光コネクタ及び光コネクタ付きコード
【課題】外被が伸縮しても、光ファイバが曲がってしまうことを抑制する光コネクタ及び光コネクタ付きコードを提供する。
【解決手段】スプリング押し部60は、光ファイバコード200のうち抗張力体222のみが固定される第1固定部61と、光ファイバコード200のうち外被230のみが固定されて第1固定部61に対して光ファイバコード200が伸びる方向にスライド可能に設けられる第2固定部62と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】スプリング押し部60は、光ファイバコード200のうち抗張力体222のみが固定される第1固定部61と、光ファイバコード200のうち外被230のみが固定されて第1固定部61に対して光ファイバコード200が伸びる方向にスライド可能に設けられる第2固定部62と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコードの先端に取り付けられる光コネクタ及び光コネクタ付きコードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ファイバコードの先端に光コネクタが取り付けられた光コネクタ付きコードが知られている。従来例に係る光コネクタ付きコードにおいては、光ファイバコード端末から延出させた抗張力体と外被を、光コネクタのスプリング押し部後端部に対して外被を被せ、その外側から止め具(カシメリング)を加締めて固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−148485号公報
【特許文献2】特開2002−31741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光コネクタでは、環境温度の変化に伴って、光ファイバや抗張力体は殆ど伸縮しないのに対して、外被は伸縮する。そのため、外被が縮んだ時に、光ファイバに微小な曲がり(マイクロベント)が生じ、光学特性が悪化することがあった。
【0005】
本発明の目的は、外被が縮んでも、光ファイバに曲がりが生じるのを抑制する光コネクタ及び光コネクタ付きコードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明の光コネクタは、
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備えた光ファイバコードにおける先端から口出しされた光ファイバに取り付けられ、
前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の光コネクタ付きコードは、
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備え、
その先端から前記光ファイバが口出しされており、口出しされた前記光ファイバに光コネクタが取り付けられており、
前記光コネクタは、口出しされた前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、環境温度の変化に伴って外被が伸縮した場合には、外被が固定されている第2固定部が第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動し、抗張力体や光ファイバへの影響を抑制することができる。これにより、外被が縮んでも、光ファイバが曲がってしまうことを抑制することができる。
【0010】
前記第1固定部及び第2固定部は、光ファイバ長手方向に対して傾斜する傾斜面同士がスライドするように構成されており、これら第1固定部及び第2固定部のうちの少なくとも一方は、第1固定部と第2固定部が互いに離れる方向に移動することによって弾性復元力が高まるように弾性変形するとよい。
【0011】
このような構成を採用すれば、外被が縮んで第2固定部が第1固定部から離れる方向に移動した後に、外被が伸びた場合、外被が伸びる力に加えて、弾性変形する固定部による弾性復元力が加わるため、より確実に第2固定部を元の位置に戻すことができる。
【0012】
前記抗張力体の先端は2方向に分けられており、かつ前記外被の先端は2方向かつ前記抗張力体の先端方向とは異なる方向に分けられており、
前記抗張力体における2方向に分けられた先端部を第1固定部の外面に固定する環状の第1止め具と、
前記外被における2方向に分けられた先端部を第2固定部の外面に固定する環状の第2止め具と、を備えるとよい。
【0013】
こうすることで、第2固定部は第1固定部に対して移動させることが可能となる。
【0014】
第2止め具は、加圧変形によって、前記外被を第2固定部の外面との間に挟み込み、前記抗張力体については第2固定部の外面との間に挟み込まないとよい。
【0015】
このような構成を採用することによって、第2固定部に対して、光ファイバコードのうち外被のみを固定し、抗張力体については固定しないようにすることができる。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、外被が伸縮しても、光ファイバが曲がってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの平面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの側面図である。
【図4】図4は本発明の実施形態に係る光コネクタの正面図である。
【図5】図5は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの一部破断断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの部品展開図である。
【図7】図7は本発明の実施形態に係るスプリング押し部の斜視図である。
【図8】図8は本発明の実施形態に係るスプリング押し部の断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部を示す斜視図である。
【図10】図10は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部の縦断面図である。
【図11】図11は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部の縦断面図である。
【図12】図12は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
図1〜図12を参照して、本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードについて説明する。なお、以下の説明において、光ファイバコードの先端側を先端側(例えば、図2において左側)、その反対側を後端側とする。また、本実施形態においては、JIS C 5981に制定されるMT形光コネクタフェルールをコネクタハウジングの先端に収納した、JIS C 5982に制定されるMT形光コネクタプラグの場合を例にして説明する。
【0021】
<光コネクタ付きコード>
特に、図1〜図6を参照して、本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード全体の構成等について説明する。図1は本実施形態に係る光コネクタ付きコードの斜視図であり、図2はその平面図であり、図3はその側面図である。また、図4は本実施形態に係る光コネクタの正面図(先端から見た図)である。図5は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードを上面側から見た図であり、中心線から上側は断面(図3のCC断面に相当し、光ファイバについては省略している)を示し、下側は外観を示している。図6は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの部品展開図であり、組み立て前の状態を示している。
【0022】
本実施形態に係る光コネクタ付きコード1は、光ファイバコード200と、この光ファイバコード200の先端に取り付けられる光コネクタ100とから構成される。
【0023】
光ファイバコード200は、光ファイバ210と、光ファイバ210の外周に設けられる抗張力体(ケブラ)220と、抗張力体220の外周に設けられる外被230とから構成される(特に、図5及び図6参照)。本実施形態に係る光ファイバ210は、多心光ファイバテープ心線であり、各光ファイバ210の先端の一部が裸ファイバ211となっている(図6参照)。また、外被230は、その先端の一部が2方向に分かれるように抗張力体220から剥離されている。以下、便宜上、2つに分かれた2つの先端部を、それぞれ第1外被先端部231、第2外被先端部232と称する。そして、抗張力体220の先端の一部は、外被230の先端よりも更に先端側に突き出るように、かつ2方向に分かれるように光ファイバ210から剥離されている。ここで、抗張力体220の先端部の分かれる方向は、外被230の先端部の分かれる方向に対して、中心軸線に対して回転方向におおよそ90°ずれている。以下、便宜上、2つに分かれた2つの先端部を、それぞれ第1抗張力体先端部221、第2抗張力体先端部222と称する。
【0024】
光コネクタ100は、光ファイバコード200における先端から口出しされた光ファイバ210に取り付けられる。この光コネクタ100は、筒状のコネクタハウジング10と、コネクタハウジング10内に配置されるフェルール20,ピンクランプ90,スプリン
グ80、及びスプリング押し部60とを備えている。なお、ピンクランプ90については、後述のように雄側の光コネクタ100の場合にのみ設けられる。また、光コネクタ100は、コネクタハウジング10の外側に配置されるカップリング30と、カップリング30を付勢するカップリング用スプリング40と、光ファイバコード200をスプリング押し部60に固定するための第1カシメリング71及び第2カシメリング72と、ブーツ50も備えている。
【0025】
フェルール20は、コネクタハウジング10内において、その先端の一部がコネクタハウジング10の先端から突き出るように、かつ前後に移動が許容されるように設けられている。このフェルール20は、光ファイバ210を保持固定する役割を担う部品であり、複数の光ファイバ210の裸ファイバ211の部分をそれぞれ固定する複数の光ファイバ穴21が設けられている。また、コネクタハウジング10内には、フェルール20を先端方向に向けて付勢するスプリング80が備えられている。
【0026】
ここで、雄側の光コネクタ100の場合には、スプリング80の先端とフェルール20との間に、ピンクランプ90が設けられる。このピンクランプ90は、クランプ本体91と2本のガイドピン92とから構成される。そして、フェルール20には、これら2本のガイドピン92に対応する2か所のピン穴22が設けられている。雄側の光コネクタ100の場合には、フェルール20の後端側から、これら2か所のピン穴22にそれぞれガイドピン92が挿入されるようにして、ピンクランプ90が設けられる。ガイドピン92の先端は、フェルール20の先端面よりも突出するように構成されている(例えば、図1参照)。雌側の光コネクタ100の場合には、ピンクランプ90は設けられておらず、フェルール20における2か所のピン穴22は開放された状態となっている。雄側の光コネクタ100と雌側の光コネクタ100とを接続する場合には、光コネクタアダプタ300のコネクタ穴310に両側からそれぞれ雄側と雌側の光コネクタ100を挿入する。これにより、雄側の光コネクタ100における2本のガイドピン92が、雌側の光コネクタ100におけるフェルール20の2か所のピン穴22に差し込まれることで、光コネクタ100(より具体的にはフェルール20)同士が精度良く位置決めされる。
【0027】
スプリング80の後端側は、コネクタハウジング10の内部における後部に固定されるスプリング押し部60によって支持されている。このスプリング押し部60により後端側が支持されたスプリング80によって、雄側の光コネクタ100の場合にはピンクランプ90のクランプ本体91を介して、雌側の光コネクタ100の場合には直接的に、フェルール20は先端方向に付勢される。フェルール20の先端はコネクタハウジング10の先端面から突き出た状態となっており、雄側と雌側の光コネクタ100を接続させると、それぞれのフェルール20の先端面同士が突き当たり、スプリング80の付勢力に抗して、各フェルール20は後端側に多少押し込まれた状態となる。これにより、雄側のフェルール20と雌側のフェルール20が互いに押し合う状態となるので、各フェルール20の先端面同士がより確実に面接触した状態となる。なお、フェルール20の後端側には鍔部23が設けられており、フェルール20が先端側に向かって移動すると、この鍔部23がコネクタハウジング10に設けられたストッパ11に突き当たるように構成されている。従って、フェルール20がコネクタハウジング10の先端から抜け出してしまうことはない。
【0028】
また、コネクタハウジング10の先端付近には、係合凹所12が設けられている(図5参照)。この係合凹所12は、光コネクタ100を固定させる相手側の部材(例えば、図1に示す光コネクタアダプタ300)に設けられている係合爪(不図示)が係合されるために設けられている。この係合凹所12は、通常、カップリング30によって覆われている。すなわち、カップリング30はカップリング用スプリング40によって先端側に付勢されており、外力が作用していない状態においては、係合凹所12はカップリング30に
より覆われている。この状態においては、カップリング30によって、上記不図示の係合爪が係合凹所12から離脱できないため、光コネクタ100が光コネクタアダプタ300などの相手部材から不用意に外れてしまうことを抑制できる。また、カップリング30をカップリング用スプリング40の付勢力に抗して後端側に移動させることによって、係合凹所12を露出させることができ、上記不図示の係合爪を係合凹所12から離脱させることができる。これにより、光コネクタ100を光コネクタアダプタ300などの相手部材から取り外すことが可能となる。
【0029】
また、コネクタハウジング10の後端側には、ゴム等の柔軟性を有する素材で構成されたブーツ50が取り付けられている。このブーツ50によって、光ファイバコード200における先端付近、つまり光ファイバ210や抗張力体220が外被230から突き出た部分が保護される。なお、ブーツ50の後端には光ファイバコード200が湾曲した状態になっても追随可能とする蛇腹部51が設けられている。
【0030】
<スプリング押し部>
特に、図5〜図8を参照して、本実施形態に係るスプリング押し部60について、より詳しく説明する。なお、図7は本実施形態に係るスプリング押し部60の斜視図であり、図8は本実施形態に係るスプリング押し部60の断面図である。なお、図8は図3中のCC断面中のスプリング押し部60のみを示したものである。
【0031】
本実施形態に係るスプリング押し部60は、光コネクタ100の先端側に配置される第1固定部61と、第1固定部61よりも後端側に配置され、かつ第1固定部61に対して光ファイバ長手方向に移動可能に装着される第2固定部62とから構成される。なお、本実施形態においては、第1固定部61及び第2固定部62は、成形上の観点から、幅方向の中心面に対して対称的な2部材を組み合わせる(固定する)ことにより構成されている。従って、図3中のCC断面において、スプリング押し部60については、切断面ではなく、第1固定部61及び第2固定部62をそれぞれ構成する2部材のうちの一方の部材を内側から見た図となっている(図8参照)。
【0032】
第1固定部61は、光ファイバ210が挿通される貫通孔61aと、先端部の両側に設けられる係合爪61bと、後端側に設けられ抗張力体220が固定される抗張力体固定部61cと、中央部付近で両側に突出するように設けられる突出部61dと、抗張力体固定部61cの両面に形成される嵌合凹部61eとを備えている。ここで、係合爪61bは、コネクタハウジング10に設けられた係合孔13に係合するように構成されている。そして、係合爪61bを係合孔13に係合させると、突出部61dがコネクタハウジング10に設けられた凹所14に嵌合するように構成されている。これにより、スプリング押し部60がコネクタハウジング10に対して位置決めされた状態で固定される。
【0033】
第2固定部62は、光ファイバ210が挿通される貫通孔62aと、外被230が固定される外被固定部62bと、第1固定部61の嵌合凹部61eに嵌合する嵌合凸部62cと、外被固定部62bの両側に形成される平面部62dとを備えている。
【0034】
そして、第2固定部62における一対の嵌合凸部62cを、第1固定部61における一対の嵌合凹部61eに嵌合させることによって、スプリング押し部60が得られる。ここで、嵌合凸部62cにおける平面状の内壁面62c1と、嵌合凹部61eにおける平面状の外壁面61e1とは面同士が接触した状態となっており、第2固定部62は第1固定部61に対して、光ファイバ長手方向に移動可能に構成されている。
【0035】
また、嵌合凸部62cにおけるスライド面である内壁面62c1は、先端側に向かうにつれて内側に向かって傾斜する傾斜面となっている。一方、嵌合凹部61eにおけるスラ
イド面である外壁面61e1は、後端側に向かうにつれて外側に向かって傾斜する傾斜面となっている。このような構成によって、第2固定部62を第1固定部61から離れる方向にスライドさせると、第2固定部62における嵌合凸部62cは外側に徐々に開くように弾性的に変形する。このような弾性変形が進むにつれて、嵌合凸部62cの弾性復元力が高まっていく。この嵌合凸部62cにおける弾性復元力は、第2固定部62が第1固定部61に近づく方向に戻ろうと作用する力となる。
【0036】
<スプリング押し部と光ファイバコードとの接続構造>
特に、図5〜図12を参照して、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造について、より詳細に説明する。ここで、図9は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部を示す斜視図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す斜視図である。図10は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部の縦断面図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す縦断面図である。なお、図10は図2中のAA断面図のうちスプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造に係る部品を示した断面図である。図11は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部の縦断面図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す縦断面図である。なお、図11は図3中のCC断面図のうちスプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造に係る部品を示した断面図である。図12は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部の横断面図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す横断面図である。なお、図12は図2中のBB断面図のうちスプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造に係る部品を示した断面図である。
【0037】
光ファイバコード200のうち光ファイバ210は、スプリング押し部60に設けられている貫通孔(貫通孔61a及び貫通孔62a)内に後端側から挿入される。なお、光ファイバ210の先端の裸ファイバ211の部分は、フェルール20に設けられた光ファイバ穴21に位置決めされた状態で固定される。なお、図10及び図11においては、内部構造を分かりやすくするために、光ファイバコード200のうち光ファイバ210については省略している。
【0038】
そして、光ファイバコード200のうち抗張力体220は第1固定部61の抗張力体固定部61cに固定される。より具体的には、抗張力体220における2方向に分けられた第1抗張力体先端部221及び第2抗張力体先端部222が、第1固定部61の抗張力体固定部61cの両側に配置された状態で、環状の第1止め具である第1カシメリング71によって加締められる(図5,9,11参照)。ここで、第1抗張力体先端部221及び第2抗張力体先端部222は、外被230の先端よりも先端側に突出するように構成されており、外被230は第1カシメリング71によっては加締められない。また、第1カシメリング71は第2固定部62の嵌合凸部62cには接触しないように構成されており、第2固定部62の第1固定部61に対するスライド動作が妨げられることはない。
【0039】
また、光ファイバコード200のうち外被230は第2固定部62の外被固定部62bに固定される。より具体的には、外被230における2方向に分けられた第1外被先端部231及び第2外被先端部232が、第2固定部62の外被固定部62bの両面に配置された状態で、環状の第2止め具である第2カシメリング72によって加締められる(図9,10,12参照)。ここで、第2固定部62における平面部62dと第2カシメリング72の内周面との間には、第1抗張力体先端部221や第2抗張力体先端部222の厚みに対して十分大きな隙間が形成される。従って、第1抗張力体先端部221及び第2抗張力体先端部222は第2カシメリング72によっては加締められない(特に図12参照)。このように、第2カシメリング72は、加締められることによって、外被230につい
ては第2固定部62の外壁面に挟み込み、抗張力体220については第2固定部62の外壁面に挟み込まない。
【0040】
本実施形態においては、第1カシメリング71及び第2カシメリング72は、同一の部品を用いており、共通の加締め治具(不図示)によって加締め作業を行うことができる。なお、これら第1カシメリング71及び第2カシメリング72については、加締める前の断面形状は略楕円形であり、加締め治具によって加締められることで、加圧により変形されて、図9や図12に示す形状となる。
【0041】
<本実施形態に係る光コネクタ付きコードの優れた点>
本実施形態に係る光コネクタ付きコード1によれば、環境温度の変化に伴って外被230が伸縮した場合には、外被230が固定されている第2固定部62が第1固定部61に対してスライドする。そのため、外被230が伸縮しても、抗張力体220や光ファイバ210への影響を抑制することができる。これにより、外被230が伸縮しても、外被230を第2固定部62によって適度に固定しているので、外被230がずれてしまうのを防ぎつつ、光ファイバ210が曲がってしまうことを抑制することができる。従って、光学特性が悪化してしまうことを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、第1固定部61と第2固定部62とは、これらのスライド方向に対して傾斜する傾斜面同士がスライドする構成を採用している。そして、第2固定部62を第1固定部61から離れる方向にスライドさせると、第2固定部62における嵌合凸部62cが徐々に外側に開くように弾性的に変形する構成を採用している。これにより、嵌合凸部62cにおける弾性復元力は、第2固定部62が第1固定部61に近づく方向に戻ろうと作用する力となる。従って、環境温度の変化によって、外被230が縮んで第2固定部62が第1固定部61から離れる方向に移動した後に、外被230が伸びた場合、外被230が伸びる力に加えて、環状凸部62cによる弾性復元力が加わるため、より確実に第2固定部62を元の位置に戻すことができる。
【0043】
(その他)
上記実施形態においては、第1固定部61に嵌合凹部61eを設けて、第2固定部62に嵌合凸部62cを設けることによって、第1固定部61に対して第2固定部62をスライド可能に嵌合(装着)する構成を示した。しかしながら、第1固定部61に対して第2固定部62をスライド可能に嵌合(装着)可能な構成であれば、そのような構成に限定されるものではない。例えば、第1固定部61側に嵌合凸部を設けて、第2固定部62側に嵌合凹部を設ける構成を採用することも可能である。
【0044】
また、上記実施形態では、抗張力体220を第1固定部61の抗張力体固定部61cの両側で加締めによって固定し、外被230を第2固定部62の外被固定部62bの両面で加締めによって固定する構成を示した。しかしながら、両者の固定位置はこれに限られるものではない。例えば、抗張力体220を第1固定部61の抗張力体固定部の両面で加締めによって固定し、外被230を第2固定部62の外被固定部の両側で加締めによって固定する構成を採用することもできる。なお、この場合には、第1固定部61及び第2固定部62にそれぞれ設ける嵌合凹部と嵌合凸部を両面ではなく両側に設け、かつ第2固定部62に設ける平面部を両側ではなく両面に設けるとよい。
【0045】
また、上記実施形態では、スプリング押し部60に対して光ファイバコード200が固定される部分(すなわち、第1固定部61の抗張力体固定部61cと第2固定部62の外被固定部62b(一般的に、竹の子ジョイントと呼ばれる))は横断面が略楕円形状の筒状の場合を示した。しかしながら、当該部分の形状はこれに限られるものではなく、例えば、略円筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…光コネクタ付きコード,10…コネクタハウジング,20…フェルール,60…スプリング押し部,61…第1固定部,62…第2固定部,71…第1カシメリング,72…第2カシメリング,80…スプリング,100…光コネクタ,200…光ファイバコード,210…光ファイバ,220…抗張力体,230…外被
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコードの先端に取り付けられる光コネクタ及び光コネクタ付きコードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ファイバコードの先端に光コネクタが取り付けられた光コネクタ付きコードが知られている。従来例に係る光コネクタ付きコードにおいては、光ファイバコード端末から延出させた抗張力体と外被を、光コネクタのスプリング押し部後端部に対して外被を被せ、その外側から止め具(カシメリング)を加締めて固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−148485号公報
【特許文献2】特開2002−31741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光コネクタでは、環境温度の変化に伴って、光ファイバや抗張力体は殆ど伸縮しないのに対して、外被は伸縮する。そのため、外被が縮んだ時に、光ファイバに微小な曲がり(マイクロベント)が生じ、光学特性が悪化することがあった。
【0005】
本発明の目的は、外被が縮んでも、光ファイバに曲がりが生じるのを抑制する光コネクタ及び光コネクタ付きコードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明の光コネクタは、
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備えた光ファイバコードにおける先端から口出しされた光ファイバに取り付けられ、
前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の光コネクタ付きコードは、
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備え、
その先端から前記光ファイバが口出しされており、口出しされた前記光ファイバに光コネクタが取り付けられており、
前記光コネクタは、口出しされた前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、環境温度の変化に伴って外被が伸縮した場合には、外被が固定されている第2固定部が第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動し、抗張力体や光ファイバへの影響を抑制することができる。これにより、外被が縮んでも、光ファイバが曲がってしまうことを抑制することができる。
【0010】
前記第1固定部及び第2固定部は、光ファイバ長手方向に対して傾斜する傾斜面同士がスライドするように構成されており、これら第1固定部及び第2固定部のうちの少なくとも一方は、第1固定部と第2固定部が互いに離れる方向に移動することによって弾性復元力が高まるように弾性変形するとよい。
【0011】
このような構成を採用すれば、外被が縮んで第2固定部が第1固定部から離れる方向に移動した後に、外被が伸びた場合、外被が伸びる力に加えて、弾性変形する固定部による弾性復元力が加わるため、より確実に第2固定部を元の位置に戻すことができる。
【0012】
前記抗張力体の先端は2方向に分けられており、かつ前記外被の先端は2方向かつ前記抗張力体の先端方向とは異なる方向に分けられており、
前記抗張力体における2方向に分けられた先端部を第1固定部の外面に固定する環状の第1止め具と、
前記外被における2方向に分けられた先端部を第2固定部の外面に固定する環状の第2止め具と、を備えるとよい。
【0013】
こうすることで、第2固定部は第1固定部に対して移動させることが可能となる。
【0014】
第2止め具は、加圧変形によって、前記外被を第2固定部の外面との間に挟み込み、前記抗張力体については第2固定部の外面との間に挟み込まないとよい。
【0015】
このような構成を採用することによって、第2固定部に対して、光ファイバコードのうち外被のみを固定し、抗張力体については固定しないようにすることができる。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、外被が伸縮しても、光ファイバが曲がってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの平面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの側面図である。
【図4】図4は本発明の実施形態に係る光コネクタの正面図である。
【図5】図5は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの一部破断断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの部品展開図である。
【図7】図7は本発明の実施形態に係るスプリング押し部の斜視図である。
【図8】図8は本発明の実施形態に係るスプリング押し部の断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部を示す斜視図である。
【図10】図10は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部の縦断面図である。
【図11】図11は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部の縦断面図である。
【図12】図12は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの主要部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
図1〜図12を参照して、本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードについて説明する。なお、以下の説明において、光ファイバコードの先端側を先端側(例えば、図2において左側)、その反対側を後端側とする。また、本実施形態においては、JIS C 5981に制定されるMT形光コネクタフェルールをコネクタハウジングの先端に収納した、JIS C 5982に制定されるMT形光コネクタプラグの場合を例にして説明する。
【0021】
<光コネクタ付きコード>
特に、図1〜図6を参照して、本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード全体の構成等について説明する。図1は本実施形態に係る光コネクタ付きコードの斜視図であり、図2はその平面図であり、図3はその側面図である。また、図4は本実施形態に係る光コネクタの正面図(先端から見た図)である。図5は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードを上面側から見た図であり、中心線から上側は断面(図3のCC断面に相当し、光ファイバについては省略している)を示し、下側は外観を示している。図6は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコードの部品展開図であり、組み立て前の状態を示している。
【0022】
本実施形態に係る光コネクタ付きコード1は、光ファイバコード200と、この光ファイバコード200の先端に取り付けられる光コネクタ100とから構成される。
【0023】
光ファイバコード200は、光ファイバ210と、光ファイバ210の外周に設けられる抗張力体(ケブラ)220と、抗張力体220の外周に設けられる外被230とから構成される(特に、図5及び図6参照)。本実施形態に係る光ファイバ210は、多心光ファイバテープ心線であり、各光ファイバ210の先端の一部が裸ファイバ211となっている(図6参照)。また、外被230は、その先端の一部が2方向に分かれるように抗張力体220から剥離されている。以下、便宜上、2つに分かれた2つの先端部を、それぞれ第1外被先端部231、第2外被先端部232と称する。そして、抗張力体220の先端の一部は、外被230の先端よりも更に先端側に突き出るように、かつ2方向に分かれるように光ファイバ210から剥離されている。ここで、抗張力体220の先端部の分かれる方向は、外被230の先端部の分かれる方向に対して、中心軸線に対して回転方向におおよそ90°ずれている。以下、便宜上、2つに分かれた2つの先端部を、それぞれ第1抗張力体先端部221、第2抗張力体先端部222と称する。
【0024】
光コネクタ100は、光ファイバコード200における先端から口出しされた光ファイバ210に取り付けられる。この光コネクタ100は、筒状のコネクタハウジング10と、コネクタハウジング10内に配置されるフェルール20,ピンクランプ90,スプリン
グ80、及びスプリング押し部60とを備えている。なお、ピンクランプ90については、後述のように雄側の光コネクタ100の場合にのみ設けられる。また、光コネクタ100は、コネクタハウジング10の外側に配置されるカップリング30と、カップリング30を付勢するカップリング用スプリング40と、光ファイバコード200をスプリング押し部60に固定するための第1カシメリング71及び第2カシメリング72と、ブーツ50も備えている。
【0025】
フェルール20は、コネクタハウジング10内において、その先端の一部がコネクタハウジング10の先端から突き出るように、かつ前後に移動が許容されるように設けられている。このフェルール20は、光ファイバ210を保持固定する役割を担う部品であり、複数の光ファイバ210の裸ファイバ211の部分をそれぞれ固定する複数の光ファイバ穴21が設けられている。また、コネクタハウジング10内には、フェルール20を先端方向に向けて付勢するスプリング80が備えられている。
【0026】
ここで、雄側の光コネクタ100の場合には、スプリング80の先端とフェルール20との間に、ピンクランプ90が設けられる。このピンクランプ90は、クランプ本体91と2本のガイドピン92とから構成される。そして、フェルール20には、これら2本のガイドピン92に対応する2か所のピン穴22が設けられている。雄側の光コネクタ100の場合には、フェルール20の後端側から、これら2か所のピン穴22にそれぞれガイドピン92が挿入されるようにして、ピンクランプ90が設けられる。ガイドピン92の先端は、フェルール20の先端面よりも突出するように構成されている(例えば、図1参照)。雌側の光コネクタ100の場合には、ピンクランプ90は設けられておらず、フェルール20における2か所のピン穴22は開放された状態となっている。雄側の光コネクタ100と雌側の光コネクタ100とを接続する場合には、光コネクタアダプタ300のコネクタ穴310に両側からそれぞれ雄側と雌側の光コネクタ100を挿入する。これにより、雄側の光コネクタ100における2本のガイドピン92が、雌側の光コネクタ100におけるフェルール20の2か所のピン穴22に差し込まれることで、光コネクタ100(より具体的にはフェルール20)同士が精度良く位置決めされる。
【0027】
スプリング80の後端側は、コネクタハウジング10の内部における後部に固定されるスプリング押し部60によって支持されている。このスプリング押し部60により後端側が支持されたスプリング80によって、雄側の光コネクタ100の場合にはピンクランプ90のクランプ本体91を介して、雌側の光コネクタ100の場合には直接的に、フェルール20は先端方向に付勢される。フェルール20の先端はコネクタハウジング10の先端面から突き出た状態となっており、雄側と雌側の光コネクタ100を接続させると、それぞれのフェルール20の先端面同士が突き当たり、スプリング80の付勢力に抗して、各フェルール20は後端側に多少押し込まれた状態となる。これにより、雄側のフェルール20と雌側のフェルール20が互いに押し合う状態となるので、各フェルール20の先端面同士がより確実に面接触した状態となる。なお、フェルール20の後端側には鍔部23が設けられており、フェルール20が先端側に向かって移動すると、この鍔部23がコネクタハウジング10に設けられたストッパ11に突き当たるように構成されている。従って、フェルール20がコネクタハウジング10の先端から抜け出してしまうことはない。
【0028】
また、コネクタハウジング10の先端付近には、係合凹所12が設けられている(図5参照)。この係合凹所12は、光コネクタ100を固定させる相手側の部材(例えば、図1に示す光コネクタアダプタ300)に設けられている係合爪(不図示)が係合されるために設けられている。この係合凹所12は、通常、カップリング30によって覆われている。すなわち、カップリング30はカップリング用スプリング40によって先端側に付勢されており、外力が作用していない状態においては、係合凹所12はカップリング30に
より覆われている。この状態においては、カップリング30によって、上記不図示の係合爪が係合凹所12から離脱できないため、光コネクタ100が光コネクタアダプタ300などの相手部材から不用意に外れてしまうことを抑制できる。また、カップリング30をカップリング用スプリング40の付勢力に抗して後端側に移動させることによって、係合凹所12を露出させることができ、上記不図示の係合爪を係合凹所12から離脱させることができる。これにより、光コネクタ100を光コネクタアダプタ300などの相手部材から取り外すことが可能となる。
【0029】
また、コネクタハウジング10の後端側には、ゴム等の柔軟性を有する素材で構成されたブーツ50が取り付けられている。このブーツ50によって、光ファイバコード200における先端付近、つまり光ファイバ210や抗張力体220が外被230から突き出た部分が保護される。なお、ブーツ50の後端には光ファイバコード200が湾曲した状態になっても追随可能とする蛇腹部51が設けられている。
【0030】
<スプリング押し部>
特に、図5〜図8を参照して、本実施形態に係るスプリング押し部60について、より詳しく説明する。なお、図7は本実施形態に係るスプリング押し部60の斜視図であり、図8は本実施形態に係るスプリング押し部60の断面図である。なお、図8は図3中のCC断面中のスプリング押し部60のみを示したものである。
【0031】
本実施形態に係るスプリング押し部60は、光コネクタ100の先端側に配置される第1固定部61と、第1固定部61よりも後端側に配置され、かつ第1固定部61に対して光ファイバ長手方向に移動可能に装着される第2固定部62とから構成される。なお、本実施形態においては、第1固定部61及び第2固定部62は、成形上の観点から、幅方向の中心面に対して対称的な2部材を組み合わせる(固定する)ことにより構成されている。従って、図3中のCC断面において、スプリング押し部60については、切断面ではなく、第1固定部61及び第2固定部62をそれぞれ構成する2部材のうちの一方の部材を内側から見た図となっている(図8参照)。
【0032】
第1固定部61は、光ファイバ210が挿通される貫通孔61aと、先端部の両側に設けられる係合爪61bと、後端側に設けられ抗張力体220が固定される抗張力体固定部61cと、中央部付近で両側に突出するように設けられる突出部61dと、抗張力体固定部61cの両面に形成される嵌合凹部61eとを備えている。ここで、係合爪61bは、コネクタハウジング10に設けられた係合孔13に係合するように構成されている。そして、係合爪61bを係合孔13に係合させると、突出部61dがコネクタハウジング10に設けられた凹所14に嵌合するように構成されている。これにより、スプリング押し部60がコネクタハウジング10に対して位置決めされた状態で固定される。
【0033】
第2固定部62は、光ファイバ210が挿通される貫通孔62aと、外被230が固定される外被固定部62bと、第1固定部61の嵌合凹部61eに嵌合する嵌合凸部62cと、外被固定部62bの両側に形成される平面部62dとを備えている。
【0034】
そして、第2固定部62における一対の嵌合凸部62cを、第1固定部61における一対の嵌合凹部61eに嵌合させることによって、スプリング押し部60が得られる。ここで、嵌合凸部62cにおける平面状の内壁面62c1と、嵌合凹部61eにおける平面状の外壁面61e1とは面同士が接触した状態となっており、第2固定部62は第1固定部61に対して、光ファイバ長手方向に移動可能に構成されている。
【0035】
また、嵌合凸部62cにおけるスライド面である内壁面62c1は、先端側に向かうにつれて内側に向かって傾斜する傾斜面となっている。一方、嵌合凹部61eにおけるスラ
イド面である外壁面61e1は、後端側に向かうにつれて外側に向かって傾斜する傾斜面となっている。このような構成によって、第2固定部62を第1固定部61から離れる方向にスライドさせると、第2固定部62における嵌合凸部62cは外側に徐々に開くように弾性的に変形する。このような弾性変形が進むにつれて、嵌合凸部62cの弾性復元力が高まっていく。この嵌合凸部62cにおける弾性復元力は、第2固定部62が第1固定部61に近づく方向に戻ろうと作用する力となる。
【0036】
<スプリング押し部と光ファイバコードとの接続構造>
特に、図5〜図12を参照して、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造について、より詳細に説明する。ここで、図9は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部を示す斜視図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す斜視図である。図10は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部の縦断面図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す縦断面図である。なお、図10は図2中のAA断面図のうちスプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造に係る部品を示した断面図である。図11は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部の縦断面図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す縦断面図である。なお、図11は図3中のCC断面図のうちスプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造に係る部品を示した断面図である。図12は本発明の実施形態に係る光コネクタ付きコード1の主要部の横断面図であり、スプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造を示す横断面図である。なお、図12は図2中のBB断面図のうちスプリング押し部60と光ファイバコード200との接続構造に係る部品を示した断面図である。
【0037】
光ファイバコード200のうち光ファイバ210は、スプリング押し部60に設けられている貫通孔(貫通孔61a及び貫通孔62a)内に後端側から挿入される。なお、光ファイバ210の先端の裸ファイバ211の部分は、フェルール20に設けられた光ファイバ穴21に位置決めされた状態で固定される。なお、図10及び図11においては、内部構造を分かりやすくするために、光ファイバコード200のうち光ファイバ210については省略している。
【0038】
そして、光ファイバコード200のうち抗張力体220は第1固定部61の抗張力体固定部61cに固定される。より具体的には、抗張力体220における2方向に分けられた第1抗張力体先端部221及び第2抗張力体先端部222が、第1固定部61の抗張力体固定部61cの両側に配置された状態で、環状の第1止め具である第1カシメリング71によって加締められる(図5,9,11参照)。ここで、第1抗張力体先端部221及び第2抗張力体先端部222は、外被230の先端よりも先端側に突出するように構成されており、外被230は第1カシメリング71によっては加締められない。また、第1カシメリング71は第2固定部62の嵌合凸部62cには接触しないように構成されており、第2固定部62の第1固定部61に対するスライド動作が妨げられることはない。
【0039】
また、光ファイバコード200のうち外被230は第2固定部62の外被固定部62bに固定される。より具体的には、外被230における2方向に分けられた第1外被先端部231及び第2外被先端部232が、第2固定部62の外被固定部62bの両面に配置された状態で、環状の第2止め具である第2カシメリング72によって加締められる(図9,10,12参照)。ここで、第2固定部62における平面部62dと第2カシメリング72の内周面との間には、第1抗張力体先端部221や第2抗張力体先端部222の厚みに対して十分大きな隙間が形成される。従って、第1抗張力体先端部221及び第2抗張力体先端部222は第2カシメリング72によっては加締められない(特に図12参照)。このように、第2カシメリング72は、加締められることによって、外被230につい
ては第2固定部62の外壁面に挟み込み、抗張力体220については第2固定部62の外壁面に挟み込まない。
【0040】
本実施形態においては、第1カシメリング71及び第2カシメリング72は、同一の部品を用いており、共通の加締め治具(不図示)によって加締め作業を行うことができる。なお、これら第1カシメリング71及び第2カシメリング72については、加締める前の断面形状は略楕円形であり、加締め治具によって加締められることで、加圧により変形されて、図9や図12に示す形状となる。
【0041】
<本実施形態に係る光コネクタ付きコードの優れた点>
本実施形態に係る光コネクタ付きコード1によれば、環境温度の変化に伴って外被230が伸縮した場合には、外被230が固定されている第2固定部62が第1固定部61に対してスライドする。そのため、外被230が伸縮しても、抗張力体220や光ファイバ210への影響を抑制することができる。これにより、外被230が伸縮しても、外被230を第2固定部62によって適度に固定しているので、外被230がずれてしまうのを防ぎつつ、光ファイバ210が曲がってしまうことを抑制することができる。従って、光学特性が悪化してしまうことを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、第1固定部61と第2固定部62とは、これらのスライド方向に対して傾斜する傾斜面同士がスライドする構成を採用している。そして、第2固定部62を第1固定部61から離れる方向にスライドさせると、第2固定部62における嵌合凸部62cが徐々に外側に開くように弾性的に変形する構成を採用している。これにより、嵌合凸部62cにおける弾性復元力は、第2固定部62が第1固定部61に近づく方向に戻ろうと作用する力となる。従って、環境温度の変化によって、外被230が縮んで第2固定部62が第1固定部61から離れる方向に移動した後に、外被230が伸びた場合、外被230が伸びる力に加えて、環状凸部62cによる弾性復元力が加わるため、より確実に第2固定部62を元の位置に戻すことができる。
【0043】
(その他)
上記実施形態においては、第1固定部61に嵌合凹部61eを設けて、第2固定部62に嵌合凸部62cを設けることによって、第1固定部61に対して第2固定部62をスライド可能に嵌合(装着)する構成を示した。しかしながら、第1固定部61に対して第2固定部62をスライド可能に嵌合(装着)可能な構成であれば、そのような構成に限定されるものではない。例えば、第1固定部61側に嵌合凸部を設けて、第2固定部62側に嵌合凹部を設ける構成を採用することも可能である。
【0044】
また、上記実施形態では、抗張力体220を第1固定部61の抗張力体固定部61cの両側で加締めによって固定し、外被230を第2固定部62の外被固定部62bの両面で加締めによって固定する構成を示した。しかしながら、両者の固定位置はこれに限られるものではない。例えば、抗張力体220を第1固定部61の抗張力体固定部の両面で加締めによって固定し、外被230を第2固定部62の外被固定部の両側で加締めによって固定する構成を採用することもできる。なお、この場合には、第1固定部61及び第2固定部62にそれぞれ設ける嵌合凹部と嵌合凸部を両面ではなく両側に設け、かつ第2固定部62に設ける平面部を両側ではなく両面に設けるとよい。
【0045】
また、上記実施形態では、スプリング押し部60に対して光ファイバコード200が固定される部分(すなわち、第1固定部61の抗張力体固定部61cと第2固定部62の外被固定部62b(一般的に、竹の子ジョイントと呼ばれる))は横断面が略楕円形状の筒状の場合を示した。しかしながら、当該部分の形状はこれに限られるものではなく、例えば、略円筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…光コネクタ付きコード,10…コネクタハウジング,20…フェルール,60…スプリング押し部,61…第1固定部,62…第2固定部,71…第1カシメリング,72…第2カシメリング,80…スプリング,100…光コネクタ,200…光ファイバコード,210…光ファイバ,220…抗張力体,230…外被
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備えた光ファイバコードにおける先端から口出しされた光ファイバに取り付けられ、
前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記第1固定部及び第2固定部は、光ファイバ長手方向に対して傾斜する傾斜面同士がスライドするように構成されており、これら第1固定部及び第2固定部のうちの少なくとも一方は、第1固定部と第2固定部が互いに離れる方向に移動することによって弾性復元力が高まるように弾性変形することを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記抗張力体の先端は2方向に分けられており、かつ前記外被の先端は2方向かつ前記抗張力体の先端方向とは異なる方向に分けられており、
前記抗張力体における2方向に分けられた先端部を第1固定部の外面に固定する環状の第1止め具と、
前記外被における2方向に分けられた先端部を第2固定部の外面に固定する環状の第2止め具と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
第2止め具は、加圧変形によって、前記外被を第2固定部の外面との間に挟み込み、前記抗張力体については第2固定部の外面との間に挟み込まないことを特徴とする請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備え、
その先端から前記光ファイバが口出しされており、口出しされた前記光ファイバに光コネクタが取り付けられており、
前記光コネクタは、口出しされた前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする光コネクタ付きコード。
【請求項1】
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備えた光ファイバコードにおける先端から口出しされた光ファイバに取り付けられ、
前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記第1固定部及び第2固定部は、光ファイバ長手方向に対して傾斜する傾斜面同士がスライドするように構成されており、これら第1固定部及び第2固定部のうちの少なくとも一方は、第1固定部と第2固定部が互いに離れる方向に移動することによって弾性復元力が高まるように弾性変形することを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記抗張力体の先端は2方向に分けられており、かつ前記外被の先端は2方向かつ前記抗張力体の先端方向とは異なる方向に分けられており、
前記抗張力体における2方向に分けられた先端部を第1固定部の外面に固定する環状の第1止め具と、
前記外被における2方向に分けられた先端部を第2固定部の外面に固定する環状の第2止め具と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
第2止め具は、加圧変形によって、前記外被を第2固定部の外面との間に挟み込み、前記抗張力体については第2固定部の外面との間に挟み込まないことを特徴とする請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
光ファイバと、該光ファイバの外周に設けた抗張力体と、該抗張力体の外周に設けた外被とを備え、
その先端から前記光ファイバが口出しされており、口出しされた前記光ファイバに光コネクタが取り付けられており、
前記光コネクタは、口出しされた前記光ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールを収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後部に取り付けられ、前記フェルールを前方に付勢するスプリングが反力をとるスプリング押し部とを備え、
前記スプリング押し部は、前記抗張力体が固定される第1固定部と、前記第1固定部に対して光ファイバ長手方向に移動可能に設けられる、前記外被が固定される第2固定部とを備えることを特徴とする光コネクタ付きコード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−41094(P2013−41094A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177672(P2011−177672)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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