説明

光学装置、レーザ装置および極端紫外光生成装置

【課題】照射可能領域を拡大する。
【解決手段】光学装置は、入射する第1のレーザ光をビーム断面が円環状の第2のレーザ光に変換する第1のビーム整形部と、前記第2のレーザ光を第1の所定の位置に集光して、ベッセルビームを形成させる第1の集光光学素子と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置、レーザ装置および極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体プロセスのフォトリソグラフィに使用する光源装置としては、エキシマレーザが存在する。また、近年では、半導体プロセスのさらなる微細化を目的として、極端紫外(Extreme Ultraviolet:EUV)光生成装置の研究が進められている。これらの光生成装置は、レーザ加工装置にも使用される場合がある。
【0003】
EUV光生成装置には、LPP(Laser−Produced Plasma)方式装置やDPP(Discharge Produced Plasma)方式装置やSR(Synchrotron Radiation)方式装置などが存在する。LPP方式のEUV光生成装置には、ターゲット物質に対してメインパルスレーザ光を照射する前にプレパルスレーザ光を照射する、いわゆる多段レーザ光照射タイプが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/149862号
【概要】
【0005】
本開示の一態様による光学装置は、入射する第1のレーザ光をビーム断面が円環状の第2のレーザ光に変換する第1のビーム整形部と、前記第2のレーザ光を第1の所定の位置に集光して、ベッセルビームを形成させる第1の集光光学素子と、を備えてもよい。
【0006】
また、本開示の他の形態によるレーザ装置は、上述の光学装置と、少なくとも1つのレーザ生成システムと、を備えてもよい。
【0007】
また、本開示の他の態様による極端紫外光生成装置は、上述の光学装置と、少なくとも1つのレーザ生成システムを含むレーザ装置と、前記レーザ装置から出力されるレーザ光が入射するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバ内で、前記レーザ光が照射されるターゲット物質を前記チャンバ内に供給するターゲット供給部と、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射されることによって生成される光のうち、所定の波長の光を選択的に反射する、集光ミラーと、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施の形態1によるEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図2】図2は、実施の形態1によるビーム整形部の一例を示す。
【図3】図3は、図2に示すビーム整形部の、レーザ光の中心軸を含む面における断面を示す。
【図4】図4は、実施の形態1による凹面アキシコンミラーの一例を示す。
【図5】図5は、図4の凹面アキシコンミラーで反射されたレーザ光を示す。
【図6】図6は、実施の形態2によるEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図7】図7は、実施の形態2によるアキシコンレンズの一例を示す。
【図8】図8は、実施の形態2においてプラズマ生成サイト付近で形成されるベッセルビームを示す。
【図9】図9は、実施の形態3によるEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図10】図10は、実施の形態3による回折格子の一例を示す。
【図11】図11は、実施の形態3においてプラズマ生成サイト付近で形成されるベッセルビームを示す。
【図12】図12は、実施の形態4によるEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図13】図13は、実施の形態5によるEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図14】図14は、実施の形態5によるウィンドウの概略構成を示す。
【図15】図15は、実施の形態5によるウィンドウ、円筒メインパルスレーザ光および円筒プリパルスレーザ光の一例を示す。
【図16】図16は、変形例1によるビーム整形部を示す。
【図17】図17は、図16に示すビーム整形部の断面を示す。
【図18】図18は、変形例2によるビーム整形部を示す。
【図19】図19は、図18に示すビーム整形部の断面を示す。
【図20】図20は、変形例3によるビーム整形部を示す。
【図21】図21は、図20に示すビーム整形部の断面を示す。
【実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態を図面を参照に詳細に説明する。なお、以下の説明において、各図は本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本開示は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。また、各図では、構成の明瞭化のため、断面におけるハッチングの一部が省略されている。さらに、後述において例示する数値は、本開示の好適な例に過ぎず、従って、本開示は例示された数値に限定されるものではない。
【0010】
なお、本明細書においては、光軸は光学系において系全体を通過する光束の代表となる仮想的な光線と定義する。具体的には集光レンズ、集光ミラー、アキシコンレンズ及びアキシコンミラー等の光軸は回転対称軸と一致する。
【0011】
(実施の形態1)
以下、本開示の実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1によるEUV光生成装置の概略構成を示す。EUV光生成装置100は、ドライバレーザ101と、プリパルスレーザ102と、チャンバ40とを備えることができる。
【0012】
/ドライバレーザ
ドライバレーザ101は、マスタオシレータMOと、リレー光学系R1〜R3と、プリアンプPAと、メインアンプMAと、高反射ミラーM3とを備えてもよい。
【0013】
マスタオシレータMOは、パルス状のレーザ光をシード光L1として出力する。このマスタオシレータMOには、たとえば量子カスケードレーザや分布帰還型半導体レーザなどの半導体レーザを用いてもよい。ただし、これらに限定されず、固体レーザ、ガスレーザなどの種々のレーザを用いてもよい。
【0014】
マスタオシレータMOから出力されたシード光L1は、リレー光学系R1によってそのビーム径が拡大された後、プリアンプPAに入射する。プリアンプPAは、たとえばCOガスを主たる増幅媒体としたガス増幅器でよい。リレー光学系R1は、シード光L1がプリアンプPAの増幅領域で効率的に増幅されるように、シード光L1のビーム径を拡大する。プリアンプPAは、入射したシード光L1のうち、増幅媒体に特有の少なくとも1つの増幅波長帯域に含まれる波長のレーザ光を増幅して、メインパルスレーザ光L2として出力する。
【0015】
プリアンプPAから出力されたレーザ光L2は、リレー光学系R2でそのビーム径が拡大されつつ平行光化された後、メインアンプMAに入射する。メインアンプMAは、プリアンプPAと同様、たとえばCOガスを主たる増幅媒体としたガス増幅器でよい。リレー光学系R2は、メインパルスレーザ光L2がメインアンプMAの増幅領域で効率的に増幅されるように、メインパルスレーザ光L2のビーム径を拡大する。メインアンプMAは、プリアンプPAと同様、入射したレーザ光L2のうち、増幅媒体に特有の少なくとも1つの増幅波長帯域に含まれる波長のレーザ光を増幅する。
【0016】
メインアンプMAから出力されたメインパルスレーザ光L2は、リレー光学系R3で平行光化された後、高反射ミラーM3で反射されて、ドライバレーザ101から出力される。なお、リレー光学系R3および高反射ミラーM3は、ドライバレーザ101に含まれなくてもよい。
【0017】
/プリパルスレーザ
一方、プリパルスレーザ102は、プリパルスレーザ光源PLと、リレー光学系R4とを備えてもよい。プリパルスレーザ光源PLは、チャンバ40内に供給されるターゲット物質(ドロップレットD)に照射されるパルス状のレーザ光をプリパルスレーザ光L3として出力する。このプリパルスレーザ光源PLには固体レーザ、ガスレーザまたはファイバレーザなど、種々のレーザを用いてよい。プリパルスレーザ光源PLから出力されたプリパルスレーザ光L3は、リレー光学系R4にてそのビーム径が拡大された後、プリパルスレーザ102から出力される。
【0018】
/チャンバ
ドライバレーザ101から出力されたメインパルスレーザ光L2は、ウィンドウW1を介してチャンバ40内に入射する。プリパルスレーザ102から出力されたプリパルスレーザ光L3は、ウィンドウW2を介してチャンバ40内に入射する。チャンバ40には、レーザ光の集光光学系として、ビーム整形部20と、凹面アキシコンミラー30と、集光レンズ31と、が配置されてもよい。また、チャンバ40には、ドロップレットジェネレータ41と、ドロップレット回収部43と、電磁石コイル44と、EUV集光ミラー45と、が配置されてもよい。
【0019】
//ウィンドウ
ウィンドウW1およびW2は、たとえばダイヤモンド基板など、メインパルスレーザ光L2またはプリパルスレーザ光L3に対する透過率が高く、且つ熱安定性に優れた透明基板であるのが好ましい。また、ウィンドウW1およびW2は、表面で反射される光がたとえばリレー光学系R3およびR4などの上流の光学系における光学素子表面でホットスポットを形成しないように、レーザ光の中心軸に対して3〜5°程度傾いて配置されることが好ましい。
【0020】
//ビーム整形部
ウィンドウW1からチャンバ40内に入射したメインパルスレーザ光L2は、ビーム整形部20によってビーム断面が円環状の円筒メインパルスレーザ光L2aに変換される。ここで、図2および図3に、本実施の形態1によるビーム整形部の一例を示す。なお、図3は、図2に示すビーム整形部の、レーザ光の中心軸AX2を含む面における断面を示す。図2に示すように、ビーム整形部20は、2つの円錐状のアキシコンレンズ21および22を備えてもよい。図3に示すように、2つのアキシコンレンズ21および22は、互いにその頂点が向かい合うように配置されるのが好ましい。アキシコンレンズ21および22は、それぞれの光軸(回転軸)が実質的に同一直線上に位置するように配置されるのが好ましい。このように構成されるビーム整形部20に対し、一方のアキシコンレンズ21の底面にたとえばビーム断面が円形のメインパルスレーザ光L2が入射すると、他方のアキシコンレンズ22の底面からは、ビーム断面が円環状の円筒メインパルスレーザ光L2aが出射する。この構成において、2つのアキシコンレンズ21および22の頂点間の距離を調節することで、円筒メインパルスレーザ光L2aのビーム断面の径を調節することができる。なお、メインパルスレーザ光L2は、アキシコンレンズ21および22の底面それぞれに対して実質的に垂直に入射するのが好ましい。そして、この両アキシコンレンズの表面に反射防止膜をコートすることが好ましい。
【0021】
//凹面アキシコンミラー
円筒メインパルスレーザ光L2aは、たとえば高反射ミラーM22で反射された後、集光光学系における凹面アキシコンミラー30に入射する。図4に、凹面アキシコンミラーの一例を示す。図5に、図4の凹面アキシコンミラーで反射されたレーザ光を示す。図4に示すように、凹面アキシコンミラー30は、内部に円錐台状の空洞を備えた円筒状の部材でよい。凹面アキシコンミラー30の内周は、下底30aの径が、上底30bの径よりも大きい。ビーム整形部20で整形された円筒メインパルスレーザ光L2aは、下底30a側から入射する。この円筒メインパルスレーザ光L2aが凹面アキシコンミラー30の内側面で反射されると、円筒メインパルスレーザ光L2aは平行光のまま絞り込まれるように集束する。円筒メインパルスレーザ光L2aを集束させることにより、図5に示すように円筒メインパルスレーザ光L2aが集束する部分に、所謂ベッセルビームVL2が形成される。この際、入射する円筒メインパルスレーザ光L2aの中心軸は、凹面アキシコンミラー30の光軸AXmと実質的に一致しているのが好ましい。それにより、ベッセルビームVL2は、円筒メインパルスレーザ光L2aの中心軸上に形成され得る。ベッセルビームVL2を形成することで、メインパルスレーザ光L2の実質的な焦点深度を深くすることが可能となり、レーザ光の中心軸方向におけるターゲット物質の変位による照射精度への影響を低減することが可能となる。本実施の形態1では、円筒メインパルスレーザ光L2aが集束する領域を、プラズマ生成サイトP1またはその付近に設定する。これにより、より確実にメインパルスレーザ光L2をターゲット物質(たとえばドロップレットD、または、ドロップレットDが変容した膨張ターゲットDD)に照射することが可能となると推測される。
【0022】
一方、プリパルスレーザ102から出力されたプリパルスレーザ光L3(図1参照)は、たとえば高反射ミラーM4で反射された後、ウィンドウW2を介してチャンバ40内に入射する。チャンバ40内に入射したプリパルスレーザ光L3は、たとえば高反射ミラーM21で反射される。高反射ミラーM21は、たとえば円筒メインパルスレーザ光L2aの光路上で円筒メインパルスレーザ光L2aの中空部分に配置されてもよい。具体的には、高反射ミラー21は、たとえばビーム整形部20と高反射ミラー22の間に、円筒メインパルスレーザ光L2aを遮らないように配置され得る。プリパルスレーザ光L3は、高反射ミラーM21で反射された後、円筒メインパルスレーザ光L2aと同様に、高反射ミラーM22で反射される。高反射ミラーM22で反射されたプリパルスレーザ光L3は、集光レンズ31(図1参照)に入射する。
【0023】
//集光レンズ
集光レンズ31は、たとえば円筒メインパルスレーザ光L2aの光路上で円筒メインパルスレーザ光L2aの中空部分に配置される。集光レンズ31の径は、凹面アキシコンミラー30の内径よりも小さいのが好ましい。集光レンズ31は、その光軸が凹面アキシコンミラー30の光軸AXmと実質的に一致するように配置されるのが好ましい。集光レンズ31は、入射したプリパルスレーザ光L3をプラズマ生成サイトP1またはその付近に集光する。プリパルスレーザ光L3は、凹面アキシコンミラー30の空洞を通過してプラズマ生成サイトP1またはその付近に集光される。すなわち、プリパルスレーザ光L3は、メインパルスレーザ光L2と同一方向(EUV集光ミラー45側)からプラズマ生成サイトP1付近に集光される。なお、メインパルスレーザ光L2の集光点とプリパルスレーザ光L3の集光点とは、一致していても、一致していなくてもよい。
【0024】
//ドロップレットジェネレータ
再び図1を参照に、プラズマ生成サイトP1またはその付近には、プラズマの生成材料となるターゲット物質(たとえばSn)がドロップレットジェネレータ41から供給される。ドロップレットジェネレータ41は、たとえばダーゲット物質をドロップレットDの形態で供給する。具体的には、ドロップレットジェネレータ41は、ターゲット物質であるSnを融解した状態で貯留し、これをノズル41aを介してドロップレットDの状態でプラズマ生成サイトP1へ向けて出力する。
【0025】
“膨張ターゲット(プリプラズマと飛散ターゲット)”
プラズマ生成サイトP1に到着したドロップレットDには、プリパルスレーザ光L3が照射される。このプリパルスレーザ光L3の照射によって、ドロップレットDが膨張ターゲットDDに変容する。なお、本説明において、膨張ターゲットDDとは、プリプラズマと飛散ターゲットの少なくとも一方を含む状態のターゲットとする。プリプラズマとは、たとえばプラズマ状態またはプラズマと気体状態の原子との混合状態である。また、飛散ターゲットとは、レーザ光の照射によりターゲット物質が分裂して変容したクラスタ、マイクロドロップレット等の微粒子、または、それらが混在する微粒子群であり得る。
【0026】
また、膨張ターゲットDDには、メインパルスレーザ光L2(ベッセルビームVL2)が照射される。これにより、膨張ターゲットDDからプラズマが生成される。このプラズマからは、所定の波長(たとえば13.5nm)のEUV光L4を含む光が放出される。この放出された光の一部は、EUV集光ミラー45に入射する。
【0027】
//EUV集光ミラー
EUV集光ミラー45は、入射した光のうち、所定の波長のEUV光L4を選択的に反射する。また、EUV集光ミラー45は、選択的に反射したEUV光L4を所定の位置(たとえば中間集光点IF)に集光させる。 なお、EUV集光ミラー45には、反射面中央部に軸方向に設けられた貫通孔45aが形成されていてもよい。プリパルスレーザ光L3およびメインパルスレーザ光L2は、たとえば貫通孔45aを介してプラズマ生成サイトP1またはその付近に集光される。これにより、プリパルスレーザ光L3およびメインパルスレーザ光L2を、EUV集光ミラー45の背面側からプラズマ生成サイトP1またはその付近に集光させることが可能となる。
【0028】
//露光装置接続部と露光装置
中間集光点IFは、たとえばチャンバ40と露光装置60とを接続する露光装置接続部50内に設定されてもよい。また、露光装置接続部50には、ピンホールをもつ隔壁51が設けられてもよい。中間集光点IFに集光されたEUV光L4は、隔壁51のピンホールを通過した後、不図示の光学系を介して露光装置60へ導入される。
【0029】
//ドロップレット回収部
また、プラズマ生成サイトP1付近に到着したドロップレットDのうち、プリパルスレーザ光L3やメインパルスレーザ光L2が照射されなかったドロップレットDや、プラズマの生成に寄与しなかった残りのターゲット物質は、たとえばドロップレット回収部43に回収されるとよい。
【0030】
//磁場ミチゲーション(電磁石コイル)
また、プラズマ生成サイトP1付近には、プラズマ生成の際に発生したデブリをトラップするための局所磁場が生成されてもよい。この局所磁場は、たとえば電磁石コイル44を用いて生成することができる。なお、局所磁場の方向は、ドロップレットDの進行方向と異なる方向であってもよい。また、局所磁場方向におけるプラズマ生成サイトP1を挟む2つの位置には、それぞれデブリ回収部(不図示)を設けることができる。局所磁場にトラップされたデブリは、磁力線にラーマー(サイクロトロン)運動しつつ局所磁場方向に移動することで、デブリ回収部に回収される。
【0031】
本実施の形態1によれば、プラズマ生成サイトP1またはその付近にメインパルスレーザ光L2のベッセルビームVL2を形成するため、メインパルスレーザ光L2の焦点深度を深くすることが可能となる。それにより、レーザ光の中心軸方向におけるターゲット物質の変位による照射精度への影響を低減し、より確実にメインパルスレーザ光L2をターゲット物質(たとえばドロップレットD、もしくは、ドロップレットDが変容した膨張ターゲットDD)に照射することが可能となると推測される。さらに、焦点深度を深くすることで、集光光学系を移動させてメインパルスレーザ光L2の焦点を調整する必要性が低減され得る。
【0032】
また、本実施の形態1のように、メインパルスレーザ光L2をビーム断面が円環状の円筒メインパルスレーザ光L2aに変換することで、ダイクロイックミラーなどの合波光学素子を用いずに、プリパルスレーザ光L3とメインパルスレーザ光L2とを実質的に同一方向からターゲット物質に照射することが可能となる。これにより、合波光学素子などによるエネルギーロスを低減できる。プリパルスレーザ光L3とメインパルスレーザ光L2とを実質的に同一方向からターゲット物質に照射することで、ターゲット物質を効率的にプラズマ化することが可能となる。この結果、EUV光L4へのエネルギー変換効率(Conversion Efficiency:CE)が改善し、高出力のEUV光L4を得ることができる場合がある。
【0033】
(実施の形態2)
つぎに、本開示の実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0034】
図6は、実施の形態2によるEUV光生成装置の概略構成を示す。図1と図6とを比較すると明らかなように、EUV光生成装置200(図6)は、EUV光生成装置100(図1)と同様の構成を備える。ただし、EUV光生成装置200は、プラズマ生成サイトP1付近でプリパルスレーザ光L3のベッセルビームVL3を形成する。そこで、EUV光生成装置200は、プリパルスレーザ光L3を円筒状の円筒プリパルスレーザ光L3aに変換するビーム整形部220を備えるとともに、EUV光生成装置100における集光レンズ31が円筒プリパルスレーザ光L3aをプラズマ生成サイトP1付近に平行光のまま集束させるアキシコンレンズ231に置き換えられる。
【0035】
//プリパルスレーザ光用ビーム整形部
ビーム整形部220は、たとえば図2および図3に示すビーム整形部20と同様である。このビーム整形部220によって変換された円筒プリパルスレーザ光L3aは、高反射ミラーM21およびM22で反射された後、アキシコンレンズ231に入射する。
【0036】
//アキシコンレンズ
図7に、アキシコンレンズの一例を示す。円筒プリパルスレーザ光L3aは、アキシコンレンズ231の底面に入射する。円筒プリパルスレーザ光L3aは、円筒プリパルスレーザ光L3aの中心軸とアキシコンレンズ231の回転軸とが実質的に一致するようにアキシコンレンズ231に入射するのが好ましい。この円筒プリパルスレーザ光L3aがアキシコンレンズ231の斜面から出射すると、円筒プリパルスレーザ光L3aは平行光のまま絞り込まれるように集束する。円筒プリパルスレーザ光L3aを集束させることにより、図8に示すように、円筒プリパルスレーザ光L3aが集束する部分に所謂ベッセルビームVL3が形成される。ベッセルビームVL3は、円筒プリパルスレーザ光L3aの中心軸に形成される。このようにベッセルビームVL3を形成することで、プリパルスレーザ光L3の実質的な焦点深度を深くすることが可能となる。本実施の形態2では、円筒プリパルスレーザ光L3aが集束する領域を、プラズマ生成サイトP1付近に設定する。これにより、より確実にプリパルスレーザ光L3をターゲット物質(たとえばドロップレットD)に照射することが可能となる。なお、ベッセルビームVL3が形成される領域とベッセルビームVL2が形成される領域とが少なくとも部分的に重なるよう、集光光学系などを配置してもよい。
【0037】
この他の構成、動作および効果は、実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0038】
(実施の形態3)
つぎに、本開示の実施の形態3について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、実施の形態1または2と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0039】
図9は、実施の形態3によるEUV光生成装置の概略構成を示す。図6と図9とを比較すると明らかなように、EUV光生成装置300(図9)は、EUV光生成装置200(図6)と同様の構成を備える。ただし、EUV光生成装置300では、EUV光生成装置200におけるアキシコンミラー231が、同心円状の複数のトレンチまたはリッジが形成された回折格子331に置き換えられる。
【0040】
//回折格子
図10に、回折格子の一例を示す。図10に示すように、回折格子331は、円盤状の透明基板331aの一方の主平面に、同心円状に形成された複数のトレンチまたはリッジが形成された回折部331bを含む。透明基板331aは、たとえばダイヤモンド基板などでよい。回折部331bの径は、円筒プリパルスレーザ光L3aの径と一致するのが好ましい。回折格子331は、その光軸が凹面アキシコンミラー30の光軸AXmと実質的に一致するように配置されるのが好ましい。
【0041】
円筒プリパルスレーザ光L3aは、透明基板331aの他方の主平面に略垂直に入射する。この円筒プリパルスレーザ光L3aが回折格子331の回折部331bから出射されると、図11に示すように、円筒プリパルスレーザ光L3aの回折光L3cがプラズマ生成サイトP1付近に集光される。この結果、プラズマ生成サイトP1またはその付近に、円筒プリパルスレーザ光L3aの中心軸上に所謂ベッセルビームVL3が形成される。このようにベッセルビームVL3を形成することで、実施の形態2と同様、プリパルスレーザ光L3の実質的な焦点深度を深くすることが可能である。この結果、より確実にプリパルスレーザ光L3をターゲット物質(たとえばドロップレットD)に照射することが可能となる。
【0042】
この他の構成、動作および効果は、実施の形態1または2と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
(実施の形態4)
また、上述の実施の形態では、2段階のレーザ照射を経てターゲット物質をプラズマ化する場合を例に挙げた。ただし、これに限らず、1段階のレーザ照射でターゲット物質をプラズマ化してもよい。図12は、実施の形態4によるEUV光生成装置の概略構成を示す。以下の説明において、実施の形態1〜3のいずれかと同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。なお、以下では、簡略化のため、実施の形態1を引用して説明する。ただし、これに限らず、実施の形態2または3に対しても本実施の形態4を適用可能である。
【0044】
図1と図12とを比較すると明らかなように、EUV光生成装置400(図12)は、EUV光生成装置100(図1)におけるプリパルスレーザ102と、プリパルスレーザ光L3をプラズマ生成サイトP1またはその付近に集光する集光光学系(高反射ミラーM21および集光レンズ31)が省略されている。このように、メインパルスレーザ光L2のみによってターゲット物質(ドロップレットD)をプラズマ化する場合でも、プラズマ生成サイトP1またはその付近にメインパルスレーザ光L2のベッセルビームVL2を形成することで、より確実にメインパルスレーザ光L2をターゲット物質(たとえばドロップレットD)に照射することが可能となる。
【0045】
この他の構成、動作および効果は、実施の形態1〜3のいずれかと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
(実施の形態5)
つぎに、本開示の実施の形態5について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、実施の形態1〜4のいずれかと同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。なお、以下では、簡略化のため、実施の形態1を引用して説明する。しかし、これに限らず、実施の形態2〜4のいずれに対しても本実施の形態5を適用可能である。
【0047】
図13は、実施の形態5によるEUV光生成装置の概略構成を示す。図13に示すように、EUV光生成装置500では、メインパルスレーザ光L2およびプリパルスレーザ光L3をプラズマ生成サイトP1付近に集光する光学系(ビーム整形部20、高反射ミラーM21およびM22、凹面アキシコンミラー30ならびに集光レンズ31)が、チャンバ40外に配置されている。また、EUV光生成装置500では、EUV光生成装置100におけるウィンドウW1が省略されるとともに、ウィンドウW2がウィンドウW40に置き換えられている。
【0048】
//ウィンドウ
図14に、ウィンドウの概略構成を示す。図15に、ウィンドウとメインパルスレーザ光およびプリパルスレーザ光との位置関係の一例を示す。ウィンドウW40は、たとえばダイヤモンド基板などのウィンドウ基板440を含む。ウィンドウ基板440の2つの主平面における中央付近には、プリパルスレーザ光L3の透過率を向上させる反射防止コーティングC43が形成されてもよい。また、反射防止コーティングC43の外周部には、メインパルスレーザ光L2の透過率を向上させる反射防止コーティングC42が形成されてもよい。
【0049】
このように、メインパルスレーザ光L2およびプリパルスレーザ光L3をプラズマ生成サイトP1付近に集光する光学系をチャンバ40外に配置することで、これらがデブリにより汚染されることを防止できる。ただし、ビーム整形部20、高反射ミラーM21およびM22、凹面アキシコンミラー30ならびに集光レンズ31のすべてをチャンバ40外に配置しなくてもよい。すなわち、これらのうちの少なくとも1つをチャンバ40外に配置する構成でもよい。
【0050】
この他の構成、動作および効果は、実施の形態1〜4のいずれかと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
(ビーム整形部の変形例1)
ここで、上述のビーム整形部の変形例1を示す。図16は、変形例1によるビーム整形部を示す。図17は、図16に示すビーム整形部の断面を示す。図16および図17に示すように、ビーム整形部520は、アキシコンミラー521と、穴あき平面ミラー522とを含む。また、アキシコンミラー521と穴あき平面ミラー522とのそれぞれの反射面には、メインパルスレーザ光L2に対して高い反射率を有する反射膜コーティング521aおよび522aが形成されていてもよい。このように、ビーム整形部520を反射型の光学素子を用いて構成することで、メインパルスレーザ光L2が入射する光学素子の熱負荷を軽減することができ、波面の歪みを抑制することができる。
【0052】
(ビーム整形部の変形例2)
また、上述のビーム整形部は、図18および図19に示すようにも変形することができる。図18および図19に示すように、変形例2によるビーム整形部620は、4つのアキシコンミラー621〜624を含む。それぞれの反射面には、メインパルスレーザ光L2に対して高い反射率を有する反射膜コーティング621a〜624aが形成されていてもよい。この構成において、アキシコンミラー621および622によって、メインパルスレーザ光L2が、ビーム断面が円環状の円筒メインパルスレーザ光L2aに変換される。その後、アキシコンミラー623および624によって、円筒メインパルスレーザ光L2aの径が調節される。すなわち、アキシコンミラー623に対するアキシコンミラー624の位置を、図19に示す矢印Eの方向に移動させることで、ビーム整形部620から出力される円筒メインパルスレーザ光L2aのビーム断面の径を調節することができる。なお、変形例2でも、変形例1と同様、ビーム整形部620を反射型の光学素子を用いて構成しているため、各光学素子でのエネルギーロスを抑えられる。
【0053】
(ビーム整形部の変形例3)
また、上述のビーム整形部は、図20および図21に示すようにも変形することができる。図20および図21に示すように、変形例3によるビーム整形部720は、2つのアキシコンミラー721および722と、穴あき平面ミラー723とを含む。それぞれの反射面には、メインパルスレーザ光L2に対して高い反射率を有する反射膜コーティング721a〜723aが形成されていてもよい。この構成において、アキシコンミラー721によって、メインパルスレーザ光L2が円錐中空メインパルスレーザ光L2cに変換される。その後、穴あき平面ミラー723によって、円錐中空メインパルスレーザ光L2cが円筒メインパルスレーザ光L2aに変換される。この変形例3でも、変形例1および2と同様、ビーム整形部720を反射型の光学素子を用いて構成しているため、メインパルスレーザ光L2が入射する光学素子の熱負荷を軽減することができ、波面の歪みを抑制することができる。
【0054】
上述のビーム整形部の変形例のそれぞれは、メインパルスレーザ光L2用およびプリパルスレーザ光L3用のいずれにも適用することができる。
【0055】
なお、円環状のビームを曲率を有する集光光学系によって、集光する場合は焦点深度の調節は困難である。これに対して、円環状のビームからアキシコンミラーまたはアキシコンレンズによってベッセルビームを形成する場合は円環状のビームの内径と外径との差を調節することによって、焦点深度の調節が可能である。
【0056】
また、上記実施の形態およびその変形例は本開示を実施するための例にすぎず、本開示はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本開示の範囲内であり、更に本開示の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば各実施の形態に対して適宜例示した変形例は、他の実施の形態に対して適用することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100、200、300、400、500 EUV光生成装置
20、220、520、620、720 ビーム整形部
21、22、231 アキシコンレンズ
30 凹面アキシコンミラー
30a 下底
30b 上底
31 集光レンズ
40 チャンバ
41 ドロップレットジェネレータ
41a ノズル
43 ドロップレット回収部
44 電磁石コイル
45 EUV集光ミラー
45a 貫通孔
50 露光装置接続部
51 隔壁
60 露光装置
101 ドライバレーザ
102 プリパルスレーザ
331 回折格子
331a 透明基板
331b 回折部
440 ダイヤモンド基板
521、621〜624、721、722 アキシコンミラー
521a、522a、621a〜624a、721a〜723a 反射膜コーティング
522、723 穴あき平面ミラー
AX2、AX3 中心軸
AXm 光軸
C42、C43 反射防止コーティング
D ドロップレット
DD 膨張ターゲット
IF 中間集光点
L1 シード光
L2 メインパルスレーザ光
L2a 円筒メインパルスレーザ光
L2c 円錐中空メインパルスレーザ光
L3 プリパルスレーザ光
L3a 円筒プリパルスレーザ光
L3c 回折光
M3、M4、M21、M22 高反射ミラー
MA メインアンプ
MO マスタオシレータ
P1 プラズマ生成サイト
PA プリアンプ
PL プリパルスレーザ光源
R1〜R4 リレー光学系
VL2、VL3 ベッセルビーム
W1、W2、W40 ウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する第1のレーザ光をビーム断面が円環状の第2のレーザ光に変換する第1のビーム整形部と、
前記第2のレーザ光を第1の所定の位置に集光して、ベッセルビームを形成させる第1の集光光学素子と、
を備える、光学装置。
【請求項2】
前記第1のビーム整形部は、透過型光学素子で構成される、
請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記透過型光学素子は、凸面アキシコンレンズである、
請求項2記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1のビーム整形部は、反射型光学素子で構成される、
請求項1記載の光学装置。
【請求項5】
前記反射型光学素子は、凹面アキシコンミラーおよび凸面アキシコンミラーの少なくともいずれか一方を含む、
請求項4記載の光学装置。
【請求項6】
前記第1の集光光学素子は、光軸方向に開口が形成された凹面アキシコンミラーである、
請求項1記載の光学装置。
【請求項7】
入射する第3のレーザ光をビーム断面が円環状の第4のレーザ光に変換する第2のビーム整形部と、
前記第4のレーザ光を第2の所定の位置に集光して、ベッセルビームを形成させる第2の集光光学素子と、
をさらに備える、請求項1記載の光学装置。
【請求項8】
前記第2のビーム整形部は、透過型光学素子で構成される、
請求項7記載の光学装置。
【請求項9】
前記透過型光学素子は、凸面アキシコンレンズである、
請求項8記載の光学装置。
【請求項10】
前記第2のビーム整形部は、反射型光学素子で構成される、
請求項7記載の光学装置。
【請求項11】
前記反射型光学素子は、凹面アキシコンミラーおよび凸面アキシコンミラーの少なくともいずれか一方を含む、
請求項10記載の光学装置。
【請求項12】
前記第2の集光光学素子は、凸面アキシコンレンズである、
請求項7記載の光学装置。
【請求項13】
前記第1の集光光学素子は、回折格子である、
請求項7記載の光学装置。
【請求項14】
前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置とは、実質的に同一の位置である、
請求項7記載の光学装置。
【請求項15】
前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置とは、異なる位置である、
請求項7記載の光学装置。
【請求項16】
前記第1および第2のビーム整形部から出力される前記第2および第4のレーザ光の中心軸が互いに一致するように、前記第2および第4のレーザ光の光路上に配置された光学系をさらに備える、
請求項7記載の光学装置。
【請求項17】
前記第1および第2の集光光学素子は、それらの光軸が実質的に同軸配置される、
請求項16記載の光学装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の光学装置と、
少なくとも1つのレーザ生成システムと、
を備える、レーザ装置。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の光学装置と、
少なくとも1つのレーザ生成システムを含むレーザ装置と、
前記レーザ装置から出力されるレーザ光が入射するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバ内で、前記レーザ光が照射されるターゲット物質を前記チャンバ内に供給するターゲット供給部と、
前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射されることによって生成される光のうち、所定の波長の光を選択的に反射する、集光ミラーと、
を備える、極端紫外光生成装置。
【請求項20】
前記光学装置は、前記チャンバ内に配置される、
請求項19記載の極端紫外光生成装置。
【請求項21】
前記光学装置は、前記チャンバ外に配置される、
請求項19記載の極端紫外光生成装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの入射口にウィンドウが設けられ、
前記ウィンドウは、前記第2および第4レーザ光が透過可能な透明基板を含み、
前記透明基板のそれぞれの主面に、前記第2および第4のレーザ光の少なくともいずれか一方の反射を防止する反射防止コーティングが形成される、
請求項21記載の極端紫外光生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−119098(P2012−119098A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265786(P2010−265786)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】