共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物
本発明は、共役リノール酸を含有する水性ナノエマルジョン組成物に関する。より詳細には、共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含む水性ナノエマルジョン組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役リノール酸を含有する水性ナノエマルジョン組成物に関する。さらに詳しくは、共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含む水性ナノエマルジョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質は様々に分類されており、その中で最も重要なものが脂肪酸である。脂肪酸は、二重結合の存在によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とに分けられる。 バター又は牛脂などの動物性脂肪は、主に飽和脂肪酸からなり、室温で固体状態で存在していることが特徴である。植物性の脂肪及び魚油は、主に不飽和脂肪酸からなっている。脂肪酸は炭素原子が長鎖として連結している構造を有している。不飽和脂肪酸の命名法では、脂肪酸のカルボキシル末端から最初に二重結合が現れる炭素原子を数える場合には「デルタ(Δ)」、メチル末端から最初に二重結合が現れる炭素原子を数える場合には、「オメガ(ω)」として命名される。オメガの命名法で、「n−」として命名されることもある。例えば、オメガ−3脂肪酸は、1番目の二重結合がメチル基(CH3−)から3番目の炭素−炭素結合上にある、脂肪酸を示す。同様に、オメガ−6脂肪酸は、1番目の二重結合がメチル基から6番目の炭素−炭素結合上にある、脂肪酸を示す。脂質源として通常用いられる食品におけるn−3及びn−6の脂肪酸の含量に関しては、大部分の植物性食品が動物性食品よりもn−3又はn−6を豊富に含む。食用の油脂の中で、n−6脂肪酸が豊富なものの例は、トウモロコシ油、綿実油などであり、n−3脂肪酸が豊富なものの例は、亜麻仁油とサケ油などの魚類油であり、n−6とn−3脂肪酸をバランスよく豊富に有するものの例は大豆油とクルミ油である。n−6脂肪酸及びn−3脂肪酸の中で、リノール酸(LA)、α−リノレン酸(LNA)及びアラキドン酸(AA)は人間が本質的に摂取しなければならない必須脂肪酸(EFA)に分類されており、そのためそれらは栄養学的に重要である。特に、LAとLNAは、消化後の生合成過程を通して、4〜6個の炭素-炭素二重結合を伴う20〜22個の炭素原子鎖を有する脂肪酸に延長(elongated)、又は脱飽和(desaturated)される。そのような脂肪酸の代表例が、ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)である。ω−3脂肪酸の例は、アルファ(α)リノレン酸、DHA、EPAなどである。このようなオメガ−3脂肪酸は、細胞の生成及び再生に必須であり、血圧、血液凝固、コレステロール値の低下など心血管系の健康と関係がある。またこれらは、関節炎、リウマチ、脳及び神経機能の発達及び調節、皮膚及び髪の健康、及び眼の健康も助ける。ω−6脂肪酸の例は、アルファリノール酸、アラキドン酸、ガンマ−リノレン酸などである。ω−6脂肪酸の機能は、動脈硬化、心臓病、月経前症候群(PMS)、高コレステロール血症及び高血圧を防止し、痛みと炎症を緩和し、エストロゲン、テストステロンなどの性ホルモンの分泌を向上させることである。ω−6脂肪酸は、肝硬変にも助けとなり、加齢予防、皮膚健康の維持、肥満と糖尿病の合併症予防、及びリウマチ性関節炎の緩和に効能がある。ω−9脂肪酸の例はオレイン酸である。
【0003】
食品から摂取されたか又は人体内で合成された場合の、脂質の幾つかの重要な機能は、以下の通りである。第1に、細胞膜の主要構成成分(リン脂質、糖脂質及びステロイド)、第2に、貯蔵型高エネルギー源、第3に、皮下組織又は主要臓器の保護膜及び絶縁物質、第4に、有髄神経における興奮伝導の促進(非極性脂質)、第5に、各種生物学的活性物質(脂溶性ビタミン類、必須脂肪酸類、ステロイドホルモン類、胆汁酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン等)への変換。上記の様に、脂質は人体において非常に重要で、多様な役割を果たす。特に、多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、リン脂質の構成成分であるだけでなく、体内代謝を介して、プロスタグランジン類(PG)、ロイコトリエン類(LT)及び重要なトロンボキサン類(TX)に変換され、次いで各種生理現象の維持及び調節において重要な役割を果たす。
【0004】
共役リノール酸(CLA)は、リノール酸の化学構造の修飾によって形成された、脂肪酸の一種である。CLAは、その名前から分かるように、共役二重結合を有している。CLAは様々な生理活性を有している。今までに、抗癌活性、抗酸化活性、抗動脈硬化活性、抗菌活性、更に多様な成人病における予防及び治療の効果を有していることが知られている。また、CLAは、体内の脂肪細胞に直接作用して、それらが脂肪を吸収することを防いで、脂肪細胞の分解と代謝率を高めることにより、脂肪細胞のアポトーシスを増加させて脂肪細胞を減らすことにより、そして脂肪の筋肉強化のためのエネルギーとしての使用を促進させることにより、体脂肪、特に腹部脂肪を減少させるのに役立つことが知られている。その結果、CLAは、痩身用物質として広く注目を浴びている。
【0005】
社会が高度化及び発展するにつれて、スリムな体形への欲求が生活水準の向上に比例して増加している。そのような欲求に応えるために、痩身用物質、特に天然産物に由来するものを開発しようとする試みが行われている。しかし、食品、飲料、化粧品や製薬などの分野で使用する機能性物質の多くは天然産物に由来しているので、大部分の機能性物質は、光、熱、酸素などの外的な環境要因に対して不安定であり、そして水、従来の有機溶媒及び油に溶けない。そのため、それらの優れた効能/効果にもかかわらず、機能性物質の使用に限定がある。このような物質の例は数え切れない程多い。現在では、界面活性剤や乳化剤を使用して、溶液中でエマルジョン化やカプセル化する方法で安定化させた後の機能性物質を使用している。しかし、このような方法は、ミセルが凝集するために、又は機能性物質が溶液中で拡散して自己分解するので、物理的及び化学的に機能性物質を充分に安定化させることができない。このような問題点を克服するために、各分野において多くの研究が行われているが、明確な解決策は未だ得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、共役リノール酸を有効成分として含有し、優れた貯蔵安定性、pH安定性及び透明性を有する共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含む共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、エタノールを含むナノエマルジョンの透明度をエタノールを含まないナノエマルジョンのそれと比較した写真である。
【図2】図2は、エタノールを含むナノエマルジョンとエタノールを含まないナノエマルジョンの走査型電子顕微鏡写真である(15,000倍拡大)。
【図3】図3は、MTTアッセイを用いて細胞生存を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat(オルリスタット):陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸)。
【図4】図4は、Oil red Oで染色した細胞の写真である(対照:DMSO、Orlistat(オルリスタット):陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸)。
【図5】図5は、中性脂質含量を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat(オルリスタット):陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸)。
【図6】図6は、脂質生成の抑制効果を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat:陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸;*p<0.05)。
【図7】図7は、脂肪分解によるグリセロールの含量を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat:陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸;* p<0.05)。
【図8】図8は、脂肪細胞から分泌されたレプチンの量を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat:陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸;*p<0.05)。
【図9】図9は、5週の実験期間中の体重変化の結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA)。
【図10】図10は、精巣上体白色脂肪組織と腎周囲白色脂肪組織の単位体重当たりの重さを測定した結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA;WAT:白色脂肪組織;B.W.:体重)。
【図11】図11は、血清コレステロール及び中性脂肪の含量を測定した結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA;TG:トリグリセリド、TC:総コレステロール、HDL−C:高密度脂質コレステロール、LDL−C:低密度脂質コレステロール)。
【図12】図12は、肝組織1g当たりのコレステロール及び中性脂肪の含量を測定した結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA)。
【図13】図13は、N−CLAのインビボ研究のプロトコルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は有効成分として共役リノール酸を含む。共役リノール酸の種類には限定がなく、何れの市販共役リノール酸を用いてもよい。このような共役リノール酸は、例えば、Tonalin(登録商標)CLA(Cognis, Germany)、Clarinol(登録商標)CLA(Lipid Nutrition B.V., Netherlands)、CLA(HK Biotech, Korea)などを含む。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、そしてさらに好ましくは15〜40重量%の共役リノール酸を含んでいる。本発明では、共役リノール酸の量が5重量%未満のとき、共役リノール酸の生理活性効果が劣り、共役リノール酸の量が50重量%を超えると、共役リノール酸がよく溶解しないか、又は長時間空気に露出すると、析出する恐れがある。
【0010】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、乳化剤としてレシチンを含む。本発明では、レシチンは様々なリン脂質の混合物を示し、リン脂質の組成はその起源によって多様であっても良い。本発明では、レシチンは卵黄、大豆油、ヒマワリ(種子)油などの様々な起源から得ることができ、その起源の種類による限定はない。本発明の水性ナノエマルジョン組成物を飲料又は機能性食品として経口投与する場合は、両親媒性乳化剤であるレシチンを用いることによって、共役リノール酸を迅速に浸透させることができる。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の量でレシチンを含む。本発明では、レシチンの量が0.01重量%未満のとき、レシチンが提供する乳化効果が弱くなり、乳化安定性が低下する恐れがあり、レシチンの量が5重量%を超えると、組成物の粘度が高くなりすぎる恐れがある。
【0011】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、共役リノール酸の溶解を助けるために、溶解助剤としてエタノールを含む。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の量でエタノールを含む。本発明では、エタノールの量が0.01重量%未満のとき、共役リノール酸の溶解を助ける効果が弱くなる恐れがあり、エタノールの量が5重量%を超えると、乳化安定性が低下する恐れがある。
【0012】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、共役リノール酸をより安定に乳化させるために、補助乳化剤を含む。本発明では、補助乳化剤の例は、好ましくは、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、商品名:Tween20)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、商品名:Tween80)、アニオン性アミノ酸系乳化剤、糖エステル、コレステロール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びグリセリンエステルを含む。本発明では、当該アニオン性アミノ酸系乳化剤の例は、TEA(トリエタノールアミン)−ココイルグルタミン酸塩、グルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸マグネシウム及びラウロイルグルタミン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、1〜15重量%、好ましくは3〜13重量%、そしてより好ましくは5〜12重量%の量で補助乳化剤を含む。本発明では、補助乳化剤の量が1重量%未満のとき、乳化安定性が低下する恐れがあり、エタノールの量が15重量%を超えると組成物の粘度が高くなりすぎる恐れがある。
【0013】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、共役リノール酸の析出を防止し、相対的に少ない量の乳化剤で共役リノール酸を溶解するためにグリセリンを含む。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、10〜40重量%、好ましくは12〜38重量%、そしてより好ましくは15〜35重量%の量でグリセリンを含む。本発明では、グリセリンの量が10重量%未満のとき、本発明の水性ナノエマルジョン組成物の貯蔵安定性が低下する恐れがあり、エタノールの量が40重量%を超えると、本発明の組成物を飲料又は食品に使用すると、食感、質感又は風味が低下する恐れがある。
【0014】
本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、好ましくは1〜100cP(センチポアズ)の粘度を有する。本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、室温(25℃)で、更に高温(45℃)で長期間保管しても、析出や層分離が生じないように、優れた貯蔵安定性を有している。また、本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、広い範囲のpHで安定であるため、様々な剤形で利用可能である。本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、所望の目的に応じて、飲料、食品、化粧品、機能性食品又は医薬品に適用することができる。このような適用のために、本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、粘増剤、甘味剤、賦形剤、香料などの様々な添加剤をさらに含んでいても良い。
【0015】
本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、優れた貯蔵安定性、pH安定性、及び透明性を有していて、効率的に共役リノール酸を浸透させることができる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明を以下の実施例をもって詳細に説明する。しかし、本発明の保護の範囲が実施例に限定されないことを理解されたい。
【0017】
実施例1
下記表1の組成で下記方法によって、水性ナノエマルジョン組成物を製造した。共役リノール酸とレシチンを糖エステルとエタノールに溶解した。次いで、水及びグリセリンを加え、十分に撹拌した。得られた混合物を高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)に1,000barで連続5回通過させた後、混合物を減菌ろ過して、ナノエマルジョン組成物を得た。この組成物を小分けし、包装した。
【0018】
【表1】
【0019】
実施例2
下記表2の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0020】
【表2】
【0021】
実施例3
下記表3の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0022】
【表3】
【0023】
実施例4
下記表4の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0024】
【表4】
【0025】
実施例5
下記表5の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0026】
【表5】
【0027】
実施例6
下記表6の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0028】
【表6】
【0029】
実施例7
下記表7の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0030】
【表7】
【0031】
実施例8
下記表8の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0032】
【表8】
【0033】
実施例9
下記表9の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0034】
【表9】
【0035】
実施例10
下記表10の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0036】
【表10】
【0037】
実験例1
実施例1〜10で調製された組成物の外観を層分離及び析出に関して肉眼で観察した。25℃及び45℃の恒温槽に保管した後に共役リノール酸の含量変化によって安定性を測定した。
【0038】
共役リノール酸の含量測定
試料20〜25mgを2mLの0.5N NaOHメタノール溶液に加えて振盪し、次いで80℃の熱浴で10分間加熱した後、冷水で冷却した。そこに、2mLのBH3を加え、次いで80℃の熱浴中で8〜10分間加熱した後、冷水で冷却した。そこに、3mLの内部標準溶液(500mgのウンデカン酸を100mLのn−ヘキサンに溶解した溶液)を加え、次いで80℃の熱浴中で3分間加熱した後、冷水で冷却した。そこに5mLの飽和NaCl溶液を加え、層分離した後、上層を取り、そこに0.5gの無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した。調製した試験液1μLをガスクロマトグラフィー(カラム:DB−Wax、インジェクター温度:270℃、検出器温度:290℃、カラム温度:190℃〜240℃、温度を1分当り2℃ずつ上げた)で分析した。
1)層分離、析出及び安定性
【0039】
【表11】
【0040】
2)室温(25℃)と高温(45℃)での色変化を2年間観察した。色変化は観察されなかった。
【0041】
3)pH安定性
室温(25℃)におけるpH2、5、7及び10でのpH安定性を層分離及び析出に関して肉眼で観察した。その結果を下記表12に示している。
【0042】
【表12】
【0043】
上記結果から、本発明に係る水性ナノエマルジョン組成物が、優れた貯蔵安定性、変色のない透明性及び広範囲のpHでの安定性を有していることが判る。
【0044】
実験例2
エタノールを溶解補助剤として含むナノエマルジョンとエタノールを含まないナノエマルジョンを比較するために、下記表13に示されるようなナノエマルジョン組成物を調製した。その粒子径、透明度、粘度及び45℃での貯蔵安定性を測定し、その結果を下記表14に示している。その粒子分布はPhotal ELS−Zを用いて測定した。さらに、エタノールを含むナノエマルジョンとエタノールを含まないナノエマルジョンを走査型電子顕微鏡(JEOL, Japan)で撮影し、その結果を図2に示している。
【0045】
【表13】
【0046】
【表14】
【0047】
上記表14から明らかなように、エタノールを溶解補助剤として加えた場合は、平均粒子径30.9nmを有するエマルジョンが形成されたのに対して、エタノールを加えなかった場合は、エマルジョンの平均粒子径は220.8nmであった。従って、エタノールを加えると、安定なナノエマルジョンが得られることが判る。また、透明度に関しては、エタノールを加えた場合には、非常に透明な組成物が得られたのに対して、エタノールを加えなかった場合には、不透明な組成物が得られた。粘度に関しては、エタノールを含む組成物の粘度が50cPであったのに対して、エタノールを含まない組成物の粘度が1,000cPであるという相当な差を示した。保管安定性に関しては、エタノールを加えた場合には、45℃で1ケ月間保管後に層分離が観察されなかったのに対して、エタノールを加えなかった場合には、層分離が生じた。従って、エタノールを含む組成物は貯蔵安定性の面でも優れていることが判る。さらに、走査型電子顕微鏡写真の比較では、エタノールを加えた場合には、均一なナノエマルジョンが形成されたのに対して、エタノールを加えなかった場合には、大きなエマルジョン粒子が互いに凝固していた。
【0048】
実験例3
本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物の抗−肥満効果を調べるために、インビトロ及びインビボ実験を行った。DMSO(ジメチルスルホキシド、対照)、オルリスタット(Orlistat、抗−肥満薬、陽性対照)、CLA及び本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン(以下、「N−CLA」という)を試料として用いた。N−CLAは実施例1に記載の方法によって製造した。
【0049】
実験例3−1:インビトロ実験
(1)細胞培養及び試料処理
3T3−L1前駆脂肪細胞を、10%ウシ胎仔血清、100unit/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO2インキュベータで培養した。細胞の70〜80%がコンフルエントになったとき、分化誘導物質であるデキサメタゾン、ピオグリタゾン(pioglitazone)、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)インスリン及びFBSを含有するDMEMで細胞を前分化させた後、インスリン、ピオグリタゾン、FBSを含有するDMEMで分化させた。分化後、10%FBSとインスリンを含有する成長培地で脂質を成熟させた。試料をDMSOに溶かしたて、最終濃度10μg/mLで処理した。
【0050】
(2)細胞生存率(MTTアッセイ)
96ウェルプレートの各ウェルに1×104個の前駆脂肪細胞を分注して、各サンプルを処理した。次いで、37℃、5%CO2インキュベータで細胞を24時間培養した。24時間経過後、MTT(リン酸緩衝生理食塩水中、最終濃度:0.4μg/mL)を処理し、次いで細胞を4時間培養した。形成されたホルマザン(Formazan)結晶をDMSO:エタノール(1:1)で溶解し、マイクロプレートリーダ(SUNRISE, TECAN, Austria)により540nmで吸光度を測定した。細胞生存率は、対照群の吸光度値に対する試料処理群の吸光度値の割合で決定し、その結果を図3に示している。図3から明らかなように、オルリスタット群、CLA群及びN−CLA群の細胞生存率は、それぞれ103%、100%、103%である。従って、対照群のそれと、統計的に有意な差はない。
【0051】
(3)脂肪分解効果
6ウェルプレートの各ウェルに1×105個の細胞を分注し、分化させた。 分化後8日目に培地を除去し、氷冷したPBSで2回洗浄した。細胞を室温で1時間、10%ホルマリンで固定し、0.2%Oil red O(イソプロパノール中)で30分間染色後、蒸留水で洗浄した。そこに、イソプロパノールを加えて、油滴を溶かした後、490nmでの吸光度として中性脂肪の含量を測定した。その結果を図4及び5に示している。オルリスタット群、CLA及群びN−CLA群は、対照群に比べて、中性脂肪が減少する傾向を示した。
【0052】
(4)脂質生成の抑制効果
6ウェルプレートの各ウェルに1×105個の細胞を分注した。細胞の70%がコンフルエントになったとき、細胞をMDI培地(分化培地)と各試料で同時に処理した後、48時間培養した。分化後8日目に、Oil red O染色で中性脂肪の含量を測定した。その結果を図6に示している。図6から明らかなように、CLA群は対照群と類似な中性脂肪含量を示したのに対して、オルリスタット群及びN−CLA群では、対照群に比べて中性脂肪の含量がそれぞれ12.5%及び16.3%と統計的有意に減少した。
【0053】
(5)グリセロールの定量
グリセロールを遊離グリセリン試薬(Sigma, USA)を用いる酵素反応法で定量した。37℃に予め温めた遊離グリセリン試薬0.8mLに、細胞を試料で24時間処理した後採取した培地10μLを加えた後、混合物の反応を37℃の水浴で5分間実施した。グリセロールの定量のために、標準グリセロール(25μg/10μL)を上記と同様にして反応させて、540nmにおける吸光度を測定した。グリセロールの含量は下記の計算式を用いて算出した。
グリセロール含量={(A試料−Aブランク))/(A標準品−Aブランク)}×標準品の濃度
【0054】
算出した結果を図7に示した。図7から明らかなように、対照群に比べて、CLA群はグリセロールの分泌(分解効果)が増加する傾向にあり、 オルリスタット群はグリセロールの分泌を1.57μg/mLに増加した。特にN−CLA群のグリセロール含量は2.67μg/mLであったので、N−CLA群におけるグリセロールの分泌は他群に比べて最も高かった。
【0055】
(6)レプチン分泌
食欲に関連するホルモンとして知らされているレプチンの分泌量が調節されているか否かを確認するために、実験を行った。脂肪細胞から分泌されたレプチンの量を、試料で脂肪細胞を処理した後に合わせた培地上で酵素免疫測定法(ELISA)により測定した。100μlのウサギ抗マウスレプチンIgGをELISAプレートに分注した。ELISAプレートを4℃で一晩培養し、TPBS(PBS+0.05%Tween20)で3回洗浄し、そこに合わせた培地100μLを加えた後、1時間室温で培養した。ELISAプレートを再びTPBSで3回洗浄し、そこに二次抗体を加え、1時間室温で培養した後、TPBSで3回洗浄した。アルカリホスファターゼ結合性基質キットを用いて発色を促進させた後、ELISAリーダ(SUNRISE, TECAN, Austria)によって490nmでの吸光度を測定した。その結果を図8に示している。図8から明らかなように、オルリスタット群、CLA群及びN−CLA群のレプチン分泌量は、対照群と比べて、それぞれ11.6%、8.3%及び7.8%まで減少した。
【0056】
(7)統計値
上記結果は、SPSSパッケージプログラム(SPSS 12.0 for Windows(登録商標), USA)を利用して算出した。対照群と試験群と間の平均差に対する有意性はスチューデントt−検定を実施して検定した。有意水準はp<0.05とし、全ての測定値は平均値±標準誤差で表示している。
【0057】
実験例3−2:インビボ実験
(1)実験動物及び実験デザイン
実験動物として28匹の雄性Sprague−Dawleyラット(5週齢、145±5g)を Orient Company (Korea) から購入した。ラットを1週間ペレット形態のLab−chow食に適応をさせた。正常群(NC)を除いた残りの肥満誘発群に高脂肪食を5週間不断給餌して肥満を誘発した後、正常群を含む4群(1群当たり7匹)に分け、5週間飼育した(図13に示されるように)。
【0058】
実験食のベースとしてAIN−76規定食(Teklad, USA)を使用した。試験物質は高脂肪食の2%濃度で加えた。実験食の組成を下記表15に示している。CLA群とN−CLA群では、CLAとN−CLAをそれぞれ2%添加したが、コーンオイルは減少させた。実験食と飲料水は不断供給した。飼育期間中、実験食を4℃の冷蔵庫で保管した。それぞれの動物を、相対湿度60±5%、12時間の明/12時間の暗の明暗サイクルで、25±2℃の、特定の環境条件下の空の檻に収納した。体重及び食餌摂取量を全実験期間中に2日間隔で一定の時間に測定した。食餌効率比(FER)は、実験期間中の体重増加量を同じ期間中に摂取した食餌量で割って計算して、その結果を表16に示している。
【0059】
【表15】
【0060】
【表16】
【0061】
表16から明らかなように、食餌摂取量は全ての群で統計的有意性を示さなかったので、食餌摂取量は体重の増減に影響を及ぼさないと考えられる。一方、N−CLA群の体重増加が、ND群、HFD群及びCLA群より統計的有意に低かった。従って、N−CLAの補給が、食餌摂取には影響を及ぼさないながら、体重増加を顕著に抑制することが判る。
【0062】
実験期間中の体重変化の量を図9に示している。図9から明らかなように、実験期間中、全ての群の体重は着実に増加した。正常食(ND)群を除いたその他の群は、5週間の高脂肪食で肥満を誘発された。全ての高脂肪食摂取群の肥満誘発後の第一週に測定した体重は、正常対照群に比べて統計的有意に重かった。5週間の実験期間中、HFD群が最も高い体重増加を示した。CLA群の体重増加は、第2週〜第4週にはHFD群より低かったが、第5週におけるCLA群の体重はHFD群のそれと統計的有意には異なっていなかった。一方、N−CLA群の体重は、第2週からHFD群より統計的有意に軽かった。特に、第5週におけるN−CLA群の体重は、高脂肪食を摂取しなかった正常食(ND)群のそれと類似していた。従って、N−CLAの補給は体重増加を效率的に抑制したことが判る。
【0063】
(2)臓器重量
飼育後、ラットを12時間絶食させた後、最初にエーテルで麻酔した。下大静脈から空腹時血液を採取した。採取した血液を3000×g、4℃で15分間遠心分離して、血清を分離した後、得られた血清を試料分析時まで−70℃で保管した。実験動物の臓器組織(肝臓、心臓、腎臓、精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織)をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で数回洗浄した後、表面の水分を除去して秤量した。肝臓を、単離して収集し、液体窒素中で急冷した後、酵素活性の測定及び脂質定量のための試料分析時まで−70℃で保管した。肝臓、心臓及び腎臓の重量を測定した結果を下記表17に示している。精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織の単位体重当たりの重さを測定した結果を図10に示している。
【0064】
【表17】
【0065】
表17から明らかなように、心臓の重量は正常対照群を除いた高脂肪食を摂取した全て群で減少しており、肝臓の重量は高脂肪食を摂取した群全てで統計的有意に増加した。
【0066】
また、図10から明らかなように、精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織の単位体重当たりの重さを測定した結果、高脂肪食を摂取した全ての群でWAT(白色脂肪組織)が増加した。CLA群及びN−CLA群の精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織の重さは、HFD群より若干低くかったが、統計学的に有意ではなかった。
【0067】
(3)生化学分析
1)総コレステロール
血清総コレステロールの定量は、Allain らの文献(1974)の酵素法を適用して試験溶液(Asanpharm Co., Korea)を用いて実施した。血清コレステロールはCE(コレステロールエステル)及び遊離コレステロールの2形態で存在する。従って、CEと遊離コレステロールの両方を定量するために、CEをコレステロールエステラーゼにより脂肪酸と遊離コレステロールに変換した。このように変換した遊離コレステロールをコレステロールエステラーゼにより順にH2O2と△4−コレステノン(cholestenon)に変換した。H2O2をペルオキシダーゼ、フェノール及び4−アミノ−アンチピリンと混合して、赤色を発色させた後、500nmにおける吸光度を測定した。測定値をコレステロール標準溶液(300mg/dL)と比較して定量した。
【0068】
2)トリグリセリド
血清中性脂質は、McGowan らの文献(1983)の酵素法に従って中性脂質測定用試薬(Asanpharm Co.,Korea)を用いて測定した。血清中の中性脂質をリポタンパク質リパーゼ(LPL)によりグリセロールと脂肪酸に分解した。グリセロールは、ATPとグリセロールキナーゼ(GK)の作用によりL−α−グリセロリン酸を形成した。L−α−グリセロリン酸のO2及びグリセロリン酸オキシダーゼ(GPO)との反応はH2O2を発生させた。そこに、ペルオキシダーゼと4−アミノ−アンチピリンを加えて赤色を発色させ、550nmにおける吸光度を測定した。測定値をグリセロール標準曲線と比較して定量した。
【0069】
3)HDL−コレステロール、LDL−コレステロール
HDL−コレステロール含量はキットの試薬(AsanpharmCo., Korea)で測定した。LDL−コレステロールの含量は、下記のように Friedewald らの文献(1993)の方法に従って下記の通り計算した:
LDL−コレステロール=総コレステロール−HDL−コレステロール−(中性脂質/5)。
【0070】
上記の方法によって測定した血清中性脂質とコレステロールの含量を図11に示している。図11から明らかなように、HFD群の中性脂質の含量は、正常食(ND)群のそれより2倍以上高かった。CLA群及びN−CLA群の中性脂質の含量は、HFD群よりも統計的有意に低かった。特に、血清中性脂質(トリグリセリド、TG)の含量は正常食(ND)群にかなり近いレベルであった。それはHFD群と比較して52%まで減少した。HFD群の総コレステロール(TC)及び低密度脂質(LDL)は正常食(ND)群のそれより顕著に高かかった。CLA群とN−CLA群の総コレステロール(TC)及び低密度脂質(LDL)は、HFD群と比較して統計的有意に減少した。特に、N−CLA群の総コレステロール(TC)及び低密度脂質(LDL)は、HFD群に比べて、それぞれ20%及び46%に減少した。従って、N−CLAは優れたコレステロール減少効果を有していることが判る。一方、全ての群において高密度脂質(HDL)の濃度は何ら統計的有意な差を示さなかった。
【0071】
4)肝臓組織脂質含量
肝臓組織中の脂質含量の測定は、Folchらの文献の方法に従って行った。肝臓組織1gにCM溶液(クロロホルム:メタノール=2:1)を加えて、ホモジナイズした。溶液を12時間毎に振盪しながら、4℃で3日間保管した。3日後、水層から分離したCM溶液層をピペットで単離した後、80℃の水浴でCM溶液を完全に蒸発させて、乾燥脂質を得た。得られた乾燥脂質を無水エタノールに溶かし、ホモジナイズした後、中性脂質、総コレステロール及びHDL−コレステロールの含量をキットの試薬(AM157S−K、AM202−K、AM203−K、Asanpharm Co., Korea)で測定した。その結果を図12に示している。
【0072】
図12から明らかなように、HFD群の肝臓組織における中性脂肪及び総コレステロールの含量が最も高く、CLA群とN−CLA群はHFD群に比べて統計的有意な減少を示した。血清脂質レベルと同様に、肝臓組織脂質含量をN−CLA群がCLA群に比べてより效率的に減少させたことが判る。
【0073】
5)統計値
上記の結果は、SPSSパッケージプログラムを用いて算出した。各群間の平均差に対する有意性は一元配置ANOVA(分散分析)で検定した。多群間の差については、p<0.05レベルでDuncan の多重範囲検定による事後検定を行った。その結果を平均値±S.E.で示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役リノール酸を含有する水性ナノエマルジョン組成物に関する。さらに詳しくは、共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含む水性ナノエマルジョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質は様々に分類されており、その中で最も重要なものが脂肪酸である。脂肪酸は、二重結合の存在によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とに分けられる。 バター又は牛脂などの動物性脂肪は、主に飽和脂肪酸からなり、室温で固体状態で存在していることが特徴である。植物性の脂肪及び魚油は、主に不飽和脂肪酸からなっている。脂肪酸は炭素原子が長鎖として連結している構造を有している。不飽和脂肪酸の命名法では、脂肪酸のカルボキシル末端から最初に二重結合が現れる炭素原子を数える場合には「デルタ(Δ)」、メチル末端から最初に二重結合が現れる炭素原子を数える場合には、「オメガ(ω)」として命名される。オメガの命名法で、「n−」として命名されることもある。例えば、オメガ−3脂肪酸は、1番目の二重結合がメチル基(CH3−)から3番目の炭素−炭素結合上にある、脂肪酸を示す。同様に、オメガ−6脂肪酸は、1番目の二重結合がメチル基から6番目の炭素−炭素結合上にある、脂肪酸を示す。脂質源として通常用いられる食品におけるn−3及びn−6の脂肪酸の含量に関しては、大部分の植物性食品が動物性食品よりもn−3又はn−6を豊富に含む。食用の油脂の中で、n−6脂肪酸が豊富なものの例は、トウモロコシ油、綿実油などであり、n−3脂肪酸が豊富なものの例は、亜麻仁油とサケ油などの魚類油であり、n−6とn−3脂肪酸をバランスよく豊富に有するものの例は大豆油とクルミ油である。n−6脂肪酸及びn−3脂肪酸の中で、リノール酸(LA)、α−リノレン酸(LNA)及びアラキドン酸(AA)は人間が本質的に摂取しなければならない必須脂肪酸(EFA)に分類されており、そのためそれらは栄養学的に重要である。特に、LAとLNAは、消化後の生合成過程を通して、4〜6個の炭素-炭素二重結合を伴う20〜22個の炭素原子鎖を有する脂肪酸に延長(elongated)、又は脱飽和(desaturated)される。そのような脂肪酸の代表例が、ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)である。ω−3脂肪酸の例は、アルファ(α)リノレン酸、DHA、EPAなどである。このようなオメガ−3脂肪酸は、細胞の生成及び再生に必須であり、血圧、血液凝固、コレステロール値の低下など心血管系の健康と関係がある。またこれらは、関節炎、リウマチ、脳及び神経機能の発達及び調節、皮膚及び髪の健康、及び眼の健康も助ける。ω−6脂肪酸の例は、アルファリノール酸、アラキドン酸、ガンマ−リノレン酸などである。ω−6脂肪酸の機能は、動脈硬化、心臓病、月経前症候群(PMS)、高コレステロール血症及び高血圧を防止し、痛みと炎症を緩和し、エストロゲン、テストステロンなどの性ホルモンの分泌を向上させることである。ω−6脂肪酸は、肝硬変にも助けとなり、加齢予防、皮膚健康の維持、肥満と糖尿病の合併症予防、及びリウマチ性関節炎の緩和に効能がある。ω−9脂肪酸の例はオレイン酸である。
【0003】
食品から摂取されたか又は人体内で合成された場合の、脂質の幾つかの重要な機能は、以下の通りである。第1に、細胞膜の主要構成成分(リン脂質、糖脂質及びステロイド)、第2に、貯蔵型高エネルギー源、第3に、皮下組織又は主要臓器の保護膜及び絶縁物質、第4に、有髄神経における興奮伝導の促進(非極性脂質)、第5に、各種生物学的活性物質(脂溶性ビタミン類、必須脂肪酸類、ステロイドホルモン類、胆汁酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン等)への変換。上記の様に、脂質は人体において非常に重要で、多様な役割を果たす。特に、多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、リン脂質の構成成分であるだけでなく、体内代謝を介して、プロスタグランジン類(PG)、ロイコトリエン類(LT)及び重要なトロンボキサン類(TX)に変換され、次いで各種生理現象の維持及び調節において重要な役割を果たす。
【0004】
共役リノール酸(CLA)は、リノール酸の化学構造の修飾によって形成された、脂肪酸の一種である。CLAは、その名前から分かるように、共役二重結合を有している。CLAは様々な生理活性を有している。今までに、抗癌活性、抗酸化活性、抗動脈硬化活性、抗菌活性、更に多様な成人病における予防及び治療の効果を有していることが知られている。また、CLAは、体内の脂肪細胞に直接作用して、それらが脂肪を吸収することを防いで、脂肪細胞の分解と代謝率を高めることにより、脂肪細胞のアポトーシスを増加させて脂肪細胞を減らすことにより、そして脂肪の筋肉強化のためのエネルギーとしての使用を促進させることにより、体脂肪、特に腹部脂肪を減少させるのに役立つことが知られている。その結果、CLAは、痩身用物質として広く注目を浴びている。
【0005】
社会が高度化及び発展するにつれて、スリムな体形への欲求が生活水準の向上に比例して増加している。そのような欲求に応えるために、痩身用物質、特に天然産物に由来するものを開発しようとする試みが行われている。しかし、食品、飲料、化粧品や製薬などの分野で使用する機能性物質の多くは天然産物に由来しているので、大部分の機能性物質は、光、熱、酸素などの外的な環境要因に対して不安定であり、そして水、従来の有機溶媒及び油に溶けない。そのため、それらの優れた効能/効果にもかかわらず、機能性物質の使用に限定がある。このような物質の例は数え切れない程多い。現在では、界面活性剤や乳化剤を使用して、溶液中でエマルジョン化やカプセル化する方法で安定化させた後の機能性物質を使用している。しかし、このような方法は、ミセルが凝集するために、又は機能性物質が溶液中で拡散して自己分解するので、物理的及び化学的に機能性物質を充分に安定化させることができない。このような問題点を克服するために、各分野において多くの研究が行われているが、明確な解決策は未だ得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、共役リノール酸を有効成分として含有し、優れた貯蔵安定性、pH安定性及び透明性を有する共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含む共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、エタノールを含むナノエマルジョンの透明度をエタノールを含まないナノエマルジョンのそれと比較した写真である。
【図2】図2は、エタノールを含むナノエマルジョンとエタノールを含まないナノエマルジョンの走査型電子顕微鏡写真である(15,000倍拡大)。
【図3】図3は、MTTアッセイを用いて細胞生存を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat(オルリスタット):陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸)。
【図4】図4は、Oil red Oで染色した細胞の写真である(対照:DMSO、Orlistat(オルリスタット):陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸)。
【図5】図5は、中性脂質含量を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat(オルリスタット):陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸)。
【図6】図6は、脂質生成の抑制効果を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat:陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸;*p<0.05)。
【図7】図7は、脂肪分解によるグリセロールの含量を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat:陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸;* p<0.05)。
【図8】図8は、脂肪細胞から分泌されたレプチンの量を測定した結果を示すグラフである(対照:DMSO、Orlistat:陽性対照、CLA:共役リノール酸、N−CLA:ナノエマルジョン共役リノール酸;*p<0.05)。
【図9】図9は、5週の実験期間中の体重変化の結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA)。
【図10】図10は、精巣上体白色脂肪組織と腎周囲白色脂肪組織の単位体重当たりの重さを測定した結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA;WAT:白色脂肪組織;B.W.:体重)。
【図11】図11は、血清コレステロール及び中性脂肪の含量を測定した結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA;TG:トリグリセリド、TC:総コレステロール、HDL−C:高密度脂質コレステロール、LDL−C:低密度脂質コレステロール)。
【図12】図12は、肝組織1g当たりのコレステロール及び中性脂肪の含量を測定した結果を示すグラフである(ND:正常食、HFD;高脂肪食(HF食)、CLA:HF食+2%CLA、N−CLA:HF食+2%N−CLA)。
【図13】図13は、N−CLAのインビボ研究のプロトコルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は有効成分として共役リノール酸を含む。共役リノール酸の種類には限定がなく、何れの市販共役リノール酸を用いてもよい。このような共役リノール酸は、例えば、Tonalin(登録商標)CLA(Cognis, Germany)、Clarinol(登録商標)CLA(Lipid Nutrition B.V., Netherlands)、CLA(HK Biotech, Korea)などを含む。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、そしてさらに好ましくは15〜40重量%の共役リノール酸を含んでいる。本発明では、共役リノール酸の量が5重量%未満のとき、共役リノール酸の生理活性効果が劣り、共役リノール酸の量が50重量%を超えると、共役リノール酸がよく溶解しないか、又は長時間空気に露出すると、析出する恐れがある。
【0010】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、乳化剤としてレシチンを含む。本発明では、レシチンは様々なリン脂質の混合物を示し、リン脂質の組成はその起源によって多様であっても良い。本発明では、レシチンは卵黄、大豆油、ヒマワリ(種子)油などの様々な起源から得ることができ、その起源の種類による限定はない。本発明の水性ナノエマルジョン組成物を飲料又は機能性食品として経口投与する場合は、両親媒性乳化剤であるレシチンを用いることによって、共役リノール酸を迅速に浸透させることができる。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の量でレシチンを含む。本発明では、レシチンの量が0.01重量%未満のとき、レシチンが提供する乳化効果が弱くなり、乳化安定性が低下する恐れがあり、レシチンの量が5重量%を超えると、組成物の粘度が高くなりすぎる恐れがある。
【0011】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、共役リノール酸の溶解を助けるために、溶解助剤としてエタノールを含む。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の量でエタノールを含む。本発明では、エタノールの量が0.01重量%未満のとき、共役リノール酸の溶解を助ける効果が弱くなる恐れがあり、エタノールの量が5重量%を超えると、乳化安定性が低下する恐れがある。
【0012】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、共役リノール酸をより安定に乳化させるために、補助乳化剤を含む。本発明では、補助乳化剤の例は、好ましくは、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、商品名:Tween20)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、商品名:Tween80)、アニオン性アミノ酸系乳化剤、糖エステル、コレステロール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びグリセリンエステルを含む。本発明では、当該アニオン性アミノ酸系乳化剤の例は、TEA(トリエタノールアミン)−ココイルグルタミン酸塩、グルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸マグネシウム及びラウロイルグルタミン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、1〜15重量%、好ましくは3〜13重量%、そしてより好ましくは5〜12重量%の量で補助乳化剤を含む。本発明では、補助乳化剤の量が1重量%未満のとき、乳化安定性が低下する恐れがあり、エタノールの量が15重量%を超えると組成物の粘度が高くなりすぎる恐れがある。
【0013】
本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、共役リノール酸の析出を防止し、相対的に少ない量の乳化剤で共役リノール酸を溶解するためにグリセリンを含む。本発明の水性ナノエマルジョン組成物は、10〜40重量%、好ましくは12〜38重量%、そしてより好ましくは15〜35重量%の量でグリセリンを含む。本発明では、グリセリンの量が10重量%未満のとき、本発明の水性ナノエマルジョン組成物の貯蔵安定性が低下する恐れがあり、エタノールの量が40重量%を超えると、本発明の組成物を飲料又は食品に使用すると、食感、質感又は風味が低下する恐れがある。
【0014】
本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、好ましくは1〜100cP(センチポアズ)の粘度を有する。本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、室温(25℃)で、更に高温(45℃)で長期間保管しても、析出や層分離が生じないように、優れた貯蔵安定性を有している。また、本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、広い範囲のpHで安定であるため、様々な剤形で利用可能である。本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、所望の目的に応じて、飲料、食品、化粧品、機能性食品又は医薬品に適用することができる。このような適用のために、本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、粘増剤、甘味剤、賦形剤、香料などの様々な添加剤をさらに含んでいても良い。
【0015】
本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物は、優れた貯蔵安定性、pH安定性、及び透明性を有していて、効率的に共役リノール酸を浸透させることができる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明を以下の実施例をもって詳細に説明する。しかし、本発明の保護の範囲が実施例に限定されないことを理解されたい。
【0017】
実施例1
下記表1の組成で下記方法によって、水性ナノエマルジョン組成物を製造した。共役リノール酸とレシチンを糖エステルとエタノールに溶解した。次いで、水及びグリセリンを加え、十分に撹拌した。得られた混合物を高圧マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)に1,000barで連続5回通過させた後、混合物を減菌ろ過して、ナノエマルジョン組成物を得た。この組成物を小分けし、包装した。
【0018】
【表1】
【0019】
実施例2
下記表2の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0020】
【表2】
【0021】
実施例3
下記表3の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0022】
【表3】
【0023】
実施例4
下記表4の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0024】
【表4】
【0025】
実施例5
下記表5の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0026】
【表5】
【0027】
実施例6
下記表6の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0028】
【表6】
【0029】
実施例7
下記表7の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0030】
【表7】
【0031】
実施例8
下記表8の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0032】
【表8】
【0033】
実施例9
下記表9の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0034】
【表9】
【0035】
実施例10
下記表10の構成組成を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で水性ナノエマルジョン組成物を製造した。
【0036】
【表10】
【0037】
実験例1
実施例1〜10で調製された組成物の外観を層分離及び析出に関して肉眼で観察した。25℃及び45℃の恒温槽に保管した後に共役リノール酸の含量変化によって安定性を測定した。
【0038】
共役リノール酸の含量測定
試料20〜25mgを2mLの0.5N NaOHメタノール溶液に加えて振盪し、次いで80℃の熱浴で10分間加熱した後、冷水で冷却した。そこに、2mLのBH3を加え、次いで80℃の熱浴中で8〜10分間加熱した後、冷水で冷却した。そこに、3mLの内部標準溶液(500mgのウンデカン酸を100mLのn−ヘキサンに溶解した溶液)を加え、次いで80℃の熱浴中で3分間加熱した後、冷水で冷却した。そこに5mLの飽和NaCl溶液を加え、層分離した後、上層を取り、そこに0.5gの無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した。調製した試験液1μLをガスクロマトグラフィー(カラム:DB−Wax、インジェクター温度:270℃、検出器温度:290℃、カラム温度:190℃〜240℃、温度を1分当り2℃ずつ上げた)で分析した。
1)層分離、析出及び安定性
【0039】
【表11】
【0040】
2)室温(25℃)と高温(45℃)での色変化を2年間観察した。色変化は観察されなかった。
【0041】
3)pH安定性
室温(25℃)におけるpH2、5、7及び10でのpH安定性を層分離及び析出に関して肉眼で観察した。その結果を下記表12に示している。
【0042】
【表12】
【0043】
上記結果から、本発明に係る水性ナノエマルジョン組成物が、優れた貯蔵安定性、変色のない透明性及び広範囲のpHでの安定性を有していることが判る。
【0044】
実験例2
エタノールを溶解補助剤として含むナノエマルジョンとエタノールを含まないナノエマルジョンを比較するために、下記表13に示されるようなナノエマルジョン組成物を調製した。その粒子径、透明度、粘度及び45℃での貯蔵安定性を測定し、その結果を下記表14に示している。その粒子分布はPhotal ELS−Zを用いて測定した。さらに、エタノールを含むナノエマルジョンとエタノールを含まないナノエマルジョンを走査型電子顕微鏡(JEOL, Japan)で撮影し、その結果を図2に示している。
【0045】
【表13】
【0046】
【表14】
【0047】
上記表14から明らかなように、エタノールを溶解補助剤として加えた場合は、平均粒子径30.9nmを有するエマルジョンが形成されたのに対して、エタノールを加えなかった場合は、エマルジョンの平均粒子径は220.8nmであった。従って、エタノールを加えると、安定なナノエマルジョンが得られることが判る。また、透明度に関しては、エタノールを加えた場合には、非常に透明な組成物が得られたのに対して、エタノールを加えなかった場合には、不透明な組成物が得られた。粘度に関しては、エタノールを含む組成物の粘度が50cPであったのに対して、エタノールを含まない組成物の粘度が1,000cPであるという相当な差を示した。保管安定性に関しては、エタノールを加えた場合には、45℃で1ケ月間保管後に層分離が観察されなかったのに対して、エタノールを加えなかった場合には、層分離が生じた。従って、エタノールを含む組成物は貯蔵安定性の面でも優れていることが判る。さらに、走査型電子顕微鏡写真の比較では、エタノールを加えた場合には、均一なナノエマルジョンが形成されたのに対して、エタノールを加えなかった場合には、大きなエマルジョン粒子が互いに凝固していた。
【0048】
実験例3
本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン組成物の抗−肥満効果を調べるために、インビトロ及びインビボ実験を行った。DMSO(ジメチルスルホキシド、対照)、オルリスタット(Orlistat、抗−肥満薬、陽性対照)、CLA及び本発明の共役リノール酸含有水性ナノエマルジョン(以下、「N−CLA」という)を試料として用いた。N−CLAは実施例1に記載の方法によって製造した。
【0049】
実験例3−1:インビトロ実験
(1)細胞培養及び試料処理
3T3−L1前駆脂肪細胞を、10%ウシ胎仔血清、100unit/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO2インキュベータで培養した。細胞の70〜80%がコンフルエントになったとき、分化誘導物質であるデキサメタゾン、ピオグリタゾン(pioglitazone)、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)インスリン及びFBSを含有するDMEMで細胞を前分化させた後、インスリン、ピオグリタゾン、FBSを含有するDMEMで分化させた。分化後、10%FBSとインスリンを含有する成長培地で脂質を成熟させた。試料をDMSOに溶かしたて、最終濃度10μg/mLで処理した。
【0050】
(2)細胞生存率(MTTアッセイ)
96ウェルプレートの各ウェルに1×104個の前駆脂肪細胞を分注して、各サンプルを処理した。次いで、37℃、5%CO2インキュベータで細胞を24時間培養した。24時間経過後、MTT(リン酸緩衝生理食塩水中、最終濃度:0.4μg/mL)を処理し、次いで細胞を4時間培養した。形成されたホルマザン(Formazan)結晶をDMSO:エタノール(1:1)で溶解し、マイクロプレートリーダ(SUNRISE, TECAN, Austria)により540nmで吸光度を測定した。細胞生存率は、対照群の吸光度値に対する試料処理群の吸光度値の割合で決定し、その結果を図3に示している。図3から明らかなように、オルリスタット群、CLA群及びN−CLA群の細胞生存率は、それぞれ103%、100%、103%である。従って、対照群のそれと、統計的に有意な差はない。
【0051】
(3)脂肪分解効果
6ウェルプレートの各ウェルに1×105個の細胞を分注し、分化させた。 分化後8日目に培地を除去し、氷冷したPBSで2回洗浄した。細胞を室温で1時間、10%ホルマリンで固定し、0.2%Oil red O(イソプロパノール中)で30分間染色後、蒸留水で洗浄した。そこに、イソプロパノールを加えて、油滴を溶かした後、490nmでの吸光度として中性脂肪の含量を測定した。その結果を図4及び5に示している。オルリスタット群、CLA及群びN−CLA群は、対照群に比べて、中性脂肪が減少する傾向を示した。
【0052】
(4)脂質生成の抑制効果
6ウェルプレートの各ウェルに1×105個の細胞を分注した。細胞の70%がコンフルエントになったとき、細胞をMDI培地(分化培地)と各試料で同時に処理した後、48時間培養した。分化後8日目に、Oil red O染色で中性脂肪の含量を測定した。その結果を図6に示している。図6から明らかなように、CLA群は対照群と類似な中性脂肪含量を示したのに対して、オルリスタット群及びN−CLA群では、対照群に比べて中性脂肪の含量がそれぞれ12.5%及び16.3%と統計的有意に減少した。
【0053】
(5)グリセロールの定量
グリセロールを遊離グリセリン試薬(Sigma, USA)を用いる酵素反応法で定量した。37℃に予め温めた遊離グリセリン試薬0.8mLに、細胞を試料で24時間処理した後採取した培地10μLを加えた後、混合物の反応を37℃の水浴で5分間実施した。グリセロールの定量のために、標準グリセロール(25μg/10μL)を上記と同様にして反応させて、540nmにおける吸光度を測定した。グリセロールの含量は下記の計算式を用いて算出した。
グリセロール含量={(A試料−Aブランク))/(A標準品−Aブランク)}×標準品の濃度
【0054】
算出した結果を図7に示した。図7から明らかなように、対照群に比べて、CLA群はグリセロールの分泌(分解効果)が増加する傾向にあり、 オルリスタット群はグリセロールの分泌を1.57μg/mLに増加した。特にN−CLA群のグリセロール含量は2.67μg/mLであったので、N−CLA群におけるグリセロールの分泌は他群に比べて最も高かった。
【0055】
(6)レプチン分泌
食欲に関連するホルモンとして知らされているレプチンの分泌量が調節されているか否かを確認するために、実験を行った。脂肪細胞から分泌されたレプチンの量を、試料で脂肪細胞を処理した後に合わせた培地上で酵素免疫測定法(ELISA)により測定した。100μlのウサギ抗マウスレプチンIgGをELISAプレートに分注した。ELISAプレートを4℃で一晩培養し、TPBS(PBS+0.05%Tween20)で3回洗浄し、そこに合わせた培地100μLを加えた後、1時間室温で培養した。ELISAプレートを再びTPBSで3回洗浄し、そこに二次抗体を加え、1時間室温で培養した後、TPBSで3回洗浄した。アルカリホスファターゼ結合性基質キットを用いて発色を促進させた後、ELISAリーダ(SUNRISE, TECAN, Austria)によって490nmでの吸光度を測定した。その結果を図8に示している。図8から明らかなように、オルリスタット群、CLA群及びN−CLA群のレプチン分泌量は、対照群と比べて、それぞれ11.6%、8.3%及び7.8%まで減少した。
【0056】
(7)統計値
上記結果は、SPSSパッケージプログラム(SPSS 12.0 for Windows(登録商標), USA)を利用して算出した。対照群と試験群と間の平均差に対する有意性はスチューデントt−検定を実施して検定した。有意水準はp<0.05とし、全ての測定値は平均値±標準誤差で表示している。
【0057】
実験例3−2:インビボ実験
(1)実験動物及び実験デザイン
実験動物として28匹の雄性Sprague−Dawleyラット(5週齢、145±5g)を Orient Company (Korea) から購入した。ラットを1週間ペレット形態のLab−chow食に適応をさせた。正常群(NC)を除いた残りの肥満誘発群に高脂肪食を5週間不断給餌して肥満を誘発した後、正常群を含む4群(1群当たり7匹)に分け、5週間飼育した(図13に示されるように)。
【0058】
実験食のベースとしてAIN−76規定食(Teklad, USA)を使用した。試験物質は高脂肪食の2%濃度で加えた。実験食の組成を下記表15に示している。CLA群とN−CLA群では、CLAとN−CLAをそれぞれ2%添加したが、コーンオイルは減少させた。実験食と飲料水は不断供給した。飼育期間中、実験食を4℃の冷蔵庫で保管した。それぞれの動物を、相対湿度60±5%、12時間の明/12時間の暗の明暗サイクルで、25±2℃の、特定の環境条件下の空の檻に収納した。体重及び食餌摂取量を全実験期間中に2日間隔で一定の時間に測定した。食餌効率比(FER)は、実験期間中の体重増加量を同じ期間中に摂取した食餌量で割って計算して、その結果を表16に示している。
【0059】
【表15】
【0060】
【表16】
【0061】
表16から明らかなように、食餌摂取量は全ての群で統計的有意性を示さなかったので、食餌摂取量は体重の増減に影響を及ぼさないと考えられる。一方、N−CLA群の体重増加が、ND群、HFD群及びCLA群より統計的有意に低かった。従って、N−CLAの補給が、食餌摂取には影響を及ぼさないながら、体重増加を顕著に抑制することが判る。
【0062】
実験期間中の体重変化の量を図9に示している。図9から明らかなように、実験期間中、全ての群の体重は着実に増加した。正常食(ND)群を除いたその他の群は、5週間の高脂肪食で肥満を誘発された。全ての高脂肪食摂取群の肥満誘発後の第一週に測定した体重は、正常対照群に比べて統計的有意に重かった。5週間の実験期間中、HFD群が最も高い体重増加を示した。CLA群の体重増加は、第2週〜第4週にはHFD群より低かったが、第5週におけるCLA群の体重はHFD群のそれと統計的有意には異なっていなかった。一方、N−CLA群の体重は、第2週からHFD群より統計的有意に軽かった。特に、第5週におけるN−CLA群の体重は、高脂肪食を摂取しなかった正常食(ND)群のそれと類似していた。従って、N−CLAの補給は体重増加を效率的に抑制したことが判る。
【0063】
(2)臓器重量
飼育後、ラットを12時間絶食させた後、最初にエーテルで麻酔した。下大静脈から空腹時血液を採取した。採取した血液を3000×g、4℃で15分間遠心分離して、血清を分離した後、得られた血清を試料分析時まで−70℃で保管した。実験動物の臓器組織(肝臓、心臓、腎臓、精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織)をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で数回洗浄した後、表面の水分を除去して秤量した。肝臓を、単離して収集し、液体窒素中で急冷した後、酵素活性の測定及び脂質定量のための試料分析時まで−70℃で保管した。肝臓、心臓及び腎臓の重量を測定した結果を下記表17に示している。精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織の単位体重当たりの重さを測定した結果を図10に示している。
【0064】
【表17】
【0065】
表17から明らかなように、心臓の重量は正常対照群を除いた高脂肪食を摂取した全て群で減少しており、肝臓の重量は高脂肪食を摂取した群全てで統計的有意に増加した。
【0066】
また、図10から明らかなように、精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織の単位体重当たりの重さを測定した結果、高脂肪食を摂取した全ての群でWAT(白色脂肪組織)が増加した。CLA群及びN−CLA群の精巣上体白色脂肪組織及び腎周囲白色脂肪組織の重さは、HFD群より若干低くかったが、統計学的に有意ではなかった。
【0067】
(3)生化学分析
1)総コレステロール
血清総コレステロールの定量は、Allain らの文献(1974)の酵素法を適用して試験溶液(Asanpharm Co., Korea)を用いて実施した。血清コレステロールはCE(コレステロールエステル)及び遊離コレステロールの2形態で存在する。従って、CEと遊離コレステロールの両方を定量するために、CEをコレステロールエステラーゼにより脂肪酸と遊離コレステロールに変換した。このように変換した遊離コレステロールをコレステロールエステラーゼにより順にH2O2と△4−コレステノン(cholestenon)に変換した。H2O2をペルオキシダーゼ、フェノール及び4−アミノ−アンチピリンと混合して、赤色を発色させた後、500nmにおける吸光度を測定した。測定値をコレステロール標準溶液(300mg/dL)と比較して定量した。
【0068】
2)トリグリセリド
血清中性脂質は、McGowan らの文献(1983)の酵素法に従って中性脂質測定用試薬(Asanpharm Co.,Korea)を用いて測定した。血清中の中性脂質をリポタンパク質リパーゼ(LPL)によりグリセロールと脂肪酸に分解した。グリセロールは、ATPとグリセロールキナーゼ(GK)の作用によりL−α−グリセロリン酸を形成した。L−α−グリセロリン酸のO2及びグリセロリン酸オキシダーゼ(GPO)との反応はH2O2を発生させた。そこに、ペルオキシダーゼと4−アミノ−アンチピリンを加えて赤色を発色させ、550nmにおける吸光度を測定した。測定値をグリセロール標準曲線と比較して定量した。
【0069】
3)HDL−コレステロール、LDL−コレステロール
HDL−コレステロール含量はキットの試薬(AsanpharmCo., Korea)で測定した。LDL−コレステロールの含量は、下記のように Friedewald らの文献(1993)の方法に従って下記の通り計算した:
LDL−コレステロール=総コレステロール−HDL−コレステロール−(中性脂質/5)。
【0070】
上記の方法によって測定した血清中性脂質とコレステロールの含量を図11に示している。図11から明らかなように、HFD群の中性脂質の含量は、正常食(ND)群のそれより2倍以上高かった。CLA群及びN−CLA群の中性脂質の含量は、HFD群よりも統計的有意に低かった。特に、血清中性脂質(トリグリセリド、TG)の含量は正常食(ND)群にかなり近いレベルであった。それはHFD群と比較して52%まで減少した。HFD群の総コレステロール(TC)及び低密度脂質(LDL)は正常食(ND)群のそれより顕著に高かかった。CLA群とN−CLA群の総コレステロール(TC)及び低密度脂質(LDL)は、HFD群と比較して統計的有意に減少した。特に、N−CLA群の総コレステロール(TC)及び低密度脂質(LDL)は、HFD群に比べて、それぞれ20%及び46%に減少した。従って、N−CLAは優れたコレステロール減少効果を有していることが判る。一方、全ての群において高密度脂質(HDL)の濃度は何ら統計的有意な差を示さなかった。
【0071】
4)肝臓組織脂質含量
肝臓組織中の脂質含量の測定は、Folchらの文献の方法に従って行った。肝臓組織1gにCM溶液(クロロホルム:メタノール=2:1)を加えて、ホモジナイズした。溶液を12時間毎に振盪しながら、4℃で3日間保管した。3日後、水層から分離したCM溶液層をピペットで単離した後、80℃の水浴でCM溶液を完全に蒸発させて、乾燥脂質を得た。得られた乾燥脂質を無水エタノールに溶かし、ホモジナイズした後、中性脂質、総コレステロール及びHDL−コレステロールの含量をキットの試薬(AM157S−K、AM202−K、AM203−K、Asanpharm Co., Korea)で測定した。その結果を図12に示している。
【0072】
図12から明らかなように、HFD群の肝臓組織における中性脂肪及び総コレステロールの含量が最も高く、CLA群とN−CLA群はHFD群に比べて統計的有意な減少を示した。血清脂質レベルと同様に、肝臓組織脂質含量をN−CLA群がCLA群に比べてより效率的に減少させたことが判る。
【0073】
5)統計値
上記の結果は、SPSSパッケージプログラムを用いて算出した。各群間の平均差に対する有意性は一元配置ANOVA(分散分析)で検定した。多群間の差については、p<0.05レベルでDuncan の多重範囲検定による事後検定を行った。その結果を平均値±S.E.で示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含有してなる、水性ナノエマルジョン組成物。
【請求項2】
粘度が1〜100センチポアズ(cP)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該補助乳化剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、アニオン性アミノ酸系乳化剤、糖エステル、コレステロール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びグリセリンエステルよりなる群から選択される一つ又はそれ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
当該アニオン性アミノ酸系乳化剤が、TEA−ココイルグルタミン酸塩、グルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸マグネシウム及びラウロイルグルタミン酸ナトリウムよりなる群から選択される一つ又はそれ以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項1】
共役リノール酸5〜50重量%、レシチン0.01〜5重量%、溶解補助剤としてエタノール0.01〜5重量%、補助乳化剤1〜15重量%、グリセリン10〜40重量%及び残量の水を含有してなる、水性ナノエマルジョン組成物。
【請求項2】
粘度が1〜100センチポアズ(cP)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該補助乳化剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、アニオン性アミノ酸系乳化剤、糖エステル、コレステロール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びグリセリンエステルよりなる群から選択される一つ又はそれ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
当該アニオン性アミノ酸系乳化剤が、TEA−ココイルグルタミン酸塩、グルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸マグネシウム及びラウロイルグルタミン酸ナトリウムよりなる群から選択される一つ又はそれ以上である、請求項3に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−510270(P2012−510270A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538572(P2011−538572)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001029
【国際公開番号】WO2010/095877
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511026924)ホワイル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HWAIL PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【出願人】(509354363)
【氏名又は名称原語表記】YU, Hyo Gyoung
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001029
【国際公開番号】WO2010/095877
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511026924)ホワイル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HWAIL PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【出願人】(509354363)
【氏名又は名称原語表記】YU, Hyo Gyoung
【Fターム(参考)】
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