説明

光源装置及びプロジェクター

【課題】反射ミラーを高精度で保持することで光利用効率及び信頼性の高い光源装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】本体部5と、光源12と、光源12の各々から射出された光を反射する反射ミラー3aと、反射ミラー3aの端部を保持する保持部材と、を備えた光源装置10に関する。反射ミラー3aは、本体部5に接着された保持部材を介して本体部5に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプロジェクターのような、光源系と表示系よりなる光学系統では、光源からの射出光が表示系で有効に利用されることが求められる。
このような光学系統において、光源光の表示系での利用効率を示す指標としてエテンデュ(Etendue)が知られている。エテンデュは、光源の発光面積と、光源から射出される光の放射立体角との積であり、光源から射出された光の空間的な広がりを表す。したがって、このエテンデュが小さい程、光源からの射出光が狭い放射立体角の中に収束し、表示系で有効利用される角度範囲の中に収まる率(光利用効率)が高くなることを意味する。
【0003】
一方、プロジェクター等に用いられる光源装置として、発光量を増やすために複数の発光ダイオードを平面アレイ状に配置したものが知られている。しかし、このような光源装置は、発光面積が広いため、エテンデュが大きく、光利用効率が低いという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、複数の発光素子を、その励起光が一点に集光するように配設するとともに、その励起光の集光位置に蛍光体を配設することで、光利用効率を高めた光源装置が提案されている。この光源装置は、各発光素子に対応する複数の反射ミラーを保持するミラー保持部材を用いて発光素子から出射された励起光が上記反射ミラーで反射されることで蛍光体に導かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−76781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、反射ミラーがミラー保持部材に対して裏面で接着された構造となっているため、反射ミラーとミラー保持部材との間に塗布された接着剤の厚みにバラつきが生じているおそれがある。このような厚みのバラつきが生じていると、接着剤の硬化収縮、或いは熱膨張によって反射ミラーの位置が変化するため、ミラーの位置姿勢精度が低下し、信頼性及び光利用効率が得られないおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、反射ミラーを高精度で保持することで光利用効率及び信頼性の高い光源装置及びプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の光源装置は、本体部と、光源と、前記光源の各々から射出された光を反射する反射ミラーと、前記反射ミラーの端部を保持する保持部材と、を備えた光源装置であって、前記反射ミラーは、前記本体部に接着された前記保持部材を介して当該本体部に保持されることを特徴とする。
【0009】
本発明の光源装置によれば、反射ミラーが保持部材を介して本体部に間接的に取り付けられるので、反射ミラーに接着剤が直接塗布されることがない。よって、保持部材を本体部に接着する接着剤の熱膨張が生じた場合であっても、反射ミラーの反射面を回転させる方向への姿勢ズレが生じるのを抑えることができる。したがって、反射ミラーが高精度で保持されるので、光源から出射された光を所望の点に集光させることができ、光利用効率及び信頼性の高いものを提供できる。
【0010】
また、上記光源装置においては、前記保持部材は、短冊状からなる前記反射ミラーの長手方向における端部を保持するのが好ましい。
この構成によれば、保持部材により反射ミラーの両端部が保持されるので、反射ミラーの組み立て時の取付角度の精度を出しやすくなる。よって、反射ミラーが本体部に対して高精度で組み込まれたものとなる。
【0011】
また、上記光源装置においては、前記保持部材は、当該保持部材のミラー保持部の外側に張り出した張出部を有し、該張出部に形成された開口に設けられた接着剤を介して前記本体部に接着されるのが好ましい。
この構成によれば、ミラー保持部の外側に張り出した張出部に形成された開口に接着剤が塗布されるので、接着剤の塗布位置と反射ミラーとを離間させた構造を実現できる。これにより、接着剤に硬化収縮或いは熱膨張が生じた場合における反射ミラーの姿勢ズレへの影響を抑えることができる。
【0012】
また、上記光源装置においては、前記本体部は、複数の前記保持部材間を架け渡されるように設けられた溝部を有し、前記保持部材及び前記本体部を接着する接着剤の一部は前記溝部に入り込んだ状態とされているのが好ましい。
この構成によれば、本体部に保持部材を組み込んだ後、本体部の溝部に接着剤を流すことで保持部材と本体部との接着作業を効率的に行うことができ、装置の組み立て性を向上させることができる。
【0013】
また、上記光源装置においては、前記保持部材は、前記反射ミラーに押圧力を付与するバネ部を含むのが好ましい。
この構成によれば、例えば装置駆動時の熱によって反射ミラーが熱膨張した場合であっても、熱膨張による反射ミラーの変形量をバネ部が吸収するので、反射ミラーに応力集中する若しくは、その応力集中により反射ミラーの姿勢が変化するのを防止することができる。また、保持部材のバネ部によって反射ミラーに押圧力を付与した状態とされるので、反射ミラーが保持部材に良好に保持される。
【0014】
また、上記光源装置においては、前記保持部材のミラー保持面には、前記バネ部との間で前記反射ミラーを挟持するボスが設けられるのが好ましい。
この構成によれば、バネ部とボスとで挟持することで反射ミラーを良好に保持することができる。
【0015】
また、上記光源装置においては、前記バネ部は、複数の前記ボスの内側を押さえるように配置されているのが好ましい。
この構成によれば、バネ部が複数のボスの内側を押さえるので、反射ミラーを安定的に保持することができる。
【0016】
また、上記光源装置においては、前記バネ部の先端は、前記反射ミラーから離間する方向に折り曲げられているのが好ましい。
この構成によれば、バネ部の先端が反射ミラーから離間する方向に折り曲げられているので、保持部材に反射ミラーを挿入し易くすることができる。よって、保持部材に対する反射ミラーの組み立て性を向上させることができる。
【0017】
また、上記光源装置においては、前記保持部材は、前記反射ミラーの両端部を保持するのが好ましい。
この構成によれば、保持部材が反射ミラーの両端部が保持されるので、反射ミラーを本体部に対して高精度且つ強固に保持することができる。
【0018】
また、上記光源装置においては、前記保持部材は、前記反射ミラーとの間に隙間を有するのが好ましい。
この構成によれば、保持部材が隙間を有した状態で反射ミラーを保持するので、保持部材或いは反射ミラーに熱膨張が生じた場合であっても、反射ミラーと保持部材とが干渉することが防止されて反射ミラーの姿勢ズレの発生を防止できる。
【0019】
また、上記光源装置においては、前記本体部は、隙間を生じさせた状態で複数の前記ミラーを保持するのが好ましい。
この構成によれば、複数の反射ミラー間に隙間が生じているので、反射ミラーの両面が空気に接した状態となる。よって、反射ミラー間の風通りが向上することで反射ミラー或いは本体部における放熱性を高めることができる。
【0020】
本発明のプロジェクターは、上記の光源装置と、前記光源装置から射出された前記蛍光を画像信号で変調する光変調素子と、前記光変調素子により変調された前記蛍光を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明のプロジェクターによれば、光利用効率及び信頼性の高い光源装置を備えるので、良好な画像を表示する信頼性の高いプロジェクターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】プロジェクターの光学系を示す模式図。
【図2】光源装置の概略構成を示す断面図。
【図3】反射ミラーユニットの概略構成を示す図。
【図4】回転蛍光板の構成を示す斜視図。
【図5】取付ステーの詳細な構成を示す斜視図。
【図6】反射ミラーを保持した際の取付ステーの断面構成を示す図。
【図7】変形例に係る本体部の側面の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造における縮尺や数等が異なっている。
【0024】
図1は、本発明の光源装置が適用された照明装置を含むプロジェクターの光学系を示す模式図である。図1に示すように、プロジェクター100は、照明装置10Aと、色分離導光光学系20と、光変調装置としての液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bと、クロスダイクロイックプリズム50及び投写光学系60と、を備えている。照明装置10Aは、光源装置10、第1集光レンズ19、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、及び平行化レンズ70を備えている。すなわち、光源装置10から射出される励起光ELの光路上には、第1集光レンズ19、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、平行化レンズ70がこの順に配置されている。
【0025】
図2は光源装置10の概略構成を示す断面図である。図2に示されるように、光源装置10は、励起光源ユニット1と、コリメートレンズユニット2と、反射ミラーユニット3とを含んでいる。励起光源ユニット1は、基台11上に複数のレーザー光源(光源)12が行方向及び列方向に沿って2次元配列されたレーザー光源アレイである。ここで、列方向とは図2の正面視上下方向を指し、行方向とはレーザー光源12が配列された平面における列方向と直交する方向(紙面貫通方向)を指す。
【0026】
レーザー光源12は、後述する回転蛍光板30が備える蛍光物質を励起させる励起光ELとして、青色(発光強度のピーク:450nm付近)のレーザー光を射出する。なお、レーザー光源12は、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、450nm以外のピーク波長を有する色光を射出する励起光源であっても構わない。
【0027】
コリメートレンズユニット2は、励起光源ユニット1のレーザー光源12の各々に対応するように設けられた複数のコリメートレンズ2aを備えている。コリメートレンズ2aは各レーザー光源12から射出された励起光ELを指向性の高い平行光に変換するためのものである。
【0028】
反射ミラーユニット3は、コリメートレンズユニット2で平行化された励起光の光軸上に励起光源ユニット1の列数と同数の反射ミラー3aと、これら複数の反射ミラー3aが取り付けられる本体部5とを備えている。反射ミラー3aは、後述のように短冊状のミラーから構成されるものである。すなわち、励起光源ユニット1における同列のレーザー光源12から射出された励起光ELは、同一の反射ミラー3aによって反射されるようになっている。
【0029】
色分離導光光学系20は、ダイクロイックミラー21、ダイクロイックミラー22、反射ミラー23、反射ミラー24、反射ミラー25及びリレーレンズ26を備えている。色分離導光光学系20は、光源装置10からの光を赤色光、緑色光及び青色光に分離し、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bに導光する機能を有する。
【0030】
ダイクロイックミラー21、ダイクロイックミラー22は、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を透過させる波長選択透過膜が形成されたミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー21は、青色光成分を透過させ、赤色光成分及び緑色光成分を反射する。ダイクロイックミラー22は、緑色光成分を反射して、赤色光成分を透過させる。
【0031】
反射ミラー23、反射ミラー24、反射ミラー25は、入射した光を反射するミラーである。具体的には、反射ミラー23は、ダイクロイックミラー21を透過した青色光成分を反射する。反射ミラー24、反射ミラー25は、ダイクロイックミラー22を透過した赤色光成分を反射する。
【0032】
ダイクロイックミラー21を透過した青色光は、反射ミラー23で反射され、青色光用の液晶光変調装置40Bの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー22でさらに反射され、緑色光用の液晶光変調装置40Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー22を透過した赤色光は、入射側の反射ミラー24、リレーレンズ26、射出側の反射ミラー25を経て赤色光用の液晶光変調装置40Rの画像形成領域に入射する。
【0033】
液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、通常知られたものを用いることができ、例えば、液晶素子41と液晶素子41を挟持する偏光素子42、偏光素子43とを有した、透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。偏光素子42、偏光素子43は、例えば透過軸が互いに直交する構成(クロスニコル配置)となっている。
【0034】
液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、入射された色光を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、照明装置10Aの照明対象となる。これら液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G及び液晶光変調装置40Bによって、入射された各色光の光変調が行われる。
【0035】
例えば、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、一対の透明基板に液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に応じて、入射側偏光板82から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0036】
クロスダイクロイックプリズム50は、偏光素子43から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム50は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなしている。直角プリズムを貼り合せた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向が揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0037】
クロスダイクロイックプリズム50から射出されたカラー画像は、投写光学系60によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0038】
図3は反射ミラーユニット3の概略構成を示す図である。図3に示されるように、反射ミラーユニット3の各反射ミラー3aは、取付ステー(保持部材)8を介して本体部5に階段状に取り付けられている。具体的に、各反射ミラー3aは、励起光源ユニット1から射出される励起光ELの光軸に対して45度の角度をなして階段状に配置されることにより構成されている(図2参照)。また、各反射ミラー3aは、当該反射ミラー3aからの反射光相互の間隔を小さくするように、すなわち励起光源ユニット1から射出される励起光ELの光軸方向に各反射ミラー3aの相互間隔を詰めて配置されている。
【0039】
このような構成に基づき、反射ミラーユニット3は、励起光源ユニット1の各レーザー光源12から射出された励起光ELの列方向における励起光EL間のピッチを狭めることで光線束の断面積を縮小するようになっている。また、光源装置10は、励起光ELの光線束の断面積を縮小することができるため、大きなレンズを配置することなく高密度な光線束を射出可能となっている。したがって、励起光ELを高出力で照射することができ、光源装置10のエテンデュを小さくすることができる。
【0040】
反射ミラー3aを保持する取付ステー8は接着剤28を介して本体部5に接着されている。なお、接着剤28としては、紫外線硬化型のものが用いられる。
本実施形態においては、取付ステー8を介して反射ミラー3aの両端部が本体部5に取り付けられている。これにより、反射ミラー3aが本体部5に確実に保持されたものとなっている。このように本実施形態では、取付ステー8を介して反射ミラー3aが本体部5に間接的に保持されたものとなっている。
【0041】
本体部5は板金部材から構成されるものであって、側面に取付ステー8に対応した大きさを有する複数の開口5aが形成されている。取付ステー8は、外側から開口5aに挿入されることで反射ミラー3aを本体部5の内部の所定位置に保持している。また、本体部5は、上述のようにして光線束の断面積を縮小した励起光ELを第1集光レンズ19に向けて射出する射出用開口部5bが形成されている。
【0042】
第1集光レンズ19は、例えば凸レンズからなる。第1集光レンズ19は、光源装置10から射出されるレーザー光の光線軸上に配置され、光源装置10から射出された励起光EL(複数のレーザー光)を、集光スポット径が1mm以下となるように集光する。
【0043】
回転蛍光板30はいわゆる透過型の回転蛍光板である。回転蛍光板30は、図4に示すように、モーター33により回転駆動される円板状の基板31の回転方向に沿って、蛍光体32が形成されてなる。基板31の回転軸はZ軸と平行な方向である。蛍光体32が形成されている領域は、励起光ELが入射する領域S(以下、励起光入射領域Sと称す場合もある)を含む。基板31を回転駆動することにより、蛍光体32の励起光入射領域Sが時間的に変動される。
【0044】
基板31は、励起光ELを透過する材料よりなる。基板31の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂等を用いることができる。図示していないが、基板31の蛍光体32が設けられている面とは反対側の面には、誘電体多層膜が設けられている。誘電体多層膜はダイクロイックミラーとして機能するものであり、励起光ELである450nm付近の光は透過し、蛍光体32から射出される蛍光の波長範囲(490nm〜750nm)を含む490nm以上の光は反射するようになっている。なお、基板31の形状は、円板状に限るものではない。
【0045】
回転蛍光板30は、使用時において7500rpmで回転する。詳しい説明は省略するが、回転蛍光板30の直径は50mmであり、回転蛍光板30に入射する励起光ELの光軸が回転蛍光板30の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、回転蛍光板30は、励起光ELの集光スポットが約18m/秒で蛍光体32上を移動するような回転速度で回転する。
【0046】
このような回転蛍光板30では、蛍光体32に励起光ELが入射されると、蛍光体32の励起光入射領域Sに対応する部分が発熱する。そして、この発熱した部分(発熱部分)は、基板31が回転することにより、円周を描いて移動し、再び、励起光入射領域に戻るというサイクルを繰り返す。これにより、発熱部分が移動の過程で冷却されるようにしている。
【0047】
光源装置10から射出されたレーザー光(青色光)は、励起光ELとして前記誘電体多層膜を介して蛍光体32に入射し、蛍光体32は励起光ELが入射する側とは反対側に向けて蛍光(赤色光及び緑色光)を射出する。
【0048】
蛍光体32は、蛍光を発する蛍光体粒子を有しており、励起光EL(青色光)を吸収し、概ね490〜750nmの蛍光に変換する機能を有する。この蛍光には、緑色光(波長530nm付近)及び赤色光(波長630nm付近)が含まれる。
【0049】
蛍光体粒子は、光源装置10から射出される励起光ELを吸収し、蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子には、波長が約450nmの青色光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、励起光ELの一部を、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域まで含む光(黄色光)に変換して射出する。なお、励起光ELの一部は、上記黄色光に変換されないこともある。すなわち、光源装置10からは赤色、緑色、青色を含む白色光が射出されるようになっている。
【0050】
蛍光体粒子としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いることとしても良い。
【0051】
コリメート光学系85は、回転蛍光板30と第2集光レンズ90との間の光(励起光EL及び蛍光)の光路上に配置されている。コリメート光学系85は、回転蛍光板30からの光の広がり抑える第1レンズ81と、第1レンズ81から入射される光を平行化する第2レンズ82と、各レンズ同士を固定するベース部83を含んで構成されている。第1レンズ81は、例えば凸のメニスカスレンズからなり、第2レンズ82は、例えば凸レンズからなる。コリメート光学系85は、回転蛍光板30からの光を略平行化した状態で第2集光レンズ90に入射させる。
【0052】
第2集光レンズ90は、例えば凸レンズからなる。第2集光レンズ90は、コリメート光学系85(第2レンズ82)を透過する光の光線軸上(Z軸上)に配置され、コリメート光学系85を透過した光を集光する。
【0053】
第2集光レンズ90を透過した光は、ロッドインテグレーター80の一端側に入射する。ロッドインテグレーター80は、光路方向に延在する角柱状の光学部材であり、内部を透過する光に多重反射を生じさせることにより、第2集光レンズ90を透過した光を混合し、輝度分布を均一化するものである。ロッドインテグレーター80の光路方向に直交する断面形状は、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。
【0054】
ロッドインテグレーター80の他端側から射出された光は、平行化レンズ70により平行化され、照明装置10Aから射出される。
【0055】
続いて、反射ミラーユニット3の詳細な構成について説明する。
図5は取付ステー8の詳細な構成を示す斜視図であり、図6は反射ミラー3aを保持した際の取付ステー8の断面構成を示す図である。図5に示されるように、取付ステー8は、短冊状の反射ミラー3aを保持する保持部13と、該保持部13の外側に張り出した張出部14とを有している。
【0056】
保持部13は、反射ミラー3aに対して押圧力を付与する板バネ構造からなるバネ部15と、該バネ部15との間で反射ミラー3aを挟持する複数(本実施形態では3個)のボス27とを備えている。保持部13は、バネ部15によって反射ミラー3aに押圧力を付与することで反射ミラー3aを良好に保持している。
【0057】
このように、保持部13はバネ部15及びボス27によって反射ミラー3aを挟持することで当該反射ミラー3aを良好に保持している。本実施形態においては、バネ部15が反射ミラー3aを挟持した状態で複数のボス27の内側、具体的には中心に位置するように形成されている。これにより、取付ステー8は、バネ部15及び複数のボス27により挟持する反射ミラー3aを安定的に保持するようになっている。
【0058】
ところで、プロジェクター100の駆動時の熱によって反射ミラー3aが熱膨張するおそれがある。この場合においても、バネ部15が熱膨張による反射ミラー3aの変形を吸収するので、反射ミラー3aに応力集中若しくは、その応力集中により反射ミラー3aの保持姿勢が変化するといった不具合の発生が防止されたものとなる。
【0059】
また、バネ部15の先端には、反射ミラー3aから離間する方向に折り曲げられた折曲部15aが形成されている。これにより、取付ステー8に反射ミラー3aを挿入する際にバネ部15の先端が反射ミラー3aに引っ掛かるといった不具合の発生が防止され、反射ミラー3aの組み立て性を向上させることが可能となっている。
【0060】
また、図6に示すように、保持部13における反射ミラー3aの短手方向(同図左右方向)における幅は、反射ミラー3aよりも大きく設定されている。すなわち、取付ステー8(保持部13)は、反射ミラー3aとの間に隙間を生じさせるようにして保持している。これによれば、反射ミラー3a或いは取付ステー8に熱膨張が生じた場合であっても、反射ミラー3aと取付ステー8とが干渉することが防止されて反射ミラー3aの姿勢ズレの発生を防止できる。
【0061】
また、本体部5は、隙間を生じさせた状態で複数の反射ミラー3aを保持している。そのため、反射ミラー3aの両面(表面或いは裏面)が空気に接した状態となっている。これによれば、反射ミラー3a間の風通りが向上するので、反射ミラー3a或いは本体部5における放熱性を高めることができる。
【0062】
上記張出部14には開口14aが形成されており、この開口14aに塗布された接着剤28を介して取付ステー8が本体部5の側面に接着されている。具体的に、取付ステー8は、本体部5に形成された開口5aの外側から保持部13が挿入されることで張出部14が本体部5の側面に当接することで反射ミラー3aを本体部5の内部の所定位置に配置している。
【0063】
接着剤28は、本体部5の側面を露出する開口14aに塗布されている。そのため、この接着剤28に対しては後述の組み立て工程時に紫外線を良好に照射することが可能である。したがって、接着剤28は良好に硬化されており、接着剤28の未硬化による取付ステー8の接着不良といった問題の発生が防止されたものとなっている。
【0064】
また、張出部14には開口14aが2つ形成されているため、1箇所に塗布される接着剤28の量が抑えられており、上述の接着剤28の未硬化による不具合の発生が防止される。
【0065】
ここで、光源装置10の組み立て工程について説明する。本説明では、反射ミラーユニット3の組み立て方法を主体に述べる。
まず、反射ミラー3aを組み立て治具に仮止めする。この治具は複数の反射ミラー3aが夫々同一の傾きを有し、階段状となるように保持するものである。複数の反射ミラー3aは治具にセットされた状態において励起光源ユニット1の各レーザー光源12から射出される励起光ELの光軸と位置合わせがされた状態となっている。
【0066】
続いて、治具に仮止めした状態の反射ミラー3aを取付ステー8を用いて本体部5に取り付ける。具体的には、開口5a内に反射ミラー3aの両端部を臨ませるように治具と本体部5とを位置合わせし、取付ステー8の保持部13を本体部5の側面の外側から開口5a内に挿入する。これにより、保持部13のバネ部15及びボス27間に反射ミラー3aの端部が挿入される。
【0067】
ここで、バネ部15は、先端に折曲部15aが形成されているので、バネ部15の先端が反射ミラー3aに引っ掛かることがなく保持部13内に反射ミラー3aがスムーズに挿入させることができる。これにより、取付ステー8の張出部14が本体部5の側面に当接した状態となる。
【0068】
続いて、張出部14に形成された開口14aに接着剤28を塗布し、紫外線を照射することで接着剤28を硬化させる。このとき、開口14aは本体部5の側面に位置しているため、紫外線を良好に照射することができる。本実施形態では、治具に仮止めした状態で反射ミラー3aを保持する取付ステー8を本体部5に接着するので、接着剤28の硬化収縮によって反射ミラー3aの保持姿勢が変化することがない。よって、複数の反射ミラー3aを本体部5に対して所定の位置に精度良く取り付けることができる。
【0069】
上述のようにして、光源装置10を製造した後、第1集光レンズ19、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、及び平行化レンズ70を組み立てることで照明装置10Aが得られる。また、この照明装置10A、色分離導光光学系20、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40B、クロスダイクロイックプリズム50、及び投写光学系60を組み合わせることでプロジェクター100を製造できる。
【0070】
なお、取付ステー8間を架け渡されるように本体部5の側面に溝(溝部)105を設けた構成を採用することもできる。図7は本体部5の側面の構成を示す図である。図7に示されるように、本体部5の側面には、側面に取り付けられた取付ステー8の張出部14の開口14a間を連続させる溝105が形成されている。また、接着剤28は開口14a及び溝105内に入り込んだ状態に配置されている。
【0071】
この構成によれば、本体部5に取付ステー8を取り付けた状態で溝105の一端側から接着剤28を流し込むことで溝105を伝って全ての開口14aに接着剤を配置することができる。よって、接着剤28を塗布する作業を簡略化することができる。
【0072】
本実施形態に係る光源装置10によれば、反射ミラー3aが取付ステー8を介して本体部5に間接的に取り付けられるので、反射ミラー3aに接着剤28が直接塗布されることがない。また、取付ステー8が本体部5の側面に設けられた開口5aを介して取り付けられているので、仮に接着剤28に熱膨張や経時的な変化が生じた場合であっても、取付ステー8は本体部5に対する挿入方向、すなわち反射ミラー3aの長手方向のみにしか移動しない。よって、反射ミラー3aの回転方向における姿勢ズレを抑えることができる。
【0073】
よって、光源装置10は反射ミラー3aを高精度に保持できるので、第1集光レンズ19に対して励起光ELを高出力で射出することができるので、本光源装置10を含んだ照明装置10Aは蛍光体32を効率よく且つ明るく発光させて蛍光光を射出できる光利用効率の高い装置となる。
【0074】
また、取付ステー8は反射ミラー3aの長手方向における端部を保持するので、反射ミラー3aの短手方向における端部を保持する場合に比べて、本体部5に反射ミラー3aを組み込む際の位置ズレ量の管理が容易となる。よって、反射ミラー3aの組み込み時の取付角度の精度が出しやすくなり、反射ミラー3aを高精度で本体部5に組み込むことができる。
【0075】
本実施形態では、保持部13の外側に張り出した張出部14の開口14aに接着剤28を塗布する構造を採用している。これにより、接着剤28の塗布位置と保持部13に保持される反射ミラー3aとをできるだけ離間させることができる。したがって、接着剤28に熱膨張が生じた場合であっても、反射ミラー3aの姿勢ズレへの影響を抑えることができる。
【0076】
上記実施形態に係る光源装置10によれば、反射ミラー3aが高精度で保持されるので、高出力な励起光ELを回転蛍光板30の蛍光体32に照射することができ、蛍光体32を効率よく且つ明るく発光させて蛍光光を射出することができる。よって、プロジェクター100における照明装置として好適に利用することができる。
また、本実施形態に係るプロジェクター100によれば、上記光源装置10を含む照明装置10Aを備えるので、輝度及び照度の高い画像の投影を行うことができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
3a…反射ミラー、5…本体部、8…取付ステー(保持部材)、10…光源装置、12…レーザー光源(光源)14…張出部、14a…開口、15…バネ部、15a…折曲部、27…ボス、28…接着剤、40B…液晶光変調装置、40G…液晶光変調装置、40R…液晶光変調装置、60…投写光学系、100…プロジェクター、105…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
光源と、
前記光源から射出された光を反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーの端部を保持する保持部材と、を備えた光源装置であって、
前記反射ミラーは、前記本体部に接着された前記保持部材を介して当該本体部に取り付けられることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記保持部材は、短冊状からなる前記反射ミラーの長手方向における端部を保持することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記保持部材は、当該保持部材のミラー保持部の外側に張り出した張出部を有し、該張出部に形成された開口に設けられた接着剤を介して前記本体部に接着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記本体部は、複数の前記保持部材間を架け渡されるように設けられた溝部を有し、
前記保持部材及び前記本体部を接着する接着剤の一部は前記溝部に入り込んだ状態とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記反射ミラーに押圧力を付与するバネ部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記バネ部との間で前記反射ミラーを挟持するボスが設けられることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記バネ部は、複数の前記ボスの内側を押さえるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記バネ部の先端は、前記反射ミラーから離間する方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記保持部材は、前記反射ミラーの両端部を保持することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記保持部材は、前記反射ミラーとの間に隙間を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記本体部は、隙間を生じさせた状態で複数の前記ミラーを保持することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された前記蛍光を画像信号で変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された前記蛍光を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72942(P2013−72942A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210695(P2011−210695)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】