説明

光機能回路

【課題】小型な回路規模で、導波路のレイアウト変更が必要なく、回路製造上の歩留まり率の高い光機能回路を提供する。
【解決手段】光分岐部11と、光符号系列に従って各々異なる遅延を有する、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nと、光合波部13で構成することにより、光スペクトル拡散を行う、光符号分割多重回路を構成する。さらに、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nは、短パルスレーザで孔加工を施されたフォトニック結晶121を含む。同様な構成で、光時分割多重回路、フェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路、光ディジタル―アナログ変換回路、光ラベルスイッチング機能を有する光中継装置を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光領域で光の振幅/位相を制御する光機能回路に関するものである。ここで、光機能回路は、光符号分割多重回路、光時分割多重回路、フェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路、光ディジタル−アナログ変換回路、および光中継装置を含む概念とする。
【背景技術】
【0002】
従来の光機能回路としては、光ファイバや光導波路の光路長の違いによる伝搬遅延を利用したものがあった。特に、光符号分割多重方式において、光信号を時間(位相)領域でスペクトル拡散する光符号分割多重回路に関しては、次のような技術が知られている。図7は、従来の光符号分割多重回路の構成を示すブロック図である。例えば、特許文献1の図7に従来の光符号分割多重回路が記載されている。図7において、従来の光符号分割多重回路は、光分岐部11と、第1から第Nの光ファイバ70−1から70−Nと、光合波部13とで構成される。以下、従来の光符号分割多重回路の動作を説明する。
【0003】
光分岐部11は、入力される光信号をN個に分岐して出力する。第1から第Nの光ファイバ70−1から70−Nは、それぞれ異なる光路長を有することによって、本光符号分割多重回路に対して、予め割り当てられた所定の符号に応じてそれぞれ所定の遅延量を与えて、第1から第Nの光遅延信号を出力する。図7には示していないが、第m(mは、1からNまでの自然数)の光ファイバ70−mの構成は、第1の光ファイバの構成に準ずる。光合波部13は、第1から第Nの光ファイバ70−1から70−Nから出力される、N個の光遅延信号を合波して出力する。以上の構成において、光分岐数Nや光ファイバの長さ(即ち、遅延量)を割り当てることによって、1個のパルスが光分岐部11に入射すると、所定の符号に対応して一意なパターンに配列された、N個のパルス列が生成され、光合波部13から時間領域でスペクトル拡散された光信号(出力信号)が発生される。
【特許文献1】特許第3154396号公報
【特許文献2】特開2002−18585号公報
【非特許文献1】Ming Li 他,「Femtosecond Laser Micromaching of Si−on−SiO2 for Photonic Band Gap Fabrication」, vol.40, pp.3476−3477, Japanese Journal of Applied Physics, May 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光ファイバの伝搬遅延を利用した光機能回路、例えば光符号分割多重回路では、異なる長さの光ファイバを効率よくレイアウトするのが難しく、回路規模が非常に大きくなりやすい。また、遅延量を精度良く、後調整することがほぼ不可能であるため、回路製造上の歩留まり率(使用原料に対する製品出来高の割合)が低くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、小型な回路規模で、導波路のレイアウト変更が必要なく、回路製造上の歩留まり率の高い光符号多重回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の第1の発明は、光符号分割多重方式において、光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号多重回路を構成する光機能回路であって、1対N(1入力端子対N出力端子。Nは正の整数。以下同様。)の光分岐部と、光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の符号系列に応じて互いに異なる遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、N対1(N入力端子対1出力端子)の光合波部を備え、遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備する。
【0007】
第2の発明は、光符号分割多重方式において、広い波長帯域を有する光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号多重回路を構成する光機能回路であって、入力された光信号を互いに異なる波長に分離して出力する、1対Nの波長分離部と、光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の符号系列に応じて互いに異なる遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、N対1の光合波部を備え、遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備する。
【0008】
第3の発明は、光符号分割多重方式において、広い波長帯域を有する光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号多重回路を構成する光機能回路であって、1対Nの光分岐部と、光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の符号系列に応じて互いに異なる遅延量を持ち、かつ入力された光信号のうち互いに異なる波長のみを透過させる、N本の遅延導波路と、N対1の光合波部を備え、遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備する。
【0009】
第4の発明は、光時分割多重方式において、N個の光データ信号の時系列多重、および分離を行う光時分割多重回路を構成する光機能回路であって、光クロック信号を発生するクロック発生部と、光クロック信号をN個に光分岐して出力するクロック分岐部と、各光データ信号と対応する光クロック信号を、それぞれ光合波する、N個のクロック合波部と、各クロック合波部に各々対応して接続され、互いに異なる遅延量を持ち、かつ前記遅延量が所定の最小遅延量の整数倍である、N本の遅延導波路と、N本の遅延導波路に接続される、N対1の光合波部を備え、遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備する。
【0010】
第5の発明は、フェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路を構成する光機能回路であって、無線信号を光信号に変換する無線光変換部と、無線光変換部から出力される光信号をN個に分岐して出力する、1対Nの光分岐部と、光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、遅延導波路に各々対応して接続され、前記遅延導波路から出力された光信号を無線信号に変換する、N個の光無線変換部と、光無線変換部に各々対応して接続され、N本の遅延導波路における所定の遅延量の組み合わせに応じて、異なる方向に無線信号を空間的に放射する、N個のアレイアンテナを備え、遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備する。
【0011】
第6の発明は、ディジタル波形の光信号をアナログ波形の光信号に変換して出力する光ディジタル−アナログ変換回路を構成する光機能回路であって、ディジタル波形の光信号をN個に分岐して出力する、1対Nの光分岐部と、光分岐部の第nの出力端子に各々対応して接続され、互いに異なる遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、N本の遅延導波路から出力された、N個の光信号に対して、所定の振幅比を与える、N個の重み付け部と、N個の重み付け部から出力された、N個の光信号を合波することによって、所望のアナログ波形の光信号を出力する、N対1の光合波部を備え、遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備する。
【0012】
第7の発明は、光信号に含まれるラベル(経路情報など)を光のまま処理する光ラベルスイッチング機能を有する光中継装置を構成する光機能回路であって、光信号を分岐して出力する光分岐部と、光分岐部で出力された一方の光信号を用いて、ラベルを識別するラベル識別部と、光分岐部から出力されたもう一方の光信号に対して、ラベル識別部がラベルを識別するのに要する時間に応じた遅延量を与える、遅延導波路と、複数の出力ポートを有し、ラベル識別部が識別したラベルに対応する出力ポートから、遅延導波路から出力された光信号を出力することによって、光信号の経路を切り替える光経路切替部を備え、遅延導波路は、フォトニック結晶を具備する。
【0013】
第8の発明は、第1から第7の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶は、短パルスレーザで孔加工を施されていることを特徴とする。
【0014】
第9の発明は、第8の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶は、周期性を有する複数の孔と、周規性を乱す第2の孔を含むこと特徴とする。
【0015】
第10の発明は、第8および第9の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶は、シリコン層を有する導波層と、二酸化シリコン層を有するクラッドを含むことを特徴とする。
【0016】
第11の発明は、第9の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶において、第2の孔に短パルスを追加照射することにより、遅延を後加工調整できることを特徴とする。
【0017】
第12の発明は、第9の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶において、第2の孔に短パルスを追加照射することにより、透過率を後加工調整できることを特徴とする。
【0018】
第13の発明は、第9の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶において、第2の孔から離れたところに反射孔をあけることにより、透過率を後加工調整できることを特徴とする。
【0019】
第14の発明は、第10の発明に従属する発明であって、フォトニック結晶は、導波層、あるいはクラッドの温度を調整する温度調整部を含むことを特徴とする。
【0020】
第15の発明は、第1から第7の発明に従属する発明であって、遅延導波路は、出力の有無を切り替える光スイッチ部を含むことを特徴とする。
【0021】
第16の発明は、第1、または第3から第7の発明に従属する発明であって、光分岐部は、遅延導波路が有する遅延の一部を与える、遅延オフセット部を含むことを特徴とする。
【0022】
第17の発明は、第2の発明に従属する発明であって、波長分離部は、遅延導波路が有する遅延の一部を与える、遅延オフセット部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の光機能回路は、フォトニック結晶を含む遅延導波路という構成により、同じ光デバイス長で異なる遅延時間を実現できるため、回路規模が小型で、導波路のレイアウト変更の必要がない。さらに、調整孔の後加工により、回路製造後にも損失などの後調整が可能である、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態1では、光符号分割多重方式における、光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号分割多重回路に対して、本発明の光機能回路を適用した場合について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1における光符号多重回路の構成を示すブロック図である。図1において、光符号多重回路は、光分岐部11と、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nと、光合波部13で構成されている。さらに、遅延導波路12−m(mは1からNの整数)は、直列に接続されたフォトニック結晶121を含んでいる。以下に、図1に示す光符号多重回路の動作を説明する。
【0027】
光分岐部11は、入力される光信号をN個に分岐して出力する。第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nは、所定の符号系列において、本光符号多重回路に対して、予め割り当てられた符号に応じてそれぞれ所定の遅延量を与えて、N個の光遅延信号を出力する。図1には示していないが、第n(nは、1からN−1の自然数)の遅延導波路12−nの構成は、第Nの遅延導波路12−Nの構成に準ずる。光合波部13は、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nの出力端子から出力される、N個の光遅延信号を合波して出力する。以上の構成により、光分岐数N、およびN個の遅延導波路の所定の遅延量を調整することによって1個のパルスが光分岐部11に入射すると、N個のパルス列に分けられ、所定の符号系列が構成され、光合波部13から時間軸上でスペクトル拡散された光信号(出力信号)が発生される。図1では、1パルスの入力信号がMビット(1の数がN個)のパルス列に変換されている様子を示している。図1の出力信号のパルス列は、遅延量が短い方から数えて1、2、・・・・、N−1、N番目の遅延導波路によって、拡散変調されている様子を表している。
【0028】
なお、光符号分割多重方式においては、送信側に上記の光符号多重回路を用い、光ファイバで伝送した後、受信側でスペクトル逆拡散を行うことによってデータを復元する。このとき、送信側の符号に対応する構成の逆拡散回路(整合フィルタ)を用いた場合のみ相関ピークが得られることによってデータが復元できる。このように、データが復元できる原理については、特許文献1の図7の従来例などに説明されている。
【0029】
つづいて、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nを構成する、フォトニック結晶121について詳しく説明する。図2は、フォトニック結晶121の模式図の一例を示す。図2において、フォトニック結晶121は、フェムト秒レーザのような超短パルスレーザで、光導波路上に、1次元方向に周期性を有する複数の円孔122を加工し、さらにその中心領域にその周期性を乱す第2の孔(調整孔123)を施している。ここで、円孔122や調整孔123は、透過させたい光信号の波長(例えば、1550nm帯)に対して、充分小さい直径を持つものである。これによって、図2に示すように、微小共振現象が発生し、パルスの遅延を伴うため、結果としてフォトニック結晶121は光遅延素子として機能する。このような光遅延素子としてのフォトニック結晶121を直列に接続することによって、図1に示す第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nの各々の所定の遅延を実現することができる。
【0030】
なお、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nは、各光遅延量に対応して異なる構成(孔の周期や数)のフォトニック結晶121を備えても良いが、同一の光遅延量、同一の構成のフォトニック結晶121を基本単位として、これを複数個直列に接続することによっても実現可能である。例えば、1個のフォトニック結晶121が1psの遅延を有する場合、第Nの遅延導波路12−Nはk個のフォトニック結晶121を接続する必要がある。ここで、フォトニック結晶121は、主に、光を透過させる導波層とそれを支えるクラッドから成り、例えば、導波層はシリコンを材料とし、クラッドは酸化シリコンを材料として構成できる。
【0031】
また、図1、および図2において、円孔122と調整孔123の形態を1次元に配列された円形孔として説明したが、同様の遅延効果が得られれば、2次元配列や、楕円や三角形など任意の孔形状であっても、異なる孔形状の組み合わせとしても良い。上述の短パルスレーザを用いた孔加工技術に関しては、特許文献2や非特許文献1に詳細が説明されている。
【0032】
なお、図1においては、所定の遅延量を第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nの各々で有しているが、光分岐部11の中に予め遅延の一部を与える遅延のオフセット部を設けることによって、第1から第Nの遅延導波路12−1から12−Nに含まれるフォトニック結晶の数を削減しても良い。
【0033】
なお、以上の説明では、単一波長の光信号のスペクトル拡散について説明した。さらに、光分岐部11の代わりに波長分離フィルタを用いることによって、広い波長帯域を有する光信号に対して、分離された各波長の光信号にそれぞれ異なる遅延量を与えることによって、スペクトル拡散を行うことができる。
【0034】
ここで、1ps程度の遅延を得るためには、例えば、従来の光導波路の伝搬遅延を利用する場合は、数百μmの光路差が必要であった。しかしながら、上記のレーザ加工技術を用いたフォトニック結晶の場合では、数十μm程度の小型の回路規模で同程度の遅延が実現できる、という効果を有する。
【0035】
また、図7に示した、光ファイバの伝搬遅延を利用した従来の光符号分割多重回路では、異なる長さの光ファイバを効率よくレイアウトするのが難しい。一方、図1に示した、本発明の遅延導波路は同じ光デバイス長で、そこに含まれるフォトニック結晶の孔加工の違いによって遅延時間差を実現するため、レイアウト変更の必要がない。さらに、図2の調整孔123の後加工により、回路製造後にも損失などの後調整が可能である、という効果を有する。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態2では、光時分割多重方式において、N個のデータ信号の時系列多重、および分離を行う光時分割多重回路に対して、本発明の光機能回路を適用した場合について説明する。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態2における光時分割多重回路の構成を示すブロック図である。ここでは、N=4の場合、即ち4個のデータ信号を光時分割多重する回路を示している。図3において、光時分割多重回路は、クロック発生部31と、クロック分岐部32と、第1から第4のクロック合波部33−1から33−4と、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4と、光合波部13で構成している。さらに、遅延導波路12−m(mは1から4の自然数)は、直列に接続されたフォトニック結晶121を含んでいる。以下、図3に示す光時分割多重回路の動作を説明する。図3において、図1、及び図7と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0038】
図3に示すように、第1から第4までのデータ信号が入力されている。クロック発生部31は、所定のクロック信号を発生する。クロック分岐部32は、クロック信号を4分岐して出力する。第mのクロック合波部33−mは、第mのデータ信号とクロック分岐部32から出力されたクロック信号を合波して出力する。第mの遅延導波路12−mは、第mのクロック合波部33−mから出力された光信号に対して、最小遅延量τのm倍(m×τ)の遅延を与えて出力する。なお、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4を構成する、フォトニック結晶121については、実施の形態1の説明に準ずる。光合波部13は、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4の出力端子から出力される、4波の光信号を合波して出力する。以上の動作により、第1から第4までのデータ信号の時分割多重信号が、光合波部13から出力される。例えば、N=4で、データ信号が40Gbpsの場合、光時分割多重された信号は160Gbpsとなる。
【0039】
(実施の形態3)
実施の形態3では、4局のフェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路に対して、本発明の光機能回路を適用した場合について説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態3におけるフェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路の構成を示すブロック図である。図4において、フェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路は、無線光変換部41と、光分岐部11と、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4と、第1から第4の光無線変換部43−1から43−4と、第1から第4のアレイアンテナ44−1から44−4とで構成されている。さらに、遅延導波路12−m(mは1から4の整数)は、直列に接続されたフォトニック結晶121を含んでいる。以下、図4に示すフェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路の動作を説明する。図1から図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0041】
無線光変換部41は、入力される無線信号を光信号に変換する。光分岐部11は、光信号を4分岐して出力する。第mの遅延導波路12−mは、光分岐部11の出力端子に対応して接続され、光分岐部11から出力された光信号の位相がそれぞれ異なるように出力する。ここで、第mの遅延導波路の遅延は、入力される無線信号の位相が360度/アレイアンテナの局数毎(すなわち、図4の例では90度ずつ)異なるように、遅延量をτ時間ずつシフトする。なお、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4を構成する、フォトニック結晶121については、実施の形態1の説明に準ずる。第mの光無線変換部43−mは、第mの遅延導波路12−mに対応して接続され、第mの遅延導波路12−mから出力された光信号を無線信号に変換する。第mのアレイアンテナ44−mは、光無線変換部43−mに対応して接続され、光無線変換部43−mから出力される無線信号を空間的に異なる方向に放射する。以上の動作により、無線光変換部41に入力された無線信号は、第1から第4のアレイアンテナ44−1から44−4から、90度ずつ異なる方向に放射される。
【0042】
(実施の形態4)
実施の形態4では、ディジタル波形の光信号をアナログ波形の光信号に変換して出力する光ディジタル−アナログ変換回路に対して、本発明の光機能回路を適用した場合について説明する。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態4における光ディジタル−アナログ変換回路の構成を示すブロック図である。図5は、2値のディジタル波形の光信号を、多値のアナログ波形の光信号に変換する例を示す。図5において、光ディジタル−アナログ変換回路は、光分岐部11と、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4と、第1から第4の重み付け部50−1から50−4と、光合波部13とで構成される。さらに、遅延導波路12−m(mは1から4の自然数)は、直列に接続されたフォトニック結晶121を含んでいる。以下、図5に示す光ディジタル−アナログ変換回路の動作を説明する。図5において、図1から図4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0044】
光分岐部11は、入力されるディジタル波形の光信号を4分岐して出力する。第mの遅延導波路12−mは、光分岐部11から出力される、ディジタル波形の光信号に対して、最小遅延量τのm倍(m×τ)の遅延を与えて、第mの光遅延信号を出力する。なお、第1から第4の遅延導波路12−1から12−4を構成する、フォトニック結晶121については、実施の形態1の説明に準ずる。第mの重み付け部50−mは、第mの遅延導波路12−mから出力された、第mの光遅延信号が他の光遅延信号と所定の振幅比になるように、振幅を調整して出力する。図5では、第1から第4の光遅延信号の振幅比が1/4 : 1/2 : 1 : 1/8になる例を示している。光合波部13は、第1から第4の重み付け部50−1から50−4から出力された4波の光遅延信号を、時間ゲートで位相をそろえて足し合わせることによって、多値のアナログ波形の光信号を出力する。以上の動作によって、2値の光強度で4ビットを表現する、ディジタル波形の光信号は、所定の時間ゲートで検波することによって、多値の光強度で1ビットを表現する、アナログ波形の光信号に変換される。このような光ディジタル−アナログ変換回路は、ディジタル波形の超高速の光パルスパターンを、比較的低速、かつアナログ波形を識別できる回路で受信するなどの用途に用いられる。
【0045】
(実施の形態5)
実施の形態5では、光信号に含まれるラベル(経路情報など)を光のまま処理する光ラベルスイッチングにおける光中継装置に対して、本発明の光機能回路を適用した場合について説明する。ここで、光ラベルスイッチングとは、光信号として伝送されているデータ信号を光電気変換することなく、ラベルのみを識別することによって、データ信号の経路を切り替える技術を指している。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態5における光中継装置の構成を示すブロック図である。図6において、光中継装置は、光分岐部11と、遅延導波路12−1と、ラベル識別部60と、光経路切替部61とで構成されている。さらに、遅延導波路12−1は、直列に接続されたフォトニック結晶121を含んでいる。以下に、図6に示す光中継装置の動作を説明する。図6において、図1から図5、および図7と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0047】
光分岐部11は、入力される光信号を分岐して出力する。ラベル識別部60は、光分岐部11で分岐された一方の光信号を用いて、ラベルを識別する。ここで、ラベルとは宛先情報や経路情報などを含む。ラベルとデータ信号の多重方法は、サブキャリア多重など知られているがここでは特に限定しない。遅延導波路12−1は、光分岐部11から出力されたもう一方の光信号に対して、ラベル識別部60がラベルを識別するのに要する時間に応じた遅延時間(k×τ)を与えて、光信号を出力する。光経路切替部61は、複数の出力ポートを有し、ラベル識別部60が識別したラベルに基づく命令に従って、遅延導波路12−1から出力された光信号を所定の出力ポートに出力する。以上の動作によって、光分岐部11に入力された入力信号の内、ラベル1が付与されたデータ1のパケットは所望の経路に対応して、光経路切替部61の出力ポート1から出力される。一方、ラベル2が付与されたデータ2のパケットは別の経路に対応して、光経路切替部61の出力ポート2から出力される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかる光機能回路は、小型な回路規模で、導波路のレイアウト変更が必要なく、回路製造上の歩留まり率の高いという効果を有し、光符号分割多重回路として有用である。また、光時分割多重回路、フェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路、光ディジタル―アナログ変換回路、光ラベルスイッチング機能を有する光中継装置の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1における光符号分割多重回路の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶の模式図
【図3】本発明の実施の形態2における光時分割多重回路の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態3におけるフェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態4における光ディジタル−アナログ変換回路の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態5における光中継装置の構成を示すブロック図
【図7】従来の光符号分割多重回路の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0050】
11 光分岐部
12 遅延導波路
121 フォトニック結晶
13 光合波部
122 円孔
123 調整孔
31 クロック発生部
32 クロック分岐部
33 クロック合波部
41 無線光変換部
43 光無線変換部
44 アレイアンテナ
50 重み付け部
60 ラベル識別部
61 光経路切替部
70 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光符号分割多重方式において、光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号多重回路を構成する光機能回路であって、
1対N(1入力端子対N出力端子。Nは正の整数。以下同様。)の光分岐部と、
前記光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の符号系列に応じて互いに異なる遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、
N対1(N入力端子対1出力端子)の光合波部を備え、
前記遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項2】
光符号分割多重方式において、広い波長帯域を有する光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号多重回路を構成する光機能回路であって、
入力された光信号を互いに異なる波長に分離して出力する、1対Nの波長分離部と、
光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の符号系列に応じて互いに異なる遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、
N対1の光合波部を備え、
前記遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項3】
光符号分割多重方式において、広い波長帯域を有する光信号のスペクトル拡散、および逆拡散を行う光符号多重回路を構成する光機能回路であって、
1対Nの光分岐部と、
前記光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の符号系列に応じて互いに異なる遅延量を持ち、かつ入力された光信号のうち互いに異なる波長のみを透過させる、N本の遅延導波路と、
N対1の光合波部を備え、
前記遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項4】
光時分割多重方式において、N個の光データ信号の時系列多重、および分離を行う光時分割多重回路を構成する光機能回路であって、
光クロック信号を発生するクロック発生部と、
前記光クロック信号をN個に光分岐して出力するクロック分岐部と、
各前記光データ信号と対応する前記光クロック信号を、それぞれ光合波する、N個のクロック合波部と、
各前記クロック合波部に各々対応して接続され、互いに異なる遅延量を持ち、かつ前記遅延量が所定の最小遅延量の整数倍である、N本の遅延導波路と、
前記N本の遅延導波路に接続される、N対1の光合波部を備え、
前記遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項5】
フェーズドアレイアンテナ用光位相制御回路を構成する光機能回路であって、
無線信号を光信号に変換する無線光変換部と、
前記無線光変換部から出力される前記光信号をN個に分岐して出力する、1対Nの光分岐部と、
前記光分岐部の第n(1からNまでの整数)の出力端子に各々対応して接続され、所定の遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、
前記遅延導波路に各々対応して接続され、前記遅延導波路から出力された光信号を無線信号に変換する、N個の光無線変換部と、
前記光無線変換部に各々対応して接続され、前記N本の遅延導波路における所定の遅延量の組み合わせに応じて、異なる方向に前記無線信号を空間的に放射する、N個のアレイアンテナを備え、
前記遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項6】
ディジタル波形の光信号をアナログ波形の光信号に変換して出力する光ディジタル−アナログ変換回路を構成する光機能回路であって、
前記ディジタル波形の光信号をN個に分岐して出力する、1対Nの光分岐部と、
前記光分岐部の第nの出力端子に各々対応して接続され、互いに異なる遅延量を持つ、N本の遅延導波路と、
前記N本の遅延導波路から出力された、N個の前記光信号に対して、所定の振幅比を与える、N個の重み付け部と、
前記N個の重み付け部から出力された、N個の前記光信号を合波することによって、所望のアナログ波形の光信号を出力する、N対1の光合波部を備え、
前記遅延導波路の各々にフォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項7】
光信号に含まれるラベル(経路情報など)を光のまま処理する光ラベル スイッチング機能を有する光中継装置を構成する光機能回路であって、
前記光信号を分岐して出力する光分岐部と、
前記光分岐部で出力された一方の前記光信号を用いて、前記ラベルを識別するラベル識別部と、
前記光分岐部から出力されたもう一方の前記光信号に対して、前記ラベル識別部が前記ラベルを識別するのに要する時間に応じた遅延量を与える、遅延導波路と、
複数の出力ポートを有し、前記ラベル識別部が識別した前記ラベルに対応する出力ポートから、前記遅延導波路から出力された前記光信号を出力することによって、前記光信号の経路を切り替える光経路切替部を備え、
前記遅延導波路は、フォトニック結晶を具備することを特徴とする、光機能回路。
【請求項8】
前記フォトニック結晶は、短パルスレーザで孔加工を施されていることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1項に記載の光機能回路。
【請求項9】
前記フォトニック結晶は、周期性を有する複数の孔と、
前記周規性を乱す第2の孔を含むこと特徴とする、
請求項8に記載の光機能回路。
【請求項10】
前記フォトニック結晶は、
シリコン層を有する導波層と、
二酸化シリコン層を有するクラッドを含むことを特徴とする、
請求項8または9に記載の光機能回路。
【請求項11】
前記フォトニック結晶において、
前記第2の孔に短パルスを追加照射することにより、遅延を後加工調整できることを特徴とする、
請求項9に記載の光機能回路。
【請求項12】
前記フォトニック結晶において、
前記第2の孔に短パルスを追加照射することにより、透過率を後加工調整できることを特徴とする、
請求項9に記載の光機能回路。
【請求項13】
前記フォトニック結晶において、
前記第2の孔から離れたところに反射孔をあけることにより、透過率を後加工調整できることを特徴とする、
請求項9に記載の光機能回路。
【請求項14】
前記フォトニック結晶は、前記導波層、あるいは前記クラッドの温度を調整する温度調整部を含むことを特徴とする、
請求項10に記載の光機能回路。
【請求項15】
前記遅延導波路は、出力の有無を切り替える光スイッチ部を含むことを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1項に記載の光機能回路。
【請求項16】
前記光分岐部は、
前記遅延導波路が有する遅延の一部を与える、遅延オフセット部を含むことを特徴とする、請求項1、または3から7のいずれか1項に記載の光機能回路。
【請求項17】
前記波長分離部は、
前記遅延導波路が有する遅延の一部を与える、遅延オフセット部を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光機能回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−60615(P2008−60615A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−2715(P2004−2715)
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】