説明

光ファイバケーブル

【課題】溝内に収納された光ファイバを間欠的に固定する際に適正な側圧を付与することができるように間欠固定材の形状構成を最適化する。
【解決手段】光ファイバ3を内部に収納した1つの溝5を有する1溝スロットロッド7と、その溝5の開口部11を覆う縦添えテープ13と、この縦添えテープ13とスロットロッド7の周囲を被覆するシース15と、からなる。スロットロッド7の溝5内の光ファイバ3を間欠的に固定すべく縦添えテープ13にその長手方向においてUV樹脂17を予め間欠的に固着して間欠固定材19を設け、その間欠固定材19の幅方向の断面は、間欠固定材19の頂点19Aを前記縦添えテープ13の幅方向に配置しており、その間欠固定材19の頂点19Aまでの高さhと、光ファイバ3の全体の外接円の直径Dと、溝5の深さHとの関係が、(h+D)−H≧H×0.05である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバケーブルに関し、特に1溝スロットロッドの溝内に光ファイバを収納し、前記スロットロッドの周囲をシースで被覆する際に、前記溝内の光ファイバを間欠的に固定する間欠固定材の形状を規定した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバケーブルとしては、光ファイバを内部に収納する1溝を備えたスロットロッド(例えば、C型スロット)の周囲を偏心シースで被覆している。これに該当するものとしては特許文献1や特許文献2がある。これらは、特に 前記シースが前記溝の開口部側のシース厚を前記開口部と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした偏心シース構造のケーブルである。
【0003】
光ファイバケーブルは光ファイバに対する曲げ、温度伸縮等の影響をできる限り少なくして良好な伝送特性を得ることが求められる。
【0004】
そのために光ファイバケーブルの内部に間欠的に配置した間欠固定材を用いて光ファイバの移動を抑制しつつ、伝送特性を劣化させない程度の側圧を与える間欠固定方法がある。その一例として特許文献3では間欠固定材を用いて光ファイバを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−76897号公報
【特許文献2】特開2008−76898号公報
【特許文献3】特開2004−191506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の間欠固定材の形状や樹脂の塗布方法は、光ファイバの引き抜き力が変化すると共に光ファイバケーブルの製造性に影響を及ぼすものであった。すなわち、間欠固定材の形状や樹脂の塗布方法によっては、光ファイバに対して側圧を良好に付与することができず、その側圧付与が強すぎると伝送特性の劣化を招く恐れがあり、さらに弱すぎると光ファイバが溝内で移動することによって光ファイバの端末部で引き込みや飛び出し現象が発生することがある。しかしながら、特許文献3の光ファイバケーブルの間欠固定方法では、間欠固定長さを規定しているが、間欠固定材の形状は述べられていない。
【0007】
この発明は、溝内に収納された光ファイバを間欠的に固定する際に適正な側圧を付与することができるように間欠固定材の形状構成を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の光ファイバケーブルは、光ファイバを内部に収納した1つの溝を有する1溝スロットロッドと、このスロットロッドの溝の開口部を覆うよう縦添えした縦添えテープと、この縦添えテープと前記スロットロッドの周囲を被覆するシースと、からなる光ファイバケーブルにおいて、
前記スロットロッドの溝内の光ファイバを間欠的に固定すべく前記縦添えテープにその長手方向において紫外線硬化性樹脂を予め間欠的に固着して間欠固定材を設け、その間欠固定材の幅方向の断面は、間欠固定材の頂点を前記縦添えテープの幅方向に配置しており、その間欠固定材の頂点までの高さhと、前記光ファイバの全体の外接円の直径Dと、前記溝の深さHとの関係が、
(h+D)−H≧H×0.05
であることを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記間欠固定材は、紫外線硬化性樹脂を複数回、塗布及び硬化することで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、溝の深さと、光ファイバの外接円の寸法と、UV固定材の高さ寸法との適切な関係を採用することで、必要とする光ファイバ引き抜き力を安定して得ることができた。すなわち、光ファイバに適切な側圧を付与することで、良好な伝送特性を確保しつつ、十分な光ファイバ引き抜き力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】図1の矢視II−II線の断面図である。
【図3】図1の間欠固定材の幅方向の断面形状を示すものであり、(A)は3個のUV樹脂からなる間欠固定材を示す断面図で、(B)は6個のUV樹脂からなる間欠固定材を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態の光ファイバケーブルの製造方法を示す概略的な斜視図である。
【図5】図3(A)の3個のUV樹脂からなる間欠固定材において2個のUV樹脂の上から紫外線を照射した時のUV樹脂の硬化状態を示す概略的な断面図である。
【図6】図5の工程の後に、3つ目のUV樹脂の上から紫外線を照射した時のUV樹脂の硬化状態を示す概略的な断面図である。
【図7】図6の工程の後に、縦添えテープの側から紫外線を照射した時のUV樹脂の硬化状態を示す概略的な断面図である。
【図8】図7の工程の後の間欠固定材の硬化状態を示す概略的な断面図である。
【図9】表1のデータを表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバケーブル1は1溝スロット型の光ファイバケーブルであり、光ファイバ3を内部に収納するための1つの溝5を備えたスロットロッド7と、このスロットロッド7の内部に埋設した光ファイバ保護用の線条体としての例えば抗張力体9(テンションメンバ)と、前記スロットロッド7の溝5の開口部11を覆うよう縦添えした縦添えテープ13と、この縦添えテープ13と前記スロットロッド7の周囲を被覆するシースとしての例えば偏肉シース15と、で構成されている。なお、この実施の形態では光ファイバ3としての例えば10枚の4心テープ心線が撚り合せされているが、光ファイバ3が撚り合わされていなくても適用される。
【0014】
さらに、前記スロットロッド7の溝5の内部の光ファイバ3が上記の縦添えテープ13の長手方向において予め紫外線硬化性樹脂17(以下、単に「UV樹脂」という)を間欠的に固着して形成した間欠固定材(UV固定材ともいう。)19で間欠的に固定されている。すなわち、UV樹脂17が間欠固定材として用いられる。
【0015】
なお、上記の間欠固定材19は、図1に示されているように、その幅方向の断面は、間欠固定材19の頂点19Aを前記縦添えテープ13の幅方向のほぼ中央に配置しており、そのUV固定材19の頂点19Aまでの高さhと、撚り合された光ファイバ3の全体の外接円の直径Dと、前記溝5の深さHとの関係が、
(h+D)−H≧H×0.05・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式1)
である。
【0016】
その理由としては、上記の(式1)を満たさない場合には、光ファイバ3はUV固定材19と十分に接触することができず、所望の引き抜き力を得ることができないからである。
【0017】
なお、溝5の深さHとは、溝5の開口部11の両頂点を結んだ線の中心部と、溝5の内部で最も遠くなる位置を結んだ線上の距離をいう。
【0018】
なお、前述した(式1)を満たすためには、スロットロッド7の溝5とこの溝5に収納される光ファイバ3との関係において問題が生じる場合がある。特に、溝5の寸法が、収納される光ファイバ3に対して相対的に大きくなると、UV樹脂17も大きくせざるを得なくなる。
【0019】
しかし、UV樹脂17は紫外線37(図4参照)により硬化する前は、粘性の液体状で塗布する必要がある。塗布するUV樹脂17の粘度が小さくなれば、吐出量を増加させてケーブル製造性を向上させることが可能である。その反面、UV樹脂17の断面形状として極端な長楕円形状を作成して円弧頂点の距離を稼ぐことが難しくなり、ケーブル製造性と所望の寸法を両立させることは困難である。
【0020】
また、UV樹脂17の断面積が大きくなるほど、UV樹脂17を硬化させるのに必要な紫外線37の量が多くなるので、結果的に必要な紫外線量を照射するためにはケーブル製造時の線速を低下させる必要がある。その結果ケーブル製造性を低下させることになる。
【0021】
そこで、図1に示されているように、1回のUV樹脂17の塗布により形成した間欠固定材19ではその高さhを(式1)を満たすことが難しい場合、図3(A)、(B)に示されているように、複数回のUV樹脂17の塗布と硬化とを組み合わせて間欠固定材19を作成することにより、ケーブル製造性を損なうことなく、高さを向上させた形状のUV固定材19を得ることができる。
【0022】
すなわち、図3(A)では、間欠固定材19は、上記の(式1)の関係を満たすようにして、UV樹脂17を3回塗布し、かつ硬化して形成している。この場合は1回ごとの塗布及び硬化して形成された断面形状が半円形状であり、3回目に塗布されたUV樹脂17の半円形の頂点19Aが前記縦添えテープ13の幅方向のほぼ中央になるように配置される。
【0023】
また、図3(B )では間欠固定材19がUV樹脂17を合計6回塗布し、かつ硬化して形成している。この場合も、上記の(式1)の関係を満たすものであり、6回目に塗布されたUV樹脂17の半円形の頂点19Aが前記縦添えテープ13の幅方向のほぼ中央になるように配置されることになる。
【0024】
また、図3(A)、(B)ではUV樹脂17が半円形であるが、他の断面形状であっても良い。例えば、一部円弧を含む円形状であっても、あるいは、半楕円形状であっても良い。いずれにしても、上記の(式1)の関係を満たすものであり、間欠固定材19の頂点19Aが前記縦添えテープ13の幅方向のほぼ中央になるように配置されるものである。
【0025】
以上のように、間欠固定材19の頂点19Aが縦添えテープ13の幅方向のほぼ中央に配置されており、しかも溝5の深さHと、光ファイバ3の外接円の寸法Dと、間欠固定材19の高さ寸法hとの適切な関係が前述した(式1)を採用することで、必要とする光ファイバ引き抜き力を安定して得ることができたので、光ファイバケーブル1を製造する際に、UV樹脂17を塗布した縦添えテープ13をスロットロッド7の溝5の中央に容易に施すことができ、光ファイバ3に適切な側圧を付与することで、良好な伝送特性を確保しつつ、十分な光ファイバ引き抜き力を得ることができる。さらに加えて、UV樹脂17の複数回の塗布方式を採用することで、必要とする間欠固定材19の高さ寸法を得ることが容易となった。
【0026】
また、前記スロットロッド7は、この実施の形態では図1に示されているように溝5が断面円形で、所謂、「C型スロット」であり、前記溝5の内部に光ファイバ3が収納されるもので、図1では光ファイバ3としての例えば10枚の4心の光ファイバテープ心線が収納されている。なお、光ファイバ3としては、光ファイバテープ心線に限らず、光ファイバ素線、光ファイバ心線、あるいは他の形態の光ファイバが用いられる。また、上記の溝5の断面形状は、円形状に限らず、U字形状、あるいはその他の断面形状でも良い。
【0027】
また、上記の抗張力体9としては、スロットロッド7の肉厚が厚い部分に、且つスロットロッド7の長手方向に延伸されており、鋼線やFRPなどを用いることができる。
【0028】
また、上記の偏肉シース15としては、例えばポリエチレン樹脂などの樹脂からなり、溝5の開口部11側のシース厚が溝5の開口部11側と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした偏心シース構造としている。なお、シースとしては、上記の偏肉シース15に限らず、ほぼ一定厚さのシースであっても良い。
【0029】
次に、この実施の形態に係る光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。
【0030】
図4を併せて参照するに、光ファイバ3が、すなわち、この実施の形態では図1に示されているように10枚の光ファイバテープ心線が、撚り線機21により一方向に撚り合わされる。
【0031】
より詳しく説明すると、上記の撚り線機21は、例えば回転軸23を備えた回転体25が前記回転軸23を中心に回転可能に設けられており、図示しない駆動モータにより回転速度が制御されて回転駆動される構成である。さらに、前記回転軸23には、光ファイバ3をロール状に卷回した複数個の光ファイバリール27が前記回転体25に配置されている。なお、この実施の形態では10個の光ファイバリール27が回転体25に配置されている。
【0032】
したがって、前記回転体25が回転すると、複数個の光ファイバリール27から引き出された複数の光ファイバ3が回転軸23の周りに回転することで、10本の光ファイバ3が集線ダイス29の集合点で一方向に撚り合わされることになる。
【0033】
その後、この撚り合わされた光ファイバ3は1溝スロットロッド7(この実施の形態では「C型スロット」)の溝5の内部にファイバ集合部31で収納される。
【0034】
一方、縦添えテープ13はスロットロッド7と接する面をあらかじめ反転させ、スロットロッド7と接する面が上面になるように送り出される。この縦添えテープ13の上に間欠固定材19が間欠的に形成される。その間欠固定材19が形成される過程について、図3(A)に示すようにUV樹脂17を3回塗布し、かつ硬化して形成した間欠固定材19を例にとって説明する。
【0035】
縦添えテープ13には、上方に設けた2つのUV樹脂充填装置33からUV樹脂17が間欠的に噴射、供給され、この2か所のUV樹脂17が図5に示されているように、縦添えテープ13の上に幅方向で中央からほぼ均等に並列して乗るように、且つ前記縦添えテープ13の長手方向において間欠的に塗布される。その直後に、縦添えテープ13上の各UV樹脂17は、縦添えテープ13の送り方向の前方に備えた第1UVランプ35から照射される紫外線37により硬化して縦添えテープ13に固着する。なお、その縦添えテープ13としては、紫外線37を透過する樹脂テープを使用する。
【0036】
このとき、縦添えテープ13に塗布された2か所のUV樹脂17は、その直後に紫外線37が照射されることにより、図5に示されているように、各UV樹脂17の表面部17Aが硬化して円形状が保持されることになる。なお、この時はUV樹脂17の表面部17A以外は未だ完全に硬化していない状態で、未硬化領域17Bが存在する。
【0037】
より詳しく説明すると、UV樹脂17は紫外線37の照射により硬化される前は粘性の液体であるので、自然な状態で放置されると、中途半端な断面形状となってしまい、所望の形状を得ることができない。そこで、上述したようにUV樹脂17を縦添えテープ13の上に塗布した直後に、その上方から紫外線37をタイミング良く照射することで、所望の断面形状を確保することができる。
【0038】
次に、上記の2か所のUV樹脂17の上に3つ目のUV樹脂17を形成するために、上方に設けた3つ目のUV樹脂充填装置33からUV樹脂17が間欠的に噴射、供給され、3つ目のUV樹脂17が図6に示されているように、上記の2か所のUV樹脂17の上に幅方向でほぼ中央に乗るように、且つ前記縦添えテープ13の長手方向において間欠的に塗布される。その直後に、3つ目のUV樹脂17は、縦添えテープ13の送り方向の前方に備えた第2UVランプ39から照射される紫外線41により硬化して縦添えテープ13並びに2か所のUV樹脂17の上に固着することで、間欠固定材19が形成されることになる。このとき、間欠固定材19はその頂点19Aが前記縦添えテープ13の幅方向のほぼ中央になるように配置される。
【0039】
このとき、3つ目のUV樹脂17は、その直後に紫外線41が照射されることにより、図6に示されているように、前述した2か所のUV樹脂17と同様に、UV樹脂17の表面部17Aが硬化して円形状が保持されることになる。なお、この時はUV樹脂17の表面部17A以外は未だ完全に硬化していない状態で、未硬化領域17Bが存在する。
【0040】
その後、上記の縦添えテープ13は、ガイドローラ43を経て縦添えテープ集合部45へ送られる途中の縦添えテープ反転部47で反転することで、縦添えテープ13に固着されたUV固定材19が下向きになる。換言すれば、縦添えテープ13は3つのUV樹脂17でなる間欠固定材19を乗せた面がスロットロッド7に接触する側に反転することになる。
【0041】
その反転後に、図4及び図7に示されているように、縦添えテープ反転部47に備えた第3UVランプ49から紫外線51を縦添えテープ13の側から照射することで、その紫外線51が縦添えテープ13を透過して間欠固定材19の各未硬化領域17Bを硬化させることにより、図8に示されているように、UV樹脂17の全体を十分に硬化させることができ、縦添えテープ13にUV樹脂17を確実に固着させることができる。
【0042】
より詳しく説明すると、UV樹脂17の上から第1UVランプ35の紫外線37および第2UVランプ39の紫外線41を照射することで所望の断面形状を得ることはできるが、それだけでは紫外線37の照射量が不足し、未硬化状態のUV樹脂17が残存してしまう。しかし、紫外線を透過可能な縦添えテープ13の側から第3UVランプ49の紫外線51を照射することで、間欠固定材19の各未硬化領域17Bも適正に硬化させることができる。これにより、光ファイバケーブル1の品質の確保と製造効率を向上させることができる。
【0043】
なお、縦添えテープ13の材質としては、不織布、吸水性不織布、PETテープなどのプラスチックテープなどが挙げられる。また、上記のUV樹脂17としては、損失特性が劣化するような側圧を与えず、かつ光ファイバ移動を抑制できるソフトな材料、つまりヤング率が800Mpa以下である材料を選定することが望ましい。
【0044】
特に、紫外線を透過可能な縦添えテープ13としては、350μm〜450μmの波長の紫外線透過率が30%以上である材料であることが望ましい。例えば、紫外線吸収剤が添加されていないPETテープを用いることができる。
【0045】
次に、縦添えテープ集合部45では、光ファイバ3を溝5の内部に収納した1溝スロットロッド7が通過する時に、上記の縦添えテープ13がスロットロッド7の溝5の開口部11を覆うようにして縦添えされる。このとき、縦添えテープ13に塗布された間欠固定材19がスロットロッド7の溝5の内部に押し込まれることになる。
【0046】
また、間欠固定材19は、予め、スロットロッド7の溝5の幅以下の大きさになるように充填されることで、溝5の内部に抵抗無く挿入することが可能となる。図1及び図2に示されているように、スロットロッド7の溝5の内部の光ファイバ3が上記の間欠固定材19で間欠的に固定される。
【0047】
次に、上記のスロットロッド7は、溝5の開口部11が縦添えテープ13で覆うように縦添えされた状態で押出成形機53の押出ヘッド55内で前記縦添えテープ13とスロットロッド7の周囲を偏心した偏肉シース15で被覆されて押出成形されることにより光ファイバケーブル1が成形される。
【0048】
次に、この実施の形態の光ファイバケーブル11の効果性を示すために、表1の組み合わせで試験ケーブルを作成し、光ファイバ引き抜き力を測定した。塗布したUV樹脂のヤング率は500Mpaで、UV樹脂17の塗布長は100mmで、UV樹脂17の塗布ピッチは500mmである。
【0049】
また、光ファイバ引き抜き力の測定方法は、10m(メートル)の各試作ケーブルを用いて、光ファイバ3の片端末を360N/min以下のスピードで引っ張った時の光ファイバ移動時の力を測定する方法である。
【表1】

【0050】
表1において、「外接円」とは、光ファイバ3の全体の外接円の直径Dのことであり、「UV高さ」とは、間欠固定材19の頂点までの高さhのことであり、「溝深さ」とは、溝5の深さHのことである。
【0051】
また、〔溝深さH−(外接円D+UV高さh)〕/溝深さh
は、「クリアランス」と称する。
【0052】
上記の表1のデータは、図9に示されているように、クリアランスと光ファイバ引き抜き力との関係のグラフに表される。なお、光ファイバ引き抜き力の目標値は5N/10m以上である。
【0053】
したがって、図9のグラフから分かるように、光ファイバ引き抜き力の目標値である5N/10mを超える範囲は、クリアランスが−0.05以下であることから、光ファイバ引き抜き力の目標値を達成するためのUV高さhと、外接円の直径Dと、溝深さHとの関係の式は、〔溝深さH−(外接円D+UV高さh)〕/溝深さh>−0.05となり、この式を展開すると、〔(外接円D+UV高さh)−溝深さH〕〕/溝深さh>0.05となるから、前述した(式1)に該当することになる。
【0054】
その逆の言い方をすれば、前述した(式1)を満たす場合は、光ファイバ引き抜き力の目標値である5N/10m以上となり、十分な光ファイバ引き抜き力を得ることが可能である。
【0055】
しかも、図9のグラフから、UV樹脂17の一回塗布の場合のみならず、二回塗布でも同様の効果が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0056】
1 光ファイバケーブル(この実施の形態の)
3 光ファイバ
5 溝
7 スロットロッド
9 抗張力体(テンションメンバ)
11 開口部
13 縦添えテープ
15 偏肉シース
17 紫外線硬化性樹脂(UV樹脂)
17A 表面部
17B 未硬化領域
19 間欠固定材
19A 頂点
21 撚り線機
23 回転軸
25 回転体
27 光ファイバリール
29 集線ダイス
31 ファイバ集合部
33 UV樹脂充填装置
35 第1UVランプ
37 紫外線
39 第2UVランプ
41 紫外線
43 ガイドローラ
45 縦添えテープ集合部
47 縦添えテープ反転部
49 第3UVランプ
51 紫外線
53 押出成形機
55 押出ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを内部に収納した1つの溝を有する1溝スロットロッドと、このスロットロッドの溝の開口部を覆うよう縦添えした縦添えテープと、この縦添えテープと前記スロットロッドの周囲を被覆するシースと、からなる光ファイバケーブルにおいて、
前記スロットロッドの溝内の光ファイバを間欠的に固定すべく前記縦添えテープにその長手方向において紫外線硬化性樹脂を予め間欠的に固着して間欠固定材を設け、その間欠固定材の幅方向の断面は、UV固定材の頂点を前記縦添えテープの幅方向に配置しており、その間欠固定材の頂点までの高さhと、前記光ファイバの全体の外接円の直径Dと、前記溝の深さHとの関係が、
(h+D)−H≧H×0.05
であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記間欠固定材は、紫外線硬化性樹脂を複数回、塗布及び硬化することで構成されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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