説明

光走査装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】反射ミラーの振動を広い周波数域に亘って低く抑えることによって高い光学性能を安定して得ることができる光走査装置を提供すること。
【解決手段】光源から出射される光ビームを偏向する偏向器と、該偏向器によって偏向された光ビームを等速走査光に変換する結像レンズと、等速走査光を折り返して感光体に導く反射ミラー32を筐体内に収容し、前記反射ミラー32の主走査方向両端を板金ステイ35を介して前記筐体に対して弾性支持するとともに、該反射ミラー32の形状を変化させて走査線の湾曲を補正する走査線湾曲補正手段39を設けて成る光走査装置において、前記反射ミラー32と前記板金ステイ35との間に弾性部材43を介設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を光走査するための光走査装置とこれを備えた複写機やプリンター等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の画像形成装置においては、帯電器によって表面が一様に帯電された感光体が光走査装置によって光走査され、その表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、静電潜像は現像装置によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として顕像化され、このトナー像は、転写装置によって用紙上に転写された後に定着装置によって加熱及び加圧されて用紙上に定着され、トナー像が定着された用紙が装置外へ排出されることによって一連の画像形成動作が終了する。
【0003】
ところで、感光体を光走査してその表面に静電潜像を形成する光走査装置は、光源から出射される光ビームを偏向するポリゴンミラー等の偏向器と、該偏向器によって偏向された光ビームを等速走査光に変換する結像レンズと、等速走査光を折り返して感光体に導く複数の反射ミラー等を筐体内に収容して構成されている。
【0004】
斯かる光走査装置に用いられる反射ミラーは、一般的には主走査方向に長い長尺ミラーで構成されているため、画像形成装置本体やポリゴンミラー等の振動を受けて振動し易い。そして、反射ミラーが振動すると、感光体上で光ビームの上下動が起こり、これが原因で画像にジッダとして影響が出るという問題が発生する。
【0005】
上記問題を解消する方法として、反射ミラーの固定構造を工夫したり、錘を貼り付ける等して該反射ミラーの共振周波数(固有振動数)をポリゴンモータの駆動周波数からずらしておくことは一般的に行われている。例えば、特許文献1には、反射ミラーのネジ部材による圧接位置を変更することによって該反射ミラーの共振周波数を変化させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−242146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、ポリゴンミラーの高速化を図った機種や、ポリゴンミラーの回転数を切り替えて複数の印字解像度を選択可能とする機種が標準となってきている。更に、光走査装置の他機種への展開を可能とするためには、共振を考慮しなければならない回転数が幾通りもあり、このために問題が複雑化する。
【0008】
実際問題として、画像の高質化を実現するためには反射ミラーの振動問題の解決は不可避であり、ジッダレベルを良くするためには共振ポイントを高周波数域へと移動させるか、共振しても許容可能なレベルまで振動を減衰させることが必要になる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、反射ミラーの振動を広い周波数域に亘って低く抑えることによって高い光学性能を安定して得ることができる光走査装置とこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、光源から出射される光ビームを偏向する偏向器と、該偏向器によって偏向された光ビームを等速走査光に変換する結像レンズと、等速走査光を折り返して感光体に導く反射ミラーを筐体内に収容し、前記反射ミラーの主走査方向両端を板金ステイを介して前記筐体に対して弾性支持するとともに、該反射ミラーの形状を変化させて走査線の湾曲を補正する走査線湾曲補正手段を設けて成る光走査装置において、前記反射ミラーと前記板金ステイとの間に弾性部材を介設したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記反射ミラーの背面を前記板金ステイに形成された凸3箇所によって支持するとともに、前記弾性部材を前記反射ミラーの側面のみに接触させたことを特徴とする。
【0012】
請求32記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記弾性部材の前記反射ミラーに接触する面にフィルムを被覆したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の画像形成装置は、請求項1〜3の何れかに記載の光走査装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、反射ミラーと板金ステイとの間に介設された弾性部材によるダンピング効果によって反射ミラーの振動が広い周波数域に亘って低く抑えられ、光走査装置に高い光学性能が安定して確保される。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、反射ミラーの取付角度が板金ステイの凸3箇所によって決められるため、板金ステイに高い平面度が要求されず、該板金ステイの製作が容易化する。又、反射ミラーの取付角度に依存しない側面と板金ステイとの間に弾性部材を設けることによって、環境変動等による反射ミラーの角度変動が抑えられ、該反射ミラーに高い光学性能が確保される。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、弾性部材の反射ミラーに接触する面にフィルムを被覆したため、弾性部材の組立時に反射ミラーとの摩擦がフィルムによって低く抑えられ、該弾性部材の組立性が高められる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、折り返しミラーの振動が抑えられるため、感光体上での光ビームの上下動が抑えられ、ジッダ等の画像不良の発生が防がれて高質画像が安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成装置(カラーレーザープリンター)の側断面図である。
【図2】本発明に係る光走査装置のカバーを取り外して示す斜視図である。
【図3】本発明に係る光走査装置のカバーを取り外して示す平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図3のC−C線断面図である。
【図7】反射ミラーと板金ステイの斜視図である。
【図8】板金ステイの斜視図である。
【図9】走査線湾曲補正手段が設けられた反射ミラーの正面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図9のE部拡大詳細図である。
【図12】図11のF−F線断面図である。
【図13】走査線湾曲補正手段の保持ブラケットの斜視図である。
【図14】本発明に係る光走査装置の反射ミラーの振動特性を従来のそれと比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の一形態としてのカラーレーザープリンターの断面図であり、図示のカラーレーザープリンターはタンデム型であって、その本体100内の中央部には、マゼンタ画像形成ユニット1M、シアン画像形成ユニット1C、イエロー画像形成ユニット1Y及びブラック画像形成ユニット1Kが一定の間隔でタンデムに配置されている。
【0021】
上記各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kには、感光体である感光ドラム2a,2b,2c,2dがそれぞれ配置されており、各感光ドラム2a〜2dの周囲には、帯電器3a,3b,3c,3d、現像装置4a,4b,4c,4d、転写ローラー5a,5b,5c,5d及びドラムクリーニング装置6a,6b,6c,6dがそれぞれ配置されている。
【0022】
ここで、前記感光ドラム2a〜2dは、ドラム状の感光体であって、不図示の駆動モーターによって図示矢印方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動される。又、前記帯電器3a〜3dは、不図示の帯電バイアス電源から印加される帯電バイアスによって感光ドラム2a〜2dの表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。
【0023】
更に、前記現像装置4a〜4dは、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー、イエロー(Y)トナー、ブラック(K)トナーをそれぞれ収容しており、各感光ドラム2a〜2d上に形成された各静電潜像に各色のトナーを付着させて各静電潜像を各色のトナー像として可視像化するものである。
【0024】
又、前記転写ローラー5a〜5dは、各一次転写部にて中間転写ベルト7を介して各感光ドラム2a〜2dに当接可能に配置されている。ここで、中間転写ベルト7は、駆動ローラー8とテンションローラー9との間に張設されて各感光ドラム2a〜2dの上面側に走行可能に配置されており、前記駆動ローラー8は、二次転写部において中間転写ベルト7を介して二次転写ローラー10に当接可能に配置されている。又、テンションローラー9の近傍にはベルトクリーニング装置11が設けられている。
【0025】
ところで、プリンター本体100内の各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kの上方には、前記各現像装置4a〜4dにトナーを補給するためのトナーコンテナー12a,12b,12c,12dが一列に並設されている。
【0026】
又、プリンター本体100内の各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kの下方には、4台の光走査装置(レーザースキヤナユニット)13が用紙搬送方向に並設され、これらの光走査装置13の下方のプリンター本体100の底部には給紙カセット14が着脱可能に設置されている。そして、給紙カセット14には複数枚の不図示の用紙が積層収容されており、この給紙カセット14の近傍には、該給紙カセット14から用紙を取り出すピックアップローラー15と、取り出された用紙を分離して搬送パスSへと1枚ずつ送り出すフィードローラー16とリタードローラー17が設けられている。
【0027】
又、プリンター本体100の側部を上下方向に延びる前記搬送パスSには、用紙を搬送する搬送ローラー対18と、用紙を一時待機させた後に所定のタイミングで前記二次転写対向ローラー8と二次転写ローラー10との当接部である二次転写部へと供給するレジストローラー対19が設けられている。尚、搬送パスSの横には、用紙の両面に画像を形成する場合に使用される別の搬送パスS’が形成されており、この搬送パスS’には複数の反転ローラー対20が適当な間隔で設けられている。
【0028】
ところで、プリンター本体100内の一側部に縦方向に配置された前記搬送パスSは、プリンター本体100の上面に設けられた排紙トレイ21まで延びており、その途中には定着装置22と排紙ローラー対23,24が設けられている。
【0029】
次に、以上の構成を有するカラーレーザープリンターによる画像形成動作について説明する。
【0030】
画像形成開始信号が発せられると、各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kにおいて各感光ドラム2a〜2dが図示矢印方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動され、これらの感光ドラム2a〜2dは、帯電器3a〜3dによって一様に帯電される。又、各光走査装置13は、各色毎のカラー画像信号によって変調された光ビームを出射し、その光ビームを各感光ドラム2a〜2dの表面に照射し、各感光ドラム2a〜2d上に各色のカラー画像信号に対応した静電潜像をそれぞれ形成する。
【0031】
そして、先ず、マゼンタ画像形成ユニット1Mの感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、該感光ドラム2aの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによってマゼンタトナーを付着させ、該静電潜像をマゼンタトナー像として可視像化する。このマゼンタトナー像は、感光ドラム2aと転写ローラー5aとの間の一次転写部(転写ニップ部)において、トナーと逆極性の一次転写バイアスが印加された転写ローラー5aの作用によって、図示矢印方向に回転駆動されている中間転写ベルト7上に一次転写される。
【0032】
上述のようにしてマゼンタトナー像が一次転写された中間転写ベルト7は、次のシアン画像形成ユニット1Cへと移動する。そして、シアン画像形成ユニット1Cにおいても、前記と同様にして、感光ドラム2b上に形成されたシアントナー像が一次転写部において中間転写ベルト7上のマゼンタトナー像に重ねて転写される。
【0033】
以下同様にして、中間転写ベルト7上に重畳転写されたマゼンタ及びシアントナー像の上に、イエロー及びブラック画像形成ユニット1Y,1Kの各感光ドラム2c,2d上にそれぞれ形成されたイエロー及びブラックトナー像が各一次転写部において順次重ね合わせられ、中間転写ベルト7上にはフルカラーのトナー像が形成される。尚、中間転写ベルト7上に転写されないで各感光ドラム2a〜2d上に残留する転写残トナーは、各ドラムクリーニング装置6a〜6dによって除去され、各感光ドラム2a〜2dは次の画像形成に備えられる。
【0034】
そして、中間転写ベルト7上のフルカラートナー像の先端が駆動ローラー8と二次転写ローラー10間の二次転写部(転写ニップ部)に達するタイミングに合わせて、給紙カセット14からピックアップローラー15とフィードローラー16及びリタードローラー17によって搬送パスSへと送り出された用紙がレジストローラー対19によって二次転写部へと搬送される。そして、二次転写部に搬送された用紙に、トナーと逆極性の二次転写バイアスが印加された二次転写ローラー10によってフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7から一括して二次転写される。
【0035】
而して、フルカラーのトナー像が転写された用紙は、定着装置22へと搬送され、フルカラーのトナー像が加熱及び加圧されて用紙の表面に熱定着され、トナー像が定着された用紙は、排紙ローラー対23,24によって排紙トレイ21上に排出されて一連の画像形成動作が完了する。尚、用紙上に転写されないで中間転写ベルト7上に残留する転写残トナーは、前記ベルトクリーニング装置11によって除去され、中間転写ベルト7は次の画像形成に備えられる。
【0036】
[光走査装置]
次に、本発明に係る前記光走査装置13を図2〜図4に基づいて説明する。
【0037】
図2は本発明に係る光走査装置のカバーを取り外して示す斜視図、図3は同平面図、図4は図3のA−A線断面図である。尚、図1に示すカラーレーザープリンターには以下に説明する光走査装置13が4台並設されているが、これらの構成は全て同じであるため、以下、1台の光走査装置13についてのみ説明する。
【0038】
光走査装置13は、樹脂にて矩形ボックス状に一体成形された筐体25を有しており、該筐体25内の底部には図4に示すように偏向器であるポリゴンミラー26とこれを回転駆動するポリゴンモーター27が配置されている。尚、図示しないが、筐体25の側壁には光源であるレーザーダイオードが取り付けられており、筐体25内にはコリメータレンズとシリンドリカルレンズがレーザーダイオードからの光ビームの出射方向に沿って配置されている。
【0039】
又、図4に示すように、筐体25内にはポリゴンミラー26によって偏向された光ビームを等速走査光に変換する第1及び第2結像レンズ28,29と、等速走査光を折り返して感光ドラム2a(2b〜2d)に導く第1〜第3反射ミラー30,31,32が収容されている。
【0040】
ところで、図示の1台の光走査装置13は、図1に示すマゼンタ画像形成ユニット1Mの感光ドラム2aを露光走査するものであって、図4に示すように、筐体25の上面開口部には樹脂製のカバー33が被着され、該カバー33の第3反射ミラー32と感光ドラム2aを結ぶ光路には走査光が通過するための開口部33aが形成されている。
【0041】
而して、光走査装置13において光源である不図示のレーザーダイオードから出射する光ビームは、不図示のコリメータレンズによって平行光とされた後、不図示のシリンドリカルレンズによって副走査方向に収束し、ポリゴンモーター27によって回転駆動されるポリゴンミラー26に入射する。
【0042】
上述のようにポリゴンミラー26に入射した光ビームは、ポリゴンミラー26によって偏向され、第1結像レンズ28を水平に通過した後、第1反射ミラー30によって垂直上方へと折り返され、更に第2反射ミラー31によって第3反射ミラー32に向かって折り返される。そして、第2反射ミラー31によって折り返された光ビームは、第2結像レンズ29を通過した後に第3反射ミラー32によって感光ドラム2aに向かって斜め上方に折り返され、カバー33に形成された開口部33aを通過して感光ドラム2aに向かい、該感光ドラム2a上に結像して主走査方向に等速移動するスポットを形成することによって感光ドラム2aを露光走査する。
【0043】
尚、図2〜図4に示す1台の光走査装置13は、図1に示すマゼンタ画像形成ユニット1Mの感光ドラム2aを露光走査するものであるが、図1に示すカラーレーザープリンターのプリンター本体100には前述のように同様の光走査装置13が4台並設されており、これら4台の光走査装置13によって他のシアン画像形成ユニット1Cとイエロー画像形成ユニット1Y及びブララック画像形成ユニット1Kの各感光ドラム2b,2c,2dを含む4つの感光ドラム2a〜2dの全てが光ビームによって露光走査される。
【0044】
ここで、第3反射ミラー(以下、単に「反射ミラー」と称する)32の取付構造を図2、図3及び図5〜図8に基づいて以下に説明する。
【0045】
図5は図3のB−B線断面図、図6は図3のC−C線断面図、図7は反射ミラーと板金ステイの斜視図、図8は板金ステイの斜視図である。
【0046】
反射ミラー32は、図2、図3及び図7に示すように主走査方向に長い長尺ミラーであって、その走査方向(左右方向)両端が金属製の板バネ34によって板金ステイ35に弾性支持されている。ここで、板金ステイ35は、図8に示すように、上面が開口するチャンネル状部材であって、その長手方向の一端底面には1つの凸部35aが突設され、他端底面には2つの凸部35bが突設されている。そして、反射ミラー32は、その底面の主左右方向両端が板金ステイ35の左右両端部に突設された凸部35a,35b上に載置され、その左右方向両端が板バネ34によって板金ステイ35に押圧されることによって板金ステイ35に弾性支持されている。
【0047】
又、反射ミラー32は、その主走査方向一端が図5に示すように筐体25の矩形孔25Aに差し込まれ、板バネ36によって矩形孔25Aの内面に形成された突起25aに押圧されることによって長手方向一端が筐体25に固定されている。反射ミラー32の長手方向他端は、図6に示すように、その裏面が筐体25の取付面25Bに突設された突起25bに板バネ37によって押圧されることによって固定されており、板バネ37はビス38によって筐体25に取り付けられている。
【0048】
ところで、反射ミラー32の主走査方向(左右方向)中央部に走査線湾曲補正手段39が設けられており、この走査線湾曲補正手段39によって感光ドラム2a上の走査線の湾曲が補正される。
【0049】
次に、上記走査線湾曲補正手段39の構成の詳細を図9〜図13に基づいて説明する。
【0050】
図9は走査線湾曲補正手段が設けられた反射ミラーの正面図、図10は図9のD−D線断面図、図11は図9のE部拡大詳細図、図12は図11のF−F線断面図、図13は走査線湾曲補正手段の保持ブラケットの斜視図である。
【0051】
走査線湾曲補正手段39は、反射ミラー32の主走査方向中央部に係合する保持ブラケット40と、該保持ブラケット40と前記板金ステイ35の間に縮装されて保持ブラケット40を介して反射ミラー32の主走査方向中央部を下方に引き付ける2つの圧縮バネ41と、板金ステイ35の底面の主走査方向中央に突設されたボス部35Aに進退可能(上下動可能)に螺合して反射ミラー32の長手方向中央を前記圧縮バネ41による引き付け方向(下方)とは逆方向の上方に押圧する調整ネジ42とで構成されている。
【0052】
ここで、上記保持ブラケット40は、図13に示すように、上面が開口するチャンネル状部材であって、その左右の上端縁の長手方向中央には内側に向かって折り曲げられた一対の係合爪40aがそれぞれ一体に形成され、各係合爪40aの両側には内側に向かって逆U字状に折り曲げられた板バネ40bがそれぞれ一体に形成されている。又、保持ブラケット40の底面の幅方向中央には円孔40cが形成され、その両側には前記圧縮バネ41の下端を係止するための各2つの三日月状の係止孔40dがそれぞれ形成されている。
【0053】
而して、保持ブラケット40は、板金ステイ35とこれに保持された反射ミラー32の主走査方向中央部を下方から覆うように開口部を上にして嵌め込まれ、その係合爪40aが反射ミラー32の上面に係合することによって該反射ミラー32に保持される。そして、保持ブラケット40と板金ステイ35との間に縮装された2つの圧縮バネ41によって保持ブラケット40が下方に付勢されることによって、該保持ブラケット40の係合爪40aが反射ミラー32に係合して該反射ミラー32の長手方向中央を下方へ引き付ける。これによって反射ミラー32は長手方向中央が下に凸となるように撓み変形する。尚、反射ミラー32の幅方向中央は、長手方向に対して直角方向(図9及び図11の紙面垂直方向)の2面が保持ブラケット40の板バネ40bによって保持されている。
【0054】
又、図12に示すように、板金ステイ35の底面の長手方向中央に突設されたボス部35Aにはネジ孔35cが刻設されており、このネジ孔35cには前記調整ネジ42のネジ部42aが下方から螺合している。そして、この調整ネジ42の板金ステイ35内に臨む先端部は反射ミラー32の底面の長手方向中央に当接している。又、調整ネジ42の板金ステイ35から下方へ突出する外径部のネジ部42aに隣設する部分には六角柱状部42bが一体に形成され、調整ネジ42の下端面にはドライバの先端が係合するための十字穴42cが形成されており、図12に示すように、十字穴42cは、保持ブラケット40の底面に形成された前記円孔40cから下方に向かって露出している。
【0055】
又、図9に示すように、保持ブラケット40の側部には矩形状の工具差込孔40eが形成されており、この工具差込孔40eには調整ネジ42の前記六角柱状部42bが臨んでいる。
【0056】
而して、前述のように反射ミラー32は、その長手方向中央部が2つの圧縮バネ41によって下方に引き付けられて下に凸となるように撓み変形する反面、その下面に当接する調整ネジ42による上方への押し付けによって上に凸となるように撓み変形する。従って、走査線の湾曲補正(ボウ補正)に際しては、保持ブラケット40の側部に形成された工具差込孔40eから不図示の調整工具の先端を差し込み、その先端を調整ネジ42の六角柱状部42bに係合させて該調整工具によって調整ネジ42を回せば、該調整ネジ42の先端による反射ミラー32に対する上方への押圧力が調整され、図1に示すカラーレーザープリンターにおける感光ドラム2a上での走査線の湾曲が補正される。
【0057】
ところで、本発明に係る光走査装置13においては、図7、図9及び図10に示すように、反射ミラー32の長手方向2箇所(長手方向において走査線湾曲補正手段39と板バネ34との間)において該反射ミラー32と板金ステイ35との間に弾性部材43が介設されている。各弾性部材43は、図10に示すように、その一部(幅方向両端部)反射ミラー32と板金ステイ35との間に挟み込まれて反射ミラー32の側面のみに接触し、他の部分は板金ステイ35の外周を覆っている。そして、本実施の形態では、弾性部材43の反射ミラー32に接触する外面には不図示のフィルムが被覆されている。
【0058】
以上のように、本発明に係る光走査装置13においては、反射ミラー32の長手方向2箇所において該反射ミラー32と板金ステイ35との間に弾性部材43を介設したため、この弾性部材43によるダンピング効果(減衰効果)によって板金ステイ35から反射ミラー32への振動が抑制され、反射ミラー32の振動が広い周波数域に亘って低く抑えられ、光走査装置13に高い光学性能が安定して確保される。ここで、図14に本発明に係る光走査装置13の反射ミラー32の振動特性を従来のそれと比較して示すが、破線にて示す従来の振動特性は或るポリゴン回転数域において加速度(振幅)にピーク値を示すが、このピーク値は実線にて示す本発明に係る光走査装置13の反射ミラー32の振動特性においては弾性部材43によるダンピング効果によって減衰されて低い値を示すことが分かる。
【0059】
又、本発明に係る光走査装置13においては、反射ミラー32の取付角度が板金ステイ35に形成された計3つの突起35a,35bによって決められるため、板金ステイ35に高い平面度が要求されることがなく、該板金ステイ35の製作が容易化する。そして、反射ミラー32の取付角度に依存しない側面と板金ステイ35との間に弾性部材43を設けることによって、環境変動等による反射ミラー32の角度変動が抑えられ、該反射ミラー32に高い光学性能が確保される。
【0060】
更に、本実施の形態では、弾性部材43の反射ミラー32に接触する面にフィルムを被覆したため、弾性部材43の組立時に反射ミラー32との摩擦がフィルムによって低く抑えられ、該弾性部材43の組立性が高められる。
【0061】
以上のように、本発明に係る光走査装置13によれば、反射ミラー32の振動が抑えられるため、図1に示すカラーレーザープリンターの各感光ドラム2a〜2d上での光ビームの上下動が抑えられ、ジッダ等の画像不良の発生が防がれて高質画像が安定的に得られる。
【0062】
尚、以上は光走査装置の1つの反射ミラーの取付構造について説明したが、他の反射ミラーについても同様の取付構造を採用することによって、これらの反射ミラーの振動を抑制することができる。又、以上は本発明をカラーレーザープリンター及びこれに備えられた光走査装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、カラープリンター以外のカラー複写機やモノクロを含む他の任意の画像形成装置及びこれに備えられた光走査装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1M マゼンタ画像形成ユニット
1C シアン画像形成ユニット
1Y イエロー画像形成ユニット
1K ブラック画像形成ユニット
2a〜2d 感光ドラム(感光体)
3a〜3d 帯電器
4a〜4d 現像装置
5a〜5d 転写ローラー
6a〜6d ドラムクリーニング装置
7 中間転写ベルト
8 駆動ローラー
9 テンションローラー
10 二次転写ローラー
11 ベルトクリーニング装置
12a〜12d トナーコンテナー
13 光走査装置
14 給紙カセット
15 ピックアップローラー
16 フィードローラー
17 リタードローラー
18 搬送ローラー対
19 レジストローラー対
20 搬送ローラー対
21 排紙トレイ
22 定着装置
23,24 排紙ローラー対
25 光走査装置の筐体
26 ポリゴンミラー
27 ポリゴンモーター
28,29 結像レンズ
30〜32 反射ミラー
33 カバー
34 板バネ
35 板金ステイ
36,37 板バネ
38 ビス
39 走査線湾曲補正手段
40 保持ブラケット
41 圧縮バネ
42 調整ネジ
43 弾性部材
100 プリンター本体
S,S’ 搬送パス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される光ビームを偏向する偏向器と、該偏向器によって偏向された光ビームを等速走査光に変換する結像レンズと、等速走査光を折り返して感光体に導く反射ミラーを筐体内に収容し、前記反射ミラーの主走査方向両端を板金ステイを介して前記筐体に対して弾性支持するとともに、該反射ミラーの形状を変化させて走査線の湾曲を補正する走査線湾曲補正手段を設けて成る光走査装置において、
前記反射ミラーと前記板金ステイとの間に弾性部材を介設したことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記反射ミラーの背面を前記板金ステイに形成された凸3箇所によって支持するとともに、前記弾性部材を前記反射ミラーの側面のみに接触させたことを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記弾性部材の前記反射ミラーに接触する面にフィルムを被覆したことを特徴とする請求項1又は2記載の光走査装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の光走査装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−159525(P2012−159525A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16977(P2011−16977)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】