説明

信号制御装置及び信号制御方法

【課題】簡易に受信信号の振幅を制御することが可能な信号制御装置及び信号制御方法を提供する。
【解決手段】受信機100は、所定の変調方式により変調された信号を受信して得られる受信信号の振幅を補正するゲインスイッチ114と、受信信号の振幅誤差に対応する当該受信信号のゲイン補正量を算出するAGC制御部126と、ゲインスイッチ114の後段に接続され、ゲイン補正量に基づいて、受信信号の振幅を補正するAGC補正部124と、ゲイン補正量と、受信信号の変調方式とに基づいて、ゲインスイッチ設定値を取得するGSW制御部128とを有し、ゲインスイッチ114は、ゲインスイッチ設定値に基づいて、受信信号の振幅を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の変調方式により変調された信号を受信して得られる受信信号の振幅を制御する信号制御装置及び信号制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線を使用してデータを伝送する際に用いられる通信装置内の受信機では、受信信号に振幅変動が生じることがある。このような振幅変動を除去するために、リミッタアンプが用いられる場合がある。このリミッタアンプは、受信信号の信号点を強制的に所定の円周上に固定させる、換言すれば、受信信号の振幅を強制的に所定の値とするものである。従って、変調方式がPSK等の振幅方向に情報を有しない場合にのみ有効なものである。
【0003】
また、振幅変動を除去するために、ゲインスイッチとオートゲインコントロールとの組み合わせが用いられる場合もある(例えば、特許文献1参照)。これらゲインスイッチとオートゲインコントロールとの組み合わせは、上述したリミッタアンプとは異なり、振幅方向に情報を有する変調方式であるQAM等の場合においても適用可能である。
【特許文献1】特開平6−244889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、受信ダイナミックレンジを拡大するためには、ゲインスイッチ制御が必要となるが、通信期間内にゲインスイッチによってリアルタイムに振幅補正が行われると、受信信号の振幅に不連続点が発生し、振幅方向に情報を有するQAM方式にて、通信品質の劣化となる。
【0005】
そこで、本発明は、簡易に受信信号の振幅を制御することが可能な信号制御装置及び信号制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の信号制御装置は、所定の変調方式により変調された信号を受信して得られる受信信号の振幅を補正する第1の振幅補正手段と、前記受信信号の振幅誤差に対応する前記受信信号の振幅の補正量を算出する補正量算出手段と、前記第1の振幅補正手段の後段に接続され、前記補正量算出手段により算出された振幅補正量に基づいて、前記受信信号の振幅を補正する第2の振幅補正手段と、前記補正量算出手段により算出された振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記第1の振幅補正手段による受信信号の振幅補正を制御するための補正制御情報を取得する補正制御情報取得手段とを有し、前記第1の振幅補正手段が、前記補正制御情報取得手段により取得された補正制御情報に基づいて、前記受信信号の振幅を補正することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、信号制御装置は、前段に第1の振幅補正手段、後段に第2の振幅補正手段を有し、受信信号の振幅誤差に対応する振幅補正量を算出し、更に当該振幅補正量と受信信号の変調方式とに基づいて補正制御情報を取得し、第1の振幅補正手段は、当該補正制御情報に基づいて、受信信号の振幅を補正することができる。従って、第2の振幅補正手段における振幅補正量に基づいて、第1の振幅補正手段による適切な振幅補正を行うことが可能となる。
【0008】
また、本発明の信号制御装置は、前記補正量算出手段が、ガードタイムによって区切られた1つの通信期間内に前記振幅誤差検出手段により繰り返して検出される振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量を算出し、前記補正制御情報取得手段が、前記振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記補正制御情報を取得するようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、1つの通信期間に対して1つの補正制御情報が取得され、第1の振幅補正手段による振幅補正に用いられるため、通信期間中に第1の振幅補正手段によって受信信号の振幅補正がなされることはなく、受信信号に不連続点が発生することが防止される。
【0010】
また、本発明の信号制御装置は、前記補正制御情報取得手段が、前記第2の振幅補正手段による振幅補正後の受信信号の誤り率を所定値以下とするために前記第1の振幅補正手段による振幅の補正において必要となる振幅補正量に対応する補正制御情報を取得するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、第2の振幅補正手段による振幅補正後の受信信号の誤り率を所定値以下となるように、前段の第1の振幅補正手段によって適切な振幅補正を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の信号制御装置は、前記補正制御情報取得手段が、前記受信信号の変調方式に応じて定められる第1の値と、前記補正量算出手段により算出された振幅補正量に応じて定められる第2の値とを用いて所定の演算を行い、該演算結果に応じた前記補正制御情報を取得するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の信号制御装置は、前記補正制御情報取得手段が、変調方式毎に第1の値を保持する第1のテーブルを有し、前記第1のテーブルを参照して、前記受信信号の変調方式に応じて定められる第1の値を取得するようにしてもよい。
【0014】
この構成によれば、予めテーブルを保持しておくようにすることで、補正制御情報を取得するための演算量を削減することができる。
【0015】
同様の観点から、本発明の信号制御装置は、前記第1の振幅補正手段が、段階的に増幅度を設定可能であり、前記補正制御情報取得手段が、第3の値と、前記増幅手段の識別情報とを対応付けた第2のテーブルを有し、前記第1の値と、前記第2の値とを用いて所定の演算を行い、演算結果としての第3の値を取得し、前記第2のテーブルを参照して、該第3の値に対応付けられた前記第1の振幅補正手段の増幅度を前記補正制御情報として取得するようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の受信機は、所定の変調方式により変調された信号を受信する受信手段と、前記受信手段による受信信号を処理する上述したいずれかの信号制御装置とを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の信号制御方法は、所定の変調方式により変調された信号を受信して得られる受信信号の振幅を補正する第1の振幅補正ステップと、前記受信信号の振幅誤差に対応する前記受信信号の振幅の補正量を算出する補正量算出ステップと、前記補正量算出ステップにより算出された振幅補正量に基づいて、前記受信信号の振幅を補正する第2の振幅補正ステップと、前記補正量算出ステップにより算出された振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記第1の振幅補正ステップにおける振幅の補正量に対応する補正制御情報を取得する補正制御情報取得ステップとを有し、前記第1の振幅補正ステップが、前記補正制御情報取得ステップにより取得された補正制御情報に基づいて、前記受信信号の振幅を補正することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の信号制御方法は、前記補正量算出ステップが、ガードタイムによって区切られた1つの通信期間内に前記振幅誤差検出手段により繰り返して検出される振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量を算出し、前記補正制御情報取得ステップが、前記振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記補正制御情報を取得するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第2の振幅補正手段における振幅補正量に基づいて、第1の振幅補正手段による適切な振幅補正を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明による信号制御装置を内蔵する受信機の構成を示す図である。図1に示す受信機100は、例えば、基地局との間で通信を行う携帯電話機内に設けられるものであり、アナログ処理部110とデジタル処理部120とにより構成される。
【0021】
アナログ処理部110は、アンテナ111と、RF部112と、アナログ/デジタル変換部(A/D)116と、デジタル/アナログ変換部(D/A)118とを有する。これらのうち、RF部112は、第1の振幅補正手段に対応するゲインスイッチ114を有する。一方、デジタル処理部120は、復調・デシメーション処理部122と、第2の振幅補正手段に対応するオートゲインコントロール(AGC)補正部124と、補正量算出手段に対応するAGC制御部126と、補正制御情報取得手段に対応するゲインスイッチ(GSW)制御部128と、ベースバンド処理部130とにより構成される。
【0022】
RF部112は、アンテナ111によって受信された基地局等からのアナログの信号(アナログ受信信号)を入力する。RF部112内のゲインスイッチ114は、このアナログ受信信号の振幅を補正する。なお、ゲインスイッチ114は、段階的に増幅度を設定可能である。その後、当該アナログ受信信号は、周波数を所定の周波数(例えば、ベースバンド周波数)に変換され、A/D116へ入力される。A/D116は、この周波数が変換されたアナログ受信信号をデジタルの受信信号に変換し、後述するデジタル処理部120内の復調・デシメーション処理部122へ出力する。D/A118は、後述するデジタル処理部120内のGSW制御部128からのゲインスイッチ設定値(GSW)をアナログ信号に変換してRF112内のゲインスイッチ114へ出力する。ゲインスイッチ114は、このゲインスイッチ設定値(GSW)に対応するアナログ信号に基づいて、増幅度を設定し、アナログ受信信号の振幅を補正する。
【0023】
デジタル処理部120内の復調・デシメーション処理部122は、入力したデジタル受信信号を復調する。更に、復調・デシメーション処理部122は、図示しないデシメーションフィルタを内蔵し、復調後のデジタル受信信号のサンプリング周波数を所定周波数に低減して出力する。
【0024】
AGC制御部126は、復調・デシメーション処理部122から出力されるデジタル受信信号がAGC補正部124を介して入力されると、当該デジタル受信信号に生じている振幅誤差を除去すべく、振幅誤差を検出し、当該振幅誤差をシンボル毎に積分して、振幅の補正量であるゲイン補正量(AGC)を取得する。AGC補正部124は、このゲイン補正量(AGC)に基づいて、復調・デシメーション処理部122から出力されるデジタル受信信号の振幅を補正する。
【0025】
図2は、AGC補正部124及びAGC制御部126の構成を示す図である。図2に示すAGC補正部124は、乗算器202、乗算器204、乗算器206及び乗算器208により構成される。一方、図2に示すAGC制御部126は、乗算器210、乗算器212、二乗和演算部214、二乗和演算部216、タップ218、タップ220、加算器222、加算器224、加算器226、加算器228、乗算器230、乗算器232、加算器234、積分タップ236、乗算器238及び加算器240により構成される。
【0026】
図3は、AGC補正部124及びAGC制御部126の動作を示すフローチャートである。受信開始すると(S101にて肯定判断)、AGC補正部124には、復調・デシメーション処理部122から出力されるデジタル受信信号が入力される。AGC補正部124は、当該デジタル受信信号の振幅を、その時点でのゲイン補正量(AGC)に基づいて補正する(S102)。
【0027】
具体的には、図2におけるAGC補正部124内の乗算器202は、入力された第1のデジタル受信信号のリアル成分(DEM1R)及びイマジナリ成分(DEM1I)に、その時点のゲイン補正量(AGC)を乗算する。同様に、乗算器204は、入力された、第1のデジタル受信信号よりも半周期後の第2のデジタル受信信号のリアル成分(DEM2R)及びイマジナリ成分(DEM2I)に、その時点のゲイン補正量(AGC)を乗算する。そして、乗算器206は、乗算器202の出力に定数(VGA)を乗算する。同様に、乗算器208は、乗算器204の出力に定数(VGA)を乗算する。乗算器206の出力が振幅補正後の第1のデジタル受信信号となり、乗算器208の出力が振幅補正後の第2のデジタル受信信号となる。
【0028】
再び、図3に戻って説明する。AGC制御部126は、AGC補正部124によるゲイン補正後のデジタル受信信号が入力されると、当該ゲイン補正後のデジタル受信信号の振幅誤差を検出する(S103)。
【0029】
具体的には、図2におけるAGC制御部126内の乗算器210は、AGC補正部124内の乗算器206からのゲイン補正後の第1のデジタル受信信号に、1/√2を乗算し、乗算器212は、AGC補正部124内の乗算器208からのゲイン補正後の第2のデジタル受信信号に、1/√2を乗算する。二乗和演算部214は、乗算器210の出力の二乗和を算出し、二乗和演算部216は、乗算器212の出力の二乗和を算出する。タップ218には、二乗和演算部214によって算出された半周期前の二乗和結果が保持されており、タップ220には、二乗和演算部216によって算出された半周期前の二乗和結果が保持されている。
【0030】
加算器222は、二乗和演算部214によって算出された最新の二乗和と、タップ218からの二乗和、すなわち、半周期前の二乗和結果とを加算する。タップ218に保持される値は、最新の二乗和結果に更新される。同様に、加算器224は、二乗和演算部2
16によって算出された最新の二乗和と、タップ220からの二乗和、すなわち、半周期前の二乗和結果とを加算する。タップ220に保持される値は、最新の二乗和結果に更新される。加算器226は、加算器222の出力と加算器224の出力とを加算する。
【0031】
加算器228は、デジタル受信信号が本来有する振幅に対応する参照値(REF)を得て、当該参照値(REF)から加算器226の出力を減算する。この減算値が振幅誤差となる。
【0032】
再び、図3に戻って説明する。AGC制御部126は、検出した振幅誤差に対応するゲイン補正量を算出し、AGC補正部124による振幅補正に反映させる(S104)。
【0033】
具体的には、図2におけるAGC制御部126内の乗算器230は、加算器228からの振幅誤差に定数(AGCP)を乗算する。乗算器232は、乗算器230の出力と、直前に得られたゲイン補正量(AGC)とを乗算する。加算器234は、乗算器232の出力と、積分タップ236に保持されている値とを加算する。積分タップ236は、この加算値を入力する。これにより、積分タップ236に保持されている値が更新され、当該積分タップ236には、振幅誤差に対応する積分値が保持される。
【0034】
また、乗算器238は、加算器234の出力に定数(AGCA)を乗算し、更に、加算器240は、乗算器238の出力に定数(AGCB)を加算する。これら乗算器238及び加算器240は、加算器234の出力を所定範囲に制限するリミッタとして機能する。加算器240の出力は、ゲイン補正量(AGC)として、AGC補正部124内の乗算器202及び204に送られる。乗算器202は、次の第1のデジタル受信信号のリアル成分(DEM1R)及びイマジナリ成分(DEM1I)が入力された場合に、これらに加算器240からのゲイン補正量(AGC)を乗算する。同様に、乗算器204は、次の第2のデジタル受信信号のリアル成分(DEM2R)及びイマジナリ成分(DEM2I)が入力された場合に、これらに加算器240からのゲイン補正量(AGC)を乗算する。
【0035】
再び、図3に戻って説明する。AGC制御部126は、ガードタイム時(S105にて肯定判断)、S104において算出されたゲイン補正量をGSW制御部128へ出力する(S106)。この際、タップ236に保持されている振幅誤差に対応する積分値はリセットされる。一方、ガードタイム時以外(S105にて否定判断)では、振幅補正(S102)以降の動作が繰り返される。
【0036】
図4は、GSW制御部128の構成を示す図である。図4に示すGSW制御部128は、AGC領域判定部302、変調方式オフセットテーブル参照部304、加算器306、加算器308、リミッタ310、タップ312及びGSWテーブル参照部314により構成される。
【0037】
図5は、GSW制御部128の動作を示すフローチャートである。GSW制御部128内のAGC領域判定部302は、AGC制御部126からのゲイン補正量(AGC)が入力されると(S201にて肯定判断)、当該ゲイン補正量(AGC)に基づいて、AGC補正部124への受信信号の入力レベルが属する領域を特定する値である、第2の値としてのAGC領域判定値(AGCJ)を取得する(S202)。取得されたAGC領域判定値(AGCJ)は、加算器306へ出力される。
【0038】
図6は、ゲインスイッチ固定におけるAGC補正部入力レベルとゲイン補正量(AGC)との対応関係を示す図である。AGC補正部入力レベルとゲイン補正量(AGC)との対応関係を示す曲線で明らかなように、AGC補正部入力レベルが小さいほど、ゲイン補正量(AGC)は大きくなる。また、図6では、AGC補正部入力レベルはx[dB]毎に複数の領域に区切られており、ゲイン補正量(AGC)から各区分領域が判断され、AGC領域判定値(AGCJ)として出力される。
【0039】
例えば、ゲイン補正量(AGC)が0.2である場合、図6において、固有値が「2」の区分領域に属する。従って、この場合、GSW制御部128は、AGC領域判定値(AGCJ)として「2」を取得することになる。
【0040】
再び、図5に戻って説明する。変調方式オフセットテーブル参照部304は、受信信号に用いられている変調方式の情報(MR)をベースバンド処理部130から取得する。更に、変調方式オフセットテーブル参照部304は、保持している第1のテーブルに対応する変調方式オフセットテーブルを参照し、変調方式情報(MR)に対応する、第1の値としての変調方式オフセットテーブル参照値を取得する(S203)。取得された変調方式オフセットテーブル参照値は、加算器306へ出力される。
【0041】
図7は、ゲインスイッチ固定におけるAGC補正部入力レベルとゲイン補正量(AGC)との対応関係、及び、AGC補正部入力レベルと各変調方式でのAGC補正部124における補正後の受信信号のビットエラー率(BER)との対応関係を示す図である。図7に示すように、変調方式がQPSKの場合には、BERが良好(1.0E−04)となるAGC補正部入力レベルの範囲は広い。一方、振幅方向に情報を有するQAM系の変調方式の場合、すなわち16QAMの場合には、BERが良好となるAGC補正部入力レベルの範囲は狭く、変調方式が64QAMの場合には、BERが良好となるAGC補正部入力レベルの範囲は更に狭くなる。
【0042】
このことは、AGC補正部124における補正後の受信信号のBERを良好なものとするためには、前段のゲインスイッチ114の増幅度を変調方式に応じて適切なものに設定して、AGC補正部入力レベルを、AGC補正部124における補正後の受信信号のBERが良好な範囲とする必要があることを意味する。
【0043】
例えば、変調方式が64QAMの場合、図7によれば、AGC補正部入力レベルが固有値「7」乃至「12」の区分領域の範囲内であれば、AGC補正部124における補正後の受信信号のBERは良好なものとなる。更に、AGC補正部入力レベルは、負方向に変動しやすいことを考慮すると、AGC補正部入力レベルは、固有値「7」乃至「12」の区分領域の範囲のうち、固有値「10」の区分領域の範囲となることが望ましい。
【0044】
図8は、変調方式オフセットテーブルの一例を示す図である。この変調方式オフセットテーブルは、AGC補正部入力レベルを、AGC補正部124における補正後の受信信号のBERを良好なものとするために用いられるものである。例えば、上述したように変調方式が64QAMの場合には、固有値「10」の区分領域の範囲となることが望ましいことに対応して、オフセット値には「−10」が設定されている。従って、変調方式オフセットテーブル参照部304は、変調方式情報(MR)が64QAMである場合には、この変調方式オフセットテーブルに基づいて、変調方式オフセットテーブル参照値「−10」を取得することになる。
【0045】
再び、図5に戻って説明する。加算器306は、AGC領域判定部302からのAGC領域判定値(AGCJ)と、変調方式オフセットテーブル参照部304からの変調方式オフセットテーブル参照値とを加算することにより、ゲインスイッチインデックス変更情報(GSWS)を取得する(S204)。
【0046】
加算器308は、加算器306からのゲインスイッチインデックス変更情報(GSWS)と、タップ312に保持されているゲインスイッチインデックス値(GSWIX)とを加算する。リミッタ310は、加算器308の出力の範囲を制限し、新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)を取得する(S205)。具体的には、リミッタ310は、加算器308の出力が負の値であれば、「0」を新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)とし、加算器308の出力が予め定められたゲインスイッチインデックス値(GSWIX)の最大値を超える場合には、当該最大値を新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)とする。また、リミッタ310は、加算器308の出力が正の値であり、且つ、ゲインスイッチインデックス値(GSWIX)の最大値以下である場合には、そのまま新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)とする。
【0047】
リミッタ310によって得られた新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)は、タップ312及びGSWテーブル参照部314へ出力される。タップ312は、リミッタ310の出力である新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)が入力されると、これを保持する。これにより、タップ312内のゲインスイッチインデックス値(GSWIX)が更新される(S206)。
【0048】
GSWテーブル参照部314は、保持している第2のテーブルに対応するGSWテーブルを参照し、入力された新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)に対応する、補正制御情報としてのゲインスイッチ設定値(GSW)を取得して、アナログ処理部110内のD/A118へ出力する(S207)。
【0049】
図9は、GSWテーブルの一例を示す図である。例えば、AGC領域判定値(AGCJ)が「2」、変調方式オフセットテーブル参照値が「−10」である場合には、加算器306の出力は「−8」となる。そして、タップ312に保持されているゲインスイッチインデックス値(GSWIX)の値が「12」である場合には、加算器308の出力は「4」となり、リミッタ310によって制限させることはなく、そのまま新たなゲインスイッチインデックス値(GSWIX)となる。この場合、図9によれば、ゲインスイッチ設定値(GSW)は「B0」となる。
【0050】
D/A118は、ゲインスイッチ設定値(GSW)をアナログ信号に変換してRF112内のゲインスイッチ114へ出力する。ゲインスイッチ114は、このゲインスイッチ設定値(GSW)に対応するアナログ信号に基づいて、増幅度を設定し、アナログ受信信号の振幅を補正する。例えば、GSWテーブルとして図9が用いられる場合には、ゲインスイッチインデックス値(GSWIX)が小さいほど、換言すれば、ゲインスイッチ設定値(GSW)が大きいほど、ゲインスイッチ114の増幅度は大きくなる。
【0051】
その後、デジタル処理部120内のAGC補正部124は、ゲインスイッチ114による振幅補正後のデジタル受信信号について、更に振幅補正が行う。更に、ベースバンド処理部130は、この振幅補正後のデジタル受信信号を入力し、連続データに変換して、図示しない受信データ処理部等へ出力する。
【0052】
このように、本実施形態の受信機100は、前段にゲインスイッチ114、後段にAGC補正部124を有し、受信信号の振幅誤差に対応する、AGC補正部124におけるゲイン補正量(AGC)を算出し、更に当該ゲイン補正量(AGC)と受信信号の変調方式とに基づいてゲインスイッチ設定値(GSW)を取得する。そして、ゲインスイッチ114は、ゲインスイッチ設定値(GSW)に基づいて受信信号の振幅を補正し、AGC補正部124は、このゲインスイッチ114による補正後の受信信号の振幅誤差に対応するゲイン補正量(AGC)に基づいて、受信信号の振幅を補正することができる。従って、AGC補正部124における振幅補正量に基づいて、ゲインスイッチ114による適切な振幅補正を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上、説明したように、本発明の信号制御装置及び信号制御方法では、第2の振幅補正手段における振幅補正量に基づいて、第1の振幅補正手段による適切な振幅補正を行うことが可能となり、信号制御装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】信号制御装置を内蔵する受信機の構成を示す図である。
【図2】AGC補正部及びAGC制御部の構成を示す図である。
【図3】AGC補正部及びAGC制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】GSW制御部の構成を示す図である。
【図5】GSW制御部の動作を示すフローチャートである。
【図6】ゲインスイッチ固定におけるAGC補正部入力レベルとゲイン補正量との対応関係を示す図である。
【図7】ゲインスイッチ固定におけるAGC補正部入力レベルとゲイン補正量との対応関係、及び、AGC補正部入力レベルと各変調方式でのAGC補正部における補正後の受信信号のビットエラー率との対応関係を示す図である。
【図8】変調方式オフセットテーブルの一例を示す図である。
【図9】GSWテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
100 受信機
110 アナログ処理部
111 アンテナ
112 RF部
114 ゲインスイッチ
116 A/D
118 D/A
120 デジタル処理部
122 復調・デシメーション処理部
124 AGC補正部
126 AGC制御部
128 GSW制御部
130 ベースバンド処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変調方式により変調された信号を受信して得られる受信信号の振幅を補正する第1の振幅補正手段と、
前記受信信号の振幅誤差に対応する前記受信信号の振幅の補正量を算出する補正量算出手段と、
前記第1の振幅補正手段の後段に接続され、前記補正量算出手段により算出された振幅補正量に基づいて、前記受信信号の振幅を補正する第2の振幅補正手段と、
前記補正量算出手段により算出された振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記第1の振幅補正手段による受信信号の振幅補正を制御するための補正制御情報を取得する補正制御情報取得手段とを有し、
前記第1の振幅補正手段は、前記補正制御情報取得手段により取得された補正制御情報に基づいて、前記受信信号の振幅を補正することを特徴とする信号制御装置。
【請求項2】
前記補正量算出手段は、ガードタイムによって区切られた1つの通信期間内に前記振幅誤差検出手段により繰り返して検出される振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量を算出し、
前記補正制御情報取得手段は、前記振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記補正制御情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の信号制御装置。
【請求項3】
前記補正制御情報取得手段は、前記第2の振幅補正手段による振幅補正後の受信信号の誤り率を所定値以下とするために前記第1の振幅補正手段による振幅の補正において必要となる振幅補正量に対応する補正制御情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号制御装置。
【請求項4】
前記補正制御情報取得手段は、
前記受信信号の変調方式に応じて定められる第1の値と、前記補正量算出手段により算出された振幅補正量に応じて定められる第2の値とを用いて所定の演算を行い、該演算結果に応じた前記補正制御情報を取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の信号制御装置。
【請求項5】
前記補正制御情報取得手段は、
変調方式毎に第1の値を保持する第1のテーブルを有し、
前記第1のテーブルを参照して、前記受信信号の変調方式に応じて定められる第1の値を取得することを特徴とする請求項4に記載の信号制御装置。
【請求項6】
前記第1の振幅補正手段は、段階的に増幅度を設定可能であり、
前記補正制御情報取得手段は、
第3の値と、前記増幅手段の識別情報とを対応付けた第2のテーブルを有し、
前記第1の値と、前記第2の値とを用いて所定の演算を行い、演算結果としての第3の値を取得し、前記第2のテーブルを参照して、該第3の値に対応付けられた前記第1の振幅補正手段の増幅度を前記補正制御情報として取得することを特徴とする請求項4又は5に記載の信号制御装置。
【請求項7】
所定の変調方式により変調された信号を受信する受信手段と、
前記受信手段による受信信号を処理する請求項1乃至6のいずれかに記載の信号制御装置とを有することを特徴とする受信機。
【請求項8】
所定の変調方式により変調された信号を受信して得られる受信信号の振幅を補正する第1の振幅補正ステップと、
前記受信信号の振幅誤差に対応する前記受信信号の振幅の補正量を算出する補正量算出ステップと、
前記補正量算出ステップにより算出された振幅補正量に基づいて、前記受信信号の振幅を補正する第2の振幅補正ステップと、
前記補正量算出ステップにより算出された振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記第1の振幅補正ステップにおける振幅の補正量に対応する補正制御情報を取得する補正制御情報取得ステップとを有し、
前記第1の振幅補正ステップは、前記補正制御情報取得ステップにより取得された補正制御情報に基づいて、前記受信信号の振幅を補正することを特徴とする信号制御方法。
【請求項9】
前記補正量算出ステップは、ガードタイムによって区切られた1つの通信期間内に前記振幅誤差検出手段により繰り返して検出される振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量を算出し、
前記補正制御情報取得ステップは、前記振幅誤差の積分値に対応する振幅補正量と、前記受信信号の変調方式とに基づいて、前記補正制御情報を取得することを特徴とする請求項8に記載の信号制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−172593(P2008−172593A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4613(P2007−4613)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(301022703)株式会社ネットインデックス (16)
【Fターム(参考)】