説明

入力処理装置

【課題】 スティックポインタを備えた入力装置を2つ設けて、種々の入力操作を可能とした入力処理装置を提供する。
【解決手段】 キーボード入力装置に、スティックポインタを備えた第1の入力装置と第2の入力装置を配置する。第1の入力装置のスティックポインタ(SP1)と第2の入力装置のスティックポインタ(SP2)の操作体の操作方向の組み合わせにより、ズームイン、ズームアウト、右回り、左回り、前戻り、先送り、左送り、右送りなどのジェスチャー機能の入力制御が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置において、キーボード入力装置などを備えた操作入力部の2箇所に、スティックポインタを備えた入力部が配置されている入力処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータの操作盤に、キーボード入力装置と、スティックポインタを有する入力部とが装備されたものがある。この入力部の操作体は、キーボード入力装置を構成するキーの間に配置されているため、手をキーボード入力装置を操作する姿勢のままにして、その指でスティックポインタを操作でき、入力操作をスピーディに行うことが可能である。
【0003】
以下の特許文献1には、キーボード入力装置のキー配列の領域内に、スティックポインタを有する2つの入力部が配置された入力処理装置が開示されている。
【0004】
この入力処理装置は、画面に表示された独立した2つのカーソルを、2つのスティックポインタで個別で制御したり、一方のスティックポインタでカーソルを制御し、他方のスティックポインタでスクロール操作を行うことなどが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−328475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように、キーボード入力装置に1つのスティックポインタが備えられた入力処理装置では、スティックポインタの操作で単一の座標データの入力信号を生成して、画面に表示されたカーソルを移動させる制御などが行えるのみであり、多様な入力制御を行うことができない。
【0007】
特許文献1に記載の入力処理装置は、スティックポインタを有する入力部を2箇所に装備することで2種類の座標データの入力信号を生成することが可能である。しかし、行われているのがカーソルの移動制御とスクロール制御に限られており、その他の多様な入力制御を行えるものではない。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、スティックポインタを有する2つの入力部を用いて、カーソルの移動制御やスクロール制御などに限定されずに、前記制御を含む各種の多様なジェスチャー制御処理を行うことが可能な入力処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、操作入力部に配置された第1の入力部ならびに第2の入力部と、前記第1の入力部からの入力信号と前記第2の入力部からの入力信号が与えられる制御処理部とが設けられ、
前記第1の入力部と前記第2の入力部のそれぞれに、操作体と、前記操作体に与えられる操作方向および操作力を検知する検知素子とを有するスティックポインタが設けられており、
前記制御処理部では、前記第1の入力部と前記第2の入力部のいずれか一方のスティックポインタから入力信号が得られているときに、そのスティックポインタの操作体に与えられた操作方向と操作力に対応した座標入力処理が行われ、
前記第1の入力部と前記第2の入力部の2つのスティックポインタから入力信号が得られているときに、2つの操作体に与えられる操作方向の組み合わせに応じたジェスチャー制御処理が行われることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の入力処理装置は、2つのスティックポインタを使用することで、画面に表示された画像を多様に変化させるための各種のジェスチャー制御処理を行うことが可能である。
【0011】
本発明では、前記制御処理部では、2つのスティックポインタに設けられた前記検知素子から同時に検知出力が得られたときにジェスチャー制御処理が行われる。あるいは、前記制御処理部では、予め決められた時間内に、2つのスティックポインタに設けられた前記検知素子から検知出力が得られたときにジェスチャー制御処理が行われる。
【0012】
また本発明の前記制御処理部では、前記第1の入力部と前記第2の入力部のいずれか一方のスティックポインタから入力信号が得られているときに、前記第1の入力部からの入力信号と、前記第2の入力部からの入力信号とで、互いに異なる制御処理が行われる。
【0013】
上記において、前記制御処理部の設定を変えることによって、2つの入力部からの入力信号と、実行する制御処理の対応の設定と変更が可能である。
【0014】
また、本発明は、前記第1の入力部と前記第2の入力部のそれぞれに、前記操作体が押されたことを検知するスイッチ機能が備えられており、
前記制御処理部では、前記第1の入力部のスイッチ機能が動作したときと、前記第2の入力部のスイッチ機能が動作したときとで、異なるスイッチ制御処理が行われるものとすることが可能である。
【0015】
この場合も、前記制御処理部の設定を変えることによって、2つのスイッチ機能の動作と、スイッチ制御処理との対応の設定と変更が可能である。
【0016】
また、本発明は、前記第1の入力部の操作体と前記第2の入力部の操作体を、別々の色彩で照光する光源が設けられているものとして構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の入力処理装置は、スティックポインタを備えた2つの入力部を両手で操作することで、これまでスティックポインタの操作で実現できなかったジェスチャー制御処理を行って、多様な入力制御を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の入力処理装置を備えたパーソナルコンピュータを示す斜視図、
【図2】本発明の実施の形態の入力処理装置を示す平面図、
【図3】それぞれの入力部の構造を説明する斜視図、
【図4】スティックポインタを構成する検知素子の回路図、
【図5】入力処理装置の回路ブロック図、
【図6】他の構成例の回路ブロック図
【図7】入力処理装置の処理動作を示すフローチャート、
【図8】制御処理部で実行されるジェスチャー制御処理の一覧を示す説明図、
【図9】本発明の実施の形態の入力処理装置を備えた携帯用の情報処理装置を示す斜視図、
【図10】本発明の実施の形態の入力処理装置を備えた携帯用機器を示す斜視図、
【図11】本発明の実施の形態の入力処理装置を備えた小型の情報処理装置を示す斜視図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、情報処理装置の例としてパーソナルコンピュータ1が示されている。パーソナルコンピュータ1は、本体部2と蓋体部3とが折り畳み可能に連結されている。本体部2の表面に操作入力部4が設けられ、蓋体部3の手前側に向く面に、液晶表示パネルで形成された表示装置5の表示画面が設けられている。
【0020】
操作入力部4に、本発明の実施の形態の入力処理装置10およびキーボード入力装置11と、それよりも手前側に配置されたタッチパッド7と、前記タッチパッド7の手前に隣接した位置に配置された左クリック釦8aと右クリック釦8bとが設けられている。タッチパッド7は、指が接触したときの静電容量の変化によって、指の接触位置に対応した座標データを出力するものである。
【0021】
図1と図2に示すように、キーボード入力装置11に、X方向とY方位に向けて規則的に配列する複数のキー12が設けられている。入力処理装置10は、キー12の配列領域内に位置する第1の入力部20Aおよび第2の入力部20Bを有している。それぞれのキー12の下に位置する基板に、それぞれのキー12で押圧動作させられるキースイッチが設けられている。
【0022】
第1の入力部20Aと第2の入力部20Bは、隣接するキー12とキー12との間に配置されている。図2に示す例では、第1の入力部20Aが「D」「F」「C」を入力するキー12の間に配置され、主に左手の指で操作しやすくなっている。第2の入力部20Bは、「J」「K」「M」を入力するキー12の間に配置され、主に右手の指で操作しやすくなっている。
【0023】
第1の入力部20Aと第2の入力部20Bの配置箇所は図2に示す実施の形態に限られないが、第1の入力部20Aと第2の入力部20Bは、キーボード入力装置11内においてX方向に間隔を空けて配置されて、キーボード入力装置11のキー12を操作している姿勢の左手の指と右手の指で、個別に操作しやすい位置に配置されていることが好ましい。
【0024】
図3に、第1の入力部20Aの構造が示されている。第1の入力部20Aは、第1のスティックポインタ21Aと、第1のスイッチ部28Aと、第1の光源29Aを有している。
【0025】
第1のスティックポインタ21Aは、合成樹脂で形成された支持台22を有しており、支持台22に、X方向に延びるプラスX変形部23aおよびマイナスX変形部23bと、Y方向に延びるプラスY変形部24aおよびマイナスY変形部24bが一体に形成されている。支持台22の中央に、上向きに突出する第1の操作体25Aが一体に設けられている。第1の操作体25Aは、プラスX変形部23aおよびマイナスX変形部23bと、プラスY変形部24aおよびマイナスY変形部24bの中心に位置している。
【0026】
支持台22は、その外縁部が、キーボード入力装置11の基板に固定されている。指から第1の操作体25Aに対して、X方向やY方向などに操作力が与えられると、その操作方向と操作力に対応して、プラスX変形部23a、マイナスX変形部23b、プラスY変形部24aならびにマイナスY変形部24bに撓みが発生する。
【0027】
支持台22には、プラスX変形部23aの上表面に、プラスX歪みセンサ26aが取り付けられ、マイナスX変形部23bの上表面に、マイナスX歪みセンサ26bが取り付けられている。プラスY変形部24aの上表面にプラスY歪みセンサ27aが、マイナスY変形部24bの上表面にマイナスY歪みセンサ27bが取り付けられている。なお、それぞれの歪みセンサ26a,26b,27a,27bは、変形部23a,23b,24a,24bの下表面に取り付けられていてもよい。
【0028】
歪みセンサ26a,26b,27a,27bが、第1のスティックポインタ21Aの検知素子である。それぞれの歪みセンサ26a,26b,27a,27bは抵抗膜である。歪みセンサ26a,26b,27a,27bは互いに接続されて図4に示すブリッジ回路が構成されている。
【0029】
図3において操作体25Aがθx方向やθy方向あるいは、それ以外の向きに倒れるように押圧されると、その押圧方向および押圧する力に応じて、プラスX変形部23a、マイナスX変形部23b、プラスY変形部24aならびにマイナスY変形部24bに撓みが発生し、それぞれの歪みセンサ26a,26b,27a,27bの抵抗値が変化する。この抵抗値の変化に応じて、図5に示すブリッジ回路からX操作出力およびY操作出力が得られる。
【0030】
図3に示すように、第1の入力部20Aに設けられた第1のスイッチ部28Aは、第1のスティックポインタ21Aの支持台22の下側に設けられており、第1の操作体25Aが軸方向の真下に向けて押し込まれると、接点が導通してオン状態になる。図3に示す実施の形態では、接点を有する機械式の第1のスイッチ部28Aが第1の入力部20Aのスイッチ機能を構成している。ただし、機械式のスイッチ部を設けずに、第1の操作体25Aが軸方向の真下に向かって押されたときに、それぞれの歪みセンサ26a,26b,27a,27bの抵抗値が同時に同じ向きに変化することを検知するスイッチ回路を別個に設け、このスイッチ回路でスイッチ機能を構成してもよい。
【0031】
第1の入力部20Aに設けられた第1の光源29Aは、1種または異なる色相の光を発する複数種のLEDを有している。第1の操作体25Aの少なくとも一部が光を透過できる構成であり、第1の光源29Aが点灯すると第1の操作体25Aが明るく照らし出される。
【0032】
第2の入力部20Bの構造は、第1の入力部20Aの構造と同じである。第2の入力部20Bは、図3に示したのと同じ構造の第2のスティックポインタ21B、第2の操作体25B、第2のスイッチ部28Bおよび第2の光源29Bを備えている。
【0033】
図5は、前記入力処理装置10の回路構成を示すブロック図である。
第1の入力部20Aの第1のスティックポインタ21AのX操作出力とY操作出力、ならびに第1のスイッチ部28Aのスイッチ検知出力が主信号生成部31に与えられる。第2の入力部20Bの第2のスティックポインタ21BのX操作出力とY操作出力、ならびに第2のスイッチ部28Bのスイッチ検知出力が副信号生成部32に与えられる。
【0034】
第2の入力部20Bの各出力は、副信号生成部32でA/D変換され、所定バイトの信号に変換されて、主信号生成部31に転送される。主信号生成部31では、第1の入力部20Aの各出力がA/D変換され、副信号生成部32から与えられた第2の入力部20Bからの出力信号と共に所定バイトの入力信号に変換されてフォーマット化される。
【0035】
キーボード入力装置11のそれぞれのキースイッチから与えられるキー検知出力は、キー信号生成部33においてA/D変換されて、所定バイト数の入力信号に変換されてフォーマット化される。
【0036】
主信号生成部31と副信号生成部32、およびキー信号生成部33は、キーボード入力装置11の基板に実装された集積回路で構成されている。
【0037】
主信号生成部31で生成された入力信号31aと、キー信号生成部33で生成された入力信号33aは、パーソナルコンピュータ1の本体制御部にインストールされたアプリケーションソフト34へ与えられる。そして、アプリケーションソフト34で実行された制御情報がオペレーティングシステム(OS)35に与えられて、パーソナルコンピュータ1の表示装置5の表示画面が制御される。この実施の形態では、アプリケーションソフト34の制御動作が制御処理部として機能している。
【0038】
図6に示す変形例に示すように、副信号生成部32を設けずに、主信号生成部31のみが設けられていてもよい。この場合は、第1のスティックポインタ21Aの検知出力と第1のスイッチ部28Aのスイッチ検知出力、および第2のスティックポインタ21Bの検知出力と第2のスイッチ部28Bのスイッチ検知出力が、全て主信号生成部31に与えられる。第1の入力部20Aからの検知出力と第2の入力部20Bからの検知出力が、主信号生成部31でA/D変換されて、所定バイト数のフォーマット化された入力信号31aが生成され、アプリケーションソフト34に与えられる。
【0039】
次に、上記入力処理装置10の動作制御を説明する。図7に示すフローチャートには、各ステップが「ST」で示されている。
【0040】
電源が投入されアプリケーションソフト34が有効になっているときにST1(ステップ1)で処理動作が開始される。ST2では、アプリケーションソフト34の制御動作で主信号生成部31からの入力信号31aを監視して、第1の入力部20Aの第1のスティックポインタ(SP1)21Aからの入力信号と第2の入力部20Bの第2のスティックポインタ(SP2)21Bからの入力信号の少なくとも一方に、しきい値を超える変化があるかを判定する。
【0041】
しきい値を超えたときは、ST3において、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bの双方からの入力信号がしきい値を超えているか否かを判定する。ここでは、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号と第2のスティックポインタ21Bからの入力信号の双方が同時にしきい値を超えていたら「双方からの入力信号がしきい値を超えている」と判定する。また、予め決められた一定の時間内に、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号と第2のスティックポインタ21Bからの入力信号の双方がしきい値を超えたら「双方からの入力信号がしきい値を超えている」と判定する。
【0042】
すなわち、予め決められた一定長さの監視時間を設定し、この監視時間内に、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号と第2のスティックポインタ21Bからの入力信号の双方がしきい値を超えていたら「双方からの入力信号がしきい値を超えている」と判定する。この監視時間を繰り返して実行することで、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bが同時に操作されているか否かを判定することが可能になる。
【0043】
ST3において、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号と第2のスティックポインタ21Bからの入力信号の双方がしきい値を超えていると判定できないとき、すなわちいずれか一方のスティックポインタからの入力信号がしきい値を超えているときは、ST4に移行する。
【0044】
ST4において、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号がしきい値を超えたと判定されたら、ST5に移行し、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号を確認する。第1のスティックポインタ21Aからの入力信号が、X方向またはY方向への所定距離以上の移動を示す座標信号であると確認したら、ST6において、表示装置5の画面に表示されている情報群を、X方向またはY方向へスクロールさせる座標入力処理が行われる。このとき、第1の操作体25Aに与える操作方向に基づいて、スクロール方向が決定され、その操作力の大小に比例してスクロール処理の速度が可変される。
【0045】
ST4において、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号がしきい値を超えていないと判定されると、第2のスティックポインタからの入力信号がしきい値を超えていると判定し、ST7に移行して、第2のスティックポインタ21Bからの入力信号を確認する。第2のスティックポインタ21Bから、X方向またはY方向への所定距離以上の座標信号が入力されたと判断したときは、ST8に移行し、表示装置5の表示画面に現れているカーソル9を移動させる座標入力処理が行われる。
【0046】
ST8では、第2の入力部20Bの第2の操作体25Bに与えられる操作力の方向に応じて、カーソル9の移動方向が決められ、第2の操作体25Bに与えられる操作力の大小に比例して、カーソル9の移動距離が決められる。
【0047】
ST3において、第1のスティックポインタ21Aからの入力信号と第2のスティックポインタ21Bからの入力信号の双方がしきい値を超えていると判定されたら、ST9に移行して、第1のスティックポインタ21Aからの座標信号から操作方向とその操作力を確認し、第2のスティックポインタ21Bの入力信号から操作方向と操作力を確認し、ST10に移行する。
【0048】
ST10では、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bの双方の入力信号に応じて、実行するジェスチャー信号が選択される。
【0049】
図8に、両スティックポインタ21A,21Bの入力信号とジェスチャー信号との対応表が示されている。図8に示すように、アプリケーションソフト34による制御処理では、ST9で確認された両スティックポインタ21A,21Bの入力信号の座標データの方向に基づいて、ジェスチャー信号が選択されて生成され、ジェスチャー制御処理が実行される。
【0050】
図8(1)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aに対して右向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21AからプラスX方向の座標信号が得られ、これと共に、第2の入力部20Bの操作体25Bに対して左向きの操作力が与えられて、第2のスティックポインタ21BからマイナスX方向の座標信号が得られたら、ズームアウトのジェスチャー制御処理が実行される。
【0051】
ズームアウトのジェスチャー制御処理では、表示装置5の画面に表示されている画像が縮小される。第1の操作体25Aと第2の操作体25Bに与えられる操作力の大きさに応じて、画像の縮小比率が変化する。なお、第1の操作体25Aと第2の操作体25Bは常に中立位置に復帰しようとしているため、指が第1の操作体25Aと第2の操作体25Bから離れると、画像が初期の大きさに復帰する。または、指が第1の操作体25Aと第2の操作体25Bから離れたときに、縮小された画像がそのまま保持されてもよい。
【0052】
図8(2)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aに対して左向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21AからマイナスX方向の座標信号が得られ、これと共に、第2の入力部20Bの操作体25Bに対して右向きの操作力が与えられて、第2のスティックポインタ21BからプラスX方向の座標信号が得られたら、ズームインのジェスチャー制御処理が実行される。
【0053】
ズームインのジェスチャー制御処理では、表示装置5の画面に表示されている画像が拡大される。第1の操作体25Aと第2の操作体25Bに与えられる操作力の大きさに応じて、画像の拡大比率が変化する。また、指が第1の操作体25Aと第2の操作体25Bから離れると、画像が初期の大きさに復帰する。あるいは、拡大された画像がそのまま保持される。
【0054】
図8(3)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aに対して手前に向く操作力が与えられ、第1のスティックポインタ21AからマイナスY方向の座標信号が得られ、第2の入力部20Bの操作体25Bに対して前向きの操作力が与えられて、第2のスティックポインタ21BからプラスY方向の座標信号が得られたら、左回りのジェスチャー制御処理が行われる。
【0055】
左回りのジェスチャー制御処理では、表示装置5の画面に表示されている画像が、画面に垂直な軸を中心として反時計方向へ回転させられる。第1の操作体25Aと第2の操作体25Bに与えられる操作力の大きさに応じて、画像の回転角度または回転速度が変化する。指が第1の操作体25Aと第2の操作体25Bから離れると、画像が初期の回転姿勢に復帰する。
【0056】
図8(4)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aに対して前向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21AからプラスY方向の座標信号が得られ、第2の入力部20Bの操作体25Bに対して手前向きの操作力が与えられて、第2のスティックポインタ21BからマイナスY方向の座標信号が得られたら、右回りのジェスチャー制御処理が行われる。
【0057】
右回りのジェスチャー制御処理では、表示装置5の画面に表示されている画像が、画面に垂直な軸を中心として時計方向へ回転させられる。第1の操作体25Aと第2の操作体25Bに与えられる操作力の大きさに応じて、画像の回転角度または回転速度が変化する。指が第1の操作体25Aと第2の操作体25Bから離れると、画像が初期の回転姿勢に復帰する。
【0058】
図8(5)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aと第2の入力部20Bの操作体25Bの双方に対して前向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bの双方からプラスY方向の座標信号が得られたら、前戻りのジェスチャー制御が行われる。
【0059】
前戻りのジェスチャー制御では、表示装置5の画面に表示されている画像全体が下方向(マイナスY方向)へ速い速度で移動する。このジェスチャー制御は、図7のST6のスクロール制御とは異なる処理動作である。スクロール制御は、画面に表示されている画像の例えば文字列がY方向へ順番に進んでいくが、前戻りのジェスチャー制御では、画面に表示されている画像が一群の単位となってマイナスY方向へ次々にまとめて移動する。
【0060】
または、図8(5)のジェスチャー制御処理において、画面に表示されている画像が一群となって、両手の移動方向である上方向(プラスY方向)へまとめて次々に移動してもよい。また、画面に絵や文字が記載された画像が頁単位で表示されているときは、図8(5)において、右めくりのジェスチャー制御処理が行われて、頁が両手の動きに合わせて上方向へ捲れて次ぎの頁が現れるようにしてもよい。
【0061】
図8(6)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aと第2の入力部20Bの操作体25Bの双方に対して手前向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bの双方からマイナスY方向の座標信号が得られたら、先送りのジェスチャー制御が行われる。
【0062】
先送りのジェスチャー制御では、表示装置5の画面に表示されている画像全体が上方向(プラスY方向)へ速い速度で移動する。すなわち、画面に表示されている画像が一群の単位となってプラスY方向へ次々にまとめて移動する。
【0063】
または、図8(6)のジェスチャー制御処理において、画面に表示されている画像が一群となって、両手の移動方向である下方向(マイナスY方向)へまとめて次々に移動してもよい。また、画面に絵や文字が記載された画像が頁単位で表示されているときは、図8(6)において、下めくりのジェスチャー制御処理が行われて、頁が両手の動きに合わせて下方向へ捲れて次ぎの頁が現れてもよい。
【0064】
図8(7)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aと第2の入力部20Bの操作体25Bの双方に対し右向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bの双方からプラスX方向の座標信号が得られたら、左送りのジェスチャー制御が行われる。
【0065】
先送りのジェスチャー制御では、表示装置5の画面に表示されている画像全体が一群の情報となってまとまって左方向(マイナスX方向)へ次々へ移動する。
【0066】
または、画像全体が一群となって、両手の操作方向に対応して右方向(プラスX方向)へ次々へ移動してもよい。また、画面に絵や文字が記載された画像が頁単位で表示されているときは、図8(7)のジェスチャー制御処理によって、右めくりジェスチャー制御処理が行われ、頁が右方向へ向けて捲れて次ぎの頁が現れてもよい。
【0067】
図8(8)に示すように、第1の入力部20Aの操作体25Aと第2の入力部20Bの操作体25Bの双方に対し左向きの操作力が与えられて、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bの双方からマイナスX方向の座標信号が得られたら、右送りのジェスチャー制御が行われる。
【0068】
右送りのジェスチャー制御では、表示装置5の画面に表示されている画像全体が一群の情報となってまとまって右方向(プラスX方向)へ次々へ移動する。
【0069】
または、画像全体が一群となって、両手の操作方向に対応して左方向(マイナスX方向)へ次々へ移動してもよい。また、画面に絵や文字が記載された画像が頁単位で表示されているときは、図8(8)によって、右めくりジェスチャー制御処理が行われ、頁が左方向へ向けて捲れて次ぎの頁が現れてもよい。
【0070】
図8(5)(6)(7)(8)のジェスチャー制御処理が行われるときに、第1の操作体25Aと第2の操作体25Bに対する1回の操作で、画像が1群のみ例えば1頁のみ移動してもよいし、両操作体25A,25Bに与えられている操作力の大きさに比例して、1頁の捲り動作、2頁の捲り操作、3頁の捲り操作、・・・、のように捲り枚数が多くなってもよい。または、第1の操作体25Aと第2の操作体25Bに対する操作力を与え続けている間、画像の頁が次々に捲れていき、操作力の大小に比例して、頁が捲れて行く速度が変化してもよい。
【0071】
次に、第1の入力部20Aの操作体25Aが軸方向へ押し込まれると、第1のスイッチ部28Aがオン状態となり、第2の入力部20Bの操作体25Bが軸方向へ押し込まれると、第2のスイッチ部28Bがオン状態となる。このスイッチ信号は、主信号生成部31からの入力信号31aとしてアプリケーションソフト34による動作制御に伝達される。
【0072】
アプリケーションソフト34の制御動作では、第1のスイッチ部28Aと第2のスイッチ部28Bのどちらが操作されたかに応じて、異なる制御処理が行われる。例えば、第1の入力部20Aのスイッチ部28Aが操作されたら、図1に示した左クリック釦8aが押されたのと同じ制御処理が行われ、第2の入力部20Bのスイッチ部28Bが操作されたら、図1に示した右クリック釦8bが押されたのと同じ制御処理が行われる。
【0073】
また、第1のスイッチ部28Aと第2のスイッチ部28Bの双方が押されたときは、マウスに装備された左クリック釦8aと右クリック釦8bの間に位置する中央クリック釦が押されたのと同じ制御処理が行われる。
【0074】
前述のように、機械式のスイッチ部28A,28Bを設けずに、スティックポインタ21A,21Bに設けられた4つの歪みセンサ26a,26b,27a,27bの抵抗値が全て同じ状態に変化したときに、操作体25A,25Bが軸方向へ押されて第1または第2のスイッチ機能が動作したと判断することが可能である。
【0075】
この場合は、図7のST11において、第1のスティックポインタ21Aの出力がスイッチ機能の出力であると判断したら、ST12に移行して、例えば左クリック釦8aと同じ制御処理が行われる。ST13において、第2のスティックポインタ21Bの出力がスイッチ機能の出力であると判断したら、ST14に移行して、例えば右クリック釦8bと同じ制御処理が行われる。
【0076】
なお、アプリケーションソフト34を起動し、表示装置5の画面に設定メニューを表示させ、キーボード入力装置11を操作することで、図8に示した各種ジェスチャー機能の設定変更や割り振りの変更、および第1の入力部20Aのスイッチ機能と第2の入力部20Bのスイッチ機能の設定変更や割り振りを変更することが可能である。
【0077】
また、図3に示すように、第1の入力部20Aを照光する第1の光源29Aと、第2の入力部20Bを照光する第2の光源29Bの点灯を制御することで、第1の操作体25Aと第2の操作体25Bを照光することができる。また、第1の光源29Aと第2の光源29Bをそれぞれ複数種類のLEDで構成することで、第1の操作体25Aと第2の操作体25Bを異なる色相で照光することができる。
【0078】
例えば、図8(1)〜(8)に示すそれぞれのジェスチャー制御の実行に伴って、それぞれのジェスチャー毎に異なる色相で、第1の操作体25Aと第2の操作体25Bを照光することができる。
【0079】
前記実施の形態では、制御処理部として機能するアプリケーションソフト34において、図8に示すように、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bからの入力信号の向きを判断して、各ジェスチャー制御処理が実行される。ただし、本発明では、アプリケーションソフト34の前段に設けられた制御回路やドライバーソフトによって、第1のスティックポインタ21Aと第2のスティックポインタ21Bからの入力信号が分析されて、各ジェスチャー制御動作が指示されまたは実行されてもよい。
【0080】
図9ないし図11に、本発明の実施の形態の入力処理装置10を搭載した他の情報処理装置が示されている。
【0081】
図9に携帯用の情報処理装置101が示されている。情報処理装置101は、小型の本体部102と小型の蓋体部103が折り畳み自在に連結されている。本体部102に操作入力部104が設けられ、蓋体部103に表示装置105が設けられている。操作入力部104に、小型のキーボード入力装置111と、入力処理装置10を構成する第1の入力部20Aと第2の入力部20Bが設けられている。第1の入力部20Aと第2の入力部20Bは、キーボード入力装置111のキー配列領域から左右両側に外れた位置に配置されている。
【0082】
この情報処理装置101は、本体部102を両手で保持して操作するのに適した小型のものであり、例えば左手の親指で第1の入力部20Aが操作され、右手の親指で第2の入力装置20Bが操作される。
【0083】
図10に、電話機能とメール送受信機能を有する携帯用機器201が示されている。この携帯用機器201は、本体部202とその前面において縦方向にスライドする蓋体部203を有し、蓋体部203に表示装置205が設けられている。本体部202に操作入力部204が設けられ、ここにテンキー入力部211とともに、入力処理装置10を構成する第1の入力部20Aと第2の入力部20Bが設けられている。
【0084】
図11に示す小型の情報処理装置301は、両手で保持される大きさの本体部302を有している。本体部302に表示装置305が設けられている。この表示装置305は液晶表示パネルなどの表示部と、その表面に設けられた静電容量型や抵抗変化型のタッチパッドを有している。そして、表示装置305の両側に入力処理装置10を構成する第1の入力部20Aと第2の入力部20Bが配置されている。
【0085】
この情報処理装置301は、指で表示画面をタッチすることで各種入力操作ができ、さらに左手の親指で第1の入力部20Aを操作することができ、右手の親指で第2の入力装置20Bを操作することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 パーソナルコンピュータ
4 操作入力部
5 表示装置
9 カーソル
10 入力処理装置
11 キーボード入力装置
12 キー
20A 第1の入力部
20B 第2の入力部
21A 第1のスティックポインタ
21B 第2のスティックポインタ
25A 第1の操作体
25B 第2の操作体
26a,26b,27a,27b 歪みセンサ(検知素子)
28A 第1のスイッチ部
28B 第2のスイッチ部
29A 第1の光源
29B 第2の光源
31 主信号生成部
32 副信号生成部
101,201,301 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力部に配置された第1の入力部ならびに第2の入力部と、前記第1の入力部からの入力信号と前記第2の入力部からの入力信号が与えられる制御処理部とが設けられ、
前記第1の入力部と前記第2の入力部のそれぞれに、操作体と、前記操作体に与えられる操作方向および操作力を検知する検知素子とを有するスティックポインタが設けられており、
前記制御処理部では、前記第1の入力部と前記第2の入力部のいずれか一方のスティックポインタから入力信号が得られているときに、そのスティックポインタの操作体に与えられた操作方向と操作力に対応した座標入力処理が行われ、
前記第1の入力部と前記第2の入力部の2つのスティックポインタから入力信号が得られているときに、2つの操作体に与えられる操作方向の組み合わせに応じたジェスチャー制御処理が行われることを特徴とする入力処理装置。
【請求項2】
前記制御処理部では、2つのスティックポインタに設けられた前記検知素子から同時に検知出力が得られたときにジェスチャー制御処理が行われる請求項1記載の入力処理装置。
【請求項3】
前記制御処理部では、予め決められた時間内に、2つのスティックポインタに設けられた前記検知素子から検知出力が得られたときにジェスチャー制御処理が行われる請求項1記載の入力処理装置。
【請求項4】
前記制御処理部では、前記第1の入力部と前記第2の入力部のいずれか一方のスティックポインタから入力信号が得られているときに、前記第1の入力部からの入力信号と、前記第2の入力部からの入力信号とで、互いに異なる制御処理が行われる請求項1ないし3のいずれかに記載の入力処理装置。
【請求項5】
前記制御処理部の設定を変えることによって、2つの入力部からの入力信号と、実行する制御処理の対応の設定と変更が可能である請求項1ないし4のいずれかに記載の入力処理装置。
【請求項6】
前記第1の入力部と前記第2の入力部のそれぞれに、前記操作体が押されたことを検知するスイッチ機能が備えられており、
前記制御処理部では、前記第1の入力部のスイッチ機能が動作したときと、前記第2の入力部のスイッチ機能が動作したときとで、異なるスイッチ制御処理が行われる請求項1ないし5のいずれかに記載の入力処理装置。
【請求項7】
前記制御処理部の設定を変えることによって、2つのスイッチ機能の動作と、スイッチ制御処理との対応の設定と変更が可能である請求項6記載の入力処理装置。
【請求項8】
前記第1の入力部の操作体と前記第2の入力部の操作体を、別々の色彩で照光する光源が設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載の入力処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−20289(P2013−20289A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150604(P2011−150604)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】