説明

光配線盤

【課題】光ファイバコードの滑りを防止し、適切な姿勢に安定して保持可能な光配線盤を提供する。
【解決手段】左右の側板12の一方12Aから他方12Bにわたって、アダプタ群9と挟持部材3と下方誘導湾曲部21と懸架手段6とを鉛直背板11に配設し、アダプタ群と挟持部材と下方誘導湾曲部と懸架手段とを夫々上下複数配設し、懸架手段は接続側光ファイバコードKが懸架される横断面円弧山型の支持部材61と、懸架される接続側光ファイバコードKを上方から押さえる押圧部材64とを備え、アダプタ群のアダプタに一端Kaが接続される接続側光ファイバコードKは、挟持部材にて保持され、下方誘導湾曲部に沿って垂れ下がった後に上昇して懸架手段に懸架され、下方誘導湾曲部と懸架手段の間でU字状の余長配線部Eを形成すると共に懸架手段にて山型湾曲配線部Fを形成するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛直背板と左右の側板で配線収納部を形成した光配線盤は、鉛直背板の裏面側にて接続相手側の光ファイバが接続されたアダプタを、鉛直背板の表側に複数個突設していた。
そして、配線収納部内でアダプタに一端が接続される光ファイバコードは、鉛直背板から表側に突設された半円柱状部材に懸架状に配線されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−231021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、半円柱状部材に懸架された光ファイバコードは、振動や余長配線部の自重によって滑り落ちることがあった。そして、滑り落ちて垂れ下がったコードによって、アダプタに接続した一端側が引っ張られると、光の伝送損失が増加するといった問題や、他の部材と干渉してコードが損傷してしまうといった問題があった。また、コードの許容曲げ半径より小さな半径をもって湾曲する虞れや、接続コード同士が複雑に絡み合って、コードの接続切換作業や保守作業の際にコードを追いかけるのに手間がかかるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、光ファイバコードの滑りを防止し、適切な姿勢に保持可能な光配線盤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の光配線盤は、配線収納部を形成する鉛直背板と左右の側板を有し、接続相手側光ファイバが接続される複数個のアダプタから成るアダプタ群を、左右の側板の一方寄りに上下複数配設した光配線盤に於て、上記左右の側板の一方から他方にわたって、順次、上記アダプタ群と挟持部材と下方誘導湾曲部と懸架手段とを、上記鉛直背板に配設し、さらに、上記挟持部材と上記下方誘導湾曲部と懸架手段とを夫々上下複数配設し、上記懸架手段は、接続側光ファイバコードが懸架される横断面円弧山型の支持部材と、懸架される上記接続側光ファイバコードを上方から押さえる押圧部材と、を備え、上記アダプタ群のアダプタに一端が接続される上記接続側光ファイバコードは、上記挟持部材にて保持され、上記下方誘導湾曲部に沿って垂れ下がった後に上昇して上記懸架手段に懸架され、上記下方誘導湾曲部と上記懸架手段の間でU字状の余長配線部を形成すると共に上記懸架手段にて山型湾曲配線部を形成するように構成したものである。
【0007】
また、上記余長配線部を、上記鉛直背板に接近した平行面上に保持する余長部包囲枠部材を備え、該余長部包囲枠部材を上記鉛直背板に上下複数配設したものである。
また、上位置の上記懸架手段から上記左右の側板の上記他方に沿って垂れ下がった後に下位置の上記懸架手段に向かうように上昇する上記接続側光ファイバコードのUターン部を、上記鉛直背板の直交平面上に保持するUターン部包囲枠部材を備え、該Uターン部包囲枠部材を上記左右の側板の上記他方に上下複数配設したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接続側光ファイバコードのU字状の余長配線部の両側を保持でき、適切な姿勢に長時間にわたって安定して保持できる。また、接続側光ファイバコードを山型湾曲配線部の姿勢を保持できる。したがって、接続側光ファイバコードの懸架された箇所が振動や自重によって滑り落ちるのを防止し、接続側光ファイバコードに不所望な張力が発生するのを防止できる。つまり、適切な光の伝送効率に維持された配線ができる。また、接続側光ファイバコード同士が絡み合わず、接続切換作業等で、接続側光ファイバコードの識別(追いかけ)が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】要部拡大正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2のX方向矢視図である。
【図5】斜視図である。
【図6】挟持部材の一例を示す平面図である。
【図7】挟持部材の開放状態を示す側面図である。
【図8】懸架手段の一例を示す正面図である。
【図9】懸架手段の一例を示す平面図である。
【図10】懸架手段の一例を示す側面図である。
【図11】懸架手段の開放状態を示す側面図である。
【図12】支持部材の一例を示す平面図である。
【図13】図12のC−C断面図である。
【図14】懸架手段の一例を示す断面側面図である。
【図15】懸架手段の一例を示す断面側面図である。
【図16】懸架手段の比較例の作用説明図である。
【図17】懸架手段の別の比較例の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
図1及び図3に於て、本発明の光配線盤は、前方開口状の配線収納部10を形成する鉛直背板11と(鉛直背板11に平面視直角状の)左右の側板12,12とを有している。鉛直背板11と左右の側板12,12は、前方開口状の筐体1内配設され、筐体1の前方開口部には図示省略の蓋板が着脱自在に取着される。
【0011】
配線収納部10内の下方に、外部機器や外部装置と接続された複数の光ファイバケーブルを固定する固着具や、その光ファイバケーブルのテンションメンバを固定する固着具が設けられたケーブル固定部19を有している。
また、ケーブル固定部19にて固定される光ファイバケーブルから引き出されるケーブル側光ファイバと、鉛直背板11の裏面11b側にてアダプタ90に端部が接続されるアダプタ側光ファイバと、の融着部と余長部を収納する収納棚18を有している。
【0012】
ここで、外部機器や外部装置と接続された光ファイバとアダプタ側光ファイバが接続されて形成された光ファイバを、接続相手側光ファイバと呼ぶ。また、少なくとも一端Kaにアダプタ90に接続可能なコネクタ99を有し、該一端Kaが鉛直背板11の表面11a側からアダプタ90に接続される光ファイバを接続側光ファイバコード(又はコード)Kと呼ぶ。
【0013】
配線収納部10は、鉛直背板11の表面11a側にアダプタ90を多数個突設し、複数個のアダプタ90からなるアダプタ群9を、左右の側板12,12の一方12A寄りに、上下方向に複数配設している。アダプタ90は、鉛直背板11の裏面11b側で接続相手側光ファイバの端部が接続されている。
【0014】
また、鉛直背板11の表面11a側(配線収納部10側)に、左右の側板12,12の一方12Aから他方12B(一方の側板12Aから他方の側板12B)にわたって、順次、アダプタ群9と、コードKを水平状に保持する挟持部材3と、コードKを下方へガイドする板状の下方誘導湾曲部21と、下方誘導湾曲部21によって垂れ下がったコードKが挿通する帯板状の余長部包囲枠部材5と、コードKを山型湾曲状に保持する懸架手段6と、を配設している。
そして、挟持部材3と、下方誘導湾曲部21と、余長部包囲枠部材5と、懸架手段6と、を夫々、上下方向に複数(アダプタ群9と同数又は同数以上)配設している。
【0015】
また、各アダプタ群9の下方(アダプタ群9とアダプタ群9の間)に金属板製の棚板部材2を配設している。棚板部材2は、鉛直背板11から前方に突設される水平面状の棚面壁20と、棚面壁20からコードKが前方へ飛び出すのを防止する正面壁部22と、棚面壁20の他方の側板12B側の端部を湾曲して形成した下方誘導湾曲部21と、を有している。下方誘導湾曲部21の曲率半径寸法は、コードKの許容曲げ半径寸法以上(例えば、30mm以上)に設定されている。
【0016】
そして、棚面壁20の内、下方誘導湾曲部21の近傍に、挟持部材3を水平状に固着している。また、下方誘導湾曲部21の下端縁部に縁巻状(被覆状)に、コードKの滑り及び損傷を防止するゴム製の弾性部材29を設けている。また、棚面壁20に、アダプタ90から前方に突出した後に垂れ下がったコードKを左右方向水平状に方向転換させる(ガイドする)コードガイド28が固着されている。
また、アダプタ90の下方近傍の棚面壁20に、コードKのコネクタ99を、アダプタ90に対して容易に着脱するための(作業者の手が棚板部材2と干渉するのを防止する)窓部23を貫設している。
【0017】
図6及び図7に於て、挟持部材3は、複数本のコードKが載置される水平状の載置部30と、上下方向に開閉揺動して載置部30上のコードKを上方から押さえる押さえ部31と、コードKが1本ずつ挿通する複数本の凹溝部33aを有する櫛状の仕切り部33と、を備えている。仕切り部33は、アダプタ90に夫々接続された複数本のコードKを長手方向(配線収納部10の前後方向Q)に仕切るように設けられている。
【0018】
図8乃至図13に於て、懸架手段6は、コードKを山型湾曲状に懸架するための横断面円弧山型の懸架保持面61dを有する支持部材61と、支持部材61の懸架保持面61dに懸架されるコードKを上方から押さえる押圧部材64と、を備えている。支持部材61は鉛直背板11から前方突出状かつ水平状に設けている。
【0019】
図12と図13に於て、支持部材61は、横断面円弧山型に湾曲した板材の半割り円筒部81と、支持部材61の長手方向L1の一端61a側(配線収納部10の前方側)に配設され半割り円筒部81に懸架されるコードKが前方側へ滑落するのを防止する半円板(一端面)82と、支持部材61の長手方向L1の他端61b側に配設され鉛直背板11に固着するための矩形状の取付板部83と、を有している。懸架保持面61dを半割り円筒部81をもって構成している。
【0020】
半割り円筒部81の外周面81d(支持部材61の懸架保持面61d)の曲率半径寸法は、コードKの許容曲げ半径寸法以上(例えば、30mm以上)に設定されている。半円板82の外端縁部は、前方へのコードKの滑落を防止する外鍔部82aを形成する。半割り円筒部81と半円板82と取付板部83は、金属又は硬質樹脂で形成されている。
【0021】
支持部材61の懸架保持面61d(半割り円筒部81の外周面81d)に、懸架される複数(本)のコードKを長手方向L1(配線収納部10の前後方向Q)に区分けるための複数の仕切り部材68を突設している。
仕切り部材68は、懸架保持面61dからラジアル外方に突出する円柱又は多角形柱状に設けられている。正面視で頂部を挟んで左右一対に設けられる。平面視で長手方向L1に左右複数対設けている。
また、仕切り部材68は、芯となる円柱又は多角形柱状の金属製の柱部材68aと、柱部材68aに被覆状に設けられコードKの損傷を防止する軟質PVC(ポリ塩化ビニル)又はゴム製等のキャップ状の保護部材68bと、を有している。
【0022】
また、支持部材61(半割り円筒部81)の頂部に沿って横断面円弧状、かつ、長手方向L1に沿って平面視帯状で、コードKの滑り及び損傷を防止する滑り止め帯材65を固設している。滑り止め帯材65は、ネオプレンゴムコーティングしたもの、或いは、ゴム製部材であって、接着剤又は粘着剤にて懸架保持面61dの頂部に固着する。
また、半割り円筒部81の左右の下端縁部81e,81eに、コードKの損傷を防止するゴム製の弾性被覆部材67,67を縁巻状(U字状)に貼設(接着)している。
また、支持部材61の一端面82に、面状ファスナの雌雄の一方の面状ファスナ部91を貼設している。
【0023】
図10及び図11に於て、押圧部材64は、支持部材61に懸架されるコードKを上方から押さえる柔軟な直方体状のクッション部材62と、クッション部材62の上面に固着される金属帯材63と、金属帯材63の上面に固着されクッション部材62よりも長い可撓性の帯体69と、を備えている。言い換えると、帯体69とクッション部材62の間に、アルミニウム製等の金属帯材63を有している。クッション部材62は、塩化ビニルやウレタン等の発泡体である。
【0024】
帯体69の一端69a側かつ裏面側に、面状ファスナの雌雄の他方の面状ファスナ部92を設けている。なお、帯体69の裏面側全体を他方の面状ファスナ部92とするも良い。言い換えると、帯体69を面状ファスナ部材で形成するも良い。支持部材61の半円板82に設けた雌雄の一方の面状ファスナ部91と他方の面状ファスナ部92とは着脱自在として、図10の閉状態から図11の開放状態に、押圧部材64を揺動可能である。
【0025】
また、帯体69の他端69b側を、支持部材61の他端61b側に固着している。具体的には、支持部材61の取付板部83と、矩形状の取着板片66と、で帯体69の他端69b側を挟持状に固着している。
【0026】
帯体69の他端69b側を支持部材61の他端61b側に固着することで、押圧部材64を他端61b側を中心として(押圧部材64を支持部材61に対して)上下方向に揺動自在とし、面状ファスナの雌雄(一方の面状ファスナ部91と他方の面状ファスナ部92と)の着脱にて、押圧部材64と支持部材61の懸架保持面61dの間を開閉自在としている。面状ファスナの雌雄の取着にて、押圧部材64のクッション部材62が適切に弾性圧縮されて、懸架されたコードKを押圧して湾曲山型状の姿勢保持及び滑りを防止するように構成している。また、半割り円筒部81の頂部より上位置に帯体69の揺動中心となる折れ曲がり部69eが形成される。
【0027】
図2及び図3に於て、余長部包囲枠部材5は、下方誘導湾曲部21と懸架手段6の間、かつ、下方誘導湾曲部21と懸架手段6よりも下方位置に、配設されている。
余長部包囲枠部材5は、アダプタ90に一端Kaが接続されるコードKが、棚面壁20に保持され、かつ、挟持部材3にて保持され、下方誘導湾曲部21に沿って垂れ下がった後に上昇して懸架手段6に懸架された際、下方誘導湾曲部21と懸架手段6の間で形成されるU字状の余長配線部Eを、前後左右方向に包囲する枠部を有している。
【0028】
余長部包囲枠部材5の枠部は、余長配線部Eの左右方向の振れや移動を防止する左右一対の側方鉛直帯板部51,51と、前方への振れや移動(配線収納部10からの飛び出し)を防止する鉛直板状の前方鉛直帯板部50と、鉛直背板11に固設される後方取着用帯板部52と、である。つまり、余長部包囲枠部材5は、平面視偏平矩形状の包囲空間59を有している。
また、前方鉛直帯板部50は、前後方向に開口する傾斜状のスリット50aを有している。
また、余長部包囲枠部材5は、前方鉛直帯板部50及び側方鉛直帯板部51,51の上端縁部に縁巻き状(被覆状)に、コードKの損傷を防止するゴム等の弾性部材から成るカバー部材55(図1及び図3に於ては図示省略)を有している。
【0029】
また、余長部包囲枠部材5のアダプタ群9寄りの側方鉛直帯板部51の上端縁部を、下方誘導湾曲部21の下端縁部に、左右上下方向に接近させている(平面視で接する又は重なるように接近させている)。つまり、下方誘導湾曲部21が、コードKを下方に誘導するだけでなく、包囲枠部材5の枠内へ確実にコードKを案内するように、余長部包囲枠部材5と、下方誘導湾曲部21とを、相互に接近させている。
【0030】
また、図1に於て、最下位置の余長部包囲枠部材5の下方に、コードKを下方から支持し、垂れ下がったコードKと収納棚18等の他部材との干渉を防止する受け板部材8を鉛直背板11から前方に突設している。
【0031】
図2乃至図4に於て、他方の側板12Bに、懸架手段6に懸架され、他方の側板12B寄りに垂れ下がるコードKを、他方の側板12Bに沿うように、前後左右方向の振れ及び移動を規制すると共に配線収納部10からの飛び出しを防止する帯板状の側板用包囲部材7を設けている。側板用包囲部材7は、他方の側板12Bに上下方向に複数配設されている。側板用包囲枠部材7は、懸架手段6よりも下方位置に配設される。
【0032】
側板用包囲部材7は、言い換えると、コードKの他端Kbが、一端Kaとは別の(下位置の)アダプタ群9に接続される場合に、コードKが上位置の懸架手段6から他方の側板12Bに沿って垂れ下がった後に、下位置の懸架手段6に向かうように上昇するコードKのUターン部Gを前後左右方向に包囲する枠部を有するUターン部包囲枠部材7である(図5参照)。
【0033】
Uターン部包囲枠部材7の枠部は、Uターン部Gの前後方向の振れや移動を防止する前後一対の前方・後方鉛直帯板部71,と、配線収納部10の内方(左右内方)への振れや移動を防止する左右内方鉛直帯板部70と、他方の側板12Bに固設される左右外方取着用帯板部72と、を有している。つまり、Uターン部包囲枠部材7は、平面視偏平矩形状の包囲空間79を有している。また、左右内方鉛直帯板部70には、左右方向に開口する傾斜状のスリット70aを有している。また、Uターン部包囲枠部材7は、左右内方鉛直帯板部70及び前方・後方鉛直帯板71,71,の上端縁部に縁巻き状(被覆状)に、コードKの損傷を防止するゴム等の弾性部材から成るカバー部材75(図1及び図3に於ては図示省略)を有している。
【0034】
即ち、配線収納部10には、側板12,12の一方12Aから他方12Bにわたって、順次、アダプタ群9、挟持部材3、下方誘導湾曲部21、余長部包囲枠部材5、懸架手段6、Uターン部包囲枠部材7、を配設し、さらに、夫々を上下方向に複数配設している。
また、棚板部材2と、挟持部材3と、余長部包囲枠部材5と、懸架手段6と、Uターン部包囲枠部材7と、を1つのアダプタ群9に対応する配線経路構成ユニットとし、該ユニットを上下方向に複数(アダプタ群9と同数又は同数以上)配設している。
また、挟持部材3と、余長部包囲枠部材5と、懸架手段6と、Uターン部包囲枠部材7と、を正面視で千鳥状に配設している。
【0035】
次に、光配線盤の使用方法(作用)について説明する。
図3に示すように、アダプタ90には、鉛直背板11の裏面11b側で接続相手側光ファイバの一端が、予め接続されている。
配線収納部10の開口前方側に突出したアダプタ90に、そのアダプタ90と対応するコネクタ99を有する接続側光ファイバコードKの一端Kaが接続される。
【0036】
図2と図3及び図5に示すように、アダプタ90に一端Kaが接続されたコードKは、棚板部材2の棚面壁20に立設されたコードガイド28にて、左右方向水平状に方向変換され、ループ状の余長部を形成せずに、挟持部材3によって左右方向水平状に保持され、下方誘導湾曲部21に沿って、余長部包囲枠部材5の枠内(包囲空間59)へ導入される。コードKは、余長部包囲枠部材5を上方から下方へ挿通後に、上昇して余長部包囲枠部材5を下方から上方へ再び挿通し、図11に示すように開放状態の懸架手段6の支持部材61に懸架される。一方の面状ファスナ部91と他方の面状ファスナ部92を取着させると、図2と図3及び図5に示すように、コードKは、下方誘導湾曲部21と懸架手段6の間でU字状(谷状)の余長配線部Eを形成し、余長配線部Eと他方の側板12Bの間で山型湾曲配線部Fを形成する。
【0037】
さらに、余長部包囲枠部材5にて、余長配線部Eは、振れや移動が規制されると共に鉛直背板11に接近した平行面上に保持される。懸架手段6にて、山型湾曲配線部Fは、振れや移動が規制されると共に鉛直背板11に接近した平行面上に保持される。
つまり、アダプタ群9寄りに谷状の余長配線部Eを有すると共に側板12B寄りで山型湾曲配線部Fを有する波状配線部Wが鉛直背板11に接近した平行面上に形成される。
【0038】
さらに、コードKの他端Kbが、一端Kaが接続されている(上位置の)アダプタ群9より下位置のアダプタ群9のアダプタ90に接続する場合に、図2と図4及び図5に示すように上位置の懸架手段6から他方の側板12Bに沿って垂れ下がった後に下位置の懸架手段6に向かうようにUターンして上昇するUターン部Gは、Uターン部包囲枠部材7の枠内(包囲空間79)によって、前後左右方向の振れ及び移動が規制されると共に、鉛直背板11の直交平面(他方の側板12Bに平行な面)上に保持される。言い換えると、Uターン部Gが他方の側板12Bに平行な面上に保持された後、コードKは左右内方に向かって下位置の懸架手段6に懸架される。
【0039】
図2及び図5に示すように、コードKの他端Kb側が、下位置の下方誘導湾曲部21と下位置の懸架手段6の間で一端Ka側と同様に、余長配線部Eを形成し、余長配線部Eと他方の側板12Bの間で山型湾曲配線部Fを形成する。
つまり、配線収納部10内において、上位置のアダプタ群9に対応するコードKの一端Ka側に上位置の波状配線部Wと、下位置のアダプタ群9に対応するコードKの他端Kb側に下位置の波状配線部Wと、を有し鉛直背板11に接近した平行面上の上下2重波状配線部を形成し、かつ、鉛直背板11の直交平面上にUターン部Gを形成した配線となる。このように平面視直交する鉛直背板11と他方の側板12Bに沿って、平面視直交状に、光ファイバコードKが配線されている部位を有している。このような配線は、コードKが許容曲げ半径(例えば半径30mm)以上の半径をもって配線されていることが一目で直感的にわかり、許容曲げ半径の確認作業を容易にする。また、切換作業等の際に、コードKを目視で追いかけることを容易にする。しかも、図1と図2に示す正面視に於ける左右幅寸法が(従来よりも)著しく減少して、コンパクト化を図り得る利点がある。
【0040】
なお、コードKの他端Kb側が、接続相手側光ファイバとは別の装置や機器と接続されている場合は、懸架手段6に懸架され、他方の側板12B寄りに垂れ下がる接続ケーブルKは、他方の側板12Bに沿うように、Uターン部包囲枠部材7を挿通し、その後、配線収納部10(筐体1)の外部に引き出される。
【0041】
下方誘導湾曲部21は、コードKが水平状から急な角度で折れて垂れ下がるのを防止し、コード許容曲げ半径以上の半径をもたせて、余長部包囲枠部材5内へ導く。
また、余長部包囲部材5にスリット50aを、Uターン部包囲枠部材7にスリット70aを夫々、傾斜状に設けているので、振動等による振れだけでは、枠内からコードKが飛び出す虞がない。作業者が意図的にコードKを斜めに保持してスリット50a,70aを挿通させれば、(枠内を上下方向に挿通させることなく)容易にコードKを差し込んだり引き出すことが可能であり、作業効率を向上させる。
【0042】
また、余長配線部Eのアダプタ群9近傍側は挟持部材3にて滑り(移動)が防止され、他方の側板12B側は懸架手段6によって滑りが防止されている。このように、挟持部材3と余長部包囲枠部材5と懸架手段6にて、余長配線部Eを保持することで、コードKに伝送効率が低下するような大きな押圧力を与えなくとも確実に余長配線部Eの姿勢を適切に保持する。
【0043】
さらに、懸架手段6は、山型湾曲配線部Fの姿勢を保持する。また、懸架手段6の滑り止め帯材65は、押圧部材64がコードKを押圧している時はもちろんのこと、押圧していない仮置き状態であっても、自重等による滑り落ちや、配線作業中の引きずりによる損傷を防止する。また、弾性被覆部材67は、コードKの配線作業の際や、配線後の振れによって、下端縁部81eに接触するのを防止し、損傷を防止する。仕切り部材68は、複数本のコードKが懸架手段6(懸架保持面61d)に懸架されても、長手方向L1(配線収納部10の前後方向Q)に区分けでき、長手方向L1位置の偏りを防止して、コードKが上下方向に重なって互いに押圧し(潰し合い)伝送損失が増加するのを防止する。また、コードKの切り換え作業の際に、対象となるコードKを容易に発見可能としている。また、懸架されたコードKの捩れを防止し、山型湾曲配線部Fを鉛直背板11に平行面上に保持する。金属帯材63は、支持部材61の長手方向L1に略均一にクッション部材62を圧縮させ適切かつ均一な弾性的押圧力をコードKに付与する。
【0044】
また、懸架手段6は、図14に示すように、クッション部材62が(弾性的に)上下方向に圧縮されていない自然状態で、一端62a側厚み寸法Haと他端62b側厚み寸法Hbとを略同等に設定している。そして、図15に示すように、一端62a側厚み寸法Haが適切な弾性的押圧力を発揮する下限厚み寸法(この厚み寸法より小さくなると、コードKを介在させて押圧した際に伝送効率に悪影響を及ぼす虞れのある寸法)以上、かつ、コードKに適切な押圧力を発揮する上限厚み寸法(この寸法を越えるとコードKを介在させて押圧した際に姿勢維持や滑り防止が困難となる厚み寸法)以下、である場合に、他端62b側厚み寸法Hbが一端62a側厚み寸法Haと略同等となるように取着板片66の上端66aの位置寸法(滑り止め部材65の頂部からの高さ寸法)を、所定寸法Yに、設定している。
言い換えると、一端62a側厚み寸法Haが適切な押圧力を発揮する上記下限乃至上限厚み寸法の場合に、他端62b側厚み寸法Hbが一端62a側厚み寸法Haと略同等となった状態で、帯体69の折れ曲がり部69eが取着板片66の上端66aに当接して折れ曲がるように、取着板片66の上端66aの位置寸法を所定寸法Yに設定している。
【0045】
クッション部材62の一端62a側厚み寸法Haは、収納空間10の前方側から容易に目視できるため、一端62a側厚み寸法Haは上記下限乃至上限厚み寸法に設定される。しかし、図16に示す比較例のように、所定寸法Y未満の寸法Z1に、取着板片66の上端66aの位置寸法が設定されていたとすると、一端62a側厚み寸法Haが上記下限乃至上限厚み寸法に設定されても、他端62b側の厚み寸法Hbは一端62a側厚み寸法Haより小さくなって、他端62b側に保持されるコードKの伝送効率に悪影響を与える虞れがある。
また、図17に示す別の比較例のように、所定寸法Yを越える寸法Z2に、取着板片66の上端66aの位置寸法が設定されると、一端62a側厚み寸法Haより他端62b側の厚み寸法Hbが大きくなって、押圧力が弱く、他端62b側に保持されるコードKの姿勢を保持できず、滑り等が発生する虞れがある。
このように、取着板片66の上端66aの位置寸法を所定寸法Yに設定することで、配線収納部10の奥側となる、クッション部材62の他端62b側厚み寸法Hbを目視して確認する手間が省略されると共に確実に適切な押し圧力でコードKを保持する。
【0046】
なお、本発明は、設計変更可能であって、仕切り部材68を長手方向L1に2対設けた場合を図示したが、長手方向L1に3対以上、設けるも良い。余長部包囲枠部材5とUターン部包囲枠部材7の下端縁部にコードKの損傷を防止する弾性の被覆部材を設けても良い。
【0047】
以上のように、本発明の光配線盤は、配線収納部10を形成する鉛直背板11と左右の側板12,12を有し、接続相手側光ファイバが接続される複数個のアダプタ90から成るアダプタ群9を、左右の側板12,12の一方12A寄りに上下複数配設した光配線盤に於て、左右の側板12,12の一方12Aから他方12Bにわたって、順次、アダプタ群9と挟持部材3と下方誘導湾曲部21と懸架手段6とを、鉛直背板11に配設し、さらに、挟持部材3と下方誘導湾曲部21と懸架手段6とを夫々上下複数配設し、懸架手段6は、接続側光ファイバコードKが懸架される横断面円弧山型の支持部材61と、懸架される接続側光ファイバコードKを上方から押さえる押圧部材64と、を備え、アダプタ群9のアダプタ90に一端Kaが接続される接続側光ファイバコードKは、挟持部材3にて保持され、下方誘導湾曲部21に沿って垂れ下がった後に上昇して懸架手段6に懸架され、下方誘導湾曲部21と懸架手段6の間でU字状の余長配線部Eを形成すると共に懸架手段6にて山型湾曲配線部Fを形成するように構成したので、余長配線部Eの両側を、許容曲げ半径以上の半径をもった適切な姿勢に保持できる。また、接続側光ファイバコードKを山型湾曲状の姿勢を保持できる。接続側光ファイバコードKの懸架された箇所が振動や自重によって滑り落ちるのを防止し、接続側光ファイバコードKに不所望な張力が発生するのを防止できる。つまり、適切な伝送効率に維持された配線ができる。また、接続側光ファイバコードK同士が絡み合わず、接続切換作業等で、接続側光ファイバコードKの識別(判別)が容易にできる。配線収納部10内をきれいに美しく配線でき、配線の確認作業が容易にできる。
【0048】
また、余長配線部Eを、鉛直背板11に接近した平行面上に保持する余長部包囲枠部材5を備え、余長部包囲枠部材5を鉛直背板11に上下複数配設したので、余長配線部Eを適切な曲げ半径をもって配線・収納できる。目視で直感的に適切に配線されているか確認できる。余長配線部EによってコードKの揺れと、それに伴う滑りや張力の発生を防止できる。
【0049】
また、上位置の懸架手段6から左右の側板12,12の他方12Bに沿って垂れ下がった後に下位置の懸架手段6に向かうように上昇する接続側光ファイバコードKのUターン部Gを、鉛直背板11の直交平面上に保持するUターン部包囲枠部材7を備え、Uターン部包囲枠部材7を左右の側板12,12の他方12Bに上下複数配設したので、上位置のアダプタ群9と下位置のアダプタ群9を接続するような煩雑になりやすい配線を、容易に配線できる。Uターン部Gの揺れによるコードKの滑りや張力の発生を防止できる。さらに、光配線盤の左右の幅方向を減少して、コンパクト化を図り得る。
【符号の説明】
【0050】
3 挟持部材
5 余長部包囲枠部材
6 懸架手段
7 Uターン部包囲枠部材
9 アダプタ群
10 配線収納部
11 鉛直背板
12 側板
12A (左右側板の)一方
12B (左右側板の)他方
21 下方誘導湾曲部
61 支持部材
64 押圧部材
90 アダプタ
E 余長配線部
F 山型湾曲配線部
G Uターン部
K 接続側光ファイバコード
Ka(接続側光ファイバコードの)一端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線収納部(10)を形成する鉛直背板(11)と左右の側板(12)(12)を有し、接続相手側光ファイバが接続される複数個のアダプタ(90)から成るアダプタ群(9)を、上記左右の側板(12)(12)の一方(12A)寄りに上下複数配設した光配線盤に於て、
上記左右の側板(12)(12)の一方(12A)から他方(12B)にわたって、順次、上記アダプタ群(9)と挟持部材(3)と下方誘導湾曲部(21)と懸架手段(6)とを、上記鉛直背板(11)に配設し、さらに、上記挟持部材(3)と上記下方誘導湾曲部(21)と懸架手段(6)とを夫々上下複数配設し、
上記懸架手段(6)は、接続側光ファイバコード(K)が懸架される横断面円弧山型の支持部材(61)と、懸架される上記接続側光ファイバコード(K)を上方から押さえる押圧部材(64)と、を備え、
上記アダプタ群(9)のアダプタ(90)に一端(Ka)が接続される上記接続側光ファイバコード(K)は、上記挟持部材(3)にて保持され、上記下方誘導湾曲部(21)に沿って垂れ下がった後に上昇して上記懸架手段(6)に懸架され、上記下方誘導湾曲部(21)と上記懸架手段(6)の間でU字状の余長配線部(E)を形成すると共に上記懸架手段(6)にて山型湾曲配線部(F)を形成するように構成したことを特徴とする光配線盤。
【請求項2】
上記余長配線部(E)を、上記鉛直背板(11)に接近した平行面上に保持する余長部包囲枠部材(5)を備え、該余長部包囲枠部材(5)を上記鉛直背板(11)に上下複数配設した請求項1記載の光配線盤。
【請求項3】
上位置の上記懸架手段(6)から上記左右の側板(12)(12)の上記他方(12B)に沿って垂れ下がった後に下位置の上記懸架手段(6)に向かうように上昇する上記接続側光ファイバコード(K)のUターン部(G)を、上記鉛直背板(11)の直交平面上に保持するUターン部包囲枠部材(7)を備え、該Uターン部包囲枠部材(7)を上記左右の側板(12)(12)の上記他方(12B)に上下複数配設した請求項1又は2記載の光配線盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−53098(P2012−53098A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193234(P2010−193234)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】