説明

充電式電気掃除機システム

【課題】 組電池の充電時において、組電池が充電可能上限温度を超えている場合に、この組電池の温度を、充電可能上限温度まで、簡易な構造で迅速に低下させ、充電待ち時間をきわめて短くする。
【解決手段】 組電池8と収納室伝熱壁とが熱的に接続されるように付勢力を与える弾性部材を収納室内に設け、充電器40に充電台41の一部を構成し伝熱面を有する伝熱部42を設け、前記組電池8を充電する際に、前記収納室伝熱壁と前記充電台41の伝熱面とを熱的に接続させ、かつ、充電制御部を含む前記組電池8を充電する回路を形成するための接続部を有する接続構造を設け、前記充電制御部は、前記組電池8の充電中に温度検出素子により検出された前記組電池8の温度と予め設定された充電可能温度範囲とを比較しながら、前記組電池8の充電電流を制御するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に搭載された組電池の充電を効率よく行うことができるようにした充電式電気掃除機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電式電気掃除機では、電気掃除機の本体ケースに収納された複数の二次電池から成る組電池を充電するための充電器について種々の発明が提案され、実用化されている。このような組電池を充電する際に、特に留意すべき点は、安全性の観点から、組電池の温度が高い状態では、充電を行うことができないことである。そこで、従来の充電式電気掃除機では、組電池の温度を測定するサーミスタと、このサーミスタによって測定された組電池の温度が、充電可能温度範囲(例えば、0〜55℃)外の場合には組電池の充電を行わず、組電池の温度が、その充電可能温度範囲内である場合には、組電池の充電を開始するようにした制御手段とが設けられている。このようなサーミスタと制御手段とを備えた充電式電気掃除機において、電気掃除機の動作を停止させた直後に、組電池の充電を行おうとしても、組電池の温度が充電可能上限温度を超えている場合が多い。従って、充電制御手段は、組電池の温度が充電可能上限温度に下がるまで充電を待たなければならない。組電池は、ハウジング内に収納されているために放熱性が低く、組電池の温度が自然放熱により充電可能上限温度に下がるのを待っていたのでは、長時間にわたって充電を開始できないという問題があった。
【0003】
このため、高温になっている組電池の温度を速やかに低下させて組電池の充電が可能になるまでの待ち時間を短縮するようにした技術が、例えば、特許文献1に提案されている。この特許文献に開示された発明によれば、組電池の充電のために充電式電気掃除機を充電器(ACアダプタ本体)に結合したときに、充電器内と充電式電気掃除機内とを連通させ、組電池を途中に配置するようにした風路が形成されている。また、充電器には、送風機が設けられ、この送風機を駆動させることにより、風路内に冷却風を流し、この冷却風によって組電池を強制的に空冷するようにしている。
【特許文献1】特開2002−65535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された発明では、組電池を空冷するための冷却風が流れる風路を充電器内および充電式電気掃除機内に形成しなければならず、電気掃除機の構造が複雑になっていた。
また、充電式電気掃除機内に風路を形成することにより充電式電気掃除機が大型化し、家電製品全般に対する要望である小型化に反することになっていた。
さらに、充電器においては、充電のための機構のほかに冷却のための送風機や、この送風機に付随する種々の機構を設けなければならず、充電器が大型化し、高価格になるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、組電池の充電時において、組電池が充電可能上限温度を超えている場合に、この組電池の温度を、充電可能上限温度まで簡易な構造で迅速に低下させ、充電待ち時間をきわめて短くすることができる充電式電気掃除機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る充電式電気掃除機システムは、本体ケースを有する電気掃除機と、前記本体ケースに設けられ、開口を有する収納室と、前記収納室に収納され、充電可能な複数の電池セルから構成された組電池と、前記収納室の一部を構成する収納室伝熱壁と、前記組電池の温度を検出する温度検出素子と、前記組電池を充電し充電台を有する充電器と、前記組電池の充電を制御する充電制御部と、を備えた充電式電気掃除機システムにおいて、前記組電池と前記収納室伝熱壁とが熱的に接続されるように付勢力を与える弾性部材を前記収納室内に設け、前記充電器に前記充電台の一部を構成し伝熱面を有する伝熱部を設け、前記組電池を充電する際に、前記収納室伝熱壁と前記充電台の伝熱面とを熱的に接続させ、かつ、前記充電制御部を含む前記組電池を充電する回路を形成するための接続部を有する接続構造を設け、前記充電制御部は、前記組電池の充電中に前記温度検出素子により検出された前記組電池の温度と予め設定された充電可能温度範囲とを比較しながら、前記組電池の充電電流を制御するように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組電池の充電時において、組電池が充電可能上限温度を超えている場合に、この組電池の温度を、充電可能上限温度まで、簡易な構造で迅速に低下させ、充電待ち時間をきわめて短くすることができる充電式電気掃除機システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の幾つかの実施例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図7を用いて、充電式電気掃除機システムの電気掃除機について説明する。電気掃除機1は、図1に示すように、本体ケース2と、この本体ケース2に着脱可能に取り付けられたホース3と、このホース3の先端部に着脱可能に接続された延長管4と、この延長管4の先端部に着脱可能に取り付けられた吸込口体5とを備えている。本体ケース2には、その後方下部に、間隔をあけて配置された走行用の一対の車輪6が取り付けられ、その前方下部に、走行用の一個の車輪6aが取り付けられている。本体ケース2の内部には、組電池8と、この組電池8を駆動源として駆動される電動送風機9とが収納されている。この組電池8の構造および収納構造は後述する。ホース3は、その基端が図示しない集塵室を介して電動送風機9の吸込側に連通するように本体ケース2に接続されている。ホース3の先端側であって延長管4が接続される箇所の近傍には、後方に向けてホース3から分岐された操作者の握り部10と、この握り部10を握った操作者の指で操作能な範囲に位置する操作手段11とが設けられている。
この操作手段11は、電動送風機9の電源スイッチを兼ね、この電動送風機9をそれぞれ異なる駆動状態にする複数種類の運転モードを選択して設定することができるように構成されている。具体的には、握り部10から延長管4の方向に向けて、運転モードの一つである停止設定用の換作ボタン11a、運転モードの一つである弱運転設定用の操作ボタン11b、運転モードの一つである強運転設定用の換作ボタン11cが一列に配設されている。
【0009】
組電池8は、図3Aに示すように、例えば、円筒型のニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池の如き、充電可能な複数の二次電池セル12と、これら二次電池セル12を一つに結合し、かつ被覆する熱収縮チューブ13とから構成されている。この組電池8は、温度特性および容量の揃った二次電池セルを集めて構成されることが好ましい。この実施例では組電池8は、8本の二次電池セルが並べて配置されている。図3Bには、この組電池が収納された収納室16の一部を構成する収納室伝熱壁18との配置関係を示す。また、図3Cには、組電池8の温度を検出する温度検出素子15が隣接する二次電池セル12の間隙に配置されている一例を示す。この温度検出素子15は、例えば、図3Dに示す如きサーミスタ15から成っている。このサーミスタ15は、組電池8の一箇所または複数箇所に設けることができる。
【0010】
複数の二次電池セル12が、適宜配置されて電気的に接続され、サーミスタ15が配置されると、これら接続された二次電池セル12およびサーミスタ15が熱収縮チューブ13によってパッケージ化される。これによって、周囲が電気的に絶縁された電気掃除機用組電池8が形成される。そして、図7に示すように、本体ケース2の後部側には、この組電池8を充電するための本体ケース側充電用端子35が設けられている。
【0011】
図2に示すように、この本体ケース2は、上部ケース2aと下部ケース2bとから形成されている。本体ケース2の下部ケース2bには組電池8を収納する収納室17が形成されている。この収納室17は、組電池8を出し入れ可能にするために着脱自在に下部ケース2bに取り付けられ、略矩形状の開口19を塞ぐ収納室伝熱壁18と、一対の側方固定板20と、収納室側壁22と、収納室床壁23(図6A参照)と、から構成されている。収納室側壁22には、開口19側にネジ穴25を形成した突出部24が設けられている。一方、収納室伝熱壁18の上下のそれぞれの端部には、貫通穴27が形成された凸部26が設けられている(図4B参照)。そして、ねじ28と、貫通穴27と、ねじ穴25と、によって、収納室伝熱壁18は下部ケース2bに固定される(図6A参照)。
【0012】
収納室伝熱壁18は、側方固定板20、収納室側壁22、及び収納室床壁23の材料と比較して、熱伝導率の高い材料を使用する。例えば、側方固定板20を構成する材料が密度の低い発泡材料、下部ケース2bと一体に形成される収納室側壁22及び収納室床壁23の材料がABS樹脂の場合、収納室伝熱壁18には、ABSよりも熱伝導率の高い金属粉末を混合した樹脂材料や、アルミやマグネシウム合金の金属材料等が用いられる。また、この実施例では、収納室側壁22及び収納室床壁23を、下部ケース2bの一部としているが、下部ケース2bと収納室側壁22及び収納室床壁23とを別個に形成することができる。
【0013】
さらに、下部ケース2bに固定される収納室伝熱壁18と収納部16に収納された組電池8の、少なくとも、組電池8が収納室伝熱壁18に接触する側、またはその反対側のいずれか一方に弾性部材30が設けられている(図6B参照)。この弾性部材30は、組電池8を、収納室伝熱壁18に、常時、圧力を加えながら接触するように機能する。弾性部材30は、例えば、図4Aに示すようにシート状で、伝熱性と弾性とを有するカーボンフィラーを所定量含有する天然ゴムまたは合成ゴム等から構成されている。なお、この弾性部材30は、収納室伝熱壁18とは別体に配置されるか、または予め収納室伝熱壁18の内面に固定されてもよい。なお、組電池8が収納室17内に配置されたとき、組電池8の二次電池12は、図5に示すように配置される。
なお、弾性部材30を収納室伝熱壁18と反対側に配置する場合、弾性部材30は、例えば、金属製板ばね、金属製コイルばね、天然ゴムの発泡体、または合成ゴムの発泡体等で形成される。図6Aに示すように、ねじ28の締付けにより、組電池8と弾性部材31、及び、収納室伝熱壁18との間の接触部分の押圧力が強くなり、組電池8と収納室伝熱壁18との熱的な接続が強くなる。すなわち、組電池8と収納室伝熱壁18との間の熱抵抗が小さくなる。
【0014】
次に、図1、図8、図9Aおよび図9Bを用いて、充電器40および充電時の電気掃除機1と充電器40との位置関係に関して説明する。図1に示す充電器40は、本体ケース2が移動する方向と水平な状態、即ち、横置き充電方式で組電池8を充電するように構成されている。この充電器40は、断面が略L字状の充電台41と、この充電台41の下部で本体ケース2を載置するようにした伝熱部42と、本体ケース2を伝熱部42に載せたとき、本体ケース2の後部を収納する収容部43と、この収容部43に配置された充電器側充電用端子44と、この充電器側充電用端子44に接続された充電回路45Aまたは45B(図9A、図9B参照)、およびこの充電回路45Aまたは45Bを制御する充電制御部46とを備えている。充電器側充電用端子44には電気掃除機1の本体ケース側充電用端子35が接続される。また、本体ケース側充電用端子口35a(図7参照)と充電器側充電用端子口44a(図1参照)は、本体ケース2と充電器40の位置合わせ箇所としても機能する。これら本体ケース側充電用端子口35aと充電器側充電用端子口44aの周囲には、図示しないが磁石が配置され、接続の信頼性を向上させている。
【0015】
伝熱部42は、充電台41の一部であって、略直方体で形成され、その上面には平坦な伝熱部上面42aが形成されている。組電池8の充電のために本体ケース2が充電器40に結合したときに、組電池8と熱的に接続されている収納室伝熱壁18(図2参照)がこの伝熱部上面42aに面接触する。ここで、充電器40の設置面70から伝熱部上面42aまでの距離H1は、収納室伝熱壁18と伝熱部上面42aとが、互いに面接触できるように、収納室伝熱壁18の表面から車輪6または6aの下面までの距離H2より大きく設定されている。
【0016】
また、この充電器40の伝熱部42の幅Djは、車輪6の間隔Dsより小さく設定されている。従って、本体ケース2は、車輪6間に伝熱部42を差し込むようにして伝熱部42上に配置され、且つ、本体ケース2が伝熱部42上にあるとき、車輪6および6aは設置面70から浮き上がった状態になる。この結果、本体ケース2は、自重によって伝熱部42に載置され、このとき、収納室伝熱壁18が伝熱部上面42aに面接触される。ここで、留意すべきは、収納室伝熱壁18と伝熱部上面42aとの面接触を優先させるため、充電器側充電用端子44と本体ケース側充電用端子35との接続が、3次元的に自由度をもって設計されていることである。
【0017】
伝熱部42を構成する材料は、収納室伝熱壁18を形成する材料と同程度又はそれ以上の熱伝導率を有することが望ましい。例えば、ABSよりも熱伝導率の高い金属粉末を混合した樹脂材料や、アルミなどの金属材料が好適である。さらに、伝熱部42は、組電池8の熱をある程度吸収する熱容量を有することが望ましく、二次電池セル12の本数や電気掃除機1の動作方法に応じて、予めその体積が設計される。このような充電状態において、組電池8が弾性部材30によって収納室伝熱壁18に熱的に接続されているので、組電池8の熱は、伝熱部42に迅速に放熱される。尚、伝熱部42は、充電台41と一体に形成してもよく、又は、充電器本体と別体に形成したものを充電台41に固定してもよい。また、本実施例では、伝熱部42は、略直方体状に形成されているが、収納室伝熱壁18と面接触することができれば任意の形状にすることができる。例えば、収納室伝熱壁18と伝熱部上面42aとが共に平坦ではなく、互いに嵌合する凹凸面状に形成してもよい。
【0018】
次に、図9Aおよび図9Bを用いて、充電制御方法を説明する。図9Aに示された充電回路45Aは、充電器側充電用端子44にリアクトル47と、コンデンサ48と、トランスなどの絶縁部50と、スイッチング部51と、整流部49と、この整流部49に接続されたAC入力部52とを備えている。この充電回路45Aは、商用AC電源を整流、絶縁し、スイッチング素子51に信号を入力することによって充電電流を制御するように構成されている。この充電回路45Aから組電池8が切り離されると、組電池8の電力が電動送風機9(図1参照)に供給される。この充電回路45Aを制御する充電制御部46は、主にマイコンで構成されており、充電器側充電用端子44に接続された組電池8の充電電圧や温度を検出する検出部60と、この検出部60に接続された比較部61と、異常検出部62と、信号を生成しスイッチング素子51に信号を出力する信号生成・出力部66と、ROM及びRAM等のメモリ150と、を有する。
【0019】
充電制御部46は、充電時に、充電回路45Aによって充電されている組電池8の電池電圧および温度を監視する。充電時のサーミスタ15からの出力電圧および電池電圧は、比較部61においてメモリ150に予め設定された値と比較され、その比較結果に基づき信号生成・出力部66からスイッチング部51へ信号が出力される。スイッチング部51は、例えばトランジスタ、FETまたはサイリスタ等の素子である。また、スイッチング部51への信号は、例えば、PWM信号を用い、充電電流は、そのPWM信号のdutyの大小によって制御する。
【0020】
温度監視の場合、組電池8の温度をサーミスタ15のより検出して、その温度が予めメモリ150に設定された充電可能温度範囲、例えば0℃〜55℃の範囲外であれば充電を停止し、充電可能温度範囲内になると充電を開始するプログラムがメモリ150に保存されている。また、図9Bに示された充電回路45Bは、絶縁部50の一次側にスイッチング部51が設けられている点、および整流部49の入力側に絶縁部50およびスイッチング部51を介してAC入力部52が接続されている点で充電回路45Aと異なり、他の点で同じである。
【0021】
次に、組電池8の充電のために本体ケース2を充電器40に結合したときの充電制御部46による一連の充電制御動作を図10のフローチャートに基づいて説明する。 まず、検知部60からの電池電圧検知値に基づき、本体ケース側充電用端子35と充電器側充電用端子44とが接続されているか否かが判断する(ステップS1)。これら本体ケース側充電用端子35と充電器側充電用端子44とが接続されている場合には、サーミスタ15からの温度検知値に基づいて組電池8の温度が充電可能温度範囲内か否かを判断する(ステップS2)。組電池8の温度が充電可能温度範囲外である場合には、充電動作を開始しない。充電動作を待つ間、上述したように、組電池8と伝熱部42との間の熱抵抗が小さくなり、放熱経路が形成され、組電池8の温度低下が促進される。
【0022】
ステップS2において、組電池8の温度が充電可能温度内であると判断された場合は、充電制御部46からスイッチング部51へ信号が出力され、充電回路45が駆動され、組電池8の充電が開始される(ステップS3)。充電動作中は、タイマ64による組電池8への充電時間長の測定が行われ、さらに、周期的にサーミスタ15による組電池8の温度知と組電池8の電圧検知が行われる。タイマ64による充電時間長の測定は、充電異常の検知として用いられる(ステップS4)。予めメモリ150に設定された設定時間長を超えても充電が完了しない時には、充電が異常であると判断し、LED等の表示部(図示せず)に信号を出力する(ステップS8)。また、組電池8の温度は、予めメモリ150に設定された充電可能温度範囲内であるか否か、即ち、組電池8の温度が充電動作により充電可能温度範囲外になっているか否かを、周期的にサーミスタ15からの検知値に基づいて判断する。(ステップS5)。組電池8の温度が充電可能温度範囲外になった場合は、安全上、充電動作を一旦停止し、充電動作待ち状態へ戻る(ステップS1)。
【0023】
さらに、組電池8の充電が完了するか否か、即ち、電池電圧が予めメモリ150に設定された充電終止電圧に到達したか否かを、検出部60からの検出値に基づいて判断される(ステップS6)。組電池8の電圧が充電終止電圧に到達した場合は、充電動作が完了したと判断し、充電動作を終了する(ステップS7)。充電終了後は、本体ケース側充電用端子35を充電器側充電用端子44から外し、本体ケース2を充電器40から離す。これにより、直ちに電気掃除機1による掃除を再開することが可能となる。このように、本発明を実施することにより、組電池8と伝熱部42との間の熱抵抗が小さくなり、放熱経路が形成され、組電池8の温度低下が促進される。よって、電気掃除機の掃除動作停止後に、安全に充電できる充電可能温度内に入るまでの時間を、短縮することが可能となる。また構造が簡単であり、装置全体を小型化することが容易である。
【0024】
さらに、信号出力部66から出力されるPWM信号のdutyを大きくして充電回路45の充電電流を大きくする急速充電動作の時、通常の充電電流による充電動作の時よりも組電池8の温度は上昇するが、上述の如く、組電池8と伝熱部42との間の放熱経路により、組電池8の温度上昇が軽減される。また、この組電池8を収納する収納室17を、図2に示すように本体ケース2の後方下部に設けられている走行用の一対の車輪6を位置合わせガイドとして前方下部にある走行用の一個の車輪6aとの中間部に配置する。このような配置にすることにより、収納室伝熱壁18が一対の車輪6と車輪6aにより囲まれる。よって、これら一対の車輪6と車輪6aを、本体ケース2を充電器40と合体させるときの位置合わせ利用可能となり、伝熱部42と収納室伝熱壁18との位置精度が向上し、組電池8の放熱も促進される。より具体的には、組電池8への充電時には、車輪6、6aを用いて本体ケース2を充電器40との結合位置に向けて後進させ、車輪6が伝熱部42を跨ぐようにして本体ケース2が伝熱部42上に配置され、次いで、本体ケース側充電用端子35と充電器側充電器40の充電用端子44とが接続される。
【0025】
また、別の実施の形態の充電器140は、放熱構造80を備えている。この放熱構造80は、図11に示すように、充電台141の後面に取り付けられた放熱フィン82を備えている。この放熱フィン82は、充電台141に直接形成されるか、予め形成されたフィン体を充電台141に取り付ける。さらに、この放熱フィン82と伝熱部142とは、直接、接触固定させるか、または、熱伝導性が良好な接着剤やシート材料を介在させて固定される。上記如き構成を有する放熱構造80を充電台141に設けたことによって、組電池8の熱を保有した伝熱部42の熱を放熱フィン82に伝え、この放熱フィン82から空気に迅速に放熱させることができる。尚、変形例において、放熱フィン82を充電台141の内部に設けることができる。この場合、放熱フィン82の近接する充電台141の壁に放熱用の穴(図示せず)を設けるのが望ましい。
【0026】
また、この充電台141には、伝熱部142の先端に車輪ガイド84を設けている。この車輪ガイド84に沿って、本体ケース2を移動させることにより、収納室伝熱壁18と伝熱部142との位置合わせが簡便になる。
【0027】
また、サーミスタ15は、図3Cに示すように、組電池8を構成する複数の二次電池セル12の隣接セルの間隙であって、収納室伝熱壁18側に配置されている二次電池セル12よりも内側に配置する。例えば、組電池8を構成する二次電池セル12の中で、収納室伝熱壁18側に配置されている二次電池セル12は、比較的速やかに冷却され、また温度勾配も大きい。一方、組電池8の内部に配置されている二次電池セル12の冷却速度は、収納室伝熱壁18側に配置されている二次電池セル12よりも冷却が遅く、温度勾配も小さい。このため、サーミスタ15は、冷却が遅く、かつ温度勾配の小さな部分に配置することにより、安全性および温度検出精度を向上することができる。図3Aに示す実施例における8本の二次電池セル12から構成される組電池8の場合、その中央部の隙間であって、サーミスタ15の感温部が二次電池セル12に接触するように配置されるのが好ましい。サーミスタ15は冷却が遅く、温度勾配の小さな部分に一箇所、または複数箇所に配置される。複数箇所に配置すれば、温度検出の精度をより高めることができる。
【0028】
図12乃至図15を用いて、本発明における他の実施の形態の充電式電気掃除機システムを説明する。図12乃至図15には、上記第一の実施例と同一部分には同一の符号が付してある。この実施の形態では、充電器240が本体ケース2を縦方向に配置して充電する縦置き充電方式に形成されている。この充電台242には、上記第一の実施例と同様に、本体ケース302の後部を収容する円弧状の収容部243と、この収容部243から突出され組電池8の放熱させる伝熱部242とが設けられている。ここで、まず、充電台142に設けられた接触補助機構100について説明する。
【0029】
この充電台242には図13に示すように、充電時に、本体ケース302(図15参照)の収納室伝熱壁18に接触可能な接触補助機構100が設けられている。この接触補助機構100は、充電台242に固定された固定軸101と、この固定軸101に対して直交して配置されてこの固定軸に回転可能に取り付けられたリンク102と、このリンク102の一端に固定された接触部材103と、リンク102の他端に固定された力付加部材104とを備えている。接触部材103は、充電器接触部105と本体ケース接触部106とから成る縦長に配置された長方形状の一つの部材から形成されている。固定軸101は、図14に示すように、充電台242の略半円状の収容部243を横切るように、この収容部243の底面の下方で充電台242内に固定される。接触部材103の充電器接触部105と本体ケース接触部106とは、収容部243の底面の側方、即ち、伝熱部242の側面で収納室伝熱壁18に対向する位置に配置され、力付加部材104は、収容部43の底面の下方に配置されている。充電器接触部105、本体ケース接触部106および力付加部材104は、収容部243の底面から露出するように充電器に配置される。
【0030】
力付加部材104に図13中矢印A方向に力が加えられた時、固定軸101を中心にしてリンク102が反時計方向に回転し、このリンクの回転に従って、接触部材103が矢印Bで示す反時計方向に回転する。尚、力付加部材104への矢印A方向の力を取り除けば、接触部材103は、固定軸101を中心に時計方向に回転する。ここで、留意すべきは、接触部材103が矢印B方向に回動されるとき、本体ケース接触部106のみが移動し、充電器接触部105は、伝熱部242に接触したままになるように、接触部材103が構成され且つ充電台242に取り付けられていることである。力付加部材104は、例えば樹脂材から形成され、接触部材103は、熱伝導性と弾性を有する部材、例えば、金属製板ばねから形成される。この接触部材103の大きさは、収納室伝熱壁18がほぼ覆われる大きさに設定されている。
【0031】
次に図14及び図15を参照しながら説明する。本体ケース302が収容部243にセットされたとき、本体ケース2が力付加部材104を押圧し、これにより上述の如く接触部材103が閉塞部材18に向けて回転され、接触部材103の本体ケース接触部106が、収納室伝熱壁18と圧力状態で接触する。この際、接触部材103の充電器接触部材105は、上述したように、伝熱部242に接触したままである。
【0032】
次に、本体ケース302に設けられた圧力付勢手段110について説明する。本体ケース302の下部側には図15に示すように閉塞部13、走行用の一個の車輪6aとともに、圧力付勢手段110が設けられている。この時圧力付勢手段110は、本体ケース302の収納室伝熱壁18と車輪6aとの中間部分に設けられており、車輪6aの直径より薄い部材から形成されている。また、圧力付勢手段110は、組電池8を交換するために閉塞部材18を取り外す時には、一旦、左右いずれかに90度回転させることができるように構成されている。ただし、通常の使用時には図16に示す位置にあり、通常の掃除には影響しない。
【0033】
次に、充電台242に設けられた接触補助機構100と本体ケース302に設けられた圧力付勢手段110との関係ついて説明する。本体ケース302を充電台242に降ろしていくと、本体ケース302に圧力付勢手段110が設けられていることにより、収容部243から露出されている充電器接触部105が充電台242側に押し付けられる。その後、更に本体ケース302を収容部243に向けて下降させていくと、本体ケース302が力付加部材104を押す。これにより、図13における矢印Aと同方向の力が接触補助機構100に加えられる。これにより接触部材103のうち本体ケース接触部106と、収納室伝熱壁18との間に接触領域が生成される。この時、充電器接触部105が伝熱部242と接触したままである。従って、組電池8の熱は、収納室伝熱壁18、本体ケース接触部106、充電器接触部105を介して伝熱部242に放熱される。上記の構成により、組電池8と伝熱部242との間の熱抵抗は小さくなり、組電池8で発生する熱は、収納室伝熱壁18から伝熱部242に迅速且つ効率よく移動し、これによって組電池8の温度が迅速に降下する。
【0034】
以上、本発明の実施の形態において、いわゆる「キャニスタ型」の電気掃除機1を用いた場合について説明したが、他のタイプとして図16に示す縦型の電気掃除機についても同様に本発明を適用することができる。
【0035】
また、上記の実施の形態において、組電池8を収納する収納室17は、本体ケース2に一体的に形成されている場合について例示したが、他の実施の形態を図17に示す。収納室ボックス350が本体ケース2bに取り付けられる構造である。この収納室ボックス350は、組電池8を収納した後、本体ケース2b)に固定される。この場合、収納室ボックス350を構成している収納室伝熱壁18は、充電される際に、充電器40の伝熱部42の伝熱面42aとが熱的に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る充電式電気掃除機システムの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示された電気掃除機に設けられた組電池の収納室の部分を示す電気掃除機の後端側底面部の一部斜視図である。
【図3】図3Aは、組電池を示す斜視図である。 図3Bは、組電池と収納室伝熱壁の配置関係を示す図である。 図3Cは、組電池の断面構造を示す図である。 図3Dは、組電池に組み込まれるサーミスタの平面図である。
【図4】図4Aは、図1に示された電気掃除機に設けられた組電池の収納室を、外方から見た分解斜視図である。 図4Bは、組電池の収納室を構成する収納室伝熱壁の斜視図である。
【図5】組電池と収納室との配置状態を示す斜視図である。
【図6】図6Aは、図1に示された電気掃除機に設けられた組電池の収納室の構造を示す斜視図である。 図6Bは、組電池の収納室の断面構造を示す図である。
【図7】図1に示された電気掃除機の充電用端子の部分を示す一部斜視図である。
【図8】組電池の充電のために電気掃除機を、図7に示された充電器に結合させている状態を示す斜視図である。
【図9】図9Aは、組電池のための充電回路および充電制御装置を示す回路の一実施例を示す図である。 図9Bは、組電池のための充電回路および充電制御装置を示す回路の他の実施例を示す図である。
【図10】充電動作を説明するフローチャートである。
【図11】充電器に設けられた放熱機構を示す斜視図である。
【図12】本発明の他の実施例における電気掃除機システムおいて、電気掃除機が縦置き充電方式の充電器に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図13】電気掃除機システムおける縦置き充電方式に用いられる接触補助機構の概略を示す斜視図である。
【図14】接触補助機構が充電器に配置されたときの充電器を示す斜視図である。
【図15】接触補助機構の接触部材と接触する電気掃除機の本体ケースの下部構造を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施に用いられる電気掃除機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図17】電気掃除機の本体ケースに設けられた組電池の収納室の他の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電気掃除機
2 本体ケース
5 吸口体
6 車輪
8 組電池
9 電動送風機
15 温度検出素子
16 収納室
18 収納室伝熱壁
22 収納室壁
23 収納室床壁
30 弾性部材
35 本体側充電用端子
40 充電器
41 充電台
42 伝熱部
43 収容部
44 充電器側充端子
45A 充電回路
46 充電制御部
51 スイッチング部
80 放熱構造
82 放熱フィン
84 車輪ガイド
100 接触補助機構
101 固定軸
103 接触部材
105 充電器接触部材
140 充電器
242 伝熱部
350 収納室ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースを有する電気掃除機と、
前記本体ケースに設けられ、開口を有する収納室と、
前記収納室に収納され、充電可能な複数の電池セルから構成された組電池と、
前記収納室の一部を構成する収納室伝熱壁と、
前記組電池の温度を検出する温度検出素子と、
前記組電池を充電し充電台を有する充電器と、
前記組電池の充電を制御する充電制御部と、
を備えた充電式電気掃除機システムにおいて、
前記組電池と前記収納室伝熱壁とが熱的に接続されるように付勢力を与える弾性部材を前記収納室内に設け、
前記充電器に前記充電台の一部を構成し伝熱面を有する伝熱部を設け、
前記組電池を充電する際に、前記収納室伝熱壁と前記充電台の伝熱面とを熱的に接続させ、かつ、前記充電制御部を含む前記組電池を充電する回路を形成するための接続部を有する接続構造を設け、
前記充電制御部は、前記組電池の充電中に前記温度検出素子により検出された前記組電池の温度と予め設定された充電可能温度範囲とを比較しながら、前記組電池の充電電流を制御するように構成されている充電式電気掃除機システム。
【請求項2】
前記本体ケースは、上部ケースと下部ケースから構成され、前記収納室は、その開口を外部に連通して前記下部ケースに設けられており、前記収納室の開口を前記収納室伝熱壁により閉塞することを特徴とする請求項1記載の充電式電気掃除機システム。
【請求項3】
前記本体ケースは上部ケースと下部ケースから構成され、前記収納室は前記下部ケースに脱着可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の充電式電気掃除機システム。
【請求項4】
前記電気掃除機は、清掃面を走行させる一対の走行車輪が前記本体ケースに設けられ、前記収納室伝熱壁が前記清掃面に平行に対向するように前記一対の走行車輪の間に設けられたものであって、
前記組電池を充電するために前記電気掃除機が前記充電台に載置される時に、前記収納室伝熱壁と前記伝熱部の伝熱面が熱的に接合されるように前記一対の走行車輪により位置めされることを特徴とする請求項1記載の充電式電気掃除機システム。
【請求項5】
前記充電台の前記伝熱部の伝熱面が前記清掃面に平行に配置され、かつ前記伝熱面の前記清掃面からの垂直方向の距離を前記電気掃除機が充電器の充電台に載置されたときに、前記走行車輪の清掃面接地部が前記清掃面と所定の距離を有するように設定し、前記電気掃除機の重量が前記伝熱面に付加されるようにされていることを特徴とする請求項4記載の充電式電気掃除機システム。
【請求項6】
前記温度検出素子は、互いに隣接する前記電池セルの間隙に配置され、かつ前記収納室伝熱壁側に配置されている前記電池セルよりも前記収納室の内側に配置されている請求項1記載の充電式電気掃除機システム。
【請求項7】
前記充電器の前記充電台の伝熱部と熱的に接続された放熱フィンが設けられている請求項1記載の充電式電気掃除機システム。
【請求項8】
前記電気掃除機が充電台に載置されたときに、前記収納室の伝熱壁と前記充電台の伝熱部の伝熱面とを熱的に接触させる接触補助機構が設けられている請求項1記載の充電式電気掃除機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−34734(P2006−34734A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220917(P2004−220917)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】