説明

光ファイバケーブル

【課題】光ファイバケーブルを解体する際に、ケーブルコア内の光ファイバ心線を傷つけることなく、最外殻となる外被層と内殻となる押巻き層を巻き付けている粗巻き部材とを同時に切断し、容易に剥離・解体することができる。
【解決手段】光ファイバケーブル10は、ケーブルコア4の外側にその軸方向に縦添えさせて押巻き層1を設け、該押巻き層上に上記ケーブルコア4の軸方向に沿って引裂紐2を重ね合わせると共に該引裂紐と上記押巻き層とを粗巻き部材3で上記ケーブルコアに巻き付け、これら上記粗巻き部材3、上記引裂紐2及び上記押巻き層1上に外被層5を被覆したことを特徴とするものである。上記引裂紐を径方向外方に引っ張ることで上記外被層5と上記押巻き層1とを同時に剥離解体することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバケーブルの心線を有するケーブルコアの最外殻には、所定の厚さを有する合成樹脂製の外被層が被覆され、ケーブルコアは保護されている。また、外被層の内側には外被層を切開してケーブルコアを露出解体するための引裂紐が設けられている。
【0003】
従来の光ファイバケーブルとしては、図9に示すものが知られている。この光ファイバケーブル20の心線となるケーブルコア24の外側には内殻として不織布製のテープ等からなる押巻き層21が軸方向に縦添えに施されている。また、この押巻き層21はケーブルコア24の軸方向に沿って螺旋状に巻き付けられている場合もある。
【0004】
この押巻き層21上には粗巻き部材23がケーブルコア24の軸方向乃至長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられて、押巻き層21をケーブルコア24上に的確に保持させている。このように、ケーブルコア24に粗巻き部材23により押巻き層21を保持させて被覆した後、粗巻き部材23と押巻き層21との上にはケーブルコア24の軸方向に沿って引裂紐22が重ねて設けられていると共にその最外殻となる外被層25が被覆されている。従って、引裂紐22をケーブルコア24より軸方向に沿って且つ径方向外方に引っ張り上げることにより、外被層25を破断し得るように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−99445号公報
【特許文献2】実開平06−015014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の光ファイバケーブルにあっては、第1工程として外被層25にカッターナイフ等で切口を開き、外被層25の下に配置された引裂紐22をケーブルコアの軸方向に沿って且つ径方向外方に引っ張り上げることにより外被層25に軸方向に沿った切り裂き目を形成しながら外被層25を剥離する。次に、第2工程として、ケーブルコア24上に被覆された押巻き層21を粗巻き部材23を切り除きながら剥離して光ファイバケーブルの心線を有するケーブルコア24を露出させる。つまり解体作業は、引裂紐22が外被層25の内側で押巻き層21の外側に配置されているために、引裂紐22を用いて外被層25を剥離する作業と押巻き層21を剥離する作業の2工程を要し、作業時間がかかるという問題点があった。
【0007】
また、押巻き層21を容易に剥離するために、ケーブルコア24の外側を覆うよう不織布テープ等を軸方向に縦添えさせて、この押巻き層21上に粗巻き部材23で螺旋状に巻き留めた光ファイバケーブルであっても、引裂紐22が外被層25の内側で押巻き層21及び粗巻き部材23の外側に配置されているため、引裂紐22を用いて外被層25に切れ目を入れ外被層25を剥離した後、粗巻き部材23を切断しなければ押巻き層21を剥離することができず、解体作業工程は上記押巻き層21がテープ状の部材で螺旋状に巻きつけられた光ファイバケーブルと同じであった。
【0008】
さらに、粗巻き部材23をカッターナイフ等の刃物で切断する際に、誤ってケーブルコア24内の光ファイバ心線や光ファイバテープ心線を傷つけ、あるいは断線させるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決すべく、光ファイバケーブルを解体する際に、ケーブルコア内の光ファイバ心線を傷つけることなく、最外殻となる外被層と押巻き層を巻き付けている粗巻き部材とを同時に切断し、容易に剥離・解体することができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバ心線を有するケーブルコアの外側に外被層を被覆した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブルコアの外側にその軸方向に縦添えさせて押巻き層を設け、該押巻き層上に上記ケーブルコアの軸方向に沿って引裂紐を重ね合わせると共に該引裂紐と上記押巻き層とを粗巻き部材で上記ケーブルコアに巻き付け、これら上記粗巻き部材、上記引裂紐及び上記押巻き層上に外被層を被覆したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の上記引裂紐は、該引裂紐上に巻き付けられた上記粗巻き部材及び上記外被層よりヤング率並びに破断強度が高く設定された抗張力繊維材あるいは抗張力体によって成形されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の上記外被層がポリエチレン樹脂によって成形されると共に上記粗巻き部材が上記外被層と熱により融着されるポリエチレン系樹脂によって成形されることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の上記粗巻き部材が上記外被層に接着接合させるための接着層を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバケーブルを解体する際に、ケーブルコア内の光ファイバ心線を傷つけることなく、最外殻となる外被層と内殻となる押巻き層を巻き付けている粗巻き部材とを同時に切断し、容易に剥離・解体することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
本発明の一つの実施の形態に係る光ファイバケーブルは、図1及び図2に示すように構成されている。図示するように、光ファイバケーブル10は主に複数の光ファイバ心線や光ファイバテープ心線などを有するケーブルコア4と、ケーブルコア4の外側に、その軸方向に縦添えして巻き付けられ内殻となる押巻き層1と、押巻き層1の上に軸方向に沿って配置された一本の引裂紐2と、押巻き層1と引裂紐2とをケーブルコア4に螺旋状に巻き付ける粗巻き部材3と、押巻き層1、引裂紐2及び粗巻き部材3上に被覆され最外殻となる黒色ポリエチレン樹脂などの外被層5とで構成されている。
【0017】
なお、本発明においては、ケーブルコア4の内部構造は、特に限定されず、例えば複数の光ファイバ心線が集合して構成された光ファイバユニットをテンションメンバーの周りに複数本撚り合わせたユニット型構造、スロットの外周溝に複数の光ファイバテープ心線や光ファイバ心線を収納したスロット型構造、複数の光ファイバテープ心線や光ファイバ心線をテンションメンバーの周りに撚り合わせた層型構造などが用いられる。
【0018】
また、ケーブルコア4の内殻となる押巻き層1を構成する部材は、比較的層厚の薄い不織布テープ、金属テープ、プラスチックテープ、吸水材を塗布した吸水テープなどが用いられる。
【0019】
次に、この実施の形態に係る光ファイバケーブル10に用いられる引裂紐2について説明する。この引裂紐2は、外被層5と粗巻き部材3を同時に引き裂くために用いられるものであって、ケーブルコア4の外側に縦添えさせた押巻き層1の上に配置する。図示例にあっては一本の引裂紐2が配置されているが、配置位置は押巻き層1の上で、且つ粗巻き部材3の内側であればどこでもよく、また、複数本配置することも勿論可能である。
【0020】
また、この引裂紐2は、外被層5と粗巻き部材3よりヤング率及び破断強度が大きい抗張力繊維あるいは抗張力体で構成されている。従って、解体時に引裂紐2を軸方向に沿って且つ径方向外方に引っ張っても破断することがない強度を有し、押巻き層1及び粗巻き部材3を同時に引き裂くことを可能とする。
【0021】
また、本発明の光ファイバケーブル10に用いられる粗巻き部材3について説明する。この粗巻き部材3は、ケーブルコア4の外側に、即ち内殻としての押巻き層1と引裂紐2を巻き付けておくためのものである。従って、粗巻き部材3は複数本であってもよい。
【0022】
また、粗巻き部材3は外被層5を構成する材料と熱融着あるいは接着し易い材料で構成されている。例えば、外被層5がポリエチレン樹脂からなる場合は、粗巻き部材3をポリエチレン樹脂系のテープとすることで、外被層5を押出成形等により被覆する際の熱により、粗巻き部材3を外被層5の内側に融着させることができる。このように、粗巻き部材3が外被層5と接着していることで、解体時に粗巻き部材3と外被層5を一括して剥離することができ、作業能率を向上させることができる。
【0023】
また、図3に図示するように、粗巻き部材3はテープ状に形成されており、外被層5と接する面に接着層6を設けてもよい。この接着層6に外被層5を被覆する際に外被層5から受ける熱により、粗巻き部材3を外被層5の内側に接着させることができる。なお、粗巻き部材3は紐状であっても良い。
【0024】
次に、この実施の形態に係る光ファイバケーブル10の解体手順について説明する。解体する際は、まず外被層5にカッターナイフ等で切口を入れ、外被層5の下に収容されている引裂紐2の一部を引き出す。次に図4及び図5に示すように引裂紐2を軸方向に沿って且つ径方向外方に引っ張ることにより、粗巻き部材3を切断しながら同時に外被層5を引き裂くことができる。即ち、引裂紐2を軸方向に沿って且つ径方向外方に引っ張ることにより、押巻き層1とケーブルコア4に巻き付けている粗巻き部材3が切断され、図6に示すように内殻となる押巻き層1は突き合わせ部あるいは重ね合わせ部から捲れ、該捲れた部分を剥ぎ取れば容易にケーブルコア4を露出させることができる。
次に、他の実施の形態の光ファイバケーブル10aについて説明する。なお、前述した実施の形態の光ファイバケーブル10と同様の部材は同符号にて説明する。また、光ファイバケーブル10aに使用される引裂紐2は前述した光ファイバケーブル10で使用した引裂紐2と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0025】
図7に示すように、光ファイバケーブル10aは、ケーブルコア4と、押巻き層1と、押巻き層1の上に軸方向に沿って配置された引裂紐2と、押巻き層1と引裂紐2とをケーブルコア4に螺旋状に巻き付けている粗巻き部材3aと、押巻き層1、引裂紐2及び粗巻き部材3a上を黒色ポリエチレン樹脂などの外被層5で被覆して構成されている。
【0026】
光ファイバケーブル10aに用いられる粗巻き部材3aは、紙製のテープ状の部材で構成されている。特に、その厚さを0.5mm以下とすれば、引裂紐2によって容易に切断することができる。
【0027】
また、図8に示すように、粗巻き部材3aはテープ状に形成されており、外被層5と接する面に接着層6aを設けてもよい。この接着層6aに外被層5を被覆する際に外被層5から受ける熱により、粗巻き部材3aを外被層5の内側に融着あるいは接着させることができ、外被層5を剥ぎ取る際に、粗巻き部材3aも一括して剥ぎ取ることができる。なお、粗巻き部材3aは紐状であってもよい。
【0028】
なお、外被層5は、黒以外の色彩を着色させたものや、あるいは色彩を着色させない無色透明なものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の光ファイバケーブルの斜視図である。
【図2】光ファイバケーブルの正面断面図である。
【図3】粗巻き部材の断面図である。
【図4】引裂紐により、外被層及び粗巻き部材を切断している状態を示す光ファイバケーブルの斜視図である。
【図5】引裂紐により、粗巻き部材を切断している状態を示す光ファイバケーブルの斜視図である。
【図6】引裂紐により、粗巻き部材が切断された後、押巻き層が捲れている状態を示す光ファイバケーブルの斜視図である。
【図7】光ファイバケーブルの斜視図である。
【図8】粗巻き部材の断面図である。
【図9】従来の光ファイバケーブルの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 押巻き層
2 引裂紐
3 粗巻き部材
4 ケーブルコア
5 外被層
6 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線を有するケーブルコアの外側に外被層を被覆した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブルコアの外側にその軸方向に沿わせて縦添えに施された押巻き層を設け、該押巻き層上に上記ケーブルコアの軸方向に沿って引裂紐を重ね合わせると共に該引裂紐と上記押巻き層とを粗巻き部材で上記ケーブルコアに巻き付け、これら上記粗巻き部材、上記引裂紐及び上記押巻き層上に外被層を被覆したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
上記引裂紐は該引裂紐上に巻き付けられた上記粗巻き部材及び上記外被層よりヤング率並びに破断強度が高く設定された抗張力繊維材あるいは抗張力体によって成形された請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
上記外被層がポリエチレン樹脂により成形されると共に上記粗巻き部材が上記外被層と熱により融着されるポリエチレン系樹脂によって成形された請求項1又は2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
上記粗巻き部材が上記外被層に接着接合させるための接着層を有した請求項1〜3いずれかに記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−212769(P2007−212769A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32715(P2006−32715)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】