説明

光モジュール

【課題】雰囲気温度が変化しても光ファイバの曲率半径を適切に維持して、曲げ損失が生じるのを防止できる光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、光部品13が収納された筐体10と、前記筐体10の側壁面に形成された入力側光ファイバコード2を前記光部品13に案内する入力ポート18を備え、前期光ファイバコード2から保護材を取り除いた入力側光ファイバ素線16は、前記入力ポート18においてその通線方向に移動可能であり、前記筐体10内における長さの変化に応じて曲率半径の中心が移動し、かつ前記筐体10の側壁に接触しない曲部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光部品を備えた光モジュールに関し、特に、光ファイバ素線の曲率半径を適切に維持して曲げ損失が生じるのを防止できる光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信技術の進展とインターネットに代表される通信需要急増により、一般家庭を含めた加入者宅への光ファイバケーブルの導入が進められている。従来、局から加入者までの光線路は、局から配線される幹線用光ファイバケーブルと、そこから分岐し電柱を利用して配線される架空光ファイバケーブルと、架空光クロージャに収納された光スプリッタを用いて前記架空光ファイバケーブルから分岐して加入者宅に配線される光ファイバドロップケーブルと、で構成されている。
【0003】
従来の光スプリッタを備えたモジュールには、例えば、特許文献1に記載された光パワーを分割するためのモジュール装置がある。このモジュール装置は、図7に示すように、1×32PLCスプリッタである光スプリッタ110と、LCコネクタ111を含む第1結合部材112と、4つの8ファイバMPOコネクタ121a、121b、121c、および121dを含む第2結合部材122とを含むモジュール装置100である。ここでは、入力ポート113は、光スプリッタ110の第1結合部材112からLCコネクタ111を受け入れるためのLCアダプタとして構成されている。同様に、出力ポート123a〜dは、MPOコネクタ121を受け入れるためのMPOアダプタとして構成されている。
【0004】
上記したモジュール装置100には、第1結合部材112、第2結合部材122が過剰な曲率半径とならないように寸法決めされた収納ケース101が用いられている。第1結合部材112、第2結合部材122が適切な曲率半径を維持できる配置となるように、入力ポート113から出力ポート123に至る光ファイバ線路の経路を指定する。
【0005】
しかし、上記モジュール装置100は、収納ケース101に第1結合部材112及び第2結合部材122の固定手段が設けられておらず、第2結合部材122は収納ケース101の内壁に四方で当接して位置決めされているだけなので、適切な曲率半径を常時維持するのは困難であり、大きな曲げ損失が生じることがある。また、外気温の寒暖の差により、第1結合部材112、第2結合部材122の長さが伸縮すると、収納ケース101内壁との当接部位で曲率半径に変化が生じて曲げ損失が増大することもある。
【0006】
また、内壁に当接された第1結合部材112及び第2結合部材122の曲げ損失が増大するのを確実に防止するためには、収納ケース101の寸法を大きくする必要があるので、モジュール装置100は大型にならざるを得ない。従って、例えば、これを電柱に設置して架空光ファイバケーブルを分岐させる場合には、電柱での設置数量が限定されるので、1電柱あたりの分岐数が限られ、光ファイバケーブルの分岐作業の効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−209118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、雰囲気温度が変化しても光ファイバの曲率半径を適切に維持して曲げ損失が生じるのを防止できる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、光部品が収納された筐体と、前記筐体の側壁面に形成された、少なくとも1本の光ファイバを前記光部品に案内する光ファイバポートを備えた光モジュールであって、前記光ファイバポートにおいて、前記光ファイバはその通線方向に移動可能であり、前記筐体内に配置された光ファイバが、前記筐体内における長さの変化に応じて曲率半径の中心が移動し、かつ前記筐体の側壁に接触しない曲部を有する光モジュールである。
【0010】
本発明の第1の態様では、外部環境の寒暖の差によって筐体内に配置されている光ファイバの長さが変化するにあたり、筐体の側壁に接触せずに曲率半径の中心が移動する光ファイバの曲部(以下、「可動曲部」ということがある。)にて、光ファイバの長さの変化を吸収する。すなわち、雰囲気温度の変化により、筐体内に配置されている光ファイバが長くなっていくと、それに応じて、可動曲部は、その曲率半径の中心を所定の方向に移動させつつ筐体内を内底面に沿って移動していき、光ファイバの長さの変化に対応する。一方で、雰囲気温度の変化により筐体内に配置されている光ファイバが短くなっていくと、それに応じて、前記可動曲部は、その曲率半径の中心を前記所定の方向とは反対方向に移動させつつ筐体内を内底面に沿って移動していき、光ファイバの長さの変化に対応する。
【0011】
このとき、外部環境の寒暖の差による光ファイバの長さの変化については、その範囲が想定可能であり、前記範囲内で可動曲部が筐体の側壁に接触しないよう配置されているので、光ファイバの長さの変化に対して、常に前記可動曲部の位置取りの自由度は保たれている。なお、「曲率半径の中心」とは、筐体内に配置されている光ファイバの曲部について、その曲率半径を形成する円を想定した場合に前記円の中心点を意味する。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記光ファイバポートにおいて、前記光ファイバは、固定されたチューブに収納された光モジュールである。本発明の第3の態様は、前記チューブが、ナイロンチューブである光モジュールである。本発明の第4の態様は、前記チューブに収納された光ファイバが、光ファイバコードである光モジュールである。
【0013】
本発明の第5の態様は、前記光部品は入力端及び出力端を有し、前記入力端から導出される前記光ファイバが案内される入力ポートと、前記出力端から導出される前記光ファイバが案内される出力ポートを備え、前記入力ポートと前記出力ポートが、前記筐体の同じ側壁面に形成された光モジュールである。
【0014】
本発明の第6の態様は、前記光部品が、光パワーを分割する平面光波回路であり、前記出力端部から複数本の光ファイバが導出されていることを特徴とする光モジュールである。
【0015】
本発明の第7の態様は、前記複数本の光ファイバのうち少なくとも2本の光ファイバが、前記平面光波回路の出力端部及び出力ポートにて、筐体の底面に対して垂直方向に相互に配置されていることを特徴とする光モジュールである。
【0016】
すなわち、平面光波回路にて1本の光ファイバから分岐された複数本の光ファイバの全てが、筐体の底面に対し平行に、つまり横一線に並んでいるのではなく、複数本の光ファイバの少なくとも一部は、筐体の底面に対して垂直方向、つまり縦方向に並んでいる。
【0017】
本発明の第8の態様は、前記筐体の内底面に、前記曲部の位置決めをするための目印を備えたことを特徴とする光モジュールである。
【0018】
筐体内に光ファイバを配線する際に、筐体内底面に設けられた目印に基づいて、可動曲部の位置決めをすることで、筐体に配置された光ファイバの長さが変化しても、前記可動曲部が筐体の側壁に接触しない状態を確保する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、前記筐体内における光ファイバの長さの変化に追従して、曲率半径の中心が移動し、かつ筐体の側壁に接触しない曲部を有するので、光ファイバの曲部が筐体側壁に当たることによる光ファイバの曲率半径の変化を防止できる。また、雰囲気温度の変化が大きい環境下であっても、光ファイバの曲率半径の変化を防止して曲げ損失の増加を防ぐことができるので、屋外に設置しても、安定した光学特性が得られる。さらに、筐体内における光ファイバの長さが変化しても、曲率半径の変化に起因した曲げ損失の増加を防止できるので、筐体内における光ファイバの曲率半径を最大限小さくする配線が可能となる。従って、筐体を小さくできるので、光モジュールが小型となる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、光ファイバポートにて光ファイバはチューブに収納されているので、作業時等における光ファイバの損傷を防止できる。本発明の第3の態様によれば、ナイロンチューブを用いるので安価である。本発明の第4の態様によれば、光ファイバコードが形成されているので、光ファイバケーブルとの接続が容易である。
【0021】
本発明の第5の態様によれば、入力ポートと出力ポートが筐体の同一壁面に設けられているので、分岐作業等、光ファイバの配線、設置作業が簡易である。
【0022】
本発明の第6の態様によれば、光モジュールが小型となり、電柱等に設置する従来の架空クロージャに、従来よりも多くの光モジュールを収納することができるので、1架空クロージャあたり、分岐した光ファイバケーブルの本数を多くとることができる。また、一箇所の工事で多くの光ファイバケーブルを分岐できるので、分岐作業を効率化できる。
【0023】
本発明の第7の態様によれば、複数本の光ファイバ素線の少なくとも一部は、平面光波回路の出力端部及び光スプリッタの出力ポートにて、縦方向に並んだ状態で保持されているので、複数本の光ファイバ素線について、その可動曲部におけるよじれを防止して、曲率半径をほぼ同じに制御できる。
【0024】
本発明の第8の態様によれば、可動曲部の位置決めのための目印が設けられているので、光ファイバ素線の筐体側壁への接触を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態例に係る光モジュールを用いた光モジュール装置を示す斜視図である。
【図2】(a)図は、本発明の実施形態例に係る光モジュールの斜視図、同(b)図は、本発明の実施形態例に係る光モジュールの平面図である。
【図3】本発明の実施形態例に係る光モジュールの本体部の平面図である。
【図4】本発明の実施形態例に係る光モジュールの蓋部の平面図である。
【図5】本発明の実施形態例に係る光モジュールの側面図である。
【図6】本発明の実施形態例に係る光モジュールの作用を説明する模式図である。
【図7】従来の光スプリッタモジュール装置内部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態例に係る光モジュールを図面に基づいて説明する。図1に示すように、本発明の実施形態例に係る光モジュール1は、光スプリッタモジュールであって、その入力側に1本の入力側光ファイバコード2が結合され、出力側に複数本(ここでは8本)の出力側光ファイバコード3が結合されて、光信号を複数に分岐する光モジュール装置Aが構成される。入力側光ファイバコード2の端部にはコネクタ4が設けられており、入力側光ファイバコード2は、コネクタ4を介して、電柱を利用して配線される架空光ファイバケーブル(図示せず)に接続される。出力側光ファイバコード3のそれぞれの端部にもコネクタ5が設けられており、出力側光ファイバコード3は、コネクタ5を用いて、加入者宅へと配線されている光ドロップケーブル(図示せず)に接続される。
【0027】
本発明の実施形態例に係る光モジュール1は、図2(a)(b)に示すように、本体部11及び蓋部12からなる樹脂製の筐体10に、光部品として光パワーを分割する平面光波回路(PLC)13が収納されている。筐体10は平面視略矩形状で、その寸法は長手方向103mm×短手方向42mm×厚さ5.3mmである。PLC13の入力端部14には、光モジュール1の入力ポート18方向から伸びている1本の入力側光ファイバ素線16が接続されている。この入力側光ファイバ素線16は、入力ポート18に挿入された入力側光ファイバコード2から保護材であるシース及びナイロンパイプを取り除いたものである。すなわち、入力側光ファイバコード2は、入力側光ファイバ素線16となる光ファイバ素線を収納している。
【0028】
入力ポート18は、本体部11の短手方向を形成する側壁面に設けられた切り欠き部で構成されている。切り欠き部の内壁側には、入力側光ファイバコード2を光モジュール1に固定するための固定部20が設けられている。固定部20は、入力側光ファイバコード2と入力側光ファイバ素線16との境界部近傍にて、入力側光ファイバコード2を固定している。
【0029】
一方、PLC13の出力端部15には、複数本(ここでは8本)の出力側光ファイバ素線17が接続されている。この出力側光ファイバ素線17は光モジュール1の出力ポート19へと伸び、出力ポート19から複数本(ここでは8本)の出力側光ファイバコード3として光モジュール1の外方に向かっている。出力側光ファイバ素線17は、出力側光ファイバコード3から保護材であるシース及びナイロンパイプを取り除いたものである。
【0030】
出力ポート19は、入力ポート18と同一の側壁面に設けられた切り欠き部で構成されている。切り欠き部の内壁側には、出力側光ファイバコード3を光モジュール1に固定するための固定部20が設けられている。固定部20は、出力側光ファイバコード3と出力側光ファイバ素線17との境界部近傍にて、出力側光ファイバコード3を固定している。
【0031】
蓋部12は本体部11の底面と対応した形状をしており、結合部30にて本体部11と一体になっている。本体部11内におけるPLC13の設置作業及び入力側光ファイバ素線16と出力側光ファイバ素線17の配線作業の終了後、結合部30を軸にして蓋部12を本体部11方向に回転させて本体部11の開口部を閉じると、光モジュール1の使用が可能となる。
【0032】
入力側光ファイバ素線16と出力側光ファイバ素線17の配線について、図3を用いて説明する。図3に示すように、入力ポート18に挿入されている1本の入力側光ファイバコード2は、固定部20近傍で1本の入力側光ファイバ素線16となる。入力側光ファイバ素線16は、本体部11の長手方向を形成する側壁面22に沿うようにして、固定部20近傍から側壁面22に設けられた支持体21へと配線されている。入力側光ファイバ素線16は、支持体21のところで側壁面22及び本体部11内底面と摺動可能に支持されている。支持体21に支持された入力側光ファイバ素線16は、側壁面22に対向する側壁面に設置されたPLC13の方向に曲げられることで、本体部11の短手方向を形成する側壁面23に接触しない所定の曲率半径を有する可動曲部24が形成されている。
【0033】
可動曲部24が形成された入力側光ファイバ素線16は、本体部11内底面に形成された4つの支持片25a、25b、25c、25dにて平面視し字状の曲部が形成されて、PLC13の入力端部14へとつなげられている。つまり、支持体21と支持片25aの間に形成された可動曲部24は、本体部11内底面に支持されていないが、平面視し字状の曲部は、4つの支持片25a、25b、25c、25dにより本体部11内底面に支持されている。上記した可動曲部24と平面視し字状曲部の曲率半径は、入力側光ファイバ素線16の曲げ損失を抑える点から、いずれも15mm以上であり、光モジュール1の小型化の点から15mm〜18mmの範囲が好ましい。
【0034】
一方、図3に示すように、8本の出力側光ファイバ素線17は、本体部11の底面に対して水平方向に2本と垂直方向に4本並んだ構成で、PLC13の出力端部15から導出されている。この8本の出力側光ファイバ素線17が、PLC13に対向する側壁面22方向に曲げられることで、本体部11の短手方向を形成する側壁面23に接触しない所定の曲率半径を有する可動曲部26が形成されている。このとき、可動曲部26においても、8本の出力側光ファイバ素線17は、本体部11の底面に対して水平方向に2本と垂直方向に4本並んだ構成となっている。
【0035】
可動曲部26が形成された8本の出力側光ファイバ素線17は、入力側光ファイバ素線16とともに、支持体21のところで側壁面22及び本体部11内底面と摺動可能に支持されている。そして、8本の出力側光ファイバ素線17は、本体部11の底面に対して水平方向に2本と垂直方向に4本並んだ構成のまま、支持体21から固定部20方向へと側壁面22に沿うようにして配線されている。つまり、PLC13の出力端部15と支持体21の間に形成された可動曲部26は、本体部11内底面に支持されていないが、支持体21から固定部20に至る配線は本体部11内底面に支持されていることとなる。8本の出力側光ファイバ素線17は、本体部11の底面に対して水平方向に2本と垂直方向に4本並んだ構成のまま固定部20近傍で8本の出力側光ファイバコード3となり、出力ポート19を介して光モジュール1から導出されている。
【0036】
上記した可動曲部26の曲率半径は、出力側光ファイバ素線17の曲げ損失を抑える点から15mm以上であり、光モジュール1の小型化の点から15mm〜18mmが好ましい。
【0037】
次に、図4、図5を用いて、本発明の実施形態例に係る光モジュール1の蓋部12の構成及び蓋部12の取付機構について説明する。図4に示すように、蓋部12は平板状であり、その縁部に2個の第1係止片31と6個の第2係止片32が、平板上に3個の位置合わせ用突起35が設けられている。
【0038】
そして、図5に示すように、第1係止片31は本体部11の側壁部に設けられた第1係止片受部33に、第2係止片32は本体部11の側壁部に設けられた第2係止片受部34に、それぞれ係止されることで、蓋部12が本体部11の開口部を閉じた状態で固定される。第1係止片31は、孔部31´が第1係止片受部33に設けられた係止突起片33´と嵌合することで係止され、第2係止片32は、係止爪32´が第2係止片受部34に設けられた係止部34´に引掛けられることで係止される。
【0039】
また、位置合わせ用突起35は、本体部11を蓋部12で閉める際に、本体部11の底面に設けられた位置合わせ用孔部36と嵌合して、蓋部12の位置合わせを容易にしている。
【0040】
次に、図6を用いて、可動曲部24、26の作用について説明する。入力側光ファイバ素線16の可動曲部24と出力側光ファイバ素線17の可動曲部26は、ともに同じ作用を有するので、ここでは、出力側光ファイバ素線17の可動曲部26を例にとって説明する。従って、図6では、入力側光ファイバ素線16の可動曲部24の図示は省略する。なお、通常状態の可動曲部26の位置はIとする。
【0041】
本発明の実施形態例では、出力側光ファイバコード3は、光ファイバ素線をナイロンパイプで被覆して保護している。従って、雰囲気温度が上昇すると、ファイバ素線を被覆しているナイロンパイプは熱膨張して、その長さが長くなる。一方で、光ファイバ素線は雰囲気温度が上昇しても、その長さはほとんど変化しない。従って、光ファイバ素線のうちナイロンパイプに被覆されている部分の長さは、ナイロンパイプが熱膨張で長くなった分だけ長くなる。すると、光モジュール1内に配置されている出力側光ファイバ素線17は、ナイロンパイプが長くなった分だけ出力側光ファイバコード3内に引き込まれることとなるので、光モジュール1内に配置されている出力側光ファイバ素線17の長さは、その分短くなる。
【0042】
このとき、出力側光ファイバ素線17は、PLC13の出力端部15及び固定部20(固定部20では、出力側光ファイバ素線17はナイロンパイプとシースで被覆されて出力側光ファイバコード3となっている)で本体部11に固定され、さらに支持体21で本体部11内底面と摺動可能に支持されているので、出力側光ファイバ素線17の長さが短くなるのに追従して、可動曲部26はIの位置から出力ポート19方向である矢印Bの方向へと移動していき、IIの位置をとる。可動曲部26の曲率半径の中心も、可動曲部のIからIIへの移動に応じて中心Iから中心IIへと移動する。
【0043】
反対に、雰囲気温度が低下すると、ファイバ素線を被覆しているナイロンパイプは収縮して、その長さが短くなる。一方で、光ファイバ素線は雰囲気温度が低下してもその長さは、ほとんど変化しない。従って、光ファイバ素線のうちナイロンパイプに被覆されている部分の長さは、ナイロンパイプが収縮した分だけ短くなる。すると、光モジュール1内に配置されている出力側光ファイバ素線17は、ナイロンパイプが短くなった分だけ出力側光ファイバコード3から押し出されることとなるので、光モジュール1内に配置されている出力側光ファイバ素線17の長さは、その分長くなる。出力側光ファイバ素線17の長さが長くなるのに追従して、可動曲部26は、Iの位置から出力ポート19とは反対方向である矢印Cの方向へと移動していき、IIIの位置をとる。これに応じて、可動曲部26の曲率半径の中心も、中心Iから中心IIIへと移動する。このとき、可動曲部26がIIIの位置をとっても側壁面23には接触しないように、可動曲部26の位置Iを決める。
【0044】
なお、可動曲部26の位置がII、IIIのいずれであっても、その曲率半径が15mm以上となるように、位置Iの曲率半径を15mm以上に設定する。
【0045】
次に、光モジュールの使用方法について説明する。ここでは、光モジュール1の電柱への設置方法を例にして説明する。電柱上部に登った作業者は、電柱に設置されている架空光クロージャに光モジュール1を収納する。このとき、作業性を向上させるために、入力ポート18と出力ポート19を備えた側壁面が作業者側に向くように光モジュール1を架空光クロージャに収納する。そして、幹線用光ファイバケーブルから分岐して電柱を利用して配線されている架空光ファイバケーブルに、コネクタ4を介して光モジュール1に結合した入力側光ファイバコード2を接続する。さらに、光モジュール1に結合した8本の出力側光ファイバコード3を、コネクタ5を介して8件の加入者宅へと配線されている各光ドロップケーブルに接続する。
【0046】
この設置方法例では、光モジュール1は小型化されているので、従来よりも多くの光モジュールを架空光クロージャに収納でき、1つの架空光クロージャで分岐本数をより多く確保できる。
【0047】
次に、本発明の他の実施形態例を説明する。入力側光ファイバ素線16の可動曲部24、出力側光ファイバ素線17の可動曲部26を形成するにあたり、本体部11の内底面に目印を設けて、その位置決めを容易化してもよい。作業者は、例えば、可動曲部24、26が目印上を通るように配線することで、光ファイバ素線16、17が長くなっても側壁面23に接触するのを確実に防止できる。
【0048】
上記実施形態例では、出力側光ファイバ素線17は、PLC13の出力端部15及び出力ポートにて本体部11の底面に対して水平方向2本と垂直方向4本の配列に固定されていたが、可動曲部26におけるよじれを防止できる配列であればよく、例えば、垂直方向に8本並べてもよく、水平方向に4本と垂直方向に2本並べてもよい。また、出力側光ファイバ素線17は8本であったが、これに限定されず、加入者宅の軒数等、必要に応じて適宜の本数とすることができる。
【0049】
上記実施形態例では、蓋部12は、その周縁部に設けられた2個の第1係止片31と6個の第2係止片32を用いて、本体部11の開口部を閉じた状態で固定していたが、本体部11の開口部を閉じた状態で固定できれば、係止片の種類及び数量は特に限定されない。また、蓋部12を閉める際に、本体部11との位置合わせに支障がなければ、位置合わせ用突起35を設けなくてもよい。さらに、上記実施形態例では、光モジュール1は光スプリッタモジュールであって光部品にPLC13を用いたが、光部品は特に限定されず、光モジュールの用途に応じて、PLC13に代えて、例えば、光増幅器、光合波・分波器などの光部品を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
筐体を小型化しつつ光ファイバ素線の曲げ損失の増加を防止できるので、例えば、電柱に設置した光分岐装置の分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0051】
1 光モジュール
10 筐体
11 本体部
12 蓋部
13 平面光波回路
14 入力端部
15 出力端部
16 入力側光ファイバ素線
17 出力側光ファイバ素線
18 入力ポート
19 出力ポート
24 可動曲部
26 可動曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光部品が収納された筐体と、
前記筐体の側壁面に形成された、少なくとも1本の光ファイバを前記光部品に案内する光ファイバポートを備えた光モジュールであって、
前記光ファイバポートにおいて、前記光ファイバはその通線方向に移動可能であり、前記筐体内に配置された光ファイバが、前記筐体内における長さの変化に応じて曲率半径の中心が移動し、かつ前記筐体の側壁に接触しない曲部を有する光モジュール。
【請求項2】
前記光ファイバポートにおいて、前記光ファイバは、固定されたチューブに収納された請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記チューブが、ナイロンチューブである請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記チューブに収納された光ファイバが、光ファイバコードである請求項2に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光部品は入力端及び出力端を有し、前記入力端から導出される前記光ファイバが案内される入力ポートと、前記出力端から導出される前記光ファイバが案内される出力ポートを備え、前記入力ポートと前記出力ポートが、前記筐体の同じ側壁面に形成された請求項1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光部品が、光パワーを分割する平面光波回路であり、前記出力端部から複数本の光ファイバが導出されていることを特徴とする請求項5に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記複数本の光ファイバのうち少なくとも2本の光ファイバが、前記平面光波回路の出力端部及び出力ポートにて、筐体の底面に対して垂直方向に相互に配置されている請求項6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記筐体の内底面に、前記曲部の位置決めをするための目印を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75876(P2011−75876A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227895(P2009−227895)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(593200593)株式会社成和技研 (15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】