係る保護壁の構築方法を実施する場合に作業が効率よく進むといった有利な効果も見込むことができる。
【0035】
なお、図4に示す保護壁W1か図5に示す保護壁W2かの選択は、現場の状況等により適宜決定すればよい。
【0036】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示して詳述したが、本発明は、上述したようにこれに限定されるものではない。そして、本発明では、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能であり、保護壁を構築しようとする法面の形態等に対応させて適宜、材質や形状等を改良することができる。保護壁パネルの継ぎ手の形状は実施可能である限り、コの字状のほかU字状、V字状等、適宜の形状にすることができる。支柱は、発泡樹脂躯体の露出面に平面的に当接する接面を有し、この接面が発泡樹脂躯体の露出面に対して滑動するのに必要な平滑性と耐圧面積とが確保され、かつ、接面の長手方向の中心線と定着部の位置とが概略一致するように構成される限り、水平方向断面視T字状のほか、適宜の形状のものを採用できる。アンカーの頭部の形状は、支柱の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する作用を具備するものであれば、U字状のほか、適宜の形状を採用することができる。
【0037】
また、本発明に係る保護壁の構築方法は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能であって、法面への適用以外にも多様な保護壁の構築に対応することができるという格別な効果を備えていることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0038】
1・・・保護壁パネル
11・・継ぎ手
2・・・発泡樹脂ブロック(発泡樹脂躯体)
21・・露出面
3・・・支柱
31・・定着部
31a・取付溝
32・・接面
4・・・アンカー
41・・頭部
42・・脚部
5・・・媒介部材
W1・・保護壁
W2・・保護壁
S・・・法面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面の所定位置に継ぎ手が設けられている矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築する保護壁の構築方法であって、
前記保護壁パネルの継ぎ手が取り付けられる定着部が設けられている支柱を、前記発泡樹脂躯体の露出面に当接し、この当接させた前記支柱がある前記発泡樹脂躯体の所定位置へ向けてアンカーを打ち込んで、前記支柱の上下方向への滑動を可能としつつ左右方向への動きを規制し、かつ、前記支柱の定着部に前記保護壁パネルの継ぎ手を取り付けて前記発泡樹脂躯体と前記保護壁パネルとを一体化し、前記発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護することで、
前記支柱が前記発泡樹脂躯体に対して上下方向に滑動可能であることにより、前記発泡樹脂躯体の沈下する或いは変形する挙動が前記支柱に伝達せず、前記挙動に起因した前記保護壁パネルの破損が起きないようにして前記保護壁を構築する、
ことを特徴とする保護壁の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の保護壁の構築方法に用いる支柱であって、
前記発泡樹脂躯体の露出面に平面的に当接する接面を有し、
この接面は、前記発泡樹脂躯体の露出面に対して滑動するのに必要な平滑性と耐圧面積とが確保され、かつ、前記接面の長手方向の中心線と前記定着部の位置とが概略一致するように構成されている、
ことを特徴とする支柱。
【請求項3】
請求項1に記載の保護壁の構築方法に用いるアンカーであって、
頭部の形状により、前記支柱の上下方向への滑動を可能とするが左右方向への動きを規制する作用を具備させた、
ことを特徴とするアンカー。
【請求項4】
裏面の所定位置に継ぎ手が設けられている矩形状の保護壁パネルにより、発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護して保護壁を構築する保護壁の構築構造であって、
前記保護壁パネルの継ぎ手が取り付けられる定着部が設けられている支柱を、前記発泡樹脂躯体の露出面に当接させ、この当接した前記支柱がある前記発泡樹脂躯体の所定位置へ向けてアンカーを打ち込み、前記支柱の上下方向への滑動を可能としつつ左右方向への動きを規制してなり、かつ、前記支柱の定着部に前記保護壁パネルの継ぎ手を取り付けて前記発泡樹脂躯体と前記保護壁パネルとを一体化させ、前記発泡樹脂躯体の露出面を被覆保護してなることを特徴とする保護壁の構築構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62721(P2012−62721A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209210(P2010−209210)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(393010215)
【Fターム(参考)】