説明

偏光板およびその製造方法

【課題】 耐水性に優れ、保護フィルムと偏光フィルムとの接着性に優れる偏光板を提供すること。
【解決手段】 偏光フィルムの少なくとも一方の面に、ケン化度が30〜70モル%のポリビニルアルコール系樹脂を主体とする接着剤層を介して、接着面の水の接触角が20〜90度である保護フィルムが積層されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの画像表示装置に用いられる偏光板であって、偏光フィルムの少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する。)を含有する接着剤層を介して保護フィルムが積層されてなる偏光板およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、疎水性の保護フィルムを用いた偏光板に関するものであって、かかる疎水性保護フィルムと偏光フィルムとの接着性に優れた偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は液晶テレビ、コンピューターディスプレイ、携帯電話やデジタルカメラなどの画像表示装置として広く用いられている。かかる液晶表示装置は、液晶が封入されたガラス基板の両側に偏光フィルムが積層された構成となっており、必要に応じて位相差板などの各種光学機能フィルムがこれに積層されている。
偏光フィルムとしては高ケン化度のPVA系樹脂中にヨウ素などの二色性材料が分散、吸着され、延伸後、あるいは延伸と同時にホウ酸などの架橋剤によって架橋された一軸延伸フィルムが広く用いられている。
このPVA系樹脂の一軸延伸フィルムを用いた偏光フィルムは高湿度下において収縮しやすく、通常は、少なくとも一方の面、望ましくは両面に保護フィルムを貼り合わせることで耐湿性や強度を補い、これらを合わせて偏光板として用いられている。
【0003】
かかる保護フィルムとしては、透明性、機械強度、および耐湿性に優れる点からセルロースエステル系樹脂が広く用いられている。さらに、より高度な耐熱性が求められる用途に対しては、ノルボルネン系樹脂などの環状オレフィン樹脂を用いた保護フィルムが使用されている。
【0004】
これらの保護フィルムは、接着剤によって偏光フィルムと貼りあわされるが、かかる接着剤としては、高ケン化度のPVA系樹脂を主成分とする偏光フィルムに対する接着性の点から、同様に高ケン化度であるPVA系樹脂を主体とするものが好ましく用いられている。
一方、低ケン化度のPVA系樹脂は結晶性が小さいため吸湿しやすく、吸湿による物性の変化、例えば接着力低下が懸念されることから、本用途のような耐湿性が求められる接着剤として考えられることは無かった。
【0005】
一方、保護フィルムとして用いられるセルロースエステル系樹脂や環状オレフィン系樹脂などはいずれも疎水性であるため、親水性樹脂であるPVA系樹脂を主体とする接着剤による良好な接着性を得るためには接着面の親水化処理が必要となる。
例えば、セルロースエステル系樹脂の場合にはその表面をアルカリ液でケン化処理し、アシロキシ基の一部を水酸基に変換したものが用いられている。(例えば、特許文献1参照。)
また、環状オレフィン系樹脂からなる保護フィルムの場合も、コロナ放電処理やプラズマ処理を施すことによって、親水性を高めたものが用いられている。(例えば、特許文献2、3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−020890号公報
【特許文献2】特開2000−241627号公報
【特許文献3】特開2002−226616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる保護フィルムの親水化処理は偏光フィルムと接着される面のみに行われるべきであるが、処理法の原理的な問題や装置の制約、および処理時の不備などによって反対側の面にその影響が及ぶ場合があり、これは、疎水性の保護フィルムを用いることによる偏光板への耐水性付与を損なうこととなる。
【0008】
また、セルロースエステル系樹脂のケン化処理は強アルカリ性の処理液を必要とするため、作業時等の危険性や廃液処理の問題を有し、環状オレフィン系樹脂に用いられるコロナ放電処理やプラズマ処理は、高コストの設備を必要とし、さらに使用時に大きな電力を必要とすることから、製造コスト増につながる。
よって、親水化処理されていない疎水性保護フィルムを用いた偏光板、すなわち、偏光フィルムとの接着面が疎水性である保護フィルムを用いても、偏光フィルムとの接着性が良好である偏光板およびその製造方法が強く求められている。
【0009】
すなわち本発明は、セルロースエステル系樹脂や環状オレフィン系樹脂などからなる疎水性が高い保護フィルムを用いた偏光板であって、耐水性に優れ、さらに保護フィルムと偏光フィルムとの接着性が優れる偏光板、およびその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、偏光フィルムの少なくとも一方の面に、ケン化度が30〜70モル%のポリビニルアルコール系樹脂を主体とする接着剤層を介して、接着面の水の接触角が20〜90度である透明保護フィルムが積層されてなる偏光板によって本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、保護フィルムとして疎水性が高いものを用い、偏光板用の接着剤として、従来検討されることのなかった低ケン化度のPVA系樹脂を主体とするもの用いたことを最大の特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光板は、疎水性が高い保護フィルムを用いることから、優れた耐水性を示し、さらに保護フィルムと偏光フィルムの接着性に優れることから、特に過酷な条件下で用いられる表示装置などに適用することが可能である。
さらに、本発明の偏光板は、疎水性保護フィルムを親水化処理せずに用いることが可能であることから、製造工程の短縮、および製造コストの削減が可能となり、工業上有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
(偏光フィルム)
まず、本発明の偏光板に用いられる偏光フィルムについて説明する。
本発明の偏光板に用いられる偏光フィルムとしては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、(i)PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン−ビニルアルコール樹脂系フィルム、等のビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性色素などの二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの(例えば、特開2001−296427号公報、特開平7−333426号公報参照。)、(ii)(i)において二色性材料とともに液晶性を有する複屈折材料をビニルアルコール系樹脂フィルム中に有するもの(例えば、特開2007−72203号公報参照。)、(iii)二色性材料を含有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムを一軸延伸したもの(例えば、特開2001−356213号公報参照。)、(iv)PVA系樹脂やエチレン−ビニルアルコール樹脂を脱水あるいは脱酢酸して連続するポリエン構造を導入し、これを延伸して得られるポリエン系フィルム(例えば、特開2007−17845号公報参照。)、などを挙げることができる。
中でも、偏光特性が優れる点から、PVA系フィルムにヨウ素が吸着された一軸延伸フィルムが好適である。
【0014】
PVA系フィルムに用いられるPVA系樹脂としては、通常、酢酸ビニルに代表される脂肪酸ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをケン化して製造されるが、偏光特性を損なわない範囲の少量のコモノマーを原料として用いた共重合体であってもよく、かかるコモノマーとしては、例えば不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等を挙げることができる。
PVA系樹脂のケン化度は通常85〜100モル%であり、特に90〜100モル%、さらには95〜100モル%のものが好ましく用いられる。 かかるケン化度が低すぎると、偏光性能が不充分となったり、偏光フィルム作製時に耐水性が不足する傾向がある。
【0015】
また、PVA系樹脂の平均重合度は、通常、1000〜7000であり、特に1200〜5000、さらには1500〜4000のものが用いられる。かかる平均重合度が低すぎると、偏光フィルム作製時に高倍率で延伸することが困難になる傾向があり、高すぎる場合にはフィルムの表面平滑性や透過率が低下する傾向がある。
なお、PVA系樹脂のケン化度および平均重合度はJIS K6726に準じて測定したものである。
【0016】
かかる偏光フィルムの製造法としては、特に限定されず、公知の方法を採用すればよいが、以下に代表的な例を説明する。
まずPVA系樹脂の水溶液から原反フィルムが形成される。かかる方法としては公知の製膜法として乾式製膜法、湿式製膜法、およびゲル製膜法等を用いることができ、通常は溶液流延法が採用されている。かかる溶液流延法を用いる場合、PVA系樹脂水溶液の濃度は通常1〜50重量%であり、かかる水溶液を金属ロール等に流延し、加熱乾燥することで原反フィルムがえられる。
【0017】
かかるPVA系樹脂水溶液には、偏光板の品質を阻害しない範囲で各種添加剤を加えることも可能であり、例えば基材への親和性や揮発性の調整等の目的により各種溶剤を単独で、もしくは混合して配合することも好ましい実施態様である。かかる溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの1価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0018】
かかる原反フィルムの膜厚は、通常30〜100μm、好ましくは50〜90μmである。かかる膜厚が薄すぎる場合には延伸不能となる傾向があり、厚すぎる場合には膜厚精度が低下する傾向がある。
【0019】
かかる原反フィルムはこの後、一軸延伸、ヨウ素等の二色性材料を吸着、ホウ素化合物による架橋という工程を経るが、これらの各工程はそれぞれを別々に行っても同時に行ってもよく、また、各工程の順番も特に限定されるものではない。特に、二色性材料の吸着工程、ホウ素化合物処理工程の少なくとも一方に一軸延伸を行うことが生産性の点で好ましい。
【0020】
一軸延伸する際の延伸倍率は、通常3.5〜10倍であり、特に4.5〜7倍の範囲が好ましく選択される。この際、前記と直角方向に若干の延伸を行っても差し支えない。延伸時の温度条件は通常40〜130℃の範囲から選択される。なお、かかる延伸操作は一段階のみに限定されず、多段階で行うことも可能で、さらには、製造工程の任意の段階で個別に実施することもでき、その場合であっても、延伸倍率は最終的に上記の範囲に設定されれば良い。
【0021】
かかるPVA系延伸フィルムへのヨウ素の吸着は、フィルムにヨウ素を含有する液体を接触させることによって行われる。かかるヨウ素溶液としては、通常はヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、その場合のヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は10〜50g/L、ヨウ化カリウム/ヨウ素の重量比は20〜100が好適である。また、PVA系延伸フィルムを二色性材料溶液に接触させる時間は30〜500秒程度が実用的であり、浴の温度は30〜80℃が好ましい。なお、接触手段としては浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用できる。
【0022】
ヨウ素が吸着されたPVA系延伸フィルムは次いでホウ素化合物によって架橋処理される。かかるホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が代表的に用いられる。かかる架橋処理は、上述で得られたフィルムをホウ素化合物の水溶液あるいは水−有機溶媒混合溶液に接触させて行われ、かかる接触法としては代表的には浸漬法であるが、塗布法、噴霧法でも実施可能である。なお、浸漬法の場合、その濃度は通常0.5〜2モル/Lの範囲が選択され、浴の温度は通常50〜70℃程度、処理時間は通常5〜20分程度が好ましく用いられる。
【0023】
かくして得られた偏光フィルムの厚さは、通常0.1〜100μmであり、特に0.5〜80μm、さらに1〜60μmのものが好適に用いられる。
【0024】
(保護フィルム)
次に、本発明で用いられる保護フィルムについて説明する。
かかる保護フィルムは、偏光フィルムの少なくとも一方の面、望ましくは両面に貼り合わせることで、偏光フィルムの問題点である高湿度下での耐久性不足を補うもので、本発明では特に偏光フィルムと接着される面が疎水性であるものを用いることを特徴とするもので、かかる接着面の水の接触角は20〜90度の範囲にあるものである。さらに、かかる接触角は、特に30〜80度、ことに30〜60度のものが好適に用いられる。なお、かかる保護フィルム表面の接触角は、23℃、50%RHの雰囲気下、液滴法によって測定したものである。かかる水の接触角が小さすぎるものや、大きすぎるものは、偏光フィルムとの接着性が不充分となる傾向がある。
さらに、本発明で用いられる保護フィルムに求められる特性としては、透明性、機械強度、熱安定性、水分遮蔽性、光学的等方性などを挙げることができる。
【0025】
かかる保護フィルムの材料としては、上述の水との接触角が上述の範囲の疎水性を示すものであれば、特に限定されるものではないが、光学特性や耐久性などの点から、セルロースエステル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂が好適に用いられる。
また、その他の材料として、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、(含フッ素)ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0026】
かかるセルロースエステル系樹脂フィルムに用いられるセルロースエステル系樹脂としては、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースが代表的であるが、その他にもセルロースの低級脂肪酸エステルや、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートなどの混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0027】
前述の環状オレフィン系樹脂フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂としてはノルボルネン系樹脂を挙げることができる。かかるノルボルネン系樹脂には、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体、ノルボルネンモノマーを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加共重合させた樹脂などを包含するものである。
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二量体;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体;テトラシクロペンタジエンなどの七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル、ビニルなどのアルケニル、エチリデンなどのアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチルなどのアリールなどの置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの炭素、水素以外の元素を含有する基を有する置換体などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂フィルムの市販品としては、JSR社製「ARTON」、日本ゼオン社製「ZEONOR」、「ZEONEX」、日立化成工業社製「OPTOREZ」、三井化学社製「APEL」などを挙げることができる。
【0028】
また、前述の(メタ)アクリル系樹脂フィルムに用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂、ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーなどが挙げられる。
かかる(メタ)アクリル系樹脂フィルムの市販品としては、三菱レイヨン社製「アクリペットVRL20A」、「アクリペットIRD−70」、UMGABS社製「MUX−60」などが挙げられる。
【0029】
なお、従来は、偏光フィルムとの接着剤として高ケン化度のPVA系樹脂を主体とするものが用いられていたため、かかる接着剤に対する接着性を向上させるため、セルロースエステル系樹脂からなるフィルムに対するアルカリ液によるケン化処理や、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムに対するコロナ放電処理やプラズマ処理などの、表面親水化処理が行われていた。しかしながら、本発明では、疎水性表面と親和性が高い低ケン化度のPVA系樹脂を主体とする接着剤を用いるため、これらの処理を施さないものを使用するすることが可能である。
ただし、処理後の水との接触角が本発明で規定する範囲内になる程度であれば、保護フィルムに対し、上述の各種親水化処理を施すことを妨げるものではなく、特にコロナ放電処理やプラズマ処理は、接着性をさらに向上させるための有効な手段の一つである。
【0030】
また、保護フィルム表面の接着剤との親和性を高めるために、親水化以外の各種表面処理を行うことも可能であり、保護フィルムの表面に(メタ)アクリル酸エステル系ラテックスやスチレン系ラテックス、ポリエチレンイミン、ポリウレタン/ポリエステル共重合体などを含有する易接着層やアンカーコート層を設けたり、シランカップリング剤やチタンカップリング剤などのカップリング剤による表面処理方法などを挙げることができる。なお、上述の各種表面処理法を併用することも可能である。
また、帯電防止剤を表面に塗布あるいはフィルム中に含有させたものも好ましく用いられる。
【0031】
かかる保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常は偏光フィルムよりも厚いものが用いられ、偏光フィルムの基材として強度付与の機能をもつものであり、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
【0032】
また、これらの保護フィルムには、その上に液晶ポリマーあるいはポリイミド等のポリマーあるいは有機修飾粘度複合体等を塗布硬化させて光学機能層を設けたり、1軸もしくは2軸延伸等の操作により所定の複屈折特性を持たせたもの(所謂Aプレート、Cプレート、Xプレート、n−TAC、B−TAC、F−TAC等)、や各種の易接着層を設けたものなども含まれる。一軸や二軸に延伸する場合の延伸倍率は、通常 1.1〜5倍程度、好ましくは1.1〜3倍である。
【0033】
更にこれらの保護フィルムの表面に硬化塗膜層を形成させて、透湿度を温度40℃にて測定される値として400g/m・24hr以下となるレベルまで下げることにより、内部のポリビニルアルコール系偏光フィルムを結露水から保護し、環境変化によって偏光板端部に生じやすい微小なスジ状欠陥の発生を抑制するための対策を施しても良い。硬化塗膜層の材質は特に限定されるものでなく、シリコーン系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの硬化性樹脂材料、あるいはその樹脂にフィラーを混合したものなどが採用できる。中でも、アクリル系の硬化性樹脂を用いて塗膜層を形成したものが好ましい。
【0034】
硬化塗膜層とは、硬化性の樹脂材料で塗工液を構成し、熱又は活性エネルギー線の照射により硬化させて得られる層である。硬化塗膜層の材質は特に限定されるものでなく、シリコーン系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの硬化性樹脂材料、あるいはその樹脂にフィラーを混合したものなどが採用できる。
【0035】
かかるアクリル系の硬化性樹脂とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリル酸またはそのエステル系単量体、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの如きアクリレートモノマー、それらに対応するメタクリレートモノマー、あるいはそれらから導かれる単位を含むオリゴマーを硬化性成分とするものである。これらの硬化成分に光重合開始剤を混合して塗工液を調製し、それを塗布して得られる塗膜に、光、一般には紫外線を照射して硬化させ、硬化塗膜層が得られる。塗工液には、必要に応じて溶剤を混合してもよい。
【0036】
なお、光重合開始剤は、各種のものが市販されており、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア」シリーズ、日本化薬社製「カヤキュア」シリーズなどから、硬化性成分の種類などに合わせて、適宜選択すればよい。
【0037】
ウレタンアクリレート系の硬化性樹脂も多くの場合、光照射、特に紫外線照射によって硬化される。一方、シリコーン系の硬化性樹脂は多くの場合、熱によって硬化される。
したがって、本発明における硬化塗膜層は、上記の如き硬化性樹脂を含む塗工液を、スピンコート法、マイクログラビアコート法など、公知の方法で酢酸セルロース系フィルムの表面に塗工し、紫外線硬化や熱硬化等により設けることができる。硬化塗膜層の厚みは1〜30μm 程度であり、好ましくは3μm 以上、また好ましくは20μm 以下である。
【0038】
また、かかる保護フィルムは、偏光フィルムと積層されない面にハードコート層を設けたり、スティッキング防止、反射防止、アンチグレアなどの各種処理を施すことも可能である。さらに、位相差板や視野角拡大フィルムなどの、各種光学機能フィルムを、積層することも可能である。
【0039】
かかる光学機能フィルムとしては、例えば、光学補償フィルム、反射型偏光分離フィルム、防眩機能付きフィルム、表面反射防止処理付きフィルム、反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能を併せ持つ半透過反射フィルムなどが挙げられる。光学補償フィルムに相当する市販品としては、富士写真フイルム社製「WVフィルム」、新日本石油社製「NHフィルム」や「NRフィルム」(いずれも商品名)などがある。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、Minnesota Mining and Manufacturing (3M)社製(日本では住友スリーエム社)「DBEF」などがある。
【0040】
(接着剤)
次に、本発明の偏光板において、偏光フィルムと保護フィルムと間に介在する接着剤層、およびかかる接着剤層の形成に用いられる接着剤について説明する。
本発明の偏光板における接着剤層は、ケン化度が30〜70モル%のPVA系樹脂を含有するもので、その含有量は、通常、接着剤層中の80重量%以上、特に90重量%以上である。かかる含有量が少なすぎると、接着力が不充分となる場合がある。
また、かかるPVA系樹脂のケン化度としては、特に40〜60モル%のものが好適に用いられる。かかるケン化度が低すぎたり、逆に高すぎたりすると、本発明で用いられる疎水性表面をもつ保護フィルムと偏光フィルムとの接着性が不充分となる傾向がある。
【0041】
また、かかる接着剤層に含有されるPVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常は500〜4000であり、特に1000〜3000、さらに1500〜2000であるものが好ましく用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると十分な接着性が得られない場合があり、逆に大きすぎると接着剤を溶液で使用する場合の粘度が高くなり、作業性が低下したり、基材への均一な塗工が困難になる傾向がある。
【0042】
かかるPVA系樹脂は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体を共重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られるものであり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と酢酸ビニル構造単位から構成される。
【0043】
また、かかるPVA系樹脂としては、ビニルエステル系モノマー以外にも本発明の効果を阻害しない範囲において、他の単量体を0.1〜20モル%程度共重合させたものを用いることも可能である。
他の単量体としては、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
【0044】
同様に、PVA系樹脂に対し、後反応によって各種官能基を側鎖に導入することによって、さらなる特性が付与されたものを用いることも可能であり、かかる官能基としては、アセトアセチル基、ポリアルキレンオキサイド基、ヒドロキシアルキル基などを挙げることができる。かかる側鎖官能基の含有量は、通常0.1〜20モル%であり、特に1〜10モル%の範囲が好適である。
これらの共重合あるいは後変性による変性PVA系樹脂の中でも、架橋性の官能基、例えばアセトアセチル基やジアセトンアミド基、特にアセトアセチル基を有するものは、架橋剤と組み合わせることによって本発明の接着剤に対し、さらなる耐水性を付与することが可能であることから、より好ましい実施態様である。
【0045】
接着剤の形態としては特に限定されないが、被着体である偏光フィルムあるいは保護フィルムの表面に均一な接着剤層を形成するために、液状として使用することが好ましい。かかる液状の接着剤としては、各種溶剤の溶液や分散液が挙げられるが、基材への塗工性から溶液タイプであることが好ましく、安全性の点から通常は水を主体とする溶液が好適に用いられる。
【0046】
さらに、接着剤を被着体に塗工後、接着剤に含まれる溶剤を除くために通常は乾燥工程が設けられるが、かかる乾燥工程の短縮を目的として、接着剤溶液中に水と容易に混和する溶剤であり、水よりも沸点が低い、すなわち沸点が100℃以下、特に80℃以下、さらに70℃以下であるアルコール系溶剤を配合した、水/アルコール混合溶剤を用いることも好ましい実施態様である。
かかるアルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数が1〜3である低級アルコールを挙げることができ、中でも最も沸点が低いメタノールが好適に用いられる。
【0047】
かかるアルコール系溶剤の配合量としては、特に限定されるものでなく、乾燥条件や用いるアルコールの種類によって適宜選択すればよいが、通常、水とアルコールの混合溶剤における両者の含有比率(重量比)としては、99.99/0.01〜20/80、好ましくは99/1〜30/70、特に90/10〜40/60、さらに80/20〜50/50の範囲が好適に用いられる。かかるアルコールの配合量が多すぎると接着剤溶液の粘度安定性が低下する傾向にあり、少なすぎると乾燥工程の短縮効果が得られない場合がある。
【0048】
かかる接着剤溶液の固形分濃度は、所望の塗工量や塗工装置の特性によって一概に言えないが、通常は0.5〜30重量%であり、特に1〜20重量%、さらに1.5〜15%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が低すぎる場合には乾燥に長時間を要するため生産性を損ない、逆に高すぎる場合には粘度が高くなり、均一な塗工が困難になる傾向がある。
【0049】
本発明の偏光板における接着剤層は、偏光フィルムと保護フィルムとの接着において、良好な接着強度を示すが、さらなる接着力の向上、特に耐水接着力を向上させる目的で、種々の架橋剤を併用することも好ましい実施態様である。
かかる架橋剤としては、PVA系樹脂の架橋剤として公知のものを使用することができ、例えば、有機系架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、グリオキシル酸やそのエステル、ナトリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ(土類)金属塩などのアルデヒド化合物、尿素樹脂、グアナミン樹脂、メチロール化メラミンなどのメチロール基含有化合物、アミノ樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等のグリシジル基含有化合物、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサン、ポリオキシアルキレン型ジアミン又はポリアミンなどのアミン系化合物、アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物、ポリイソシアネート、ブロックイソシアネートなどのイソシアネート系化合物、ヒドラジン化合物、酸無水物、などを挙げることができる。
また、無機系架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物、クロロヒドロキシオキソジルコニウム(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZC−2」)、硝酸ジルコニル(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZN」)などのジルコニウム化合物、テトラアルコキシチタネート、水溶性チタン化合物(松本製薬社製「TC−310」「TC−400」)などのチタニウム化合物、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物、亜リン酸エステル、ビスフェノールA変性ポリリン酸などのリン化合物、アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物、などを挙げることができる。
【0050】
中でも反応性が高く、少量の添加で効率よく耐水性が向上する点から、アルデヒド化合物、特にグリオキザールやグリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩が好ましく用いられる。
【0051】
かかる架橋剤の配合量としては、特に限定されるものではなく、所望の耐水性などから選定すればよいが、通常、PVA系樹脂100重量部に対して100重量部以下、さらに0.1〜100重量部であり、特に0.5〜50重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる架橋剤の配合量が多すぎると接着剤溶液の粘度安定性が悪くなる傾向にある。
【0052】
また、さらに本発明の目的を損なわない範囲、通常30重量%以下、特に20重量%以下で他の樹脂、例えばデンプン、セルロース等の多糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂、さらにはウレタン系接着剤やエマルジョン型接着剤を併用することができる。
また、同様に各種添加剤として、消泡剤、レベリング剤、着色剤、染料、顔料、蛍光増白剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、熱安定化剤、界面活性剤、乾燥剤、消臭剤、抗菌剤、防腐剤、消泡剤等を含有させることができる。
【0053】
本発明の偏光板における接着剤層の厚さは、通常0.01〜10μm、特に0.05〜5μmの範囲から選定され、かかる厚さが薄すぎると接着力が不充分となる傾向があり、厚すぎると均一な塗工が困難になったり、厚さムラが生じて外観が悪くなる傾向がある。
【0054】
(偏光板)
本発明の偏光板は、偏光フィルムの少なくとも一方の面、好ましくは両面に、ケン化度が30〜70モル%のPVA系樹脂を主体とする接着剤層を介して、水の接触角が20〜90度である保護フィルムが積層されてなるものであり、通常は、上述のPVA系樹脂おを含有する液状接着剤を偏光フィルムあるいは保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布し、両者を貼り合わせた後に圧着、加熱乾燥することで形成される。
かかる液状接着剤を偏光フィルムあるいは保護フィルム上に塗工するにあたっては、ロールコーター法、エアードクター法、ブレードコーター法、噴霧法、浸漬法や、偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせる直前に、該フィルム間に適量供給して流し込んだ後、両者を貼り合わせる等の公知の方法を用いることができる。
貼り合わせ、および圧着には、例えばロールラミネーターなどを用いることができ、その圧力は0.1〜10MPaの範囲から選択される。また、加熱乾燥条件としては、通常5〜150℃、特に30〜120℃において、10〜60分、さらには30秒〜30分、特に1〜20分の条件で行われる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0056】
実施例1
(1)接着剤の作製
平均重合度1700、ケン化度50モル%のPVAの10%水溶液にメタノールを加え、固形分濃度5重量%、水/メタノールの比率5/5(重量比)の接着剤溶液を作製した。
(2)偏光フィルムの作製
重合度2600、ケン化度99.8モル%のPVA系樹脂からなる厚さ50μmのPVAフィルムを30℃の水中に浸漬し、ついでヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム20g/Lを含有する30℃の染色液に浸漬・延伸、さらにホウ酸50g/L、ヨウ化カリウム50g/Lを含有する53℃のホウ酸処理液に浸漬・延伸して、延伸倍率4.0倍、厚さ28μmの偏光フィルムを得た。
(3)偏光板の作製
(2)で得られた偏光フィルムに(1)で得られた接着剤溶液を介して厚さ80μmのトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを貼り合わせ、0.33MPaの圧力をかけてラミネートし、70℃で10分間乾燥して偏光板を得た。
なお、かかるトリアセチルセルロースからなる保護フィルムの水の接触角は、接触角計(協和界面科学社製)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、液滴法にて測定(n=10の平均値)で測定したところ、60度であった。
【0057】
(4)評価
〔接着強度〕
得られた偏光板から、偏光フィルムの延伸方向を長辺として100mm×25mmのサンプルを切り出し、保護フィルムと偏光フィルム間の接着強度を評価した。かかる評価は、島津製オートグラフAG−ISを用い、180度ピール法、試験速度300m/分で行った。結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
実施例1において、接着剤に用いるPVAとして、平均重合度1700、ケン化度60モル%のものを用いた以外は実施例1と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
実施例1において、接着剤に用いるPVAとして、平均重合度600、ケン化度35モル%のものを用いた以外は実施例1と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
実施例1において、接着剤に用いるPVAに代えて、アセトアセチル基含有PVA系樹脂(アセトアセチル基含有量5モル%、平均重合度1700、ケン化度50モル%)を用い、架橋剤としてPVA系樹脂100重量部に対しグリオキザールを1部配合して接着剤とした以外は実施例1と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
実施例4において、架橋剤としてPVA系樹脂100重量部に対しグリオキシル酸ナトリウムを10部配合して接着剤とした以外は実施例4と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例6
実施例1において、保護フィルムとして、トリアセチルセルロースにプラズマ処理(積水化学工業社製「常圧プラズマ表面処理実験装置」使用、電圧310V、搬送速度1000mm/分)を施し、水との接触角を34度としたものを用いた以外は実施例1と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
実施例1において、接着剤に用いるPVAとして、平均重合度2200、ケン化度78モル%のものを用いた以外は実施例1と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
実施例4において、アセトアセチル基含有PVA系樹脂として、アセトアセチル基含有量5モル%、平均重合度1200、ケン化度99.2モル%のものを用いた以外は実施例4と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0065】
比較例3
実施例1において、保護フィルムとして、水との接触角が92度であるフッ素系樹脂フィルム(AGC旭硝子社製「アフレックス」、25μm厚)を用いた以外は実施例1と同様に偏光板を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の偏光板は、親水化処理を施していない保護フィルムを用いるため優れた耐水性をもち、さらに保護フィルムと偏光フィルムの接着性に優れることから、液晶表示装置、特に過酷な条件下で用いられる表示装置などに適用することが可能である。
さらに、本発明の偏光板は、保護フィルムの親水化処理が不要であり、製造工程の短縮、および製造コストの削減が可能となり、工業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に、ケン化度が30〜70モル%のポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤層を介して、接着面の水の接触角が20〜90度である保護フィルムが積層されてなることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
接着剤層中のポリビニルアルコール系樹脂が、架橋剤によって架橋されていることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板。
【請求項3】
偏光フィルムと接着面の水の接触角が20〜90度である保護フィルムをケン化度が30〜70モル%のポリビニルアルコール系樹脂を主体とする接着剤によって貼り合わせることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製造方法。

【公開番号】特開2010−134448(P2010−134448A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250095(P2009−250095)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】