説明

光学式ロータリーエンコーダ

【課題】発光素子の光軸調整作業や組立作業を容易にする光学式ロータリーエンコーダを提供する。
【解決手段】回転符号板を備えた回転部と、発光素子8と受光素子5を取り付けた回路基板をエンコーダフレーム9の対向する所定位置に固定した固定部とを別体で構成したロータリーエンコーダにおいて、回転スリット部1と発光素子8の間に狭光部10を設け、前記狭光部10をエンコーダフレーム9に一体で構成したことを特徴とする光学式ロータリーエンコーダである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式ロータリーエンコーダにおける受発光素子間の光軸調整作業を容易にする構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学式ロータリーエンコーダにおいては、回転部の一部である回転符号板のスリットパターンと、固定部の一部である受光素子に固定した固定符号板のスリットパターンとをモータに取付けた状態で位置合わせした後、発光素子の光量が受光素子側で規定値以上になるように電気信号を用いて発光素子の位置を調整している。
【0003】
この発光素子と受光素子とは、それぞれ回路基板を介してエンコーダフレームの所定の位置にそれぞれ対向するように固定されており、その間を回転符号板のスリットパターンが回転移動する為、発光素子の取付状態に合わせて位置及び傾きを補正する必要があった。
【0004】
また、従来の発光素子は、製造工程のばらつきなどにより、光量の分布にばらつきがあった。
【0005】
一方、受発光素子間の光軸調整を容易化するため、発光素子ホルダーを用いた組立方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−78387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、受発光素子間における光軸の位置合わせ作業が難しい点である。受発光素子間の光軸合わせについては、発光素子ホルダーを用いた組立方法等で対処しているが、発光素子の光量の分布のばらつきが大きく影響して位置調整が容易ではなかった。
【0007】
本発明は、従来の課題を解決するものであり、受発光素子間における光軸調整作業を容易化し、位置精度の安定した光学式ロータリーエンコーダを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、回転符号板を備えた回転部と、発光素子と受光素子を取り付けた回路基板をエンコーダフレームの対向する所定位置に固定した固定部とを別体で構成したロータリーエンコーダにおいて、前記回転符号板の回転スリット部と発光素子の間または前記回転スリット部と受光素子の間に狭光部を設けたものである。
【0009】
また、狭光部の発光素子側の内部の孔形状を、発光素子の外形または固定符号板のスリット部の外形のいずれか大きい方より大きな形状とし、前記狭光部の受光素子側の内部の孔形状を、固定符号板のスリット部に集光する形状としたものである。
【0010】
また、狭光部の内部を反射構造としたものである。
【0011】
さらに、狭光部をエンコーダフレームに一体で構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学式ロータリーエンコーダによれば、発光素子と受光素子の間に設けた狭光部によって、受光素子への光軸が安定するため光軸調整作業を容易化できる。
【0013】
加えて、狭光部の内部の孔形状の設定によって、発光素子の光量の分布や、発光素子の組立精度による光量の分布を所定の範囲に絞ることが可能となる。
【0014】
また、狭光部の内部を反射構造にすることで、効率よく集光できる。
【0015】
さらに、狭光部を取付けの基準構造物であるエンコーダフレームに一体で構成することで、光軸調整が容易かつ確実にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
光学式ロータリーエンコーダは、回転符号板を備えた回転部と、発光素子と受光素子を取り付けた回路基板をエンコーダフレームの対向する所定位置に固定した固定部とを別体で構成したロータリーエンコーダにおいて、回転スリット部と発光素子の間に狭光部を設け、前記狭光部をエンコーダフレームに一体で構成したので、光軸が安定し、組立作業が容易となる。以下、本願発明の実施の形態について図を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1において、光学式ロータリーエンコーダの回転部は、外周近傍に回転スリット部1を備えた回転符号板とエンコーダボス2とで構成され、芯出し固定の後、モータシャフト3に固定する。
【0017】
固定部は、固定符号板6を取り付けた受光素子5などを搭載したアナログ信号処理回路基板4、発光素子8などを搭載した電源回路基板7、狭光部10、エンコーダフレーム9とで構成され、アナログ信号処理回路基板4と電源回路基板7とをエンコーダフレーム9の所定位置に対向させて固定する。
【0018】
このエンコーダフレーム9は、モータブラケット面および回転軸を基準にしてモータに取付けられ、アナログ信号処理回路基板4と電源回路基板7の受発光素子を対向させて取付ける基準構造物である。
【0019】
実施の形態1では、本願発明の特徴部である狭光部10を、エンコーダフレーム9に一体で構成するため、受発光素子に対する位置精度およびモータ取付面に対する光軸の垂直度を同時に確保できるので、光軸調整が容易になる。
【0020】
狭光部10は、図2に示すように内部の孔形状が円柱状をしており、照準機能として作用するため、発光素子8の光量の分布のばらつきを補正することができる。また、狭光部10は、発光素子8の組立精度のばらつきの影響を軽減することができる。したがって、光軸調整における発光素子8の組立を容易にすることができる。
【0021】
なお、狭光部10をエンコーダフレーム9と別体で構成してもよく、位置の調整後に接着剤を用いてエンコーダフレーム9の所定位置に固定する。また、凸凹部を用いたはめこみ構造を用いて固定しても良い。
(実施の形態2)
実施の形態2は、狭光部10の内部の孔形状が実施の形態1で説明した円柱状を円錐状に変更したものである。
【0022】
図3に示すように、狭光部10の内部の孔形状を円錐状にし、固定符号板6に施された光の透過部であるスリット部12に集光する形状にすれば、円柱状に比べて受光素子5が受光する光量を高めることができる。
【0023】
また、図4に示すように、狭光部10の発光素子8側の孔形状を発光素子8の外形または固定符号板の固定スリット部12の外形の何れか大きい方より大きな形状とし、狭光部10の受光素子5側の孔形状を固定スリット部12に集光する形状にすれば、発光素子8からの光を受光素子5へ確実に到達させることができ、さらに集光効果を高めることができる。
(実施の形態3)
実施の形態1の狭光部10は、発光素子8周辺のエンコーダフレーム9に設けたが、実施の形態3は、受光素子5の周辺に配置する。
【0024】
図5に示すように狭光部11は、エンコーダフレーム9とは別体で構成され、固定符号板6を取り付けた受光素子5と回転スリット部1の間に設け、アナログ信号処理回路基板4に固定する。
【0025】
狭光部11には、アナログ信号処理回路基板4とはんだ付け固定するためのリード端子(図示せず)を設けておき、固定符号板6を跨ぐように配置する。あるいは、狭光部11に凸部を設けておき、アナログ信号処理回路基板4に凹部を設けて、凹凸部をはめ込む構造としてもよい。
【0026】
なお、実施の形態1から実施の形態3において、発光素子8から分散する光を効率良く受光素子5へ導くため、狭光部の内孔部に反射物質の塗布や蒸着によって反射面(鏡面)を構成してもよい。また、狭光部の本体形状を円筒形としているが、取付作業の容易性や耐熱、対振動などを考慮して任意の形態としてもよい。さらに、狭光部は、受光素子側または受光素子側の一方に設けて説明したが、両方に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の光学式ロータリーエンコーダは、集光効果により位置精度が安定するためサーボモータなどにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における要部断面図
【図2】本発明の実施の形態1における狭光部の説明図
【図3】本発明の実施の形態2における狭光部の説明図
【図4】本発明の実施の形態2における狭光部の他の説明図
【図5】本発明の実施の形態3における要部断面図
【符号の説明】
【0029】
1 回転スリット部(回転符号板)
2 エンコーダボス
3 モータシャフト
4 アナログ信号処理回路基板(回路基板)
5 受光素子
6 固定符号板
7 電源回路基板(回路基板)
8 発光素子
9 エンコーダフレーム
10 狭光部(一体構成)
11 狭光部(別体構成)
12 固定スリット部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転符号板を備えた回転部と、発光素子と受光素子を取り付けた回路基板をエンコーダフレームの対向する所定位置に固定した固定部とを別体で構成したロータリーエンコーダにおいて、前記回転符号板の回転スリット部と発光素子の間または前記回転スリット部と受光素子の間に狭光部を設けたことを特徴とする光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項2】
狭光部の発光素子側の内部の孔形状を、発光素子の外形または固定符号板のスリット部の外形のいずれか大きい方より大きな形状とし、前記狭光部の受光素子側の内部の孔形状を、固定符号板のスリット部に集光する形状とした請求項1に記載の光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項3】
狭光部の内部を反射構造とした請求項1または請求項2に記載の光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項4】
狭光部をエンコーダフレームに一体で構成した請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学式ロータリーエンコーダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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