説明

光学フィルム、画像表示装置、ジエチニルフルオレン及びそのポリマー

【課題】位相差の波長依存性が小さく、比較的薄く形成することもできる光学フィルムを提供する。
【解決手段】 下記一般式(V)で表されるポリイミド系ポリマーを含む光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及び画像表示装置、該光学フィルムの形成材料として用いることができるジエチニルフルオレン及びポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
位相差板は、例えば液晶表示装置の広視野角化等を実現するために利用される、液晶セル等を補償する光学フィルムである。位相差板の位相差は、波長に依存しており、その位相差の波長分散は、大別して次の3種類に分けられる。1つ目は、位相差が短波長側ほど大きい波長分散を示すもの(以下、「正分散」という)、2つ目は、位相差が短波長側から長波長側に亘って殆ど変わらない波長分散を示すもの(以下、「フラット分散」という)、3つ目は、位相差が短波長側ほど小さい波長分散を示すもの(以下、「逆分散」という)である。
なお、正分散や逆分散は、位相差の波長依存性が大きく、フラット分散は、位相差の波長依存性が小さい光学的性質である。
【0003】
かかる3種の位相差板のうち、従来、フラット分散を示す位相差板として、ノルボルネン系樹脂を製膜延伸したノルボルネン系フィルムが利用されている(例えば、JSR株式会社製、商品名:アートンフィルム)。しかしながら、ノルボルネン系フィルムは、厚み60〜80μm程度なので比較的厚く、従って、光学部材の薄膜軽量化が図れない。
【0004】
一方、ポリイミドは、基材上にコーティングすることによって所定の位相差を示すことが知られている(特許文献1)。このため、ポリイミドを含む位相差板は、比較的薄く形成することができる。しかしながら、ポリイミドは、通常、正分散を示すため、これを用いた位相差板は、フラット分散とはならない。
【0005】
【特許文献1】特表2000−511296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、好ましい波長分散を示し、さらに、比較的薄く形成することもできる光学フィルム、及びこれを用いた画像表示装置、及び該光学フィルムの形成材料として好適なジエチニルフルオレンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
液晶表示装置としては、VA(Vertical Alignment)モードの液晶が広く普及している。本発明者らは、このVAモードの液晶セルの波長分散を詳細に調べたところ、近年のVAモードの液晶は、フラット分散を示すものが多くなってきていることが判った。このため、これを補償する位相差板としては、その波長分散がフラット分散を示すものを用いることが好ましい。しかし、上述のように、従来の位相差板は、一長一短がある。このため、本発明者らは、種々の材料について鋭意研究し、3重結合基(−C≡C−R)を有するフルオレン骨格を有するポリマーを用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含む光学フィルムに係る。
【0009】
【化9】

ただし、式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR(R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。
【0010】
式(I)で表される繰り返し単位が導入されたポリマーは、フルオレン骨格の共役系が三重結合基(エチニル基)によって延出され、且つフルオレン骨格が主鎖に対して直交方向に配向する。このため、該ポリマーを製膜した光学フィルムは、その位相差の波長分散がフラットに近づくのである。
【0011】
本発明の好ましい態様では、上記式(I)の繰り返し単位を有するポリマーが、ポリイミド系ポリマーである上記光学フィルムに係る。
式(I)の繰り返し単位を有するポリマーがポリイミド系ポリマーであれば、コーティング膜によって光学フィルムを作製できる。従って、光学フィルムを、比較的薄く形成することもできる。
【0012】
さらに、本発明は、上記光学フィルムを有する画像表示装置(好ましくは液晶表示装置)を提供する。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(X)で表されるジエチニルフルオレンを提供する。
【化10】

ただし、式(X)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR(R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(ただし、このRは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)、COOH基、又はNCO基を表す。
本発明の好ましい態様では、前記R及びRが、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基である上記ジエチニルフルオレンに係る。
また、本発明の好ましい態様では、上記R及びRの少なくとも何れか一方が、トリメチルシリル基である上記ジエチニルフルオレンに係る。
さらに、本発明の好ましい態様では、上記D及びD’が、NH基である上記ジエチニルフルオレンに係る。
また、本発明は、上記ジエチニルフルオレンを繰り返し単位として有するポリマーを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学フィルムは、位相差の波長分散がフラット分散となるため、例えばVAモードの液晶セルを補償する位相差板として好適に使用できる。
また、本発明の光学フィルムは、塗工によるコーティング膜によって複屈折性を発現するので、比較的薄く形成することもできる。
かかる光学フィルムの具備された画像表示装置は、良好な視野角改善などを行え、又、薄型軽量化を図ることができる。
さらに、本発明のジエチニルフルオレンは、例えば、適宜なポリマーに導入することにより、位相差の波長分散をフラットに近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを製膜することにより、波長450〜750nmの可視光領域に於けるそのフィルムの位相差がフラット分散に近づくことを見出した。本発明は、この性質を専ら利用して、フラット分散を示す(位相差の波長依存性が小さい)光学フィルムを提供するものである。
【0016】
【化11】

【0017】
上記式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR(R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。
【0018】
上記式(I)で表される繰り返し単位の中でも、下記式(IV)で表される繰り返し単位が好ましい態様である。
【化12】

式(IV)に於いて、R〜R11は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)を表し、R及びRは、式(I)と同じである。
【0019】
式(IV)に於いて、R及びRの少なくとも何れか一方がメチル基であり、且つR10及びR11の少なくとも何れか一方がメチル基である繰り返し単位が好ましい。なぜなら、該繰り返し単位を有するポリマーは、透明性に優れ、又、溶剤溶解性に優れているからである。
式(I)及び式(IV)に於いて、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基であるものが好ましく、特に、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基であるものがより好ましい。
【0020】
上記式(I)の繰り返し単位を有するポリマーは、フルオレン骨格の共役系が三重結合基(エチニル基)によって延出され、且つフルオレン骨格が主鎖に対して直交方向に配向する。このため、本発明のポリマーは、式(I)の繰り返し単位を有する部位に於いて位相差の波長分散が大きくなる。従って、式(I)の繰り返し単位を多く導入するほど、得られるフィルムの位相差の波長分散は、短波長側から長波長側に亘って殆ど変わらないフラットな状態に近づくのである。
式(I)(又は式(IV))で表される繰り返し単位の導入量は、特に限定されず、ポリマー全体の1モル%以上含まれていればよい。もっとも、上述のように、式(I)を多く導入するほど、得られる光学フィルムはフラット分散に近づくため、式(I)が、ポリマー全体の5モル%以上含まれているものが好ましく、さらに、10モル%以上がより好ましく、特に、12.5モル%以上含まれているものがより好ましい。
一方、式(I)の導入量が余りに多いと、耐熱性、剛性、透明性などに優れた光学フィルムが得られない虞がある。このような理由から、式(I)の上限は、90モル%以下が好ましく、更に、60モル%以下がより好ましく、40モル%以下が特に好ましい。
【0021】
上記式(I)の繰り返し単位は、ポリイミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリアミドイミド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどの各種ポリマーの繰り返し単位の一部として導入することができる。本発明では、これらのポリマーに式(I)の繰り返し単位が導入された各種ポリマーを、光学フィルムの形成材料として使用することができる。これらの中でも、耐熱性に優れ、屈折率が比較的高く、コーティング膜(塗工膜)でも所定の位相差を示すなどの理由から、光学フィルムの形成材料として、式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミド系ポリマーを用いることが好ましい。
【0022】
該ポリイミド系ポリマーとしては、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミド、例えば、US5071997、US5480964、特表平8−511812、特表平10−508048、特表2000−511296号公報等に記載されたポリイミド等があげられる。
本発明の光学フィルムの形成材料として使用するポリイミド系ポリマーは、例えば、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0023】
【化13】

ただし、式(II)に於いて、Yは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、及び炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。
【0024】
式(II)に含まれる繰り返し単位のうち、透明性に優れていることから、下記式(VI)で示すものが好ましい態様である。
【化14】

式(VI)に於いて、Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基を表す。好ましくは、Eは、塩素などのハロゲンである。
【0025】
さらに、上記ポリイミド系ポリマーには、繰り返し単位として、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を更に含むものが好ましい。
【0026】
【化15】

式(III)に於いて、Xは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、酸素原子、硫黄原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ同一又は異なって、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また、置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。
【0027】
式(III)に含まれる繰り返し単位のうち、下記式(VII)で示す繰り返し単位が好ましい態様である。
【化16】

式(VII)に於いて、G及びHは、それぞれ同一又は異なって、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表す。好ましくは、G及びHは、水素以外の原子又は基であり、より好ましくは、G及びHは、CFなどのハロゲン化アルキル基などの置換アルキル基である。
【0028】
また、上記ポリイミド系ポリマーは、例えば、上記式(II)の繰り返し単位に代えて又は併用して、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有するものでもよい。
【化17】

式(VIII)に於いて、R12及びR13は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、及び置換アルキル基からなる群からそれぞれ選択される原子又は基である。その中でも、R12およびR13は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0029】
本発明のポリイミド系ポリマーは、上記式(I)の繰り返し単位と、上記式(II)〜(VIII)から選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位とを有するものである。このうち、本発明のポリイミド系ポリマーの好ましい構成例としては、下記一般式(V)に示すものが挙げられる。
【化18】

式(V)に於いて、Aa、A’a’、Bb及びB’b’並びにR及びRは、前記式(I)と同じである。Ee及びYは、前記式(II)と同じである。Gg、Hh、X、q1及びq2は、前記式(III)と同じである。mは、1〜90モル%を、nは、10〜70モル%を表す。ただし、ポリマー全体を100とした場合、m+n≦100モル%。
【0030】
さらに、式(V)のうち、下記一般式(IX)で表されるものが好ましい態様である。
【化19】

式(IX)に於いて、R〜R11及びR、Rは、式(IV)と同様であり、G及びHは、式(VII)と同様であり、Eは、式(VI)と同様である。mは1〜90モル%を、nは、10〜70モル%を表す。ただし、m+n≦100モル%。
【0031】
本発明のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜500,000の範囲である。重量平均分子量が、これらの範囲内であれば、十分な強度が得られ、フィルム状にした際に、伸縮、歪み等によるクラックが生じにくく、又、溶剤に対する良好な溶解性が得られるからである。
また、本発明のポリマーのガラス転移温度は、式(I)及び主鎖の種類、各繰り返し単位の導入量などによって異なるが、100℃以上、好ましくは130℃以上であり、光学フィルムとして十分な耐熱性を有するものである。なお、このガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じたDSC法によって求められる。
【0032】
上記式(I)の繰り返し単位を有するポリマーは、下記一般式(X)で表されるジエチニルフルオレンを繰り返し単位として導入することにより得ることができる。
【0033】
【化20】

ただし、式(X)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR(R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(ただし、このRは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)、COOH基、又はNCO基を表す。
【0034】
上記式(X)に含まれるジエチニルフルオレンのうち、下記一般式(XI)で表されるジエチニルフルオレンが好ましい。
【0035】
【化21】

ただし、式(XI)に於いて、R〜R11は、それぞれ独立して、水素又はメチル基を表し、R、R、D及びD’は、式(X)と同じである。
【0036】
中でも、式(XI)に於いて、R及びR10が、いずれもメチル基であり、R及びR11が、いずれも水素であるジエチニルフルオレンが好ましい。
また、式(X)及び式(XI)に於いて、R及びRが、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基であるジエチニルフルオレンが好ましい。
また、D及びD’は、他の繰り返し単位と結合する置換基であり、例えば酸と反応して容易にイミド結合を形成できることから、式(X)及び式(XI)に於いて、D及びD’が、NH基であるものが好ましい。
【0037】
上記ジエチニルフルオレンの使用例は、一般式(I)に示すような態様で、繰り返し単位としてポリマーに導入される。本発明のジエチニルフルオレンが、正分散を示すポリマー(元来の性質上、波長分散が正分散を示すポリマー)に導入されることによって、該ポリマーの光学的性質が改質され、該ポリマーの波長分散はフラット分散に近くなる。従って、本発明のジエチニルフルオレンは、それ自体、逆分散を示し、正分散を示すポリマーに導入されることにより、該ポリマーの波長分散をフラット分散に近づけていくという作用を有する。
この作用は、ジエチニルフルオレンの導入量に対応し、該導入量を増やすに従ってフラット分散に近くなる。
従って、本発明は、ポリイミドなどのポリマーに上記式(X)又は式(XI)で表されるジエチニルフルオレンを導入することにより、該ポリイミドなどのポリマーを含む光学フィルムの位相差を調整する光学フィルムの位相差調整方法を提供する。かかる調整方法によれば、ポリイミドに対するジエチニルフルオレンの導入量を調整することで、フラット分散に近い光学フィルムからほぼフラット分散を示す光学フィルムまで、任意に作製することができる。
【0038】
ジエチニルフルオレンとしては、例えば、エチニル基を有するフルオレン;ハロゲン化エチニル基を有するフルオレン;アルキルエチニル基を有するフルオレン;フェニルエチニル基、ビフェニルエチニル基、ナフチルエチニル基、アントリルエチニル基、フェナントリルエチニル基などのアリールエチニル基を有するフルオレン;トリメチルシリルエチニル基などのトリアルキルシリルエチニル基を有するフルオレンなどが挙げられる。
エチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(エチニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ジエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジエチニルフルオレンなどが挙げられる。
ハロゲン化エチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジクロロエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジブロモエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジヨードエチニルフルオレンなどが挙げられる。
アルキルエチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジヘキシニルエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジペンタニルエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジヘプタニルエチニルフルオレンなどが挙げられる。
アリールエチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ビス(フェニルエチニル)フルオレンなどが挙げられる。
トリアルキルシリルエチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリエチルシリルエチニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ビス(ターシャリーブチルジメチルシリルエチニル)フルオレンなどが挙げられる。
その他、ジエチニルフルオレンとしては、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0039】
上記各ジエチニルフルオレンは、例えば、次の方法によって製造することができる。
例えば、2,7−ジブロモフルオレンを酸触媒下で、アニリン誘導体と反応させる。該中間体を、パラジウム(0)触媒下で、エチニル化合物と反応させることによって、アミノ基を有するジエチニルフルオレンを得ることができる(反応式A)。
【0040】
【化22】

【0041】
また、上記アニリン誘導体を、フェノール誘導体に代えることによって、水酸基を有するジエチニルフルオレンを得ることができる(反応式B)。
【0042】
上記式(I)の繰り返し単位を有するポリイミド系ポリマーは、例えば、上記例示したジエチニルフルオレン、酸二無水物及びジアミンを反応させることで得ることができる。具体的には、ジエチニルフルオレン、酸二無水物及びジアミンを所定のモル比で、適当な溶剤に溶解させながら混合した後、室温で所定時間攪拌してポリアミック酸を生成する。つぎに、無水酢酸及びピリジンを添加し、必要に応じて加熱し、攪拌しながらポリアミック酸をイミド化する。得られたポリイミドを室温まで冷却し、適当な溶剤にて精製する。精製物を洗浄乾燥することにより、本発明のポリマーを得ることができる。
【0043】
酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
【0044】
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、1,1’−ジクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0045】
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンなどのベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。複素環式芳香族ジアミンとしては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
また、芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
これらの中でも、ジアミンとしては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどが好ましい。
【0046】
本発明の光学フィルムは、本発明のポリマーを含む形成材料を製膜することによって得ることができる。
なお、光学フィルムの形成材料としては、配向性が著しく低下しない範囲で、本発明のポリマーに加えて、構造の異なる他の樹脂をさらに混合してもよい。このような混合用樹脂としては、例えば、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクロル二トリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂等があげられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリイミド、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー等があげられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。これらの混合用樹脂を本発明のポリマーに配合する場合、その配合量は、前記ポリマーに対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
また、必要に応じて、前記形成材料には、例えば、安定剤、可塑剤、金属類等を含む種々の添加剤を配合してもよい。
【0047】
本発明の光学フィルムの厚みは、特に限定されず、通常、200μm以下である。中でも、主として画像表示装置の薄型化を図ることから、光学フィルムの厚みは、20μm以下が好ましく、更に、15μm以下が好ましく、特に10μm以下がより好ましい。一方、光学フィルムの厚みの下限は、補償対象の位相差に合わせて適宜設定されるが、通常、1μm以上、好ましくは2μm以上である。本発明のポリマーは、塗工によって光学的一軸性を示すことから、上記のように薄膜状に形成することもできる。
【0048】
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、上記形成材料を製膜し、必要に応じて延伸(又は収縮)することによって作製できる。本発明のポリマーは、溶剤溶解性に優れているので、適宜な溶剤に溶解させて製膜することもできる。
特に、本発明のポリイミド系ポリマーは、該ポリマーを含む形成材料を基材に塗工することによって、負の一軸性(nx≒ny>nz)を示すコーティング膜を形成できる。つまり、本発明のポリイミド系ポリマーは、基材の配向の有無に関わらず、基材に塗工することで光学的一軸性を示す。
【0049】
形成材料の塗工の方法としては、例えば、形成材料を加熱溶解して塗工する方法や、形成材料を溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法などがあげられる。製造効率、分子配向制御および光学異方性制御の点等から、ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
【0050】
上記溶媒としては、本発明のポリマー等を溶解できるものであれば、特に制限はなく、適宜選択できる。具体的には、溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;二硫化炭素;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
上記ポリマー溶液は、塗工しやすい粘度になることから、例えば、溶媒100質量部に対して、形成材料が5〜50質量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。
また、塗工方法は、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等の適宜な方法で行うことができる。
【0052】
前記ポリマー溶液を塗工後、基材上のコーティング膜を乾燥しても良い。乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等により行うことができる。加熱乾燥の場合、その温度は、特に制限されないが、例えば、25〜250℃であり、好ましくは40〜200℃である。
乾燥処理によって、最終的に得られるフィルムに残存する溶媒量が、1質量%以下に調整されることが好ましく、0.5質量%以下に調製されることがより好ましい。残存溶媒量が少ないフィルムは、寸法安定性に優れ、光学特性の経時的な変化が起こりにくくなるからである。
【0053】
上記形成材料を塗工する基材としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂製の基材でもよいし、ガラス基材やシリコンウエハのような無機化合物製の基材でもよい。合成樹脂製基材としては、キャスト法で作製したフィルム基材や、溶融ポリマーを製膜後、延伸処理を施して作製したフィルム基材等があげられる。これらの中でも、精密に塗工できることから、延伸処理を施して機械的強度が増したフィルム基材が好ましい。
また、基材としては、透明性に優れたものが好ましい。透明性に優れた基材を用いることによって、該基材上に形成した光学フィルムを、基材から剥離せず、そのまま光学部材として使用することもできる。
【0054】
上記基材としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開平2001−343529号公報に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。
基材の厚みは、例えば、12μm以上200μm以下であり、好ましくは20μm以上150μm以下であり、25μm以上100μm以下がより好ましい。基材の厚みが12μm以上であれば、十分に精密に塗工でき、200μm以下であれば、液晶パネルに実装した際に、フィルムの歪量をより一層抑制できるからである。
【0055】
本発明のポリイミド系ポリマーを含む形成材料は、上述のように、基材に塗工することによって、光学的一軸性を示すコーティング膜を形成できる。このコーティング膜を本発明の光学フィルムとして使用することにより、薄膜状の一軸性(nx≒ny>nz)の位相差板を提供できる。
さらに、このコーティング膜を延伸又は収縮することによって、nx>ny>nzを示す二軸性の光学フィルムを形成することもできる。
コーティング膜の延伸方法としては、例えば、フィルムの長手方向に一軸に延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向は固定しながら幅方向に一軸に延伸する固定端横延伸等が好ましいが、他にも、例えば、長手方向および幅方向の双方に延伸する、逐次または同時二軸延伸等があげられる。また、延伸処理は、コーティング膜の形成された基材が延伸可能な基材である場合、その基材を延伸することによって前記コーティング膜を延伸することが好ましい。この方法によれば、基材が均一に延伸されるので、この延伸に伴ってコーティング膜を間接的に均一延伸することができる。また、この方法は、連続生産工程に適用可能で、製品の量産性が高まる等の点からも好ましい。なお、前記基材とコーティング膜は、ともに延伸してもよい。
【0056】
また、コーティング膜の形成された基材が、収縮しうる基材である場合、基材を収縮させることにより、コーティング膜の収縮を間接的に行うことができる。この際には、延伸機等を利用して収縮率を制御することが好ましい。その制御方法としては、例えば、延伸機のクリップを一時的に開放して、前記基材の移送方向に弛緩させる方法や、延伸機のクリップの間隔を徐々に狭くする方法等があげられる。
【0057】
本発明の光学フィルムに於いて、その厚み方向の位相差Rthや、面内方向の位相差Reの制御は、例えば、使用するポリマー材料の構造及び分子量、光学フィルムの厚み、延伸(又は収縮)比率などを調整することによって行い得る。
本発明のポリマーを形成材料として含む光学フィルムは、式(I)の繰り返し単位を有することにより、その波長分散がフラットに近づく。具体的には、本発明の光学フィルムは、0.97≦Rth(450)/Rth(550)≦1.06、1.03≧Rth(650)/Rth(550)≧0.95の関係を満たしている。
【0058】
特に、本発明のポリマーに於いて式(I)の導入量を増やすことによって、0.97≦Rth(450)/Rth(550)≦1.03、更に、0.97≦Rth(450)/Rth(550)≦1.02のような、よりフラット分散に近似した波長分散を示す。
同様に、式(I)の導入量を増やすことによって、1.03≧Rth(650)/Rth(550)≧0.97、更に、1.03≧Rth(650)/Rth(550)≧0.98のような、よりフラット分散に近似した波長分散を示す。
【0059】
従来の公知のポリイミド系ポリマーは、位相差が短波長側ほど大きい波長分散を示し、通常、Rth(450)/Rth(550)>1.06で、Rth(650)/Rth(550)<0.95程度である。これは、繰り返し単位としてフルオレン骨格が導入されているポリイミドも同様である。本発明の光学フィルムは、三重結合基を有するフルオレン骨格が導入されたポリマーを用いることにより、波長分散をよりフラット分散に近づけることができる。このような知見は、本発明者らによって初めて得られたものである。
【0060】
また、本発明の光学フィルムがnx>ny>nzの関係を示す場合、該光学フィルムの面内位相差についても、Re(450)/Re(550) ≦1.06、Re(650)/Re(550)≧0.95の関係を満たしており、式(I)の導入量を増やすことによって、面内位相差についても、よりフラット分散に近似した波長分散を示す。
なお、Rth(450)、Rth(550)及びRth(650)は、波長450nm、波長550nm及び波長650nmに於ける厚み方向位相差を表す。厚み方向位相差Rth(λ)=(nx−nz)×dで求められる。
Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、波長450nm、波長550nm及び波長650nmに於ける面内位相差を表す。面内位相差Re(λ)=(nx−ny)×dで求められる。
ただし、nxは、フィルム面内に於けるX軸方向の屈折率を、nyは、フィルム面内に於けるY軸方向の屈折率を、nzは、前記X軸方向及びY軸方向に直交する方向の屈折率を、dは、フィルムの厚み(nm)を示す。X軸方向は、フィルム面内に於いて屈折率が最大となる方向で、Y軸方向は、同面内に於いてX軸に直交する方向である。
【0061】
本発明の光学フィルムの複屈折率は、式(I)の導入量、ポリイミドの構造などによって適宜設計できるが、本発明の光学フィルムの波長550nmにおける複屈折率(Δnxz(550)=nx−nz)は、0.01以上が好ましく、更に、0.015〜0.070がより好ましく、0.020〜0.055が特に好ましい。
【0062】
本発明の光学フィルムは、任意の適切な用途に用いられ得る。代表的な用途としては、液晶表示装置のλ/4板、λ/2板、視野角拡大フィルム等の位相差板としての用途が挙げられる。この他には、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等の画像表示装置の反射防止フィルムなどが挙げられる。
【0063】
本発明の光学フィルムは、他の光学部材を積層した光学積層体の形態で使用することもできる。該光学積層体としては、例えば、本発明の光学フィルムに、保護層を有する偏光子を積層した積層体(偏光板)、本発明の光学フィルムに他の位相差板を積層した積層体などが挙げられる。
これら積層体を構成する光学フィルム等は、通常、公知の接着剤(又は粘着剤)を用いて積層接着される。この接着剤(又は粘着剤)としては、溶剤形接着剤、エマルジョン形接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合形接着剤、無溶剤形接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト形接着剤などが挙げられる。
【0064】
上記偏光子は、自然光又は偏光を直線偏光に変換するものであれば、適宜、適切なものが採用され得る。上記偏光子は、好ましくは、ヨウ素または二色性染料を含有するビニルアルコール系ポリマーを主成分とする延伸フィルムである。偏光子の厚みは、通常、5μm〜50μmである。保護層は、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりするために偏光子に貼着される。保護層としては、好ましくは、セルロース系ポリマーまたはノルボルネン系ポリマーを含有する高分子フィルムである。保護層の厚みは、通常、10μm〜200μmである。なお、上記保護層は、本発明の光学フィルムを形成する際の基材を兼ねていてもよい。
【0065】
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムが用いられることを条件として、各種の表示装置を採用し得る。
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、液晶表示装置の場合には、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフオメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0066】
本発明の画像表示装置は、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等を含み、その好ましい用途は、テレビである。テレビの画面サイズは、好ましくはワイド17型(373mm×224mm)以上であり、さらに好ましくはワイド23型(499mm×300mm)以上であり、特に好ましくはワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【0067】
本発明のポリイミド系ポリマーを含むポリマーは、透明性及び耐熱性に優れており、又、所定の位相差を示すため、上記光学フィルムなどの光学部材として好適に用いられる。
また、光学フィルム以外の用途として、本発明のポリマーは、プラスチックレンズ、プリズム、光ディスク、光ファイバー、フォトレジスト、ホログラムなどの各種の光学部材として使用できる。
また、本発明のポリマーは、例えば、燃料電池用電解質膜、半導体用コーティング材料(チップ表面保護材やチップ層間絶縁材料等)、半導体装置用封止材料、フレキシブル回路基板用材料、光配向膜用材料、光導波路材料、耐宇宙線材料(人工衛星等に用い得る)、分離膜用材料(気体分離用途等)、レジスト材料、プリンター用材料(カラープリンター用トナー転写ベルト等)などに使用できる。
さらに、本発明のポリマーは、溶剤溶解性に優れていることから、部材表面を保護するコーティング剤として使用することもできる。
【実施例】
【0068】
つぎに本発明の位相差板を以下の実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(化学構造の測定)
核磁気共鳴スペクトルメーター[ブルカ社製、製品名:AVANCEII300](測定溶媒;重クロロホルムあるいは重DMSO、周波数;300MHz、観測核;H、13C、測定温度;25℃)を用いた。
(赤外吸収スペクトルの測定)
赤外分光光度計[日本分光(株)製、製品名:FT/IR−470plus]を用いて行った。
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計[セイコー(株)製、製品名:DSC−6200]を用いて、JIS K 7121(1987)(プラスチックの転移温度測定方法)に準じた方法により求めた。具体的には、3mgの粉末サンプルを、窒素雰囲気下(ガスの流量;50mL/分)で昇温(加熱速度;10℃/分)させて2回測定し、2回目のデータを採用した。熱量計は、標準物質(インジウム)を用いて温度補正を行った。
(分子量測定)
重量平均分子量は、各試料を0.1%DMF溶液に調整し、0.45μmメンブレンフィルターにてろ過した後、GPC本体として東ソー社製HLC−8120GPCを用い、検出器としてRI(GPC本体に内蔵)を用いて測定した。具体的には、カラム温度40℃、ポンプ流量0.40mL/分とし、データ処理は、あらかじめ分子量が既知の標準ポリエチレンオキシドの検量線を用いて、ポリエチレンオキシド換算分子量より分子量を得た。尚、使用カラムは、superAWM−H(径6.0mm×15cm)、superAW4000(径6.0mm×15cm)およびsuperAW2500(径6.0mm×15cm)を直列につないだものを用い、移動相としては、10mmolのLiBrと10mmolのリン酸とをメスフラスコに入れ、DMFで全量を1Lとしたものを用いた。
(Δnxz、Re(λ)、Rth(λ)の測定)
王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA−WPR」を用いて、波長λで測定した。Rth(λ)は、波長λの光をサンプル法線から40度の角度で入斜させて、測定した値(R40λ)をRth(λ)に換算して求めた。
(屈折率の測定)
アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名「DR−M4」)を用いて測定した。
【0069】
<実施例1>
(ジエチニルフルオレンの合成)
0.43gのビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)と0.14gのヨウ化銅(I)とを、窒素雰囲気下、ジオキサン19mLに溶解させた。そこに、トリ(t−ブチルホスフィン)4.70g、ジイソプロピルアミン4.54g、トリメチルシリルアセチレン4.41g、2,7−ジブロモ−9、9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン10.0gを加え、室温で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣(ざんさ)を展開溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を用いたシリカゲル充填カラムにて精製した。さらに、ヘキサン/クロロホルム=2/1の混合溶媒にて再結晶をくり返すことで白色の化合物5.30gを得た。得られた化合物をNMRで測定したところ、下記式(1)に示す9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンであった。
【0070】
【化23】

【0071】
(ポリマーの合成)
窒素雰囲気下、0.26gの9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレン、0.43gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び0.65gの1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を、3.11gのDMACに溶解させ、室温で7時間攪拌した。
その後、9.0gのDMACを加え、更に、0.34gのピリジン、及び0.44gの無水酢酸を加え、16時間攪拌した。
得られた反応溶液をイソプロピルアルコール(IPA)に滴下し、再沈殿を行った。得られたポリマーをろ過し、IPAで2回洗浄することによって白色のポリマーを1.16g得た。得られたポリマーの組成は、NMRによって、下記式(2)(但し、m:n=26:74であり、Rは、C≡C−Si(CH)で表されるポリイミドであることが確認された。なお、このポリマーの重量平均分子量は、28,100であり、ガラス転移温度は、174℃であった。
【0072】
【化24】

【0073】
(位相差板の作製)
得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、スピンコート法によってガラス上に塗工し、80℃で5分間乾燥した後、更に、150℃で30分乾燥させてポリイミドフィルムを作製した。このフィルムの乾燥厚は、5.7μmであった(厚みの測定機器:SLOAN社製、Dektak)。
得られたフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.040であった(表1参照。なお、表1に於いて、nは、常光の屈折率を示す)。
このフィルムの厚み方向位相差の波長分散を測定した。その結果を、図1に示す。
実施例1のRth(450)/Rth(550)=1.05であった。なお、表1に於いて、「n」は、ナトリウムD線(589nm)で測定した屈折率を示す(以下、各実施例及び比較例の「n」も同様)。
【0074】
【表1】

【0075】
<実施例2>
実施例1の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを「0.51g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを「0.29g」に、それぞれ代えた以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、26,300であり、ガラス転移温度は、190℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(2)(但し、m:n=50:50であり、Rは、C≡C−Si(CH)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.5μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.023であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図1に示す。
実施例2のRth(450)/Rth(550)=1.03であった。
【0076】
<実施例3>
(ジエチニルフルオレンの合成)
トリメチルシリルアセチレンに代えて、2−メチルー3−ブチン−2−オールを用いた以外は、実施例1で示した、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンの合成法と同様の方法で合成した。得られた化合物をNMRで測定したところ、下記式(3)に示す、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレンであった。
【0077】
【化25】

【0078】
(ポリマーの合成)
窒素雰囲気下、0.34gの9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレン、0.60gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び0.90gの1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を、3.11gのDMACに溶解させ、室温で7時間攪拌した。その後、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、23,100であり、ガラス転移温度は、185℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(2)(但し、m:n=25:75であり、Rは、C≡C−C(CH(OH))で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.6μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.043であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図2に示す。
実施例3のRth(450)/Rth(550)=1.06であった。
【0079】
<実施例4>
実施例3の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレンを「0.67g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを「0.40g」に、それぞれ代えた以外は、実施例3と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、34,000であり、ガラス転移温度は、192℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(2)(但し、m:n=50:50であり、Rは、C≡C−C(CH(OH))で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:4.5μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.028であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図2に示す。
実施例4のRth(450)/Rth(550)=1.03であった。
【0080】
<実施例5>
上記実施例1のジエチニルフルオレンの合成と同様にして、式(1)に示す9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを合成した。
窒素雰囲気下、0.32gの前記9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレン、0.54gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び1.00gの2,2’−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを、4.34gのDMACに溶解させ、室温で7時間攪拌した。
その後、12.41gのDMACを加え、更に、0.43gのピリジン、及び0.55gの無水酢酸を加え、16時間攪拌した。
得られた反応溶液をイソプロピルアルコール(IPA)に滴下し、再沈殿を行った。得られたポリマーをろ過し、IPAで2回洗浄することによって白色のポリマーを1.16g得た。
得られたポリマーの組成は、NMRによって、下記式(5)(但し、m:n=24:76)で表されるポリイミドであることが確認された。
なお、このポリマーの重量平均分子量は、201,000であり、ガラス転移温度は、174.7℃であった。
【0081】
【化26】

【0082】
上記ポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:4.0μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.028であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図3に示す。
実施例5のRth(450)/Rth(550)=1.05であった。また、nは、1.63であった。
【0083】
<実施例6>
実施例5の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを「0.64g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを「0.36g」に、それぞれ代えた以外は、実施例5と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、179,000であり、ガラス転移温度は、188.1℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(5)(但し、m:n=48:52)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:6.2μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.018であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図3に示す。
実施例6のRth(450)/Rth(550)=1.03であった。また、nは、1.64であった。
【0084】
<実施例7>
実施例5の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを「0.48g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを「0.09g」に、2,2’−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを「0.50g」に、それぞれ代えた以外は、実施例5と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、120,000であり、ガラス転移温度は、168.5℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(5)(但し、m:n=77:23)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:6.6μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.0082であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図3に示す。
実施例7のRth(450)/Rth(550)=0.98であった。また、nは、1.66であった。
【0085】
<実施例8>
実施例5の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを「0.64g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを「添加せず」に、2,2’−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを「0.50g」に、それぞれ代えた以外は、実施例5と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、44,900であり、ガラス転移温度は、174.1℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(5)(但し、m:n=100:0)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.6μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.0027であった。 また、nは、1.71であった。
【0086】
<比較例1>
実施例1の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを、「9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン」に代えた以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、22,100であり、ガラス転移温度は、191℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(2)(但し、m:n=26:74であり、Rは、H(水素原子))で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.7μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.041であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図4に示す。
比較例1のRth(450)/Rth(550)=1.07であった。
【0087】
<比較例2>
実施例2の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(トリメチルシリルエチニル)フルオレンを「9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン」に代えた以外は、実施例2と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、18,300であり、ガラス転移温度は、185℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(2)(但し、m:n=50:50であり、Rは、H(水素原子))で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:4.4μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.032であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図4に示す。
比較例2のRth(450)/Rth(550)=1.07であった。
【0088】
<比較例3>
窒素雰囲気下、1.00gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び1.13gの1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を、3.11gのDMACに溶解させ、室温で7時間攪拌した。その後、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、100,000であり、ガラス転移温度は、178℃であった。
得られたポリマーの組成は、下記式(4)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜し(乾燥厚:4.6μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.075であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図4に示す(但し、比較のため、図1にも、比較例3の結果を併せて示す)。
比較例3のRth(450)/Rth(550)=1.07であった。
【0089】
【化27】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例1〜2及び比較例3の波長分散を示すグラフ図。
【図2】実施例3〜4の波長分散を示すグラフ図。
【図3】実施例5〜7の波長分散を示すグラフ図。
【図4】比較例1〜3の波長分散を示すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含む光学フィルム。
【化1】

ただし、式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR(R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリイミド系ポリマーである請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記ポリイミド系ポリマーが、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する請求項2に記載の光学フィルム。
【化2】

ただし、式(II)に於いて、Yは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。
【請求項4】
前記ポリイミド系ポリマーが、下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する請求項2に記載の光学フィルム。
【化3】

ただし、式(II)に於いて、Yは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。
【化4】

ただし、一般式(III)に於いて、Xは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ同一又は異なって、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。
【請求項5】
前記一般式(I)が、下記一般式(IV)で表される請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
【化5】

ただし、式(IV)に於いて、R〜R11は、それぞれ独立して、水素又はメチル基を表し、R及びRは、式(I)と同じである。
【請求項6】
前記R及びRが、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基である請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記一般式(I)で表される繰り返し単位を5モル%以上有する請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記ポリマーが、下記一般式(V)で表されるポリイミド系ポリマーである請求項1に記載の光学フィルム。
【化6】

ただし、式(V)に於いて、Aa、A’a’、Bb及びB’b’並びにR及びRは、前記式(I)と同じであり、X及びYは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ同一又は異なって、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。mは、1〜90モル%を、nは、10〜70モル%を表す。
【請求項9】
前記ポリマーを基材上に塗工して得られたコーティング膜から構成されている請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
厚み20μm以下である請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項11】
Rth(450)/Rth(550)≦1.06を示す請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、Rth(450)及びRth(550)は、波長450nm及び波長550nmに於ける厚み方向位相差を表す。
【請求項12】
Rth(650)/Rth(550)≧0.95を示す請求項1〜11のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、Rth(550)及びRth(650)は、波長550nm及び波長650nmに於ける厚み方向位相差を表す。
【請求項13】
nx≒ny>nzを示す請求項1〜12のいずれかに記載の光学フィルム。
但し、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を、nyは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率を、nzは、X軸及びY軸に直交する方向に於ける屈折率を、それぞれ表す。
【請求項14】
nx>ny>nzを示す請求項1〜12のいずれかに記載の光学フィルム。
但し、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を、nyは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率を、nzは、X軸及びY軸に直交する方向に於ける屈折率を、それぞれ表す。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の光学フィルムを有する画像表示装置。
【請求項16】
下記一般式(X)で表されるジエチニルフルオレン。
【化7】

ただし、式(X)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR(R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(ただし、このRは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)、COOH基、又はNCO基を表す。
【請求項17】
前記一般式(X)が、下記一般式(XI)で表される請求項16に記載のジエチニルフルオレン。
【化8】

ただし、式(XI)に於いて、R〜R11は、それぞれ独立して、水素又はメチル基を表し、R、R、D及びD’は、式(X)と同じである。
【請求項18】
前記R及びR10が、いずれもメチル基であり、R及びR11が、いずれも水素である請求項17に記載のジエチニルフルオレン。
【請求項19】
前記R及びRが、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基である請求項16〜18のいずれかに記載のジエチニルフルオレン。
【請求項20】
前記R及びRの少なくとも何れか一方が、トリメチルシリル基である請求項16〜18のいずれかに記載のジエチニルフルオレン。
【請求項21】
前記D及びD’が、NH基である請求項16〜20のいずれかに記載のジエチニルフルオレン。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれかに記載のジエチニルフルオレンを繰り返し単位として有するポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−112124(P2008−112124A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32858(P2007−32858)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】