説明

免震建物用の排水配管

【課題】免震建物の排水管構造においてフレキシブル配管に変わる安価で施工の簡単な構造を提供する。
【解決手段】地盤に定着された基礎7と、該基礎の上に免震手段を介して設置された建物との間に設置される排水用配管1であって、前記建物側に固定された配管2と、前記基礎側に固定された配管3と、そして前記建物側固定配管2と前記基礎側固定配管3との間に設置され、かつ、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続配管4で免震建物用の排水配管を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建物用の排水配管であって、特に地盤に定着された基礎と、該基礎の上に免震手段を介して設置された建物との間に設置される排水用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地盤定着された基礎と建物との間に免震装置を介在させることにより、地震による地盤の震動が建物に直接伝わらないようにする技術(免震技術)が開発されている。このような免震装置により建物の揺れを減少させる場合は地盤と建物との間で相対的な位置のズレを生じるため、地盤に定着された基礎と建物とを接続する部材をどのような構造とし、地震による基礎と建物との間で生じた変位を如何に吸収するかが問題となる。
【0003】
例えば、免震装置が施されていない戸建住宅用排水配管をそのまま免震住宅などに適用すれば、基礎と建物の相対的な変位によって配管がいたる箇所で破壊されてしまうことになる。
【0004】
一方、このような問題点を解決するために、基礎と建物との間にフレキシブルな配管を接続して地盤と建物との間で生じた変位を吸収させる手段(特開2003−253718号公報、特開2003−27549号公報)や、建物側に固定された配管に対して、基礎側に固定された配管の建物側固定配管との接続開口部を漏斗形状などにして大きくしておくことにより、基礎と建物との間でズレが生じた場合であっても前記基礎側固定配管の接続開口内に建物側固定配管の流出口が位置するようにしたもの(特開平11−315569号公報)、さらには、前者2つの変位吸収手段を併用したもの(特開2003−3540号公報)などが開発されている。
【0005】
しかしながら、フレキシブルな配管または伸縮性のある配管は高価であり、特に、通常の住宅用排水配管として用いられる塩化ビニル配管に対して極めて高価である。
【0006】
また、フレキシブルな配管または伸縮性のある配管を用いた場合は、平常時であってもその柔軟性により適切な勾配を長期間に渡って維持することが困難であり、配管内部に詰まりを生じ易いといった問題がある。また、免震住宅に用いる場合にその一端を建物側に固定された配管に接続し他の一端は基礎側に固定された配管に接続したのでは、地震のような加速度を伴った大きな変位に対して十分に変形することができず、その結果、地盤と建物との間に接続されたフレキシブルな配管が破損してしまうといった問題があった。
【0007】
さらに、地盤と建物との間をフレキシブルな配管等で接続して基礎と建物との間に生じた変位を吸収させる場合は、基礎と建物との間に十分なスペースがなければ配管の施工やメンテナンスができない。特に、キッチンやバスルーム、トイレなどといった各排水系統毎に地盤側と建物側とを結ぶフレキシブルな配管等を施工することは困難であり、また、仮に各排水系統毎にフレキシブルな配管等を施工ができるような場合であっても、配管コストをさらに膨大なものとしてしまい、その後のメンテナンススペースも確保できなくなるといった問題がある。
【特許文献1】特開2003−253718号公報
【特許文献2】特開2003−27549号公報
【特許文献3】特開平11−315569号公報
【特許文献4】特開2003−3540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題、特に、免震建物においてフレキシブルな又は伸縮性のある配管等を用いることによって生じる本質的問題点を解決することを目的とする。
【0009】
すなわち、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、免震建物において地盤と建物との間に生じる変位を、高価で、かつ使用に際して種々の問題が生じる可能性のあるフレキシブルな配管等を用いて吸収することは必ずしも得策であるとはいえず、逆に発想の転換により、地盤と建物との間に生じる変位を特定の壊れ易くした配管に集中させ、震動後、破壊した配管を容易に取り換えられるようにすることが免震建物において有意な利益をもたらすものであるとの結論に達した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のため、本発明の要旨とするところは、(1)地盤に定着された基礎と、該基礎の上に免震手段を介して設置された建物との間に設置される排水用配管であって、前記建物側に固定された配管と、前記基礎側に固定された配管と、そして前記建物側固定配管と前記基礎側固定配管との間に設置され、かつ、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続配管と、を具備することを特徴とする免震建物用の排水配管にある。
【0011】
また、本発明の他の要旨は、(2)前記接続配管の建物側の接続端は、少なくとも床面から上方に突出していることを特徴とする(1)の免震建物用の排水配管にある。
【0012】
また、本発明の他の要旨は、(3)前記機械的強度を弱めた部分は、前記接続配管の胴部の少なくとも一部に切り欠き部を設けたものであるか、または前記接続配管の胴部の少なくとも一部に他の部分より機械的強度を弱めた材料を用いたものである(1)又は(2)の免震建物用の排水配管にある。
【0013】
また、本発明の他の要旨は、(4)前記建物側固定配管および前記基礎側固定配管の少なくとも1つは、塩化ビニル製配管である(1)ないし(3)のいずれかの免震建物用の排水配管にある。
【0014】
さらに、本発明の別の要旨とするところは、(5)地盤に定着された基礎と、該基礎の上に免震手段を介して設置された建物との間に設置される排水用配管であって、前記建物側に固定された配管と、前記基礎側に固定された配管と、そして前記建物側固定配管と前記基礎側固定配管は、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続手段により接続されていることを特徴とする免震建物用の排水配管にある。
【0015】
また、本発明の他の要旨は、(6)前記接続手段は、ネジ部の少なくとも一部に切り欠き部を設けることにより機械的強度を弱めたボルトであるか、または機械的強度を弱めた接続ピンである(5)の排水配管にある。
【0016】
また、本発明の他の要旨は、(7)前記建物側固定配管および前記基礎側固定配管の少なくとも1つは、塩化ビニル製配管である(5)又は(6)の免震建物用の排水配管にある。なお(1)〜(7)でいう配管とは広く流体を導くための管やパイプのシステムを意味し、特に建物側固定配管および基礎側固定配管においては、集中排水ますのような配管がシステム化されたものを含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、免震建物用の排水配管の大部分に通常の安価な塩化ビニル配管を使用することができるため、施工及びメンテナンス作業性の向上、配管コストの低減を図り、平常時の排水配管の意図しない変形などによる詰まりも確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明によると、地震に際して破壊される排水配管は特定の部分に限定されるため、破壊箇所の発見が容易であり、また、配管の復旧方法も通常の配管施工方法と何ら変わらず、しかもメンテナンススペースも十分に確保できるため、短時間に極めて容易に配管を復旧させることができる。
【0019】
なお、地震に際して配管が破損することにより排水が漏れてしまうのではないかといった危惧される点は存在するものの、地震が起こった際にバスタブなどから多量の排水を行なうことは極めて稀であると考えられること。むしろ、通常の塩化ビニル配管などを多用して地震により破壊される箇所を特定部分に集中させることの方が、初期及び復旧後においても配管コストを低減させること。そして、フレキシブルな配管等の高価で複雑な施工を要する配管の使用を排除し、免震住宅においても地盤側と建物側とを接続する配管に通常の塩化ビニル配管を多用することができるようにすることで、フレキシブルな配管等を用いた場合に生じる本質的な問題点をすべて解消し、特に平常時(静止状態)の配管使用における詰まりや液漏れに対する信頼性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る免震建物用の排水配管について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の第1の実施例を示したものであり、本発明による免震建物用の排水配管1は、建物側に固定された塩化ビニル配管2と基礎側に固定された塩化ビニル配管3、および前記建物側固定配管2と基礎側固定配管3との間に設置され、かつ、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続配管4により構成される。
【0022】
建物側に固定された塩化ビニル配管2は、免震装置(図示せず)を介して基礎の上に設置された建物側の床面5に固定されており、その上流側は図示しないキッチンやバスルーム、トイレなどに接続されている。また、建物側固定配管2は床下においても支持金具6により床面5に固定されている。
【0023】
基礎側に固定された塩化ビニル配管3は、図示しない地盤に固着された基礎7にその一部を埋設することにより基礎側及び地盤側に固定されており、そのさらに下流側は図示しない浄化槽や下水配管などに接続されている。また、基礎側固定配管3は集中排水ます(図示せず)であってもよく、基礎側固定配管3又は集中排水ますの流入口30は、これと接続する接続配管4との施工の容易性や排水の確実性などを考慮して、上記の建物側固定配管2の流出口20の真下に配置されることが好ましい。
【0024】
少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続配管4は、その一端が建物側固定配管2の流出口20に接続され、他の一端は基礎側固定配管3の流入口30に接続され、接続配管4は建物側固定配管2と基礎側固定配管3と一体となって本発明による免震建物用の排水配管1の一部を構成する。
【0025】
また、このとき接続配管4は建物側固定配管2及び基礎側固定配管3と接続されていること以外、他の配管及び他の支持具などにより支持されていなことが好ましい。なぜなら、接続配管4は地震などにより建物と基礎との間に生じたズレをすべてこの配管部分に集中させることにより破壊し、破壊後は、迅速かつ容易に壊れた接続配管4を新品に交換できるようにする必要があるからである。
【0026】
なお、本発明において各固定配管2、3と接続配管4との接続は、一般的に塩化ビニル配管に用いられるボルトによるフランジ部の締結、配管同士の溶接、ゴム輪受口の使用などといった公知の接続方法を用いることができるが、建物と基礎との間に生じたズレにより破壊した配管復旧の迅速性、容易性を考慮すると、固定配管2、3と接続配管4の接続部にフランジ部を設け、ボルトなどにより配管同士を締結することが好ましい。
【0027】
次に、接続配管4の機械的強度を弱めた部分について説明する。本発明における接続配管4の機械的強度を弱めた部分を大別すると、接続配管4に特殊な形状上の特徴を与えることにより機械的強度を弱めたものと、接続配管4の全部又は一部に特定の材料を用いることにより機械的強度を弱めたものとに分類される。
【0028】
ここで“機械的強度”とは、配管を破壊せしむるあらゆる応力に対する強度を含む概念であり、したがって“機械的強度を弱める”とは、例えば、引張り応力、圧縮応力、曲げ応力、剪断応力、座屈応力、衝撃力などといった免震建物用の排水配管に生じ得るの少なくとも1以上の応力に対する強度を弱めることを意味する。換言すれば、本発明の免震建物用の排水配管に用いられる材料は塩化ビニル材料が主体であるため、この免震建物用の排水配管において“機械的強度を弱める”とは、特定の部位おいて排水配管を構成する他の部分より引張り応力、圧縮応力、曲げ応力、剪断応力、座屈応力、衝撃力などに対する機械的強度を弱めることを意味する。
【0029】
図2には、接続配管4に特殊な形状上の特徴を与えることにより、その機械的強度を弱めた部分を形成させた一具体例の断面図が示されている。接続配管4は、胴部40および他の配管と接続するためのフランジ部41、42を備えており、その端部はフランジ部に代え、固定配管2、3に設けたゴム輪受口に嵌まり合う筒型形状を備えているものであってもよい。
【0030】
胴部40の外周面の少なくとも一部にはV字型の断面を有する切り欠き部43が外周面を一周するように連続して形成されており、免震建物の震動に伴い接続配管4に引張り応力、曲げ応力、衝撃力といった何らかの力が加わると切り欠き部43の周りに応力集中を起こして、接続配管4がこの切り欠き部43を中心として容易に破損するようにできている。
【0031】
切り欠き部43の断面形状は、接続配管4に生じた応力を集中させるために有効な断面形状であれば特に制限されるものではなく、一般的にはV字型の断面形状が使われる。また、切り欠き部43は胴部40の周りに複数本存在させてもよく、さらに、胴部40を略一周するように形成されていれば、必ずしも切り欠き部43を連続して設ける必要はない。ただし、建物と基礎との間でズレが生じた場合、接続配管4が変形することより生じる応力に対する壊れ易さの方向性を無くすためには、図2に示すように接続配管4の胴部40の周方向に万遍なく切り欠き部を配置することが好ましい。
【0032】
また、本発明による接続配管4の機械的強度を弱めた部分は、切り欠き部43に代えて接続配管4の胴部40の少なくとも一部に他の部分より管の肉厚が薄い部分(図示せず)が帯状に一周するようにして配置することで形成させてもよく、前記切り欠き43と組み合わせて機械的強度を弱めた部分を形成させてもよい。
【0033】
図3には、接続配管4の全部又は一部に特定の材料を用いることにより機械的強度を弱めた他の具体例の断面図が示されている。接続配管4は、胴部40および他の配管と接続するためのフランジ部41、42を備えており、その端部はフランジ部に代え、固定配管2、3に設けたゴム輪受口に嵌まり合う筒型形状を備えているものであってもよい。
【0034】
胴部40の少なくとも一部44は機械的強度が弱い塩化ビニル材料とは異なる材料から作られており、例えば、ガラス材料、セラミックス材料、PET材料などをこれに適用することができる。特に、PET材料は適度な脆性及び塩化ビニル材料との接着性を有し、また、再生されたPET材料は安価に入手することが可能であるため、接続配管4の機械的強度を弱める材料として適している。
【0035】
また、接続配管4に特定の材料を用いることにより機械的強度を弱めた部分44は、接続配管4の長手方向の一部に胴部40が一周するように帯状に形成されており、全体としては接続配管4の胴部40と略同一の円筒形状をもって構成される(図3参照)。さらに、この部分44は、胴部40の長手方向の全部に渡って胴部40全体を形成するように構成してもよく、接続配管4の端部にフランジ部41、42を有する場合は、このフランジ部を含めて機械的強度を弱めた材料で形成することもできる。
【0036】
このように、建物側に固定された塩化ビニル配管2と基礎側に固定された塩化ビニル配管3とを接続する接続配管4の全部又は一部を、例えば塩化ビニル材料より機械的強度を弱めた材料により形成すると、上述された免震建物用の連絡配管1の建物及び基礎への固定方法と相まって、免震建物と地盤とのズレが生じて接続配管4に引張り応力、曲げ応力、衝撃力といった何らかの力が加わった場合に他の塩化ビニル配管に対して先行して接続配管4の全部又は一部が容易に破損する。
【0037】
そして、地震などにより建物と地盤にズレが生じた場合に破壊される排水配管は、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分44を有する接続配管4に限定されるため、排水配管の破壊による被害の範囲も限定され、また、破壊後の接続配管4の復旧も極めて短時間に容易に行なうことができる。
【0038】
図4には第1の実施例を応用した他の具体例が示されており、接続配管4の建物側接続端40が少なくとも床面5から上方に突出していること以外は図1に示される第1の実施例の構成と同じである。したがって、地震により建物と地盤との間にズレが生じた場合に集中して破壊される箇所は、第1の実施例と同じく接続配管4のみである。
【0039】
しかしながら、図4の具体例の場合は第1の実施例の場合と異なり、破壊後のバラバラになった接続配管4を全て取り除くことにより、床面5にそれまで接続配管4が通過していた開口部50が出現する。
【0040】
したがって、本発明による免震建物用の排水配管1を復旧する場合は、建物側に固定された配管2の接続端21を水平方向へ配管径よりやや大きめにずらした後、前記開口部50上方から新しい接続配管4を基礎側に固定された配管3の接続端31へ接続し、次いで、接続配管4の上流側を建物側固定配管2の接続端21に接続することにより極めて容易に復旧できるようになる。
【0041】
なお、かかる場合の接続配管4と固定配管2、3との接続は、ボルトによるフランジ部の締結、配管同士の溶接、ゴム輪受口の使用などといった公知の接続方法を用いることができるが、開口部50上方から接続配管4を落とし込んで接続する上記復旧作業の容易性を考慮すると、固定配管2、3の接続端21、31にゴム輪受口を設けておくことが好ましい。
【0042】
図5は本発明の第2の実施例を示したものであり、本発明の免震建物用の排水配管1aは、建物側に固定された塩化ビニル配管2と基礎側に固定された塩化ビニル配管3、および前記建物側固定配管2と基礎側固定配管3とを接続する少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続手段8より構成される。また、本実施例の場合は建物側固定配管2と基礎側固定配管3とを後で詳述されるボルト又はピンなどといった接続手段8を用いて外部から接続するため、建物側固定配管2と基礎側固定配管3の接続端にはそれぞれフランジ部22、32を備えていなければならない。
【0043】
図6には、フランジ部22、32を接続するための少なくとも一部の機械的強度を弱めたのピン9が示されている。
【0044】
ピン9は頭部90とその頭部90から二股に分かれた脚部91、および脚部91にスナップ止めされるリング状のワッシャー92を含む。また、脚部91の先端には装着時にワッシャー92が外れないようにするためのL字状に曲がったフック93が形成されている。
【0045】
脚部91は取付け前の状態(先端にワッシャー92が装着されていない状態)ではハの字状に開いた形状を保持しており、使用に際して、脚部91を配管2、3に設けられたフランジ部22、32のボルト穴に通し、さらにフック93を通過させて脚部91の弾性復元力に対抗してワッシャー92を取り付けることにより配管2、3同士を強固に接続させることができる。
【0046】
しかしながら、ピン9は通常のボルトよりはるかに径の小さな2本の脚部91より形成されているため、排水配管を構成する他の部分よりも機械的強度が弱く、したがって、地震などにより建物側固定配管2及び基礎側固定配管3を通じて何らかの力が加わった場合は、ピン9が破断することにより建物側固定配管2と基礎側固定配管3を容易に分離する。
【0047】
なお、ピン9の脚部91の本数、形状及び材質などは特に限定されるものではなく、排水配管を構成する他の部分より機械的強度が弱い本数、形状及び材質がその他の使用状態を考慮して適宜決定される。
【0048】
また、ピン9に代えて、他の部分で配管同士を接続するボルトよりも機械的強度の弱い材料、例えばプラスチック材料などから作られているボルト(図示せず)や、ネジ部に応力を集中させるためにノッチを設けたボルト(図示せず)などを使用することもできる。この場合、ノッチの形状は特に限定されるものではないが、平常時は配管同士が液漏れを起こさないようにしっかり固定しながら、震動時においては配管の変形などにより伝わる応力を集中させて容易に破断するような適当な形状及びボルト径などが選定される。
【0049】
また、特定の配管同士を少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続手段8より接続し、地震により建物と地盤にズレが生じた場合に破壊される箇所を特定させるといった上記の技術的思想は、図1に示された第1の実施例にも適用することができる。
【0050】
すなわち、図1に示される免震建物用の排水配管1の構成において、建物側固定配管2と接続配管4とを接続する部分か、または基礎側固定配管3と接続配管4とを接続する部分の少なくともいずれか一方の接続部を上述された機械的強度を弱めたのピン9又はボルトを用いて接続することができる。
【0051】
また、この具体例では、地震などが起った場合に少なくとも接続配管4と固定配管2、3とを接続するいずれかの接続手段が破断することにより建物側固定配管2又は基礎側固定配管3と接続配管4とが切り離されるため、接続配管4は必ずしも機械的強度を弱めた部分を有する必要はなく、通常の塩化ビニル製配管などを用いることもできる。
【0052】
図7には本発明の第3の実施例である、建物側に固定される配管2に代えて集中排水ます10を固定した免震建物用の排水配管1bが示されている。すなわち、第3の実施例の免震建物用の排水配管1bは、建物側に固定された集中排水ます10と基礎側に固定された塩化ビニル配管3、および前記建物側集中排水ます10と基礎側固定配管3との間に設置され、かつ、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続配管4により構成され、建物側に固定される配管2が集中排水ます10に置き換えられたこと以外は実質的に本発明の第1の実施例の場合と同じ構成である。
【0053】
また、建物側に固定された集中排水ます10から下に延びた流出口100と基礎側に固定された塩化ビニル配管3とを、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続手段8により直接接続させ、実質的に本発明の第2の実施例の場合と同じ構成とすることもできる。
【0054】
なお、集中排水ます10は建物の床下に支持金具6aによりバネ60を介して建物側へ付勢するように固定されており、集中排水ます10の上流側は集中排水ます10から分岐した配管により図示しないキッチンやバスルーム、トイレなどに接続されている。
【0055】
また、基礎側に固定された塩化ビニル配管3は、図示しない地盤に定着された基礎7にその一部を埋設することにより基礎側及び地盤側に固定されており、その下流側は図示しない浄化槽や下水配管などに接続されている。また、基礎側固定配管3の流入口30は、これと接続する接続配管4との施工の容易性や排水の確実性などを考慮して、上記の建物側固定集中排水ます10の流出口100の真下に配置されることが好ましい。
【0056】
このように、免震装置を介して基礎7の上に設置された建物側の床面5に集中排水ます10を固定して本発明による免震建物用の連絡配管1bを構成すると、建物側と基礎側との間を接続する配管の数を少なくすることができ、また、地震などによって建物側と基礎側との間にズレが生じた場合であっても、破壊される接続配管4又は接続手段8(図示せず)は第1の実施例又は第2の実施例の場合と同じであるため、各排水系統毎に排水配管を設置した場合と異なって破壊される配管の数、およびそれによって被る被害範囲を最小限に留めることができる。そして、この集中排水ます10と基礎側に固定された配管3との間の破壊箇所の復旧も容易となる。
【0057】
図8には、本発明に用いられる集中排水ます10が示されている。本発明に用いられる集中排水ます10は、特願2005−56941号に記載されているのと同じ構造を有する集中排水ますであり、その詳細は特願2005−56941号に記載されている説明を導入する。
【0058】
集中排水ます10は、建物の床下に支持金具6aによりバネ60を介して建物側へ付勢するように固定されており、平常時は集中排水ます10自体の自重によりバネ60を圧縮しながら支持金具6aのロッド61の下端に位置しながら吊り下げられている。
【0059】
地震などにより、集中排水ます10の流出口100と基礎側に固定された配管3とを接続する接続配管4又は接続手段8(図示せず)が破壊された場合は、集中排水ます10を人手で上方へ押し上げて新しい接続配管4又は接続手段8を取り付けるスペースを確保することにより、破損した接続配管4又は接続手段8を容易に復旧することができる。
【0060】
このように、本発明によれば免震建物用の排水配管の大部分に通常の安価な塩化ビニル配管を使用することができるため、施工及びメンテナンス作業性の向上、配管コストの低減を図り、平常時の排水配管の意図しない変形による詰まりも確実に防止することができる。
【0061】
また、本発明によれば、地震に際して破壊される排水配管は特定の部分に限定されるため、破壊箇所の発見が容易であり、また、配管の復旧方法も通常の配管施工方法と何ら変わらず、しかもメンテナンススペースも十分に確保できるため、短時間に極めて容易に配管を復旧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による第1の実施例の側面図である。
【図2】図2は、切り欠き部を設けることにより機械的強度を弱めた接続配管の断面図である。
【図3】図3は、一部の配管材質を変えることにより機械的強度を弱めた接続配管の断面図である。
【図4】図4は、第1の実施例を応用した他の具体例を示す側面図である。
【図5】本発明による第2の実施例の側面図である。
【図6】図6は、機械的強度を弱めたピンの概要図である。
【図7】本発明による第3の実施例の側面図である。
【図8】図8は、本発明に用いられる集中排水ますの取付図である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b 免震建物用の排水配管
2 建物側固定配管
3 基礎側固定配管
4 機械的強度を弱めた接続配管
5 床面
6、6a 支持金具
7 基礎
8 配管接続手段
9 機械的強度を弱めたピン
10 集中排水ます

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に定着された基礎と、該基礎の上に免震手段を介して設置された建物との間に設置される排水用配管であって、
前記建物側に固定された配管と、
前記基礎側に固定された配管と、そして
前記建物側固定配管と前記基礎側固定配管との間に設置され、かつ、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続配管と、
を具備することを特徴とする免震建物用の排水配管。
【請求項2】
前記接続配管の建物側の接続端は、少なくとも床面から上方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の免震建物用の排水配管。
【請求項3】
前記機械的強度を弱めた部分は、前記接続配管の胴部の少なくとも一部に切り欠き部を設けたものであるか、または前記接続配管の胴部の少なくとも一部に他の部分より機械的強度を弱めた材料を用いたものである請求項1又は2に記載の免震建物用の排水配管。
【請求項4】
前記建物側固定配管および前記基礎側固定配管の少なくとも1つは、塩化ビニル製配管である請求項1ないし3のいずれかに記載の免震建物用の排水配管。
【請求項5】
地盤に定着された基礎と、該基礎の上に免震手段を介して設置された建物との間に設置される排水用配管であって、
前記建物側に固定された配管と、
前記基礎側に固定された配管と、そして
前記建物側固定配管と前記基礎側固定配管は、少なくとも一部に機械的強度を弱めた部分を有する接続手段により接続されていることを特徴とする免震建物用の排水配管。
【請求項6】
前記接続手段は、ネジ部の少なくとも一部に切り欠き部を設けることにより機械的強度を弱めたボルトであるか、または機械的強度を弱めた接続ピンである請求項5に記載の免震建物用の排水配管。
【請求項7】
前記建物側固定配管および前記基礎側固定配管の少なくとも1つは、塩化ビニル製配管である請求項5又は6に記載の免震建物用の排水配管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate