説明

光干渉断層像形成装置

【課題】 ヘテロダイン検出にかかる構成を有効利用し、少ない部品点数の追加で、光干渉断層診断装置としての機能を実現しつつ、メンテナンスの際の光源からの純粋な光を検出することをも可能にする技術を提供する。
【解決手段】 光干渉断層像形成装置における干渉光を案内する光ファイバ237に2分岐させる光カップラを設け、その2つの光(一方が他方より180度位相差を持つ)を、直列接続した2つのフォトダイオードに照射する。断層像形成のための光プローブを血管内に挿入し、スキャンする際には、信号選択用IC610は2つのフォトダイオードを連結するラインに流れる電流を光電変換結果の信号として選択し、出力する。一方、光源のメンテナンスを行う場合、信号選択用IC610は、直列接続の端位置である、一方のフォトダイオードの端部に流れる電気信号を選択し、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉断層像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテル、ステント等の高機能カテーテルによる血管内診療がある。この診療術前の診断、或いは、術後の経過確認のため、光干渉断層画像診断装置(OCT:Optical Coherent Tomography)等の画像診断装置が用いられるのが一般的になってきた。
【0003】
この画像診断装置は、先端に光学レンズを有し、光学ミラーを取り付けた光ファイバを内蔵したカテーテルを有する。そして、そのカテーテルを患者の血管内に挿入し、光学ミラーを回転させながら、光学ミラーを介して血管壁に光を照射し、生体組織からの反射光を再度、その光学ミラーを介して受光することでラジアル走査を行い、得られた反射光を元に血管の断面画像を再構成するものである。また、OCTの改良型として、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置(OFDI:Optical Frequency Domain Imaging)も開発されている。
【0004】
光干渉断層診断装置の基本原理は、装置内部の光源からの出力される光を測定光と参照光に分割し、測定光を上記のカテーテルの内部の光ファイバの光学ミラーに向けて出射する。そして、生体組織によって反射された散乱光を同じ光ファイバを介して受光し、所定の距離を経て反射した参照光との干渉光を得、その強度からカテーテル近傍の生体組織(血管)の断層像を得るものである(例えば、特許文献1)。
【0005】
特に、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置の場合は、出射する光の波長を予め定めた範囲内で繰り返し掃引することで、参照光の光路長は操作することなく、得られた干渉光の周波数分布から、測定光路長と参照光路長が同じ点を基準とした深度方向の反射強度分布を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−267867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、光干渉断層診断装置は、生体組織からの後方散乱光を受光することで得られた血管の断面画像を再構成するものである。このとき、生体組織からの散乱光は、出射光に対して−80dBと非常に微弱な光である。このため、光干渉技術を使用して感度が90dB乃至110dBに達する敏感な検出回路を構成し、画像再構成を行っている。
【0008】
上記の感度を得るため、光電変換を行うフォトディテクタ回路でヘテロダイン検出を行っているので、非干渉成分は打ち消し合い、変換された電気信号には含まれない。画像を描画する上では上記構成は問題にはならないが、その一方で、製造やメンテナンス用の際には、光源の情報は打ち消し合って消されてしまい、光源の状態を把握することが難しい。
【0009】
かかる点の単純な解決策は、光源メンテナンス用の為の光源からの出力を、診断のための出力と光学的、電気的に独立させることであるが、この場合、フォトサンプリングに係る回路が別途必要になり、部品点数の増大、すなわち、コストアップを招くし、煩雑になることは避けられない。
【0010】
そこで、本発明は、ヘテロダイン検出にかかる構成を有効利用し、少ない部品点数の追加で、光干渉断層診断装置としての機能を実現しつつ、メンテナンスの際の光源からの純粋な光を検出することをも可能にする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、例えば、本発明の光干渉断層像形成装置は以下の構成を備える。すなわち、
光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、生体管腔内に挿入されたプローブを介して照射方向を回転させながら生体組織に前記測定光を出射し、得られた反射光と、前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて該生体組織の断面画像を生成する光干渉断層像形成装置であって、
前記干渉光の光強度を電気信号に変換する光電変換手段と、
操作部から前記光源のメンテナンスの要求指示があったか否かを判断し、当該判断結果に応じて、前記光電変換手段の光電変換処理に係る処理の切り替えるための制御信号を出力する制御手段とを有し、
前記光電変換手段は、
直列に接続した2つのフォトダイオードと、
前記直列に接続した2つのフォトダイオードの接続位置に流れる第1の電気信号と、前記直列接続の端位置である、一方のフォトダイオードの端部に流れる第2の電気信号のいずれか一方を、前記制御手段からの制御信号に応じて選択し、選択した電気信号を光電変換手段による光電変換結果の信号として出力する選択部とを有し、
前記制御手段は、
少なくとも生体組織の断面画像を生成するため、該生体組織に測定光を出射する場合には、前記選択部が前記第1の電気信号を選択させる制御信号を出力し、
前記光源のメンテナンス要求指示があったと判定した場合には、前記第2の電気信号を選択させる制御信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、少ない部品点数の追加で、操作者からメンテナンスの要求指示があった場合、2つのフォトダイオードによるバランス検出に係る構成から、光源からの光のダイレクトな検出に係る構成に切り換わることとなり、光源のメンテナンス処理に係るコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態にかかる画像診断装置の外観構成を示す図。
【図2】画像診断装置100の機能構成を示すブロック図。
【図3】信号処理部の機能構成を示すブロック図。
【図4】血管内における光プローブによる回転走査、軸方向移動、測定光の照射と反射光の取り込みを説明する図。
【図5】血管内における光プローブの動作を説明するための模式図。
【図6】実施形態による光検出部の回路構成を示す図。
【図7】実施形態における信号処理部の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明を具備する波長掃引型光干渉断層像形成装置(OCT装置)(以下、画像診断装置という)のシステム構成及び外観構成を示す図である。図1に示すように、画像診断装置100は、光プローブ部101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備える。スキャナ/プルバック部102と操作制御装置103とは、信号線/光ファイバ104により接続されている。光プローブ部101は、直接血管等の生体管腔内に挿入され、イメージングコアを用いて生体組織の状態を測定する。スキャナ/プルバック部102は、光プローブ部101と着脱可能に構成されており、内蔵されたモータが駆動することで光プローブ部101内のイメージングコアのラジアル動作を規定する。
【0016】
操作制御装置103は、生体組織の光干渉断層像形成を行うにあたり、各種設定値を入力するための機能や、測定により得られたデータを処理し、断層画像として表示するための機能を備える。操作制御装置103において、111は本体制御部であり、測定により得られたデータを処理したり、処理結果を出力したりする。111−1はプリンタ/DVDレコーダであり、本体制御部111における処理結果を印刷したり、データとして記憶したりする。112は操作パネルであり、ユーザは該操作パネル112を介して、各種設定値及び指示の入力を行う。113は表示装置としてのLCDモニタであり、本体制御部111における処理結果を表示する。
【0017】
図2は、図1に示す画像診断装置100の機能構成図である。図示において、208は光源であり、Swept Laserが用いられる。光源208としてのSwept Laserは、SOA216(semiconductor optical amplifier)とリング状に結合された光ファイバ217を有する光源部208aとポリゴンスキャニングフィルタ208bよりなる、Extended-cavity Laserの一種である。SOA216から出力された光が、光ファイバ217を進み、ポリゴンスキャニングフィルタ208bに入り、ここで波長選択された光が、SOA216で増幅され、最終的にカップラ214から出力される。ポリゴンスキャニングフィルタ208bは、光を分光する回折格子212とポリゴンミラー209との組み合わせで波長を選択する。回折格子212により分光された光を2枚のレンズ210、211によりポリゴンミラー209の表面に集光させる。これによりポリゴンミラー209と直交する波長の光のみ同一の光路を戻り、ポリゴンスキャニングフィルタ208bから出力されるため、ミラーを回転させることで、波長の時間掃引を行う。ポリゴンミラー209は、例えば、32面体のミラーが使用され、回転数が50000rpm程度である。ポリゴンミラー209と回折格子212とを組み合わせたユニークな波長掃引方式により、高速、高出力の波長掃引が可能である。
【0018】
カップラ214から出力された光源208の光は、第1のシングルモードファイバ230の一端に入射され、先端面側に伝送される。第1のシングルモードファイバ230は、途中の光カップラ部226で第2のシングルモードファイバ231と光学的に結合されている。従って、この光カップラ部226で2つに分岐されて伝送される。
【0019】
第1のシングルモードファイバ230の光カップラ部226より先端側には、光サーキュレータ228が設けられている。この光サーキュレータは、図示の如く、少なくとも3つのポートP0、P1、P2を有する。そして、この光サーキュレータ228は、ポートP0に入力した光をポートP1に出力し、ポートP1に入力した光をポートP2に出力する構造を成している。第1のシングルモードファイバ230はポートP0に接続されているので、結局のところ、光カップラ部226で分岐された光は、ポートP1に接続された第3のシングルモードファイバ232に伝送されることになる。この光サーキュレータ228のポートP1の第3のシングルモードファイバ232の先端側には、スキャナ/プルバック部102が設けられている。スキャナ/プルバック部102の回転駆動装置204内には、非回転部(固定部)と回転部(回転駆動部)との間を結合し、光を伝送する光ロータリジョイント(光カップリング部)203が設けられている。更に、光ロータリジョイント203内の第4のシングルモードファイバ235の先端側は、光プローブ部101の第5のシングルモードファイバ236と、アダプタ202を介して着脱自在に接続されている。これにより光の送受信を繰り返すイメージングコア201内に挿通され回転駆動可能な第5のシングルモードファイバ236に光源208からの光が伝送される。
【0020】
第5のシングルモードファイバ236に伝送された光は、イメージングコア201の先端側から血管内の生体組織に対してラジアル動作しながら照射される。そして、生体組織の表面あるいは内部で散乱した反射光の一部はイメージングコア201により取り込まれ、逆の光路を経て第3のシングルモードファイバ232を介して光サーキュレータ228のポートP1に導かれる。そして、この光は、光サーキュレータ228のポートP2を介して第6のシングルモードファイバ233を介して光カップラ部227に導かれ、その一部が第7、第8のシングルモードファイバ237、238側に移る。この第7、8のシングルモードファイバ237、238に導かれた反射光は後述の参照光と混合され、干渉光として、光検出部219(例えばフォトダイオード)にて受光される。
【0021】
なお、光ロータリジョイント203の回転部側は回転駆動装置204のラジアル走査モータ205により回転駆動される。また、ラジアル走査モータ205の回転角度は、エンコーダ部206により検出される。更に、光ロータリジョイント203は、直線駆動装置207を備え、信号処理部223からの指示に基づいて、光プローブ部101の挿入方向(軸方向)の動作を規定している。軸方向移動は、信号処理部223からの制御信号に基づいて、直線駆動装置207内の直線駆動モータが動作することにより実現される。
【0022】
また、第2のシングルモードファイバ231の光カップラ部226より先端側には、参照光の光路長を微調整する光路長の可変機構225が設けてある。この光路長の可変機構225は光プローブを交換して使用した場合の個々の光プローブの長さのばらつきを吸収できるように、その長さのバラツキに相当する光路長を変化させる光路長変化手段を備えている。第2のシングルモードファイバ231およびコリメートレンズ251は、その光軸方向に矢印253で示すように移動自在な1軸ステージ254上に設けられている。この結果、コリメートレンズ251と、その位置が固定されている、もう一方のコリメートレンズ252との距離が調整でき、光路長調整手段を形成している。コリメートレンズ252で集光した光は、第9のシングルモードファイバ234を介して、先に説明した光カップラ部227に導かれることになる。
【0023】
具体的には、1軸ステージ254は光プローブ201を交換した場合に、光プローブの光路長のバラツキを吸収できるだけの光路長の可変範囲を有する光路長変化手段を形成する。さらに、1軸ステージ254はオフセットを調整する調整手段としての機能も備えている。例えば、光プローブの先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージにより光路長を微小変化させることにより、生体組織の表面位置から干渉する状態に設定することが可能となる。
【0024】
光路長の可変機構225で光路長が微調整された光(参照光)は、先に説明したように、第9のシングルモードファイバ234の途中に設けた光カップラ部227で第6のシングルモードファイバ233側からの光(反射光)と混合されて、干渉光となり、第7、第8のシングルモードファイバ237、238を介して光検出部219にて受光される。光検出部219(詳細後述)にて受光された光は光電変換、並びに、増幅され、対数増幅器220に入力される。対数増幅器220では、干渉光を光電変換して得られた信号であって、光検出部219内で増幅された電気信号を対数的に増幅する。対数増幅器220の出力は復調器221に供給される。復調器221では干渉した光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力はA/D変換器222に入力される。
【0025】
A/D変換器222では、干渉光信号を180MHzで2048ポイント分サンプリングして、1ラインのデジタルデータ(干渉光データ)を生成する。なお、サンプリング周波数を180MHzとしたのは、波長掃引の繰り返し周波数を80kHzにした場合に、波長掃引の周期(12.5μsec)の90%程度を2048点のデジタルデータとして抽出することを前提としたものであり、特にこれに限定されるものではない。
【0026】
A/D変換器222にて生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部223に入力される。この信号処理部223では干渉光データをFFT(高速フーリエ変換)により周波数分解して深さ方向のデータを生成し、これを座標変換することにより、血管内の各位置での断面画像を形成し、所定のフレームレートでLCDモニタ113に出力する。
【0027】
なお、信号処理部223は光路長調整手段制御部218と接続されている。信号処理部223は光路長調整手段制御部218を介して1軸ステージ254を制御してコリメートレンズ251、252間の距離の調整を行う。また、信号処理部223はモータ制御回路224と接続され、断面画像を形成する際のビデオ同期信号に同期して内部のメモリに該断面画像を格納する。また、このモータ制御回路224のビデオ同期信号は、回転駆動装置204にも送られ、回転駆動装置204はビデオ同期信号に同期した駆動信号を出力する。
【0028】
図4(a)は光プローブ部101のイメージングコア201が生体管腔内(血管内)に挿入され、ラジアル走査が行われる様子を説明する図である。光学ミラー401、光学レンズ402を先端に有する光ファイバ236により構成されるイメージングコア201を内蔵したカテーテルシース403は、例えば血管内腔に挿入される。回転駆動装置204は、カテーテルシース403内でイメージングコア201を矢印405方向に回転させ、直線駆動装置207は矢印406方向に移動させる。このとき、図4(b)に示すように、光源208からの測定光が光ファイバ236を経て、光学ミラー401により生体管腔へ照射される。照射された光の反射光は、光学ミラー401により光ファイバ236を経て装置へ戻される。
【0029】
図5は血管内断層撮影時の光プローブ部101の動作を説明するための模式図である。図5(a)、(b)はそれぞれ光プローブ部101が挿入された状態の血管の斜視図及び断面図である。図5(a)において、501は光プローブ部101が挿入された血管断面を示している。上述のように、光プローブ部101のイメージングコア201はその先端に光学レンズ402、光学ミラー401が取り付けられており、ラジアル走査モータ205により図5(b)の参照符号405で示される方向に回転する。
【0030】
光学レンズ402からは、各回転角度にて測定光の送信/受信が行われる。ライン1、2、…、512は各回転角度における測定光の照射方向を示している。本実施形態では、光学ミラー401及び光学レンズ402を含むイメージングコア201が所定の血管断面501の位置で360度回動する間に、512回の測定光の送信/反射光の受信が断続的に行われる。なお、360度回動する間における測定光の送信/受信回数は特にこれに限られず、任意に設定可能であるものとする。このように、イメージングコア201を回転させながら信号の送信/受信を繰り返すスキャン(走査)を、一般に「ラジアルスキャン(ラジアル走査、回転走査)」という。また、このようなイメージングコア201による測定光の送信/反射光の受信は、イメージングコア201が血管内を矢印406(図4(a)参照)の方向に進みながら行われる。
【0031】
次に、信号処理部223について説明する。図3は信号処理部223の構成例を示すブロック図である。
【0032】
上述したように、光ファイバ233を通して入力された反射光は、光カップラ部227で参照光と合わせられて、第7、第8のシングルモードファイバ237、238上に干渉光を生成する。光検出部219は、この干渉光の強度(干渉強度)を電気信号に変換、増幅した結果を対数増幅器220に出力する。対数増幅器220は、光電変換部219からの電気信号を対数的に増幅し、得られた信号を復調器221へ出力する。復調器221の出力は、A/D変換部222に入力される。A/D変換部222では、入力された信号を2048ポイント分サンプリングして、デジタルデータとして後段のラインメモリ部301に出力する。
【0033】
波長掃引を利用した光干渉断層像形成装置では、ここで得られたデータをフーリエ変換することで、深度方向の反射強度分布を得ることができる。すなわち、光路長の走査をすることなく、深度方向のデータを取得することができるため、高速のデータ取得が可能になる。図3のラインメモリ部301は、モータ制御回路224から出力されるモータのエンコーダ信号をもとに、モータ1回転あたりのライン数が512本となるように信号を選択し、グルーピングする。すなわち、1ラインごとの干渉光データが、モータ1回転あたり512個ずつラインデータ生成部302に出力される。
【0034】
ラインデータ生成部302は、FFT(高速フーリエ変換処理)を行うことで、ラインデータを生成するととともに、ライン加算平均処理、フィルター処理、対数変換等を行い、得られたラインデータを後段の後処理部303に出力する。
【0035】
後処理部303では、ラインデータ生成部302より受け取ったラインデータに対してコントラスト調整、輝度調整、ガンマ補正、フレーム相関、シャープネス処理等を施し、処理結果を画像構築部304に出力する。画像構築部304は、極座標のラインデータ列をビデオ信号に変換し、LCDモニタ113に血管断面画像として表示する。なお、ここでは一例として、512ラインから画像を構築する例を示しているが、このライン数に限定されるものではない。制御部305は上述した各部の一連の動作を制御することになる血管断層像を得るまでの演算内容、並びに、その表示処理に関する部分は、本願発明には直接には関係しないので、ここでのこれ以上の説明は省略する。
【0036】
以下では、光源208のメンテナンスを行うモードと、上記血管断層像に係る診断モードとの切り替えについて説明する。
【0037】
光検出部219は、主として上記の通り、干渉光(測定光の反射光と参照光が干渉した光)を電気信号に変換する点にある。実施形態における光検出部219はヘテロダイン検出を行うものであり、光プローブ部101が血管内に挿入される診断時にはその機能が有効に働くことは理解できよう。しかし、逆に、光プローブ部101を血管内に挿入せず、光源208のメンテナンスを行うため、光源208→光カップラ部226→可変機構225→光カップラ部227→光検出部219とたどる参照光(非干渉光)を検出する場合、ヘテロダイン検出を行う光検出部219では互いに非干渉成分は打ち消し合ってしまい、光源208のメンテナンスに利用するには不向きであると言える。
【0038】
そこで、本実施形態では、信号処理部223による制御信号に応じて、光検出部219は、干渉光のバランス検出と、光源208からの純粋な信号のみを検出するダイレクト検出を切り換わるようにした。
【0039】
図6は実施形態における光検出部219の構成を示している。図示の通り、2つの光検出のためのフォトダイオード601、602が直列に接続されている。フォトダイオード601は第7のシングルモードファイバ237から導かれるを光を検出し、その受光強度を示す電気信号を出力する。もう一方のフォトダイオード602は第8のシングルモードファイバ238から導かれる光りを検出し、受光強度を示す電気信号を出力する。ここで、光カップラ部227からの第7、第8のシングルモードファイバ237、238に導かれる光は互いに180度の位相差を持つ光となっている。従って、この分岐した光を、フォトダイオード601、602がそれぞれ検出した際に、フォトダイオード601、602の間の中央のライン600に流れる電流は、結局のところ、位相差180度の光信号を差分に相当するバランスさせた電流と言える。これをアンプ604、605で増幅し、適当なバンドパスフィルタ608を介して信号選択用IC610に供給する。血管断層像の再構成するための干渉光検出時にあっては、信号処理部223が信号選択用IC610に対して、バンドパスフィルタ608からの信号を選択し、出力するように制御する。この結果、上記の通り、干渉光のバランス検出が行えることとなる。
【0040】
一方、光源208のメンテナンスモードの場合、信号処理部223は信号選択用IC610に対して、バンドパスフィルタ607(または609)からの信号を選択し、出力するように制御する。この結果、一方のフォトダイオード601(或いは602)からの光電変換結果の電流がアンプ603(或は606)によってダイレクトに増幅され、バンドパスフィルタ607(或は609)による信号が選択されることとなる。光源208のメンテナンスのモードの場合、光プローブ部101が血管内に挿入されていないので、バンドパスフィルタ607(或は609)からの信号は、非干渉光である。また、信号選択用IC610が選択するのは、差分電流ではないので、信号選択用IC610からの信号は光源208からの光にダイレクトに依存した電流となり、光源208のメンテナンスに都合の良い信号を得ることができる。
【0041】
なお、図示の増幅器603、606、バンドパスフィルタ607、609は、血管断層像は無関係となるので、光源208のメンテナンスに特化した増幅率、濾波周波数を指定して構わない。また、図6に示す例では、信号選択用IC610が選択する対象は3つであるが、バンドパスフィルタ607、609のいずれか一方は選択候補から除外しても構わない。当然、選択候補から除外した場合、該当するアンプ、バンドパスフィルタも不要である。
【0042】
信号処理部223は、例えば図7のフローチャートに従って処理すればよい。以下、同図に従って説明する。
【0043】
先ず、ステップS701では、操作パネル112からの入力を待つ。入力があると、ステップS702にて、操作者の入力はメンテナンスモードへの移行指示であるか否かを判定する。否の場合には、該当する指示に応じた処理を行うため、ステップS703に処理を進める。なお、このステップS703の処理には、血管断層像を得るための処理や描画処理が含まれる。
【0044】
一方、ステップS702にて、操作者の指示入力が、メンテナンスモードであると判定した場合、処理はステップS704に進み、光検出部219内の信号選択用IC610に対してバンドパスフィルタ607(或いは609)を選択する制御信号を出力する。次いで、ステップS705で光源208を駆動し、光電変換結果をラインメモリ部301に格納し、光源208の正常か否かの診断に移行する。すなわち、メンテナンスモードであるので、ラインデータ生成等の断層像構築は行なわない。このステップS705におけるメンテナンス処理としては、例えば、横軸に掃引周波数、縦軸に光強度とする実測値の曲グラフを表示し、更には、予めメモリに保持しておいた理想的な(正常時の)曲線を重畳表示する等で良い。或いは、理想的な曲線と実測した曲線との差分を算出し、その差分値から光源の良否(もしくは交換時期)を指標値として表示するようにしても良い。こうして、メンテナンス処理を終えると、ステップS706に進み、光検出部219内の信号選択用IC610に対してバンドパスフィルタ608、すなわち、バランス検出信号を選択する制御信号を出力し、ステップS701に戻る。
【0045】
以上説明したように本実施形態によれば、干渉光を電気信号に変換する光検出部を図6に示すような構造にすることで、部品点数を少なくしながらも、ヘテロダイン検出にかかる構成と光源のメンテナンスに係る構成を両立させることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
100:画像診断装置、101:光プローブ部、102:スキャナ/プルバック部、103:操作制御装置、201:イメージングコア、208:光源、219:光検出器、220:対数増幅器、223:信号処理部、225:光路長の可変機構、226、227:光カップラ部、228:光サーキュレータ、305:制御部、601、602:フォトダイオード、603、604、605、606:アンプ、607、608、609:バンドパスフィルタ、610:信号選択用IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、生体管腔内に挿入されたプローブを介して照射方向を回転させながら生体組織に前記測定光を出射し、得られた反射光と、前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて該生体組織の断面画像を生成する光干渉断層像形成装置であって、
前記干渉光の光強度を電気信号に変換する光電変換手段と、
操作部から前記光源のメンテナンスの要求指示があったか否かを判断し、当該判断結果に応じて、前記光電変換手段の光電変換処理に係る処理の切り替えるための制御信号を出力する制御手段とを有し、
前記光電変換手段は、
直列に接続した2つのフォトダイオードと、
前記直列に接続した2つのフォトダイオードの接続位置に流れる第1の電気信号と、前記直列接続の端位置である、一方のフォトダイオードの端部に流れる第2の電気信号のいずれか一方を、前記制御手段からの制御信号に応じて選択し、選択した電気信号を光電変換手段による光電変換結果の信号として出力する選択部とを有し、
前記制御手段は、
少なくとも生体組織の断面画像を生成するため、前記生体組織に測定光を出射する場合には、前記選択部が前記第1の電気信号を選択させる制御信号を出力し、
前記光源のメンテナンス要求指示があったと判定した場合には、前記第2の電気信号を選択させる制御信号を出力する
ことを特徴とする光干渉断層像形成装置。
【請求項2】
前記光電変換手段は、前記第1の電気信号、前記第2の電気信号それぞれに応じたゲインを得るための個別のアンプを有することを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項3】
前記光電変換手段は、前記第1の電気信号、前記第2の電気信号それぞれに応じた周波数を濾波するためのバンドパスフィルタを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光電変換手段が前記第2の電気信号を出力させるようにしたとき、前記第2の電気信号で得られる前記光源に係る現在の特性グラフと、予め所定の記憶手段に記憶した前記光源が正常なときの理想とする電気信号で得られる特性グラフとを、所定の表示装置に重畳表示させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光干渉断層像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−210358(P2012−210358A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78015(P2011−78015)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】