説明

光ディスク装置

【課題】BD−R等の追記型光ディスクにおいて、論理上書きするとともに上書きする前の任意のデータの復元を可能とする。
【解決手段】既に記録した領域にデータを上書きする際に、未記録のユーザデータ領域に交替記録することで論理上書き処理する。システムコントローラ32は、論理上書きする毎に、論理上書きする前の旧物理アドレスと交替記録した新物理アドレス並びに論理上書きする前のデータ長の対応関係リストを累積的に作成して光ディスク10に記録する。複数回の論理上書きがされた場合に、前記対応関係テーブルの旧物理アドレスを順次参照することで、論理上書きする前の任意のデータを再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置、特に論理上書き機能を有する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
BD(ブルーレイディスク)等の光ディスクにおいては、追記型光ディスクにおける欠陥管理システム、すなわち記録中にエラーが生じた場合に、光ディスクの内周及び外周に設けられたスペア領域に交替記録し、交替情報を欠陥リストに登録して管理するシステムを応用し、データの交替先をスペア領域ではなくユーザデータ領域のうちの未記録部分とする論理上書き(あるいは疑似オーバライト)が提案されている。例えば、BD−Rにおいてデータを上書きする場合、既記録領域に対してデータライト命令を受け取ると、光ディスク装置のプロセッサはユーザデータ領域の中の未記録領域の先頭に交替記録し、欠陥リストに交替情報を書き込む。データを再生する場合、データリード命令を受け取ると、欠陥リストを参照して読み出すべきアドレスがリストに登録されているか否かを判定し、登録されている場合には交替先のアドレスからデータを読み出す。論理上書きについては、UDF2.6で規定されている。
【0003】
一方、誤って上書きした場合等に元のデータを復元することについては特に規定されていない。下記に示す特許文献1では、アクシデント発生時のファイルシステムのリカバリ方法や上書き処理を取り消すための方法が開示されている。具体的には、リードイン領域に記録領域管理情報エリアRMAが含まれ、RMAには記録領域管理データRMD、ディスク構造定義情報DDS、欠陥リストテーブルDLTが含まれ、DDSにはDDSアップデートカウンタとDLTのアドレスが含まれ、DLTのアドレスには復元DLTアドレス(ファイル管理情報、ファイルに矛盾がないと判断された状態のDLTが記録されたDLTアドレス)と有効DLTアドレス(現在、有効としているDLTアドレス)が含まれる構成において、復元DLTアドレスを元にして有効DLTアドレスを書き換えることにより論理上書き処理を取り消すことが記載されている。DLTアドレスはDDSに含まれているので、DDSを更新することになる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−172528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、論理上書きを取り消すためにある一時期におけるDLTに戻すことしかできない。換言すれば、複数のファイルを更新、追加した場合、復元したいファイルだけでなく、前回の処理が全てなかったことになってしまう。DLTを選択的に復元できても、特定のファイルだけを前の世代に戻すことはできない。
【0006】
本発明の目的は、論理上書きを可能とするとともに、論理上書きしたデータあるいはファイルを個別に、かつ、任意の世代に復元できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、既に記録した領域にデータを上書きする際に、未記録のユーザデータ領域に交替記録することで論理上書き処理する光ディスク装置であって、論理上書きする毎に、論理上書きする前の旧物理アドレスと交替記録した新物理アドレス並びに論理上書きする前のデータ長の対応関係リストを累積的に作成する作成手段と、前記対応関係リストを光ディスクに記録する記録手段と、論理上書きしたデータを再生する際に、前記対応関係リストを参照して再生する再生手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、前記再生手段は、複数回の論理上書きがされた場合に、前記対応関係テーブルの旧物理アドレスを順次参照することで、論理上書きする前の任意のデータを再生する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、論理上書きを可能とするとともに、論理上書きする前の任意のデータを復元することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1に、本実施形態に係る光ディスク装置の全体構成図を示す。BD等の光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により回転駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0012】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。ドライバ20は、ドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22は、オートパワーコントロール回路(APC)24により、レーザパワーが所望の値となるように駆動電流が制御される。APC24及びドライバ22は、システムコントローラ32からの指令によりLDの発光量を制御する。図ではドライバ22は光ピックアップ16と別個に設けられているが、後述するようにドライバ22を光ピックアップ16に搭載してもよい。
【0013】
光ディスク10に記録されたデータを再生する際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られた信号をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、2値化信号を復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト装置に出力する。なお、再生データをホスト装置に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0014】
光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からの記録すべきデータはインターフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードして変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは記録品質に影響することから、通常はある最適ストラテジに固定される。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を2値化回路34に供給し、2値化されたデータエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、変調データをデコードし、バッファメモリ38に記憶されている記録データと照合する。照合の結果はシステムコントローラ32に供給される。システムコントローラ32は照合の結果に応じて引き続きデータを記録するか、あるいは交替処理を実行するかを決定する。変調データをデコードしてバッファメモリ38に記憶されている記録データと照合するのではなく、変調データをデコードしてそのエラーレートを計測することで記録品質を評価し、記録品質に応じて交替処理を実行してもよい。交替処理では、既述したように光ディスクの内周あるいは外周のスペア領域にデータを交替記録し、元のアドレスと交替記録後のアドレスとをペアにして欠陥リストに登録する。
【0015】
一方、光ディスク10がBD−R等の追記型光ディスクである場合、光ディスク装置は既記録アドレスを指定するライトコマンドを受け取ると、論理上書き処理を実行する。論理上書き処理では、既記録アドレスを指定するライトコマンドを受け取ると、システムコントローラ32は光ディスク10のユーザデータ領域の中の未記録部分に当該データを交替記録し、かつ、上書きする前の物理アドレス(旧物理アドレス)と交替記録した後の物理アドレス(新物理アドレス)、さらには上書きする前のデータのデータ長とを組にして光ディスク10の所定領域に記録する。所定領域は特定の光ディスクにおいてドライブ設計者やメーカが自由に使用し得る領域として割り当てられた領域である。例えば、BDにおけるリードイン領域内のドライブエリア(Drive Area)内の各データフレーム内のDrive specific Information領域である。Drive Areaは4領域ずつ2カ所に分かれて設けられ、合計8領域ある。また、1つのDrive Areaは32個の物理クラスタから成り立っており、記録はこの物理クラスタを単位として実行される。Drive Area自体は、通常のファイル記録や交替処理と同期してデータが記録されるように設けられているものではなく、そのドライブが独自のタイミングで自由に使用できる領域である。1つの物理クラスタは、2kサイズの32個のセクタから構成されており、それぞれのセクタは、Data Frame0からData Frame31と番号付けされている。新しくクラスタが記録されるときには、前回記録されたクラスタの中の一番古いセクタであるData Frame31が除去され、以前のData Frame0はData Frame1に、Data Frame1はData Frame2へと内容がスライドされ、結局、Data Frame0にのみ新しいデータが加わるルールになっている。2kバイトのセクタのうち48バイトは製造者名、48バイトは付加的ID、32バイトはユニークシリアルナンバーに割り当てられ、残りの1920バイトはドライブ設計者やメーカ側で自由に使用し得る領域として割り当てられている。論理上書きした場合の旧物理アドレス、新物理アドレス及びデータ長の組はこの自由領域に記録する。本実施形態は、このようにドライブ設計者やメーカが自由に使用し得る領域を有する光ディスクに対して記録再生を行う装置に固有の技術といえる。
【0016】
図2に、光ディスク10の所定領域に記録される組を示す。論理ブロックアドレスLBAが4バイト、旧物理ブロックアドレスPBAが4バイト、新物理ブロックアドレスPBAが4バイト、データ長LENGTHが4バイトの計16バイトで記録される。旧物理ブロックアドレス、新物理ブロックアドレス及びデータ長の組の記録は、論理上書きする毎に、かつ、累積的に記録する。すなわち、ある物理ブロックアドレスAのデータdaを論理上書きして物理ブロックアドレスBにデータdbを書き込み、さらに論理上書きして物理ブロックアドレスCにデータdcを書き込んだ場合、従来のように物理ブロックアドレスAと物理ブロックアドレスCとの関係のみを欠陥リストとして登録するのではなく、物理ブロックアドレスAと物理ブロックアドレスBとの関係、及び物理ブロックアドレスBと物理ブロックアドレスCとの関係を累積的に記録する。このように論理上書きする毎に累積的に記録するのは、複数回の論理上書きを実行した場合でも、任意の世代におけるデータを復元できるようにするためである。論理上書きしたデータを再生するだけならば、対応関係を累積的に記録する必要はない。最後に上書きしたデータの物理ブロックアドレスを知ることができればよいからである。なお、論理上書きする毎に累積的に記録する際に、対応関係リストを作成したタイミングで光ディスク10の所定領域に直接記録するのではなく、物理ブロックアドレスAと物理ブロックアドレスBとの関係、及び物理ブロックアドレスBと物理ブロックアドレスCとの関係を内部のキャッシュメモリに蓄積しておき、イジェクトやスタンバイ等の特定のタイミングでまとめて光ディスク10の所定領域に記録してもよい。従来技術においては、特定のファイルのみ古いバージョンに戻す思想がないが、本実施形態のように論理上書きされる毎に全ての履歴情報を蓄積して最終的に光ディスク10の所定領域に記録することで、特定のファイルのみ古いバージョンに戻すことが可能となる。
【0017】
累積的に記録する場合、各組に対して連続番号を付しておくことが好適である。例えば、1回目の論理上書きではその組に「1」の番号を付し、2回目の論理上書きではその組に「2」の番号を付す等である。データを再生する場合には、リスト番号を昇順に辿っていくことで最新のデータの物理ブロックアドレスを知ることができる。また、論理上書きの対応関係を示すリストが存在していることを、例えばDrive specific Informationの先頭に“LOW”(Logical Over Writeの意)なる文字あるいはコードを挿入することで識別してもよい。
【0018】
図3に、ある論理アドレスのデータに対して合計3回の論理上書きを実行した場合に作成されるリスト100を示す。1回目の論理上書きでは、論理ブロックアドレス0x10000の物理ブロックアドレス0x50000を上書き処理して物理ブロックアドレス0x50100に記録したことを示す。元のデータ長は0x100である。2回目の論理上書きでは、交替記録して物理ブロックアドレス0x50200に記録したことを示す。旧物理ブロックアドレスは、1回目の論理上書きで実際に記録した物理ブロックアドレス0x50100である。上書きされた元のデータのデータ長は0x100である。3回目の論理上書きでは、交替記録して物理ブロックアドレス0x50310に記録したことを示す。旧ブロックアドレスは、2回目の論理上書きで実際に記録した物理ブロックアドレス0x50200である。上書きされた元のデータのデータ長は0x110である。さらに、対応関係を示すリストをキャッシュメモリに蓄積した後に所定タイミングで光ディスク10の所定領域に記録する場合、A1→A2→A3、B1→B2というように論理上書きされたため、対応関係のリストが
A1 0x10000、0x50000、0x50100、0x100
A2 0x10000、0x50100、0x50200、0x100
A3 0x10000、0x50200、0x50310、0x110
B1 0x20000、0x60000、0x60100、0x100
B2 0x20000、0x60000、0x60200、0x100
であるところ、さらにA3にA4を論理上書きした場合、これをソート処理して
A1 0x10000、0x50000、0x50100、0x100
A2 0x10000、0x50100、0x50200、0x100
A3 0x10000、0x50200、0x50310、0x110
A4 0x10000、0x50310、0x50420、0x110
B1 0x20000、0x60000、0x60100、0x100
B2 0x20000、0x60000、0x60200、0x100
と並び替えて光ディスク10の所定領域に記録してもよい(A4の順番が変わっている点に留意)。
【0019】
このように、論理上書きする毎に、旧物理アドレスと新物理アドレス並びにデータ長を組として累積的にリストを作成して記録しておくことで、データあるいはファイル毎に、かつ、任意の世代のデータあるいはファイルを復元することができる。すなわち、例えば単にデータを再生する際にはリストの「1」、「2」、「3」の組を順次参照することで最新の物理ブロックアドレス0x50310を知りファイルあるいはデータを再生することができるが、最後の論理上書きを取り消して2回目の論理上書きのデータあるいはファイルを復元する場合、リストのうちの「1」、「2」を選択し、2回目の論理上書きが完了した時点の新物理ブロックアドレスを参照して読み出せばよい。また、2回目の論理上書きのデータ長は「3」のデータ長に記録されているからこれを参照すればよい。具体的には、物理アドレスは0x50200であり、データ長は0x110である。
【0020】
また、2回目及び3回目の論理上書きを取り消して1回目の論理上書きのデータあるいはファイルを復元する場合、リストのうちの「1」を選択し、1回目の論理上書きが完了した時点の新物理ブロックアドレスを参照して読み出せばよい。また、1回目の論理上書きのデータ長は「2」のデータ長に記録されているからこれを参照すればよい。具体的には、物理アドレスは0x50100であり、データ長は0x100である。
【0021】
全ての論理上書きを取り消して最初のデータあるいはファイルを復元したい場合には、リストの「1」を選択して旧物理ブロックアドレス及びデータ長を参照すればよい。
【0022】
詳述すると以下の処理となる。まず、光ディスク10上で最後に記録されたDrive Area内の物理クラスタを検索する。Drive Areaは先頭から順番に記録されるため、最後に記録された物理クラスタの検索は容易である。次に、そのクラスタ内の最新データであるData Frame0からData Frame31に向けて、各セクタをチェックする。具体的には、各セクタ内のDrive specific Informationのデータを調べ、先頭に“LOW”の文字あるいはこれに該当するコードがあるか否かを調べる。もし、“LOW”の文字あるいはコードがあれば、Drive specific Informationのデータを既存の対応関係リストとしてメモリ内に読み込む。一方、“LOW”の文字あるいはコードがなければ、次のセクタをチェックする。この光ディスク10が、別のドライブで使用された場合で、Drive specific Informationの領域に何らかの書き込みが行われる場合もあり得るからである。そして、最後に記録された物理クラスタ内を全て調べて“LOW”の文字あるいはコードが全く見つからない場合には、その前に記録された物理クラスタをチェックする。この場合、Data Frame0〜Data Frame30は、最後に記録されたクラスタのData Frame1〜Data Frame31と共通のデータであるため、チェックは不要であり、Data Frame31のセクタだけチェックすればよい。このようにして順次物理クラスタをチェックしていき、“LOW”が見つからない限り、先頭(最古)のDrive Areaまでチェックする。もし、対応関係リストが存在しなければ、この光ディスク10は本技術が適用された履歴がないものとして、新規に対応関係リストを作成する。このようにして、既存又は新規に作成した対応関係リストに対して論理上書きが発生したら、変更を加える。そして、イジェクト、スタンバイ等のタイミングでキャッシュメモリの内容を実際に光ディスク10の所定領域に記録する。
【0023】
論理上書きする前のデータを復元する際には、光ディスク装置と接続されるパーソナルコンピュータ等のホスト装置のディスプレイに、どの世代のファイルあるいはデータを復元するかをユーザに問い合わせる画面を表示することが好適である。図4に、画面表示例を示す。ユーザが復元モードを指示すると、システムコントローラ32は指定された論理ブロックアドレスのリストを参照し、リストの番号から論理上書きされた回数を取得してホスト装置に出力する。ホスト装置は、受信した回数データに基づきディスプレイ102上にオーバライト回数を表示する。また、復元すべきオーバライトをユーザが指定するためのメニューを表示する。図では、1回目、2回目、3回目のオーバライトが表示され、ユーザがマウスあるいはカーソルを操作して2回目のオーバライトを選択したことを示す。ユーザがOKボタンをクリックすると、ホスト装置は3回目の論理上書きを取り消すように光ディスク装置に指令する。システムコントローラ32は、3回目の論理上書きを取り消す指令を受けると、リストのうちの「1」、「2」から新物理ブロックアドレスを参照してファイルあるいはデータを再生する。
【0024】
なお、本実施形態では、論理上書きでは実際の上書きと異なり上書きする前のファイルあるいはデータが光ディスク上に存在することを利用して任意の世代のファイルあるいはデータを復元しているが、ある特定世代のファイルあるいはデータを意図的に復元できないようにしてセキュリティを高めることもできる。例えば、図3の例において復元を禁止する場合、リストの「1」、「2」、「3」の全てに復元を禁止する旨のフラグを設定しておく。ユーザから復元が指示された場合、リストを順次参照するが、リストにフラグが設定されている場合、最新のリストに示された新物理アドレスのみからデータを再生する。1回目に論理上書きしたデータのみを復元不可とする等も可能である。この場合、リストの「1」に復元禁止のフラグを設定しておく。ユーザ毎に復元の可否を判断することもできる。復元を確実に禁止する場合に、元のデータを物理的に破壊(物理的オーバライト)してもよい。
【0025】
本実施形態では、図3に示すようなリストを作成して光ディスク10に記録しているが、リストの態様は任意でよく、要するに、複数回の論理上書きがなされた場合に、各回の旧物理アドレスと新物理アドレス及び上書きする前のデータ長を関連付けて記録していればよい。旧アドレスと新アドレスとをペアとして記録し、上書きする前のデータ長を別途管理してもよい。当初の物理アドレスと最新物理アドレスとをペアにして記録するとともに、各回の対応関係リストを別途記録してもよい。単にデータを再生する場合には当初の物理アドレスと最新物理アドレスの組を参照してファイルあるいはデータを再生し、データを復元する場合のみ各回の対応関係リストを参照してファイルあるいはデータを再生する。
【0026】
図5に、他のリストの形態を示す。1回目の論理上書きがなされた場合に、旧物理アドレス0x50000と新物理アドレス0x50100並びに上書き後のデータ長を記録する。2回目の論理上書きがなされた場合に、当初の旧物理アドレス0x50000と新物理アドレス0x50200並びに上書き後のデータ長を記録する。3回目の論理上書きがなされた場合に、当初の旧物理アドレス0x50000と新物理アドレス0x50200並びに上書き後のデータ長を記録する。データを再生する場合、番号「3」のリストから新物理アドレスを取得して再生する。3回目の論理上書きを取り消す場合、番号「2」のリストを参照することで2回目の上書き後のデータを再生すればよい。2回目及び3回目の上書きを取り消す場合、番号「1」のリストを参照することで1回目の上書き後のデータを再生すればよい。1回目、2回目、3回目全ての上書きを取り消す場合、番号「1」のリストの旧物理アドレスを参照すればよい。但し、当初のデータ長は別途記録しておく必要がある。
【0027】
また、本実施形態の対応関係リストの容量は1920バイトに制限されているので、もし、論理上書きが多発した場合にこの容量をオーバしてしまう可能性がある。そこで、オーバした場合には対応関係リストを削除する必要があり、何回も論理上書きが行われているファイルであれば古い方の履歴を削除する、あるいは最後の論理上書きから経過した時間が長いものから削除する、等が好適である。削除は自動、あるいはアプリケーションプログラムを通じて対話的に行ってもよい。さらに、対応関係リストの肥大化を予め防止するために、対応関係リストに加える、あるいは加えないファイルをアプリケーションプログラムを通じて指定できるようにする、あるいはファイルの拡張子で自動的に区別してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】光ディスク装置の全体構成図である。
【図2】論理上書きする際のリスト説明図である。
【図3】複数回の論理上書きが実行された場合のリスト説明図である。
【図4】復元モードのディスプレイ説明図である。
【図5】複数回の論理上書きが実行された場合の他のリスト説明図である。
【符号の説明】
【0029】
10 光ディスク装置、32 システムコントローラ、100 リスト、102 ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既に記録した領域にデータを上書きする際に、未記録のユーザデータ領域に交替記録することで論理上書き処理する光ディスク装置であって、
論理上書きする毎に、論理上書きする前の旧物理アドレスと交替記録した新物理アドレス並びに論理上書きする前のデータ長の対応関係リストを累積的に作成する作成手段と、
前記対応関係リストを光ディスクに記録する記録手段と、
論理上書きしたデータを再生する際に、前記対応関係リストを参照して再生する再生手段と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記再生手段は、複数回の論理上書きがされた場合に、前記対応関係テーブルの旧物理アドレスを順次参照することで、論理上書きする前の任意のデータを再生することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記記録手段は、前記作成手段で前記対応関係リストが作成されるタイミングで前記光ディスクに記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記記録手段は、前記光ディスクのイジェクト時を含む所定のタイミングで前記光ディスクに記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記記録手段は、前記対応関係リストを記録するとともに前記対応関係リストが記録されていることを示す特定情報を前記所定領域に付加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の装置において、さらに、
前記対応関係リストが所定容量を超えないように、時系列上古いリストを選択的に削除する削除手段と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−32339(P2009−32339A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196340(P2007−196340)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】