像加熱装置
【課題】熱暴走による加熱体割れの抑制と、加熱体の立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上できるようにする。
【解決手段】ニップNで記録材Pを挟持搬送しつつ記録材上の画像tを加熱する像加熱装置において、加熱体203の基板206の一方の面と他方の面に設けられた通電発熱抵抗体204,207のうち一方の発熱抵抗体は他方の発熱抵抗体より短くなっており、短い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が正であり、長い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が零又は負であり、短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体は並列に接続され、短い方の前記発熱抵抗体を用いて記録材上の画像を加熱する場合、所定の加熱温度に達するまで短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体への通電を行うことを特徴とする。
【解決手段】ニップNで記録材Pを挟持搬送しつつ記録材上の画像tを加熱する像加熱装置において、加熱体203の基板206の一方の面と他方の面に設けられた通電発熱抵抗体204,207のうち一方の発熱抵抗体は他方の発熱抵抗体より短くなっており、短い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が正であり、長い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が零又は負であり、短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体は並列に接続され、短い方の前記発熱抵抗体を用いて記録材上の画像を加熱する場合、所定の加熱温度に達するまで短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体への通電を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置(定着器)として用いて好適な像加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載される定着装置(定着器)として、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックス製のヒータ基板上に通電により発熱する発熱抵抗体を有するヒータと、ヒータと接触しつつ回転する筒状の定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラなどを有している。未定着トナー画像を担持する記録材はニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上のトナー画像は記録材に加熱定着される。
【0003】
このタイプの定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温する時間が短いというメリットを有する。従って、この定着装置を搭載するプリンタは、プリント指令の入力後、1枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First Print Out Time)を短くできる。またこのタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
【0004】
ところで、定着フィルムを用いた定着装置を搭載するプリンタで小サイズの記録材を大サイズの記録材と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータの記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温することが知られている。ヒータの非通紙領域が過昇温すると、ヒータを支持するヒータホルダや加圧ローラ等の部材が熱により損傷する可能性がある。
【0005】
特に、最大サイズよりも小さな幅で厚い記録材(厚紙、封筒等)が重送してニップ部に通紙(導入)された場合、ニップ部の記録材が通過する領域(通紙領域)では記録材に大量の熱を奪われる。しかも温度制御は通紙領域に設けられた検温素子の出力に基づいて行われるため、ヒータに大量の電力が供給される。一方、ニップ部の非通紙領域では記録材に熱を奪われないため非常に高温になり(非通紙部昇温)、ヒータを支持するヒータホルダや加圧ローラ等の部材が熱により損傷する可能性がある。
【0006】
そこで、フィルム加熱方式の定着装置を搭載するプリンタは、小サイズの記録材に連続プリントする場合、大サイズの記録材に連続プリントする場合よりもプリント間隔を広げる制御を行いヒータの非通紙領域の過昇温を抑えている。
【0007】
しかしながら、プリント間隔を広げる制御は単位時間当たりの出力枚数を減らすものであり、単位時間当たりの出力枚数を大サイズの記録材の場合と同等或いは若干少ない程度に抑えることが望まれる。
【0008】
ニップ部の非通紙部昇温を防止するため、以下に示すような方法が提案されている。
【0009】
1つは、ヒータ基板の両面にヒータ基板の長手方向に沿って発熱パターンを設け、一方の発熱パターンをもう一方の発熱パターンより短くし、小サイズ紙通紙時には短い方の発熱パターンに通電することで非通紙部昇温を防止する方法が提案されている。以下、小サイズ紙用発熱パターンと記す。また、2本だけでなく、各種小サイズ紙の紙幅に応じた発熱パターンをそれぞれ設け、通紙される小サイズ紙の紙幅に応じて通電する発熱パターンを選択する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
他の対策として、グラファイト等のTCR(抵抗温度特性)が負特性を持つ材料を発熱パターンに使用する方法が考えられる。しかしながら、一般的に負特性の材料は体積抵抗が非常に高いため、所望の抵抗値を得るためには発熱パターンの厚みや幅を増やす必要があり、コストが増大してしまうという問題がある。その解決手段として、ヒータ基板の両面それぞれに形成された発熱パターンを並列に接続し、TCRが負特性を有する発熱パターンの形成を容易にし、非通紙部昇温を防止する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
また、発熱パターンのTCRを負特性にすることで、温度上昇により抵抗値が減少するため、異常時の熱暴走により抵抗発熱体が加熱され続けた場合、瞬時に温度が上昇してしまうという問題があった。この熱暴走の対策として、ヒータ基板の両面に発熱パターンを形成し、一方の発熱パターンのTCRを正に、他方の発熱パターンを負のTCRにし、それぞれの発熱パターンを直列に接続して駆動する。更に、それぞれの発熱パターンにおける抵抗値とTCRの絶対値が同じになるように構成することで直列合成抵抗は温度による変化を抑えることが可能となり、急激な温度上昇の発生を抑えることが可能となる方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−337484号公報
【特許文献2】特開2008−268730号公報
【特許文献3】特開2008−268729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記フィルム加熱方式の定着装置では、熱暴走により発熱パターンに電力が投入され続けた場合のヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上させることが望まれている。ここで、ヒータの立ち上げ時間とは、ヒータに電力を投入してからヒータが所定の定着温度に達するまでの期間をいう。
【0014】
本発明の目的は、熱暴走による加熱体割れの抑制と、加熱体の立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上できるようにした像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の構成は、基板と前記基板の一方の面と前記一方の面とは反対側の他方の面で前記基板の長手方向に沿って設けられた通電発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を介して前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップで記録材を挟持搬送しつつ記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、前記基板の前記一方の面と前記他方の面に設けられた通電発熱抵抗体のうち一方の前記発熱抵抗体は他方の前記発熱抵抗体より短くなっており、短い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が正であり、長い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が零又は負であり、短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体は並列に接続され、短い方の前記発熱抵抗体を用いて記録材上の画像を加熱する場合、所定の加熱温度に達するまで短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体への通電を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱暴走による加熱体割れの抑制と、加熱体の立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上できるようにした像加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画像形成装置の一例の概略構成模式図である。
【図2】定着装置の横断側面構成模式図である。
【図3】実施例1に係るヒータの表面側と裏面側の構成模式図である。
【図4】実施例1に係るヒータの駆動制御回路の構成を表わす図である。
【図5】実施例1に係るヒータの表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターンの長手方向の発熱分布図である。
【図6】実施例1に係るヒータの小サイズ用発熱パターンの発熱量の推移を表わす図である。
【図7】実施例1に係るヒータのヒータ基板の温度推移を表わす図である。
【図8】実施例2に係るヒータの短手方向中央の縦断面図と、同ヒータの表面側と裏面側の構成模式図である。
【図9】実施例2に係るヒータの表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターンの長手方向の発熱分布図である。
【図10】実施例2に係るヒータの駆動制御回路の構成を表わす図である。
【図11】実施例3に係るヒータの短手方向中央の縦断面図と、同ヒータの表面側と裏面側の構成模式図である。
【図12】実施例3に係るヒータの表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターンの長手方向の発熱分布図である。
【図13】実施例2に係るヒータの駆動制御回路の構成を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る像加熱装置を定着装置(定着器)として搭載する画像形成装置の一例の概略構成模式図である。この画像形成装置は、電子写真プロセスの帯電、露光、現像、転写などの一連の処理によって記録材にプリントする電子写真式のレーザープリンタである。
【0019】
本実施例に示す画像形成装置は、記録材の搬送基準として、記録材の記録材搬送方向と直交する幅方向中央と記録材搬送路の記録材搬送方向と直交する長手方向中央とを一致させて記録材の搬送を行う中央搬送基準を採用している。また、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から入力するプリント指令に応じて制御部(制御手段)100が所定の画像形成シーケンスを実行し、この画像形成シーケンスに従って所定の画像形成動作を行うものである。制御部100はCPUとROMやRAMなどのメモリからなり、メモリには画像形成シーケンス、及び画像形成に必要な各種プログラムなどが記憶されている。
【0020】
本実施例の画像形成装置は、記録材を搬送する搬送部と、記録材にトナー画像(画像)を形成する画像形成部と、記録材に形成された未定着トナー画像(画像)を記録材上に加熱定着する定着部(定着器)などを有している。
【0021】
画像形成シーケンスが実行されると、搬送部では、給紙カセット101内に積載された記録紙やOHPシート等の記録材Pをピックアップローラ102により1枚だけ給紙カセット101から送出する。そしてこの記録材Pを給紙ローラ103によりレジストローラ104に向けて搬送する。さらにこの記録材Pはレジストローラ104により所定のタイミングで画像形成部の感光体ドラム109と転写部材としての転写ローラ110との間の転写ニップ部に搬送される。
【0022】
画像形成部では、電子写真感光体としての感光体ドラム109の外周面(表面)が帯電手段としての帯電ローラ106により所定の電位に一様に帯電される。そしてこの感光体ドラム109表面の帯電面に対して像露光手段としてのスキャナユニット111により外部装置から出力される画像信号に基づいた像露光が行なわれる。
【0023】
即ち、スキャナユニット111内のレーザダイオード112から出射されるレーザ光は、回転するポリゴンミラー113と、反射ミラー114を経て、感光体ドラム109表面の帯電面において感光体ドラム109の母線方向と周方向に走査される。これにより感光体ドラム109表面の帯電面に2次元の静電潜像(潜像)が形成される。感光体ドラム109表面に形成された潜像は現像手段としての現像ローラ107によってトナー画像として可視化される。
【0024】
転写ニップ部に搬送された記録材Pは感光体ドラム109の外周面(表面)と転写ローラ110の外周面(表面)とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この記録材Pの搬送過程において感光体ドラム109表面のトナー画像が転写ローラ110によって記録材P上に転写される。そしてそのトナー画像を担持した記録材Pは定着部を構成する定着装置115に搬送される。
【0025】
トナー画像転写後の感光体ドラム109表面はクリーニング手段としてのクリーナ108により転写残トナーが除去されて次の画像形成に供される。
【0026】
定着装置115では、記録材が担持する未定着トナー画像に熱と圧力を印加してトナー画像を記録材上に加熱定着する。
【0027】
また、搬送部では、定着装置115を出た記録材Pを中間排紙ローラ116、及び排紙ローラ117によって排出トレー118上に排出される。これにより画像形成装置の一連のプリント動作が終了する。
【0028】
上記帯電ローラ106と、現像ローラ107と、クリーナ108と、感光体ドラム109はプロセスカートリッジ105として一体的にユニット化されている。プロセスカートリッジ105は画像形成装置の筺体を構成する画像形成装置本体に取り外し可能に装着されている。Mはモータであって、定着装置115、スキャナユニット111、プロセスカートリッジ105、ピックアップローラ102、給紙ローラ103、レジストローラ104、中間排紙ローラ116、排紙ローラ117等に回転駆動力を与えている。
【0029】
(2)定着装置(像加熱装置)115
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法をいう。記録材に関し、幅方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。幅とは幅方向の寸法をいう。
【0030】
図2は本実施例の定着装置115の横断側面構成模式図である。この定着装置115は、加圧部材駆動式・テンションレスタイプのフィルム加熱方式の定着装置である(特開平4−44075〜44083号公報、同4−204980〜204484号公報等)。図3は本実施例の定着装置115に用いられるセラミックヒータ203の表面側と裏面側の構成模式図である。
【0031】
本実施例に示す定着装置115は、ガイド部材としてのフィルムガイド201と、可撓性部材としての筒状の定着フィルムと202と、加熱体としてのセラミックヒータ(以下、ヒータと記す)203を有している。更に、加圧部材としての剛性ステー209と、バックアップ部材としての加圧ローラ210などを有している。ヒータホルダ201と、定着フィルムと202と、ヒータ203と、剛性ステー209と、加圧ローラ210は、何れも長手方向に長い部材である。
【0032】
ヒータ203は、高熱伝導材であるアルミナ及び窒化アルミ等でできた細長いヒータ基板(基板)206を有している。そしてこのヒータ基板206の定着ニップ部Nが形成される側の面(一方の面)と、定着ニップ部Nが形成される側の面とは反対側の面(他方の面)に、それぞれ、通電発熱抵抗体としてそれぞれ一本の発熱パターン207及び204有している。そしてこの発熱パターン207及び204のうち、一方の発熱パターン204は他方の発熱パターン207より短くなるように形成してある。そしてそれぞれの発熱パターン207及び204は並列に接続され独立して駆動されるようになっている。
【0033】
ヒータの表面側即ちヒータ基板206の定着ニップ部Nが形成される側の面(以下、表面と記す)には、例えばAg/Pd等の電気抵抗材料をスクリーン印刷等によりヒータ基板206の長手方向に沿って塗工した発熱パターン207が形成してある。ここでAg/Pdは銀パラジウムである。発熱パターン207はヒータ基板206の長手方向中央(ヒータ基板206の長手方向中心線CLが通る領域)に対して線対称(対称)となるように配設してある。
【0034】
また、ヒータ基板206の表面には、同じくAg等の電気導電材料をスクリーン印刷等により塗工して発熱パターン207の長手方向両端部に導電パターン(給電用電極)326,323を形成している。更に、ヒータ基板206の表面には、発熱パターン207の上に保護層としてガラス等をコートしたガラスコート層208が形成してある。
【0035】
一方、ヒータの裏面側即ちヒータ基板206の定着ニップ部Nが形成される側とは反対側の面(以下、裏面と記す)には、例えばAg/Pd等の電気抵抗材料をスクリーン印刷等によりヒータ基板の長手方向に沿って塗工した発熱パターン204が形成してある。発熱パターン204はヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称(対称)となるように配設してある。また、ヒータ基板206の裏面には、同じくAg等の電気導電材料をスクリーン印刷等により塗工して発熱パターン204の長手方向一端部に導電パターン(給電用電極)324,325を形成している。更に、ヒータ基板206の裏面には、発熱パターン204の上に保護層としてガラス等をコートしたガラスコート層205が形成してある。
【0036】
ヒータ203の裏面側においてガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン207の長手方向中央と対向するようにヒータ203の温度を検知する温度検出部材213が配設されている。温度検出部材213は、例えばサーミスタである。サーミスタ213は、ばね(不図示)等でヒータ203のガラスコート層205上に所定の圧で押し当てられている。更に、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン204と対向するように過昇温防止手段としての保護装置214が配設されている。保護装置214は、例えば温度ヒューズやサーモスイッチである。
【0037】
耐熱性樹脂製のフィルムガイド201は、横断面形状略樋型に形成され、短手方向外側の弧状ガイド面201aで筒状の定着フィルム202の内周面(内面)をガイドするようになっている。ヒータ203は、フィルムガイド201の短手方向下面中央で長手方向に沿って設けられた溝部201bに支持されている。そしてヒータ203を支持させたフィルムガイド201の外周に定着フィルム202をルーズに外嵌させている。定着フィルム202をルーズに外嵌させたフィルムガイド201の長手方向両端は定着装置115の装置フレームの前後の側板(不図示)に支持されている。
【0038】
定着フィルム202は、可撓性を有する薄いエンドレス状の耐熱性フィルムからなる基層(不図示)と、この基層の外周面(表面)にフッ素樹脂等のコートを施して離型層(不図示)を形成したものである。
【0039】
剛性ステー209は、横断面形状略逆U字形状に形成され、フィルムガイド201の短手方向上面中央で長手方向に沿って配設されている。この剛性ステー209の長手方向両端は上記装置フレームの前後の側板に支持されている。
【0040】
加圧ローラ210は、アルミニウム・鉄・ステンレス等の芯軸211と、この芯軸211の長手方向両端部の被支持部間の外周面上にシリコンゴム等の弾性のよい耐熱ゴム弾性体からなるローラ状の弾性層212などを有している。この弾性層212の外周面には、記録材P、定着フィルム202の搬送性、トナーの汚れ防止などの理由から離型層213としてフッ素樹脂を分散させたコート層が設けられている。この加圧ローラ210は、定着フィルム202を介してヒータ203の下方に配設され、芯金211の長手方向両端部の被支持部が装置フレームに軸受(不図示)を介して回転可能に支持されている。
【0041】
そして、剛性ステー209の長手方向両端部を加圧ばね(不図示)で加圧ローラ201の外周面(表面)の母線方向と直交する方向へ付勢している。これによりフィルムガイド202は同方向へ加圧されてヒータ20を定着フィルム202を介して加圧ローラ201表面に加圧する。これにより加圧ローラ210は弾性層212がヒータ203の加圧方向に弾性変形して加圧ローラ210表面と定着フィルム202表面とで所定幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成する。
【0042】
(3)ヒータの駆動制御回路、及び発熱パターンの抵抗温度特性
図4にヒータ203の駆動制御回路の構成を示す。同図中、322はCPUとROMやRAMなどのメモリからなる温度制御部(以下、CPUと記す)である。メモリには小サイズ紙モード、大サイズ紙モード、及びヒータ203の温度制御に必要な各種プログラムが記憶されている。301は画像形成装置に接続される商用の交流電源である。画像形成装置は交流電源301から電力をヒータ203に供給してヒータ203の表面側と裏面側の発熱パターン207及び204を発熱させる。本実施例のヒータ203の駆動制御回路は、発熱パターン207及び204に供給する電力を独立に制御するため、二つのヒータ駆動回路を有している。
【0043】
ヒータ203の表面側の発熱パターン207に供給する電力の制御はトライアック312のオン・オフにより行われる。抵抗303,304は、トライアック302のためのバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ305は一次・二次間の絶縁を確保するためのデバイスである。そして、フォトトライアックカプラ305の発光ダイオード305bに通電することによりトライアック302をオンさせる。抵抗306は、発光ダイオード305bの電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ307によりフォトトライアックカプラ305をオン/オフする。トランジスタ307は、抵抗308を介してCPU(温度制御部)322から出力されるヒータ駆動信号(ヒータ駆動1)に従って動作(オン)する。
【0044】
ヒータ203の裏面側の発熱パターン204に供給する電力の制御はトライアック302のオン・オフにより行われる。抵抗313,314は、トライアック312のためのバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ315は一次・二次間の絶縁を確保するためのデバイスである。そして、フォトトライアックカプラ315の発光ダイオード315bに通電することによりトライアック312をオンさせる。抵抗316は、発光ダイオード315bの電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ317によりフォトトライアックカプラ315をオン/オフする。トランジスタ317は、抵抗318を介してCPU322から出力されるヒータ駆動信号(ヒータ駆動2)に従って動作(オン)する。
【0045】
サーミスタ213によって検出される温度は、抵抗321と、サーミスタ213との分圧としてアナログ信号で検出され、そのアナログ信号がA/D変換回路(不図示)でデジタル信号に変換されてCPU322にTH信号(サーミスタ温度)として入力される。
【0046】
CPU322は、サーミスタ213の検出温度と、ヒータ203の設定温度(定着フィルムを介して記録材上に未定着トナー画像を加熱定着するために設定された目標温度(加熱温度))に基づき、例えばPI制御により、供給するべき電力比を算出する。更に供給する電力比に対応した位相角(位相制御)、波数(波数制御)の制御レベルに換算し、その制御条件によりCPU322がトランジスタ307及び317にヒータ駆動信号を出力する。本実施例ではヒータ203の設定温度を200℃に設定している。
【0047】
上述のように、発熱パターン204及び207への電力供給(通電)はそれぞれ独立して制御することが可能であり、それぞれの発熱パターン204及び207の発熱比率はプリントする記録材サイズによって決定される。この制御の詳細については後述する。
【0048】
保護装置214は交流電源301とヒータ203の導電パターン325及び326との間に配設されている。ヒータ203が熱暴走に至り保護装置214が所定の温度(ヒータ203がヒータ割れを起こす温度)に達すると、保護装置214がオープンになり、ヒータ203への通電が断たれる。
【0049】
図5にヒータ203の表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターン207及び204の長手方向の発熱分布を示す。図5において斜線部分が発熱パターン207及び204を示している。ヒータ203表面側(フィルム摺動面側)の発熱パターン207は大サイズ紙通紙域(定着ニップ部を通過する大サイズの記録材の通過領域)に対応している。ヒータ203裏面側(非フィルム摺動面側)の発熱パターン204は小サイズ紙通紙域(定着ニップ部を通過する小サイズの記録材の通過領域)に対応している。ここで、小サイズ紙通紙域は、定着ニップ部Nに通紙可能(導入可能)な記録材のうち最も小さいサイズの記録材の幅に対応している。
【0050】
本実施例においては、幅114mmの小サイズの記録材(洋型封筒2号)に対応させるため、ヒータ203裏面側の発熱パターン204の長さを115mmとした。また、幅216mmの大サイズの記録材(US−LETTER紙)に対応させるため、ヒータ203表面側の発熱パターン207の長さを222mmとした。ここで、通紙域よりも発熱パターンを長くしたのは、記録材の幅方向端部までトナー画像の定着性を確保するためである。以下、ヒータ203裏面側の発熱パターン204を小サイズ紙用発熱パターン204と記し、ヒータ203表面側の発熱パターン207を大サイズ紙用発熱パターン207と記す。
【0051】
ヒータ203の表面側と裏面側のガラスコート層208及び205は、発熱パターン204及び207の酸化による抵抗変動の防止と、発熱パターン207と定着フィルム202内面との絶縁を確保するために設けたものである。
【0052】
図5に示すように、小サイズ紙用発熱パターン204における単位長さ当たりの発熱量は大サイズ紙用発熱パターン207における単位長さ当たりの発熱量と同等となるようにしてある。小サイズ紙用発熱パターン204の抵抗値は20Ω、TCR(抵抗温度特性)は正特性で約600ppm/℃とした。一方、大サイズ紙用発熱パターン207の抵抗値は10Ω、TCR(抵抗温度特性)は約0ppm/℃とした。
【0053】
ここで、同図に示す小サイズ紙用発熱パターン204の発熱分布から分かるように、小サイズ紙用発熱パターン204の長さは通紙する小サイズ紙の幅に対応している。そのため、小サイズ紙用発熱パターン204のみの熱暴走が発生した際、ヒータ基板206の大サイズ紙用発熱パターン207の長手方向両端部と小サイズ紙用発熱パターン204を有する長手方向中央部との温度差が激しく、ヒータ割れに対し不利である。
【0054】
そこで、本発明では、ヒータ割れに対して不利な小サイズ紙用発熱パターン204のTCRを正特性にすることで、後述する理由により、ヒータ割れの発生前にサーモスイッチ等の比較的簡易な保護装置214を動作させることが可能となる。
【0055】
図6に、TCRが0ppm/℃または正特性であるときの小サイズ用発熱パターン204に100Vを印加した際の発熱量の推移を示す。同図に示すように、熱暴走により小サイズ用発熱パターン204に電力が投入され続けた場合、TCRが0ppm/℃では、急激に温度が上昇する。そのため、ヒータ割れ発生温度に到達する時間(t0)がサーモスイッチ等の比較的簡易な保護装置214の動作タイミング(t1)に間に合わない。
【0056】
それに対し、TCRを正特性にすることにより、同図に示すように小サイズ用発熱パターン204の温度が上昇するにつれ、抵抗値が高くなりヒータ割れ発生温度に達する時間(t2)が0ppm/℃の場合に比べ長くヒータ割れに対して有利である。これによりヒータ割れの発生を抑制することができる。
【0057】
図7に、100VをTCRが0ppm/℃の小サイズ紙用発熱パターン204のみに印加した場合のヒータ基板206の温度推移を示す。また、同図に、100Vを正特性である小サイズ用発熱パターンのみに印加した場合のヒータ基板206の温度推移を示す。更に、同図に、100VをTCRが0ppm/℃である大サイズ紙用発熱パターン207と正特性である小サイズ紙用発熱パターン204の両方に印加した場合のヒータ基板206の温度推移を示す。同図に示すように、TCRが0ppm/℃の場合にプリント可能温度に到達する時間(t3)に比べ、TCRが正特性である場合のプリント可能温度到達時間(t4)が増加してしまう。
【0058】
そこで、小サイズの記録材をプリントする場合の立ち上げ時に小サイズ紙用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207を同時に通電することでプリント到達時間(t5)を短縮することが可能となる。これにより小サイズの記録材をプリントする際の単位時間当たりの処理枚数即ち小サイズの記録材の生産性を向上できる。
【0059】
図4を参照して、画像形成装置で小サイズ紙(例えば封筒紙)と、大サイズ紙(例えばA4紙)をプリントする場合の定着装置115におけるヒータ203の小サイズ用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207への通電制御を説明する。
【0060】
CPU322はプリント指令に基づいて記録材Pが小サイズ紙か大サイズ紙かを判断する。CPU322は、記録材を小サイズ紙であると判断すると小サイズ紙モードを実行し、記録材を大サイズ紙であると判断すると大サイズ紙モードを実行する。
【0061】
小サイズ紙モードの場合、ヒータ203立ち上げ時には、プリント指令に基づきCPU322がトライアック302及び312をオンし、大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204に商用電源301から電力を投入する。この際、サーミスタ213で検出した温度が約200℃(ヒータ203の設定温度)になるまで大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204の両方に電力を投入する。
【0062】
プリント時(定着ニップ部Nに小サイズ紙を導入してから排出するまでの期間)には、CPU322はトライアック312をオフし、小サイズ紙用発熱パターン204のみに電力を投入する。ただし、封筒紙などの非常に厚みのある記録用紙を連続でプリントするような場合、急激に熱を記録用紙に奪われるため、補助的に大サイズ紙用発熱パターン207にも通電を行うようにトライアック312をオンするように構成してもよい。
【0063】
大サイズ紙モードの場合、ヒータ203立ち上げ時には、プリント指令に基づきCPU322がトライアック302及び312をオンし、大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204に商用電源301から電力を投入する。この際、サーミスタ213で検出した温度が約200℃になるまで大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204の両方に電力を投入する。
【0064】
プリント時(定着ニップ部Nに大サイズ紙を導入してから排出するまでの期間)には、CPU322はトライアック307をオフし、大サイズ紙用発熱パターン207のみに電力を投入する。
【0065】
(4)定着装置の加熱定着動作
制御部100はプリント指令に応じてモータM(図1参照)を回転駆動する。モータMの出力軸の回転はギア列(不図示)を介して加圧ローラ210の芯金211の長手方向端部に設けられている駆動ギア(不図示)に伝達される。これにより加圧ローラ210は所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転する。加圧ローラ210の回転は定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ210表面と定着フィルム202表面との摩擦力によって定着フィルム202表面に伝わる。これにより定着フィルム202は定着フィルム202の内周面(内面)がヒータ203の保護層208と接触しつつ加圧ローラ210の回転に追従して矢印方向へ回転(移動)する。
【0066】
小サイズ紙モードの場合、CPU322はトランジスタ307及び317にヒータ駆動信号を出力し、フォトトライアックカプラ305及び315をオンしてトライアック302及び312をオンさせる。これにより商用電源301より導電パターン324,325を介して小サイズ紙用発熱パターン204に通電され、商用電源301より導電パターン323,326を介して大サイズ紙用発熱パターン207に通電される。これにより小サイズ紙用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207が発熱してヒータ203は急速に昇温する。
【0067】
また、CPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度が設定温度に達したか否かを判断する。ヒータ203の温度が設定温度に達すると、CPU322はトランジスタ317にヒータ駆動停止信号を出力し、フォトトライアックカプラ315をオフしてトライアック312をオフさせる。これによりヒータ203の大サイズ紙用発熱パターン207への電力供給は停止されるが、小サイズ紙用発熱パターン204への電力供給は継続される。そしてCPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度を設定温度に維持するようにトランジスタ307をオン/オフする。
【0068】
モータMを回転駆動し、かつ小サイズ紙用発熱パターン204が通電された状態において、未定着トナー画像tを担持した小サイズ紙Pがトナー画像担持面を上向きにして定着ニップ部Nに導入される。この小サイズ紙Pは定着ニップ部Nにおいて定着フィルム202表面と加圧ローラ210表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において小サイズ紙P上のトナー画像tは定着フィルム202を介してヒータ203により加熱されて溶融するとともに定着ニップ部Nの圧力で小サイズ紙P上(記録材上)に加熱定着される。そしてトナー画像tが加熱定着された小サイズ紙Pは定着ニップ部Nから排出され中間排紙ローラ116に向けて搬送される。
【0069】
大サイズ紙モードの場合、CPU322はトランジスタ307及び317にヒータ駆動信号を出力し、フォトトライアックカプラ305及び315をオンしてトライアック302及び312をオンさせる。これにより商用電源301より導電パターン324,325を介して小サイズ紙用発熱パターン204に通電され、商用電源301より導電パターン323,326を介して大サイズ紙用発熱パターン207に通電される。これにより小サイズ紙用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207が発熱してヒータ203は急速に昇温する。
【0070】
また、CPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度が設定温度に達したか否かを判断する。ヒータ203の温度が設定温度に達すると、CPU322はトランジスタ307にヒータ駆動停止信号を出力し、フォトトライアックカプラ305をオフしてトライアック302をオフさせる。これによりヒータ203の小サイズ紙用発熱パターン204への電力供給は停止されるが、大サイズ紙用発熱パターン207への電力供給は継続される。そしてCPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度を設定温度に維持するようにトランジスタ315をオン/オフする。
【0071】
モータMを回転駆動し、かつ大サイズ紙用発熱パターン204が通電された状態において、未定着トナー画像tを担持した大サイズ紙Pがトナー画像担持面を上向きにして定着ニップ部Nに導入される。この大サイズ紙Pは定着ニップ部Nにおいて定着フィルム202表面と加圧ローラ210表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において大サイズ紙P上のトナー画像tは定着フィルム202を介してヒータ203により加熱されて溶融するとともに定着ニップ部Nの圧力で大サイズ紙P上(記録材上)に加熱定着される。そしてトナー画像tが加熱定着された大サイズ紙Pは定着ニップ部Nから排出され中間排紙ローラ116に向けて搬送される。
【0072】
以上のように、本実施例の定着装置115は、熱暴走によるヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズ紙の生産性を向上できる。
【0073】
[実施例2]
定着装置の他の例を説明する。本実施例の定着装置はヒータの構成が異なる点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。
【0074】
本実施例の定着装置に用いられるヒータは、ヒータ基板の裏面に一本の発熱パターンを有し、ヒータ基板の表面には少なくとも一本以上の発熱パターンを有している。そして一方の発熱パターンを他方の発熱パターンより短くし、それぞれの発熱パターンは並列に接続され独立に駆動されるようになっている。また、短い発熱パターンのTCRを正特性に、長い発熱パターンのTCRをゼロまたは負特性にしている。本実施例では、ヒータ基板の表面に三本の発熱パターンを設けている。
【0075】
本実施例に示すヒータは、小サイズ紙用発熱パターンの長手方向の形状、大サイズ紙用発熱パターンの数と長手方向の形状、大サイズ紙用発熱パターンへの給電用電極の数、及びサーミスタの数が異なる点を除いて、実施例1のヒータと同じ構成としてある。本実施例では、実施例1のヒータと共通する部材、及び部分に同じ符号を付してその部材、及び部分の再度の説明を省略する。
【0076】
図8は本実施例のヒータ203の短手方向中央の縦断面図と、同ヒータ203の表面と裏面の構成模式図である。
【0077】
ヒータ基板206の表面には、大サイズ紙用発熱パターン709がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この大サイズ紙用発熱パターン709は、ヒータ基板206の長手方向中央(長手方向中心線CLが通る領域)から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している二種類の異なる形状の発熱パターンにより構成されている。
【0078】
一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が広く設計された二本の発熱パターン(以下、メイン発熱パターンと記す)700である。他の一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が狭く設計された発熱パターン(以下、サブ発熱パターンと記す)701である。このサブ発熱パターン701は二本のメイン発熱パターン700の間に配設されている。二本のメイン発熱パターン700と一本のサブ発熱パターン701からなる大サイズ紙用発熱パターン709は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。
【0079】
また、ヒータ基板206の表面には、同じくスクリーン印刷等により塗工してメイン発熱パターン700とサブ発熱パターン701の共通導電パターン(給電用電極)705がヒータ基板206の長手方向一端部に形成してある。また、同じくスクリーン印刷等により塗工してメイン発熱パターン700の共通導電パターン(給電用電極)703と、サブ発熱パターン701の導電パターン(給電用電極)704がヒータ基板206の長手方向他端部に形成してある。
【0080】
ヒータ基板206の裏面には、小サイズ紙用発熱パターン702がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。そしてこの小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している。つまり、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が段階的に広く設計された発熱パターンである。
【0081】
また、ヒータ基板206の裏面には、同じくスクリーン印刷等により塗工して小サイズ紙用発熱パターン702の導電パターン(給電用電極)705及び706がヒータ基板206の長手方向一端部に形成してある。この導電パターン705はヒータ基板206表面の導電パターン705とヒータ基板206に設けられたスルーホール内の導電パターン(不図示)を介して電気的に接続してある。
【0082】
ヒータ203の裏面側においてガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン204の長手方向中央近傍と対向するように温度検出部材(以下、中央サーミスタと記す)213aが配設されている。また、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において大サイズ紙用発熱パターン709の長手方向端部と対向するように温度検出部材(以下、端部サーミスタと記す)213bが配設されている。更に、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン204の長手方向中央近傍と対向するように保護装置214が配設されている。
【0083】
図9に、大サイズ紙用発熱パターン709と小サイズ紙用発熱パターン702における長手方向の発熱分布を示す。同図に示すように、小サイズ紙用発熱パターン702は長手方向中央の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に小さくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも小さくなる。そのため、小サイズ紙用発熱パターン702にのみ熱暴走が発生した際、ヒータ基板206における小サイズ紙用発熱パターン702の長手方向両端部と長手方向中央部との温度差が緩和され、ヒータ割れに対し有利である。これによりヒータ割れの発生を抑制することができる。
【0084】
また、大サイズ紙用発熱パターン709の二本のメイン発熱パターン700は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に小さくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも小さくなる。二本のメイン発熱パターン700とは逆に、サブ発熱パターン701は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に大きくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも大きくなる。そのため、二本のメイン発熱パターン700と、サブ発熱パターン701を、それぞれ、独立に制御することによって、大サイズ紙用発熱パターン707の温度制御性の自由度を向上できる。それにより、記録用紙の幅が小サイズ紙用発熱パターン204以上で大サイズ紙通紙域(図5参照)以下である記録用紙に対する非通紙部昇温を抑制することが可能となる。
【0085】
図10に、本実施例のヒータ203の駆動制御回路の構成を示す。ここで、実施例1のヒータ203の駆動制御回路と同様の回路構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0086】
本実施例では、二極型の切り換えリレー707を用いることにより、大サイズ紙用発熱パターン707の二本のメイン発熱パターン700と、サブ発熱パターン701との切り換えを行っている。大サイズ紙をプリントする際は、メイン発熱パターン700に切り換え、メイン発熱パターン700とサブ発熱パターン701の組み合わせでプリント動作を行う。小サイズ紙をプリントする際は、小サイズ紙用発熱パターン702に切り換え、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701の組み合わせでプリント動作を行う。保護装置214は交流電源301とヒータ203の導電パターン705との間に配設されている。
【0087】
図10を参照して、画像形成装置で小サイズ紙(例えば封筒紙)と、大サイズ紙(例えばA4紙)をプリントする場合の定着装置115におけるヒータ203の小サイズ用発熱パターン702と大サイズ紙用発熱パターン709への通電制御を説明する。
【0088】
小サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動信号を出力してトランジスタ708をオンすることにより、切り換えリレー707をオンして接点707aと707bを接続することで小サイズ紙用発熱パターン702に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック302及び312をオンし、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701に商用電源301から電力を投入する。この際、CPU322は中央サーミスタ213aで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまでサブ発熱パターン701と小サイズ紙用発熱パターン702の両方に電力を投入する。
【0089】
このように小サイズの記録材をプリントする場合の立ち上げ時に小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701を同時に通電することでプリント到達時間を短縮することが可能となる。これにより小サイズの記録材をプリントする際の単位時間当たりの処理枚数即ち小サイズの記録材の生産性を向上できる。
【0090】
プリント時には、CPU322がトライアック312をオフし、小サイズ紙用発熱パターン702のみに電力を投入する。ただし、封筒紙などの厚みのある記録用紙を連続でプリントするような場合、急激に熱を記録用紙に奪われるため、補助的にサブ発熱パターン701にも通電を行うようにトライアック312をオンするように構成してもよい。
【0091】
大サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動停止信号を出力してトランジスタ708をオフすることにより、切り換えリレー707をオフして接点707aと707cを接続することでメイン発熱パターン700に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック302及び312をオンし、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700に電力を投入する。この際、CPU322は中央サーミスタ213aで検出した温度、及び端部サーミスタ213bで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまでサブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700の両方に電力を投入する。
【0092】
プリント時には、CPU322は中央サーミスタ213aと端部サーミスタ213bの温度を基に、常に所定の設定温度を保つよう、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700への通電比率を制御する。
【0093】
本実施例では、切り換えリレー707を用い、小サイズ紙用発熱パターン702とメイン発熱パターン700を切り換える構成としている。これは、小サイズ紙用発熱パターン702とメイン発熱パターン700が共に長手方向中央部の発熱量が長手方向両端部よりも多い発熱パターンであるためである。
【0094】
小サイズ紙用発熱パターン702とメイン発熱パターン700の両方に電力を投入し続けるような熱暴走が発生した場合、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701に通電する組み合わせに比べ、ヒータ割れに対して不利である。ただし、本実施例では、小サイズ紙用発熱パターン702のTCRを正特性にすることで熱暴走によるヒータ割れに対し有利な構成にしているため、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701を切り換える構成でもよい。
【0095】
更に、切り換えリレー707を用いず、2本のメイン発熱パターン700と、1本のサブ発熱パターン701のそれぞれにトライアックを接続し、各発熱パターンを制御するような構成を採ってもよい。
【0096】
以上のように、本実施例の定着装置115も、熱暴走によるヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズ紙の生産性を向上できる。
【0097】
[実施例3]
定着装置の他の例を説明する。本実施例の定着装置はヒータの構成が異なる点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。
【0098】
本実施例の定着装置に用いられるヒータは、ヒータ基板の表面と裏面にそれぞれ少なくとも一本以上の発熱パターンを有し、一方の発熱パターンを他方の発熱パターンより短くし、それぞれの発熱パターンは並列に接続され独立に駆動されるようになっている。また、短い発熱パターンのTCRを正特性に、長い発熱パターンのTCRをゼロまたは負特性にしている。本実施例では、ヒータ基板の表面と裏面にそれぞれ三本の発熱パターンを設けている。
【0099】
本実施例に示すヒータは、小サイズ紙用発熱パターンの数と長手方向の形状、及びサーミスタの数が実施例2のヒータと異なる点を除いて、実施例2のヒータと同じ構成としてある。本実施例では、実施例2のヒータと共通する部材、及び部分に同じ符号を付してその部材、及び部分の再度の説明を省略する。
【0100】
図11は本実施例のヒータ203の短手方向中央の縦断面図と、同ヒータ203の表面と裏面の構成模式図である。
【0101】
ヒータ基板206の裏面には、小サイズ紙用発熱パターン1005がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この小サイズ紙用発熱パターン1005は、ヒータ基板206の長手方向中央(長手方向中心線CLが通る領域)から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している二種類の異なる形状の発熱パターンにより構成されている。
【0102】
一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が広く設計された二本の発熱パターン(以下、小サイズメイン発熱パターンと記す)1000である。他の一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が狭く設計された発熱パターン(以下、小サイズサブ発熱パターンと記す)1001である。この小サイズサブ発熱パターン1001は二本の小サイズメイン発熱パターン1000の間に配設されている。二本の小サイズメイン発熱パターン1000と一本のサブ発熱パターン1001からなる小サイズ紙用発熱パターン1005は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。
【0103】
ヒータ基板206の裏面には、小サイズ紙用発熱パターン702がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。そしてこの小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している。つまり、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が段階的に広く設計された発熱パターンである。
【0104】
ヒータ203の裏面側には、ガラスコート層205の表面において小サイズ紙用発熱パターン702と対向する位置にサーミスタ(以下、中央サーミスタと記す)213aが配設されている。また、ガラスコート層205の表面において大サイズ紙用発熱パターン709と対向する位置にサーミスタ(以下、端部サーミスタと記す)213bが配設されている。
【0105】
また、ヒータ基板206の裏面には、同じくスクリーン印刷等により塗工して小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001の共通導電パターン(給電用電極)1002がヒータ基板206の長手方向他端部に形成してある。また、同じくスクリーン印刷等により塗工して小サイズメイン発熱パターン1000の共通導電パターン(給電用電極)1004と、小サイズサブ発熱パターン1001の導電パターン(給電用電極)1003がヒータ基板206の長手方向一端部に形成してある。
【0106】
ヒータ203の裏面側においてガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において小サイズ紙用発熱パターン1005の長手方向中央近傍と対向するように温度検出部材(以下、小サイズ中央サーミスタと記す)213aが配設されている。また、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において大サイズ発熱パターン709の長手方向端部と対向するように温度検出部材(以下、大サイズ端部サーミスタと記す)213bが配設されている。また、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において小サイズ紙用発熱パターン1005の長手方向端部と対向するように温度検出部材(以下、小サイズ端部サーミスタと記す)213cが配設されている。
【0107】
更に、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において小サイズ紙用発熱パターン1005の長手方向中央近傍と対向するように保護装置214が配設されている。
【0108】
図12に、大サイズ紙用発熱パターン709と小サイズ紙用発熱パターン1005における長手方向の発熱分布を示す。同図に示すように、小サイズ紙用発熱パターン1005の二本の小サイズメイン発熱パターン1000は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に小さくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも小さくなる。二本の小サイズメイン発熱パターン1000とは逆に、小サイズサブ発熱パターン1001は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に大きくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも大きくなる。そのため、二本の小サイズメイン発熱パターン1000と、小サイズサブ発熱パターン1001を、それぞれ、独立に制御することによって、小サイズ紙用発熱パターン1005の温度制御性の自由度を向上できる。それにより、記録用紙の幅が小サイズ紙用発熱パターン204の小サイズ紙通紙域(図5参照)以下である記録用紙に対する非通紙部昇温を抑制することが可能となる。
【0109】
図13に、本実施例のヒータ203の駆動制御回路の構成を示す。ここで、実施例1、2のヒータ203の駆動制御回路と同様の回路構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0110】
本実施例では、二極型の切り換えリレー707を用いることにより、小サイズ紙用発熱パターン1005と、大サイズ紙用発熱パターン709との切り換えを行っている。大サイズ紙をプリントする際は、大サイズ紙用発熱パターン709に切り換え、メイン発熱パターン700とサブ発熱パターン701の組み合わせでプリント動作を行う。小サイズ紙をプリントする際は、小サイズ紙用発熱パターン1005に切り換え、小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001の組み合わせでプリント動作を行う。
【0111】
図13を参照して、画像形成装置で小サイズ紙(例えば封筒紙)と、大サイズ紙(例えばA4紙)をプリントする場合の定着装置115におけるヒータ203の小サイズ用発熱パターン702と大サイズ紙用発熱パターン709への通電制御を説明する。
【0112】
小サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動信号を出力してトランジスタ708をオンすることにより、切り換えリレー707をオンして接点707aと707bを接続することで小サイズ紙用発熱パターン1005に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック1200,1207及び312をオンし、小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001とサブ発熱パターン701に商用電源から電力を投入する。この際、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまで小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001とサブ発熱パターン701に電力を投入する。
【0113】
このように小サイズの記録材をプリントする場合の立ち上げ時に小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001とサブ発熱パターン701を同時に通電することでプリント到達時間を短縮することが可能となる。これにより小サイズの記録材をプリントする際の単位時間当たりの処理枚数即ち小サイズの記録材の生産性を向上できる。
【0114】
プリント時には、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aで検出した温度と、小サイズ端部サーミスタ213cで検出した温度を取り込む。そしてその温度を基に、常に所定の設定温度を保つよう、小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001への通電比率を制御する。ただし、封筒紙などの厚みのある記録用紙を連続でプリントするような場合、急激に熱を記録用紙に奪われるため、補助的にサブ発熱パターン701にも通電を行う。
【0115】
大サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動停止信号を出力してトランジスタ708をオフすることにより、切り換えリレー707をオフして接点707aと707cを接続することでメイン発熱パターン700に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック312及び1241をオンし、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700に電力を投入する。この際、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aで検出した温度、及び大サイズ端部サーミスタ213bで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまでサブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700の両方に電力を投入する。
【0116】
プリント時には、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aと大サイズ端部サーミスタ213bの温度を基に、常に所定の設定温度を保つよう、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700への通電比率を制御する。
【0117】
以上のように、本実施例の定着装置115も、熱暴走によるヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、実施例1、2の定着装置115に比べ、小サイズ紙通紙域より小さい幅の記録用紙に対し、更に小サイズ紙の生産性を向上できる。
【0118】
[他の実施例]
実施例1乃至実施例3では、ヒータの表面側に長い方の発熱パターンを配設し、表面側に短い方の発熱パターンを配設した例を説明したが、ヒータの表面側に短い方の発熱パターンを配設し、表面側に長い方の発熱パターンを配設しても同様の作用効果を得られる。
【0119】
実施例1乃至実施例3では、ヒータの小サイズ紙用発熱パターンと大サイズ紙用発熱パターンの単位長さ当たりの発熱量を同等にしたが、小サイズ紙用発熱パターンと大サイズ紙用発熱パターンの発熱量は必ずしも同等にする必要はない。
【0120】
実施例1乃至実施例3の定着装置115は記録材Pが担持する未定着トナー画像tを記録材に加熱定着する装置としての使用に限られない。例えば未定着トナー画像を加熱して記録材に仮定着する像加熱装置、或いは記録材上に加熱定着されたトナー画像を加熱してトナー画像表面に光沢を付与する像加熱装置としても使用できる。
【符号の説明】
【0121】
115:定着装置、203:セラミックヒータ、202:定着フィルム、210:加圧ローラ、N:定着ニップ部、P:記録材、204,702,1005:小サイズ紙用発熱パターン、207,709:大サイズ紙用発熱パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置(定着器)として用いて好適な像加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載される定着装置(定着器)として、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックス製のヒータ基板上に通電により発熱する発熱抵抗体を有するヒータと、ヒータと接触しつつ回転する筒状の定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラなどを有している。未定着トナー画像を担持する記録材はニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上のトナー画像は記録材に加熱定着される。
【0003】
このタイプの定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温する時間が短いというメリットを有する。従って、この定着装置を搭載するプリンタは、プリント指令の入力後、1枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First Print Out Time)を短くできる。またこのタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
【0004】
ところで、定着フィルムを用いた定着装置を搭載するプリンタで小サイズの記録材を大サイズの記録材と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータの記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温することが知られている。ヒータの非通紙領域が過昇温すると、ヒータを支持するヒータホルダや加圧ローラ等の部材が熱により損傷する可能性がある。
【0005】
特に、最大サイズよりも小さな幅で厚い記録材(厚紙、封筒等)が重送してニップ部に通紙(導入)された場合、ニップ部の記録材が通過する領域(通紙領域)では記録材に大量の熱を奪われる。しかも温度制御は通紙領域に設けられた検温素子の出力に基づいて行われるため、ヒータに大量の電力が供給される。一方、ニップ部の非通紙領域では記録材に熱を奪われないため非常に高温になり(非通紙部昇温)、ヒータを支持するヒータホルダや加圧ローラ等の部材が熱により損傷する可能性がある。
【0006】
そこで、フィルム加熱方式の定着装置を搭載するプリンタは、小サイズの記録材に連続プリントする場合、大サイズの記録材に連続プリントする場合よりもプリント間隔を広げる制御を行いヒータの非通紙領域の過昇温を抑えている。
【0007】
しかしながら、プリント間隔を広げる制御は単位時間当たりの出力枚数を減らすものであり、単位時間当たりの出力枚数を大サイズの記録材の場合と同等或いは若干少ない程度に抑えることが望まれる。
【0008】
ニップ部の非通紙部昇温を防止するため、以下に示すような方法が提案されている。
【0009】
1つは、ヒータ基板の両面にヒータ基板の長手方向に沿って発熱パターンを設け、一方の発熱パターンをもう一方の発熱パターンより短くし、小サイズ紙通紙時には短い方の発熱パターンに通電することで非通紙部昇温を防止する方法が提案されている。以下、小サイズ紙用発熱パターンと記す。また、2本だけでなく、各種小サイズ紙の紙幅に応じた発熱パターンをそれぞれ設け、通紙される小サイズ紙の紙幅に応じて通電する発熱パターンを選択する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
他の対策として、グラファイト等のTCR(抵抗温度特性)が負特性を持つ材料を発熱パターンに使用する方法が考えられる。しかしながら、一般的に負特性の材料は体積抵抗が非常に高いため、所望の抵抗値を得るためには発熱パターンの厚みや幅を増やす必要があり、コストが増大してしまうという問題がある。その解決手段として、ヒータ基板の両面それぞれに形成された発熱パターンを並列に接続し、TCRが負特性を有する発熱パターンの形成を容易にし、非通紙部昇温を防止する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
また、発熱パターンのTCRを負特性にすることで、温度上昇により抵抗値が減少するため、異常時の熱暴走により抵抗発熱体が加熱され続けた場合、瞬時に温度が上昇してしまうという問題があった。この熱暴走の対策として、ヒータ基板の両面に発熱パターンを形成し、一方の発熱パターンのTCRを正に、他方の発熱パターンを負のTCRにし、それぞれの発熱パターンを直列に接続して駆動する。更に、それぞれの発熱パターンにおける抵抗値とTCRの絶対値が同じになるように構成することで直列合成抵抗は温度による変化を抑えることが可能となり、急激な温度上昇の発生を抑えることが可能となる方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−337484号公報
【特許文献2】特開2008−268730号公報
【特許文献3】特開2008−268729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記フィルム加熱方式の定着装置では、熱暴走により発熱パターンに電力が投入され続けた場合のヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上させることが望まれている。ここで、ヒータの立ち上げ時間とは、ヒータに電力を投入してからヒータが所定の定着温度に達するまでの期間をいう。
【0014】
本発明の目的は、熱暴走による加熱体割れの抑制と、加熱体の立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上できるようにした像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の構成は、基板と前記基板の一方の面と前記一方の面とは反対側の他方の面で前記基板の長手方向に沿って設けられた通電発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を介して前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップで記録材を挟持搬送しつつ記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、前記基板の前記一方の面と前記他方の面に設けられた通電発熱抵抗体のうち一方の前記発熱抵抗体は他方の前記発熱抵抗体より短くなっており、短い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が正であり、長い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が零又は負であり、短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体は並列に接続され、短い方の前記発熱抵抗体を用いて記録材上の画像を加熱する場合、所定の加熱温度に達するまで短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体への通電を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱暴走による加熱体割れの抑制と、加熱体の立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズの記録材の生産性を向上できるようにした像加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画像形成装置の一例の概略構成模式図である。
【図2】定着装置の横断側面構成模式図である。
【図3】実施例1に係るヒータの表面側と裏面側の構成模式図である。
【図4】実施例1に係るヒータの駆動制御回路の構成を表わす図である。
【図5】実施例1に係るヒータの表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターンの長手方向の発熱分布図である。
【図6】実施例1に係るヒータの小サイズ用発熱パターンの発熱量の推移を表わす図である。
【図7】実施例1に係るヒータのヒータ基板の温度推移を表わす図である。
【図8】実施例2に係るヒータの短手方向中央の縦断面図と、同ヒータの表面側と裏面側の構成模式図である。
【図9】実施例2に係るヒータの表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターンの長手方向の発熱分布図である。
【図10】実施例2に係るヒータの駆動制御回路の構成を表わす図である。
【図11】実施例3に係るヒータの短手方向中央の縦断面図と、同ヒータの表面側と裏面側の構成模式図である。
【図12】実施例3に係るヒータの表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターンの長手方向の発熱分布図である。
【図13】実施例2に係るヒータの駆動制御回路の構成を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る像加熱装置を定着装置(定着器)として搭載する画像形成装置の一例の概略構成模式図である。この画像形成装置は、電子写真プロセスの帯電、露光、現像、転写などの一連の処理によって記録材にプリントする電子写真式のレーザープリンタである。
【0019】
本実施例に示す画像形成装置は、記録材の搬送基準として、記録材の記録材搬送方向と直交する幅方向中央と記録材搬送路の記録材搬送方向と直交する長手方向中央とを一致させて記録材の搬送を行う中央搬送基準を採用している。また、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から入力するプリント指令に応じて制御部(制御手段)100が所定の画像形成シーケンスを実行し、この画像形成シーケンスに従って所定の画像形成動作を行うものである。制御部100はCPUとROMやRAMなどのメモリからなり、メモリには画像形成シーケンス、及び画像形成に必要な各種プログラムなどが記憶されている。
【0020】
本実施例の画像形成装置は、記録材を搬送する搬送部と、記録材にトナー画像(画像)を形成する画像形成部と、記録材に形成された未定着トナー画像(画像)を記録材上に加熱定着する定着部(定着器)などを有している。
【0021】
画像形成シーケンスが実行されると、搬送部では、給紙カセット101内に積載された記録紙やOHPシート等の記録材Pをピックアップローラ102により1枚だけ給紙カセット101から送出する。そしてこの記録材Pを給紙ローラ103によりレジストローラ104に向けて搬送する。さらにこの記録材Pはレジストローラ104により所定のタイミングで画像形成部の感光体ドラム109と転写部材としての転写ローラ110との間の転写ニップ部に搬送される。
【0022】
画像形成部では、電子写真感光体としての感光体ドラム109の外周面(表面)が帯電手段としての帯電ローラ106により所定の電位に一様に帯電される。そしてこの感光体ドラム109表面の帯電面に対して像露光手段としてのスキャナユニット111により外部装置から出力される画像信号に基づいた像露光が行なわれる。
【0023】
即ち、スキャナユニット111内のレーザダイオード112から出射されるレーザ光は、回転するポリゴンミラー113と、反射ミラー114を経て、感光体ドラム109表面の帯電面において感光体ドラム109の母線方向と周方向に走査される。これにより感光体ドラム109表面の帯電面に2次元の静電潜像(潜像)が形成される。感光体ドラム109表面に形成された潜像は現像手段としての現像ローラ107によってトナー画像として可視化される。
【0024】
転写ニップ部に搬送された記録材Pは感光体ドラム109の外周面(表面)と転写ローラ110の外周面(表面)とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この記録材Pの搬送過程において感光体ドラム109表面のトナー画像が転写ローラ110によって記録材P上に転写される。そしてそのトナー画像を担持した記録材Pは定着部を構成する定着装置115に搬送される。
【0025】
トナー画像転写後の感光体ドラム109表面はクリーニング手段としてのクリーナ108により転写残トナーが除去されて次の画像形成に供される。
【0026】
定着装置115では、記録材が担持する未定着トナー画像に熱と圧力を印加してトナー画像を記録材上に加熱定着する。
【0027】
また、搬送部では、定着装置115を出た記録材Pを中間排紙ローラ116、及び排紙ローラ117によって排出トレー118上に排出される。これにより画像形成装置の一連のプリント動作が終了する。
【0028】
上記帯電ローラ106と、現像ローラ107と、クリーナ108と、感光体ドラム109はプロセスカートリッジ105として一体的にユニット化されている。プロセスカートリッジ105は画像形成装置の筺体を構成する画像形成装置本体に取り外し可能に装着されている。Mはモータであって、定着装置115、スキャナユニット111、プロセスカートリッジ105、ピックアップローラ102、給紙ローラ103、レジストローラ104、中間排紙ローラ116、排紙ローラ117等に回転駆動力を与えている。
【0029】
(2)定着装置(像加熱装置)115
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法をいう。記録材に関し、幅方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。幅とは幅方向の寸法をいう。
【0030】
図2は本実施例の定着装置115の横断側面構成模式図である。この定着装置115は、加圧部材駆動式・テンションレスタイプのフィルム加熱方式の定着装置である(特開平4−44075〜44083号公報、同4−204980〜204484号公報等)。図3は本実施例の定着装置115に用いられるセラミックヒータ203の表面側と裏面側の構成模式図である。
【0031】
本実施例に示す定着装置115は、ガイド部材としてのフィルムガイド201と、可撓性部材としての筒状の定着フィルムと202と、加熱体としてのセラミックヒータ(以下、ヒータと記す)203を有している。更に、加圧部材としての剛性ステー209と、バックアップ部材としての加圧ローラ210などを有している。ヒータホルダ201と、定着フィルムと202と、ヒータ203と、剛性ステー209と、加圧ローラ210は、何れも長手方向に長い部材である。
【0032】
ヒータ203は、高熱伝導材であるアルミナ及び窒化アルミ等でできた細長いヒータ基板(基板)206を有している。そしてこのヒータ基板206の定着ニップ部Nが形成される側の面(一方の面)と、定着ニップ部Nが形成される側の面とは反対側の面(他方の面)に、それぞれ、通電発熱抵抗体としてそれぞれ一本の発熱パターン207及び204有している。そしてこの発熱パターン207及び204のうち、一方の発熱パターン204は他方の発熱パターン207より短くなるように形成してある。そしてそれぞれの発熱パターン207及び204は並列に接続され独立して駆動されるようになっている。
【0033】
ヒータの表面側即ちヒータ基板206の定着ニップ部Nが形成される側の面(以下、表面と記す)には、例えばAg/Pd等の電気抵抗材料をスクリーン印刷等によりヒータ基板206の長手方向に沿って塗工した発熱パターン207が形成してある。ここでAg/Pdは銀パラジウムである。発熱パターン207はヒータ基板206の長手方向中央(ヒータ基板206の長手方向中心線CLが通る領域)に対して線対称(対称)となるように配設してある。
【0034】
また、ヒータ基板206の表面には、同じくAg等の電気導電材料をスクリーン印刷等により塗工して発熱パターン207の長手方向両端部に導電パターン(給電用電極)326,323を形成している。更に、ヒータ基板206の表面には、発熱パターン207の上に保護層としてガラス等をコートしたガラスコート層208が形成してある。
【0035】
一方、ヒータの裏面側即ちヒータ基板206の定着ニップ部Nが形成される側とは反対側の面(以下、裏面と記す)には、例えばAg/Pd等の電気抵抗材料をスクリーン印刷等によりヒータ基板の長手方向に沿って塗工した発熱パターン204が形成してある。発熱パターン204はヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称(対称)となるように配設してある。また、ヒータ基板206の裏面には、同じくAg等の電気導電材料をスクリーン印刷等により塗工して発熱パターン204の長手方向一端部に導電パターン(給電用電極)324,325を形成している。更に、ヒータ基板206の裏面には、発熱パターン204の上に保護層としてガラス等をコートしたガラスコート層205が形成してある。
【0036】
ヒータ203の裏面側においてガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン207の長手方向中央と対向するようにヒータ203の温度を検知する温度検出部材213が配設されている。温度検出部材213は、例えばサーミスタである。サーミスタ213は、ばね(不図示)等でヒータ203のガラスコート層205上に所定の圧で押し当てられている。更に、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン204と対向するように過昇温防止手段としての保護装置214が配設されている。保護装置214は、例えば温度ヒューズやサーモスイッチである。
【0037】
耐熱性樹脂製のフィルムガイド201は、横断面形状略樋型に形成され、短手方向外側の弧状ガイド面201aで筒状の定着フィルム202の内周面(内面)をガイドするようになっている。ヒータ203は、フィルムガイド201の短手方向下面中央で長手方向に沿って設けられた溝部201bに支持されている。そしてヒータ203を支持させたフィルムガイド201の外周に定着フィルム202をルーズに外嵌させている。定着フィルム202をルーズに外嵌させたフィルムガイド201の長手方向両端は定着装置115の装置フレームの前後の側板(不図示)に支持されている。
【0038】
定着フィルム202は、可撓性を有する薄いエンドレス状の耐熱性フィルムからなる基層(不図示)と、この基層の外周面(表面)にフッ素樹脂等のコートを施して離型層(不図示)を形成したものである。
【0039】
剛性ステー209は、横断面形状略逆U字形状に形成され、フィルムガイド201の短手方向上面中央で長手方向に沿って配設されている。この剛性ステー209の長手方向両端は上記装置フレームの前後の側板に支持されている。
【0040】
加圧ローラ210は、アルミニウム・鉄・ステンレス等の芯軸211と、この芯軸211の長手方向両端部の被支持部間の外周面上にシリコンゴム等の弾性のよい耐熱ゴム弾性体からなるローラ状の弾性層212などを有している。この弾性層212の外周面には、記録材P、定着フィルム202の搬送性、トナーの汚れ防止などの理由から離型層213としてフッ素樹脂を分散させたコート層が設けられている。この加圧ローラ210は、定着フィルム202を介してヒータ203の下方に配設され、芯金211の長手方向両端部の被支持部が装置フレームに軸受(不図示)を介して回転可能に支持されている。
【0041】
そして、剛性ステー209の長手方向両端部を加圧ばね(不図示)で加圧ローラ201の外周面(表面)の母線方向と直交する方向へ付勢している。これによりフィルムガイド202は同方向へ加圧されてヒータ20を定着フィルム202を介して加圧ローラ201表面に加圧する。これにより加圧ローラ210は弾性層212がヒータ203の加圧方向に弾性変形して加圧ローラ210表面と定着フィルム202表面とで所定幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成する。
【0042】
(3)ヒータの駆動制御回路、及び発熱パターンの抵抗温度特性
図4にヒータ203の駆動制御回路の構成を示す。同図中、322はCPUとROMやRAMなどのメモリからなる温度制御部(以下、CPUと記す)である。メモリには小サイズ紙モード、大サイズ紙モード、及びヒータ203の温度制御に必要な各種プログラムが記憶されている。301は画像形成装置に接続される商用の交流電源である。画像形成装置は交流電源301から電力をヒータ203に供給してヒータ203の表面側と裏面側の発熱パターン207及び204を発熱させる。本実施例のヒータ203の駆動制御回路は、発熱パターン207及び204に供給する電力を独立に制御するため、二つのヒータ駆動回路を有している。
【0043】
ヒータ203の表面側の発熱パターン207に供給する電力の制御はトライアック312のオン・オフにより行われる。抵抗303,304は、トライアック302のためのバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ305は一次・二次間の絶縁を確保するためのデバイスである。そして、フォトトライアックカプラ305の発光ダイオード305bに通電することによりトライアック302をオンさせる。抵抗306は、発光ダイオード305bの電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ307によりフォトトライアックカプラ305をオン/オフする。トランジスタ307は、抵抗308を介してCPU(温度制御部)322から出力されるヒータ駆動信号(ヒータ駆動1)に従って動作(オン)する。
【0044】
ヒータ203の裏面側の発熱パターン204に供給する電力の制御はトライアック302のオン・オフにより行われる。抵抗313,314は、トライアック312のためのバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ315は一次・二次間の絶縁を確保するためのデバイスである。そして、フォトトライアックカプラ315の発光ダイオード315bに通電することによりトライアック312をオンさせる。抵抗316は、発光ダイオード315bの電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ317によりフォトトライアックカプラ315をオン/オフする。トランジスタ317は、抵抗318を介してCPU322から出力されるヒータ駆動信号(ヒータ駆動2)に従って動作(オン)する。
【0045】
サーミスタ213によって検出される温度は、抵抗321と、サーミスタ213との分圧としてアナログ信号で検出され、そのアナログ信号がA/D変換回路(不図示)でデジタル信号に変換されてCPU322にTH信号(サーミスタ温度)として入力される。
【0046】
CPU322は、サーミスタ213の検出温度と、ヒータ203の設定温度(定着フィルムを介して記録材上に未定着トナー画像を加熱定着するために設定された目標温度(加熱温度))に基づき、例えばPI制御により、供給するべき電力比を算出する。更に供給する電力比に対応した位相角(位相制御)、波数(波数制御)の制御レベルに換算し、その制御条件によりCPU322がトランジスタ307及び317にヒータ駆動信号を出力する。本実施例ではヒータ203の設定温度を200℃に設定している。
【0047】
上述のように、発熱パターン204及び207への電力供給(通電)はそれぞれ独立して制御することが可能であり、それぞれの発熱パターン204及び207の発熱比率はプリントする記録材サイズによって決定される。この制御の詳細については後述する。
【0048】
保護装置214は交流電源301とヒータ203の導電パターン325及び326との間に配設されている。ヒータ203が熱暴走に至り保護装置214が所定の温度(ヒータ203がヒータ割れを起こす温度)に達すると、保護装置214がオープンになり、ヒータ203への通電が断たれる。
【0049】
図5にヒータ203の表面側と裏面側のそれぞれの発熱パターン207及び204の長手方向の発熱分布を示す。図5において斜線部分が発熱パターン207及び204を示している。ヒータ203表面側(フィルム摺動面側)の発熱パターン207は大サイズ紙通紙域(定着ニップ部を通過する大サイズの記録材の通過領域)に対応している。ヒータ203裏面側(非フィルム摺動面側)の発熱パターン204は小サイズ紙通紙域(定着ニップ部を通過する小サイズの記録材の通過領域)に対応している。ここで、小サイズ紙通紙域は、定着ニップ部Nに通紙可能(導入可能)な記録材のうち最も小さいサイズの記録材の幅に対応している。
【0050】
本実施例においては、幅114mmの小サイズの記録材(洋型封筒2号)に対応させるため、ヒータ203裏面側の発熱パターン204の長さを115mmとした。また、幅216mmの大サイズの記録材(US−LETTER紙)に対応させるため、ヒータ203表面側の発熱パターン207の長さを222mmとした。ここで、通紙域よりも発熱パターンを長くしたのは、記録材の幅方向端部までトナー画像の定着性を確保するためである。以下、ヒータ203裏面側の発熱パターン204を小サイズ紙用発熱パターン204と記し、ヒータ203表面側の発熱パターン207を大サイズ紙用発熱パターン207と記す。
【0051】
ヒータ203の表面側と裏面側のガラスコート層208及び205は、発熱パターン204及び207の酸化による抵抗変動の防止と、発熱パターン207と定着フィルム202内面との絶縁を確保するために設けたものである。
【0052】
図5に示すように、小サイズ紙用発熱パターン204における単位長さ当たりの発熱量は大サイズ紙用発熱パターン207における単位長さ当たりの発熱量と同等となるようにしてある。小サイズ紙用発熱パターン204の抵抗値は20Ω、TCR(抵抗温度特性)は正特性で約600ppm/℃とした。一方、大サイズ紙用発熱パターン207の抵抗値は10Ω、TCR(抵抗温度特性)は約0ppm/℃とした。
【0053】
ここで、同図に示す小サイズ紙用発熱パターン204の発熱分布から分かるように、小サイズ紙用発熱パターン204の長さは通紙する小サイズ紙の幅に対応している。そのため、小サイズ紙用発熱パターン204のみの熱暴走が発生した際、ヒータ基板206の大サイズ紙用発熱パターン207の長手方向両端部と小サイズ紙用発熱パターン204を有する長手方向中央部との温度差が激しく、ヒータ割れに対し不利である。
【0054】
そこで、本発明では、ヒータ割れに対して不利な小サイズ紙用発熱パターン204のTCRを正特性にすることで、後述する理由により、ヒータ割れの発生前にサーモスイッチ等の比較的簡易な保護装置214を動作させることが可能となる。
【0055】
図6に、TCRが0ppm/℃または正特性であるときの小サイズ用発熱パターン204に100Vを印加した際の発熱量の推移を示す。同図に示すように、熱暴走により小サイズ用発熱パターン204に電力が投入され続けた場合、TCRが0ppm/℃では、急激に温度が上昇する。そのため、ヒータ割れ発生温度に到達する時間(t0)がサーモスイッチ等の比較的簡易な保護装置214の動作タイミング(t1)に間に合わない。
【0056】
それに対し、TCRを正特性にすることにより、同図に示すように小サイズ用発熱パターン204の温度が上昇するにつれ、抵抗値が高くなりヒータ割れ発生温度に達する時間(t2)が0ppm/℃の場合に比べ長くヒータ割れに対して有利である。これによりヒータ割れの発生を抑制することができる。
【0057】
図7に、100VをTCRが0ppm/℃の小サイズ紙用発熱パターン204のみに印加した場合のヒータ基板206の温度推移を示す。また、同図に、100Vを正特性である小サイズ用発熱パターンのみに印加した場合のヒータ基板206の温度推移を示す。更に、同図に、100VをTCRが0ppm/℃である大サイズ紙用発熱パターン207と正特性である小サイズ紙用発熱パターン204の両方に印加した場合のヒータ基板206の温度推移を示す。同図に示すように、TCRが0ppm/℃の場合にプリント可能温度に到達する時間(t3)に比べ、TCRが正特性である場合のプリント可能温度到達時間(t4)が増加してしまう。
【0058】
そこで、小サイズの記録材をプリントする場合の立ち上げ時に小サイズ紙用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207を同時に通電することでプリント到達時間(t5)を短縮することが可能となる。これにより小サイズの記録材をプリントする際の単位時間当たりの処理枚数即ち小サイズの記録材の生産性を向上できる。
【0059】
図4を参照して、画像形成装置で小サイズ紙(例えば封筒紙)と、大サイズ紙(例えばA4紙)をプリントする場合の定着装置115におけるヒータ203の小サイズ用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207への通電制御を説明する。
【0060】
CPU322はプリント指令に基づいて記録材Pが小サイズ紙か大サイズ紙かを判断する。CPU322は、記録材を小サイズ紙であると判断すると小サイズ紙モードを実行し、記録材を大サイズ紙であると判断すると大サイズ紙モードを実行する。
【0061】
小サイズ紙モードの場合、ヒータ203立ち上げ時には、プリント指令に基づきCPU322がトライアック302及び312をオンし、大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204に商用電源301から電力を投入する。この際、サーミスタ213で検出した温度が約200℃(ヒータ203の設定温度)になるまで大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204の両方に電力を投入する。
【0062】
プリント時(定着ニップ部Nに小サイズ紙を導入してから排出するまでの期間)には、CPU322はトライアック312をオフし、小サイズ紙用発熱パターン204のみに電力を投入する。ただし、封筒紙などの非常に厚みのある記録用紙を連続でプリントするような場合、急激に熱を記録用紙に奪われるため、補助的に大サイズ紙用発熱パターン207にも通電を行うようにトライアック312をオンするように構成してもよい。
【0063】
大サイズ紙モードの場合、ヒータ203立ち上げ時には、プリント指令に基づきCPU322がトライアック302及び312をオンし、大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204に商用電源301から電力を投入する。この際、サーミスタ213で検出した温度が約200℃になるまで大サイズ紙用発熱パターン207と小サイズ紙用発熱パターン204の両方に電力を投入する。
【0064】
プリント時(定着ニップ部Nに大サイズ紙を導入してから排出するまでの期間)には、CPU322はトライアック307をオフし、大サイズ紙用発熱パターン207のみに電力を投入する。
【0065】
(4)定着装置の加熱定着動作
制御部100はプリント指令に応じてモータM(図1参照)を回転駆動する。モータMの出力軸の回転はギア列(不図示)を介して加圧ローラ210の芯金211の長手方向端部に設けられている駆動ギア(不図示)に伝達される。これにより加圧ローラ210は所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転する。加圧ローラ210の回転は定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ210表面と定着フィルム202表面との摩擦力によって定着フィルム202表面に伝わる。これにより定着フィルム202は定着フィルム202の内周面(内面)がヒータ203の保護層208と接触しつつ加圧ローラ210の回転に追従して矢印方向へ回転(移動)する。
【0066】
小サイズ紙モードの場合、CPU322はトランジスタ307及び317にヒータ駆動信号を出力し、フォトトライアックカプラ305及び315をオンしてトライアック302及び312をオンさせる。これにより商用電源301より導電パターン324,325を介して小サイズ紙用発熱パターン204に通電され、商用電源301より導電パターン323,326を介して大サイズ紙用発熱パターン207に通電される。これにより小サイズ紙用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207が発熱してヒータ203は急速に昇温する。
【0067】
また、CPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度が設定温度に達したか否かを判断する。ヒータ203の温度が設定温度に達すると、CPU322はトランジスタ317にヒータ駆動停止信号を出力し、フォトトライアックカプラ315をオフしてトライアック312をオフさせる。これによりヒータ203の大サイズ紙用発熱パターン207への電力供給は停止されるが、小サイズ紙用発熱パターン204への電力供給は継続される。そしてCPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度を設定温度に維持するようにトランジスタ307をオン/オフする。
【0068】
モータMを回転駆動し、かつ小サイズ紙用発熱パターン204が通電された状態において、未定着トナー画像tを担持した小サイズ紙Pがトナー画像担持面を上向きにして定着ニップ部Nに導入される。この小サイズ紙Pは定着ニップ部Nにおいて定着フィルム202表面と加圧ローラ210表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において小サイズ紙P上のトナー画像tは定着フィルム202を介してヒータ203により加熱されて溶融するとともに定着ニップ部Nの圧力で小サイズ紙P上(記録材上)に加熱定着される。そしてトナー画像tが加熱定着された小サイズ紙Pは定着ニップ部Nから排出され中間排紙ローラ116に向けて搬送される。
【0069】
大サイズ紙モードの場合、CPU322はトランジスタ307及び317にヒータ駆動信号を出力し、フォトトライアックカプラ305及び315をオンしてトライアック302及び312をオンさせる。これにより商用電源301より導電パターン324,325を介して小サイズ紙用発熱パターン204に通電され、商用電源301より導電パターン323,326を介して大サイズ紙用発熱パターン207に通電される。これにより小サイズ紙用発熱パターン204と大サイズ紙用発熱パターン207が発熱してヒータ203は急速に昇温する。
【0070】
また、CPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度が設定温度に達したか否かを判断する。ヒータ203の温度が設定温度に達すると、CPU322はトランジスタ307にヒータ駆動停止信号を出力し、フォトトライアックカプラ305をオフしてトライアック302をオフさせる。これによりヒータ203の小サイズ紙用発熱パターン204への電力供給は停止されるが、大サイズ紙用発熱パターン207への電力供給は継続される。そしてCPU322はサーミスタ213からのTH信号に基づきヒータ203の温度を設定温度に維持するようにトランジスタ315をオン/オフする。
【0071】
モータMを回転駆動し、かつ大サイズ紙用発熱パターン204が通電された状態において、未定着トナー画像tを担持した大サイズ紙Pがトナー画像担持面を上向きにして定着ニップ部Nに導入される。この大サイズ紙Pは定着ニップ部Nにおいて定着フィルム202表面と加圧ローラ210表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において大サイズ紙P上のトナー画像tは定着フィルム202を介してヒータ203により加熱されて溶融するとともに定着ニップ部Nの圧力で大サイズ紙P上(記録材上)に加熱定着される。そしてトナー画像tが加熱定着された大サイズ紙Pは定着ニップ部Nから排出され中間排紙ローラ116に向けて搬送される。
【0072】
以上のように、本実施例の定着装置115は、熱暴走によるヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズ紙の生産性を向上できる。
【0073】
[実施例2]
定着装置の他の例を説明する。本実施例の定着装置はヒータの構成が異なる点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。
【0074】
本実施例の定着装置に用いられるヒータは、ヒータ基板の裏面に一本の発熱パターンを有し、ヒータ基板の表面には少なくとも一本以上の発熱パターンを有している。そして一方の発熱パターンを他方の発熱パターンより短くし、それぞれの発熱パターンは並列に接続され独立に駆動されるようになっている。また、短い発熱パターンのTCRを正特性に、長い発熱パターンのTCRをゼロまたは負特性にしている。本実施例では、ヒータ基板の表面に三本の発熱パターンを設けている。
【0075】
本実施例に示すヒータは、小サイズ紙用発熱パターンの長手方向の形状、大サイズ紙用発熱パターンの数と長手方向の形状、大サイズ紙用発熱パターンへの給電用電極の数、及びサーミスタの数が異なる点を除いて、実施例1のヒータと同じ構成としてある。本実施例では、実施例1のヒータと共通する部材、及び部分に同じ符号を付してその部材、及び部分の再度の説明を省略する。
【0076】
図8は本実施例のヒータ203の短手方向中央の縦断面図と、同ヒータ203の表面と裏面の構成模式図である。
【0077】
ヒータ基板206の表面には、大サイズ紙用発熱パターン709がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この大サイズ紙用発熱パターン709は、ヒータ基板206の長手方向中央(長手方向中心線CLが通る領域)から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している二種類の異なる形状の発熱パターンにより構成されている。
【0078】
一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が広く設計された二本の発熱パターン(以下、メイン発熱パターンと記す)700である。他の一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が狭く設計された発熱パターン(以下、サブ発熱パターンと記す)701である。このサブ発熱パターン701は二本のメイン発熱パターン700の間に配設されている。二本のメイン発熱パターン700と一本のサブ発熱パターン701からなる大サイズ紙用発熱パターン709は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。
【0079】
また、ヒータ基板206の表面には、同じくスクリーン印刷等により塗工してメイン発熱パターン700とサブ発熱パターン701の共通導電パターン(給電用電極)705がヒータ基板206の長手方向一端部に形成してある。また、同じくスクリーン印刷等により塗工してメイン発熱パターン700の共通導電パターン(給電用電極)703と、サブ発熱パターン701の導電パターン(給電用電極)704がヒータ基板206の長手方向他端部に形成してある。
【0080】
ヒータ基板206の裏面には、小サイズ紙用発熱パターン702がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。そしてこの小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している。つまり、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が段階的に広く設計された発熱パターンである。
【0081】
また、ヒータ基板206の裏面には、同じくスクリーン印刷等により塗工して小サイズ紙用発熱パターン702の導電パターン(給電用電極)705及び706がヒータ基板206の長手方向一端部に形成してある。この導電パターン705はヒータ基板206表面の導電パターン705とヒータ基板206に設けられたスルーホール内の導電パターン(不図示)を介して電気的に接続してある。
【0082】
ヒータ203の裏面側においてガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン204の長手方向中央近傍と対向するように温度検出部材(以下、中央サーミスタと記す)213aが配設されている。また、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において大サイズ紙用発熱パターン709の長手方向端部と対向するように温度検出部材(以下、端部サーミスタと記す)213bが配設されている。更に、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において発熱パターン204の長手方向中央近傍と対向するように保護装置214が配設されている。
【0083】
図9に、大サイズ紙用発熱パターン709と小サイズ紙用発熱パターン702における長手方向の発熱分布を示す。同図に示すように、小サイズ紙用発熱パターン702は長手方向中央の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に小さくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも小さくなる。そのため、小サイズ紙用発熱パターン702にのみ熱暴走が発生した際、ヒータ基板206における小サイズ紙用発熱パターン702の長手方向両端部と長手方向中央部との温度差が緩和され、ヒータ割れに対し有利である。これによりヒータ割れの発生を抑制することができる。
【0084】
また、大サイズ紙用発熱パターン709の二本のメイン発熱パターン700は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に小さくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも小さくなる。二本のメイン発熱パターン700とは逆に、サブ発熱パターン701は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に大きくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも大きくなる。そのため、二本のメイン発熱パターン700と、サブ発熱パターン701を、それぞれ、独立に制御することによって、大サイズ紙用発熱パターン707の温度制御性の自由度を向上できる。それにより、記録用紙の幅が小サイズ紙用発熱パターン204以上で大サイズ紙通紙域(図5参照)以下である記録用紙に対する非通紙部昇温を抑制することが可能となる。
【0085】
図10に、本実施例のヒータ203の駆動制御回路の構成を示す。ここで、実施例1のヒータ203の駆動制御回路と同様の回路構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0086】
本実施例では、二極型の切り換えリレー707を用いることにより、大サイズ紙用発熱パターン707の二本のメイン発熱パターン700と、サブ発熱パターン701との切り換えを行っている。大サイズ紙をプリントする際は、メイン発熱パターン700に切り換え、メイン発熱パターン700とサブ発熱パターン701の組み合わせでプリント動作を行う。小サイズ紙をプリントする際は、小サイズ紙用発熱パターン702に切り換え、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701の組み合わせでプリント動作を行う。保護装置214は交流電源301とヒータ203の導電パターン705との間に配設されている。
【0087】
図10を参照して、画像形成装置で小サイズ紙(例えば封筒紙)と、大サイズ紙(例えばA4紙)をプリントする場合の定着装置115におけるヒータ203の小サイズ用発熱パターン702と大サイズ紙用発熱パターン709への通電制御を説明する。
【0088】
小サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動信号を出力してトランジスタ708をオンすることにより、切り換えリレー707をオンして接点707aと707bを接続することで小サイズ紙用発熱パターン702に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック302及び312をオンし、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701に商用電源301から電力を投入する。この際、CPU322は中央サーミスタ213aで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまでサブ発熱パターン701と小サイズ紙用発熱パターン702の両方に電力を投入する。
【0089】
このように小サイズの記録材をプリントする場合の立ち上げ時に小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701を同時に通電することでプリント到達時間を短縮することが可能となる。これにより小サイズの記録材をプリントする際の単位時間当たりの処理枚数即ち小サイズの記録材の生産性を向上できる。
【0090】
プリント時には、CPU322がトライアック312をオフし、小サイズ紙用発熱パターン702のみに電力を投入する。ただし、封筒紙などの厚みのある記録用紙を連続でプリントするような場合、急激に熱を記録用紙に奪われるため、補助的にサブ発熱パターン701にも通電を行うようにトライアック312をオンするように構成してもよい。
【0091】
大サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動停止信号を出力してトランジスタ708をオフすることにより、切り換えリレー707をオフして接点707aと707cを接続することでメイン発熱パターン700に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック302及び312をオンし、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700に電力を投入する。この際、CPU322は中央サーミスタ213aで検出した温度、及び端部サーミスタ213bで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまでサブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700の両方に電力を投入する。
【0092】
プリント時には、CPU322は中央サーミスタ213aと端部サーミスタ213bの温度を基に、常に所定の設定温度を保つよう、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700への通電比率を制御する。
【0093】
本実施例では、切り換えリレー707を用い、小サイズ紙用発熱パターン702とメイン発熱パターン700を切り換える構成としている。これは、小サイズ紙用発熱パターン702とメイン発熱パターン700が共に長手方向中央部の発熱量が長手方向両端部よりも多い発熱パターンであるためである。
【0094】
小サイズ紙用発熱パターン702とメイン発熱パターン700の両方に電力を投入し続けるような熱暴走が発生した場合、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701に通電する組み合わせに比べ、ヒータ割れに対して不利である。ただし、本実施例では、小サイズ紙用発熱パターン702のTCRを正特性にすることで熱暴走によるヒータ割れに対し有利な構成にしているため、小サイズ紙用発熱パターン702とサブ発熱パターン701を切り換える構成でもよい。
【0095】
更に、切り換えリレー707を用いず、2本のメイン発熱パターン700と、1本のサブ発熱パターン701のそれぞれにトライアックを接続し、各発熱パターンを制御するような構成を採ってもよい。
【0096】
以上のように、本実施例の定着装置115も、熱暴走によるヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、小サイズ紙の生産性を向上できる。
【0097】
[実施例3]
定着装置の他の例を説明する。本実施例の定着装置はヒータの構成が異なる点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。
【0098】
本実施例の定着装置に用いられるヒータは、ヒータ基板の表面と裏面にそれぞれ少なくとも一本以上の発熱パターンを有し、一方の発熱パターンを他方の発熱パターンより短くし、それぞれの発熱パターンは並列に接続され独立に駆動されるようになっている。また、短い発熱パターンのTCRを正特性に、長い発熱パターンのTCRをゼロまたは負特性にしている。本実施例では、ヒータ基板の表面と裏面にそれぞれ三本の発熱パターンを設けている。
【0099】
本実施例に示すヒータは、小サイズ紙用発熱パターンの数と長手方向の形状、及びサーミスタの数が実施例2のヒータと異なる点を除いて、実施例2のヒータと同じ構成としてある。本実施例では、実施例2のヒータと共通する部材、及び部分に同じ符号を付してその部材、及び部分の再度の説明を省略する。
【0100】
図11は本実施例のヒータ203の短手方向中央の縦断面図と、同ヒータ203の表面と裏面の構成模式図である。
【0101】
ヒータ基板206の裏面には、小サイズ紙用発熱パターン1005がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この小サイズ紙用発熱パターン1005は、ヒータ基板206の長手方向中央(長手方向中心線CLが通る領域)から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している二種類の異なる形状の発熱パターンにより構成されている。
【0102】
一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が広く設計された二本の発熱パターン(以下、小サイズメイン発熱パターンと記す)1000である。他の一つは、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が狭く設計された発熱パターン(以下、小サイズサブ発熱パターンと記す)1001である。この小サイズサブ発熱パターン1001は二本の小サイズメイン発熱パターン1000の間に配設されている。二本の小サイズメイン発熱パターン1000と一本のサブ発熱パターン1001からなる小サイズ紙用発熱パターン1005は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。
【0103】
ヒータ基板206の裏面には、小サイズ紙用発熱パターン702がヒータ基板206の長手方向に沿って形成してある。この小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央に対して線対称となるように配設してある。そしてこの小サイズ紙用発熱パターン702は、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向けてヒータ基板206の短手方向の幅が変化している。つまり、ヒータ基板206の長手方向中央から長手方向端部に向け、発熱パターンの短手方向の幅が段階的に広く設計された発熱パターンである。
【0104】
ヒータ203の裏面側には、ガラスコート層205の表面において小サイズ紙用発熱パターン702と対向する位置にサーミスタ(以下、中央サーミスタと記す)213aが配設されている。また、ガラスコート層205の表面において大サイズ紙用発熱パターン709と対向する位置にサーミスタ(以下、端部サーミスタと記す)213bが配設されている。
【0105】
また、ヒータ基板206の裏面には、同じくスクリーン印刷等により塗工して小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001の共通導電パターン(給電用電極)1002がヒータ基板206の長手方向他端部に形成してある。また、同じくスクリーン印刷等により塗工して小サイズメイン発熱パターン1000の共通導電パターン(給電用電極)1004と、小サイズサブ発熱パターン1001の導電パターン(給電用電極)1003がヒータ基板206の長手方向一端部に形成してある。
【0106】
ヒータ203の裏面側においてガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において小サイズ紙用発熱パターン1005の長手方向中央近傍と対向するように温度検出部材(以下、小サイズ中央サーミスタと記す)213aが配設されている。また、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において大サイズ発熱パターン709の長手方向端部と対向するように温度検出部材(以下、大サイズ端部サーミスタと記す)213bが配設されている。また、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において小サイズ紙用発熱パターン1005の長手方向端部と対向するように温度検出部材(以下、小サイズ端部サーミスタと記す)213cが配設されている。
【0107】
更に、ガラスコート層205上には、ヒータ基板206の厚み方向において小サイズ紙用発熱パターン1005の長手方向中央近傍と対向するように保護装置214が配設されている。
【0108】
図12に、大サイズ紙用発熱パターン709と小サイズ紙用発熱パターン1005における長手方向の発熱分布を示す。同図に示すように、小サイズ紙用発熱パターン1005の二本の小サイズメイン発熱パターン1000は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に小さくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも小さくなる。二本の小サイズメイン発熱パターン1000とは逆に、小サイズサブ発熱パターン1001は長手方向中央の抵抗値の抵抗値を長手方向端部に対して段階的に大きくする設計であるため、長手方向両端部の発熱量が長手方向中央よりも大きくなる。そのため、二本の小サイズメイン発熱パターン1000と、小サイズサブ発熱パターン1001を、それぞれ、独立に制御することによって、小サイズ紙用発熱パターン1005の温度制御性の自由度を向上できる。それにより、記録用紙の幅が小サイズ紙用発熱パターン204の小サイズ紙通紙域(図5参照)以下である記録用紙に対する非通紙部昇温を抑制することが可能となる。
【0109】
図13に、本実施例のヒータ203の駆動制御回路の構成を示す。ここで、実施例1、2のヒータ203の駆動制御回路と同様の回路構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0110】
本実施例では、二極型の切り換えリレー707を用いることにより、小サイズ紙用発熱パターン1005と、大サイズ紙用発熱パターン709との切り換えを行っている。大サイズ紙をプリントする際は、大サイズ紙用発熱パターン709に切り換え、メイン発熱パターン700とサブ発熱パターン701の組み合わせでプリント動作を行う。小サイズ紙をプリントする際は、小サイズ紙用発熱パターン1005に切り換え、小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001の組み合わせでプリント動作を行う。
【0111】
図13を参照して、画像形成装置で小サイズ紙(例えば封筒紙)と、大サイズ紙(例えばA4紙)をプリントする場合の定着装置115におけるヒータ203の小サイズ用発熱パターン702と大サイズ紙用発熱パターン709への通電制御を説明する。
【0112】
小サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動信号を出力してトランジスタ708をオンすることにより、切り換えリレー707をオンして接点707aと707bを接続することで小サイズ紙用発熱パターン1005に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック1200,1207及び312をオンし、小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001とサブ発熱パターン701に商用電源から電力を投入する。この際、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまで小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001とサブ発熱パターン701に電力を投入する。
【0113】
このように小サイズの記録材をプリントする場合の立ち上げ時に小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001とサブ発熱パターン701を同時に通電することでプリント到達時間を短縮することが可能となる。これにより小サイズの記録材をプリントする際の単位時間当たりの処理枚数即ち小サイズの記録材の生産性を向上できる。
【0114】
プリント時には、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aで検出した温度と、小サイズ端部サーミスタ213cで検出した温度を取り込む。そしてその温度を基に、常に所定の設定温度を保つよう、小サイズメイン発熱パターン1000と小サイズサブ発熱パターン1001への通電比率を制御する。ただし、封筒紙などの厚みのある記録用紙を連続でプリントするような場合、急激に熱を記録用紙に奪われるため、補助的にサブ発熱パターン701にも通電を行う。
【0115】
大サイズ紙モードの場合、プリント指令に基づきCPU322がリレー駆動停止信号を出力してトランジスタ708をオフすることにより、切り換えリレー707をオフして接点707aと707cを接続することでメイン発熱パターン700に切り換える。ヒータ203立ち上げ時には、CPU322がヒータ駆動信号を出力してトライアック312及び1241をオンし、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700に電力を投入する。この際、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aで検出した温度、及び大サイズ端部サーミスタ213bで検出した温度を取り込み、その温度が約200℃になるまでサブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700の両方に電力を投入する。
【0116】
プリント時には、CPU322は小サイズ中央サーミスタ213aと大サイズ端部サーミスタ213bの温度を基に、常に所定の設定温度を保つよう、サブ発熱パターン701とメイン発熱パターン700への通電比率を制御する。
【0117】
以上のように、本実施例の定着装置115も、熱暴走によるヒータ割れの抑制と、ヒータの立ち上げ時間の短縮を両立でき、実施例1、2の定着装置115に比べ、小サイズ紙通紙域より小さい幅の記録用紙に対し、更に小サイズ紙の生産性を向上できる。
【0118】
[他の実施例]
実施例1乃至実施例3では、ヒータの表面側に長い方の発熱パターンを配設し、表面側に短い方の発熱パターンを配設した例を説明したが、ヒータの表面側に短い方の発熱パターンを配設し、表面側に長い方の発熱パターンを配設しても同様の作用効果を得られる。
【0119】
実施例1乃至実施例3では、ヒータの小サイズ紙用発熱パターンと大サイズ紙用発熱パターンの単位長さ当たりの発熱量を同等にしたが、小サイズ紙用発熱パターンと大サイズ紙用発熱パターンの発熱量は必ずしも同等にする必要はない。
【0120】
実施例1乃至実施例3の定着装置115は記録材Pが担持する未定着トナー画像tを記録材に加熱定着する装置としての使用に限られない。例えば未定着トナー画像を加熱して記録材に仮定着する像加熱装置、或いは記録材上に加熱定着されたトナー画像を加熱してトナー画像表面に光沢を付与する像加熱装置としても使用できる。
【符号の説明】
【0121】
115:定着装置、203:セラミックヒータ、202:定着フィルム、210:加圧ローラ、N:定着ニップ部、P:記録材、204,702,1005:小サイズ紙用発熱パターン、207,709:大サイズ紙用発熱パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と前記基板の一方の面と前記一方の面とは反対側の他方の面で前記基板の長手方向に沿って設けられた通電発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を介して前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップで記録材を挟持搬送しつつ記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、
前記基板の前記一方の面と前記他方の面に設けられた通電発熱抵抗体のうち一方の前記発熱抵抗体は他方の前記発熱抵抗体より短くなっており、短い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が正であり、長い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が零又は負であり、短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体は並列に接続され、短い方の前記発熱抵抗体を用いて記録材上の画像を加熱する場合、所定の加熱温度に達するまで短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体への通電を行うことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
短い方の前記発熱抵抗体と、長い方の前記発熱抵抗体は、それぞれ、前記基板の短手方向の幅が等しいことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
短い方の前記発熱抵抗体と、長い方の前記発熱抵抗体は、それぞれ、前記基板の短手方向に幅を変えることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
短い方の前記発熱抵抗体と、長い方の前記発熱抵抗体は、それぞれ、少なくとも一本以上の発熱抵抗体を備えることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項1】
基板と前記基板の一方の面と前記一方の面とは反対側の他方の面で前記基板の長手方向に沿って設けられた通電発熱抵抗体とを有する加熱体と、前記加熱体と接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を介して前記加熱体とニップ部を形成するバックアップ部材と、を有し、前記ニップで記録材を挟持搬送しつつ記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、
前記基板の前記一方の面と前記他方の面に設けられた通電発熱抵抗体のうち一方の前記発熱抵抗体は他方の前記発熱抵抗体より短くなっており、短い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が正であり、長い方の前記発熱抵抗体は抵抗温度特性が零又は負であり、短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体は並列に接続され、短い方の前記発熱抵抗体を用いて記録材上の画像を加熱する場合、所定の加熱温度に達するまで短い方の前記発熱抵抗体と長い方の前記発熱抵抗体への通電を行うことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
短い方の前記発熱抵抗体と、長い方の前記発熱抵抗体は、それぞれ、前記基板の短手方向の幅が等しいことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
短い方の前記発熱抵抗体と、長い方の前記発熱抵抗体は、それぞれ、前記基板の短手方向に幅を変えることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
短い方の前記発熱抵抗体と、長い方の前記発熱抵抗体は、それぞれ、少なくとも一本以上の発熱抵抗体を備えることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−73206(P2013−73206A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214416(P2011−214416)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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