光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び光ファイバの融着方法
【課題】簡易な作業で複数本の光ファイバを円滑かつ正確に整列させることが可能な光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び光ファイバの融着方法を提供する。
【解決手段】外側の被覆4を端末部分で除去した複数本の光ファイバ1を整列させる光ファイバ用整列治具11であって、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した被覆除去部3aの外径より大きく、被覆4の外径より小さい隙間寸法dの整列溝23が一端面に開口して設けられた整列ガイド12と、並列に整列させた複数本の光ファイバ1の、被覆4を有する部分を弾性的に保持するクランプ13と、整列ガイド12とクランプ13とを整列溝23内に通した光ファイバ1の軸方向に沿って相対移動可能に支持するベース14を備える。
【解決手段】外側の被覆4を端末部分で除去した複数本の光ファイバ1を整列させる光ファイバ用整列治具11であって、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した被覆除去部3aの外径より大きく、被覆4の外径より小さい隙間寸法dの整列溝23が一端面に開口して設けられた整列ガイド12と、並列に整列させた複数本の光ファイバ1の、被覆4を有する部分を弾性的に保持するクランプ13と、整列ガイド12とクランプ13とを整列溝23内に通した光ファイバ1の軸方向に沿って相対移動可能に支持するベース14を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを整列させる光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び複数本の光ファイバ同士を融着させる光ファイバの融着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の光ファイバを整列させ、その状態でファイバホルダにより保持し、テープ状多心光ファイバと同様に一括融着接続することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような一括融着接続時に光ファイバを保持するホルダとしては、光ファイバ整列溝を有する基台と、光ファイバ整列溝の上方に開閉可能に配され光ファイバ心線を押える押え部材を有する心線整列蓋とを備え、光ファイバ整列溝が先端側の幅を徐々に狭めた形状とされているものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−285902号公報
【特許文献2】特開2007−171825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のホルダを用いた場合は、蓋を閉めた状態で複数本の光ファイバを1本ずつ溝に挿入し、作業途中に蓋を開いて目視で整列状態を確認しながら、溝が狭くなる部分に形成された傾斜部分を利用して複数本の被覆端部の位置を揃える作業が行われる。
しかし、ホルダの溝ではそれぞれの被覆端部を位置決めすることが難しく、複数本の光ファイバをそれぞれ溝に挿入していく過程で光ファイバ同士の摩擦などにより全ての光ファイバの位置を正確に揃えることが難しかった。そのため、光ファイバの位置を前後に調整しつつホルダの蓋を開閉して何度も目視で確認することが必要で、作業が煩雑になっていた。
【0005】
また、並列させた光ファイバの軸方向の位置が正確に揃わないと、融着させる光ファイバの端部の位置にばらつきが生じ、融着作業が円滑に行えなかったり、正確に接続することが困難となったりする場合があった。
【0006】
また、光ファイバの被覆端を係止する段差をホルダの溝に設けておくことが考えられるが、その場合には段差より先端側で光ファイバの先端部分が上向きに浮き上がりやすく、融着接続機での先端部分の位置合わせが難しくなって融着作業を円滑に行うことが困難になってしまう。
【0007】
本発明の目的は、簡易な作業で複数本の光ファイバを円滑かつ正確に整列させることが可能な光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び光ファイバの融着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバ用整列治具は、外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバ用整列治具であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドと、
並列に整列させた複数本の前記光ファイバの、前記外側の被覆を有する部分を弾性的に保持するクランプと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の光ファイバ用整列治具において、前記整列ガイドは、前記整列溝における前記光ファイバの並列方向の一方側が開放されていることが好ましい。
【0010】
本発明の光ファイバ用整列治具において、前記整列ガイドと前記クランプとを前記整列溝内に通した前記光ファイバの軸方向に沿って相対移動可能に支持するベースを備えることが好ましい。
【0011】
本発明の光ファイバ用整列治具において、前記整列ガイドは、前記光ファイバの軸方向と直交する面内で変位可能に前記ベースに取り付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の光ファイバ用整列治具において、並列させた複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部と前記外側の被覆とをそれぞれの幅に合わせて収容可能な収容溝を備えるとともに前記収容溝に収容させた前記光ファイバを保持するホルダが、前記ベース上の前記整列ガイドと前記クランプとの間に着脱可能とされ、前記ホルダは、前記収容溝における前記外側の被覆端の配置箇所が前記整列ガイドの前記一端面の位置に合うように、前記ベース上で位置調整可能であることが好ましい。
【0013】
本発明の光ファイバの整列方法は、外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバの整列方法であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドの前記整列溝へ複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部を挿入して並列させ、
それぞれの前記光ファイバの前記外側の被覆の端部を前記整列ガイドの前記一端面に当接させて前記光ファイバの軸方向の位置を揃えて整列状態とし、
前記整列状態の複数本の前記光ファイバの前記外側の被覆を有する部分を、クランプで弾性的に保持させた状態で、
複数本の前記光ファイバをホルダの収容溝に収容して、前記ホルダに設けられた保持蓋で前記収容溝内の前記光ファイバを保持させることを特徴とする。
【0014】
本発明の光ファイバの整列方法において、前記整列状態の前記光ファイバの端末部分を把持しながら前記クランプを前記光ファイバの軸方向に沿って前記端末部分から離れる方向に移動させて、前記光ファイバの弛みを除去することが好ましい。
【0015】
本発明の光ファイバの整列方法において、前記クランプによる前記光ファイバの保持後に、前記整列ガイドを前記光ファイバの軸方向と直交する面内で移動させて前記光ファイバから退避させることが好ましい。
【0016】
本発明の光ファイバの融着方法は、上記の何れかの光ファイバの整列方法によって前記ホルダに揃えて保持させた複数本の前記光ファイバを、他の複数本の光ファイバと融着接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数本の光ファイバの端末部分を整列ガイドの整列溝へ挿入し、外側の被覆端を整列ガイドの一端面に当接させることにより、極めて円滑かつ正確に光ファイバの端部位置を揃えることができる。また、被覆端が揃っていることが一目で判るので、ホルダの蓋を開閉するような煩雑な作業を伴わずに整列状態を確認できる。また、高精度に端部位置を揃えた光ファイバをクランプで保持することにより、光ファイバの高精度な整列状態を維持させることができる。そして、このように高精度に整列させた複数本の光ファイバを、端末処理や融着接続処理を行う際に用いるホルダへ容易にかつ整列状態を維持したまま保持させることができる。これにより、複数本の光ファイバをホルダの収容溝へ保持蓋を開閉させながら直接位置決めして保持させる場合と比較して、端末処理や融着接続処理の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光ファイバ用整列治具で整列させる複数本の光ファイバの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る光ファイバ用整列治具の一実施形態を後端側から見た斜視図である。
【図3】図2の光ファイバ用整列治具におけるクランプとホルダを取り外した状態の斜視図である。
【図4】図2の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における後端側から見た斜視図であり、(b)は先端側から見た斜視図である。
【図5】図2の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における後端側から見た平面図であり、(b)は先端側から見た平面図である。
【図6】図2の光ファイバ用整列治具の整列ガイドに光ファイバを挿入した状態を先端側から見た斜視図である。
【図7】図2の光ファイバ用整列治具の整列ガイドに光ファイバを挿入した状態を後端側から見た斜視図である。
【図8】図7の状態から光ファイバの被覆端を整列ガイドに当接させた状態を見た斜視図である。
【図9】図8の状態からクランプを閉じようとする状態の斜視図である。
【図10】図9の状態からクランプを閉じた状態の斜視図である。
【図11】図10の状態からクランプを後端側に移動させた状態の斜視図である。
【図12】図11の状態から整列ガイドを変位させた状態の斜視図である。
【図13】図12の光ファイバの端部に融着部保護スリーブを被せた状態の斜視図である。
【図14】図13の状態から融着部保護スリーブをクランプ付近まで移動させた状態の斜視図である。
【図15】図14の状態からホルダの位置を微調整した状態の斜視図である。
【図16】図15の拡大図である。
【図17】図16の状態からホルダの蓋を閉じた状態の斜視図である。
【図18】図17の状態から光ファイバを保持しているホルダとクランプをベースから取り外した状態の斜視図である。
【図19】光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドの他の形態例を示す平面図である。
【図20】光ファイバ用整列治具の他の形態例を示す斜視図である。
【図21】図20の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における先端側から見た斜視図であり、(b)は後端側から見た斜視図である。
【図22】図20の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における後端側から見た平面図であり、(b)は先端側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び光ファイバの融着方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
本実施形態の光ファイバ用整列治具は、複数本の光ファイバの端末部分を並列させるとともに、外側の被覆を除去した部分の被覆端の位置を揃えて整列させるものである。
【0020】
図1は単心の光ファイバ1を複数本(本実施形態では一例として4本)並列させた状態を示すものである。光ファイバ1として、コア及びクラッドからなるガラスファイバの外周を樹脂からなる被覆で被覆した光ファイバ心線3をさらに樹脂からなる被覆4で被覆したものを例示できる。この光ファイバ1の寸法の一例としては、外側の被覆4を有する部分の外径が0.50mmであり、被覆4を除去した光ファイバ心線3の部分の外径が0.25mmであり、ガラスファイバの外径が0.125mmである。光ファイバ1を整列させる前に、被覆除去器等の治具を用いて端末部分の外側の被覆4を除去して被覆除去部3aを設け、融着作業に要する所定の長さの光ファイバ心線3を露出させておく。
【0021】
図1のような複数本の光ファイバ1をホルダに保持させる前に整列させるための治具として、図2及び図3に示す光ファイバ用整列治具11を用いる。
図2及び図3に示すように、光ファイバ用整列治具11は、整列ガイド12と、クランプ13とを備えている。また、光ファイバ用整列治具11は、細長い略直方体形状の部分を有するL字型のベース14を備えており、このベース14の長手方向の一端側に、整列ガイド12が取り付けられている。クランプ13は、ベース14に対して着脱可能とされている。なお、図2及び図3におけるベース14の左奥の長手方向の端部側を光ファイバ用整列治具11の先端側とし、図2及び図3におけるベース14の右前端側を光ファイバ用整列治具11の後端側として説明する。
【0022】
図4及び図5に示すように、整列ガイド12は、その上部に、凸状の摘み部26が設けられ、その下側に整列部21が設けられている。この整列部21は、後端側の少なくとも一端面22側に、水平方向に延びる整列溝23が形成されている。この整列溝23は、その隙間寸法d(図5(a)参照)が、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した光ファイバ心線3の被覆除去部3aの外径(例えば0.25mm)より大きく、被覆4を有する部分の外径(例えば0.50mm)より小さい寸法(0.3mm程度)である。この整列溝23は、その水平方向(光ファイバ並列方向)の一方側が開放されており、この整列溝23の開放側には、整列溝23側へ向かって次第に狭まるテーパ部24が形成されている。なお、整列溝23は整列ガイド12の一端面に前記の隙間寸法で開口したものであればよく、図4に示すように整列ガイド12の一端面22と反対側(他端面側)では整列溝23と連続した空間が広がって形成されていてよい。
【0023】
また、この整列ガイド12の下部には、整列溝23の開放側と反対側の位置に、ベース14に対してスライド可能に連結させるための連結部25が形成されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、クランプ13は、下側挟持ブロック31と、上側挟持ブロック32とを備えている。下側挟持ブロック31及び上側挟持ブロック32は、上部と前後が開口した形状を有する枠部31a,32aと、この枠部31a,32aの内側に嵌め込まれた弾性体33,34とを有している。これらの弾性体33,34としては、例えば、ウレタンゴム製のスポンジ等を用いるのが好ましい。
【0025】
これらの下側挟持ブロック31と上側挟持ブロック32とは、その一側部同士が回動可能に連結されている。下側挟持ブロック31には、上側挟持ブロック32との連結側と反対側の側面に、係止爪35が形成されている。また、上側挟持ブロック32には、下側挟持ブロック31との連結側と反対側の側面に、係止爪35に係止する係止孔36を有する係止片37が形成されている。
【0026】
このクランプ13では、下側挟持ブロック31の弾性体33上に光ファイバ1を配置した状態で、下側挟持ブロック31に対して上側挟持ブロック32を回動させ、下側挟持部ブロック31の弾性体33に上側挟持ブロック32の弾性体34を重ね合わせると、これらの弾性体33,34によって光ファイバ1が挟持されて弾性的に保持される。
また、下側挟持ブロック31には、その下面に、磁石38を有し下向きに凸状とされた係合凸部39が設けられている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ベース14は、上面視L字型形状に形成されており、その一端側近傍に、ベース14の長手方向と直交する方向に直線状に延びた凹部41が形成されている。この凹部41には、整列ガイド12の下方部分が収容されており、整列ガイド12の整列部21が、ベース14の上面よりも上方に配置されている。凹部41の底部には、更に一段凹んで形成された直線状のガイド溝42が設けられている。このガイド溝42には、凹部41に収容された整列ガイド12の連結部25が挿入されて係合されている。これにより、整列ガイド12は、連結部25によってベース14に連結され、この連結部25による連結箇所をガイドとして直線状にスライド可能とされている。すなわち、整列ガイド12は、光ファイバ1の軸方向と直交する面内で(直交する方向に)スライド可能にベース14に取り付けられている。
【0028】
ベース14には、その上面の他端側近傍に、長手方向に沿って保持溝45が形成されており、この保持溝45の底面45aは、鉄等の磁性体により形成されている。この保持溝45は、クランプ13の下側挟持ブロック31の係合凸部39が嵌合可能な幅と深さを有する。そして、この下側挟持ブロック31の係合凸部39を保持溝45へ嵌合させると、係合凸部39の磁石38が保持溝45の底面45aに吸着される。これにより、下側挟持ブロック31が、ベース14の上面に保持される。また、係合凸部39を保持溝45に嵌合させたまま、クランプ13を保持溝45の長手方向に沿ってスライドさせることができる。
【0029】
また、ベース14の上面における保持溝45と凹部41との間には、保持溝45と一列に延びた保持凸部47が形成されており、この保持凸部47には、光ファイバ1を融着接続させるとき等に光ファイバ1を保持するホルダ51が係合可能な幅を有する。また、保持凸部47の上面47aは、ホルダ51を吸着させるために、鉄等の磁性体により形成されている。
【0030】
ホルダ51は、ベース部分であるホルダ本体52を有している。ホルダ本体52は、その上面に、複数本の光ファイバ1を並列に収容する収容溝53が軸方向に沿って形成されている。この収容溝53におけるホルダ本体52の一端側には、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した複数本の光ファイバ心線3(被覆除去部3a)を一列に並べて収容する幅を有する先端溝53aと、先端溝53aに向かって次第に溝幅が狭められたテーパ部53bとを有し、テーパ部53bからホルダ本体52の他端側には、光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分を複数本一列に並べて収容する幅を有する平行溝53cが延びている。この平行溝53cとテーパ部53bとの境界部分の位置に、光ファイバ1の外側の被覆4の端部が配置される。
【0031】
ホルダ本体52には、その一側部に、複数の保持蓋55が回動可能に設けられている。これらの保持蓋55を、ホルダ本体52との連結箇所を中心として回動させることにより、ホルダ本体52の上面が開閉される。そして、保持蓋55は、ホルダ本体52の上面に向けて回動させることにより、収容溝53の上部を覆うように配置され、収容溝53に収容されている複数本の光ファイバ1を保持する。
【0032】
また、ホルダ本体52には、その下面における両側部に、係合凸部56が形成されており、これらの係合凸部56をベース14の保持凸部47の幅方向の縁部に係合させることにより、ホルダ51がベース14の上面の所定位置に位置決めされて着脱可能に装着される。
【0033】
ベース14において、ホルダ51を最初に装着しておく位置は、図2に示すように整列ガイド12と隣接した位置または近傍の位置である。但し、整列ガイド12を図2に示した位置から退避させるように凹部41に沿ってスライドさせると、ベース14の保持凸部47上にホルダ本体52を保持させたまま、ホルダ51を保持凸部47に沿ってスライドさせてホルダ51の一部を凹部41上に配置させることができる。
【0034】
また、ベース14の上面には、前後の長手方向で見て保持溝45と保持凸部47との間、凹部41に隣接した前端部には、それぞれ複数本の光ファイバ1を並列に支持する支持台48が設けられている。
【0035】
次に、上記の光ファイバ用整列治具11を用いて複数本の光ファイバ1を並列に整列させる方法、及び、整列させた複数本の光ファイバ1を他の光ファイバと融着接続する方法について説明する。
まず、図2に示すように、下側挟持ブロック31と上側挟持ブロック32とを開いた状態で、クランプ13を保持溝45における凹部41寄りの位置でベース14に装着する。また、ホルダ51を、各保持蓋55を開いた状態で保持凸部47上に装着する。整列ガイド12は、ベース14の凹部41に下方部分を収容させた状態としておき、クランプ13、ホルダ51と一列に並ぶ位置に配置する。
【0036】
次に、図1に示すように、外側の被覆4を所定長さ除去して光ファイバ心線3が露出した複数本(本例では4本)の光ファイバ1を用意し、図6及び図7に示すように、これらの光ファイバ1の被覆除去部3aを整列ガイド12の整列溝23へ1本ずつ順に、またはまとめて挿入する。このとき、整列溝23の水平方向の一方側が開放されているので、整列溝23へ複数本の光ファイバ1をその軸に直交する方向から容易に挿入することができる。また、整列溝23の開放側の端部にテーパ部24が形成されているので、光ファイバ1の被覆除去部3aがテーパ部24で案内され、整列溝23へ円滑に挿入される。
【0037】
整列溝23の隙間寸法d(図5参照)は被覆除去部3aの外径より大きいので、光ファイバ1の被覆除去部3aは整列溝23へ挿入することができる。しかし、隙間寸法dは外側の被覆4の外径より小さいので、外側の被覆4を有する部分は整列溝23へ挿入することができない。
【0038】
それぞれの光ファイバ1の被覆除去部3aを整列溝23へ挿入したら、隣り合う光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分同士を接触させるように一列に並列させ、被覆除去部3aを把持して光ファイバ1を軸方向の先端側に向けて軽く引っ張る。整列ガイド12の整列溝23は、その隙間寸法dが、光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分の外径より小さい寸法であるので、光ファイバ1を軽く引っ張ると、図8に示すように、外側の被覆4の端部が整列ガイド12の後端側の一端面22に当接する。これにより、それぞれの光ファイバ1は、整列ガイド12に当接した被覆4の端部の軸方向の位置が揃えられて、これらの光ファイバ1の端末部分の軸方向の位置が整列される。
【0039】
このとき、整列ガイド12の整列溝23、2つの支持台48の上面、クランプ13の上側挟持ブロック32の上面、ホルダ51の保持溝53の上面の高さは略一致しており、ベース14の長手方向に沿って同じ高さで光ファイバ1が支持されている。
【0040】
次に、光ファイバ1の端部を把持して軽く引っ張った状態で、図9に示すように、クランプ13の上側挟持ブロック32を、下側挟持ブロック31との連結箇所を中心として下側挟持ブロック31側へ回動させる。そして、図10に示すように、下側挟持ブロック31の弾性体33に上側挟持ブロック32の弾性体34を重ね合わせ、下側挟持ブロック31の係止爪35に、上側挟持ブロック32の係止片37の係止孔36を係止させる。このようにすると、下側挟持ブロック31及び上側挟持ブロック32の弾性体33,34によって複数本の光ファイバ1が外側の被覆4を有する部分で挟持されて弾性的に保持される。
【0041】
さらに、光ファイバ1の端部を把持して軽く引っ張った状態で、図11に示すように、クランプ13を光ファイバ1の軸方向に沿って整列ガイド12及びホルダ51から離間する方向(光ファイバ用整列治具11の後端側)へスライドさせ、ベース14における整列ガイド12と反対側の端部に配置させる。このようにすると、ベース14上の光ファイバ1の弛みがなくされる。なお、光ファイバ1を挟む弾性体33,34として、ウレタンゴムからなるスポンジを用いているので、クランプ13の移動時における弾性体33,34と光ファイバ1との摩擦は小さく、光ファイバ1に対してクランプ13をスムースに移動できるとともに、摩擦による光ファイバ1への不具合は生じることがない。
【0042】
そして、複数本の光ファイバ1をクランプ13に保持させて、ホルダ51と2つの支持台48のそれぞれの上にも光ファイバ1を保持させた状態で、整列ガイド12を凹部41に沿って光ファイバ1の軸方向と直交する面内方向へ変位させる。すなわち、図12に示すように、整列ガイド12を光ファイバ1から離間する方向へスライドさせて退避させる。その際、整列ガイド12の上部に設けられた摘み部26を摘んで操作すると、整列ガイド12をスライドさせる操作をスムースに行うことができる。また、ベース14に対して完全に整列ガイド12を取り外すのではなく、ベース14に取り付けられた状態で整列ガイド12を移動させるようにしたことで、ベース14に対する整列ガイド12の位置精度を良好に維持できる。
【0043】
次に、図13に示すように、複数本の光ファイバ1の先端部に融着部保護スリーブ61を被せる。この融着部保護スリーブ61は、熱収縮性樹脂から形成された円筒状のものであり、光ファイバ1の融着接続後、光ファイバ1の融着接続部に被せた状態で熱収縮させることで、融着接続部を補強したり保護したりするものである。なお、光ファイバ1を融着接続する接続相手側の他の光ファイバに予め融着部保護スリーブ61を通しておく場合は、この光ファイバ用整列治具11で揃えた光ファイバ1に融着部保護スリーブ61を被せる必要はない。
【0044】
次いで、図14に示すように、複数本の光ファイバ1の先端部に被せた融着部保護スリーブ61をクランプ13側へ移動させる。
【0045】
そして、図15及び図16に示すように、ベース14の上面に装着して保持蓋55を開いた状態のホルダ51を、光ファイバ1の長手方向に沿って凹部41寄りに僅かに移動させて、ホルダ51における平行溝53cとテーパ部53bとの境界部分の位置が、整列ガイド12の後端側の一端面22と同一平面上に配置されるように、ホルダ51の位置を微調整する。すなわち、光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分は平行溝53cに収容し、光ファイバ1の被覆除去部3aは、テーパ部53bと先端溝53aに収容した状態となるように、ホルダ51の位置を微調整する。
【0046】
複数本の光ファイバ1を収容溝53内のそれぞれ適正な位置に収容したら、図17に示すように、保持蓋55をホルダ本体52の上面側へ向かって回動させることにより、収容溝53の上部を覆うように配置し、収容溝53に収容されている複数本の光ファイバ1を保持させる。
【0047】
その後、図18に示すように、複数本の光ファイバ1を保持しているクランプ13及びホルダ51をベース14から取り外し、光ファイバ1を保持したままホルダ51を融着接続機(図示省略)へセットして、接続相手側の複数本の他の光ファイバと融着接続する。
なお、ホルダ51を融着接続機へセットする前に、ホルダ51で保持した光ファイバ1の光ファイバ心線3における被覆を被覆除去器等の治具で除去して所定長さのガラスファイバを露出させておく。融着接続機では、このガラスファイバの端面と接続相手側の光ファイバのガラスファイバの端面とを融着させる。
【0048】
このとき、複数本の光ファイバ1の端末部分は、光ファイバ用整列治具11によって正確に軸方向位置が揃えられているので、接続相手側の複数本の光ファイバとの一括融着接続を良好かつ円滑に行うことができる。
なお、接続相手側の他の光ファイバとしては、光ファイバ1と同様に整列させた複数本の単心光ファイバ心線か、複数本の光ファイバ心線を樹脂によって並列状態で一体化させた光ファイバテープ心線を用いる。
【0049】
上記のように、光ファイバ1を接続相手側の他の光ファイバと融着接続させたら、ホルダ51の保持蓋55を回動させてホルダ本体52の上面側を開放し、光ファイバ1をホルダ51から取り外す。
【0050】
その後、予め光ファイバ1に被せておいた融着部保護スリーブ61を移動させて融着箇所に被せ、この融着部保護スリーブ61を加熱する。すると、この融着部保護スリーブ61が熱収縮して光ファイバ1の融着箇所に密着し、この融着部保護スリーブ61によって光ファイバ1の融着箇所が保護される。
【0051】
なお、融着部保護スリーブ61を熱収縮する際に、クランプ13を軽く引っ張って光ファイバ1に張力を与えることが好ましい。このようにすると、互いに融着させた光ファイバの弛みをなくし、融着部保護スリーブ61内におけるそれぞれの光ファイバ1の整列状態を整えて、光ファイバ1同士の位置ずれをなくすことができる。
【0052】
このように、上記実施形態によれば、複数本の光ファイバ1の端末部分を整列ガイド12の整列溝23へ挿入して並列させ、光ファイバ1を引っ張って外側の被覆4の端面を整列ガイド12の一端面22に当接させることにより、極めて円滑かつ正確に光ファイバ1の端末部分を整列させることができる。また、整列ガイド12は一端面22で整列溝23が開口した構成であるので、光ファイバ1を引っ張って被覆4を一端面22に当接させれば、被覆4の端部の位置が揃っていることが一目で判る。すなわち、ホルダ51の保持蓋55を何度も開閉して目視で整列状態を確認しながら光ファイバ1の位置を収容溝53内で調整するような煩雑な作業を伴わずに、簡易な作業で光ファイバ1を正確に整列させ、その整列状態を確認できる。
【0053】
また、整列ガイド12で高精度に整列させた光ファイバ1を、クランプ13で保持することにより、光ファイバ1の高精度な整列状態を維持して、その後の処理を行うことができる。特に、高精度に整列させた複数本の光ファイバ1を、端末処理や融着接続処理を行う際に用いるホルダ51へ容易にかつ整列状態を維持したまま保持させることができる。これにより、複数本の光ファイバ1をホルダ51の収容溝23へ保持蓋55を開閉させながら直接位置決めして保持させる場合と比較して、端末処理や融着接続処理の作業性を向上させることができる。
【0054】
なお、整列ガイド12としては、図19に示すように、上方側が開放された整列溝23を有し、この整列溝23の上部を開閉する蓋23aを設けたものでも良い。このような整列ガイド12では、整列溝23に複数本の光ファイバ1の光ファイバ心線3からなる被覆除去部3aを収容して蓋23aを閉じた状態で、光ファイバ1の端部を把持して軽く引っ張る。この形態の整列溝23の隙間寸法も、図4及び図5に示した整列ガイド12と同様に設定されている。これにより、光ファイバ1の被覆4の端面を整列ガイド12の一端面に当接させて揃えることができる。
【0055】
また、整列ガイド12は、ベース14に対して光ファイバ1の軸方向と直交する方向へ整列ガイド12がスライドする構造としたが、ベース14に対して回動可能に設けることにより、光ファイバ1の軸方向と直交する面内で変位可能な構成としても良い。
【0056】
例えば、図20から図22に示す形態を採用できる。この形態の整列ガイド12は、板状に形成されており、その上部側には、整列部21が設けられている。この整列部21は、後端側の一端面22に薄板部を有しており、この薄板部に、水平方向に延びる整列溝23が形成されている。この整列溝23は、その隙間寸法d(図22(a)参照)が、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した光ファイバ心線3の被覆除去部3aの外径より大きく、被覆4を有する部分の外径より小さい寸法である。この整列溝23は、その水平方向(光ファイバ並列方向)の一方側が開放されており、この整列溝23の開放側には、整列溝23側へ向かって次第に狭まるテーパ部24が形成されている。また、この整列ガイド12の下部には、整列溝23の開放側と反対側の位置に、ベース14に対して回動可能に連結させるための連結孔25が形成されている。ベース14の一端側には、その下部における一側部に、挿通孔42が形成されている。この挿通孔42は、凹部41に収容された整列ガイド12の連結孔25と連通されており、これらの連通された挿通孔42及び連結孔25には、連結ピン43が挿入されている。これにより、整列ガイド12は、連結ピン43によってベース14に連結され、この連結ピン43による連結箇所を中心として回動可能とされている。すなわち、整列ガイド12は、光ファイバ1の軸方向と直交する面内で回動して変位可能にベース14に取り付けられている。
【0057】
また、上記実施形態では、4本の光ファイバ1を整列させる場合を例示して説明したが、整列させる光ファイバ1の本数は、複数本であれば4本に限らない。
【符号の説明】
【0058】
1:光ファイバ、3:光ファイバ心線、3a:被覆除去部、4:外側の被覆、11:光ファイバ用整列治具、12:整列ガイド、13:クランプ、14:ベース、21:整列部、22:薄板部、23:整列溝、41:凹部、45:保持溝、51:ホルダ、52:ホルダ本体、53:収容溝、55:保持蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを整列させる光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び複数本の光ファイバ同士を融着させる光ファイバの融着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の光ファイバを整列させ、その状態でファイバホルダにより保持し、テープ状多心光ファイバと同様に一括融着接続することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような一括融着接続時に光ファイバを保持するホルダとしては、光ファイバ整列溝を有する基台と、光ファイバ整列溝の上方に開閉可能に配され光ファイバ心線を押える押え部材を有する心線整列蓋とを備え、光ファイバ整列溝が先端側の幅を徐々に狭めた形状とされているものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−285902号公報
【特許文献2】特開2007−171825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のホルダを用いた場合は、蓋を閉めた状態で複数本の光ファイバを1本ずつ溝に挿入し、作業途中に蓋を開いて目視で整列状態を確認しながら、溝が狭くなる部分に形成された傾斜部分を利用して複数本の被覆端部の位置を揃える作業が行われる。
しかし、ホルダの溝ではそれぞれの被覆端部を位置決めすることが難しく、複数本の光ファイバをそれぞれ溝に挿入していく過程で光ファイバ同士の摩擦などにより全ての光ファイバの位置を正確に揃えることが難しかった。そのため、光ファイバの位置を前後に調整しつつホルダの蓋を開閉して何度も目視で確認することが必要で、作業が煩雑になっていた。
【0005】
また、並列させた光ファイバの軸方向の位置が正確に揃わないと、融着させる光ファイバの端部の位置にばらつきが生じ、融着作業が円滑に行えなかったり、正確に接続することが困難となったりする場合があった。
【0006】
また、光ファイバの被覆端を係止する段差をホルダの溝に設けておくことが考えられるが、その場合には段差より先端側で光ファイバの先端部分が上向きに浮き上がりやすく、融着接続機での先端部分の位置合わせが難しくなって融着作業を円滑に行うことが困難になってしまう。
【0007】
本発明の目的は、簡易な作業で複数本の光ファイバを円滑かつ正確に整列させることが可能な光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び光ファイバの融着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバ用整列治具は、外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバ用整列治具であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドと、
並列に整列させた複数本の前記光ファイバの、前記外側の被覆を有する部分を弾性的に保持するクランプと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の光ファイバ用整列治具において、前記整列ガイドは、前記整列溝における前記光ファイバの並列方向の一方側が開放されていることが好ましい。
【0010】
本発明の光ファイバ用整列治具において、前記整列ガイドと前記クランプとを前記整列溝内に通した前記光ファイバの軸方向に沿って相対移動可能に支持するベースを備えることが好ましい。
【0011】
本発明の光ファイバ用整列治具において、前記整列ガイドは、前記光ファイバの軸方向と直交する面内で変位可能に前記ベースに取り付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の光ファイバ用整列治具において、並列させた複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部と前記外側の被覆とをそれぞれの幅に合わせて収容可能な収容溝を備えるとともに前記収容溝に収容させた前記光ファイバを保持するホルダが、前記ベース上の前記整列ガイドと前記クランプとの間に着脱可能とされ、前記ホルダは、前記収容溝における前記外側の被覆端の配置箇所が前記整列ガイドの前記一端面の位置に合うように、前記ベース上で位置調整可能であることが好ましい。
【0013】
本発明の光ファイバの整列方法は、外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバの整列方法であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドの前記整列溝へ複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部を挿入して並列させ、
それぞれの前記光ファイバの前記外側の被覆の端部を前記整列ガイドの前記一端面に当接させて前記光ファイバの軸方向の位置を揃えて整列状態とし、
前記整列状態の複数本の前記光ファイバの前記外側の被覆を有する部分を、クランプで弾性的に保持させた状態で、
複数本の前記光ファイバをホルダの収容溝に収容して、前記ホルダに設けられた保持蓋で前記収容溝内の前記光ファイバを保持させることを特徴とする。
【0014】
本発明の光ファイバの整列方法において、前記整列状態の前記光ファイバの端末部分を把持しながら前記クランプを前記光ファイバの軸方向に沿って前記端末部分から離れる方向に移動させて、前記光ファイバの弛みを除去することが好ましい。
【0015】
本発明の光ファイバの整列方法において、前記クランプによる前記光ファイバの保持後に、前記整列ガイドを前記光ファイバの軸方向と直交する面内で移動させて前記光ファイバから退避させることが好ましい。
【0016】
本発明の光ファイバの融着方法は、上記の何れかの光ファイバの整列方法によって前記ホルダに揃えて保持させた複数本の前記光ファイバを、他の複数本の光ファイバと融着接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数本の光ファイバの端末部分を整列ガイドの整列溝へ挿入し、外側の被覆端を整列ガイドの一端面に当接させることにより、極めて円滑かつ正確に光ファイバの端部位置を揃えることができる。また、被覆端が揃っていることが一目で判るので、ホルダの蓋を開閉するような煩雑な作業を伴わずに整列状態を確認できる。また、高精度に端部位置を揃えた光ファイバをクランプで保持することにより、光ファイバの高精度な整列状態を維持させることができる。そして、このように高精度に整列させた複数本の光ファイバを、端末処理や融着接続処理を行う際に用いるホルダへ容易にかつ整列状態を維持したまま保持させることができる。これにより、複数本の光ファイバをホルダの収容溝へ保持蓋を開閉させながら直接位置決めして保持させる場合と比較して、端末処理や融着接続処理の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光ファイバ用整列治具で整列させる複数本の光ファイバの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る光ファイバ用整列治具の一実施形態を後端側から見た斜視図である。
【図3】図2の光ファイバ用整列治具におけるクランプとホルダを取り外した状態の斜視図である。
【図4】図2の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における後端側から見た斜視図であり、(b)は先端側から見た斜視図である。
【図5】図2の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における後端側から見た平面図であり、(b)は先端側から見た平面図である。
【図6】図2の光ファイバ用整列治具の整列ガイドに光ファイバを挿入した状態を先端側から見た斜視図である。
【図7】図2の光ファイバ用整列治具の整列ガイドに光ファイバを挿入した状態を後端側から見た斜視図である。
【図8】図7の状態から光ファイバの被覆端を整列ガイドに当接させた状態を見た斜視図である。
【図9】図8の状態からクランプを閉じようとする状態の斜視図である。
【図10】図9の状態からクランプを閉じた状態の斜視図である。
【図11】図10の状態からクランプを後端側に移動させた状態の斜視図である。
【図12】図11の状態から整列ガイドを変位させた状態の斜視図である。
【図13】図12の光ファイバの端部に融着部保護スリーブを被せた状態の斜視図である。
【図14】図13の状態から融着部保護スリーブをクランプ付近まで移動させた状態の斜視図である。
【図15】図14の状態からホルダの位置を微調整した状態の斜視図である。
【図16】図15の拡大図である。
【図17】図16の状態からホルダの蓋を閉じた状態の斜視図である。
【図18】図17の状態から光ファイバを保持しているホルダとクランプをベースから取り外した状態の斜視図である。
【図19】光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドの他の形態例を示す平面図である。
【図20】光ファイバ用整列治具の他の形態例を示す斜視図である。
【図21】図20の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における先端側から見た斜視図であり、(b)は後端側から見た斜視図である。
【図22】図20の光ファイバ用整列治具を構成する整列ガイドを示す図であって、(a)は光ファイバ用整列治具における後端側から見た平面図であり、(b)は先端側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ファイバ用整列治具、光ファイバの整列方法及び光ファイバの融着方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
本実施形態の光ファイバ用整列治具は、複数本の光ファイバの端末部分を並列させるとともに、外側の被覆を除去した部分の被覆端の位置を揃えて整列させるものである。
【0020】
図1は単心の光ファイバ1を複数本(本実施形態では一例として4本)並列させた状態を示すものである。光ファイバ1として、コア及びクラッドからなるガラスファイバの外周を樹脂からなる被覆で被覆した光ファイバ心線3をさらに樹脂からなる被覆4で被覆したものを例示できる。この光ファイバ1の寸法の一例としては、外側の被覆4を有する部分の外径が0.50mmであり、被覆4を除去した光ファイバ心線3の部分の外径が0.25mmであり、ガラスファイバの外径が0.125mmである。光ファイバ1を整列させる前に、被覆除去器等の治具を用いて端末部分の外側の被覆4を除去して被覆除去部3aを設け、融着作業に要する所定の長さの光ファイバ心線3を露出させておく。
【0021】
図1のような複数本の光ファイバ1をホルダに保持させる前に整列させるための治具として、図2及び図3に示す光ファイバ用整列治具11を用いる。
図2及び図3に示すように、光ファイバ用整列治具11は、整列ガイド12と、クランプ13とを備えている。また、光ファイバ用整列治具11は、細長い略直方体形状の部分を有するL字型のベース14を備えており、このベース14の長手方向の一端側に、整列ガイド12が取り付けられている。クランプ13は、ベース14に対して着脱可能とされている。なお、図2及び図3におけるベース14の左奥の長手方向の端部側を光ファイバ用整列治具11の先端側とし、図2及び図3におけるベース14の右前端側を光ファイバ用整列治具11の後端側として説明する。
【0022】
図4及び図5に示すように、整列ガイド12は、その上部に、凸状の摘み部26が設けられ、その下側に整列部21が設けられている。この整列部21は、後端側の少なくとも一端面22側に、水平方向に延びる整列溝23が形成されている。この整列溝23は、その隙間寸法d(図5(a)参照)が、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した光ファイバ心線3の被覆除去部3aの外径(例えば0.25mm)より大きく、被覆4を有する部分の外径(例えば0.50mm)より小さい寸法(0.3mm程度)である。この整列溝23は、その水平方向(光ファイバ並列方向)の一方側が開放されており、この整列溝23の開放側には、整列溝23側へ向かって次第に狭まるテーパ部24が形成されている。なお、整列溝23は整列ガイド12の一端面に前記の隙間寸法で開口したものであればよく、図4に示すように整列ガイド12の一端面22と反対側(他端面側)では整列溝23と連続した空間が広がって形成されていてよい。
【0023】
また、この整列ガイド12の下部には、整列溝23の開放側と反対側の位置に、ベース14に対してスライド可能に連結させるための連結部25が形成されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、クランプ13は、下側挟持ブロック31と、上側挟持ブロック32とを備えている。下側挟持ブロック31及び上側挟持ブロック32は、上部と前後が開口した形状を有する枠部31a,32aと、この枠部31a,32aの内側に嵌め込まれた弾性体33,34とを有している。これらの弾性体33,34としては、例えば、ウレタンゴム製のスポンジ等を用いるのが好ましい。
【0025】
これらの下側挟持ブロック31と上側挟持ブロック32とは、その一側部同士が回動可能に連結されている。下側挟持ブロック31には、上側挟持ブロック32との連結側と反対側の側面に、係止爪35が形成されている。また、上側挟持ブロック32には、下側挟持ブロック31との連結側と反対側の側面に、係止爪35に係止する係止孔36を有する係止片37が形成されている。
【0026】
このクランプ13では、下側挟持ブロック31の弾性体33上に光ファイバ1を配置した状態で、下側挟持ブロック31に対して上側挟持ブロック32を回動させ、下側挟持部ブロック31の弾性体33に上側挟持ブロック32の弾性体34を重ね合わせると、これらの弾性体33,34によって光ファイバ1が挟持されて弾性的に保持される。
また、下側挟持ブロック31には、その下面に、磁石38を有し下向きに凸状とされた係合凸部39が設けられている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ベース14は、上面視L字型形状に形成されており、その一端側近傍に、ベース14の長手方向と直交する方向に直線状に延びた凹部41が形成されている。この凹部41には、整列ガイド12の下方部分が収容されており、整列ガイド12の整列部21が、ベース14の上面よりも上方に配置されている。凹部41の底部には、更に一段凹んで形成された直線状のガイド溝42が設けられている。このガイド溝42には、凹部41に収容された整列ガイド12の連結部25が挿入されて係合されている。これにより、整列ガイド12は、連結部25によってベース14に連結され、この連結部25による連結箇所をガイドとして直線状にスライド可能とされている。すなわち、整列ガイド12は、光ファイバ1の軸方向と直交する面内で(直交する方向に)スライド可能にベース14に取り付けられている。
【0028】
ベース14には、その上面の他端側近傍に、長手方向に沿って保持溝45が形成されており、この保持溝45の底面45aは、鉄等の磁性体により形成されている。この保持溝45は、クランプ13の下側挟持ブロック31の係合凸部39が嵌合可能な幅と深さを有する。そして、この下側挟持ブロック31の係合凸部39を保持溝45へ嵌合させると、係合凸部39の磁石38が保持溝45の底面45aに吸着される。これにより、下側挟持ブロック31が、ベース14の上面に保持される。また、係合凸部39を保持溝45に嵌合させたまま、クランプ13を保持溝45の長手方向に沿ってスライドさせることができる。
【0029】
また、ベース14の上面における保持溝45と凹部41との間には、保持溝45と一列に延びた保持凸部47が形成されており、この保持凸部47には、光ファイバ1を融着接続させるとき等に光ファイバ1を保持するホルダ51が係合可能な幅を有する。また、保持凸部47の上面47aは、ホルダ51を吸着させるために、鉄等の磁性体により形成されている。
【0030】
ホルダ51は、ベース部分であるホルダ本体52を有している。ホルダ本体52は、その上面に、複数本の光ファイバ1を並列に収容する収容溝53が軸方向に沿って形成されている。この収容溝53におけるホルダ本体52の一端側には、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した複数本の光ファイバ心線3(被覆除去部3a)を一列に並べて収容する幅を有する先端溝53aと、先端溝53aに向かって次第に溝幅が狭められたテーパ部53bとを有し、テーパ部53bからホルダ本体52の他端側には、光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分を複数本一列に並べて収容する幅を有する平行溝53cが延びている。この平行溝53cとテーパ部53bとの境界部分の位置に、光ファイバ1の外側の被覆4の端部が配置される。
【0031】
ホルダ本体52には、その一側部に、複数の保持蓋55が回動可能に設けられている。これらの保持蓋55を、ホルダ本体52との連結箇所を中心として回動させることにより、ホルダ本体52の上面が開閉される。そして、保持蓋55は、ホルダ本体52の上面に向けて回動させることにより、収容溝53の上部を覆うように配置され、収容溝53に収容されている複数本の光ファイバ1を保持する。
【0032】
また、ホルダ本体52には、その下面における両側部に、係合凸部56が形成されており、これらの係合凸部56をベース14の保持凸部47の幅方向の縁部に係合させることにより、ホルダ51がベース14の上面の所定位置に位置決めされて着脱可能に装着される。
【0033】
ベース14において、ホルダ51を最初に装着しておく位置は、図2に示すように整列ガイド12と隣接した位置または近傍の位置である。但し、整列ガイド12を図2に示した位置から退避させるように凹部41に沿ってスライドさせると、ベース14の保持凸部47上にホルダ本体52を保持させたまま、ホルダ51を保持凸部47に沿ってスライドさせてホルダ51の一部を凹部41上に配置させることができる。
【0034】
また、ベース14の上面には、前後の長手方向で見て保持溝45と保持凸部47との間、凹部41に隣接した前端部には、それぞれ複数本の光ファイバ1を並列に支持する支持台48が設けられている。
【0035】
次に、上記の光ファイバ用整列治具11を用いて複数本の光ファイバ1を並列に整列させる方法、及び、整列させた複数本の光ファイバ1を他の光ファイバと融着接続する方法について説明する。
まず、図2に示すように、下側挟持ブロック31と上側挟持ブロック32とを開いた状態で、クランプ13を保持溝45における凹部41寄りの位置でベース14に装着する。また、ホルダ51を、各保持蓋55を開いた状態で保持凸部47上に装着する。整列ガイド12は、ベース14の凹部41に下方部分を収容させた状態としておき、クランプ13、ホルダ51と一列に並ぶ位置に配置する。
【0036】
次に、図1に示すように、外側の被覆4を所定長さ除去して光ファイバ心線3が露出した複数本(本例では4本)の光ファイバ1を用意し、図6及び図7に示すように、これらの光ファイバ1の被覆除去部3aを整列ガイド12の整列溝23へ1本ずつ順に、またはまとめて挿入する。このとき、整列溝23の水平方向の一方側が開放されているので、整列溝23へ複数本の光ファイバ1をその軸に直交する方向から容易に挿入することができる。また、整列溝23の開放側の端部にテーパ部24が形成されているので、光ファイバ1の被覆除去部3aがテーパ部24で案内され、整列溝23へ円滑に挿入される。
【0037】
整列溝23の隙間寸法d(図5参照)は被覆除去部3aの外径より大きいので、光ファイバ1の被覆除去部3aは整列溝23へ挿入することができる。しかし、隙間寸法dは外側の被覆4の外径より小さいので、外側の被覆4を有する部分は整列溝23へ挿入することができない。
【0038】
それぞれの光ファイバ1の被覆除去部3aを整列溝23へ挿入したら、隣り合う光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分同士を接触させるように一列に並列させ、被覆除去部3aを把持して光ファイバ1を軸方向の先端側に向けて軽く引っ張る。整列ガイド12の整列溝23は、その隙間寸法dが、光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分の外径より小さい寸法であるので、光ファイバ1を軽く引っ張ると、図8に示すように、外側の被覆4の端部が整列ガイド12の後端側の一端面22に当接する。これにより、それぞれの光ファイバ1は、整列ガイド12に当接した被覆4の端部の軸方向の位置が揃えられて、これらの光ファイバ1の端末部分の軸方向の位置が整列される。
【0039】
このとき、整列ガイド12の整列溝23、2つの支持台48の上面、クランプ13の上側挟持ブロック32の上面、ホルダ51の保持溝53の上面の高さは略一致しており、ベース14の長手方向に沿って同じ高さで光ファイバ1が支持されている。
【0040】
次に、光ファイバ1の端部を把持して軽く引っ張った状態で、図9に示すように、クランプ13の上側挟持ブロック32を、下側挟持ブロック31との連結箇所を中心として下側挟持ブロック31側へ回動させる。そして、図10に示すように、下側挟持ブロック31の弾性体33に上側挟持ブロック32の弾性体34を重ね合わせ、下側挟持ブロック31の係止爪35に、上側挟持ブロック32の係止片37の係止孔36を係止させる。このようにすると、下側挟持ブロック31及び上側挟持ブロック32の弾性体33,34によって複数本の光ファイバ1が外側の被覆4を有する部分で挟持されて弾性的に保持される。
【0041】
さらに、光ファイバ1の端部を把持して軽く引っ張った状態で、図11に示すように、クランプ13を光ファイバ1の軸方向に沿って整列ガイド12及びホルダ51から離間する方向(光ファイバ用整列治具11の後端側)へスライドさせ、ベース14における整列ガイド12と反対側の端部に配置させる。このようにすると、ベース14上の光ファイバ1の弛みがなくされる。なお、光ファイバ1を挟む弾性体33,34として、ウレタンゴムからなるスポンジを用いているので、クランプ13の移動時における弾性体33,34と光ファイバ1との摩擦は小さく、光ファイバ1に対してクランプ13をスムースに移動できるとともに、摩擦による光ファイバ1への不具合は生じることがない。
【0042】
そして、複数本の光ファイバ1をクランプ13に保持させて、ホルダ51と2つの支持台48のそれぞれの上にも光ファイバ1を保持させた状態で、整列ガイド12を凹部41に沿って光ファイバ1の軸方向と直交する面内方向へ変位させる。すなわち、図12に示すように、整列ガイド12を光ファイバ1から離間する方向へスライドさせて退避させる。その際、整列ガイド12の上部に設けられた摘み部26を摘んで操作すると、整列ガイド12をスライドさせる操作をスムースに行うことができる。また、ベース14に対して完全に整列ガイド12を取り外すのではなく、ベース14に取り付けられた状態で整列ガイド12を移動させるようにしたことで、ベース14に対する整列ガイド12の位置精度を良好に維持できる。
【0043】
次に、図13に示すように、複数本の光ファイバ1の先端部に融着部保護スリーブ61を被せる。この融着部保護スリーブ61は、熱収縮性樹脂から形成された円筒状のものであり、光ファイバ1の融着接続後、光ファイバ1の融着接続部に被せた状態で熱収縮させることで、融着接続部を補強したり保護したりするものである。なお、光ファイバ1を融着接続する接続相手側の他の光ファイバに予め融着部保護スリーブ61を通しておく場合は、この光ファイバ用整列治具11で揃えた光ファイバ1に融着部保護スリーブ61を被せる必要はない。
【0044】
次いで、図14に示すように、複数本の光ファイバ1の先端部に被せた融着部保護スリーブ61をクランプ13側へ移動させる。
【0045】
そして、図15及び図16に示すように、ベース14の上面に装着して保持蓋55を開いた状態のホルダ51を、光ファイバ1の長手方向に沿って凹部41寄りに僅かに移動させて、ホルダ51における平行溝53cとテーパ部53bとの境界部分の位置が、整列ガイド12の後端側の一端面22と同一平面上に配置されるように、ホルダ51の位置を微調整する。すなわち、光ファイバ1の外側の被覆4を有する部分は平行溝53cに収容し、光ファイバ1の被覆除去部3aは、テーパ部53bと先端溝53aに収容した状態となるように、ホルダ51の位置を微調整する。
【0046】
複数本の光ファイバ1を収容溝53内のそれぞれ適正な位置に収容したら、図17に示すように、保持蓋55をホルダ本体52の上面側へ向かって回動させることにより、収容溝53の上部を覆うように配置し、収容溝53に収容されている複数本の光ファイバ1を保持させる。
【0047】
その後、図18に示すように、複数本の光ファイバ1を保持しているクランプ13及びホルダ51をベース14から取り外し、光ファイバ1を保持したままホルダ51を融着接続機(図示省略)へセットして、接続相手側の複数本の他の光ファイバと融着接続する。
なお、ホルダ51を融着接続機へセットする前に、ホルダ51で保持した光ファイバ1の光ファイバ心線3における被覆を被覆除去器等の治具で除去して所定長さのガラスファイバを露出させておく。融着接続機では、このガラスファイバの端面と接続相手側の光ファイバのガラスファイバの端面とを融着させる。
【0048】
このとき、複数本の光ファイバ1の端末部分は、光ファイバ用整列治具11によって正確に軸方向位置が揃えられているので、接続相手側の複数本の光ファイバとの一括融着接続を良好かつ円滑に行うことができる。
なお、接続相手側の他の光ファイバとしては、光ファイバ1と同様に整列させた複数本の単心光ファイバ心線か、複数本の光ファイバ心線を樹脂によって並列状態で一体化させた光ファイバテープ心線を用いる。
【0049】
上記のように、光ファイバ1を接続相手側の他の光ファイバと融着接続させたら、ホルダ51の保持蓋55を回動させてホルダ本体52の上面側を開放し、光ファイバ1をホルダ51から取り外す。
【0050】
その後、予め光ファイバ1に被せておいた融着部保護スリーブ61を移動させて融着箇所に被せ、この融着部保護スリーブ61を加熱する。すると、この融着部保護スリーブ61が熱収縮して光ファイバ1の融着箇所に密着し、この融着部保護スリーブ61によって光ファイバ1の融着箇所が保護される。
【0051】
なお、融着部保護スリーブ61を熱収縮する際に、クランプ13を軽く引っ張って光ファイバ1に張力を与えることが好ましい。このようにすると、互いに融着させた光ファイバの弛みをなくし、融着部保護スリーブ61内におけるそれぞれの光ファイバ1の整列状態を整えて、光ファイバ1同士の位置ずれをなくすことができる。
【0052】
このように、上記実施形態によれば、複数本の光ファイバ1の端末部分を整列ガイド12の整列溝23へ挿入して並列させ、光ファイバ1を引っ張って外側の被覆4の端面を整列ガイド12の一端面22に当接させることにより、極めて円滑かつ正確に光ファイバ1の端末部分を整列させることができる。また、整列ガイド12は一端面22で整列溝23が開口した構成であるので、光ファイバ1を引っ張って被覆4を一端面22に当接させれば、被覆4の端部の位置が揃っていることが一目で判る。すなわち、ホルダ51の保持蓋55を何度も開閉して目視で整列状態を確認しながら光ファイバ1の位置を収容溝53内で調整するような煩雑な作業を伴わずに、簡易な作業で光ファイバ1を正確に整列させ、その整列状態を確認できる。
【0053】
また、整列ガイド12で高精度に整列させた光ファイバ1を、クランプ13で保持することにより、光ファイバ1の高精度な整列状態を維持して、その後の処理を行うことができる。特に、高精度に整列させた複数本の光ファイバ1を、端末処理や融着接続処理を行う際に用いるホルダ51へ容易にかつ整列状態を維持したまま保持させることができる。これにより、複数本の光ファイバ1をホルダ51の収容溝23へ保持蓋55を開閉させながら直接位置決めして保持させる場合と比較して、端末処理や融着接続処理の作業性を向上させることができる。
【0054】
なお、整列ガイド12としては、図19に示すように、上方側が開放された整列溝23を有し、この整列溝23の上部を開閉する蓋23aを設けたものでも良い。このような整列ガイド12では、整列溝23に複数本の光ファイバ1の光ファイバ心線3からなる被覆除去部3aを収容して蓋23aを閉じた状態で、光ファイバ1の端部を把持して軽く引っ張る。この形態の整列溝23の隙間寸法も、図4及び図5に示した整列ガイド12と同様に設定されている。これにより、光ファイバ1の被覆4の端面を整列ガイド12の一端面に当接させて揃えることができる。
【0055】
また、整列ガイド12は、ベース14に対して光ファイバ1の軸方向と直交する方向へ整列ガイド12がスライドする構造としたが、ベース14に対して回動可能に設けることにより、光ファイバ1の軸方向と直交する面内で変位可能な構成としても良い。
【0056】
例えば、図20から図22に示す形態を採用できる。この形態の整列ガイド12は、板状に形成されており、その上部側には、整列部21が設けられている。この整列部21は、後端側の一端面22に薄板部を有しており、この薄板部に、水平方向に延びる整列溝23が形成されている。この整列溝23は、その隙間寸法d(図22(a)参照)が、光ファイバ1の外側の被覆4を除去した光ファイバ心線3の被覆除去部3aの外径より大きく、被覆4を有する部分の外径より小さい寸法である。この整列溝23は、その水平方向(光ファイバ並列方向)の一方側が開放されており、この整列溝23の開放側には、整列溝23側へ向かって次第に狭まるテーパ部24が形成されている。また、この整列ガイド12の下部には、整列溝23の開放側と反対側の位置に、ベース14に対して回動可能に連結させるための連結孔25が形成されている。ベース14の一端側には、その下部における一側部に、挿通孔42が形成されている。この挿通孔42は、凹部41に収容された整列ガイド12の連結孔25と連通されており、これらの連通された挿通孔42及び連結孔25には、連結ピン43が挿入されている。これにより、整列ガイド12は、連結ピン43によってベース14に連結され、この連結ピン43による連結箇所を中心として回動可能とされている。すなわち、整列ガイド12は、光ファイバ1の軸方向と直交する面内で回動して変位可能にベース14に取り付けられている。
【0057】
また、上記実施形態では、4本の光ファイバ1を整列させる場合を例示して説明したが、整列させる光ファイバ1の本数は、複数本であれば4本に限らない。
【符号の説明】
【0058】
1:光ファイバ、3:光ファイバ心線、3a:被覆除去部、4:外側の被覆、11:光ファイバ用整列治具、12:整列ガイド、13:クランプ、14:ベース、21:整列部、22:薄板部、23:整列溝、41:凹部、45:保持溝、51:ホルダ、52:ホルダ本体、53:収容溝、55:保持蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバ用整列治具であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドと、
並列に整列させた複数本の前記光ファイバの、前記外側の被覆を有する部分を弾性的に保持するクランプと、を備えることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ用整列治具であって、
前記整列ガイドは、前記整列溝における前記光ファイバの並列方向の一方側が開放されていることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバ用整列治具であって、
前記整列ガイドと前記クランプとを前記整列溝内に通した前記光ファイバの軸方向に沿って相対移動可能に支持するベースを備えることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項4】
請求項3に記載の光ファイバ用整列治具であって、
前記整列ガイドは、前記光ファイバの軸方向と直交する面内で変位可能に前記ベースに取り付けられていることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光ファイバ用整列治具であって、
並列させた複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部と前記外側の被覆とをそれぞれの幅に合わせて収容可能な収容溝を備えるとともに前記収容溝に収容させた前記光ファイバを保持するホルダが、前記ベース上の前記整列ガイドと前記クランプとの間に着脱可能とされ、前記ホルダは、前記収容溝における前記外側の被覆端の配置箇所が前記整列ガイドの前記一端面の位置に合うように、前記ベース上で位置調整可能であることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項6】
外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバの整列方法であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドの前記整列溝へ複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部を挿入して並列させ、
それぞれの前記光ファイバの前記外側の被覆の端部を前記整列ガイドの前記一端面に当接させて前記光ファイバの軸方向の位置を揃えて整列状態とし、
前記整列状態の複数本の前記光ファイバの前記外側の被覆を有する部分を、クランプで弾性的に保持させた状態で、
複数本の前記光ファイバをホルダの収容溝に収容して、前記ホルダに設けられた保持蓋で前記収容溝内の前記光ファイバを保持させることを特徴とする光ファイバの整列方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバの整列方法であって、
前記整列状態の前記光ファイバの端末部分を把持しながら前記クランプを前記光ファイバの軸方向に沿って前記端末部分から離れる方向に移動させて、前記光ファイバの弛みを除去することを特徴とする光ファイバの整列方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光ファイバの整列方法であって、
前記クランプによる前記光ファイバの保持後に、前記整列ガイドを前記光ファイバの軸方向と直交する面内で移動させて前記光ファイバから退避させることを特徴とする光ファイバの整列方法。
【請求項9】
請求項6から8の何れか一項に記載の光ファイバの整列方法によって前記ホルダに揃えて保持させた複数本の前記光ファイバを、他の複数本の光ファイバと融着接続することを特徴とする光ファイバの融着方法。
【請求項1】
外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバ用整列治具であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドと、
並列に整列させた複数本の前記光ファイバの、前記外側の被覆を有する部分を弾性的に保持するクランプと、を備えることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ用整列治具であって、
前記整列ガイドは、前記整列溝における前記光ファイバの並列方向の一方側が開放されていることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバ用整列治具であって、
前記整列ガイドと前記クランプとを前記整列溝内に通した前記光ファイバの軸方向に沿って相対移動可能に支持するベースを備えることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項4】
請求項3に記載の光ファイバ用整列治具であって、
前記整列ガイドは、前記光ファイバの軸方向と直交する面内で変位可能に前記ベースに取り付けられていることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光ファイバ用整列治具であって、
並列させた複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部と前記外側の被覆とをそれぞれの幅に合わせて収容可能な収容溝を備えるとともに前記収容溝に収容させた前記光ファイバを保持するホルダが、前記ベース上の前記整列ガイドと前記クランプとの間に着脱可能とされ、前記ホルダは、前記収容溝における前記外側の被覆端の配置箇所が前記整列ガイドの前記一端面の位置に合うように、前記ベース上で位置調整可能であることを特徴とする光ファイバ用整列治具。
【請求項6】
外側の被覆を端末部分で除去した複数本の光ファイバを並列に整列させる光ファイバの整列方法であって、
前記光ファイバの外側の被覆を除去した被覆除去部の外径より大きく、前記外側の被覆の外径より小さい隙間寸法の整列溝が一端面に開口して設けられた整列ガイドの前記整列溝へ複数本の前記光ファイバの前記被覆除去部を挿入して並列させ、
それぞれの前記光ファイバの前記外側の被覆の端部を前記整列ガイドの前記一端面に当接させて前記光ファイバの軸方向の位置を揃えて整列状態とし、
前記整列状態の複数本の前記光ファイバの前記外側の被覆を有する部分を、クランプで弾性的に保持させた状態で、
複数本の前記光ファイバをホルダの収容溝に収容して、前記ホルダに設けられた保持蓋で前記収容溝内の前記光ファイバを保持させることを特徴とする光ファイバの整列方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバの整列方法であって、
前記整列状態の前記光ファイバの端末部分を把持しながら前記クランプを前記光ファイバの軸方向に沿って前記端末部分から離れる方向に移動させて、前記光ファイバの弛みを除去することを特徴とする光ファイバの整列方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光ファイバの整列方法であって、
前記クランプによる前記光ファイバの保持後に、前記整列ガイドを前記光ファイバの軸方向と直交する面内で移動させて前記光ファイバから退避させることを特徴とする光ファイバの整列方法。
【請求項9】
請求項6から8の何れか一項に記載の光ファイバの整列方法によって前記ホルダに揃えて保持させた複数本の前記光ファイバを、他の複数本の光ファイバと融着接続することを特徴とする光ファイバの融着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−109269(P2013−109269A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255994(P2011−255994)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
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