説明

光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造

【課題】 少なくとも一方のクラッドの外形が非円形の光ファイバ同士を端面接続する場合に、コアの軸ずれを抑制することができる光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造を提供する。
【解決手段】 一方の光ファイバ30のクラッド32の外形が非円形であり、他方の光ファイバ50のクラッド55の外形が円形である、一組の光ファイバ30、50を準備する準備ステップと、一方の光ファイバ30の一端35の近傍におけるクラッド32の外形を非円形から円形に近づけるように成形する成形ステップと、一方の光ファイバ30と、他方を側面観察して、一方の光ファイバ30の一端35の近傍におけるコア31と、他方の光ファイバ50の一端55の近傍におけるコア51とが直線状並ぶように調心する調心ステップと、一方の光ファイバ30の一端35と、他方の光ファイバ50の一端55とを突き合わせて融着する融着ステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高い小さなビームスポットが得られ、更に、非接触加工が可能であることから、レーザ加工分野、医療分野等、様々な分野において用いられている。ファイバレーザ装置では、クラッドに被覆されたコアに光を増幅させるための活性元素が添加された増幅用光ファイバが用いられている。しかし、この増幅用光ファイバにおいては、励起光の一部がクラッドのみを伝播して活性元素に吸収されずに、光の増幅に寄与しないスキューモードが生じることが知られている。このようなスキューモードを抑制するための技術の一つとして、増幅用光ファイバの断面におけるクラッドの外形をD型や多角形といった非円形にすることが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、上述のように断面におけるクラッドの外形が多角形にされた増幅用光ファイバが記載されている。この特許文献1には、クラッドの外形が多角形にされた増幅用光ファイバと他の光ファイバとを接続する場合において、接続される両方の光ファイバを側面観察しながら、それぞれの光ファイバのコア同士を突き合わせるが、増幅用光ファイバのクラッドの外形の如何によっては、コアの位置を正確に視認できないことがある旨記載されている。そして、増幅用光ファイバのクラッドの外形が略正方形であれば、側面観察によるコアの位置を正確に視認できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−229617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、増幅用光ファイバのクラッドの外形を略正方形にする場合であっても、増幅用光ファイバを軸中心に回転させると、クラッドの側面方向からコアに至る光の屈折に変化が生じ、側面観察でコアの位置を正確に把握することが困難という問題がある。従って、側面観察を行い、少なくとも一方のクラッドの外形が非円形の光ファイバ同士を端面接続すると、コアの軸ずれが生じ易いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、少なくとも一方のクラッドの外形が非円形の光ファイバ同士を端面接続する場合に、コアの軸ずれを抑制することができる光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ファイバの接続方法は、一方の光ファイバのクラッドの外形が非円形であり、他方の光ファイバのクラッドの外形が円形である、一組の光ファイバを準備する準備ステップと、前記一方の光ファイバの一端の近傍における前記クラッドの外形を非円形から円形に近づけるように成形する成形ステップと、前記一方の光ファイバの前記クラッドの外形が成形された部分と、他方の光ファイバの一端の近傍を側面観察して、前記一方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアと、前記他方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアとが直線状並ぶように調心する調心ステップと、前記一方の光ファイバの前記一端と、前記他方の光ファイバの前記一端とを突き合わせて融着する融着ステップと、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような光ファイバの接続方法によれば、クラッドの外形が非円形である一方の光ファイバの一端の近傍において、クラッドの外形を円形に近づけるように成形し、その後、一組の光ファイバを側面観察により調心する。従って、側面観察するときに、光ファイバが軸中心に回転しても、クラッドの側面方向からコアに至る光の屈折に変化が生じることを抑制することができる。このため側面観察するときに、コアの軸ずれを抑制することができ、一方の光ファイバの一端と他方の光ファイバの一端とを、軸ずれが抑制された状態で接続することができる。
【0009】
また、本発明の光ファイバの接続方法は、光ファイバのクラッドの外形が非円形である一組の光ファイバを準備する準備ステップと、それぞれの前記光ファイバの一端の近傍におけるクラッドの外形を非円形から円形に近づけるように成形する成形ステップと、それぞれの前記光ファイバの前記クラッドの外形が成形された部分を側面観察して、一方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアと、他方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアとが直線状並ぶように調心する調心ステップと、それぞれの前記光ファイバの前記一端同士を突き合わせて融着する融着ステップと、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
このような光ファイバの接続方法によれば、クラッドの外形が非円形である一組の光ファイバのそれぞれの一端の近傍において、クラッドの外形をそれぞれ円形に近づけるように成形し、その後、一組の光ファイバを側面観察により調心する。従って、側面観察するときに、それぞれの光ファイバが軸中心に回転しても、クラッドの側面方向からコアに至る光の屈折に変化が生じることが抑制できる。このため側面観察するときに、コアの軸ずれを抑制することができ、それぞれの光ファイバの一端同士を軸ずれを抑制して接続することができる。
【0011】
また、上記光ファイバの接続方法における前記成形ステップにおいて、前記クラッドの外形を前記一端から前記光ファイバの長さ方向に100μm以上成形することが好ましい。
【0012】
クラッド外形を一端から光ファイバの長さ方向に100μm以上成形することで、調心ステップにおいて、複数点で側面観察することが容易となる。
【0013】
また、上記光ファイバの接続方法において、前記成形ステップにおける成形を放電加熱により行うことが好ましい。
【0014】
一般的に放電加熱は、光ファイバを接続する融着接続装置をそのまま使用することができるので、新たに成形のための装置を用意する手間を省くことができる。
【0015】
さらに、上記光ファイバの接続方法において、前記放電加熱が間欠放電により行われることが好ましい。
【0016】
このように間欠放電による放電加熱を行うことにより、コアに熱を伝えづらくして、コアの温度上昇を抑えることができ、熱によるコアの変形を抑制して、クラッドの成形を行うことができる。従って、接続後において、コアを伝播する光の接続損失を抑制することができる。
【0017】
さらに、上記光ファイバの接続方法において、前記間欠放電における非放電時間が放電時間よりも長いことがより好ましい。
【0018】
このような間欠放電とすることにより、よりコアに熱を伝えづらくして、コアの温度上昇を抑えることができる。
【0019】
さらに、上記光ファイバの接続方法において、前記非放電時間は、前記放電時間の4倍以上であることがさらに好ましい。
【0020】
このような間欠放電とすることにより、さらにコアに熱を伝えづらくして、コアの温度上昇を抑えることができる。
【0021】
また、本発明の光ファイバの接続構造は、一組の光ファイバが端面接続されている光ファイバの接続構造であって、少なくとも一方の光ファイバのクラッドの外形が非円形であり、前記クラッドの外形が非円形の光ファイバは、接続部の近傍におけるクラッドの外形が、他の部分における前記クラッドの外形よりも、円形に近づくように成形されていることを特徴とするものである。
【0022】
このような光ファイバの接続構造により、接続部におけるコアの軸ずれが抑制でき、コアを伝播する光の接続損失を抑制することができる。また、加熱により接続した部分はガラスに加わった熱歪によりガラスの強度が低下して他の部分より破壊し易くなっていることが一般的に知られている。クラッドの外形が成形されておらず、クラッドの外形が非円径の光ファイバの場合、接続部や接続部の近傍に応力が加わったときに、接続部の近傍におけるクラッドの外周において均等に応力がかからず、一部に応力集中が起こり、その部分から光ファイバの破断が発生し易い。これに対して本発明の光ファイバの接続構造によれば、接続部の近傍におけるクラッドの外形が円形に近づくように成形されているため、接続部や接続部の近傍に応力が加わる場合においても、接続部の近傍におけるクラッドの外径が成形されていない場合に比べて、この応力を外周全体にほぼ均等に分散することができ、破断することを抑制することができる。例えば、クラッドの外形が多角形ファイバの場合、接続部に応力が加わった場合に、接続部の近傍におけるクラッドの外周面の角になっている部分に応力集中が起こるため、その部分からファイバ破断が発生し易い。これに対して本発明の光ファイバの接続構造によれば、接続部の近傍におけるクラッドの外形が円形に近づくように成形されているため、接続部の近傍において、クラッドの外周面の角の部分が無くなっている。そのため接続部に応力が加わる場合においても、接続部におけるクラッドの外形が成形されていない場合に比べて、この応力を外周全体にほぼ均等に分散することができ、破断することを抑制することができる。
【0023】
さらに、上記光ファイバの接続構造において前記光ファイバの外形が非円形の光ファイバは、前記クラッドが接続部から光ファイバの長さ方向に100μm以上成形とされていることが好ましい。
【0024】
このような光ファイバの接続構造にすることで、よりコアの軸ずれによる光の接続損失を抑制することができる。また、先に述べた熱歪が顕著に発生する領域は放電の熱が達すう領域で通常の融着接続装置ではせいぜい接続点の近傍100μm以内である。従って、100μm以上の長さを成形することで、接続点の近傍100μm以内では多角形や非円形の角になっている部分が無いために、接続点における応力が集中する部分が無く、接続点における破断をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、コアの軸ずれを抑制することができる光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバの接続構造を備えるファイバレーザ装置を示す図である。
【図2】図1の増幅用光ファイバの長さ方向に垂直な断面における構造の様子を示す図である。
【図3】図1のデリバリファイバの長さ方向に垂直な断面における構造の様子を示す図である。
【図4】図1の増幅用光ファイバとデリバリファイバとが接続されている様子を示す図である。
【図5】図4の増幅用光ファイバとデリバリファイバとの接続方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】剥離ステップ後の増幅用光ファイバの様子を示す図である。
【図7】成形ステップ後の増幅用光ファイバの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの接続構造を備えるファイバレーザ装置を示す図である。図1に示すように、レーザ装置1は、ファイバレーザ装置であり、種光を出力する種光源10と、励起光を出力する励起光源20と、種光と励起光とが入力する増幅用光ファイバ(一方の光ファイバ)30と、種光源10及び励起光源20と増幅用光ファイバ30とを接続するコンバイナ40と、増幅用光ファイバ30に一端が接続されているデリバリファイバ(他方の光ファイバ)50と、を主な構成として備える。
【0029】
種光源10は、例えば、レーザダイオードから成るレーザ光源や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源10から出力される種光は、特に制限されるものではないが、例えば、波長が1070nmのレーザ光とされる。また、種光源10は、コア、及び、コアを被覆するクラッドから構成される種光伝播用ファイバ15に接続されており、種光源10から出力される種光は、種光伝播用ファイバ15のコアを伝播する。種光伝播用ファイバ15としては、例えば、シングルモードファイバが挙げられ、この場合、種光は種光伝播用ファイバ15をシングルモード光として伝播する。
【0030】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成され、上述のように種光の波長が1070nmの場合、例えば、波長が915nmの励起光を出力する。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は、励起光伝播用ファイバ22に接続されており、レーザダイオード21から出力される励起光は、励起光伝播用ファイバ22を伝播する。励起光伝播用ファイバ22としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、励起光は励起光伝播用ファイバ22をマルチモード光として伝播する。
【0031】
図2は、増幅用光ファイバ30の長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ30は、コア31と、コア31を被覆するクラッド32と、クラッド32を被覆する樹脂クラッド33と、樹脂クラッド33を被覆する被覆層34とから構成される。また、増幅用光ファイバ30の断面において、コア31の外形は、円形とされ、クラッド32の外形は、非円形とされている。また、樹脂クラッド33の外形、及び、被覆層34外形は、円形とされている。なお、本実施形態において、クラッド32の断面における外形は7角形とされている。
【0032】
また、クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低く、樹脂クラッド33の屈折率はクラッド32の屈折率よりもさらに低くされている。このような、コア31を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素、及び、励起光源20から出力される励起光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、クラッド32を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。また、樹脂クラッド33を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられ、被覆層34を構成する材料としては、例えば、樹脂クラッド33を構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0033】
コンバイナ40は、種光伝播用ファイバ15及びそれぞれの励起光伝播用ファイバ22と、増幅用光ファイバ30とを接続している。具体的には、コンバイナ40において、種光伝播用ファイバ15のコアが、増幅用光ファイバ30のコア31に端面接続されている。さらにコンバイナ40において、それぞれの励起光伝播用ファイバ22のコアが、クラッド32に端面接続されている。従って、種光源10から出力される種光は、増幅用光ファイバ30のコア31に入力され、励起光源20から出力される励起光は、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入力される。
【0034】
図3は、図1のデリバリファイバ50の長さ方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。図3に示すように、デリバリファイバ50は、コア51と、コア51を被覆するクラッド52と、クラッド52を被覆する樹脂クラッド53と、樹脂クラッド53を被覆する被覆層54とから構成される。また、デリバリファイバ50の断面において、コア51、クラッド52、樹脂クラッド53、被覆層54の外形は、全て円形とされている。
【0035】
クラッド52の屈折率はコア51の屈折率よりも低く、樹脂クラッド53の屈折率はクラッド52の屈折率よりもさらに低くされている。このような、コア51を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素が添加された石英が挙げられ、クラッド52を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。また、樹脂クラッド53を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられ、被覆層54を構成する材料としては、例えば、樹脂クラッド53を構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0036】
図4は、図1の増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50が接続されている様子を示す図である。図4に示すように、増幅用光ファイバ30の一端35と、デリバリファイバ50の一端55とが、接続部60で端面接続されている。具体的には、増幅用光ファイバ30の樹脂クラッド33及び被覆層34が、一端35から所定の長さ剥離されている。そして、この増幅用光ファイバ30の一端35の近傍においては、増幅用光ファイバ30の長さ方向に垂直な断面におけるクラッド32の外形が、端部35から長さLにわたって略円形に成形されている。また、デリバリファイバ50の樹脂クラッド53及び被覆層54が、一端55から所定の長さ剥離されている。そして、増幅用光ファイバ30の一端35の近傍におけるコア31と、デリバリファイバ50の一端55の近傍におけるコア51とが直線状に並べられた状態で、増幅用光ファイバ30の一端35とデリバリファイバ50の一端55とが端面接続されている。
【0037】
なお、増幅用光ファイバ30のクラッド32の外形が略円形に成形されている長さLは、100μm以上であることが、コア31とコア51との軸ずれが生じることを抑制する観点から好ましい。
【0038】
次に図4の増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50との接続方法について説明する。
【0039】
図5は、図4の増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50との接続方法の手順を示すフローチャートである。図5に示すように、増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50との接続方法は、増幅用光ファイバ30及びデリバリファイバ50を準備する準備ステップS1と、増幅用光ファイバ30の一端35から所定の長さ、及び、デリバリファイバ50の一端55から所定の長さにおける樹脂クラッド33、53及び被覆層34、54を剥離する剥離ステップS2と、増幅用光ファイバ30の一端35の近傍におけるクラッド32の外形を円形に近づけるように成形する成形ステップS3と、側面観察により増幅用光ファイバ30の一端35の近傍におけるコア31と、デリバリファイバ50の一端55の近傍におけるコア51とが直線状並ぶように調心する調心ステップS4と、増幅用光ファイバ30の一端35と、デリバリファイバ50の一端55とを突き合わせて融着する融着ステップS5とを備える。
【0040】
(準備ステップS1)
まず、増幅用光ファイバ30及びデリバリファイバ50を準備する。こうして、一方の光ファイバのクラッドの外形が非円形であり、他方の光ファイバのクラッドの外形が円形である、一組の光ファイバが準備される。
【0041】
(剥離ステップS2)
次に、準備した増幅用光ファイバ30の樹脂クラッド33及び被覆層34を一端35から所定の長さ剥離して、クラッド32を露出させる。このとき、クラッド33が露出されている部分が、図4に示すクラッド32の外形が成形される長さLよりも長い距離となるように剥離する。こうして、図6に示すように増幅用光ファイバ30は、一端35から所定の長さクラッド32が露出された状態となる。同様に、デリバリファイバ50の樹脂クラッド53及び被覆層54を一端55から所定の長さ剥離して、クラッド52を露出させる。
【0042】
(成形ステップS3)
次に、増幅用光ファイバ30の一端35の近傍において、増幅用光ファイバ30の長さ方向に垂直な断面におけるクラッド32の外形が円形に近づくように、クラッド32を成形する。なお、本実施形態においては、クラッド32の外形が略円形となるまで成形している。この成形は、放電、火炎バーナー、レーザ等による加熱成形や、薬品によるエッチング成形や、研磨による機械的成形等を用いることができる。
【0043】
加熱成形をする場合は、加熱によって溶融したクラッド32の表面張力により、クラッド32の断面における外形を円形に近づけるように成形する。放電加熱による加熱成形を行う場合においては、間欠放電により加熱することが好ましい。間欠放電であれば、増幅用光ファイバ30のコア31に熱を伝えづらくすることができ、熱によるコア31の変形を抑制して、クラッド32の成形を行うことができる。従って、接続後において、コア31を伝播する光の接続損失を抑制することができる。さらに、間欠放電による加熱でクラッド32を成形する場合には、非放電時間が放電時間よりも長いことが、よりコアに熱を伝えづらくすることができるため、より好ましい。またさらに、間欠放電における非放電時間は、放電時間の4倍以上であることが、さらにコアに熱を伝えづらくすることができるため、さらに好ましい。また、火炎バーナーによる加熱成形を行う場合においては、例えば、酸水素バーナーを用いることができる。また、レーザによる加熱成形を行う場合においては、例えば、COレーザを用いることができる。
【0044】
また、エッチング成形や機械的成形をする場合は、クラッド32の断面における外形の頂点をエッチングしたり研磨等することにより、クラッド32の断面における外形を円形に近づけるように成形する。薬品によるエッチング成形を行う場合においては、例えば、フッ酸(HF)を用いてエッチングすることができる。機械的成形を行う場合においては、例えば、ガラス研磨剤を用いて研磨することができる。
【0045】
こうして、図7に示ように増幅用光ファイバ30は、一端35の近傍において、クラッド32の断面の外形が略円形に成形された状態となる。
【0046】
なお、クラッド32の断面における外形を成形する長さLは、増幅用光ファイバ30の一端35から100μm以上とすることが好ましい。このような長さとすることで、調心ステップS4において、増幅用光ファイバ30のコア31とデリバリファイバ50のコア51とが一直線上に並ぶように調心し易くなる。
【0047】
(調心ステップS4)
次に、増幅用光ファイバ30の一端35と、デリバリファイバ50の一端55とを、向かい合わせにして、増幅用光ファイバ30の一端35の近傍におけるコア31と、デリバリファイバ50の一端55の近傍におけるコア51とが直線状並ぶように調心する。このとき増幅用光ファイバ30のコア31及びデリバリファイバ50のコア51を側面観察して調心する。なお、増幅用光ファイバ30の側面観察においては、クラッド32の外形が成形されている部分で観察を行う。また、側面観察においては、複数点観察を行うことが好ましい。このとき、クラッド32の外形が成形された長さLが、増幅用光ファイバ30の一端35から100μm以上とされている場合、複数点の観察が容易となるため好ましく、上述のように増幅用光ファイバ30のコア31とデリバリファイバ50のコア51とが一直線上に並ぶように調心し易くなる。
【0048】
(融着ステップS5)
次に、上述のように増幅用光ファイバ30の一端35とデリバリファイバ50の一端55とを突き合わせて融着し、端面接続する。融着においては、放電による融着、火炎バーナーによる融着、レーザによる融着等を行うことができる。放電加熱による融着を行う場合においては、連続放電、間欠放電により融着することができる。また、火炎バーナーによる融着を行う場合においては、例えば、酸水素バーナーを用いることができる。また、レーザによる加熱成形を行う場合においては、例えば、COレーザを用いることができる。こうして、増幅用光ファイバ30の一端35とデリバリファイバ50の一端55とを端面接続することで、増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50とは、図4に示すように接続される。
【0049】
以上、本実施形態の光ファイバの接続方法によれば、クラッド32の外形が非円形である増幅用光ファイバ30の一端35の近傍において、クラッド32の外形を円形に近づけるように成形し、その後、増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50を側面観察により調心する。従って、側面観察するときに、増幅用光ファイバ30が軸中心に回転しても、クラッド32の側面方向からコアに至る光の屈折に変化が生じることが抑制できる。このため、側面観察するときにコア31とコア51との軸ずれを抑制することができ、増幅用光ファイバ30の一端35とデリバリファイバの一端55とを、軸ずれが抑制された状態で接続することができる。
【0050】
また、本実施形態の光ファイバの接続構造によれば、接続部におけるコア31とコア51との軸ずれが抑制できるので、コア31からコア51に伝播する光の接続損失を抑制することができる。また、接続部におけるクラッド32の外形が円形に近づくように成形されているため、接続部に応力が加わる場合においても、この応力を分散することができ、接続部における増幅用光ファイバ30とデリバリファイバ50との破断を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、一方の光ファイバとしての増幅用光ファイバ30の一端35の近傍において、クラッド32の断面における外形が略円形となるまで、クラッド32を成形したが、本発明はこれに限らず、クラッド32の断面における外形が円形に近づくように成形すれば良い。この場合においても、クラッド32を成形しない場合と比べて、調心ステップS4において、増幅用光ファイバ30のコア31とデリバリファイバ50のコア51とのコアの軸ずれを抑制することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、増幅用光ファイバ30のクラッド32の長さ方向に垂直な断面における外形が7角形の場合について説明したが、クラッド32の外径は、他の多角形でも良く、或いは、D型や楕円形等の非円形の形状であっても良い。
【0054】
また、上記実施形態においては、一方の光ファイバとしての増幅用光ファイバ30のクラッド32の外形が非円形とされ、他方の光ファイバとしてのデリバリファイバ50のクラッド52の外形が円形とされたが、本発明はこれに限らず、デリバリファイバ50のクラッド52の外形が非円形とされて、クラッドの外形が非円形の一組の光ファイバの接続構造や接続方法にも適用することができる。この場合においては、準備ステップS1において、それぞれクラッドの外形が非円形の増幅用光ファイバ30及びデリバリファイバ50を準備する。次に、剥離ステップS2において、増幅用光ファイバ30の一端35及びデリバリファイバ50の一端55からそれぞれ所定の長さ樹脂クラッド33、53及び被覆層34、54を剥離する。そして、成形ステップS3において、上記実施形態と同様に増幅用光ファイバ30のクラッド32を成形すると共に、デリバリファイバ50の一端55の近傍におけるクラッド52の外形が円形に近づくようにクラッド52を成形する。クラッド52の成形は、増幅用光ファイバ30の一端35の近傍におけるクラッド32の成形と同様に行えば良い。また、調心ステップS4において、増幅用光ファイバ30の観察を上記実施形態と同様に行い、デリバリファイバ50の側面観察を行う際、クラッド52の外形が成形されている部分で観察を行う。従って、デリバリファイバ50においても、クラッド52の断面における外形を成形する長さが、デリバリファイバ50の一端55から100μm以上とされていれば、複数点の観察が容易となるため好ましく、増幅用光ファイバ30のコア31とデリバリファイバ50のコア51とが一直線上に並ぶように調心し易くなる。次に、上記実施形態と同様にして、融着ステップS5を行う。
【0055】
また例えば、上記実施形態においては、一方の光ファイバとしての増幅用光ファイバ30と、他方の光ファイバとしてのデリバリファイバ50との接続構造や接続方法について説明したが、本発明はこれに限らず、一方の光ファイバ、及び、他方の光ファイバとして、他の種類の光ファイバを用いて、それぞれの光ファイバ同士を接続する場合の接続構造や接続方法にも適用することができる。
【0056】
なお、準備ステップS1において、準備された光ファイバの一端付近において、既に樹脂クラッド及び被覆層が剥離されている場合には、剥離ステップS2は不要である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0058】
(実施例1)
コアと、コアを被覆するクラッドと、クラッドを被覆する樹脂クラッドと、樹脂クラッドを被覆する被覆層とを有するダブルクラッドファイバ、及び、コアと、コアを被覆するクラッドと、クラッドを被覆する被覆層を有するシングルモードファイバを準備した。このダブルクラッドファイバは、コアの直径が7μmであり、ファイバの長さ方向に垂直な断面におけるクラッドの外形が7角形で、クラッドの外径の平均が120μmのものとした。また、シングルモードファイバは、コアの直径が8μmであり、ファイバの長さ方向に垂直な断面におけるクラッドの外形が円形であり、クラッドの外径が125μmのものとした。
【0059】
次にダブルクラッドファイバの一端から10mmまで樹脂クラッド及び被覆層を剥離した。また、シングルモードファイバの一端から、10mmまで被覆層を剥離した。
【0060】
次にダブルクラッドファイバとシングルモードファイバと融着接続装置に配置した。融着接続装置は、株式会社フジクラ製のFMS-40Fを用いた。
【0061】
次にダブルクラッドファイバの一端において、放電電流で12mAで、放電時間が50μ秒の放電加熱を行った。そして、一端放電を停止し、ダブルクラッドファイバを放電電極に対して100μm動かして、さらに、ダブルクラッドファイバの一端から長さ方向に100μm内側において同じパワーで同じ放電時間の放電加熱を行った。こうして、ダブルクラッドファイバのクラッドの外形が一端から100μmにわたり7角形から円形に近づくように成形した。
【0062】
次にダブルクラッドファイバにおけるクラッドが成形された部分、及び、シングルモードファイバの被覆層が剥離された部分を側面観察して調心した。そして、ダブルクラッドファイバの一端とシングルモードファイバの一端とを突き合わせて融着した。
【0063】
(実施例2〜5)
次にダブルクラッドファイバの一端における放電加熱と、一端から長さ方向に100μm内側における放電加熱を表1の放電時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとを接続した。
【0064】
(比較例1) ダブルクラッドファイバの放電加熱による成形を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとを接続した。
【0065】
次に、実施例1〜5、及び、比較例1におけるダブルクラッドファイバのコアからシングルモードファイバのコアに信号光を伝播させた。このときの信号光の波長は1070μmとした。このときダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとの接続部における信号光の接続損失は、表1に示す値となった。
【表1】

【0066】
表1に示す通り、比較例1に比べて、実施例1〜5は、接続損失が少ない結果となった。これは、ダブルクラッドファイバのクラッドを円形に近づけるように成形した結果、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとの調心において、それぞれの光ファイバのコアの軸ずれが抑制され、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとが、軸ずれが抑制された状態で接続されたためと考えられる。そして、実施例2、3、4は、接続損失が1dBより小さくなっており、クラッドの外径がより円形に近く成形されたと考えられる。従って、クラッドの外形が7角形で、クラッドの外径の平均が120μmの光ファイバについては、放電時間が100〜300m秒であることが、より好ましいことが分かった。
【0067】
(実施例6〜10)
ダブルクラッドファイバの一端における放電、及び、一端から長さ方向に100μm内側における放電を間欠放電にして、放電時間及び非放電時間を表2に示す時間とし、放電時間と非放電時間との比率を表2に示す比率として、放電の繰り返しを10回としたこと以外は、実施例1と同様にして、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとを接続した。
【0068】
次に、実施例6〜10におけるダブルクラッドファイバのコアからシングルモードファイバのコアに信号光を伝播させた。このときの信号光の波長は1070μmとした。このときダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとの接続部における信号光の接続損失は、表2に示す値となった。
【表2】

【0069】
(実施例11〜15)
クラッドの外形が7角形であり、クラッドの外径の平均が400μmであるダブルクラッドファイバを用いて、ダブルクラッドファイバの一端における放電、及び、一端から長さ方向に100μm内側における放電を間欠放電にして、放電時間及び非放電時間を表3に示す時間とし、放電時間と非放電時間との比率を表3に示す比率として、放電の繰り返しを10回としたこと以外は、実施例1と同様にして、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとを接続した。
【0070】
次に、実施例11〜15におけるダブルクラッドファイバのコアからシングルモードファイバのコアに信号光を伝播させた。このときの信号光の波長は1070μmとした。このときダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとの接続部における信号光の接続損失は、表3に示す値となった。
【表3】

【0071】
表2、表3に示す結果より、実施例8、9、10、及び、実施例13、14、15は、接続損失が1dBより小さくなり、特に実施例9、10及び実施例14、15は、接続損失が0.2dBより小さくなった。従って、間欠放電において、非放電時間が放電時間の4倍以上であれば、クラッドの外形を成形する光ファイバのクラッドの外径に関わらず、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとの軸ずれが、より抑制された状態で接続されるため良好であると考えられ、非放電時間が放電時間の6倍以上であれば、ダブルクラッドファイバとシングルモードファイバとの軸ずれが、更に抑制された状態で接続されるため更に良好であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、コアの軸ずれを抑制することができる光ファイバの接続方法、及び、光ファイバの接続構造が提供される。
【符号の説明】
【0073】
1・・・レーザ装置
10・・・種光源
15・・・種光伝播用ファイバ
20・・・励起光源
21・・・レーザダイオード
22・・・励起光伝播用ファイバ
30・・・増幅用光ファイバ
31・・・コア
32・・・クラッド
33・・・樹脂クラッド
34・・・被覆層
40・・・コンバイナ
50・・・デリバリファイバ
51・・・コア
52・・・クラッド
53・・・樹脂クラッド
54・・・被覆層
60・・・接続部
S1・・・準備ステップ
S2・・・剥離ステップ
S3・・・成形ステップ
S4・・・調心ステップ
S5・・・融着ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の光ファイバのクラッドの外形が非円形であり、他方の光ファイバのクラッドの外形が円形である、一組の光ファイバを準備する準備ステップと、
前記一方の光ファイバの一端の近傍における前記クラッドの外形を非円形から円形に近づけるように成形する成形ステップと、
前記一方の光ファイバの前記クラッドの外形が成形された部分と、他方の光ファイバの一端の近傍を側面観察して、前記一方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアと、前記他方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアとが直線状並ぶように調心する調心ステップと、
前記一方の光ファイバの前記一端と、前記他方の光ファイバの前記一端とを突き合わせて融着する融着ステップと、
を備えることを特徴とする光ファイバの接続方法。
【請求項2】
光ファイバのクラッドの外形が非円形である一組の光ファイバを準備する準備ステップと、
それぞれの前記光ファイバの一端の近傍におけるクラッドの外形を非円形から円形に近づけるように成形する成形ステップと、
それぞれの前記光ファイバの前記クラッドの外形が成形された部分を側面観察して、一方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアと、他方の光ファイバの前記一端の近傍におけるコアとが直線状並ぶように調心する調心ステップと、
それぞれの前記光ファイバの前記一端同士を突き合わせて融着する融着ステップと、
を備えることを特徴とする光ファイバの接続方法。
【請求項3】
前記成形ステップにおいて、前記クラッドの外形を前記一端から前記光ファイバの長さ方向に100μm以上成形することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの接続方法。
【請求項4】
前記成形ステップにおける成形を放電加熱により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバの接続方法。
【請求項5】
前記放電加熱が間欠放電により行われることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバの接続方法。
【請求項6】
前記間欠放電における非放電時間が放電時間よりも長いことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバの接続方法。
【請求項7】
前記非放電時間は、前記放電時間の4倍以上であることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバの接続方法。
【請求項8】
一組の光ファイバが端面接続されている光ファイバの接続構造であって、
少なくとも一方の光ファイバのクラッドの外形が非円形であり、
前記クラッドの外形が非円形の光ファイバは、接続部の近傍におけるクラッドの外形が、他の部分における前記クラッドの外形よりも、円形に近づくように成形されていることを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項9】
前記光ファイバの外形が非円形の光ファイバは、前記クラッドが接続部から光ファイバの長さ方向に100μm以上成形とされていることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−203544(P2011−203544A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71453(P2010−71453)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】