説明

光線路試験装置、及び、光線路試験システム

【課題】試験項目を減らすことなく簡易な構成の光線路試験装置を実現する。
【解決手段】光線路試験装置10は、共通ポート110cが光線路群から選択された対象光線路に接続されるWDMカプラ110と、WDMカプラ110の第1の分岐ポート110aに接続された光パルス試験器120であって、上記対象光線路に入力するパルス光を生成すると共に、上記対象光線路から取り出した上記パルス光の後方散乱光の波形を検出する光パルス試験器120と、WDMカプラ110の第2の分岐ポート110bに接続された光パワー測定器130であって、上記対象光線路から取り出した信号光のパワーを測定するための光パワー測定器130と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光線路を試験するための光線路試験装置、及び、そのような光線路試験装置を含む光線路試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークへの加入者が増加したことに伴い、アクセスネットワークを構成する光線路(光ファイバ)の保守を効率的に行うことが重要になってきている。非特許文献1には、収容局内に光線路試験装置(OTM:Optical Test Module)を設けることによって、光線路の保守を効率的に行うことが可能なアクセスネットワークが記載されている。
【0003】
非特許文献1に記載のアクセスネットワークの構成を図5に示す。同図に示すアクセスネットワーク50は、概略的に言えば、各家庭に配置されたONU(Optical Network Unit)51と、収容局に配置されたOLT(Optical Line Terminal)52とを、光ファイバ53で接続することによって実現された光ネットワークである。1台のOLT52には、光スプリッタ59を介して複数のONU51(1台を除いて図示省略)が接続される。
【0004】
図5(a)に示すように、収容局(1拠点)には、IDM(Integrated Distribution Module)架54およびIDM架54’を含む複数のIDM架が配備されており、光ファイバ53は、これらのIDM架54およびIDM架54’の何れかに引き込まれる。光ファイバ53には分波カプラ55が挿入され、上り(ONU51からOLT52に向かう)および下り(OLT52からONU51に向かう)の信号光が、分波カプラ55の2つの出力ポートから取り出される。
【0005】
IDM架には、光線路試験装置10’を収納したもの(IDM架54)と、光線路試験装置10’を収納していないもの(IDM架54’)とがある。光線路試験装置10’を収納したIDM架54に引き込まれた光ファイバ53から取り出された信号光は、そのIDM架54に収納されたファイバセレクタ群20’を介して、光線路試験装置10’に入力される。一方、光線路試験装置10’を収納していないIDM架54’に引き込まれた光ファイバ53から引き出された信号光は、そのIDM架54’に収納されたファイバセレクタ群20’を介して、上述したIDM架54に収納された光線路試験装置10’に入力される。
【0006】
IDM架54およびIDM架54’に収納されるファイバセレクタ群20’の構成例を、図5(b)に示す。図5(b)に示すように、IDM架54(IDM架54’)には、例えば、1台の親ファイバセレクタ20’aと3台の子ファイバセレクタ20’bとが収納される。親ファイバセレクタ20’aおよび子ファイバセレクタ20’bは、2000個程度の光線路側ポートを有しており、これらの光線路側ポートに1000本程度の光ファイバ53から引き出された1000対(2000本)程度の伝送用光ファイバを接続することができる。加えて、親ファイバセレクタ20’aは、3個の増設ポートを有しており、これらの増設ポートに3台の子ファイバセレクタ20’bを接続することができる。すなわち、ファイバセレクタ群20’を図5(b)に示すように構成した場合、1台のIDM架54(IDM架54’)に最大4000本程度の光ファイバ53を引き込むことができる。
【0007】
光線路試験装置10’は、光パルス試験(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)機能と光パワー測定(OPM:Optical Power Meter)機能とを有している。ここで、光パルス試験機能とは、光ファイバ53にパルス光を入力すると共に、光ファイバ53から取り出した、そのパルス光の後方散乱光の波形を検出する機能のことを指す。また、光パワー測定機能とは、光ファイバ53から取り出した光信号のパワーを検出する機能のことを指す。光線路試験装置10’は、検出した後方散乱光の波形、および、信号光のパワーに基づいて、光ファイバ53における物理的障害を検知する。なお、光線路試験装置10’から出射された試験光(波長1650nm)がONU51およびOLT52に入射しないよう、光ファイバ53の両端には、通常、試験光を選択的に遮断するフィルタ57〜58が挿入される。
【0008】
光パルス試験機能と光パワー測定機能とを有する光線路試験装置の構成を開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−124573号公報(2008年5月29日公開)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】”経済化AURORAで線路の保守を効率化! 光試験モジュール(OTM)の開発”、[Online]、[2010年9月30日検索]、インターネット<URL:http://times.ansl.ntt.co.jp/gijyutu/2003_06/Topic_02/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1に記載の光線路試験装置においては、試験項目が増えると、光測定器と接続するファイバセレクタを選択する測定器成端架選択装置の構造が複雑化し、光線路試験装置の製造コストが増大するという問題があった。また、試験項目の切り替え速度が遅く、光線路試験が長時間に及ぶという問題があった。
【0012】
この問題について、図6を参照してもう少し具体的に説明する。図6は、非特許文献1に記載の光線路試験装置10’の構成を示したブロック図である。光線路試験装置10’は、同図に示すように、光測定器(OTU:Optical Test Unit)100’と測定器成端架選択装置(FTES:Frame and Test Equipment Selector)200’とを含み、ファイバセレクタ群20’と共にIDM架54に収納される。そして、光線路試験装置10’が収納されたIDM架54は、光線路試験装置10’が収納されていない他のIDM架54’と共に、光線路試験システム1’を構成する。図6に示した光線路試験システム1’は、5本のIDM架を含んでいるため、合計20000本程度の光ファイバを試験対象とすることができる。
【0013】
光測定器100’は、光パルス試験器120’と光パワー測定器130’とを含んでいる。光パルス検出器120’は、(1)波長1650nmのパルス光を用いた光パルス試験、および、(2)波長1310nmのパルス光を用いた光パルス試験を行うためのものであり、分岐カプラ122’、光源123’、WDMカプラ124’、アバランシェ・フォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)125’、分岐カプラ126’、および光源127’により構成される。一方、光パワー測定器130’は、(3)波長1310nmの上り信号光の光パワー測定、および、(4)波長1550nmの下り信号光の光パワー測定を行うためのものであり、フォトダイオード(PD:Photodiode)133’により構成される。
【0014】
測定器成端架選択装置200’は、複数の光線路側ポートを備えている。図6においては、20個の光線路側ポートPA1〜PA20を備えた構成を例示している。同じIDM架54に収納された親ファイバセレクタ20’a、および、他のIDM架54’に収納された親ファイバセレクタ20’aは、それぞれ、測定器成端架選択装置200’の光線路側ポートPA1〜20の何れかに接続される。図6に示した例では、IDM架54およびIDM架54’に収納された5台の親ファイバセレクタ20’aが測定器成端架選択装置200’の光線路側ポートPA1〜PA5に接続されている。
【0015】
また、測定器成端架選択装置200’は、少なくとも3個の測定器側ポートPB1〜PB3を備えている(図6には、省略可能な3個の測定器側ポートPB4〜PB6を含め、合計6個の測定器側ポートPB1〜PB6を備えた構成を例示している)。測定器側ポートPB1は、光パルス試験に用いる波長1650nmのパルス波、および、その後方散乱光を入出力するためのポートである。また、測定器側ポートPB2は、光パルス試験に用いる波長1310nmのパルス波、および、その後方散乱光を入出力するためのポートである。また、測定器側ポートPB3は、光パワー測定に用いる波長1310nm(上り)および1550nm(下り)の信号光を出力するためのポートである。
【0016】
なお、測定器側ポートPB1に接続された光ファイバFB1には、波長1650nmの光(パルス光およびその後方散乱光)を選択的に透過するバンドパスフィルタ201’が挿入されている。また、測定器側ポートPB3に接続された光ファイバFB3は、WDMカプラ204’によって2本の光ファイバFB3a〜FB3bに分岐されている。そして、光ファイバFB3aには、波長1310nmの光(信号光)を選択的に透過するフィルタ202’が、また、光ファイバFB3bには、波長1550nmの光(信号光)を選択的に透過するフィルタ203’が、それぞれ挿入されている。
【0017】
測定器成端架選択装置200’は、試験項目に応じた測定器側光ファイバ(測定器側ポートPB1〜PB3に接続された4本の光ファイバFB1,FB2,FB3a,FB3bの何れか)を物理的に移動し、その末端を、試験対象とする光ファイバに応じた光線路側光ファイバ(光線路側ポートPA1〜PA20に接続された20本の光ファイバFA1〜FA20の何れか)の末端に接続する。例えば、ファイバセレクタ20’を介して光線路側ポートPA3に接続された(通信用)光ファイバ53に関して、波長1310nmのパルス光を用いた光パルス試験を行う場合、測定器成端架選択装置200’は、測定器側ポートPB2に接続された光ファイバFB2を移動し、その末端を光線路側ポートPA3に接続された光ファイバFA3の末端と接続する。
【0018】
このように、試験項目が4項目ある場合、測定器成端架選択装置200’は、4本の光ファイバ(図6における光ファイバFB1,FB2,FB3a,FB3b)を移動するためのファイバ移動機能を備えている必要がある。比較的使用頻度の少ない、波長1310nmのパルス光を用いた光パルス試験を省略するとしても、測定器成端架選択装置200’は、3本の光ファイバ(図6における光ファイバFB1,FB3a,FB3b)を移動するためのファイバ移動機構を備えている必要がある。一般に、試験項目がn項目ある場合、測定器成端架選択装置200’は、n本の光ファイバを移動するためのファイバ移動機能を備えている必要がある。上述した「測定器成端架選択装置の構造の複雑化」とは、主に、このファイバ移動機能の複雑化のことを指す。
【0019】
また、上述したように試験項目の切り替え速度が遅いのは、試験項目の切り替えを行うたびに、測定器成端架選択装置200’において、切り替え前後の試験項目に対応する測定器側光ファイバを物理的に移動するプロセスが発生するためである。特に、実運用時には、光パルス試験から光パワー測定への切り替え、および、光パワー測定から光パルス試験への切り替え、を頻繁に行う必要がある。更に、光パワー測定においては、信号光の波長に応じて、光線路側光ファイバに接続する測定器側光ファイバ(図6における光ファイバFB3a、FB3b)を切り替える必要がある。従って、これらの切り替えを速やかに行うことができないと、光線路試験の長時間化の問題が生じ易い。
【0020】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、試験項目を減らすことなく測定器成端架選択装置の構造を単純化可能な、あるいは、試験項目を減らすことなく測定器成端架選択装置を省略可能な光線路試験装置を実現し、もって、光線路試験装置の製造コストを低下させると共に、光線路試験に要する時間の短縮を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明に係る光線路試験装置は、共通ポートが光線路群から選択された対象光線路に接続される光カプラと、上記光カプラの第1分岐ポートに接続された光パルス試験器であって、上記対象光線路に入力するパルス光を生成すると共に、上記対象光線路から取り出した、上記パルス光の後方散乱光の波形を検出する光パルス試験器と、上記光カプラの第2分岐ポートに接続された光パワー測定器であって、上記対象光線路から取り出した信号光のパワーを測定するための光パワー測定器と、を備えている。
【0022】
上記の構成によれば、対象光線路を上記光カプラの共通ポートと接続するだけで、対象光線路に関する光パルス試験および光パワー測定を行うことができる。したがって、光パルス試験を単一の波長に関して行う場合、測定器成端架選択装置を要さない。また、光パルス試験を複数の波長に関して行う場合であっても、非特許文献1に記載の光線路試験装置と比較して、測定器成端架選択装置におけるファイバ移動機構を単純化することができる。したがって、光線路試験装置の製造コストを低下させることができる。
【0023】
また、上記の構成によれば、試験項目を光パルス試験から光パワー測定に切り替える際、および、試験項目を光パワー試験から光パルス試験に切り替える際に、測定器成端架選択装置におけるファイバ移動機構を作動させる必要がないので、光線路試験に要する時間を短縮することができる。また、光パルス試験と光パワー測定とを同時に行えば、光線路試験に要する時間を更に短縮することができる。
【0024】
なお、測定器成端架選択装置の省略、あるいは、測定器成端架選択装置におけるファイバ移動機能の単純化による製造コストの低下分は、上記光線路試験装置において光カプラを設けることによる製造コストの増加分よりも大きいため、全体として製造コストを低下させることができる。
【0025】
本発明に係る光線路試験装置において、上記光パワー測定器は、共通ポートが上記光カプラの上記第2分岐ポートに接続された分波カプラと、該分波カプラの第1分岐ポートに接続された第1光検出器であって、第1の波長を有する信号光を電気信号に変換する第1光検出器と、該分波カプラの第2分岐ポートに接続された第2光検出器であって、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有する信号光を電気信号に変換する第2光検出器と、を含んでいる、ことが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、第1の波長を有する信号光に対する光パワー測定と第2の波長を有する光信号に対する光パワー測定とを行うことができる。しかも、これらの信号光は、何れも上記光カプラの共通ポートから入力されるので、測定器成端架選択装置におけるファイバ移動機構を複雑化する必要がない。また、上記2つの波長に関する光パワー測定は、測定器成端架選択装置を用いない構成であっても実行可能である。このように、上記の構成によれば、製造コストを上昇させることなく、2つの波長に関する光パワー測定を実行可能な光線路試験装置を実現することができる。
【0027】
本発明に係る光線路試験装置において、上記光パルス試験器は、共通ポートが上記光カプラの上記第1分岐ポートに接続された分岐カプラと、該分岐カプラの第1分岐ポートに接続された光源であって、上記パルス光を生成する光源と、該分岐カプラの第2分岐ポートに接続された光検出器であって、上記パルス光の後方散乱光を電気信号に変換する光検出器と、を含んでいる、ことが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、光パルス試験を実行可能な光線路試験装置を、簡単な構成で実現することができる。
【0029】
本発明に係る光線路試験装置において、上記光パルス試験器は、共通ポートが上記光カプラの上記第1分岐ポートに接続された第1分岐カプラと、該第1分岐カプラの第1分岐ポートに接続された第1光源であって、第1の波長を有するパルス光を生成する第1光源と、共通ポートが光線路群から選択された対象光線路に接続される第2分岐カプラと、該第2分岐カプラの第1分岐ポートに接続された第2光源であって、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス光を生成する第2光源と、第1分岐ポートが上記第1分岐カプラの第2分岐ポートに接続され、第2分岐ポートが上記第2分岐カプラの第2分岐ポートに接続された合波カプラと、上記合波カプラの共通ポートに接続された光検出器であって、上記第1波長を有するパルス光の後方散乱光、及び、上記第2の波長を有するパルス光の後方散乱光を電気信号に変換する光検出器と、を含んでいる、ことが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、2つの波長に関する光パルス試験を実行可能な光線路試験装置を、簡単な構成で実現することができる。
【0031】
なお、本発明に係る光線路試験装置は、測定器成端架選択装置を備えていてもよい。すなわち、上記光線路群に接続される複数の光線路側ポートと該複数の光線路側ポートの何れかに接続される試験装置側ポートとを有する測定器成端架選択装置を更に備え、上記光カプラの上記共通ポートと上記測定器成端架選択装置の上記試験装置側ポートとが接続されている光線路試験装置も本発明の範疇に含まれる。
【0032】
また、光線路試験装置とファイバセレクタとを含む光線路試験システムにおいて、測定器成端架選択装置を省略したもの、すなわち、上記光線路試験装置と、上記光線路群に接続される複数の光線路側ポートと該複数の光線路側ポートの何れかに接続される試験装置側ポートとを有するファイバセレクタとを備えた光線路試験システムであって、上記ファイバセレクタの上記試験装置側ポートと上記光カプラの上記共通ポートとが測定器成端架選択装置を介さずに接続されている光線路試験システムも本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る光線路試験装置は、共通ポートが光線路群から選択された対象光線路に接続される光カプラと、上記光カプラの第1分岐ポートに接続された光パルス試験器であって、上記対象光線路に入力するパルス光を生成すると共に、上記対象光線路から取り出した、上記パルス光の後方散乱光の波形を検出する光パルス試験器と、上記光カプラの第2分岐ポートに接続された光パワー測定器であって、上記対象光線路から取り出した信号光のパワーを測定するための光パワー測定器と、を備えている。
【0034】
従って、測定器成端架選択装置を省略、あるいは、測定器成端架選択装置におけるファイバ移動機構を単純化することが可能であり、これにより、光線路試験装置の製造コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る光線路試験装置および光線路試験システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光線路試験装置による光パルス試験を説明するための図である。(a)は、光線路試験装置の備える光源が生成するパルス光の波形例と、対象光ファイバにキズなどの物理的障害が存在しない場合に当該パルス光によって生じる後方散乱光の波形例と、当該後方散乱光を受光したアバランシェ・フォトダイオードから出力される電気信号の波形例とを示しており、(b)は、光線路試験装置の備える光源が生成するパルス光の波形例と、対象光ファイバにキズなどの物理的障害が存在する場合に当該パルス光によって生じる後方散乱光の波形例と、当該後方散乱光を受光したアバランシェ・フォトダイオードから出力される電気信号の波形例とを示している。
【図3】本発明の実施形態の第1の変形例に係る光線路試験装置および光線路試験システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の第2の変形例に係る光線路試験装置および光線路試験システムの構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は、従来の光線路試験装置を含むアクセスネットワークの構成を示すブロック図である。(b)は、従来の光線路試験装置と併用されるファイバセレクタ群の構成例を示すブロック図である。
【図6】従来の光線路試験装置および光線路試験システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係る光線路試験装置(OTM:Optical Testing Module)の実施形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施形態に係る光線路試験装置は、アクセスネットワークを構成する光ファイバ(光線路)について、断線や損失増加等の物理的障害の有無、および、それらの物理的障害が生じた場所などを検知するための装置である。
【0037】
図1は、本実施形態に係る光線路試験装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光線路試験装置10は、ファイバセレクタ群20と共にIDM架に収納される。そして、光線路試験装置10とファイバセレクタ群20とが収納されたIDM架は、ファイバセレクタ群20のみが収納された他のIDM架と共に、光線路試験システム1を構成する。図1に示した例では、光線路試験装置10とファイバセレクタ群20とが収納された1台のIDM架と、ファイバセレクタ群20のみが収納された4台のIDM架とより、光線路試験システム1を構成している。
【0038】
各ファイバセレクタ群20は、図5(b)に示すファイバセレクタ群20’と同様に構成され、例えば、最大4000本程度の通信用光ファイバよりなる光ファイバ群から、光線路試験装置10に接続する光ファイバを選択するために用いられる。この場合、光線路試験システム1は、合計20000本程度の光ファイバを試験対象とすることができる。
【0039】
光線路試験装置10は、ファイバセレクタ群20の何れかを介して自身に接続された通信用光ファイバの中から試験対象とする対象光ファイバを選択すると共に、選択した対象光ファイバにおける断線や損失増加等の物理的障害の有無、および、それらの物理的障害が生じた場所などを検知するための装置である。図1に示すように、光線路試験装置10は、光測定器(OTU:Optical Test Unit)100、および、測定器成端架選択装置(FTES:Frame and Test Equipment Selector)200を備えている。なお、光線路試験装置10は、図示しない制御部を備えており、光線路試験装置10の備える各部は当該制御部によって制御される。
【0040】
測定器成端架選択装置200は、各ファイバセレクタ群20から引き出された伝送用光ファイバの中から1本の伝送用光ファイバを選択し、選択した伝送用ファイバを光測定器100の備えるWDMカプラ(光カプラ)110または分岐カプラ126に接続するために用いられる。図1に示した例では、5組のファイバセレクタ群20の各々から引き出された5本の伝送用光ファイバの何れかを、光測定器100の備えるWDMカプラ110または分岐カプラ126に接続することになる。このため、図1に示した例では、測定器成端架選択装置200は、上記5本の伝送用光ファイバの何れかをWDMカプラ110または分岐カプラ126に接続するための2つの測定器側ポートを備えている。
【0041】
光測定器100は、測定器成端架選択装置200およびファイバセレクタ群20を介して接続された対象光ファイバについて、物理的障害の有無、および、物理的障害が生じた場所などを検知するための構成である。図1に示すように、光測定器100は、WDMカプラ110、光パルス試験器(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)120、および、光パワー測定器(OPM:Optical Power Meter)130を備えている。
【0042】
WDMカプラ110は、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing)方式を用いた光カプラであり、(1)自身の備える共通ポート110cより入力される光を、低損失にて複数の波長領域の分波光へと分波し、各分波光を自身の備える第1の分岐ポート110aおよび第2の分岐ポート110bから出力する分波器としての機能と、(2)自身の備える第1の分岐ポート110aおよび第2の分岐ポート110bの各々から入力される各波長領域の光を低損失にて合波することによって合波光を生成し、生成した合波光を自身の備える共通ポート110cより出力する合波器としての機能と、を併せ持っている。
【0043】
本実施形態におけるWDMカプラ110は、共通ポート110cより入力される光を分波し、1650nmを含む波長領域において高い透過性を有する第1の分波光を第1の分岐ポート110aより出力し、1550nmおよび1310nmの双方を含む波長領域において高い透過性を有する第2の分波光を第2の分岐ポート110bより出力する。また、WDMカプラ110は、後述する分岐カプラ122およびバンドパスフィルタ121を介して光源123から供給される波長1650nmのパルス光を共通ポート110cより出力する。
【0044】
また、図1に示すように、本実施形態において、共通ポート110cは、伝送用光ファイバおよび光コネクタ(図1において白抜きの長方形として図示)を介して対象光ファイバに接続されており、第1の分岐ポート110aは、伝送用光ファイバを介して光パルス試験器120の備えるバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)121に接続されており、第2の分岐ポート110bは、伝送用光ファイバおよび光コネクタを介して光パワー測定器130の備えるWDMカプラ131の共通ポート131cに接続されている。
【0045】
光パルス試験器120は、対象光ファイバについて、波長1650nm(第1の波長)のパルス光を用いた光パルス試験と、波長1310nm(第2の波長)のパルス光を用いた光パルス試験とを行うための構成であり、例えば、図1に示すように、バンドパスフィルタ121、分岐カプラ122、光源123、WDMカプラ124、アバランシェ・フォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)125、分岐カプラ126、および、光源127により構成することができる。バンドパスフィルタ121、分岐カプラ122、および、光源123は、前者の光パルス試験のための構成であり、分岐カプラ126、および、光源127は、後者の光パルス試験のための構成である。また、WDMカプラ124、および、アバランシェ・フォトダイオード125は、何れの光パルス試験においても用いられる構成である。
【0046】
光パルス試験器120は、対象光ファイバに対して、上述したパルス光を供給し、当該パルス光が対象光ファイバ中を伝播する際に生じる後方散乱光の波形を検出する。
【0047】
バンドパスフィルタ121は、WDMカプラ110の第1の分岐ポート110aより伝送用光ファイバを介して入力される光のうち、中心波長が1650nmの光を選択的に透過させ、ONU51とOLT52との間の光通信の通信帯域である1310nmおよび1550nmの光を遮断する。バンドパスフィルタ121は、透過後の光を、光ファイバを介して分岐カプラ122の共通ポート122cへと供給する。また、バンドパスフィルタ121は、分岐カプラ122を介して光源123から供給される波長1650nmのパルス光を透過させ、伝送用光ファイバを介してWDMカプラ110の第1の分岐ポート110aへと供給する。
【0048】
分岐カプラ122は、(1)自身の備える共通ポート122cより入力される光を2つの分波光へと分波し、それらの分波光を自身の備える第1の分岐ポート122aおよび第2の分岐ポート122bからそれぞれ出力する分波器としての機能と、(2)自身の備える第1の分岐ポート122aおよび第2の分岐ポート122bから入力される光を合波することによって、合波光を生成し、生成した合波光を自身の備える共通ポート122cより出力する合波器としての機能と、を併せ持っている。
【0049】
本実施形態において、分岐カプラ122は、第1の分岐ポート122aに対して伝送用光ファイバを介して光源123より供給される波長1650nmの光を共通ポート122cから出力する。また、分岐カプラ122は、共通ポート122cに対して伝送用光ファイバを介してバンドパスフィルタ121より供給される波長1650nmの光を第2の分岐ポート122bから出力する。なお、分岐カプラ122の分岐比は、例えば、波長領域1650nm付近において3dBとなるように設定されており、共通ポート122cより入力される波長1650nmの光は、1:1の比で分波された後に、各分岐ポートから出力される。ただし、既知の分岐比を有する分岐カプラであれば、どのような分岐比を有する分岐カプラであっても分岐カプラ122として用いることができる。
【0050】
光源123は、光パルス試験に用いる波長1650nmのパルス光を生成し、生成したパルス光を、伝送用光ファイバを介して分岐カプラ122の第1の分岐ポート122aに供給する。光源123により生成されるパルス光のパルス幅は、例えば、20ns(nano-seconds、ナノ秒)から4μs(micro-seconds、マイクロ秒)までの値をとることが可能である。
【0051】
また、光源123は、対象光ファイバについての光源試験に用いる変調周波数270Hzの変調光信号を、波長1650nmの光を用いて生成し、生成した変調光信号を分岐カプラ122の第1の分岐ポート122aに供給することもできる。なお、光源試験とは、対象光ファイバに対して変調光信号を入力し、当該対象光ファイバの終端において当該変調光信号を検出することにより行われる試験である。
【0052】
分岐カプラ126は、分岐カプラ122と同様に、分波器としての機能と合波器としての機能とを併せ持っている。
【0053】
本実施形態において、分岐カプラ126は、第1の分岐ポート126aに対して光源127より供給される波長1310nmの光を共通ポート126cから出力する。また、分岐カプラ126は、共通ポート126cに対して伝送用光ファイバおよび光コネクタを介して対象光ファイバより供給される波長1310nmの光を第2の分岐ポート126bから出力する。なお、分岐カプラ126の分岐比は、例えば、波長領域1310nm付近において3dBとなるように設定されている。ただし、既知の分岐比を有する分岐カプラであれば、どのような分岐比を有する分岐カプラであっても分岐カプラ126として用いることができる。
【0054】
光源127は、光パルス試験に用いる波長1310nmのパルス光を生成し、生成したパルス光を、伝送用光ファイバを介して分岐カプラ126の第1の分岐ポート126aに供給する。光源127により生成されるパルス光のパルス幅は、光源123と同様に、例えば、20nsから4μsまでの値をとることが可能であり、ユーザは制御部を介して、光パルス試験において最適なパルス幅を選択することができる。
【0055】
また、光源127は、対象光ファイバについての光源試験に用いる変調周波数270Hzの変調光信号を、波長1310nmの光を用いて生成し、生成した変調光信号を分岐カプラ126の第1の分岐ポート126aに供給することもできる。
【0056】
WDMカプラ124は、波長分割多重方式を用いた光カプラであり、WDMカプラ110と同様に、分波器としての機能と合波器としての機能とを併せ持っている。
【0057】
本実施形態におけるWDMカプラ124は、自身の備える第1の分岐ポート124aに対して分岐カプラ122より供給される波長1650nmの光と、自身の備える第2の分岐ポート124bに対して分岐カプラ126より供給される波長1310nmの光とを、低損失にてアバランシェ・フォトダイオード125に供給するために用いられる。
【0058】
アバランシェ・フォトダイオード125は、光電効果とアバランシェ増倍現象とを利用した高受光感度のフォトダイオードである。
【0059】
本実施形態においては、アバランシェ・フォトダイオード125は、WDMカプラ124を介して分岐カプラ122より供給される波長1650nmの光の各時刻における強度と、WDMカプラ124を介して分岐カプラ126より供給される波長1310nmの光の各時刻における強度とをそれぞれ検出するために用いられる。
【0060】
より具体的には、アバランシェ・フォトダイオード125は、波長1650nmのパルス光を用いた光パルス試験において、光源123より出射され、分岐カプラ122、バンドパスフィルタ121、および、WDMカプラ110を介して対象光ファイバに供給されたパルス光の後方散乱光であって、WDMカプラ110、バンドパスフィルタ121、分岐カプラ122、および、WDMカプラ124を介して供給される後方散乱光を受光し、各時刻において、当該後方散乱光の強度に応じた電気信号(電流)を出力する。
【0061】
同様に、アバランシェ・フォトダイオード125は、波長1310nmのパルス光を用いた光パルス試験において、光源127より出射され、分岐カプラ126を介して対象光ファイバに供給されたパルス光の後方散乱光であって、分岐カプラ126、および、WDMカプラ124を介して供給される後方散乱光を受光し、各時刻において、当該後方散乱光の強度に応じた電気信号(電流)を出力する。
【0062】
なお、上記後方散乱光とは、対象光ファイバに供給されたパルス光が当該対象光ファイバの各位置において散乱することによって生じる散乱光のうち、当該パルス光の伝播方向と逆方向に伝播する散乱光のことを指す。
【0063】
また、アバランシェ・フォトダイオード125から出力される各時刻での電気信号は、図示しないデータ取得(Data Acquisition)部によってデジタル化され、制御部に伝達される。制御部は、各時刻での電気信号の大きさを解析することによって、対象光ファイバにおける断線や損失増加等の物理的障害の有無、および、それらの物理的障害が生じた場所などを検知することができる。
【0064】
図2の(a)は、光パルス試験において、光源123(または光源127)より出力されるパルス光の波形例と、対象光ファイバにキズなどの物理的障害が存在しない場合に当該パルス光によって生じる後方散乱光の波形例と、当該後方散乱光を受光したアバランシェ・フォトダイオード125から出力される電気信号の波形例とを示すタイミングチャートである。
【0065】
図2の(a)に示すように、対象光ファイバにキズなどの物理的障害が存在しない場合には、後方散乱光は、パルス光の出射時刻からの経過時間の増加に伴って減少し、パルス光が対象光ファイバの終端において反射した反射光に対応するピークを有する。
【0066】
図2の(b)は、光パルス試験において、光源123(または光源127)より出力されるパルス光の波形例と、対象光ファイバにキズなどの物理的障害が存在する場合に当該パルス光によって生じる後方散乱光の波形例と、当該後方散乱光を受光したアバランシェ・フォトダイオード125から出力される電気信号の波形例とを示すタイミングチャートである。
【0067】
図2の(b)に示すように、対象光ファイバにキズなどの物理的障害が存在する場合には、後方散乱光は、当該物理的障害によって反射された反射光に対応するピークと、パルス光が対象光ファイバの終端において反射した反射光に対応するピークとを有する。
【0068】
制御部は、光源123によりパルス光が出射されてから上記物理的障害に起因するピークが観測されるまでの時間間隔を検出し、検出した時間間隔に基づいて、対象光ファイバにおける上記物理的障害までの距離を算出することができる。
【0069】
光パワー測定器130は、対象光ファイバから取り出した信号光のパワーを検出するための構成である。より具体的に言うと、光パワー測定器130は、光パワー測定試験において、ONU51からOLT52に向かう上り用の信号光(波長1310nm)、および、OLT52からONU51に向かう下り用の信号光(波長1550nm)のパワーを検出するための構成であり、例えば、図1に示すように、WDMカプラ131、フィルタ132、フォトダイオード(PD:Photodiode)133、フィルタ134、および、フォトダイオード135により構成することができる。フィルタ132、および、フォトダイオード133は、波長1310nmの信号光のパワーを検出するための構成であり、フィルタ134、および、フォトダイオード135は、波長1550nmの信号光のパワーを検出するための構成である。また、WDMカプラ131は、何れの信号光のパワーを検出する際にも用いられる構成である。
【0070】
WDMカプラ131は、波長分割多重方式を用いた光カプラであり、WDMカプラ110と同様に、分波器としての機能と合波器としての機能とを併せ持っている。ただし、WDMカプラ131は、WDMカプラ110と異なり、自身の備える共通ポート131cより入力される信号光を分波し、1310nmを含む波長領域において高い透過性を有する第1の分波光を、自身の備える第1の分岐ポート131aより出力し、1550nmを含む波長領域において高い透過性を有する第2の分波光を、自身の備える第2の分岐ポート131bより出力する。
【0071】
また、図1に示すように、本実施形態において、共通ポート131cは、WDMカプラ110の第2の分岐ポート110bに接続されており、第1の分岐ポート131aは、フィルタ132に接続されており、第2の分岐ポート131bは、フィルタ134に接続されている。
【0072】
フィルタ132は、伝送用光ファイバを介してWDMカプラ131の第1の分岐ポート131aより供給される信号光のうち、中心波長が1310nmの信号光を選択的に透過させ、透過後の信号光をフォトダイオード133に供給する。
【0073】
フォトダイオード133は、フィルタ132より供給される信号光を受光し、受光した信号光のパワーに応じた電気信号(電流)を出力する。出力された電気信号は、図示しないデータ取得部によってデジタル化され、制御部に伝達される。制御部は、WDMカプラ110、WDMカプラ131、および、フィルタ132を介して対象光ファイバより供給される波長1310nmの信号光のパワーを、当該電気信号の大きさに基づいて算出することができる。
【0074】
フィルタ134は、伝送用光ファイバを介してWDMカプラ131の第2の分岐ポート131bより供給される信号光のうち、中心波長が1550nmの信号光を選択的に透過させ、透過後の信号光をフォトダイオード135に供給する。
【0075】
フォトダイオード135は、フィルタ134より供給される信号光を受光し、受光した信号光のパワーに応じた電気信号(電流)を出力する。出力された電気信号は、図示しないデータ取得部によってデジタル化され、制御部に伝達される。制御部は、WDMカプラ110、WDMカプラ131、および、フィルタ134を介して対象光ファイバより供給される波長1550nmの信号光のパワーを、当該電気信号の大きさに基づいて算出することができる。
【0076】
なお、本実施形態において、光パワー測定器130が光コネクタ(図1において白抜きの長方形として図示)を介してWDMカプラ110に接続されているため、光パワー測定器130を光線路試験装置10から簡単に取り外すことができる。したがって、光パワー測定を利用しないユーザに対しては、光パワー測定器130を取り外したシンプルな構成で出荷するなどのカスタムメイドを容易に実現することができる。
【0077】
また、本実施形態において、測定器成端架選択装置200は、従来の測定器成端架選択装置よりも少ない2つの測定器側ポートを備えていれば足りるので、従来の測定器成端架選択装置に比べて単純な構成により実現することができる。したがって、測定器成端架選択装置200内における故障の発生率が従来の測定器成端架選択装置よりも低減するので、光線路試験装置10および光線路試験システム1の信頼性が向上する。
【0078】
以上のように、本発明に係る光線路試験装置10は、共通ポート110cが光ファイバ群から選択された対象光ファイバに接続されるWDMカプラ110と、上記WDMカプラ110の第1分岐ポート110aに接続された光パルス試験器120であって、上記対象光ファイバに入力するパルス光を生成すると共に、上記対象光ファイバから取り出した、上記パルス光の後方散乱光の波形を検出する光パルス試験器120と、上記WDMカプラ110の第2分岐ポート110bに接続された光パワー測定器130であって、上記対象光ファイバから取り出した信号光のパワーを測定するための光パワー測定器130と、を備えている。
【0079】
従って、測定器成端架選択装置200を省略、あるいは、測定器成端架選択装置200におけるファイバ移動機構を単純化することが可能であり、これにより、光線路試験装置10の製造コストを低下させることができる。
【0080】
<変形例1>
本実施形態に係る光線路試験装置10および光線路試験システム1の構成は、上述した例に限定されるものではない。ここでは、本実施形態の第1の変形例に係る光線路試験装置10および光線路試験システム1について、図3を参照して説明する。
【0081】
本変形例に係る光線路試験システム1における光パルス試験器120は、波長1650nmの光および波長1310nmの光を用いた光パルス試験に加えて、波長1550nmの光を用いた光パルス試験をも行うことができる構成である。本変形例における光パルス試験器120は、例えば、図3に示すように、既に説明したバンドパスフィルタ121、分岐カプラ122、光源123、WDMカプラ124、アバランシェ・フォトダイオード125、および、分岐カプラ126に加えて、光源128、WDMカプラ129、フィルタ140、および、アバランシェ・フォトダイオード141を備えることによって構成することができる。
【0082】
本変形例において、フィルタ140およびアバランシェ・フォトダイオード141は、波長1550nmの光を用いた光パルス試験を行うための構成であり、光源128、分岐カプラ126、WDMカプラ129は、波長1550nmの光を用いた光パルス試験、および、波長1310nmの光を用いた光パルス試験の双方において用いられる構成である。また、本変形例において、WDMカプラ124およびアバランシェ・フォトダイオード125は、波長1310nmの光を用いた光パルス試験にも用いられる。
【0083】
光源128は、光パルス試験に用いる波長1310nmのパルス光および波長1550nmのパルス光を生成し、生成したパルス光を、伝送用光ファイバを介して分岐カプラ126の第1の分岐ポート126aに供給する。光源128により生成されるパルス光のパルス幅は、光源123と同様に、例えば、20nsから4μsまでの値をとることが可能であり、ユーザは制御部を介して、光パルス試験において最適なパルス幅を選択することができる。
【0084】
また、光源128は、対象光ファイバについての光源試験に用いる変調周波数270Hzの変調光信号を、波長1310nmの光または波長1550nmの光を用いて生成し、生成した変調光信号を分岐カプラ126の第1の分岐ポート126aに供給することもできる。
【0085】
WDMカプラ129は、波長分割多重方式を用いた光カプラであり、WDMカプラ110と同様に、分波器としての機能と合波器としての機能とを併せ持っている。また、WDMカプラ129は、自身の備える共通ポート129cより入力される光を分波し、1550nmを含む波長領域において高い透過性を有する第1の分波光を自身の備える第1の分岐ポート129aより出力し、1310nmを含む波長領域において高い透過性を有する第2の分波光を自身の備える第2の分岐ポート129bより出力する。
【0086】
また、図3に示すように、本変形例において、共通ポート129cは、分岐カプラ126の第2の分岐ポート126bに接続されており、第1の分岐ポート129aは、フィルタ140に接続されており、第2の分岐ポート129bは、伝送用光ファイバおよび光コネクタを介してWDMカプラ124の第2の分岐ポート124bに接続されている。
【0087】
本変形例において、波長1310nmのパルス光を用いた光パルス試験を行う場合、光源128より出射され、分岐カプラ126を介して対象光ファイバに供給された波長1310nmのパルス光の後方散乱光は、分岐カプラ126、WDMカプラ129、および、WDMカプラ124を介して、アバランシェ・フォトダイオード125に供給される。
【0088】
フィルタ140は、伝送用光ファイバを介してWDMカプラ129の第1の分岐ポート129aより供給される光のうち、中心波長が1550nmである光を選択的に透過させ、透過後の光をアバランシェ・フォトダイオード141に供給する。
【0089】
アバランシェ・フォトダイオード141は、アバランシェ・フォトダイオード125と同様に、光電効果とアバランシェ増倍現象とを利用した高受光感度のフォトダイオードである。本変形例においては、アバランシェ・フォトダイオード141は、WDMカプラ129を介して分岐カプラ126より供給される波長1550nmの光の強度を検出するために用いられる。
【0090】
より具体的には、アバランシェ・フォトダイオード141は、波長1550nmのパルス光を用いた光パルス試験において、光源128より出射され、分岐カプラ126を介して対象光ファイバに供給された波長1550nmのパルス光の後方散乱光であって、分岐カプラ126、WDMカプラ129、および、フィルタ140を介して供給される後方散乱光を受光し、各時刻において、当該後方散乱光の強度に応じた電気信号(電流)を出力する。アバランシェ・フォトダイオード141から出力される各時刻での電気信号は、図示しないデータ取得部によってデジタル化され、制御部に伝達される。制御部は、各時刻での電気信号の大きさを解析することによって、対象光ファイバにおける断線や損失増加等の物理的障害の有無、および、それらの物理的障害が生じた場所などを検知することができる。
【0091】
<変形例2>
以下では、本実施形態の第2の変形例に係る光線路試験装置10および光線路試験システム1について、図4を参照して説明する。
【0092】
本変形例に係る光線路試験システム1における光パルス試験器120は、波長1650nmの光を用いた光パルス試験を行うための構成であり、例えば、図4に示すように、バンドパスフィルタ121、分岐カプラ122、光源123、WDMカプラ124、および、アバランシェ・フォトダイオード125を備える一方で、既に説明した分岐カプラ126、光源127、光源128、WDMカプラ129、フィルタ140、および、アバランシェ・フォトダイオード141の何れをも備えていない構成とすることができる。なお、本変形例における光パワー測定器130の構成はすでに説明した構成と同じである。
【0093】
本変形例においては、光測定器100に接続される対象光ファイバの本数が1本であるため、本変形例に係る光線路試験システム1は、測定器成端架選択装置を備えない構成とすることができ、図4に示すように、ファイバセレクタ20によって選択された対象光ファイバが、測定器成端架選択装置を介さずに、WDMカプラ110の共通ポート110cに接続される構成とすることができる。
【0094】
このように、本変形例に係る光線路試験装置10および光線路試験システム1においては、測定器成端架選択装置が省略されている。このため、従来のように測定器成端架選択装置に生じる故障の影響を受けることがない。したがって、従来の構成に比べて、光線路試験装置10および光線路試験システム1の信頼性が向上する。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、アクセスネットワークを構成する光ファイバ等の光線路を試験するための光線路試験装置および光線路試験システムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 光線路試験システム
10 光線路試験装置
20 ファイバセレクタ
100 光測定器
110 WDMカプラ(光カプラ)
120 光パルス試験器
122 分岐カプラ
123 光源
125 アバランシェ・フォトダイオード(光検出器)
130 光パワー測定器
131 WDMカプラ(分波カプラ)
133 フォトダイオード(第1光検出器)
135 フォトダイオード(第2光検出器)
200 測定器成端架選択装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通ポートが光線路群から選択された対象光線路に接続される光カプラと、
上記光カプラの第1分岐ポートに接続された光パルス試験器であって、上記対象光線路に入力するパルス光を生成すると共に、上記対象光線路から取り出した、上記パルス光の後方散乱光の波形を検出する光パルス試験器と、
上記光カプラの第2分岐ポートに接続された光パワー測定器であって、上記対象光線路から取り出した信号光のパワーを測定するための光パワー測定器と、を備えている、
ことを特徴とする光線路試験装置。
【請求項2】
上記光パワー測定器は、共通ポートが上記光カプラの上記第2分岐ポートに接続された分波カプラと、該分波カプラの第1分岐ポートに接続された第1光検出器であって、第1の波長を有する信号光を電気信号に変換する第1光検出器と、該分波カプラの第2分岐ポートに接続された第2光検出器であって、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有する信号光を電気信号に変換する第2光検出器と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光線路試験装置。
【請求項3】
上記光パルス試験器は、共通ポートが上記光カプラの上記第1分岐ポートに接続された分岐カプラと、該分岐カプラの第1分岐ポートに接続された光源であって、上記パルス光を生成する光源と、該分岐カプラの第2分岐ポートに接続された光検出器であって、上記パルス光の後方散乱光を電気信号に変換する光検出器と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光線路試験装置。
【請求項4】
上記光パルス試験器は、共通ポートが上記光カプラの上記第1分岐ポートに接続された第1分岐カプラと、該第1分岐カプラの第1分岐ポートに接続された第1光源であって、第1の波長を有するパルス光を生成する第1光源と、共通ポートが光線路群から選択された対象光線路に接続される第2分岐カプラと、該第2分岐カプラの第1分岐ポートに接続された第2光源であって、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス光を生成する第2光源と、第1分岐ポートが上記第1分岐カプラの第2分岐ポートに接続され、第2分岐ポートが上記第2分岐カプラの第2分岐ポートに接続された合波カプラと、上記合波カプラの共通ポートに接続された光検出器であって、上記第1波長を有するパルス光の後方散乱光、及び、上記第2の波長を有するパルス光の後方散乱光を電気信号に変換する光検出器と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光線路試験装置。
【請求項5】
上記光線路群に接続される複数の光線路側ポートと該複数の光線路側ポートの何れかに接続される試験装置側ポートとを有する測定器成端架選択装置を更に備え、
上記光カプラの上記共通ポートと上記測定器成端架選択装置の上記試験装置側ポートとが接続されている、
ことを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の光線路試験装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか1項に記載に光線路試験装置と、上記光線路群に接続される複数の光線路側ポートと該複数の光線路側ポートの何れかに接続される試験装置側ポートとを有するファイバセレクタとを備えた光線路試験システムであって、
上記ファイバセレクタの上記試験装置側ポートと上記光カプラの上記共通ポートとが測定器成端架選択装置を介さずに接続されている、
ことを特徴とする光線路試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−108054(P2012−108054A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258236(P2010−258236)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591044647)株式会社 スズキ技研 (36)
【Fターム(参考)】