説明

光ファイバケーブル

【課題】光ファイバケーブルのケーブルコアを傷付けることなく、シースを容易に剥いで除去できるようにして、ケーブルの口出しや中間後分岐の作業性の改善を図る。
【解決手段】光ファイバを収納したケーブルコア3と、このケーブルコア3の外周に被覆されたケーブルシース5を有する光ファイバケーブル1において、少なくとも1条のリップコード7が前記ケーブルシース5内においてケーブルシース5の長手方向に延びて埋設され、このリップコード7は前記ケーブルシース5の厚さ方向に向けて前記リップコード7の長手方向へ間欠的にループ状余長部7Bが形成されて前記ケーブルシース5の内部に埋設され、かつ、前記各ループ状余長部7Bの一部が前記ケーブルシース5の外表面に露出、あるいは前記ケーブルシース5の外表面の近傍に突出するように配置されて構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバケーブルに関し、特にケーブルの口出しや中間後分岐の作業性の改善を図るものであり、ケーブルコアを傷付けることなく、ケーブルシースを容易に剥いで除去できる光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分岐性に優れた光ファイバケーブル101としては、図7に示されているように、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などの光ファイバ、あるいはルースチューブなどの他の形態の光ファイバを収納したケーブルコア103と、このケーブルコア103の外周に被覆された樹脂などのケーブルシース105(外被)と、を備えたものが知られている。そして、通常は前記光ファイバケーブル101の横断面を示す図7において、左右側にあって、しかも、前記ケーブルコア103の外表面に接して設けられたリップコード107(引裂紐)と、このリップコード107に対してケーブルシース105の円周方向に約90°ずらしてケーブルシース105の内部に配置したテンションメンバ109と、を実装している構造が一般的である。
【0003】
なお、他の例の自己支持型(SSタイプ)光ファイバケーブル111としては、図8に示されているように、吊線としての抗張力体113(例えば鋼線7本を撚り合わせた鋼撚り線)の周囲をシース樹脂115で被覆した長尺のケーブル支持線部117が備えられており、このケーブル支持線部117が首部119を介して前記光ファイバケーブル101に対して互いに平行に一体化されている。
【0004】
上記の光ファイバケーブル101の途中からケーブルコア103内の光ファイバを口出しする中間後分岐作業では、ケーブルコア103内の光ファイバに外傷を与えることなく、シース105を剥ぐことが必要となる。中間後分岐時にシース105を剥ぐ場合には、予め光ファイバケーブル101の内部に実装されているリップコード107を取り出し、このリップコード107を引っ張ってケーブルシース105を引き裂いて、ケーブルコア103内の光ファイバを取り出す方法が採用されている。
【0005】
しかしながら、従来の光ファイバケーブル101の構造では、予めリップコード107を取り出すために、刃物により慎重にシース105を削ぎ取る方法が採られているので、非常に手間がかかり、内部の光ファイバに損傷を与える危険性があった。
【0006】
この対策として、ケーブルシース105に埋め込まれたテンションメンバ109の近傍にリップコード107を添わせることにより、刃物がケーブルコア103の内部にまで到達することを防ぐ構造が提案されているが、これはテンションメンバ109とケーブルシース105の密着に悪影響を及ぼしたり、リップコード107を取り出す際に、テンションメンバ109を傷つけてしまったりするという問題がある。
【0007】
そこで、上記の口出しや中間後分岐の作業性をさらに改善するために、近年では、特許文献1の特に図3に示されているように、光ファイバケーブルは、ケーブルの長手方向に寸断された複数のリップコードが、長手方向に亘って断続的に連なるようにケーブルシース内に埋設され、かつ、前記各リップコードの一部がケーブルシースの外表面に露出されている。リップコードの露出部分を引っ張ることにより、ケーブルシースが引き裂かれる。
【0008】
また、他の例としては、特許文献2に示されているように、光ファイバケーブルは、当該光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面のケーブルシースの径方向にリップコードが埋設され、前記リップコードの両端がケーブルシースの外表面に露出されている。ケーブルシースの外表面に露出しているリップコードの両端部分を持ってケーブルの長手方向に引っ張ることによって、ケーブルシースがケーブルの長手方向に引き裂かれる。
【0009】
また、他の例としては、特許文献3に示されているように、光ファイバケーブルは、リップコードが、ケーブルの全長に亘って、間欠的にケーブルコアより径方向外方(ケーブルシースの厚さ方向)に傍出させてケーブルシースに埋設されている。さらに、上記のリップコードの傍出部位を表示するマークがケーブルシースの外表面に設けられている。マークの部分のケーブルシースを削り取っていけば、ケーブルコアまで深く切り込まなくてもリップコードの傍出部分が取り出され、この傍出部分を引っ張ることによってケーブルシースがケーブルの長手方向に引き裂かれる。
【0010】
また、他の例としては、特許文献4の特に図7と図8に示されているように、光ファイバケーブルは、ケーブル全長に亘って、シート状の網状部材からなるリップコードがケーブルシース厚さ方向に埋設されている。このシート状の網状部材からなるリップコードをケーブルの長手方向に引っ張ることによって、ケーブルシースがケーブルの長手方向に引き裂かれる。
【0011】
また、他の例としては、特許文献5に示されているように、光ファイバケーブルは、はしご状のリップコードがケーブルシースの長手方向内に埋設され、かつ、はしご状の横方向の部分がケーブルシースの外表面に露出している。フック等の工具を用いて露出したはしご状の横方向の部分を引っ掛けて引き出すことにより、ケーブルシースが引き裂かれる。
【特許文献1】特開平11−185534号公報
【特許文献2】特開平11−185535号公報
【特許文献3】特開2002−55236号公報
【特許文献4】特開2002−98871号公報
【特許文献5】USP6798957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した従来の光ファイバケーブルにおいて、特許文献1では、リップコードの露出部分を引っ張ると、ケーブルシースに引き裂き部を設けることができるが、リップコードは長手方向に寸断されているので、1つのリップコードを引っ張って引き裂いた長さでは不十分の場合は、別のリップコードを引っ張って引き裂く必要があるために、手間がかかるという問題点があった。
【0013】
また、特許文献2では、リップコードは光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面のケーブルシースの径方向に埋設されるので、ケーブルコアが光ファイバケーブルの中央にあるときは、光ファイバを傷付けたり、干渉したりしないようにケーブルコアを避けた位置で埋設する必要がある。また、ケーブルコアが光ファイバケーブルの中央に位置していない場合でもケーブルコアを避ける必要があるので、製造上の複雑さと適用範囲が狭いという問題点があった。
【0014】
また、ケーブルシースを引き裂くには、ケーブルシースの外表面に露出されたリップコードの両端部分を持ってケーブルの長手方向に引っ張るが、光ファイバケーブルのほぼ直径の長さのケーブルシースを引き裂く必要があるので、容易ではないという問題点があった。また、リップコードはケーブルコアを避けているので、ケーブルシースを引き裂いた後でもケーブルシースがケーブルコアの周囲に僅かに覆っており、このケーブルシースを引き裂く必要があるので、手間がかかるという問題点があった。
【0015】
また、特許文献3では、リップコードが、ケーブルの全長に亘って、間欠的にケーブルコアより径方向外方(ケーブルシースの厚さ方向)に傍出させてケーブルシースに埋設されているので、ケーブルシースの外表面から見えないことと、リップコードを取り出すためにケーブルシースを削る必要があるという問題点があった。さらに、リップコードを取り出し易くするために上記のリップコードの傍出部位を表示するマークをケーブルシースの外表面に設けるには、複雑な装置と手間がかかるという問題点があった。
【0016】
また、特許文献4では、シート状の網状部材からなるリップコードがケーブルシース厚さ方向に埋設されているので、ケーブルシースの外表面から見えないことと、リップコードを取り出すためにケーブルシースを浅く削るとしても手間がかかるという問題点があった。また、シート状の網状部材の位置でのケーブルシースの厚さが薄くなるので機械強度的に弱くなるという問題点があった。
【0017】
また、特許文献5では、リップコードがはしご状であるのでコスト高であるという問題点があった。
【0018】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の光ファイバケーブルは、光ファイバを収納したケーブルコアと、このケーブルコアの外周に被覆されたケーブルシースを有する光ファイバケーブルにおいて、
少なくとも1条のリップコードが前記ケーブルシース内においてケーブルシースの長手方向に延びて埋設され、かつこのリップコードは前記ケーブルシースの厚さ方向に向けて前記リップコードの長手方向へ間欠的にループ状余長部が形成されて前記ケーブルシースの内部に埋設され、かつ、前記各ループ状余長部の一部が前記ケーブルシースの外表面に露出、あるいは前記ケーブルシースの外表面の近傍に突出するように配置されて構成されることを特徴とするものである。
【0020】
この発明の光ファイバケーブルは、光ファイバを収納したケーブルコアと、このケーブルコアの外周に被覆されたケーブルシースを有する光ファイバケーブルにおいて、
前記ケーブルシースの長手方向に延びた第1リップコードが前記ケーブルシースの内表面側に位置する第1内表部と前記ケーブルシースの外表面側に位置する第1外表部とに交互に配置され、かつ、前記ケーブルシースの長手方向に延びた第2リップコードが前記第1リップコードの第1外表部に対応したケーブルシースの内表面側に位置する第2内表部と前記第1リップコードの第1内表部に対応したケーブルシースの外表面側に位置する第2外表部とに交互に配置されて前記ケーブルシースの内部に埋設されると共に、
前記第1リップコードの第1外表部と第2リップコードの第2外表部が前記ケーブルシースの外表面に露出、あるいは前記ケーブルシースの外表面の近傍に突出するように配置されて構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバケーブルによれば、リップコードのループ状余長部の一部がケーブルシースの外表面に露出、あるいはケーブルシースの外表面の近傍に突出するように配置構成されているので、前記ループ状余長部を容易に見つけて引っ張ることができる。したがって、ケーブルシースを削り取ることなくリップコードを引っ張ってケーブルシースを簡単に引き裂くことができ、手間がなく、ケーブルコアの内部の光ファイバに損傷を与える可能性を非常に低くできる。また、ループ状余長部はケーブルシースの長手方向で間欠的に設けられているので、ケーブルシースの機械的強度に殆ど悪影響を与えることがない。
【0022】
また、この発明の光ファイバケーブルによれば、第1リップコードの第1外表部と第2リップコードの第2外表部が前記ケーブルシースの外表面に露出、あるいは前記ケーブルシースの外表面の近傍に突出するように配置されて構成されているので、第1リップコードの第1外表部と第2リップコードの第2外表部を見つけて、第1リップコードの第1外表部と第2リップコードの第2外表部のいずれか一方、又は両方を容易に引っ張ることができる。したがって、ケーブルシースを削り取ることなくリップコードを引っ張ってケーブルシースを簡単に引き裂くことができ、手間がなく、ケーブルコアの内部の光ファイバに損傷を与える可能性を非常に低くできる。また、第1リップコードの第1外表部と第2リップコードの第2外表部はケーブルシースの長手方向で間欠的に設けられているので、ケーブルシースの機械的強度に殆ど悪影響を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1(A),(B)を参照するに、第1の実施の形態に係る光ファイバケーブル1は、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などの光ファイバ、あるいはルースチューブなどの他の形態の光ファイバを収納したケーブルコア3と、このケーブルコア3の外周に被覆された樹脂などのケーブルシース5(外被)とを備えている。なお、上記のケーブルコア3としては、スロット溝内に上記の光ファイバを収納した一方向スロットやSZスロットも、ケーブルコア3とすることもできる。
【0025】
さらに、上記のケーブルシース5の内部には、図1(A)においてケーブルコア3を挟んで左右側の対向する位置にケーブルコア3の長手方向にほぼ平行に延びた一対のリップコード7(引裂紐)が埋設されている。
【0026】
より詳細には、このリップコード7は、ケーブルコア3の外表面にその長手方向に添設されているシース引裂き部7Aと、前記ケーブルコア3の長手方向で前記シース引き裂き部7Aに対して間欠的にループ状に形成したループ状余長部7Bを有しており、前記ループ状余長部7Bがケーブルシース5の厚さ方向(径方向)に向けられていると共に図1(B)において前記ループ状余長部7Bの上部がケーブルシース5の外表面に向けてケーブルコア3から浮き出すように突出配置されている。
【0027】
なお、この実施の形態においては、上記のループ状余長部7Bは、図1(B)においてケーブルシース5の厚さ方向に向けて例えば“エ字状”に形成されている。すなわち、図1(B)において上側のリップコード7で説明すると、シース引裂き部7Aがケーブルコア3の外表面に添設されており、所定位置で曲げられてケーブルシース5の厚さ方向(ケーブルシース5の径外方)へ立ち上がり、ケーブルシース5の外表面付近であって外表面内において左方へ曲げられる。少しの距離だけ左方へ延びてから上側に180°曲げられてケーブルシース5の外表面の近傍に浮き出される位置で右方へ延びる。上記の左方に延びた距離の約2倍ほど右方へ延びてから、下側に180°曲げられて左方へ延びる。次いで、上記の立ち上がり部分に沿うようにして下方(ケーブルシース5の径内方)へ曲げられる。ケーブルコア3の外表面でケーブルコア3の外表面に添って右方へ延びる。
【0028】
上記の“エ字状”のループ状余長部7Bは、図1(B)に示されているように、リップコード7の長手方向に向けて適宜間隔で間欠的に形成されている。
【0029】
なお、この第1の実施の形態では、上記のリップコード7は、ケーブルコア3のほぼ中心を通る線上で、ケーブルコア3を挟んで両側に一対が組み合わされて配置されているが、少なくとも1条のリップコード7が配置されていれば良く、3条以上のリップコード7が配置されていても良く、限定されない。
【0030】
次に、上記の光ファイバケーブル1の中間後分岐の方法を説明する。図1(A),(B)に示されているように光ファイバケーブル1の途中において分岐を行う、いわゆる中間後分岐部分に、リップコード7のループ状余長部7Bがケーブルシース5内に突出しその外表面の近傍に浮き出すように埋設配置されているので、中間後分岐時には、前記ループ状余長部7Bを見つけてこれをケーブルシース5から引っ張り出すことができる。すなわち、ループ状余長部7Bの図1(B)において上部がケーブルシース5の外表面の直近、すなわちケーブルシース5の外表面に極近傍に位置して埋設されているので、例えば針状の簡単な工具だけで容易にループ状余長部7Bを引き出すことができる。
【0031】
したがって、ケーブルシース5を削り取ることなくリップコード7を引っ張ってケーブルシース5を簡単に引き裂くことができ、手間がなく、ケーブルコア3の内部の光ファイバに損傷を与える可能性を非常に低くできる。
【0032】
また、ケーブルシース5の外表面の近傍の浮出し部7Cは、容易に引き出せるだけの余長を持ってケーブルシース5の外表面の近傍に浮き出されているので、例えば針状の簡単な工具のみで取り出すことができ、リップコード7がケーブルコア3の外表面に添っている部分、すなわちシース引裂き部7Aに連なっていることから、容易にケーブルシース5を切り裂くことができる。
【0033】
この引き裂き作業が光ファイバケーブル1の図1(A)において左右両側の2箇所で行われると、光ファイバケーブル1のケーブルシース5が2分割され、ここからケーブルコア3内の光ファイバを容易に取り出すことができる。そして、適宜、ケーブル素線などの光ファイバに接続加工、補修加工を施す。
【0034】
また、ループ状余長部7Bはケーブルシース5の長手方向で間欠的に設けられているので、ケーブルシース5の機械的強度に殆ど悪影響を与えることがない。
【0035】
また、上記のリップコード7は、ループ状余長部7Bがシース引裂き部7Aに連なる部分では、ケーブルコア3の長手方向に亘って隙間を空けること無く、見かけ上、繋がるように配置していることが、ケーブルシース5を容易に引き裂くことができるという点で望ましい。
【0036】
なお、この第1の実施の形態では、ループ状余長部7Bの図1(B)において上部がケーブルシース5の外表面の極めて近傍に浮き出されるように配置されているが、ケーブルシース5の外表面に露出しても良い。この場合、ケーブルシース5の外表面に露出した部分を摘み出して容易にループ状余長部7Bを引き出すことができる。
【0037】
また、図2を参照するに、ループ状余長部7Bの他の実施の形態としては、図2の上側のリップコード7で説明すると、ケーブルシース5の厚さ方向に向けて“逆三角形状”に形成されている。すなわち、“逆三角形状”の頂点の部分がリップコード7のシース引裂き部7Aに連なっており、“逆三角形状”の底辺の部分が露出部7Dとしてケーブルシース5の外表面に露出している。したがって、ケーブルシース5の外表面に露出している露出部7Dを容易に摘み出せる。その後、リップコード7によりケーブルシース5を引き裂く動作は図1の“エ字状”の場合と同様である。
【0038】
なお、上記の“逆三角形状”の底辺の部分は、前述した“エ字状”のループ状余長部7Bの場合と同様に、浮出し部7Cとしてケーブルシース5の外表面の近傍に浮き出されるように配置することもできる。
【0039】
また、図3を参照するに、ループ状余長部7Bの他の実施の形態としては、図3の上側のリップコード7で説明すると、ケーブルシース5の厚さ方向に向けて“超楕円形状”あるいは“折り重ね形状”に形成されて、その先端部分がケーブルシース5の外表面に露出している。したがって、ケーブルシース5の外表面に露出している露出部7Dを例えば湾曲したフック形状の細い工具で引っ掛けることで、容易に引っ張り出せる。その後、リップコード7によりケーブルシース5を引き裂く動作は図1の“エ字状”の場合と同様である。
【0040】
なお、ループ状余長部7Bの実施の形態としては、前述した図1(B)に示されているように“エ字状”、図2に示されているように“逆三角形状”、図3に示されているように“超楕円形状”あるいは“折り重ね形状”に限定されることなく、他の種々の形態のループ形状でも良い。
【0041】
次に、この発明の第2の実施の形態の自己支持型(SSタイプ)光ファイバケーブル9としては、図4に示されているように、吊線としての抗張力体11(例えば鋼線7本を撚り合わせた鋼撚り線)の周囲をシース樹脂13で被覆した長尺のケーブル支持線部15が備えられており、このケーブル支持線部15が首部17を介して前記光ファイバケーブル1に対して互いに平行に一体化されている。
【0042】
なお、第2の実施の形態の光ファイバケーブル9の作用及び効果は、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0043】
次に、この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブル19について説明する。前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1と同様の部材は同符号で説明し、異なる部分のみを主に説明する。
【0044】
図5(A),(B)を参照するに、第1の実施の形態の光ファイバケーブル1と異なる部分はリップコードの形態である。すなわち、図5(B)の上側の部分で説明すると、2本の第1、第2リップコード21、23が組み合わされてなるリップコード組部25がケーブルシース5の内部に埋設されている。一方の第1リップコード21は、ケーブルコア3の外表面にその長手方向に添設されているとなる第1内表部21Aと、この第1内表部21Aに長手方向で間欠的に配置した余長部となる第1外表部21Bと、を有している。他方の第2リップコード23は、ケーブルコア3の外表面にその長手方向に添設されているシース引裂き部となる第2内表部23Aと、この第2内表部23Aに長手方向で間欠的に配置した余長部となる第2外表部23Bを有している。
【0045】
上記の2本の第1、第2リップコード21、23がケーブルコア3の外表面にその長手方向に延びる同じ線上で添設されるように組み合わされて前記各第1、第2外表部21B、23Bをケーブルシース5の長手方向で交互に配置しており、前記2本の第1、第2リップコード21、23の各第1、第2外表部21B、23Bは前記ケーブルシース5の厚さ方向に向けられ、かつ、前記第1、第2外表部21B、23Bの図5(B)において上部が前記ケーブルシース5の外表面の近傍に浮き出すように配置されている。
【0046】
例えば、各第1、第2リップコード21、23は、ケーブルコア3の外表面に沿った第1、第2内表部21A、23Aに対して、ケーブルシース5の厚さ方向(ケーブルシース5の径外方)へ立ち上がってから再び第1、第2内表部21A、23Aに連なる第1、第2外表部21B、23Bが間欠的に設けられている。この場合の第1、第2外表部21B、23Bである「余長部」とはループ状に形成されておらず、前述した第1の実施の形態の「ループ状余長部」とは異なっている。
【0047】
さらに、2本の第1、第2リップコード21、23は、例えば第1外表部21B(又は第2外表部23B)の立ち上がり部分と、第1外表部21B(又は第2外表部23B)の下がる部分で交差し、一方の第1リップコード21(又は第2リップコード23)のシース第1内表部21A(又は第2内表部23A)と、他方の第2リップコード23(又は第1リップコード21)の第2外表部23B(又は第1外表部21B)が、ケーブルシース5の長手方向で同じ位置のケーブルシース5の外表面と内表面に対向するように配置されている。
【0048】
なお、この第3の実施の形態では、ケーブルシース5の内部には、上記の2本の第1、第2リップコード21、23で組み合わされたリップコード組部25が、ケーブルコア3のほぼ中心を通る線上で、ケーブルコア3を挟んで両側に対向する位置にケーブルコア3の長手方向にほぼ平行に配置されて埋設されているが、少なくとも1組の第1、第2リップコード21、23が配置されていれば良く、3組以上のリップコード21、23が配置されていても良く、限定されない。
【0049】
次に、上記の光ファイバケーブル19の中間後分岐の方法を説明する。図5(A),(B)に示されているように光ファイバケーブル19の途中において分岐を行う、いわゆる中間後分岐部分に、2本の第1、第2リップコード21、23の第1、第2外表部21B、23Bがケーブルシース5の長手方向に亘って交互にケーブルシース5の外表面の近傍に浮き出されて浮出し部21C、23Cを形成しているので、容易に見つけることができ、前記第1、第2外表部21B、23Bの浮出し部21C、23Cのいずれか一方、又は両方を、例えば針状の簡単な工具のみで容易に取り出して引っ張ることができる。
【0050】
したがって、前述した第1の実施の形態と同様に、ケーブルシース5を削り取ることなく第1リップコード21を引っ張ってケーブルシース5を簡単に引き裂くことができ、手間がなく、ケーブルコア3の内部の光ファイバに損傷を与える可能性を非常に低くできる。
【0051】
なお、2本の第1、第2リップコード21、23がケーブルコア3の外表面に添っている第1、第2内表部21A、23Aで交互に連続していることから、例えば、2本の第1、第リップコード21、23の第1、第2外表部21B、23Bを同時に引っ張ってケーブルシース5を所望の長さまで容易に引き裂くことができる。
【0052】
この引き裂き作業が光ファイバケーブル19の図5(A)において左右両側の2箇所で行われると、光ファイバケーブル19のケーブルシース5が2分割され、ここからケーブルコア3内の光ファイバを容易に取り出すことができる。そして、適宜、ケーブル素線などの光ファイバに接続加工、補修加工を施す。
【0053】
また、第1、第2外表部21B、23Bはケーブルシース5の長手方向で間欠的に設けられているので、ケーブルシース5の機械的強度に殆ど悪影響を与えることがない。
【0054】
なお、この第3の実施の形態では、第1、第2外表部21B、23Bの図5(B)において上部がケーブルシース5の外表面の極めて近傍に浮き出されるように配置されているが、ケーブルシース5の外表面に露出しても良い。この場合、ケーブルシース5の外表面に露出した部分を摘み出して容易に余長部21B、23Bを引き出すことができる。
【0055】
次に、この発明の第4の実施の形態の自己支持型(SSタイプ)光ファイバケーブル27としては、図6に示されているように、吊線としての抗張力体11(例えば鋼線7本を撚り合わせた鋼撚り線)の周囲をシース樹脂13で被覆した長尺のケーブル支持線部15が備えられており、このケーブル支持線部15が首部17を介して前記光ファイバケーブル19に対して互いに平行に一体化されている。
【0056】
なお、第4の実施の形態の光ファイバケーブル27の作用及び効果は、前述した第3の実施の形態の光ファイバケーブル19と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0057】
以上のことから、いずれの実施の形態の光ファイバケーブル1、9、19、27においても、リップコード7、第1、第2リップコード21、23が間欠的にケーブルシース5の外表面に露出、あるいは浮き出ていることにより、その部分を容易に取り出すことができる。取り出したリップコード7、第1、第2リップコード21、23をさらに引っ張ることで、ケーブルシース5を簡単に引き裂くことができ、ケーブルコア3内の光ファイバを容易に取り出すことが可能となる。特に、中間後分岐の際は有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(A)は、この発明の第1の実施の形態の光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面、特に(B)の矢視IA−IAの断面図で、(B)は、(A)の矢視IB−IBの断面図である。
【図2】図1のリップコードの他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】図1のリップコードの他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態の自己支持型光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面図である。
【図5】(A)は、この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面、特に(B)の矢視VA−VAの断面図で、(B)は、(A)の矢視VB−VBの断面図である。
【図6】この発明の第4の実施の形態の自己支持型光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面図である。
【図7】従来の光ファイバケーブルの断面図である。
【図8】従来の他の自己支持型光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 光ファイバケーブル(第1の実施の形態の)
3 ケーブルコア
5 ケーブルシース(外被)
7 リップコード(引裂紐)
7A シース引き裂き部
7B ループ状余長部
7C 浮出し部
7D 露出部
9 自己支持型光ファイバケーブル(第2の実施の形態の)
11 抗張力体
13 シース樹脂
15 ケーブル支持線部
17 首部
19 光ファイバケーブル(第3の実施の形態の)
21 第1リップコード
21A 第1内表部
21B 第1外表部
21C 浮出し部
23 第2リップコード
23A 第2内表部
23B 第2外表部
23C 浮出し部
25 リップコード組部
27 自己支持型光ファイバケーブル(第4の実施の形態の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを収納したケーブルコアと、このケーブルコアの外周に被覆されたケーブルシースを有する光ファイバケーブルにおいて、
少なくとも1条のリップコードが前記ケーブルシース内においてケーブルシースの長手方向に延びて埋設され、かつこのリップコードは前記ケーブルシースの厚さ方向に向けて前記リップコードの長手方向へ間欠的にループ状余長部が形成されて前記ケーブルシースの内部に埋設され、かつ、前記各ループ状余長部の一部が前記ケーブルシースの外表面に露出、あるいは前記ケーブルシースの外表面の近傍に突出するように配置されて構成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
光ファイバを収納したケーブルコアと、このケーブルコアの外周に被覆されたケーブルシースを有する光ファイバケーブルにおいて、
前記ケーブルシースの長手方向に延びた第1リップコードが前記ケーブルシースの内表面側に位置する第1内表部と前記ケーブルシースの外表面側に位置する第1外表部とに交互に配置され、かつ、前記ケーブルシースの長手方向に延びた第2リップコードが前記第1リップコードの第1外表部に対応したケーブルシースの内表面側に位置する第2内表部と前記第1リップコードの第1内表部に対応したケーブルシースの外表面側に位置する第2外表部とに交互に配置されて前記ケーブルシースの内部に埋設されると共に、
前記第1リップコードの第1外表部と第2リップコードの第2外表部が前記ケーブルシースの外表面に露出、あるいは前記ケーブルシースの外表面の近傍に突出するように配置されて構成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−127886(P2007−127886A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321284(P2005−321284)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】