説明

光ファイバーの接続構造及び接続方法

【課題】 コア径が異なる石英系光ファイバーと非線形光ファイバーとを、伝播ロスがより少なくなるように接続する接続構造を提供する。
【解決手段】 コア径が1μm以上2μm未満で、コアが石英系光ファイバーとの接続側端面に向かって狭窄し、接続側端面におけるコア径が0.5μm以上である非線形光ファイバーと、コア径が2.5μm以上である石英系光ファイバーとを接続し、石英系光ファイバーから非線形光ファイバーに光を入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア径の異なる石英系光ファイバーと非線形光ファイバーとを接続する接続構造及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来見込まれる通信サービスの多様化に対応するために、伝送容量の拡大を図る波長多重光通信方式(WDM)が提案されている。この方式においては、伝送容量を大きくするために、波長を変えることによってチャンネルを多重化している。したがって、この方式においては、ある波長から他の波長への波長変換が容易であることが望まれており、それには非線形光ファイバーの利用が考えられている(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。また、伝送容量の拡大のための他の方法として、時分割多重方式(TDM)も提案されており、TDMにおいて用いられる、40GHzを超えるような超高速光スイッチでも、非線形光ファイバーの利用が考えられている(非特許文献2参照)。
【0003】
【非特許文献1】“Bismuth-based optical fiber with nonlinear coefficient of 1360 W-1km-1”, N.Sugimoto, et. al (Optical Fiber Communication Conference and Exposition 2004, PDP 26)
【非特許文献2】.P.Agrawal : "Nonlinear Fiber Optics" Academic Press 1995
【特許文献1】特開2001−213640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非線形光ファイバーの性能は非線形係数γで表されるが、非線形係数γは非線形屈折率に比例し、有効断面積に反比例することが知られている。そのため、非線形光ファイバーの非線形性を高めるには、非線形屈折率の大きな材料を用いるか、有効断面積を小さくすることが有効であり、例えば、Bi系ガラス等の非線形屈折率が大きな材料でコアを形成し、かつコア径の小さい、具体的には1.7μm程度の光ファイバーが提案されている。
【0005】
一方で、光通信システムでは石英系光ファイバーによるネットワークが構築されており、端末に分岐あるいは接続する部分でこの非線形光ファイバーと接続される。しかし、上記のようにコア径が通常1.7μm程度である非線形光ファイバーを使用しようとすると、石英系光ファイバーで広く用いられているものは最もコア径の小さいものでも4μm程度であることから、両者の接続端面において伝播損失が大きくなるという不具合が生じる。特に、石英系光ファイバーから非線形光ファイバーに光を入射させる光通信システムでは、伝播ロスが著しく大きくなる。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、コア径が異なる石英系光ファイバーと非線形光ファイバーとを、石英系光ファイバーから非線形光ファイバーに光を入射させる場合の伝播ロスがより少なくなるように接続する接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下に示す光ファイバーの接続構造及び接続方法を提供する。
(1)コア径が2.5μm以上である石英系光ファイバーと、コア径が1μm以上2μm未満である非線形光ファイバーとが接続され、前記石英系光ファイバーから光が出射され前記非線形光ファイバーに入射する構成の光ファイバーの接続構造であって、
前記非線形光ファイバーのコアが、前記石英系光ファイバーとの接続側において狭窄し、その端面におけるコア径が0.5μm以上であることを特徴とする光ファイバーの接続構造(なお、「前記石英系光ファイバーから光が出射され前記非線形光ファイバーに入射する構成の」とは「前記石英系光ファイバーから光が出射され前記非線形光ファイバーに入射させるために用いられる」の意である)。
(2)前記非線形光ファイバーのコアが、前記石英系光ファイバーとの接続側端面から少なくとも0.1mm離間した位置から狭窄していることを特徴とする上記(1)記載の光ファイバーの接続構造。
(3)前記非線形光ファイバーが、Bi系ガラスファイバーであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の光ファイバーの接続構造。
(4)前記非線形光ファイバーと前記石英系光ファイバーとが融着接続されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の光ファイバーの接続構造。
(5)コア径が2.5μm以上である石英系光ファイバーと、コア径が1μm以上2μm未満である非線形光ファイバーとを接続する方法であって、
前記非線形光ファイバーの前記石英系光ファイバーとの接続側端部に、ガラス製キャピラリを被嵌し、前記キャピラリの外部から加熱を行いつつ該キャピラリ及び前記非線形光ファイバーの両端面または一端面を軸線方向に引っ張り、次いで、前記非線形光ファイバーの前記石英系光ファイバーとの接続側端面におけるコア径が0.5μm以上で、かつ外径が前記石英系光ファイバーの外径と一致する位置にて切断し、切断面と前記石英系光ファイバーとを接続することを特徴とする光ファイバーの接続方法。
(6)さらに、前記非線形光ファイバーと前記石英系ファイバーとの接続部を融着することを特徴とする上記(5)記載の光ファイバーの接続方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非線形光ファイバーのコアを、石英系光ファイバーとの接続側端面に向かって狭窄する形状としたことにより、コア径の大きな石英系光ファイバー側からコア径の小さな非線形光ファイバーに光を入射しても非線形光ファイバーの接続側端面での入射光の漏れが少なく、良好な光伝送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の光ファイバーの接続構造の基本的概念を説明するための模式図であり、後述する接続方法で用いるキャピラリーは省略してある。図示されるように、本発明の光ファイバーの接続構造は、コア径の大きな石英系光ファイバー2と、コア径の小さい非線形光ファイバー4とを接続してなり、光が石英系光ファイバー2から出射され非線形光ファイバー4に入射される光通信システムに適用される。
【0011】
石英系光ファイバー2のコア1の直径は2.5μm以上であるが、光通信システムに使用されている流通品ではコア径が4μm以上であり、本発明ではこの一般的な光通信システム用の石英系光ファイバーを用いることが典型的である。また、本発明においては、石英系光ファイバー2に関して、コア径以外は何ら制限されない。
【0012】
本発明において、非線形光ファイバー4とは、波長が1550nmの光に対する非線形係数γが10W−1km−1以上の光ファイバーを意味する。非線形光ファイバー4は、そのコア径が1μm以上2μm未満であり、かつ、石英系光ファイバー2との接続側端面6に向かって漸次狭窄しており、さらに接続側端面6におけるコア径(r5)が0.5μm以上となるように規定されている。図1において、点線はモードフィールド径(MFD)を示すが、このMFDはコア径が小さくなるのに比例して大きくなる特性を有し、図示されるように、非線形光ファイバー4のコア3が狭窄するのに伴ってMFDが漸次大きくなっている。本発明では、非線形光ファイバー4のコア3を狭窄させてMFDを石英系光ファイバー2のコア径あるいはMFDに一致もしくは近似させることで、石英系光ファイバー2からの光を非線形光ファイバー4に効率よく導き、伝送ロスを抑える。このような作用を十分に発現させるためには、後述する実施例にも示すように、非線形光ファイバー4の接続側端面6におけるコア径(r5)を0.5μm以上にする必要がある。また、コア径(r5)の上限は、典型的には1.3μmである。
【0013】
また、上記の作用をより効果的に発現させるためには、非線形光ファイバー4のコア3の狭窄部5は緩やかなテーパで形成されていることが好ましく、具体的には接続側端面6からの距離(L5)として0.1mm以上、より好ましくは、入射する光の波長の100倍以上である。
【0014】
本発明において、非線形光ファイバー4は、上記のように非線形係数γが10W−1km−1以上のものが対象となるが、非線形係数γが1000W−1km−1以上のものが好ましい。このような高非線形係数を有する非線形光ファイバー4として、コア3が、モル%表示(以下、単に%)で、Bi23:39〜70%、B23+SiO2:10〜55%、Al23+Ga23:5〜20%、CeO2:0.01〜5%、からなるBi系ガラスからなる光ファイバーが好ましく、典型的にはBi23が62〜70%、SiO2が12〜16%、Ga23が8〜12%、CeO2が0.1〜0.3%であるBi系ガラスからなるコア3を有する光ファイバーを例示できる。
【0015】
上記Bi系ガラスにおいて、Bi23の含有量が39%未満では、三次非線形光学効果が小さくなりすぎる。好ましくは40%以上である。70%超ではガラス化が困難になる、またはファイバ加工時に結晶が析出しファイバ加工が困難になる。
【0016】
23およびSiO2はいずれもネットワークフォーマであり、少なくともいずれか一種を含有しなければならない。B23およびSiO2の含有量の合計が5%未満ではガラス化が困難になる、またはファイバ加工が困難になる。好ましくは10%以上である。55%超では、三次非線形光学効果が小さくなりすぎる。好ましくは50%以下である。
【0017】
23を含有する場合、その含有量は1%以上であることが好ましい。より好ましくは10%以上である。また、前記含有量は、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。
【0018】
SiO2を含有する場合、その含有量は1%以上であることが好ましい。より好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上である。また、前記含有量は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。
【0019】
Al23およびGa23はいずれもファイバー加工時の結晶化を抑制する成分であり、少なくともいずれか一種を含有しなければならない。Al23およびGa23の含有量の合計が5%未満では、前記結晶化を抑制する効果が小さい。20%超では、ガラス作製時に結晶化しやすくなる。
【0020】
Al23を含有する場合、その含有量は0.5%以上であることが好ましい。より好ましくは3%以上、特に好ましくは5%以上である。また、前記含有量は、好ましくは15%以下である。
【0021】
Ga23を含有する場合、その含有量は1%以上であることが好ましい。より好ましくは3%以上、特に好ましくは5%以上である。
【0022】
CeO2は必須ではないが、Bi23がガラス融液中に金属ビスマスとして析出することを抑制し、ガラスの透明性の低下を抑制する効果を有し5%まで含有してもよい。5%超ではガラス形成が困難になり、また三次非線形光学効果が低下する。好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。CeO2はガラスを黄色またはオレンジ色に着色する傾向を有する成分であるが、この着色による透過率の低下を抑制したい場合はCeO2を含有しないことが好ましい。
【0023】
CeO2を含有する場合、その含有量は0.01%以上であることが好ましい。0.01%未満では金属ビスマス析出によるガラスの透明性低下を抑制する効果が小さい。より好ましくは0.1%以上である。
【0024】
その他の成分として、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、TiO2、WO3、SnO2、TeO2等を合計で10%まで含有してもよい。なお、As、S、Seはいずれも含有しないことが好ましい。また、Erは、980nm帯および1550nm帯の波長域の光を吸収し該波長域における透過率を低下させるので、含有しないことが好ましい。
【0025】
また、非線形光ファイバー4において、コア2の屈折率のn1とクラッドの屈折率n2との間には次式の関係が成り立っていることが好ましい。
0.0005≦(n1−n2)/n1≦0.1
【0026】
このような関係を満足するクラッド用ガラスとしては、Bi23:25〜70%、B23+SiO2:5〜74.89%、Al23+Ga23:0.1〜30%、CeO2:0〜10%、からなることが好ましい。また、コア2がCeO2を0.1〜10%含有する場合、前記好ましいクラッドガラスにおいてCeO2が0.1〜10%であることがより好ましい。
【0027】
上記のコア3が狭窄した非線形光ファイバー4はたとえば以下のようにして得られる。すなわち、先ず、上記のコア用およびクラッド用のガラスを用いて定法に従ってコア径及び外径が一定の非線形光ファイバー4を作製する。次いで、図2に示すように、典型的にはこの非線形光ファイバー4のクラッド用ガラスと同一、あるいは組成が近似するガラスからなり、内径がファイバー外径と同一で所定長の円筒状のキャピラリ7を、その端面7aが非線形光ファイバー4の接続側端面6と面一となるように被嵌し、キャピラリ7の端面7a及び非線形光ファイバー4の接続側端面6に適当な接着剤(例えば、住友化学社製「スミセラム」)を塗布し、両者を固着させる。次いで、非線形ファイバー4を鉛直に支持し、キャピラリ7の端面7aに近い部分を2枚の金属板8,8で挟持し、金属板8,8に錘9を吊り下げる。そして、この状態でキャピラリ7の外周を加熱することにより、キャピラリ7及び非線形光ファイバー4が軟化、延伸して非線形光ファイバー4のキャピラリ被嵌部分が狭窄する。この加熱はキャピラリ7の外周を局所的に加熱して行うことが好ましく、図示されるように、キャピラリ7の長手方向中央部の外側に、カンタル線等のヒータ線を数回旋回させたコイルヒータ10を配置して行うことが好ましい。そして、図4に示すように、非線形光ファイバー4のコア径(r5)が0.5μm以上で、キャピラリ7の端面7aの径(R)が、接続する石英系光ファイバーのファイバー径と一致する位置にてキャピラリ7及び非線形光ファイバー4を切断する。
【0028】
尚、キャピラリ7の肉厚は、キャピラリ自体の全長や錘9の重量等を考慮して適宜設定されるが、0.25〜2.5mmが適当である。また、必要に応じて、切断後に、突出している外周部分を元の非線形光ファイバー4の外径に合わせて切削してもよい。
【0029】
本発明の接続構造では、上記の非線形光ファイバー4と石英系光ファイバー2とを、適当な固定治具を用いて両端面を当接させた状態で固定してもよいが、接続部の強度や安定性を増すためには、両光ファイバーを融着することが好ましい。その際、非線形光ファイバー4のコア3を形成するBi系ガラスのガラス転移点は概ね600℃以下であり、石英系光ファイバー2のコア1のガラス転移点が概ね1000℃以上であるため、両光ファイバーの接合面を直接加熱して融着させようとすると、非線形光ファイバー4の接続側端面6において顕著な軟化流動または揮散が起り、両者の端面を融合できない。そこで、以下に示す融着方法を採用することが好ましい。
【0030】
即ち、図4に模式的に示すように(尚、キャピラリ7は非線形光ファイバー4の外径に合わせて加工してある)、先ず、非線形光ファイバー4と石英系光ファイバー2とを両光ファイバーの軸が一致するように突き合わせ、コア用ガラスのガラス転移点が高い石英系光ファイバー2の接続側端面2aから所定距離(x)離れている部分が最も高温になるように、加熱手段11、例えば放電加熱用電極を配置する。ここで、距離xは、非線形光ファイバー4のコア3と石英系光ファイバー2のコア1とのガラス転移点または軟化点の差を考慮して選択されるが、1μm以上が適当である。
【0031】
また、非線形光ファイバー4の接続側端面6および石英系光ファイバー2の接続側端面2aは共に平ら、即ち、非線形光ファイバー4の軸とその接続側端面6とがなす角度、石英系光ファイバー2の軸とその接続側端面2aとがなす角度が共に90°であってもよいが、前記角度を90°未満とすることが好ましい。前記角度が90°では生成する融合面において、両光ファイバーの屈折率の違いによって生ずる光の反射が多くなり、その結果帰還する光が多くなり、不要信号(スプリアス)を増大させるおそれがある。より好ましい前記角度は87°以下である。前記角度の下限値は60°であり、60°未満では端面加工が難しくなって端面の平坦度が低下する等の問題が起るおそれがあり、好ましくは75°以上、より好ましくは80°以上である。
【0032】
このような融着方法によれば、非線形光ファイバ−4の接続側端面6は、放電領域中心部より放電エネルギー密度が低くなり、接続側端面6において顕著な軟化流動および揮散のいずれもが起ることなく、石英系光ファイバー2の接続側端面2aと良好な融合がなされる。
【0033】
また、端面融合をより適切に行うために、両接続側端面6,2aを突き合わせる力を調整して、端面融合中に一方の光ファイバーを他方の光ファイバー側に動かしてもよい。この移動量は50μm以下であることが好ましく、50μm超では融合端面の変形が顕著になり、端面融合が適切に行われなくなるおそれがある。
【0034】
融着条件である距離(x)、放電加熱用電極11,11の先端間の距離、放電電流、放電時間、放電回数、放電休止時間、光ファイバーの押し込み量等は適宜選択されるが、例えば放電回数は、好ましくは1000以下、より好ましくは100以下である。また、1回当たりの放電時間は、好ましくは0.001〜1秒、より好ましくは0.001〜0.1秒、特に好ましくは0.01〜0.1秒である。また、放電休止時間は、好ましくは0.001〜1秒、より好ましくは0.001〜0.5秒、特に好ましくは0.01〜0.1秒である。また、押し込み量は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、特に好ましくは0μmである。
【実施例】
【0035】
以下に示すシミュレーションにより、本発明を更に説明する。
(シミュレーション1)
コア径1.7μm、コアの屈折率2.22、クラッドの屈折率2.132、狭窄部の長さ(L5)0.25mm、狭窄部以外の部分の長さ1mmの非線形光ファイバーと、コア径5.2μm、コアの屈折率1.46、クラッドの屈折率1.454、全長0.25mmの石英系光ファイバーとを接合し、石英系光ファイバーから非線形光ファイバーに光を入射した場合を想定し、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)を変化させたときの接続効率を、ビーム伝播法(Beam Propagation method)を基に計算した。
【0036】
結果を図5にグラフ化して示すが、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)が0.5μmで接続効率が40%を越えており、実用上問題の無い接続効率が得られる。但し、コア径(r5)が1.3μmを越えると接続効率が40%未満となり、実用上好ましくない。
【0037】
(シミュレーション2)
コア径4.17μm、コアの屈折率1.459、クラッドの屈折率1.444、全長0.25mmの石英系光ファイバーを用いた以外はシミュレーション1と同様にして接続効率を計算した。
【0038】
結果を図6にグラフ化して示すが、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)が0.5μmで接続効率が約40%であり、実用上問題の無い接続効率が得られる。但し、コア径(r5)が1.3μmを越えると接続効率が40%未満となり、実用上好ましくない。
【0039】
(シミュレーション3)
コア径2.3μm、コアの屈折率1.48、クラッドの屈折率1.44、全長0.25mmの石英系光ファイバーを用いた以外はシミュレーション1と同様にして接続効率を計算した。
【0040】
結果を図7にグラフ化して示すが、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)が0.5μmでは接続効率が約20%であり、実用上好ましくない。
【0041】
上記のシミュレーションから、コア径が2.5μm以上の石英系光ファイバーと、コア径が1μm以上2μm未満で、接続側端面におけるコア径(r5)が0.5μm以上となるように狭窄したコアを有する非線形光ダイバーとを接続することにより、伝播損失が抑えられて良好な光伝送が可能になることがわかる。
【0042】
(シミュレーション1に相当する実施例)
非線形ファイバー4のコア3、クラッドおよび狭窄部作成用キャピラリ7に用いられるガラスを次のようにして作製した。すなわち、表1にモル%表示で示す組成となるように原料を調合、混合し250gの調合原料を作製した。この調合原料を白金ルツボに入れ大気雰囲気中で1100℃に2時間保持して溶解し、得られた溶融ガラスを板状に流し出し、引続き表1のTgの欄に℃単位で示す温度に4時間保持後常温まで冷却する徐冷を行った。
【0043】
【表1】

【0044】
コアガラスおよびクラッドガラスを用い、ロッドインチューブ法を用いて非線形光ファイバ4を次のようにして作製した。
まず、コアガラスを溶融して内径が10mm、高さが180mmであるSUS310S製の茶筒状モールド(底面を有する円筒状モールド)に流し出し、徐冷してロッド状ガラスとした。次に、このロッド状ガラスを430℃でリドローし直径5mmのロッドガラスとした。
【0045】
一方、クラッドガラスからなり、外径が15mm、内径が7mm、高さが150mmであるガラス管を4本作製した。前記ロッドガラスを前記ガラス管のうちの1本に入れ、ガラス管内部を真空ポンプで真空に保ちつつ440℃でガラス管とロッドガラスを同時にリドローし、直径5mmのガラスロッドを作製した。このガラスロッドを前記ガラス管の残り3本のうちの1本に入れ、同様にしてリドローして直径5mmのガラスロッドを作製した。
【0046】
前記ガラス管の残りの2本を用いてこれをさらに2回繰り返し、コア径が0.06mm、外径が5mmであるプリフォームを作製した。このプリフォームを445℃で線引きし、コア径が1.72μm、ファイバー径が125μmである非線形光ファイバー4を作製した。
この非線形光ファイバー4のMFDは2.0μm、γは1200W−1km−1であった。
【0047】
また、キャピラリガラスからなり、外径が15mm、内径が7.5mm、高さが150mmであるガラス管を作製した。このガラス管をリドローし、外径5mmのガラスプリフォームを作製した。このプリフォームを445℃で線引きし、内径132μm、外径が262μmであるガラス管とし、そのガラス管から長さが5.5cmのキャピラリ7を作製した。
【0048】
非線形ファイバー4の狭窄部5の作製は、先に図2を用いて説明した方法とやや異なる方法によって行った。
すなわち、まず、非線形光ファイバー4の先端部をキャピラリ7に挿入し、キャピラリ7を狭窄部作成用鉛直板に固定する。キャピラリ7の鉛直板への固定は、ゴム板とテフロン(登録商標)ワッシャを用意しこれらの間にキャピラリ7の一端に近い部分をはさみ、ゴム板を鉛直板に接触させ、ワッシャを鉛直板にネジ止めしてキャピラリ7をゴム板とともに鉛直板に固定して行う。固定後、非線形ファイバー4のキャピラリ7の下端面からはみ出している部分を折り取る。
キャピラリ7の下端に近い部分(前記ネジ止めした箇所からの距離は5cm)も同様にしてゴム板およびテフロンワッシャによってネジ等を用いてはさまれるが、鉛直板に対しては固定されない。なお、ゴム板およびテフロンワッシャ、ネジ等の総重量は50gであった。
【0049】
キャピラリ7の中央部の加熱を、コイルヒータ10に電圧を印加して行った。
コイルヒータ10は抵抗が0.6Ωのカンタル線からなり、そのコイル形状は直径4mm、高さ3mmである。
加熱は、まず0.37Vで予熱し、その後0.65Vに昇圧して行った。昇圧後、加熱された部分が軟化し、その部分より下の部分が落下し、前記加熱された部分が延伸後切断される。なお、落下する部分をはさんでいたゴム板等はガイドに沿って下方に移動するようにされ、この加熱延伸は約1分で終了した。
次に、延伸部先端を研磨し、Rが120μm、L5が800μmである狭窄部5を得た。なお、この形状寸法から計算して得られたr5は0.82μmであった。
【0050】
コア径が5.2μm、コア1の屈折率が1.46、クラッド屈折率が1.454である石英系シングルモードファイバ2を用意しその一端を、長さが150cmの非線形ファイバ4の接続側端面6と密着させ、中心波長が1550nmであるLEDからの光を石英系シングルモードファイバ2に入射し透過光量を測定したところ−56.8dBmであった。
比較のために狭窄部5を形成していない直径が125μm、長さが146cmである非線形ファイバーを用いて同様の測定を行ったところ透過光量は−61.5dBmであった。
ここで用いた非線形ファイバーの伝播損失は約2.2dB/mであるので、狭窄部5の形成によって損失は5.3dB減少したことになる。なお、シミュレーション1の結果からはこの損失の減少は6dBと見込まれ、両者は概ね一致しているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る非線形光ファイバーと石英系光ファイバーとの接続構造を示す模式図である。
【図2】非線形光ファイバーの接続側端面を狭窄させる方法を説明するための模式図である。
【図3】図2に示す方法により得られる非線形光ファイバーを示す模式図である。
【図4】非線形光ファイバーと石英系光ファイバーとの融着方法を説明するための模式図である。
【図5】シミュレーション1により得られた、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)と接続効率との関係を示すグラフである。
【図6】シミュレーション2により得られた、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)と接続効率との関係を示すグラフである。
【図7】シミュレーション3により得られた、非線形光ファイバーの接続側端面におけるコア径(r5)と接続効率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1 石英系光ファイバーのコア
2 石英系光ファイバー
3 非線形光ファイバーのコア
4 非線形光ファイバー
5 狭窄部
6 接続側端面
7 キャピラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア径が2.5μm以上である石英系光ファイバーと、コア径が1μm以上2μm未満である非線形光ファイバーとが接続され、前記石英系光ファイバーから光が出射され前記非線形光ファイバーに入射する構成の光ファイバーの接続構造であって、
前記非線形光ファイバーのコアが、前記石英系光ファイバーとの接続側において狭窄し、その端面におけるコア径が0.5μm以上であることを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項2】
前記非線形光ファイバーのコアが、前記石英系光ファイバーとの接続側端面から少なくとも0.1mm離間した位置から狭窄していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバーの接続構造。
【請求項3】
前記非線形光ファイバーが、Bi系ガラスファイバーであることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバーの接続構造。
【請求項4】
前記非線形光ファイバーと前記石英系光ファイバーとが融着接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光ファイバーの接続構造。
【請求項5】
コア径が2.5μm以上である石英系光ファイバーと、コア径が1μm以上2μm未満である非線形光ファイバーとを接続する方法であって、
前記非線形光ファイバーの前記石英系光ファイバーとの接続側端部に、ガラス製キャピラリを被嵌し、前記キャピラリの外部から加熱を行いつつ該キャピラリ及び前記非線形光ファイバーの両端面または一端面を軸線方向に引っ張り、次いで、前記非線形光ファイバーの前記石英系光ファイバーとの接続側端面におけるコア径が0.5μm以上で、かつ外径が前記石英系光ファイバーの外径と一致する位置にて切断し、切断面と前記石英系光ファイバーとを接続することを特徴とする光ファイバーの接続方法。
【請求項6】
さらに、前記非線形光ファイバーと前記石英系ファイバーとの接続部を融着することを特徴とする請求項5記載の光ファイバーの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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