説明

光コネクタ収納ユニット

【課題】光ファイバの導入・導出を収納ユニットの側面側から可能とし、接続トレイに対する光ファイバの接続作業を容易にした光成端架に搭載される光コネクタ収納ユニットを提供する。
【解決手段】ユニット筐体2内に回転可能に収納されるコネクタパネル4を備え、該コネクタパネル4には、光コネクタ同士を突き合わせ接続する多数の接続アダプタ7が設置されていると共に、光ファイバ同士の接続部を収容保持する接続トレイ10が設置されている。この接続トレイ10は、一方の辺側に複数の接続トレイを開閉可能に連結して積層するヒンジ部を有し、該ヒンジ部を有しない反対側の辺側で前記光ファイバ3a,8aの導入・導出を可能とし、コネクタパネル4の後部側に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルを成端させ、ケーブル内の各光ファイバを、光コネクタを介して分配する光成端架等に搭載される光コネクタ収納ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
多心の光ファイバケーブルを屋外や地中からビル等の建物内に導入し、ケーブル内の光ファイバを単心にして光配線するのに、光ファイバケーブルを屋内の機器室等に光成端装置(または光接続装置)を設置し、一旦、光ファイバ端を光コネクタで成端させている。
光成端装置は、光成端架(キャビネット)に光ファイバの切り替えや増減などのメンテナンスが行えるように可動とした複数の光コネクタ収納ユニットあるいは光コネクタ収納トレイを複数搭載している。
【0003】
光成端装置には、光成端架から光コネクタ収納ユニットを取り出す形態により、手前側に水平方向に引き出すスライド型(例えば、特許文献1,2)と、水平方向に回動させて引き出す回転可動型(例えば、特許文献3,4)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−153667号公報
【特許文献2】特開2009−164224号公報
【特許文献3】特許2912619号公報
【特許文献4】特開平10−268144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スライド型の収納ユニットは、上下方向に多段に搭載されるが、収納ユニット内の配線作業を確保するために奥行き部分の全てを引き出そうとすると、スライドレールを複数本使用した多段スライド構造にする必要があり、コスト高な構造となる。また、成端架の高さを抑えるために収納ユニットの高さを低くしようとする場合、収納ユニットのスライドレールを側面側に設置する構造となるため、側面からの光ファイバケーブルの配線導入が物理的に難しく、背面奥側からの配線導入を行おうとすると今度は成端架の奥行きスペースを大きくする必要が生じる。このため、省スペース用として海外でも主流となりつつある19インチラック(奥行き300mmのラック)に搭載するのが難しいという問題がある。更には、スライドのための光ファイバの長い余長が必要となって、収納ユニット内外でそれらが輻輳するという問題もある。
【0006】
回転可動型の収納ユニットは、上記のスライド型の問題点を解消することができる。しかしながら、収納ユニットの光コネクタ数分の光ファイバ接続を同一の接続トレイ内で行おうとすると、光ファイバが絡まりやすく、個々の光ファイバの識別も煩雑になるため作業性が悪く、正確性にも欠ける。また、接続トレイのヒンジ部が収納ユニットの奥部側にあるが、融着接続等の作業を行う場合、収納ユニットの前面側からは光コネクタ列が邪魔になり、回転により開かれた収納ユニットの背面側から行う場合は、開いている接続トレイまたはトレイカバーが邪魔になり、作業性も悪いという問題がある。なお、単純に接続トレイを180°反転させて、接続トレイのヒンジが収納ユニットの前面側にくるように設置すると、導出口と接続アダプタとの奥行き方向の寸法が小さくなりすぎたり、導入側の光ファイバと導出側の光ファイバとの交差が発生するため、許容曲げ径の確保が難しくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、光ファイバの導入・導出を収納ユニットの側面側から可能とし、接続トレイに対する光ファイバの接続作業を容易にした光コネクタ収納ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光コネクタ収納ユニットは、多心の光ファイバケーブルを成端させ、複数の光ファイバに分配する光成端架に搭載される光コネクタ収納ユニットであって、光ファイバケーブルを収納ユニット後部の側面方向から導入し、複数の光コネクタを介して収納ユニット前部の側面方向から複数の光ファイバを導出するように構成される。そして、収納ユニット筐体内に回転可能に収納されるコネクタパネルを備え、該コネクタパネルには、光コネクタ同士を突き合わせ接続する多数の接続アダプタが設置されていると共に、光ファイバ同士の接続部を収容保持する接続トレイが設置されている。この接続トレイは、一方の辺側に複数の接続トレイを開閉可能に連結して積層するヒンジ部を有し、該ヒンジ部を有しない反対側の辺側で前記光ファイバの導入・導出を可能とし、コネクタパネルの後部側に設置される。
【0009】
なお、前記の接続トレイのヒンジ部を有しない辺側が、コネクタパネルの後部側に位置させるのが好ましい。また、ヒンジ部での開きが所定角度以上とならないように、開き角が制限されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光成端架の奥行きを大きく取ることなく、また、光ファイバの接続、収納等の作業性、メンテナンス性を向上させることができ、光ファイバの配線も自然で許容曲げ半径も容易に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による光コネクタ収納ユニットの外観を示す図である。
【図2】本発明による光コネクタ収納ユニットの内部配線を示す図である。
【図3】本発明による収納ユニット内のコネクタパネルを回転して引出し、作業する状態を示す図である。
【図4】本発明による収納ユニット内の接続トレイの一例を説明する図である。
【図5】図4の接続トレイの使用形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1,2により本発明の実施形態の概略を説明する。図において、1は光コネクタ収納ユニット、2はユニット筐体、2aは上カバー、2bは筐体側壁、2cは取付け部片、2dはケーブル導入口、3は光ファイバケーブル、3aは多心の光ファイバ心線、4はコネクタパネル、4aはコネクタフレーム、5は引出しテーブル、5aはフロントカバー、5bはファイバ導出路、6は回転支軸、7は接続アダプタ、8,9は光コネクタ、8aは光ファイバ心線、9aは光ファイバコード、10は接続トレイを示す。
【0013】
本発明による光コネクタ収納ユニット1(以下、収納ユニットという)は、図1に示すように、薄型で長方形状のユニット筐体2内に、回転により取出し可能なコネクタパネル4を収納して構成される。ユニット筐体2は、上カバー2a、筐体側壁2bを有し、該筐体側壁の前部に設けられた取付け部片2cにより、光成端架(図示省略)等に収納固定される。筐体側壁2bの後部側にはケーブル導入口2dが設けられ、光ファイバケーブル3が側面方向から収納ユニット1内に導入される。
【0014】
コネクタパネル4は、多数の光コネクタおよびファイバ接続部を収容保持して配線するもので、ユニット筐体2の一方の側部(図2で示す右側の側部)で前部側に設けた回転支軸6により回転可能にユニット筐体2内に収納される。このコネクタパネル4は、ユニット筐体2の前部側に90°程度回転させて引出すことが可能とされ、その前部側には引出しテーブル5が設けられている。引出しテーブル5は、フロントカバー5aと光コネクタ付き光ファイバコードを案内するファイバ導出路5bを有している。また、コネクタパネル4の前部側には、収納ユニット1に導入された光ファイバ心線と外部に導出する光ファイバ心線を光コネクタを介して接続する複数の接続アダプタ7が設置されている。
【0015】
コネクタパネル4は、図2のユニット筐体2の上カバー2aを外した図で示すように、前部側(手前側)に接続アダプタ7を配列するためのコネクタフレーム4aが設けられる。コネクタパネル4の後部側(奥部側)には、光ファイバケーブル3の多心の光ファイバ心線3aと収納ユニット内側の光コネクタ8の光ファイバ心線8aとのファイバ接続部および光ファイバ心線の余長を収納する接続トレイ10が収納される。なお、多心の光ファイバ心線の3aとしては、例えば、複数本の光ファイバ心線をテープ状に配列したテープ心線が用いられる。
【0016】
コネクタフレーム4aには、光コネクタ同士を突き合わせて光接続をするための接続アダプタ7が、列状に並べて設置される。この接続アダプタ7の内側の接続口には、光ファイバケーブル3からの多心の光ファイバ心線3aのそれぞれに接続された光ファイバ心線(または光ファイバコード)8aの光コネクタ8が挿着される。接続アダプタ7の外側の接続口には、光ファイバコード9a等の端部に取付けられた光コネクタ9が挿着される。光ファイバコード9aは、引出しテーブル5のファイバ導出路5bに添って曲げられ、収納ユニット1の側面方向に導出される。
【0017】
光ファイバケーブル3内の光ファイバ心線3aは、多少の弛みを持たせて光ファイバケーブル3の導入方向と反対の方向から接続トレイ10内に導入される。接続トレイ10の詳細は後述するが、多心の光ファイバ心線3aのそれぞれは、上述した収納ユニット内側の光コネクタ8の光ファイバ心線8aと、融着接続あるいはメカニカルスプライスにより接続され、そのファイバ接続部および余長部分が接続トレイ10により収容保持される。光ファイバ心線8aは、接続トレイ10の光ファイバ心線3aの導入側とは反対の側から引出され、上記の光コネクタ8に至る。
【0018】
図3は、接続作業のためコネクタパネル4をユニット筐体2から引出した状態を示している。コネクタパネル4は、図3(A)に示すように回転支軸6により支持されていて、回転により引出すことができる。コネクタパネル4の引出しは、その開き角が90°程度あれば十分で、この場合、光ファイバケーブル3の光ファイバ心線3aは、大きな弛みを有していなくても引張り張力を受けることなくスムーズに変位移動させることができる。
【0019】
また、図3(B)に示すように、コネクタパネル4を開くことにより、ユニット筐体2の前部との間に矩形状の作業エリアを確保することができる。作業者は、この作業エリアにおいて、コネクタパネル4の後部側(奥部側)と向き合うようにして光ファイバの融着接続等の接続作業を行うことができる。そして、この接続作業に引き続いて、光コネクタ8,9等の設置部分に邪魔されることなく手近にある接続トレイ10のトレイカバー12を開いて、トレイ本体11上にファイバ接続部を把持固定させ、また、余長を持たせて収納させるという作業を行うことができる。
【0020】
上記の構成により、光ファイバケーブル3内の光ファイバは、収納ユニット1の後部の側面方向から導入され、ファイバ接続部および光コネクタを介して、収納ユニットの前部の側面方向から導出させることができる。また、光コネクタおよびファイバ接続部を収容保持するコネクタパネル4は、回転により引出すことができる。この結果、上記のように光成端の作業性を向上させることができると共に、光成端架の奥行き寸法が制限されている場合に対応することができ、光成端架の設置場所の省スペース化も実現することが可能となる。
【0021】
図4,5は光ファイバのファイバ接続部および余長をとるための接続トレイの一例を示す図である。図において、11はトレイ本体、12はトレイカバー、13はベース部、14は周壁部、15a,15bはファイバ案内口、16a,16bは接続把持部、17a,17bは舌片、18はヒンジ部、18aはヒンジピン部、18bはヒンジ孔部、19は係止フック、20はストッパを示す。
【0022】
接続トレイ10のトレイ本体11は、例えば、一枚で12心位の光ファイバ心線を収容保持できるように形成され、図4に示すように、合成樹脂材の成形により、ベース部13の周囲を周壁部14で囲った薄型のトレイ形状とされる。ベース部13の一方の辺側の両側には光ファイバを導入または導出するファイバ案内口15a,15bが設けられ、一方のファイバ案内口15aからは光ファイバケーブル側の光ファイバ心線3aが導入され、他方のファイバ案内口15bからは光コネクタに繋がる光ファイバ心線8aが導出される。
【0023】
ベース部13上には、接続把持部16a,16bが一体に形成されていて、光ファイバ心線3aと8aのファイバ接続部を弾性的に把持して保持する。なお、光ファイバ心線3aと8aとの接続は、融着またはメカニカルで行うことができ、その融着接続補強部やメカニカルスプライサが接続把持部16a,16bで把持される。また、周壁部14の上縁には、大小の舌片17a,17bが一体に形成されていて、光ファイバ心線の余長が収納保持されるように形成されている。
【0024】
また、ファイバ案内口15a,15bが設けられている辺側と反対側の辺側には、ヒンジピン部18aとヒンジ孔部18bからなるヒンジ部18が設けられる。このヒンジ部18は、図5に示すように、複数のトレイ本体11を積層配置した際に、上下のトレイ本体11間またはトレイカバー12を開閉可能に連結するものである。すなわち、上側のトレイ本体11のヒンジピン部18aを、下側のトレイ本体11のヒンジ孔部18bに挿入することにより互いに回動可能にヒンジ結合される。なお、最上部に位置するトレイ本体11の上には、トレイカバー12が同様な形態でヒンジ結合される。なお、ヒンジ部18が設けられた反対側の辺側(すなわち、ファイバ案内口15a,15b側)には、トレイ本体11間の開閉をロックする係止フック19が設けられる。
【0025】
また、ヒンジ部18が設けられた辺側に、開閉角を所定の角度以内に抑えるためのストッパ20が設けられている。このストッパ20は、例えば、三角形状の突起で形成され、上下のトレイ本体あるいはトレイカバー12が開かれた際に、互いにストッパ20が当接することで、その開き角度が所定の範囲内に抑えることができる。この結果、例えば、図3(B)に示すように、トレイカバー12を開いたときに、その背面側にある光コネクタの配列に接触して、その配線に干渉しないようにすることができる。
【0026】
また、本発明においては、図3で示すように、ファイバ案内口15a,15bのある側が後部側としてコネクタパネル4の後部側に位置し、ヒンジ部18がコネクタパネル4の前部側(すなわち、光コネクタの配列側)に位置するように設置される。この結果、接続トレイ10は、作業者が作業している側が開かれていて、光ファイバを接続した後、そのファイバ接続部を光ファイバを接続するために開いたトレイカバーやトレイ本体等で邪魔されることなく、接続把持部に移送し保持固定させることができ、作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1…光コネクタ収納ユニット、2…ユニット筐体、2a…上カバー、2b…筐体側壁、2c…取付け部片、2d…ケーブル導入口、3…光ファイバケーブル、3a…多心の光ファイバ心線、4…コネクタパネル、4a…コネクタフレーム、5…引出しテーブル、5a…フロントカバー、5b…ファイバ導出路、6…回転支軸、7…接続アダプタ、8,9…光コネクタ、8a…光ファイバ心線、9a…光ファイバコード、10…接続トレイ、11…トレイ本体、12…トレイカバー、13…ベース部、14…周壁部、15a,15b…ファイバ案内口、16a,16b…接続把持部、17a,17b…舌片、18…ヒンジ部、18a…ヒンジピン部、18b…ヒンジ孔部、19…係止フック、20…ストッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多心の光ファイバケーブルを成端させ、複数の光ファイバに分配する光成端架に搭載される光コネクタ収納ユニットであって、
前記光ファイバケーブルを収納ユニット後部の側面方向から導入し、複数の光コネクタを介して収納ユニット前部の側面方向から複数の光ファイバを導出するように構成され、
収納ユニット筐体内に回転可能に収納されるコネクタパネルを備え、該コネクタパネルには、光コネクタ同士を突き合わせ接続する多数の接続アダプタが設置されていると共に、光ファイバ同士の接続部を収容保持する接続トレイが設置され、
前記接続トレイは、一方の辺側に複数の接続トレイを開閉可能に連結して積層するヒンジ部を有し、該ヒンジ部を有しない反対側の辺側で前記光ファイバの導入・導出を可能とし、前記コネクタパネルの後部側に設置されていることを特徴とする光コネクタ収納ユニット。
【請求項2】
前記接続トレイのヒンジ部を有しない辺側が、前記コネクタパネルの後部側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ収納ユニット。
【請求項3】
前記接続トレイは、前記ヒンジ部での開きが所定角度以上とならないように、開き角が制限されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタ収納ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−226257(P2012−226257A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96081(P2011−96081)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【Fターム(参考)】