説明

光ネットワークおよび光回路

【課題】 マルチコア光ファイバを用いた全2重光通信ならびにマルチキャスト光通信を、簡易に、かつ高信頼で行うための光ネットワークおよび光通信装置を提供すること。
【解決手段】 第1および第2の光送受信モジュール9と、各光送受信モジュール9とそれぞれ接続された第1および第2の積層光回路3と、第1の積層光回路3と第2の積層光回路3とを接続する、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する1本のマルチコア光ファイバ1とを備え、第1および第2の積層光回路3は、それぞれ第1および第2の光導波路コア2−a、2−bを有し、各光送受信モジュール9と接続される側の第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔を、マルチコア光ファイバ1と接続される側の第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔よりも広くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワークおよび光通信装置に関し、より詳細には、ホーム・オフィス等の小規模な同報型波長分割多重伝送ネットワークにおいて、全2重伝送がマルチコア光ファイバ1芯にて実現可能である光ネットワークおよび光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
DVI(Digital Visual Interface)規格に基づいた大画面ディスプレイの画像データとその制御コンピュータ間の光リンクの高速化により、家庭内で必要とされる情報量が1ギガビットクラスの伝送容量を超えるという予測は現実感を帯びてきている。これら光リンクには帯域的には高速で、長距離伝送が可能なシングルモード光ファイバが必要とはいい難く、集合住宅もしくは家庭内の伝送距離を考慮すると、伝送帯域としては安価で、折り曲げにも強いマルチモード光ファイバでも十分と考えられる。また、家計費に占める通信コストはほぼ横ばい傾向であることから、部品としての接続コストならびに配線工事のDIY化の可能性を考慮すれば、マルチモード光ファイバリンクは低廉化が期待でき、より一層のFTTHの普及を図ることが期待できる。
【0003】
一方、ディスプレイ等家庭内で使用される白物家電に加えて、ホームセキュリティ、ファイルサーバなど、ネットワーク化の進行により、種々端末間相互の伝送トラフィックが増加することが予想されてきている。また、そのネットワークの実現のためには高い信頼性を有する光ネットワークが有望視されてきている。これら端末には光トランシーバが内蔵され、その信号伝送にはファイバを2芯として信号送受信を全2重化する手法が用いられてきた。
【0004】
その後、高信頼化、高スループット化、DIY化が益々要求されるホームネットワークにおいては、伝送媒体としてシングルモード光ファイバ、大口径単芯プラスチック光ファイバが検討されてきた。しかしながら、家庭内で想定される曲げ半径や省スペース性、ファイバ長あたりのコスト、モジュール化コストにより、従来のファイバでは家庭内に適合した光リンク実現のための仕様を満たすことは困難な状況であった。これら問題を解決する家庭内光リンクが渇望されていた。
【0005】
そこで、優れた曲げ特性を有するなどの特徴が示されてきている、マルチコアを有するマルチコア光ファイバが検討されており(非特許文献1参照)、マルチコア光ファイバを用いた光トランシーバモジュールの提案も行われている(特許文献1参照)。
【0006】
図5に、従来のマルチコアプラスチック光ファイバを用いた光トランシーバ10の構成を示す。図5に示す光トランシーバ10の基板16上には、遮光板15を挟んで発光素子12および受光素子13が配置されている。発光素子12および受光素子13は、それぞれ端子リード14に繋がれており、透明樹脂17等によって覆われている。これら発光素子12と受光素子13とは、透明樹脂17を介してマルチコア光ファイバ11と光結合されている。
【0007】
発光素子12から発せられる信号光は、マルチコア光ファイバ11の一部コア群に入射してコア内部を伝播する。マルチコア光ファイバ11の別の一部コア群を伝播してきた信号光は、受光素子13によって検出される。発光素子12と受光素子13とは、発光素子12から発せられた信号光が受光素子13に入射しないように配置されるのが望ましい。しかし、発光素子12と受光素子13との間隔は、マルチコア光ファイバ11のコア群の径に依存するため、十分に間隔を置くことができない。そこで、発光素子12と受光素子13との間に、発光素子12から発せられた信号光が受光素子13へ入射するのを防止するための遮光板15が設けられている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−242348号明細書
【非特許文献1】野口祥宏、江原克実、「POFを用いた家庭内光ネットワーク」、高分子、2004年、53巻、6月号、p.402−405
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の遮光板15を用いても、マルチコア光ファイバ11と光トランシーバ10との間で多重反射を繰り返すことにより、発光素子12から発せられた信号光の戻り光が受光素子13に入射するため、ノイズレベルが高くなり、高速伝送が困難でるという問題があった。
【0010】
また、発光素子ドライバ回路でスイッチングされる電流量が大きいのに対して、受光素子13で取り扱う電流量が小さいため、マルチコア光ファイバ11の径は1mmしかなく、発光素子12と受光素子13との間の距離が非常に短いことからグランドバウンスの影響が大きくなり、受信段のパワーバジェットを狭めるなどの問題もあった。
【0011】
本発明の目的は、マルチコア光ファイバ11と光トランシーバ10との多重反射によって発光素子12から受光素子13へ信号光が入射すること無く、かつ送信段から受信段へのグランドバウンスの影響が小さい、ユーザ端末間を一本のマルチコア光ファイバで繋いだ全2重光通信ならびにマルチキャスト光通信を、簡易に、かつ高信頼で行うための光ネットワークおよび光通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光ネットワークにおいて、第1および第2の光送受信モジュールと、各光送受信モジュールとそれぞれ接続された第1および第2の積層光回路と、第1の積層光回路と第2の積層光回路とを接続する、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する1本のマルチコア光ファイバとを備え、第1および第2の積層光回路は、それぞれ第1および第2の光導波路コアを有し、光送受信モジュールと接続される側の第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔の方が、マルチコア光ファイバと接続される側の第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔よりも広く、
第1および第2の積層光回路における第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔が狭い側の端面において、マルチコア光ファイバの第1のコア群と第1および第2の積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、かつマルチコア光ファイバの第2のコア群と第1および第2の積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、第1および第2の積層光回路における第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔が広い側の端面において、第1の光送受信モジュールの発光素子と第1の積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、第1の光送受信モジュールの受光素子と第1の積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、かつ第2の光送受信モジュールの受光素子と第2の積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、第2の光送受信モジュールの発光素子と第2の積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、光ネットワークにおいて、2以上の光送受信モジュールと、各光送受信モジュールとそれぞれ接続された2以上の積層光回路と、各積層光回路とそれぞれ1本ずつ接続された、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する2以上のマルチコア光ファイバと、各マルチコア光ファイバとそれぞれ接続された、一端面が反射面である光導波路から成り、反射面に対向する面内の光導波路クラッドの領域から入射した光を、反射面によって反射して光導波路の光導波路コアに集光し、反射面に対向する面内のコアの領域から出射するミキシング光回路とを備え、各積層光回路は、それぞれ第1および第2の光導波路コアを有し、光送受信モジュールと接続される側の光導波路コアの端面間の間隔の方が、マルチコア光ファイバと接続される側の光導波路コアの端面間の間隔よりも広く、各積層光回路における第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔が狭い側の端面において、各マルチコア光ファイバの一端の第1のコア群と各積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、かつマルチコア光ファイバの一端の第2のコア群と各積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、各積層光回路における第1の光導波路コアの端面と第2の光導波路コアの端面との間隔が広い側の端面において、各光送受信モジュールの発光素子と各積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、各光送受信モジュールの受光素子と各積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、ミキシング光回路の反射面と対向する面において、ミキシング光回路のクラッド部分と各マルチコア光ファイバの第1のコア群とが光結合され、ミキシング光回路のコア部分と各マルチコア光ファイバの第2のコア群とが光結合されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、積層光回路において、分離された2以上のコア群を有するマルチコア光ファイバと、光送受信モジュールとを接続する、2以上の光導波路コアを有する積層光回路であって、マルチコア光ファイバと接続される側の各光導波路コアの端面間の間隔は、2以上のコア群を含む全コア群の直径未満であり、光送受信モジュールと接続される側の各光導波路コアの端面間の間隔の方が、マルチコア光ファイバと接続される側の各光導波路コアの端面間の間隔よりも広いことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、一端面が反射面である光導波路から成るミキシング光回路であって、反射面に対向する面内の光導波路クラッドの領域から入射した光が、反射面によって反射されて光導波路のコアに集光され、反射面に対向する面内の光導波路コアの領域から出射することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のミキシング光回路であって、コアは、四角錐であり、コアの四角錐の底面に相当する面は、反射面に対向する面に位置し、コアの四角錐の頂点は、光導波路の内部に位置することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のミキシング光回路であって、反射面に対向する面は、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する、複数のマルチコア光ファイバが接続される接続面であり、各マルチコア光ファイバは、第1のコア群と接続面内の光導波路クラッドの領域とが光結合され、かつ第2のコア群と接続面内の光導波路コアの領域とが光結合されるようにそれぞれ接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光素子と受光素子とを所定の間隔を置いて配置することを可能にする積層光回路と2以上の信号光を合波するミキシング光回路とを備えたので、高速伝送が可能なユーザ端末間を一本のマルチコア光ファイバで繋いだ全2重光通信およびマルチキャスト光通信を簡易かつ高信頼に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
図1(a)〜(c)に、本発明の一実施形態に係る信号光の分離を行う積層光回路3を示す。図1に示す積層光回路3は、第1の光導波路コア2−aおよび第2の光導波路コア2−bを有する。一方の第1の光導波路コア2−a端面2−a−fと第2の光導波路コア2−b端面2−b−fとの間隔は、他方の第1の光導波路コア2−a端面2−a−dと第2の光導波路コア2−b端面2−b−dとの間隔に対して狭い。そこで、第1の光導波路コア2−a端面2−a−fと第2の光導波路コア2−b端面2−b−fとが位置する側をコア間隔の狭い側とし、第1の光導波路コア2−a端面2−a−dと第2の光導波路コア2−b端面2−b−dとが位置する側をコア間隔の広い側とする。
【0020】
コア間隔の狭い側の第1の光導波路コア2−a端面2−a−fと第2の光導波路コア2−b端面2−b−fとは、1本のマルチコア光ファイバ1内の異なるコア群とそれぞれ光結合できるように配置されている。つまり、第1の光導波路コア2−a端面2−a−fと第2の光導波路コア2−b端面2−b−fとは、第1の光導波路コア2−a端面2−a−fと第2の光導波路コア2−b端面2−b−fとの間隔がマルチコア光ファイバ1のコア群の直径未満であるように配置される。一方、コア間隔の広い側の第1の光導波路コア2−a端面2−a−dと第2の光導波路コア2−b端面2−b−dとは、発光素子7から受光素子8へ信号光が入射すること無く、送信段から受信段へのグランドバウンスの影響が小さくなるように配置される。
【0021】
本発明の実施形態において用いるマルチコア光ファイバ1は、そのコア群がファイバの内部および端面において混線することなく、接続を行う一方の端面から他方の端面に至るまで空間位置座標を維持された構成をとる。そのようなマルチコア光ファイバ1の構造上の性質を用いて双方向送受信を行うことができる。
【0022】
図2に、本発明の一実施形態に係る積層光回路3、3′を用いた1本のマルチコア光ファイバ1による全2重光通信の様子を示す。光送受信モジュール9、9′は、それぞれ積層光回路3、3′を介してマルチコア光ファイバ1と光信号接続されている。発光素子7と光導波路コア2−aのコア間隔の広い側の端面2−a−dとを光結合し、光導波路コア2−aのコア間隔の狭い側の端面2−a−fとマルチコア光ファイバ1の一方の端面における第1のコア群とを光結合する。また、マルチコア光ファイバ1の他方の端面における第1のコア群と光導波路コア2−a′のコア間隔の狭い側の端面2−a′−fとを光結合し、光導波路コア2−a′のコア間隔の広い側の端面2−a′−dと光送受信モジュール9′の受光素子8′とを光結合する。その結果、光送受信モジュール9の発光素子7と光送受信モジュール9′の受光素子8′とは、光導波路コア2−a、マルチコア光ファイバ1の第1のコア群、および光導波路コア2−a′を介して光信号接続される。
【0023】
同様に、光送受信モジュール9′の発光素子7′と光導波路コア2−b′のコア間隔の広い側の端面2−b′−dとを光結合し、光導波路コア2−b′のコア間隔の狭い側の端面2−b′−fとマルチコア光ファイバ1の一方の端面における第2のコア群とを光結合する。また、マルチコア光ファイバ1の他端における第2のコア群と光導波路コア2−bのコア間隔の狭い側の端面2−b−fとを光結合し、光導波路コア2−bのコア間隔の広い側の端面2−b−dと光送受信モジュール9の受光素子8とを光結合する。その結果、光送受信モジュール9′の発光素子7′と光送受信モジュール9の受光素子8とは、光導波路コア2−b′、マルチコア光ファイバ1の第2のコア群、および光導波路コア2−bを介して光信号接続される。
【0024】
実施形態1に係る積層光回路3と光送受信モジュール9を含む光トランシーバを接続した端末間の双方向通信では、光送受信モジュール9のプリント基板側において発光素子7と受光素子8とをそれぞれ所定の距離だけ分離することができる。迷光による受信段でのノイズの分離のみならず、発光素子制御用電流が基板グランドに帰還した際に生じるグランドバウンスによる受信側信号劣化問題も克服できるため、通信速度の高速化を可能にする光回路の製作を行うことができる。また、1芯にて全2重通信が可能になるため、高信頼ネットワークが省スペースで可能である。
【0025】
(実施形態2)
図3(a)、(b)に、本発明の一実施形態に係る波長多重のためのミキシング光回路4を示す。図3に示すミキシング光回路4は、四角錐の光導波路コア4−a、四角柱の光導波路クラッド4−b、および光導波路クラッド4−bから入射した信号光を光導波路コア4−aに集光させる放物面鏡等の反射面4−cとから成る。四角錐の光導波路コア4−aを、反射面4−cと対向する面に四角錐の底面に相当する面が位置し、四角錐の頂点が光導波路クラッド4−b内に位置するように配置する。反射面4−cに対向する面は、マルチコア光ファイバ1−a〜1−dと接続を行う面であるので、本明細書では、この面を接続面と呼ぶこととする。この接続面における光導波路コア4−a領域の対角線は、接続面全領域の対角線に対して45度回転している。
【0026】
ミキシング光回路4には、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有するマルチコア光ファイバ1−a〜1−dが接続される。第1のコア群は光導波路クラッド4−bと光結合され、第2のコア群は光導波路コア4−aと光結合される。光導波路クラッド4−bと光結合されるマルチコア光ファイバ1−a〜1−dの第1のコア群は、それぞれ送信用コア群1−a−T〜1−d−Tである。光導波路コア4−aと光結合されるマルチコア光ファイバ1−a〜1−dの第2のコア群は、それぞれ受信用コア群1−a−R〜1−d−Rである。
【0027】
各マルチコア光ファイバ1−a〜1−dの送信用コア群1−a−T〜1−d−Tから出射される波長λ1〜λ4の信号光は、反射面4−cに対向する接続面内の光導波路クラッド4−bの領域からそれぞれ入射する。入射した各波長λ1〜λ4の信号光は、反射面4−cにおいて反射され、光導波路コア4−aに集光される。集光されて合波された波長λ1〜λ4の混合光は、接続面内の光導波路コア4−aの領域から各マルチコア光ファイバ1−a〜1−dの受信用コア群1−a−R〜1−d−Rに入射する。
【0028】
この実施形態2に係るミキシング光回路4を用いることにより、複数の端末間において容易に同報型光ネットワークを構築することが可能になる。
【0029】
実施形態2では、光導波路コア4−aとして四角錐のコアを用いたが、例えば5角錐、6角錐等を用いることもできる。また、ミキシング光回路4に接続するマルチコア光ファイバの数を増やすことも可能である。
【0030】
(実施形態3)
図4に、本発明の一実施形態に係るミキシング光回路4を用いたユーザ端末間の光ネットワークを示す。各波長λ1〜λ4にアドレス設定されたユーザ端末6−a〜6−dに、積層光回路3と光送受信モジュール9とを内蔵した光トランシーバ5−a〜5−dをそれぞれ接続する。積層光回路3と光送受信モジュール9とは、実施形態1における構成と同じ構成をとる。但し、積層光回路3の受信用の光導波路コア2−bと受光素子8との間には、波長分割多重フィルタまたはチューナブルフィルタ(不図示)が設けられている。この各光トランシーバ5−a〜5−dに、マルチコア光ファイバ1−a〜1−dの一端をそれぞれ接続し、各マルチコア光ファイバ1−a〜1−dの他端をミキシング光回路4に接続する。
【0031】
このとき、光トランシーバ5−aに内蔵された積層光回路3の送信用光導波路コア2−aと受信用光導波路コア2−bとが、マルチコア光ファイバ1−aの一端の第1のコア群1−a−Tと第2のコア群1−a−Rとにそれぞれ光結合されている。すなわち、積層光回路3の送信用光導波路コア2−aとマルチコア光ファイバ1−aの第1のコア群1−a−Tとが光結合され、積層光回路3の受信用光導波路コア2−bとマルチコア光ファイバ1−aの第2のコア群1−a−Rとが光結合されている。また、マルチコア光ファイバ1−aの他端の第1のコア群1−a−Tと第2のコア群1−a−Rとが、それぞれミキシング光回路4の接続面における光導波路クラッド4−bと光導波路コア4−aとにそれぞれ光結合されている。すなわち、マルチコア光ファイバ1−aの第1のコア群1−a−Tとミキシング光回路4の接続面における光導波路クラッド4−bとが光結合され、マルチコア光ファイバ1−aの第2のコア群1−a−Rとミキシング光回路4の接続面における光導波路コア4−aとが光結合されている。
【0032】
同様に、光トランシーバ5−b〜5−dに内蔵された積層光回路3の送信用光導波路コアと受信用光導波路コアとが、マルチコア光ファイバ1−b〜1−dの一端の第1のコア群と第2のコア群とにそれぞれ光結合されている。また、マルチコア光ファイバ1−b〜1−dの他端の第1のコア群1−b−T〜1−d−Tと第2のコア群1−b−R〜1−d−Rとが、ミキシング光回路4の接続面における光導波路クラッド4−bと光導波路コア4−aとにそれぞれ光結合されている。
【0033】
ユーザ端末6−a〜6−dは、各ユーザ端末に割り振られた波長λ1〜λ4の信号光を各光トランシーバ5−a〜5−dの各発光素子7から積層光回路3の光導波路コア2−aを介して各マルチコア光ファイバ1−a〜1−dの第1のコア群1−a−T〜1−d−Tに出射する。出射された波長λ1〜λ4の各信号光は、各マルチコア光ファイバ1−a〜1−dの第1のコア群1−a−T〜1−d−T中を伝播し、ミキシング光回路4の接続面内の光導波路クラッド4−bの領域に入射する。入射した波長λ1〜λ4の各信号光は、反射面4−cにおいて反射されて全信号光が光導波路コア4−aに集光される。光導波路コア4−aに集光されて合波された波長λ1〜λ4の混合光は、反射面4−cに対向する面内の光導波路コア4−aの領域から4本の各マルチコア光ファイバの第2のコア群1−a−R〜1−d−Rに入射する。この各マルチコア光ファイバの第2のコア群1−a−R〜1−d−Rに入射した混合光は、この第2のコア群中を伝播し、積層光回路3の光導波路コア2−b、および波長分割多重フィルタもしくはチューナブル波長フィルタ(不図示)を介して各光トランシーバ5−a〜5−dの受光素子8に入射する。
【0034】
以下でユーザ端末6−aを例に挙げてより詳細に説明する。ユーザ端末6−aは、光トランシーバ5−aに積層光回路3の光導波路コア2−aを介してマルチコア光ファイバ1−aの第1のコア群1−a−Tに入射させる。入射された波長λの信号光は、マルチコア光ファイバ1−aの第1のコア群1−a−T中を伝播し、ミキシング回路4を介して、他の各マルチコア光ファイバ1−b〜1−dの第2のコア群1−b−R〜1−d−Rに分配される。分配された波長λ1の信号光は、各光トランシーバ5−a〜5−dの積層光回路3の光導波路コア2−bを介して、積層光回路3の後段に設けられた波長分割多重フィルタもしくはチューナブル波長フィルタ(不図示)に入射する。同様に、他のユーザ端末6−b〜6−dにより各光トランシーバ5−b〜5−dから出射された波長λ2〜λ4の信号光も、各光トランシーバ5−a〜5−dの積層光回路3の光導波路コア2−bを介して、積層光回路3の後段に設けられた波長分割多重フィルタもしくはチューナブル波長フィルタ(不図示)に入射する。よって、ユーザ端末6−aは、波長分割多重フィルタもしくはチューナブル波長フィルタによって分配信号の弁別を行うことにより、特定波長の受信が可能となる。ユーザ端末6−b〜6−dについても同様である。
【0035】
このように本発明の実施形態に係る光ネットワークを用いることにより、各ユーザ端末間で相互に信号接続を行うことが可能となる。また、使用波長フィルタとして全帯域透過波長フィルタを設けることによって、同時に各波長チャネル信号が受信可能となり、参加型双方向リアルタイムゲームなどの協調型作業が実現可能となる。
【0036】
本発明の実施形態に係る光ネットワークを用いることによって、これまで伝送速度の速い、高信頼の光ネットワークを実現するためには各端末で2本必要であった光ファイバが、1本の光ファイバで実施することが可能となり、省スペース化が可能となった。そのため、マルチコア光ファイバを用いることにより曲げに強く、低コストで、であることから、一般家庭において快適なネットワークを容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る信号光の分離を行う積層光回路の上面図であり、(b)は、(a)のa−a′線切断断面図であり、(c)は、(a)のb−b′線切断断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る積層光回路3を用いた1本のマルチコア光ファイバ1による全2重光通信の様子を示す図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る波長多重のためのミキシング光回路全体を示す図であり、(b)は、(a)のマルチコア光ファイバと接続する面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るミキシング光回路4を用いたユーザ端末ネットワークを示す図である。
【図5】従来のマルチコアプラスチック光ファイバを用いた光トランシーバ10の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1、11 マルチコア光ファイバ
1−a−T〜1−d−T マルチコア光ファイバの第1のコア群
1−a−R〜1−d−R マルチコア光ファイバの第2のコア群
2−a、2−a′ 第1の光導波路コア
2−b、2−b′ 第2の光導波路コア
2−a−f、2−b−f 光導波路コアのファイバ側の端面
2−a−d、2−b−d 光導波路コアの送信デバイス側の端面
2−a′−f、2−b′−f 光導波路コアのファイバ側の端面
2−b′−d、2−a′−d 光導波路コアの送信デバイス側の端面
3、3′ 積層光回路
4 ミキシング光回路
4−a 光導波路コア
4−b 光導波路クラッド
4−c ミキシング光回路反射面
5−a〜5−d、10 光トランシーバ
6−a〜6−d 端末
7、7′、12 発光素子
8、8′、13 受光素子
9、9′ 光送受信モジュール
14 端子リード
15 遮光板
16 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の光送受信モジュールと、
前記各光送受信モジュールとそれぞれ接続された第1および第2の積層光回路と、
前記第1の積層光回路と第2の積層光回路とを接続する、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する1本のマルチコア光ファイバとを備え、
前記第1および第2の積層光回路は、それぞれ第1および第2の光導波路コアを有し、前記光送受信モジュールと接続される側の前記第1の光導波路コアの端面と前記第2の光導波路コアの端面との間隔の方が、前記マルチコア光ファイバと接続される側の前記第1の光導波路コアの端面と前記第2の光導波路コアの端面との間隔よりも広く、
前記第1および第2の積層光回路における前記第1の光導波路コアの端面と前記第2の光導波路コアの端面との間隔が狭い側の端面において、前記マルチコア光ファイバの第1のコア群と前記第1および第2の積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、かつ前記マルチコア光ファイバの第2のコア群と前記第1および第2の積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、
前記第1および第2の積層光回路における前記第1の光導波路コアの端面と前記第2の光導波路コアの端面との間隔が広い側の端面において、前記第1の光送受信モジュールの発光素子と前記第1の積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、前記第1の光送受信モジュールの受光素子と前記第1の積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、かつ前記第2の光送受信モジュールの受光素子と前記第2の積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、前記第2の光送受信モジュールの発光素子と前記第2の積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合されていることを特徴とする光ネットワーク。
【請求項2】
2以上の光送受信モジュールと、
前記各光送受信モジュールとそれぞれ接続された2以上の積層光回路と、
前記各積層光回路とそれぞれ1本ずつ接続された、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する2以上のマルチコア光ファイバと、
前記各マルチコア光ファイバとそれぞれ接続された、一端面が反射面である光導波路から成り、前記反射面に対向する面内の光導波路クラッドの領域から入射した光を、前記反射面によって反射して前記光導波路の光導波路コアに集光し、前記反射面に対向する面内のコアの領域から出射するミキシング光回路とを備え、
前記各積層光回路は、それぞれ第1および第2の光導波路コアを有し、前記光送受信モジュールと接続される側の前記光導波路コアの端面間の間隔の方が、前記マルチコア光ファイバと接続される側の前記光導波路コアの端面間の間隔よりも広く、
前記各積層光回路における前記第1の光導波路コアの端面と前記第2の光導波路コアの端面との間隔が狭い側の端面において、前記各マルチコア光ファイバの一端の第1のコア群と前記各積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、かつ前記マルチコア光ファイバの一端の第2のコア群と前記各積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、
前記各積層光回路における前記第1の光導波路コアの端面と前記第2の光導波路コアの端面との間隔が広い側の端面において、前記各光送受信モジュールの発光素子と前記各積層光回路の第1の光導波路コアとが光結合され、前記各光送受信モジュールの受光素子と前記各積層光回路の第2の光導波路コアとが光結合され、
前記ミキシング光回路の反射面と対向する面において、前記ミキシング光回路のクラッド部分と前記各マルチコア光ファイバの第1のコア群とが光結合され、前記ミキシング光回路のコア部分と前記各マルチコア光ファイバの第2のコア群とが光結合されることを特徴とする光ネットワーク。
【請求項3】
分離された2以上のコア群を有するマルチコア光ファイバと、光送受信モジュールとを接続する、2以上の光導波路コアを有する積層光回路であって、
前記マルチコア光ファイバと接続される側の前記各光導波路コアの端面間の間隔は、前記2以上のコア群を含む全コア群の直径未満であり、
前記光送受信モジュールと接続される側の前記各光導波路コアの端面間の間隔の方が、前記マルチコア光ファイバと接続される側の前記各光導波路コアの端面間の間隔よりも広いことを特徴とする積層光回路。
【請求項4】
一端面が反射面である光導波路から成るミキシング光回路であって、
前記反射面に対向する面内の光導波路クラッドの領域から入射した光が、前記反射面によって反射されて前記光導波路のコアに集光され、前記反射面に対向する面内の光導波路コアの領域から出射することを特徴とするミキシング光回路。
【請求項5】
請求項4に記載のミキシング光回路であって、前記コアは、四角錐であり、前記コアの四角錐の底面に相当する面は、前記反射面に対向する面に位置し、前記コアの四角錐の頂点は、前記光導波路の内部に位置することを特徴とするミキシング光回路。
【請求項6】
請求項4または5に記載のミキシング光回路であって、前記反射面に対向する面は、分離された第1のコア群と第2のコア群とを有する、複数のマルチコア光ファイバが接続される接続面であり、前記各マルチコア光ファイバは、前記第1のコア群と前記接続面内の光導波路クラッドの領域とが光結合され、かつ前記第2のコア群と前記接続面内の光導波路コアの領域とが光結合されるようにそれぞれ接続されることを特徴とするミキシング光回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−86212(P2007−86212A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272676(P2005−272676)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】