説明

光電式インクリメンタル型エンコーダ

【課題】スケールの格子ピッチが狭くなっても、従来と同様の長いピッチの受光素子アレイで検出できるようにして、高速化・低価格化・小型化を実現する。
【解決手段】光源10からの光を変調するための第1格子と、(メイン)スケール20上に形成された第2格子22と、前記第1、第2格子によって形成された干渉縞が投影される第3格子とを有する3格子型の光電式インクリメンタル型エンコーダにおいて、第1格子と第3格子の作用を兼ね備えた第1・第3兼用格子32、33をインデックス(スケール)30に設け、該第1・第3兼用格子32、33上に生じたモアレ縞34をレンズ光学系40で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3格子型の第3格子面上にモアレ縞を生成させて、これを検出する光電式インクリメンタル型エンコーダに係り、特に、スケールの格子ピッチが狭くなっても、従来と同様の長いピッチの受光素子で検出でき、高速化・低価格化・小型化が実現可能な光電式インクリメンタル型エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の図5に示されるように、光源からの光を変調するための第1格子と、メインスケール(単にスケールと称する)上に形成された第2格子と、前記第1、第2格子によって形成された干渉縞が投影される、第3格子が一体化された受光素子アレイを備え、スケール上に配置された光学格子(第2格子)を、3格子原理と受光素子アレイで検出する方法がある。
【0003】
この3格子原理を用いた反射型エンコーダの場合、特許文献1の図6に示されるように、被検出スケールの格子ピッチに合わせて、受光素子アレイのピッチを決定している。
【0004】
ここで、検出するべきスケールの格子ピッチを狭くすると、受光素子アレイのピッチも合わせて狭くしなければ検出できない。例えば、格子ピッチを1μmとすると、受光素子アレイのピッチは0.25μm(4相を検出する場合)にしなければならない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−164515号公報(図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体デバイスとして検出できる受光素子アレイ(フォトダイオード構造)のピッチを狭くするのは技術的に制限があり、コストアップにもつながる。又、実現できたとしても、個々のフォトダイオードのパターンの周囲長が長くなって、パターン境界部に形成される接合容量が大きくなってしまい、検出の高速化が困難になる。又、光を斜めから入射すると、検出ヘッドのサイズが大きくなってしまう等の問題点を有する。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、スケールの格子ピッチが狭くなっても、従来と同様の長いピッチの受光素子(アレイ)で検出でき、高速化・低価格化・小型化を実現可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光源からの光を変調するための第1格子と、スケール上に形成された第2格子と、前記第1、第2格子によって形成された干渉縞が投影される第3格子とを有する3格子型の光電式インクリメンタル型エンコーダにおいて、第1格子と第3格子の作用を兼ね備えた第1・第3兼用格子をインデックススケール(単にインデックスと称する)に設け、該第1・第3兼用格子に生じたモアレ縞をレンズ光学系で検出することにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
ここで、前記光源からの光をビームスプリッタで分岐し、第1・第3兼用格子を介してスケール面に垂直に照射すると共に、スケール面からの反射光により第1・第3兼用格子上に生じたモアレ縞をレンズ光学系で検出することができる。
【0010】
又、前記第1・第3兼用格子及び第2格子のピッチに対して、受光素子アレイのピッチを大とすることができる。
【0011】
又、前記モアレ縞の周期と受光素子アレイのピッチが合うように、前記レンズ光学系の倍率を設定することができる。
【0012】
又、前記光源からの光を、スケール移動方向に対して横方向から入射するようにすることができる。
【0013】
又、前記レンズ光学系の開口数を、第1・第3兼用格子のパターンを検出せずに、モアレ縞のみを検出できるように設定することができる。
【0014】
又、前記レンズ光学系を、投影レンズと、その焦点位置にアパーチャが配設されたテレセントリック光学系とすることができる。
【0015】
又、前記テレセントリック光学系のアパーチャ直径を、第1・第3兼用格子のパターンを解像しないカットオフ周波数に設定することができる。
【0016】
又、前記第1・第3兼用格子を、インデックスのスケール側面に形成することができる。
【0017】
又、前記第1・第3兼用格子と平行に原点用パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インデックスの第1・第3兼用格子面上にモアレ縞を生成させて、これをレンズ光学系で検出することにより、長いピッチの受光素子(アレイ)で検出することができる。従って、受光素子(アレイ)のピッチを狭くすることなく、細かい周期の観測ができる。よって、従来と同様の広いピッチの受光素子が使用可能であり、低価格化及び接合容量小による高速化を実現できる。
【0019】
又、斜め入射構成の場合、光軸が斜めになってしまうので、光学部品を斜めに配設する必要があるが、垂直入射にすることで、レンズ光学系の設計やアライメントの難易度を下げることができる。又、検出ヘッドのサイズを小さくして小型化を図ることができる。
【0020】
ここで、レンズ光学系の開口数NAを規定することにより、第1・第3兼用格子のパターンを検出せずに、モアレ縞のみを歪み無く検出することができる。
【0021】
又、テレセントリック光学系のアパーチャ直径を、第1・第3兼用格子のパターンを解像しないようなカットオフ周波数に設定することで、コントラストを向上して、モアレ縞のみを歪み無く検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態は、図1(斜視図)及び図2(光路を示す断面図)に示す如く、光源10からの光を変調するための第1格子と、スケール20上に形成された第2格子22と、前記第1、第2格子によって形成された干渉縞が投影される第3格子とを有する3格子型光電式インクリメンタルエンコーダにおいて、第1格子と第3格子の作用を兼ね備えた第1・第3兼用格子32をインデックス30上に設け、光源10からの光をインデックス30上に配置したビームスプリッタ36で分岐し、第1・第3兼用格子32を介してスケール面に垂直に照射すると共に、スケール面からの反射光により、第1・第3兼用格子32上に生じたモアレ縞34(図4参照)を、投影レンズ42でなるレンズ光学系40を用いて受光素子アレイ50に投影するようにしたものである。
【0024】
前記光源10、インデックス30、ビームスプリッタ36、レンズ光学系40及び受光素子アレイ50は、図示しない検出器内に配設され、スケール20に対して、測定方向に相対移動可能とされている。
【0025】
ここで、インデックス30上に形成する第1・第3兼用格子32は、上面からの光を反射しない膜構造、例えば図3に示すような、Cr膜32aと、例えばCrOでなる反射防止膜32bの2層膜とされている。なお、第1・第3兼用格子32の構成は、これに限定されない。
【0026】
今、生じるモアレ縞34の周期をPm、第2格子22の周期をP2とすると、インデックス30上の第1・第3兼用格子32の周期P13は、次式で表わされる。
【0027】
13={P2+(P2m)/(Pm−P2)}/2 …(1)
【0028】
従って、図4中に示す如く、例えば第1・第3兼用格子32の周期P13=1.005μm、第2格子22の周期P2=1μmとすると、モアレ縞34の周期Pm=101μmとなり、第2格子22の周期P2の101倍周期のモアレ縞Pmを、比較的簡単な光学系で観測することが可能となる。
【0029】
ここで、レンズ光学系40の倍率は、受光素子アレイ50のピッチとモアレ縞34の周期Pmが合うように設定する。具体的には、投影レンズ42を通過して受光素子アレイ50上に生じる投影像46(図4参照)の周期と、受光素子アレイ50のピッチが合うようにする。
【0030】
ここで、図4に示す第2実施形態のように、レンズ光学系40に、投影レンズ42と、その焦点位置に配設されたアパーチャ44でなるテレセントリック光学系を用いると、受光素子アレイ50と投影レンズ42のエアギャップの自由度が高く設定できる。更に、テレセントリック光学系のアパーチャ44の直径を、第1・第3兼用格子32のパターンを解像しないようなカットオフ周波数に設定することで、コントラストを向上することができる。
【0031】
具体的には、モアレ縞周期Pmの半分よりも短いピッチの縞をカットするために、光学系の開口数NAを次式のように設定する。
【0032】
NA=f×λ …(2)
【0033】
ここで、fはモアレ縞34の空間周波数、λは光の波長である。
【0034】
今、投影レンズ42の焦点距離をL、アパーチャ44の開口径をDとすると、次式の関係が成立する。
【0035】
D=2×L×NA …(3)
【0036】
これにより、レンズ光学系40が第1・第3兼用格子32のパターンを解像しなくなるので、歪みの無い波形の検出が実現できる。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態を図5に示す。
【0038】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成において、第1・第3兼用格子33を、インデックス30のスケール20側面に形成したものである。
【0039】
前記第1・第3兼用格子33は、上下両面からの光を反射しない膜構造、例えば図6に示すような、Cr膜33aと、例えばCrOでなる反射防止膜33bの3層膜とされている。これにより、インデックス30から直接受光素子アレイ50に入る迷光(図中の点線矢印で示す光線等)を防止できる。なお、第1・第3兼用格子33の構成は、これに限定されない。
【0040】
他の点については、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0041】
本実施形態によれば、スケール20と第1・第3兼用格子33間の格子間ギャップGを小さくすることができる。
【0042】
この点を利用した第4実施形態を図7に示す。
【0043】
本実施形態は、第3実施形態と同様の構成において、スケール20及びインデックス30上に、それぞれ、第2格子22及び第1・第3兼用格子33と平行に原点用パターン24、38を設けると共に、受光基板52上に、受光素子アレイ50と平行に原点検出用の受光素子54を設けたものである。なお、受光素子アレイと原点検出用受光部を一体化した受光用デバイス(IC)でもよい。
【0044】
前記インデックス30上の第1・第3兼用格子33と原点用パターン38の配置を図8に示す。ここで、原点用パターン38は、スケールパターンと逆パターンとされ、例えば、スケールが反射の場合は透過とされる。
【0045】
本実施形態によれば、スケール20とインデックス30上の原点用パターン38の格子間ギャップを小さくすることが可能で、スケール20上の原点用パターン24の回折光による迷光を防止し、原点の検出効率が向上する。
【0046】
なお、第3、第4実施形態においても、第2実施形態と同様にレンズ検出系40をテレセントリック光学系として、エアギャップの許容範囲を広げることができる。
【0047】
なお、前記実施形態においては、いずれも、受光素子アレイが用いられていたが、受光素子の種類は、アレイ化されたものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態の全体構成を示す斜視図
【図2】同じく光路を示す断面図
【図3】同じく第1・第3兼用格子の構成を示す断面図
【図4】本発明の第2実施形態の構成を示す断面図
【図5】同じく第3実施形態の構成を示す断面図
【図6】同じく第1・第3兼用格子の構成を示す断面図
【図7】本発明の第4実施形態の構成を示す断面図
【図8】同じくインデックス上のパターンを示す(A)平面図及び(B)側面図
【符号の説明】
【0049】
10…光源
20…(メイン)スケール
22…第2格子
24、38…原点用パターン
30…インデックス(スケール)
32、33…第1・第3兼用格子
34…モアレ縞
36…ビームスプリッタ
40…レンズ光学系
42…投影レンズ
44…アパーチャ
46…投影像
50…受光素子アレイ
52…受光基板
54…原点検出用受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を変調するための第1格子と、スケール上に形成された第2格子と、前記第1、第2格子によって形成された干渉縞が投影される第3格子とを有する3格子型の光電式インクリメンタル型エンコーダにおいて、
第1格子と第3格子の作用を兼ね備えた第1・第3兼用格子をインデックスに設け、
該第1・第3兼用格子に生じたモアレ縞をレンズ光学系で検出することを特徴とする光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項2】
前記光源からの光をビームスプリッタで分岐し、第1・第3兼用格子を介してスケール面に垂直に照射すると共に、スケール面からの反射光により第1・第3兼用格子上に生じたモアレ縞をレンズ光学系で検出することを特徴とする請求項1に記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項3】
前記第1・第3兼用格子及び第2格子のピッチに対して、受光素子アレイのピッチが大とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項4】
前記モアレ縞の周期と受光素子アレイのピッチが合うように、前記レンズ光学系の倍率が設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項5】
前記光源からの光が、スケール移動方向に対して横方向から入射するようにされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項6】
前記レンズ光学系の開口数が、第1・第3兼用格子のパターンを検出せずに、モアレ縞のみを検出できるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項7】
前記レンズ光学系が、投影レンズと、その焦点位置にアパーチャが配設されたテレセントリック光学系とされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項8】
前記テレセントリック光学系のアパーチャ直径が、第1・第3兼用格子のパターンを解像しないカットオフ周波数に設定されていることを特徴とする請求項7に記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項9】
前記第1・第3兼用格子が、インデックスのスケール側面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。
【請求項10】
前記第1・第3兼用格子と平行に原点用パターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の光電式インクリメンタル型エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−69033(P2009−69033A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238727(P2007−238727)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】