説明

光ファイバ

【課題】 中継区間に光伝送路として敷設される場合に適用するのに好適であって外部環境の温度変動に因る伝送特性変動を低減することができる光ファイバを提供する。
【解決手段】 光ファイバ10は、内側から順に、コア領域11、クラッド領域12、プライマリ層13、セカンダリ層14および断熱層15を備える。コア領域11およびクラッド領域12は、SiOガラスを主成分とするものであって、ガラスファイバを構成している。プライマリ層13はクラッド領域12を取り囲み、セカンダリ層14はプライマリ層13を取り囲み、断熱層15はセカンダリ層14を取り囲んでいる。断熱層15は、熱伝導率が小さいものであって、好適には空気の熱伝導率より小さい熱伝導率を有し、更に好適には熱伝導率が0.02W/mK以下である。断熱層15は例えばガラスファイバ繊維からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、光通信システムにおいて信号光を伝送する光伝送路等として用いられ、波長分散等の伝送特性が優れていることが望まれる。また、光ファイバ(および、複数本の光ファイバが束ねられた光ケーブル)は、屋内だけでなく屋外に敷設される場合があることから、外部環境の温度変動に因る伝送特性の変動が小さいことが望まれる。
【0003】
例えば、非特許文献1〜5には、温度変動により光ファイバの波長分散が変動することが記載されている。また、特許文献1〜6それぞれには、光ファイバ(または平面光導波路)の伝送特性の変動を低減することを意図した発明が開示されている。
【0004】
特許文献1および特許文献2それぞれに開示された発明は、外部環境の温度を検知し、その検知結果に基づいて光増幅用の光ファイバを加熱または冷却することで、その光ファイバの特性変動を小さくすることを意図している。しかし、この発明は、光ファイバ増幅器に含まれる増幅用光ファイバに適用するのに適しているとしても、中継区間に光伝送路として敷設される光ファイバに適用するには、コスト、サイズおよび電力等の理由で非現実的である。
【0005】
特許文献3に開示された発明は、温度に応じた応力を平面光導波路に付与することで、その光導波路の特性変動を小さくすることを意図している。しかし、この発明は、光ファイバに適用する場合、その光ファイバのマイクロベンドロスや偏波モード分散の増大を引き起こすなど、他の特性を劣化させることになる恐れがある。また、この発明では、敷設された光ファイバに所望の応力を付与すること自体が難しい。
【0006】
特許文献4に開示された発明は、SiOガラスを主成分とする無機材料が有機材料と化学結合され又は微粒子状態で混合された光学材料を光導波領域に用いることで、光導波路が所望の温度依存性を有するようにすることを意図している。しかし、この発明では、有機材料を光ファイバに導入することにより、ファイバロスが増大する。
【0007】
特許文献5に開示された発明は、平面光導波路が形成された基板が温度範囲0℃〜65℃において負の線膨張係数を有するようにすることで、その平面光導波路の温度依存性を小さくすることを意図している。しかし、この発明は、長尺で可撓性が要求される光ファイバに適用することができない。
【0008】
特許文献6に開示された発明は、TiOを含有させたSiOガラスにより光導波路を構成することにより、温度変動に因る屈折率変動を無くすることを意図している。しかし、この発明では、TiOを60mol%以上も含有させなければ略ゼロの屈折率温度係数を実現することができないので、光ファイバに適用した場合には、コスト増や伝送損失増につながる恐れが高い。
【特許文献1】特開2000−91674号公報
【特許文献2】特開2000−91675号公報
【特許文献3】特開2000−180644号公報
【特許文献4】特開2000−321442号公報
【特許文献5】特開2000−352633号公報
【特許文献6】特開2004−126399号公報
【非特許文献1】T.Kato, et al., Optics Letters, Vol.25, No.16, pp.1156-1158 (2000)
【非特許文献2】W. H.Hatton, et al., IEEE J. Lightwave Technology, Vol.LT-4, No.10, pp.1552-1555(1986)
【非特許文献3】K. S.Kim, et al., J. Applied Physic, Vol.73, No.5, pp.2069-2074 (1993)
【非特許文献4】M. J.Hamp, et al., IEEE Photonics Technology Letters, Vol.14, No.11, pp.1524-1526(2002)
【非特許文献5】H. C.Ji, et al., IEEE J. Lightwave Technology, Vol.22, No.8, pp.1893-1898 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、特許文献1〜6それぞれに開示された発明は、光ファイバ(または平面光導波路)の伝送特性の変動を低減することを意図したものではあるが、中継区間に光伝送路として敷設される光ファイバに適用するには何れも不適切または困難である。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、中継区間に光伝送路として敷設される場合に適用するのに好適であって外部環境の温度変動に因る伝送特性変動を低減することができる光ファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光ファイバは、コア領域と、このコア領域の屈折率より低い屈折率を有し該コア領域を取り囲むクラッド領域と、このクラッド領域の周囲に設けられた断熱層とを備え、波長範囲1280nm〜1660nmに含まれる何れかの所定波長において波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下であることを特徴とする。また、上記所定波長において波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.01nm/℃以下であるのが好適である。
【0012】
この光ファイバは、コアおよびクラッド領域を含むガラスファイバの周囲に断熱層が設けられていて、所定波長において波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下(好適には0.01nm/℃以下)であることにより、外部環境の温度変動と比べて遅くガラスファイバの温度が変動するので、波長分散等の伝送特性の変動が低減され得る。ここで、波長分散をDとし、温度をTとし、分散スロープをDslopeとすると、波長分散の温度係数は「dD/dT」なる式で表され、波長分散の温度係数の分散スロープ依存性は「(dD/dT)/Dslope」なる式で表される。
【0013】
本発明に係る光ファイバは、クラッド領域の周囲にプライマリ層およびセカンダリ層が設けられ、断熱層が、クラッド領域とプライマリ層との間、プライマリ層とセカンダリ層との間、または、セカンダリ層の外側に設けられているのが好適であり、この場合には、断熱層を設ける位置について自由度があり、製造コスト等を考慮して適切なる位置に断熱層が設けられ得る。また、プライマリ層およびセカンダリ層の何れかが断熱層であるのも好適であり、この場合には、プライマリ層およびセカンダリ層とは別に新たに断熱層を設ける必要がないので、コスト上昇が抑制され得る。
【0014】
本発明に係る光ファイバは、断熱層の熱伝導率が0.02W/mK以下であるのが好適である。この場合には、光ファイバ中に熱が到達する速度が遅くなり、光ファイバの温度変化がゆっくりしたものになる。したがって、万一、温度変動によって光ファイバの波長分散が変化するのに応じて分散補償器において分散補償量を制御する必要があったとしても、その応答速度を遅くすることができるため、分散補償制御系に求められる速度が低く抑えられ、分散補償器の構成を簡便にすることができ、或いは、コストを低減することが可能となる。
【0015】
本発明に係る光ファイバでは、上記所定波長が1550nmであるのが好適である。この波長を含む波長帯域では、光増幅も可能であり、ロスも低く、したがって、高速長距離伝送に広く用いられる波長1550nm帯での伝送に本光ファイバを用いることで、低コストシステムが構築できる。
【0016】
本発明に係る光ケーブルは、上記の本発明に係る光ファイバを複数本束ねて構成されることを特徴とする。上記のような光ファイバを光ケーブルに採用することで、環境変化の影響を受け難い安定なシステム及びネットワークの設計が容易となる。
【0017】
本発明の光ファイバは、環境温度をステップ状にT0 K変化させた際にコア領域もしくはクラッド領域の温度が0.9 x T0 K変化するのに要する時間が、断熱処理されていない従来の光ファイバにおける時間と比較して3倍以上となるような断熱層を備えているのが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光ファイバは、中継区間に光伝送路として敷設される場合に適用するのに好適であって、外部環境の温度変動に因る伝送特性変動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
先ず、本発明に係る光ファイバの第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る光ファイバ10の断面図である。同図(a)は、光ファイバ10の中心軸に垂直な断面を示し、同図(b)は、光ファイバ10の中心軸を含む断面を示す。この図に示される光ファイバ10は、内側から順に、コア領域11、クラッド領域12、プライマリ層13、セカンダリ層14および断熱層15を備える。
【0021】
コア領域11およびクラッド領域12は、SiOガラスを主成分とするものであって、ガラスファイバを構成している。クラッド領域12は、コア領域11の屈折率より低い屈折率を有し、該コア領域11を取り囲んでいる。プライマリ層13はクラッド領域12を取り囲み、セカンダリ層14はプライマリ層13を取り囲み、断熱層15はセカンダリ層14を取り囲んでいる。すなわち、本実施形態では、断熱層15はセカンダリ層14の外側に設けられている。プライマリ層13およびセカンダリ層14は樹脂からなる。断熱層15は、熱伝導率が小さいものであって、好適には空気の熱伝導率より小さい熱伝導率を有し、更に好適には熱伝導率が0.02W/mK以下である。断熱層15は例えばガラスファイバ繊維からなる。
【0022】
また、この光ファイバ10は、波長範囲1280nm〜1660nmに含まれる何れかの所定波長(好適には波長1550nm)において、波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下であり、より好適には、この値が0.01nm/℃以下である。これにより、光ファイバ10において、外部とガラスファイバとの間で熱が伝わり難くなり、外部環境の温度変動と比べて遅くガラスファイバの温度が変動するので、波長分散や偏波モード分散等の伝送特性の変動が低減され得る。
【0023】
一般に、光ファイバの波長分散の温度依存性は下記(1)式で表される。ここで、Dは光ファイバの波長分散であり、Tは光ファイバの温度であり、λは光ファイバのゼロ分散波長であり、Dslopeは光ファイバの分散スロープである。また、「dD/dT」は光ファイバの波長分散の温度係数を表し、「dλ/dT」は光ファイバのゼロ分散波長の温度係数を表す。また、光ファイバの波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値Yは下記(2)式で定義される。上記(1)式と(2)式とから、パラメータYは下記(3)式で表される。
【0024】
【数1】

【0025】
【数2】

【0026】
【数3】

【0027】
従来の光ファイバでは、ゼロ分散波長の温度係数「dλ/dT」は0.028nm/℃程度であり、したがって、パラメータYの値は0.028nm/℃程度である。ここで、外部環境の温度が変動して、その温度変動幅ΔTが50℃であるとする。光ファイバの分散スロープは、0.06ps/nm/kmであるとし、殆ど温度に依存しないとする。このとき、従来の光ファイバの波長分散変化量ΔDは、上記(1)式から、0.084ps/nm/km(=0.028×50×0.06)となる。この従来の光ファイバからなる光伝送路のスパンが100kmである場合は、スパン毎の波長分散変化量は8.4ps/nm(=0.084×100)となる。この従来の光ファイバが長さ500kmであって全長に渡って温度が変化していたとすると、トータルの波長分散変化量は42ps/nm(=0.084×500)となる。
【0028】
一般に、信号光波形がNRZの場合、ビットレート40Gb/sのときの分散耐力は60ps/nm程度であり、ビットレート80Gb/sのときの分散耐力は15ps/nm程度であり、ビットレート160Gb/sのときの分散耐力は3ps/nm以下である。このことを考慮すると、パラメータYの値が0.028nm/℃程度である従来の光ファイバを光伝送路として用いた場合、ビットレート40Gb/sのときにおいても伝送特性に影響が出る分散変化量であり、ビットレート80Gb/sのときにはエラーが多発し、ビットレート160Gb/sのときには伝送が困難になる変化量である。このことから、従来の光ファイバを用いた場合は、波長分散を可変で補償する分散補償器を設ける等の対策が必要となる。
【0029】
一方、本実施形態に係る光ファイバ10においてパラメータYの値を0.02nm/℃以下とした場合には以下のとおりである。この場合、環境温度の変動幅ΔTが同じく50℃であるとき、長さ100kmでの波長分散変化量ΔDは6ps/nmまで小さく抑えられ、長さ250kmでの波長分散変化量ΔDは15ps/nmまで小さく抑えられ、長さ500kmでの波長分散変化量ΔDは30ps/nmまで小さく抑えられる。したがって、ビットレート400Gb/sで長さ500kmだけ伝送した後のペナルティを低減することが可能となるほか、ビットレート80Gb/sでも長さ250km伝送することが可能であり、メトロエリアのかなりのネットワークをカバーすることができ、また、ビットレート160Gb/sであっても長さ100kmでもペナルティを許容しつつの伝送が可能となる。
【0030】
また、本実施形態に係る光ファイバ10においてパラメータYの値を0.01nm/℃以下とした場合には以下のとおりである。この場合、環境温度の変動幅ΔTが同じく50℃であるとき、長さ100kmでの波長分散変化量は3ps/nmまで小さく抑えられ、長さ500kmでも波長分散変化量は15ps/nmまで小さく抑えられる。したがって、ビットレート80Gb/sでも長さ500kmの伝送が可能であり、ビットレート160Gb/sであっても長さ100kmの伝送までは可変分散補償器を用いなくても可能である。
【0031】
このことから、本実施形態に係る光ファイバ10を伝送システムに適用することにより、送受信機に高コストな製品や部品を用いなくても高速ネットワークの構築が可能になる。また、将来のコンピューター間通信ではビットレート1Tb/sを超える速さの信号が送受信される可能性もあるが、このとき機器などの影響による温度変化があったとしても、要求される分散耐力0.04ps/nmに対して、0.03ps/nm/km以下を実現できるので、本実施形態に係る光ファイバ10により長さ1kmまでの短距離通信で十分対処可能である。
【0032】
また、本実施形態に係る光ファイバ10、または、このような光ファイバ10が複数本束ねられた光ケーブルは、外部環境とガラスファイバとの間の熱の伝導率が低いので、外部環境温度に対して、ガラスファイバ中の温度の変化が鈍感になる、すなわち、波長分散の変化が遅くなるので、システムが急激に不安定になる状況を回避しやすい。また、万一波長分散が温度によって変化することで分散補償量を制御する必要があったとしても、その応答速度を遅くできるため、分散補償制御系に求められる速度が低く抑えられ、分散補償器の構成を簡便にできたり、コストを低減することが可能となる。ガラスファイバの温度が外部環境の最高温度または最低温度まで達しないようにすれば、波長分散変化量をおさえることが可能となるばかりでなく、温度によって変化する他のパラメータである偏波モード分散やブリルアン散乱特性などの変化も低減可能となる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る光ファイバの第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態に係る光ファイバ20の断面図である。同図(a)は、光ファイバ20の中心軸に垂直な断面を示し、同図(b)は、光ファイバ20の中心軸を含む断面を示す。この図に示される光ファイバ20は、内側から順に、コア領域21、クラッド領域22、プライマリ層23、断熱層25およびセカンダリ層24を備える。
【0034】
コア領域21およびクラッド領域22は、SiOガラスを主成分とするものであって、ガラスファイバを構成している。クラッド領域22は、コア領域21の屈折率より低い屈折率を有し、該コア領域21を取り囲んでいる。プライマリ層23はクラッド領域22を取り囲み、断熱層25はプライマリ層23を取り囲み、セカンダリ層24は断熱層25を取り囲んでいる。すなわち、本実施形態では、断熱層25は、プライマリ層23とセカンダリ層24との間に設けられている。プライマリ層23およびセカンダリ層24は樹脂からなる。断熱層25は、熱伝導率が小さいものであって、好適には空気の熱伝導率より小さい熱伝導率を有し、更に好適には熱伝導率が0.02W/mK以下である。断熱層25は例えばガラスファイバ繊維からなる。
【0035】
また、この光ファイバ20は、波長範囲1280nm〜1660nmに含まれる何れかの所定波長(好適には波長1550nm)において、波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下であり、より好適には、この値が0.01nm/℃以下である。これにより、光ファイバ20において、外部とガラスファイバとの間で熱が伝わり難くなり、外部環境の温度変動と比べて遅くガラスファイバの温度が変動するので、波長分散や偏波モード分散等の伝送特性の変動が低減され得る。また、この第2実施形態に係る光ファイバ20は、前述の第1実施形態に係る光ファイバ10と同様の効果を奏し得る。
【0036】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る光ファイバの第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態に係る光ファイバ30の断面図である。同図(a)は、光ファイバ30の中心軸に垂直な断面を示し、同図(b)は、光ファイバ30の中心軸を含む断面を示す。この図に示される光ファイバ30は、内側から順に、コア領域31、クラッド領域32、断熱層35、プライマリ層33およびセカンダリ層34を備える。
【0037】
コア領域31およびクラッド領域32は、SiOガラスを主成分とするものであって、ガラスファイバを構成している。クラッド領域32は、コア領域31の屈折率より低い屈折率を有し、該コア領域31を取り囲んでいる。断熱層35はクラッド領域32を取り囲み、プライマリ層33は断熱層35を取り囲み、セカンダリ層34はプライマリ層33を取り囲んでいる。すなわち、本実施形態では、断熱層35は、クラッド領域32とプライマリ層33との間に設けられている。プライマリ層33およびセカンダリ層34は樹脂からなる。断熱層35は、熱伝導率が小さいものであって、好適には空気の熱伝導率より小さい熱伝導率を有し、更に好適には熱伝導率が0.02W/mK以下である。断熱層35は例えばガラスファイバ繊維からなる。
【0038】
また、この光ファイバ30は、波長範囲1280nm〜1660nmに含まれる何れかの所定波長(好適には波長1550nm)において、波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下であり、より好適には、この値が0.01nm/℃以下である。これにより、光ファイバ30において、外部とガラスファイバとの間で熱が伝わり難くなり、外部環境の温度変動と比べて遅くガラスファイバの温度が変動するので、波長分散や偏波モード分散等の伝送特性の変動が低減され得る。また、この第3実施形態に係る光ファイバ30は、前述の第1実施形態に係る光ファイバ10と同様の効果を奏し得る。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る光ファイバの第4実施形態について説明する。図4は、第4実施形態に係る光ファイバ40の断面図である。同図(a)は、光ファイバ40の中心軸に垂直な断面を示し、同図(b)は、光ファイバ40の中心軸を含む断面を示す。この図に示される光ファイバ40は、内側から順に、コア領域41、クラッド領域42、プライマリ層43およびセカンダリ層44を備える。
【0040】
コア領域41およびクラッド領域42は、SiOガラスを主成分とするものであって、ガラスファイバを構成している。クラッド領域42は、コア領域41の屈折率より低い屈折率を有し、該コア領域41を取り囲んでいる。プライマリ層43はクラッド領域42を取り囲み、セカンダリ層44はプライマリ層43を取り囲んでいる。本実施形態では、プライマリ層43およびセカンダリ層44の双方または何れか一方は断熱層として作用する。プライマリ層43およびセカンダリ層44は樹脂からなる。断熱層(プライマリ層43およびセカンダリ層44の何れか)は、熱伝導率が小さいものであって、好適には空気の熱伝導率より小さい熱伝導率を有し、更に好適には熱伝導率が0.02W/mK以下である。断熱層は例えばガラスファイバ繊維からなる。
【0041】
また、この光ファイバ40は、波長範囲1280nm〜1660nmに含まれる何れかの所定波長(好適には波長1550nm)において、波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下であり、より好適には、この値が0.01nm/℃以下である。これにより、光ファイバ40において、外部とガラスファイバとの間で熱が伝わり難くなり、外部環境の温度変動と比べて遅くガラスファイバの温度が変動するので、波長分散や偏波モード分散等の伝送特性の変動が低減され得る。また、この第4実施形態に係る光ファイバ40は、前述の第1実施形態に係る光ファイバ10と同様の効果を奏し得る。
【0042】
(変形例)
上記の各実施形態では光ファイバについて主に説明したが、複数本の光ファイバが束ねられて構成される光ケーブルについても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態に係る光ファイバ10の断面図である。
【図2】第2実施形態に係る光ファイバ20の断面図である。
【図3】第3実施形態に係る光ファイバ30の断面図である。
【図4】第4実施形態に係る光ファイバ40の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10…光ファイバ、11…コア領域、12…クラッド領域、13…プライマリ層、14…セカンダリ層、15…断熱層、20…光ファイバ、21…コア領域、22…クラッド領域、23…プライマリ層、24…セカンダリ層、25…断熱層、30…光ファイバ、31…コア領域、32…クラッド領域、33…プライマリ層、34…セカンダリ層、35…断熱層、40…光ファイバ、41…コア領域、42…クラッド領域、43…プライマリ層、44…セカンダリ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア領域と、このコア領域の屈折率より低い屈折率を有し該コア領域を取り囲むクラッド領域と、このクラッド領域の周囲に設けられた断熱層と、を備え、
波長範囲1280nm〜1660nmに含まれる何れかの所定波長において波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.02nm/℃以下である、
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記所定波長において波長分散の温度係数の分散スロープ依存性の絶対値が0.01nm/℃以下であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記クラッド領域の周囲にプライマリ層およびセカンダリ層が設けられ、
前記断熱層が、前記クラッド領域と前記プライマリ層との間、前記プライマリ層と前記セカンダリ層との間、または、前記セカンダリ層の外側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記クラッド領域の周囲にプライマリ層およびセカンダリ層が設けられ、
前記プライマリ層および前記セカンダリ層の何れかが前記断熱層である、
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記断熱層の熱伝導率が0.02W/mK以下であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記所定波長が1550nmであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の光ファイバを複数本束ねて構成されることを特徴とする光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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