共振型スイッチング電源装置
【課題】共振回路側と整流平滑回路側とを分離用トランスを使用することなく直接接続して小型化、コストダウン、変換効率を改善する。
【解決手段】入力した直流電圧または商用交流電圧を共振コンバータ14により高周波電流に変換して平衡コンデンサ30,32を介して2次側に伝送すると共にインピーダンス変換回路18でインピーダンス変換し、リアクタンス整流平滑を行う倍電流整流回路20で高周波電流を整流して直流出力に変換する。インピーダンス変換回路18はLC直列共振回路であり、倍電流整流回路20から見て共振電流源を構成し、倍電流整流回路20をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路18と倍電流整流回路20との結合点に分流用コンデンサ38を並列に接続する。
【解決手段】入力した直流電圧または商用交流電圧を共振コンバータ14により高周波電流に変換して平衡コンデンサ30,32を介して2次側に伝送すると共にインピーダンス変換回路18でインピーダンス変換し、リアクタンス整流平滑を行う倍電流整流回路20で高周波電流を整流して直流出力に変換する。インピーダンス変換回路18はLC直列共振回路であり、倍電流整流回路20から見て共振電流源を構成し、倍電流整流回路20をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路18と倍電流整流回路20との結合点に分流用コンデンサ38を並列に接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振コンバータからの高周波電力をインピーダンス変換した後に直流電力に変換するトランスレスの共振型スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインピーダンス変換型の共振型スイッチング電源装置としては例えば図12乃至図14に示すものがある。
【0003】
図12は特許文献1の共振コンバータであり、直流電源306、スイッチング素子301を備えたスイッチング回路302、制御部307を備え、トランス305の1次側コイルの漏れインダクタンス308と分布容量309でLC共振(タンク)回路を構成し、2次側において効率よく共振電流が発生できるように負荷側インピーダンスを高くするようにしている。これを実現するためトランス305を介して共振調整用コンデンサ312、整流回路313、平滑コイル310及び平滑コンデンサ314で構成されたチョークインプット型の整流平滑回路を使用している。ここで、共振周波数調整用のコンデンサ312は小容量なので2次側に付加されても共振動作に影響が少ない。
【0004】
図13は特許文献2の共振型スイッチング電源であり、MOSトランジスタQ1,Q2、1次巻線L1と2次巻線L2を備えた絶縁トランスT、転流コンデンサC1,C2、ダイオードD1,D2及び平滑コンデンサCoで構成され、LC共振(タンク)回路をトランスTの3次巻線L3に共振コンデンサCrと共振コイルLrを接続することでインバータや整流回路と分離し、確実に共振動作を確保するようにしている。このことにより伝送電力を電力伝送用と共振電力用のそれぞれ分けた状態で運転することができ、非線形動作を伴う伝送変換動作を行っても、線形共振動作への影響を極力少なくすることができ、変換効率の改善ができる。
【0005】
図14は特許文献3のイミタンス変換器307であり、直流電源320に続いてスイッチング用に4個のトランジスタ321,322,323,324と変圧器303が設けられ、中間タップを持つ変圧器303には1次巻線331と2次巻線332があり、一次巻線にはイミタンス変換器の共振用コンデンサ372と共振用リアクトル371が接続されている。二次側巻線は両端をダイオード341,342で両波整流し、平滑リアクトル351を通じて溶接部361,362に電流を供給する。
【0006】
このようなイミタンス変換器は、負荷に直接接続した場合は、負荷のひずみ電流が共振用リアクトル371と共振用コンデンサ372で構成するLC共振(タンク)回路の電流と電圧に影響を与えるため、共振回路と整流平滑回路との接続に変圧器303を介在するようしている。
【0007】
このように従来の共振型スイッチング電源装置にあっては、伝送電力を一時蓄えるためのLC共振回路(タンク回路)からこの電力を出力側に引き出すためにトランスを用い、共振回路と整流平滑回路を分離して相互の影響を少なくしている。これは整合負荷が抵抗などの線形の場合では問題とならない。
【0008】
一方、ダイオードやリアクタンスの組み合わせによる不連続な非線形性を持つ整流平滑回路や、極端な低インピーダンス負荷の場合には、インピーダンスを変換する前提として、線形動作による連続した共振電流及び共振電圧を必要とするLC共振回路の動作とはなじまない。
【0009】
このため共振回路と整流平滑回路をトランスで分離し、巻き数比や漏れインダクタンスなどで整流側リアクタンスやインピーダンスの影響を極力小さくすると同時に、なるべくLC共振回路の独立性を保って共振電流及び共振電圧の連続性を向上させ、共振回路の動作Qの低下を抑えている。
【0010】
これは信号処理や小電力を扱う変換においてはその整流効率の低下はさして問題とはならないが、変換電力が数W〜数キロWになるとその損失は大きく、従来では必ずトランスが必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−019252号公報
【特許文献2】特開平11−356044号公報
【特許文献3】特開2004−086833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来の共振型スイッチング電源装置にあっては、共振回路と整流平滑回路との間に分離用のトランスを設けていたため、外形が大型になり、またコストアップとなっていた。
【0013】
またLC共振回路と整流平滑回路の間にトランスを設けずに直接接続する場合、共振電流や共振電圧に歪みが重畳し、共振回路の動作Qが低下してインピーダンス変換作用が無くなる。このため1次側(高周波供給側)と2次側(負荷側)が不整合となってしまい、電力変換効率が著しく低下する。
【0014】
またLC共振回路と整流平滑回路を直接接続すると、共振回路動作が入力電力や負荷電力の影響を受けやすく、起動時に共振電流が流れ始めるのに大きな入力電圧が必要であり、運転中の入力瞬断や過渡的な負荷変化の際、その衝撃で瞬時に共振電流が消滅し、インバータの破壊や、共振回路の発熱でコイル焼損事故が起きやすいという問題がある。
【0015】
本発明は、共振回路側と整流平滑回路側とを分離用トランスを使用することなく直接接続して小型化、コストダウン、変換効率の改善する共振型スイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明はトランスレスとした共振型スイッチング電源装置を提供するものであり、
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
インピーダンス変換回路はLC直列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする。
【0017】
本発明による共振型スイッチング電源装置別の形態にあっては、前述と同様に、高周波電流源、平衡コンデンサ、インピーダンス変換回路、リアクタンス整流平滑回路を備え、
インピーダンス変換回路はLC並列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電圧源を構成し、リアクタンス整流平滑回路をコンデンサインプット型とした場合、インピーダンス変換回路とリアクタンス整流平滑回路との結合点に分圧用チョークコイルを直列に接続したことを特徴とする。
【0018】
本発明による共振型スイッチング電源装置別の形態にあっては、前述と同様に、高周波電流源、平衡コンデンサ、インピーダンス変換回路、リアクタンス整流平滑回路を備え、
インピーダンス変換回路は入力端と出力端の間に変換必要値の1/2の値をもつ一対のインダクタンスを直列に平衡接続すると共に入力端の間にコンデンサを並列接続したLC直列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路とリアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする。
【0019】
本発明による共振型スイッチング電源装置別の形態にあっては、前述と同様に、高周波電流源、平衡コンデンサ、インピーダンス変換回路、リアクタンス整流平滑回路を備え、
インピーダンス変換回路は一対の入力端と出力端の間に変換必要値の2倍の値を持つ一対のコンデンサを直列に平衡接続すると共に入力端の間にインダクタンスを並列接続したLC直列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路とリアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする。
【0020】
ここで、高周波電流源は共振コンバータである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の共振型スイッチング電源装置によれば、分離用トランスを使わずにLC共振回路側と整流平滑回路側を直接接続する際に、共振回路側の出力形態と整流平滑回路側の入力形態に合わせ、共振回路側が高周波電流源で整流平滑側がチョークインプット型であれば共振電流分流用の分流コンデンサを両者の結合点に接続し、また共振回路側が高周波電圧源で整流平滑側がコンデンサインプット型であれば共振電圧分圧分用の分圧チョークコイルを両者の結合点に接続したため、非線形動作をする負荷に対して、共振回路側から見た分流コンデンサまたは分圧チョークコイルが不連続部分を補間し、共振回路側の電流及び電圧連続性を保ち動作Qの低下を防ぐことができる。
【0022】
また負荷側においても、共振回路側から整流平滑動作に必要な不連続電力を、無理なく引き出すことが出来る。
【0023】
さらに整流ダイオードのリカバリに起因する瞬間的な整流インピーダンスの変化や、同期整流のスイッチタイムの不安定領域なども、分流コンデンサまたは分圧チョークコイルが吸収し、ノイズの増大や効率の低下を防ぐ副効果もある。
【0024】
このように共振回路側と整流回路側の間にトランスが不要となるので、回路の小型化、コストダウンが見込める。また、電源起動時に低い電圧から共振動作が始まり、スムースな立ち上がりが出来る。更に、過渡時にも共振動作が継続するので、インバータの破壊や共振コイルの異常発熱を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】高周波電流源にチョークインプット型の整流平滑側を接続する本発明の第1実施形態を示した回路図
【図2】図1の第1実施形態における各部の電流電圧波形を示したタイムチャート
【図3】図1の等価回路とインピーダンス整合を決めるイミタンスチャートを示した説明図
【図4】図1のインピーダンス変換回路を平衡回路とした、本発明の第2実施形態を示した回路図
【図5】図4の第2実施形態で使用するインピーダンス変換回路の、他の例を示した回路図
【図6】図1の全波整流平滑回路を半波整流平滑回路にした、本発明の第3実施形態を示した回路図
【図7】図1の分流コンデンサをノイズ発生防止用と兼用した本発明の第4実施形態を示した回路図
【図8】高周波電圧源を、コンデンサインプット型として負荷側の整流平滑側を接続する、本発明の第5実施形態を示した回路図
【図9】図8の等価回路とインピーダンス整合を決めるイミタンスチャートを示した説明図
【図10】図8の分圧チョークコイルをノイズ発生防止用と兼用した本発明の第6実施形態を示した回路図
【図11】図8の倍電圧整流平滑回路を全波整流平滑回路とした本発明の第7実施形態を示した回路図
【図12】特許文献1に記載された従来の共振コンバータを示した回路図
【図13】特許文献2に記載された従来の共振型スイッチング電源を示した回路図
【図14】特許文献3に記載された従来のイミタンス変換回路を示した回路図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は高周波定電流源にチョークインプット型の整流平滑回路を接続する本発明の第1実施形態を示した回路図である。図2は、図1で示した回路での電圧、電流波形を示している。以下、図1と図2を用いて、回路の動作を説明する。
【0027】
図1における、第1実施例は相対的に入力電圧が高く出力電圧が低い場合に向く共振型スイッチング電源装置の形態で、この場合直流電源10として例えばDC200Vを入力し、DC5Vに変換して負荷48に供給する。
【0028】
直流電源10は、入力コイル巻線11,12による不平衡平衡変換部を入力インダクタンスとして入力し、共振コンバータ14で交流電源に変換する。共振コンバータ14は、負荷側との絶縁結合を行うため、平衡結合回路16で結合され、平衡用コンデンサ30,32を接続している。
【0029】
共振コンバータ14は、共振コンデンサ22と共振コイル24が並列に接続され、共振コイル24にはFET(Field Effect Transistor)26が直列に接続され、FET26のゲート電圧VDSのオン・オフによりスイッチング動作が行われる。
【0030】
なお共振コンデンサ22と共振コイル24は、FET26自身の内部容量や寄生容量も含め、電流電圧波形を重ならないように滑らかにし、スイッチング損失を減らす目的があるが、共振コンデンサ22と共振コイル24を省略しても本発明の高周波電流源としての機能は変わらない。このため、基本動作の説明のため共振コンデンサ22と共振コイル24を省略し、共振コンバータ14はスイッチ動作する機能として以下説明する。
【0031】
共振コンバータ14では、FETのオン・オフは、ゲートに接続された制御回路28により行われる。FET26のゲート電圧VGSがオンのときは、入力コイル巻線11,12に直流電源10から電流ILが時間に比例して増加し、流れ込む。またオン時間により入力コイルの電流値(インダクタンス蓄積エネルギ)が決まる。
【0032】
FET26のゲート電圧VGSがオフのときは、入力コイル巻線11,12の電流ILが平衡用コンデンサ30,32に流れ込み、入力コイルと平衡コンデンサで共振(第一の共振)した半波状の正弦波が、ドレイン−ソース間電圧波形Vdsとなる。
【0033】
共振した半波状正弦波のドレイン−ソース間電圧Vdsは、電圧下降のタイミングでは入力コイル電流ILが減少し、正から負に反転するが、FET26に生じるボディダイオードを通して流れることになり、このときドレイン−ソース間電圧Vdsはゼロとなる。
【0034】
この共振動作をスイッチング周期で繰り返し行い、入力コイル巻線11,12の電流IL(インダクタンス蓄積エネルギ)を、平衡用コンデンサ30,32を通してインピーダンス変換回路18のコンデンサ34に、FET26のゲート電圧VGSがオフのタイミングで送り込み、コンデンサ34の電位を上昇(コンデンサ蓄積エネルギーに変換)させる。
【0035】
以上の動作により直流電源を等価的に交流電源に変換し、平衡コンデンサを通して電力を伝送する。
【0036】
このときの第一の共振周波数frは、インダクタンス分として、入力コイル巻線11,12の合成インダクタンスLrと、キャパシタンス分として平衡結合コンデンサ30,32との合成キャパシタンスCrとで決定される。合成インダクタンスLrは、Lr=L1+L2で求められる。また、合成キャパシタンスCrは、Cr=C30・C32/(C30+C32)で求められる。これより、共振周波数frは、
fr=(1/2π)(1/LrCr)1/2
となる。
【0037】
また、負荷側から見た電力供給源インピーダンスは電力伝送タイミング(FETオフ)におけるこの共振回路の(|電圧|/|電流|)であり(Lr/Cr)1/2となる。
【0038】
供給源インピーダンスの設計は伝送電力、周波数、部品の電流・電圧定格など多くの要素から決められるが、例えば200V入力インバータの一次共振回路を700V/12Aで設計すると58Ωなどとなる。
【0039】
図2において、(A)はFET26のスイッチングを行うゲート電圧VGS、(B)はドレイン−ソース間電圧Vds、(C)は共振コンバータ14への入力電流、即ち、コイル11,12に流れる電流ILである。
【0040】
FET26のゲート電圧源電圧VGSのオンまたはオフのタイミングは、共振周波数frに同期して行われる。
【0041】
図1において、直流電源10からの出力電流は共振コバータ14と平衡結合回路16を通過した後は、インピーダンス変換回路18に入力され第二の共振周波数fmの正弦波となる。
【0042】
インピーダンス変換回路18は、コンデンサ34を並列に、コイル36を直列に接続した回路である。インピーダンス変換は、入力側の高周波電源と出力側の負荷とのインピーダンスマッチングを行い、また共振波形の歪を少なくして電力損失を軽減する。
【0043】
インピーダンス変換回路18はコンデンサ34を並列に、コイル36を直列に接続した回路であり、コンデンサ34のキャパシタンスとコイル36のインダクタンスで決まる共振周波数を有するため、LC共振回路ともなっている。このLC共振回路において、インダクタンスとキャパシタンスにより、共振コンバータ14におけるFET26のゲート電圧VGSがオンのときに入力コイル巻線11,12に電流を蓄え、オフのときに平衡コンデンサ30,32と共振させながら、二次側のインピーダンス変換回路18を電流励振して倍電流整流回路20へ電力を送る。
【0044】
図2(D)及び(E)は、インピーダンス変換回路18におけるコンデンサ34の電圧Vmの波形と電流Imの波形である。
第二の共振周波数fmは、
fm=(1/2π)(1/LmCm)1/2
となる。電圧Vmと電流Imは共振周波数fmの正弦波となっている。
【0045】
続いて分流用コンデンサ38を、インピーダンス変換回路18と並列に接続する。インピーダンス変換回路18から、直接的に倍電流整流回路20に接続してもよいが、一般に電流整流回路は、コイル又はコンデンサと整流用のダイオードを組み合わせた非線形回路であるために、電流波形の歪が生じてしまうこと、また、極端な低インピーダンスの負荷に対しては、共振電流が過大となり共振現象そのものに影響を与えて歪波成分が増大することによる電力変換効率の低下を招く。
【0046】
これらの現象による電力変換効率の低下を防ぐために、分流用コンデンサ38を挿入している。ここで分流用コンデンサ38とは、静的インピーダンス設計された直列LC共振の共振電流出力に対し、チョークインプット型整流の被電流入力値が、共振整流のタイミングで大きく変化するダイナミック特性を持っているため、両者の瞬時電流変移差を、電流を吸収・放出する性質を利用したコンデンサなどで代表される部品により、静的インピーダンスと動的インピーダンスとの間の変換を行う機能を目的とするものである。
【0047】
図1に示した電源回路では、負荷はチョークインプット型の倍電流整流回路20である。従って、分流用コンデンサ38により、電流波形のひずみを調整している。分流用コンデンサ38は、負荷に依存したインピーダンスの変動に対して効率を向上させるために、可変コンデンサとして適宜調整するようにしてもよい。
【0048】
負荷に電力を供給する倍電流整流回路20は、チョークコイル40,42を接続する中点に負荷48を接続し、チョークコイル40,42の直列接続した他の端子は、分流用コンデンサ38に接続している。一方、チョークコイル40,42と並列に接続したダイオード44,46は、分流用コンデンサ38の両端子側からそれぞれ負荷48に接続している。この様な構成により、ダイオード44,46を介して負荷48には倍電流が流れる。電流はチョークコイル40,42に蓄えられたエネルギで平滑化されている。
【0049】
図2(F)は、ダイオード44,46の両端電圧VD44及びVD46と、チョークコイル40,42の電流IL40及びIL42である。チョークコイル40,42に蓄積されたエネルギ放出による電流平滑化作用により失われたエネルギは、インピーダンス変換回路18から印加される電圧(VD44及びVD46から負荷48の電圧を差し引いた電圧)がチョークコイル40,42に加わり、再び電流IL40及びIL42の増加でエネルギ補充されながら一定の電流を流す。ダイオード44、46の両端電圧VD44及びVD46が発生しないタイミングでは、チョークコイル40,42にフライバック電圧として負荷48の電圧が生ずる波形となる。
【0050】
電流IL40、IL42はチョークコイル40,42に流れる電流であり、負荷48では重畳され、整流回路に流入する電流の2倍となっている。また整流回路に印加される電圧はチョークコイル40,42にエネルギ蓄積のため負荷48両端電圧の2倍以上必要である。このことから、電力源から見た倍電流整流回路の入力インピーダンスは、少なくとも負荷48の4倍以上の値であるダイナミックインピーダンスとして表現され、例えば出力が5V60Aであれば0.34Ω以上となる。
【0051】
図1における制御回路28は、負荷48に印加される電圧または電流を検知して一次共振周期と二次共振周期の同期を取りつつ変調された制御用信号で、FET26のゲート電圧を制御している。この場合、一次インバータ側共振周波数frと、二次共振整流側共振周波数fmをスイッチング動作でタイミングを合わせ電力伝送しているため、同一共振周波数を前提とした整合の一般式は使えず、周波数fmを基軸とするイミタンスチャートで入出力の静的インピーダンス整合を行う。
【0052】
図3は、図1の電源回路の等価回路と、インピーダンス変換回路18において、インピーダンスマッチングを行うために、コンデンサ34及びコイル36の値を求める方法としてのイミタンスチャート220を示している。
【0053】
図3(A)で示した等価回路は、図1に示した電源回路における分流用コンデンサ38は除いている。分流用コンデンサ38は、波形の歪を補正する機能であり、インピーダンスマッチングを考える場合には必要ないからである。
【0054】
図3(A)に示した等価回路において、高周波入力部50は、直流電源10と入力コイル巻線11,12と共振コンバータ14及び平衡結合回路の合成インピーダンスを等価回路としたものである。電源は交流電源200とし、等価抵抗Ri202、等価インダクタンスLr204と等価キャパシタンスCr206を直列に接続し、高周波源入力部50の等価回路とした。インピーダンス変換回路部52は、実際の回路構成と同様であり、コンデンサCm208とインダクタンスLm210をインピーダンスマッチングにより求めることになる。負荷出力部54は、倍電流整流回路と負荷の合成インピーダンスであり、抵抗Ro212である。
【0055】
図3(B)は、イミタンスチャート220である。イミタンスチャートは、インピーダンスとアドミタンスを極座標上に同時に表現できる図表であり、インピーダンス整合等における回路定数を求めるために使用されている。イミタンスチャート上のインピーダンスは、共振周波数fmによる角周波数2π・fmを乗じた値としてプロットする。インピーダンスマッチングの方法は次の通りである。
【0056】
まず、図3(A)の等価回路から、入力側の等価抵抗Riの値を、イミタンスチャートの等レジスタンス円222と中心線との交点226に記入する。次に等価インダクタンスLmの等リアクタンス円224との交点228まで移動する(矢印1参照)。さらに、等価キャパシタンスCmだけ、等レジスタンス円222に沿って、半時計方向に移動する(矢印2参照)。この点232が高周波入力部50の等価インピーダンスとなる。
出力負荷Ro212は等価抵抗である。従って、インピーダンス変換回路部52の等価キャパシタンスCm208と等価インダクタンスLm210により、出力負荷Ro212の等価レジスタンス円236と中心線との交点238になるようにすれば、インピーダンスマッチングが図れることになる。
【0057】
高周波源入力部50の等価インピーダンスは点232であり、インピーダンス変換部52の等価キャパシタンスCmは平行に接続されているから、等価抵抗Riの等コンダクタンス円230を考え、等価抵抗Riの等コンダクタンス円230に沿って、出力負荷Ro212の等レジスタンス円236との交点234まで移動させる(矢印3参照)。次に、等価インダクタンスLmは直列接続だから、出力負荷Ro212の等レジスタンス円236に沿って、中心線との交点238まで移動させる(矢印4参照)。
【0058】
ここで、矢印3の移動距離が、等価キャパシタンスCm208となり、矢印4の移動距離が、等価インダクタンスLm210となる。
【0059】
等価キャパシタンスCm208及び等価インダクタンスLm210は周波数に依存した値だから、実際に使用するキャパシタンスとインダクタンスは共振周波数fmを用いて、キャパシタンスC=2π・fm・Cmで、インダクタンスL=Lm/(2π・fm)で求められる。
【0060】
図1に示した電源回路は、メガヘルツオーダの高い動作周波数において電力変換効率のよいインバータを実現する電源であり、入力コイルと平衡コンデンサで生じる共振した半波状正弦波とのタイミングを最適設定することにより、Eクラスの動作条件を満足するスイッチング動作が可能である。動作周波数は高く、負荷出力部側から、インピーダンス変換回路部52での等価キャパシタンスCmと等価インダクタンスLmとで決まる共振周波数であり、高周波入力部50を見ると容量性の電力源となっている。
【0061】
インピーダンス変換回路18は、入出力回路間でインピーダンスのマッチングを図るものであり、図1に示した回路だけでなく、他の回路構成でもよい。
【0062】
図4は、インピーダンス変換回路の他の回路構成の例を示している。図4(A)は、インダクタンス60を平行に接続し、キャパシタンス62を直列に接続した回路である。さらに(B)は、(A)のキャパシタンスの容量Cを2倍として、2端子対回路に分割接続している。
【0063】
図5は本発明による第2の実施形態であり、図1に示した電源回路において、インピーダンス変換回路18のコイル36に対して、インダクタンスを1/2として分割し、分割したコイル36A、36Bを2端子対回路に接続した回路図である。
【0064】
回路の動作は、図1で示した電源回路と同様であるが、コイル36を2分割してコイル36A、36Bとして2端子回路に平行に接続しているから、コイル36Aとコイル36Bとでは逆極性の電圧、電流とする不平衡平衡変換によりコモンモードノイズを低減し、漏れ電流の低減も図ることができるため、出力電圧が高い場合に有効である。
【0065】
図6は本発明による第3の実施形態であり、図5に示した電源回路において、全波整流を行って倍電流としている倍電流整流回路20を、半波整流とした半波整流回路21とした電源回路である。半波整流回路21では、ダイオード68をインピーダンス変換回路18に平行に接続して、チョークコイル70は負荷72に直列接続している。基本的な動作原理は図1に示した電源回路と同様であるが、出力部の平滑化は半波整流により行われており、整流部の部品数が少なく簡単な回路とすることができる。
【0066】
図7は本発明による第4の実施形態であり、図5に示した電源回路において、分流用としてのコンデンサを、倍電流整流回路20における各ダイオード44,46と平行に接続して、分流コンデンサ38A、38Bとしている。分流用としてのコンデンサ36A,36Bの機能は、波形歪みの是正であり、各ダイオード44,46に平行に接続しても同様の機能が得られる。この場合には、さらにノイズ除去機能を兼用することができる効果を有する。分流コンデンサ38A,38Bは、負荷48にあわせて調整可能としており、また効率とノイズを考慮して最適になる容量値で固定すれば部品数が少なくなる。
【0067】
図8は本発明による第5の実施例で、相対的に入力電圧が低く出力電圧が高い電力変換に向く形態である。
【0068】
入力側の共振コンバータは、プッシュプル型を使用したプッシュプル共振コンバータ74として、平衡結合回路76とコンデンサ結合し、インピーダンス変換回路78に接続している。インピーダンス変換は、コイル98とコンデンサ100の平行接続回路である。
【0069】
出力側は、コンデンサインプット型の倍電圧整流回路80である。倍電圧整流回路80は、コンデンサ104,106を平行にして負荷112の両端子に接続し、ダイオード108,110をそれぞれが逆になる方向に負荷112の両端子側に接続される。負荷側の倍電圧整流回路80はコンデンサインプット型であるため、分圧用チョークコイル102を直列に接続している。ここで分圧用チョークコイル102とは、静的インピーダンス設計された並列LC共振の共振電圧出力に対し、コンデンサインプット型整流の被電圧入力値が、共振整流のタイミングで大きく変化するダイナミック特性を持っているため、両者の瞬時電圧変移差を、斯かる電圧を吸収・放出する性質を利用したチョークコイルなどで代表される部品でもって、静的インピーダンスと動的インピーダンスとの間の変換を行う機能を目的とするものである。
【0070】
プッシュプル共振コンバータ74は、転流コイル92の中点に共振コイル88を介して直流電源10を接続し、直流電源10の他方の端子を2つのFET84,86をスイッチング用として転流コイル92の両端に接続している。転流コイル92から平衡結合回路76により、平衡結合コンデンサ94,96を介してインピーダンス変換回路78に接続している。
【0071】
共振周波数はプッシュプル共振コンバータ74で決定され、平衡結合コンデンサ94,96は絶縁接続を行っている。インピーダンス変換回路78で平行に接続されたコイル98とコンデンサ100は、入力側と出力側のインピーダンスをマッチングさせており、図1で説明したインピーダンス変換回路18と同様の機能を有している。
【0072】
さらに、分圧用チョークコイル102が直列接続され、コンデンサインプット型の倍電圧整流回路80で全波整流による電圧の平滑化が行われている。
【0073】
図9は、図8の電源回路の等価回路とインピーダンス変換によりインピーダンスのマッチングを図るための回路定数を決めるイミタンスチャートであり、分圧用チョークコイル102は除いている。
【0074】
図9(A)は等価回路であり、高周波入力部114、インピーダンス変換回路部116、コンデンサインプット型負荷回路の等価回路としての負荷出力部118よりなっている。高周波入力部114は、共振周波数を入力源とする交流電源250と等価抵抗Ri252の直列回路に、等価インダクタンスLi254と等価キャパシタンスCi256が並列に接続され、等価結合キャパシタンスCc258が直列に接続されている。
【0075】
インピーダンス変換回路部116は、図8に示す実際の回路と同様であり、等価インダクタンスLm260と等価キャパシタンスCm262の並列接続である。負荷出力部118は、等価抵抗Ro264としている。
【0076】
図9(A)で示した等価回路から、等価結合キャパシタンスCcとインピーダンス変換回路部116の等価インダクタンスLm、等価キャパシタンスCmを求めることができる。
【0077】
図9(B)は、(A)での等価回路からインピーダンスマッチングを図るためのスミスチャート280である。まず、図9(B)のスミスチャート280に、入力等価抵抗Riを中心線上の点284に記入する。
【0078】
高周波入力部114は回路素子が並列接続された等価回路であるから、等コンダクタンス円282を考える。そして、等価インダクタンスLmの等サセプタンス円286との交点288まで等コンダクタンス円282に沿って移動させる(矢印1参照)。
【0079】
次に、並列に接続された等価キャパシタンスCiのサセプタンス分だけ、時計方向に点290まで移動させる(矢印2参照)。等価結合コンデンサCcは直列接続だから、点290の等レジスタンス円298に沿って反時計方向に移動させ、等価出力抵抗Roによる等コンダクタンス円296と等レジスタンス円292の交点294まで移動させる(矢印3参照)。
【0080】
そして、等価出力抵抗Roの等コンダクタンス円296に沿って、インピーダンス変換回路部78の等価インダクタンスLmに相当する点292まで、反時計方向に移動させる(矢印4参照)。最後に、等価キャパシタンスCmのサセプタンス相当分を点300の出力抵抗Roまで移動させる(矢印5参照)。
【0081】
これにより、インピーダンスマッチングが実現されるから、等価キャパシタンスCcは矢印3の移動によるキャパシタンス分から、等価インダクタンスLmは矢印4の移動によるインダクタンス分から、そして等価キャパシタンスCmは矢印5の移動によるキャパシタンス分から求めることができる。
【0082】
結合コンデンサ258は、分割して接続されているから、分割後のキャパシタンスは等価キャパシタンスCcの2倍とする。
【0083】
実施の値は、高周波入力源におけるスイッチング周波数fSWから、図3で説明したと同様の計算で求めることができる。
【0084】
分圧用コイル102は、インピーダンスマッチングされた回路状態での電圧波形の歪みを抑制するために挿入されるものであり、負荷に応じて容量は調整されることとなる。
【0085】
図10は第6の実施例あり、図8における電源回路における回路において、分圧用コイル102を、分圧コイル102A,102Bに分割して、倍電圧整流回路80におけるダイオード108,109に直列に接続している。分圧コイル102A,102Bによりダイオード108,110でのリカバリ電流を抑制しノイズの発生も抑止している。
【0086】
図11は第7の実施形態であり、図8に示した実施形態での負荷112に対する整流回路を全波整流としたものである。全波整流回路130は、ダイオード132と負荷112とダイオード138を接続した回路部と、ダイオード134と負荷112とダイオード136を直列に接続した回路部とを平行にしたブリッジ回路を構成し、全波整流による電圧をコンデンサ140で平滑化して、負荷112に電力供給している。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0088】
10:直流電源
11,12:入力コイル巻線
14:共振コンバータ
16,76:平衡結合回路
18,78:インピーダンス変換回路
20:倍電流整流回路
21:半波整流回路
22,90:共振コンデンサ
24,88:共振コイル
26,84,86:FET
28,82:制御回路
30,32,94,96:平衡用コンデンサ
36,36A,36B,60,98:コイル
34,62,62A,62B,100,104,106:コンデンサ
38,38A,38B:分流用コンデンサ
40,42,70:チョークコイル
44,46,68,108,110,132,134,136,138:ダイオード
48,72,112:負荷
50,114:高周波入力部
52,116:インピーダンス変換回路部
54,118:負荷出力部
74:プッシュプル共振コンバータ
80:倍電圧整流回路
92:転流コイル
102,102A,102B:分圧用チョークコイル
130:全波整流回路
140:平滑コンデンサ
220,280:イミタンスチャート
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振コンバータからの高周波電力をインピーダンス変換した後に直流電力に変換するトランスレスの共振型スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインピーダンス変換型の共振型スイッチング電源装置としては例えば図12乃至図14に示すものがある。
【0003】
図12は特許文献1の共振コンバータであり、直流電源306、スイッチング素子301を備えたスイッチング回路302、制御部307を備え、トランス305の1次側コイルの漏れインダクタンス308と分布容量309でLC共振(タンク)回路を構成し、2次側において効率よく共振電流が発生できるように負荷側インピーダンスを高くするようにしている。これを実現するためトランス305を介して共振調整用コンデンサ312、整流回路313、平滑コイル310及び平滑コンデンサ314で構成されたチョークインプット型の整流平滑回路を使用している。ここで、共振周波数調整用のコンデンサ312は小容量なので2次側に付加されても共振動作に影響が少ない。
【0004】
図13は特許文献2の共振型スイッチング電源であり、MOSトランジスタQ1,Q2、1次巻線L1と2次巻線L2を備えた絶縁トランスT、転流コンデンサC1,C2、ダイオードD1,D2及び平滑コンデンサCoで構成され、LC共振(タンク)回路をトランスTの3次巻線L3に共振コンデンサCrと共振コイルLrを接続することでインバータや整流回路と分離し、確実に共振動作を確保するようにしている。このことにより伝送電力を電力伝送用と共振電力用のそれぞれ分けた状態で運転することができ、非線形動作を伴う伝送変換動作を行っても、線形共振動作への影響を極力少なくすることができ、変換効率の改善ができる。
【0005】
図14は特許文献3のイミタンス変換器307であり、直流電源320に続いてスイッチング用に4個のトランジスタ321,322,323,324と変圧器303が設けられ、中間タップを持つ変圧器303には1次巻線331と2次巻線332があり、一次巻線にはイミタンス変換器の共振用コンデンサ372と共振用リアクトル371が接続されている。二次側巻線は両端をダイオード341,342で両波整流し、平滑リアクトル351を通じて溶接部361,362に電流を供給する。
【0006】
このようなイミタンス変換器は、負荷に直接接続した場合は、負荷のひずみ電流が共振用リアクトル371と共振用コンデンサ372で構成するLC共振(タンク)回路の電流と電圧に影響を与えるため、共振回路と整流平滑回路との接続に変圧器303を介在するようしている。
【0007】
このように従来の共振型スイッチング電源装置にあっては、伝送電力を一時蓄えるためのLC共振回路(タンク回路)からこの電力を出力側に引き出すためにトランスを用い、共振回路と整流平滑回路を分離して相互の影響を少なくしている。これは整合負荷が抵抗などの線形の場合では問題とならない。
【0008】
一方、ダイオードやリアクタンスの組み合わせによる不連続な非線形性を持つ整流平滑回路や、極端な低インピーダンス負荷の場合には、インピーダンスを変換する前提として、線形動作による連続した共振電流及び共振電圧を必要とするLC共振回路の動作とはなじまない。
【0009】
このため共振回路と整流平滑回路をトランスで分離し、巻き数比や漏れインダクタンスなどで整流側リアクタンスやインピーダンスの影響を極力小さくすると同時に、なるべくLC共振回路の独立性を保って共振電流及び共振電圧の連続性を向上させ、共振回路の動作Qの低下を抑えている。
【0010】
これは信号処理や小電力を扱う変換においてはその整流効率の低下はさして問題とはならないが、変換電力が数W〜数キロWになるとその損失は大きく、従来では必ずトランスが必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−019252号公報
【特許文献2】特開平11−356044号公報
【特許文献3】特開2004−086833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来の共振型スイッチング電源装置にあっては、共振回路と整流平滑回路との間に分離用のトランスを設けていたため、外形が大型になり、またコストアップとなっていた。
【0013】
またLC共振回路と整流平滑回路の間にトランスを設けずに直接接続する場合、共振電流や共振電圧に歪みが重畳し、共振回路の動作Qが低下してインピーダンス変換作用が無くなる。このため1次側(高周波供給側)と2次側(負荷側)が不整合となってしまい、電力変換効率が著しく低下する。
【0014】
またLC共振回路と整流平滑回路を直接接続すると、共振回路動作が入力電力や負荷電力の影響を受けやすく、起動時に共振電流が流れ始めるのに大きな入力電圧が必要であり、運転中の入力瞬断や過渡的な負荷変化の際、その衝撃で瞬時に共振電流が消滅し、インバータの破壊や、共振回路の発熱でコイル焼損事故が起きやすいという問題がある。
【0015】
本発明は、共振回路側と整流平滑回路側とを分離用トランスを使用することなく直接接続して小型化、コストダウン、変換効率の改善する共振型スイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明はトランスレスとした共振型スイッチング電源装置を提供するものであり、
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
インピーダンス変換回路はLC直列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする。
【0017】
本発明による共振型スイッチング電源装置別の形態にあっては、前述と同様に、高周波電流源、平衡コンデンサ、インピーダンス変換回路、リアクタンス整流平滑回路を備え、
インピーダンス変換回路はLC並列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電圧源を構成し、リアクタンス整流平滑回路をコンデンサインプット型とした場合、インピーダンス変換回路とリアクタンス整流平滑回路との結合点に分圧用チョークコイルを直列に接続したことを特徴とする。
【0018】
本発明による共振型スイッチング電源装置別の形態にあっては、前述と同様に、高周波電流源、平衡コンデンサ、インピーダンス変換回路、リアクタンス整流平滑回路を備え、
インピーダンス変換回路は入力端と出力端の間に変換必要値の1/2の値をもつ一対のインダクタンスを直列に平衡接続すると共に入力端の間にコンデンサを並列接続したLC直列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路とリアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする。
【0019】
本発明による共振型スイッチング電源装置別の形態にあっては、前述と同様に、高周波電流源、平衡コンデンサ、インピーダンス変換回路、リアクタンス整流平滑回路を備え、
インピーダンス変換回路は一対の入力端と出力端の間に変換必要値の2倍の値を持つ一対のコンデンサを直列に平衡接続すると共に入力端の間にインダクタンスを並列接続したLC直列共振回路であり、リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、インピーダンス変換回路とリアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする。
【0020】
ここで、高周波電流源は共振コンバータである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の共振型スイッチング電源装置によれば、分離用トランスを使わずにLC共振回路側と整流平滑回路側を直接接続する際に、共振回路側の出力形態と整流平滑回路側の入力形態に合わせ、共振回路側が高周波電流源で整流平滑側がチョークインプット型であれば共振電流分流用の分流コンデンサを両者の結合点に接続し、また共振回路側が高周波電圧源で整流平滑側がコンデンサインプット型であれば共振電圧分圧分用の分圧チョークコイルを両者の結合点に接続したため、非線形動作をする負荷に対して、共振回路側から見た分流コンデンサまたは分圧チョークコイルが不連続部分を補間し、共振回路側の電流及び電圧連続性を保ち動作Qの低下を防ぐことができる。
【0022】
また負荷側においても、共振回路側から整流平滑動作に必要な不連続電力を、無理なく引き出すことが出来る。
【0023】
さらに整流ダイオードのリカバリに起因する瞬間的な整流インピーダンスの変化や、同期整流のスイッチタイムの不安定領域なども、分流コンデンサまたは分圧チョークコイルが吸収し、ノイズの増大や効率の低下を防ぐ副効果もある。
【0024】
このように共振回路側と整流回路側の間にトランスが不要となるので、回路の小型化、コストダウンが見込める。また、電源起動時に低い電圧から共振動作が始まり、スムースな立ち上がりが出来る。更に、過渡時にも共振動作が継続するので、インバータの破壊や共振コイルの異常発熱を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】高周波電流源にチョークインプット型の整流平滑側を接続する本発明の第1実施形態を示した回路図
【図2】図1の第1実施形態における各部の電流電圧波形を示したタイムチャート
【図3】図1の等価回路とインピーダンス整合を決めるイミタンスチャートを示した説明図
【図4】図1のインピーダンス変換回路を平衡回路とした、本発明の第2実施形態を示した回路図
【図5】図4の第2実施形態で使用するインピーダンス変換回路の、他の例を示した回路図
【図6】図1の全波整流平滑回路を半波整流平滑回路にした、本発明の第3実施形態を示した回路図
【図7】図1の分流コンデンサをノイズ発生防止用と兼用した本発明の第4実施形態を示した回路図
【図8】高周波電圧源を、コンデンサインプット型として負荷側の整流平滑側を接続する、本発明の第5実施形態を示した回路図
【図9】図8の等価回路とインピーダンス整合を決めるイミタンスチャートを示した説明図
【図10】図8の分圧チョークコイルをノイズ発生防止用と兼用した本発明の第6実施形態を示した回路図
【図11】図8の倍電圧整流平滑回路を全波整流平滑回路とした本発明の第7実施形態を示した回路図
【図12】特許文献1に記載された従来の共振コンバータを示した回路図
【図13】特許文献2に記載された従来の共振型スイッチング電源を示した回路図
【図14】特許文献3に記載された従来のイミタンス変換回路を示した回路図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は高周波定電流源にチョークインプット型の整流平滑回路を接続する本発明の第1実施形態を示した回路図である。図2は、図1で示した回路での電圧、電流波形を示している。以下、図1と図2を用いて、回路の動作を説明する。
【0027】
図1における、第1実施例は相対的に入力電圧が高く出力電圧が低い場合に向く共振型スイッチング電源装置の形態で、この場合直流電源10として例えばDC200Vを入力し、DC5Vに変換して負荷48に供給する。
【0028】
直流電源10は、入力コイル巻線11,12による不平衡平衡変換部を入力インダクタンスとして入力し、共振コンバータ14で交流電源に変換する。共振コンバータ14は、負荷側との絶縁結合を行うため、平衡結合回路16で結合され、平衡用コンデンサ30,32を接続している。
【0029】
共振コンバータ14は、共振コンデンサ22と共振コイル24が並列に接続され、共振コイル24にはFET(Field Effect Transistor)26が直列に接続され、FET26のゲート電圧VDSのオン・オフによりスイッチング動作が行われる。
【0030】
なお共振コンデンサ22と共振コイル24は、FET26自身の内部容量や寄生容量も含め、電流電圧波形を重ならないように滑らかにし、スイッチング損失を減らす目的があるが、共振コンデンサ22と共振コイル24を省略しても本発明の高周波電流源としての機能は変わらない。このため、基本動作の説明のため共振コンデンサ22と共振コイル24を省略し、共振コンバータ14はスイッチ動作する機能として以下説明する。
【0031】
共振コンバータ14では、FETのオン・オフは、ゲートに接続された制御回路28により行われる。FET26のゲート電圧VGSがオンのときは、入力コイル巻線11,12に直流電源10から電流ILが時間に比例して増加し、流れ込む。またオン時間により入力コイルの電流値(インダクタンス蓄積エネルギ)が決まる。
【0032】
FET26のゲート電圧VGSがオフのときは、入力コイル巻線11,12の電流ILが平衡用コンデンサ30,32に流れ込み、入力コイルと平衡コンデンサで共振(第一の共振)した半波状の正弦波が、ドレイン−ソース間電圧波形Vdsとなる。
【0033】
共振した半波状正弦波のドレイン−ソース間電圧Vdsは、電圧下降のタイミングでは入力コイル電流ILが減少し、正から負に反転するが、FET26に生じるボディダイオードを通して流れることになり、このときドレイン−ソース間電圧Vdsはゼロとなる。
【0034】
この共振動作をスイッチング周期で繰り返し行い、入力コイル巻線11,12の電流IL(インダクタンス蓄積エネルギ)を、平衡用コンデンサ30,32を通してインピーダンス変換回路18のコンデンサ34に、FET26のゲート電圧VGSがオフのタイミングで送り込み、コンデンサ34の電位を上昇(コンデンサ蓄積エネルギーに変換)させる。
【0035】
以上の動作により直流電源を等価的に交流電源に変換し、平衡コンデンサを通して電力を伝送する。
【0036】
このときの第一の共振周波数frは、インダクタンス分として、入力コイル巻線11,12の合成インダクタンスLrと、キャパシタンス分として平衡結合コンデンサ30,32との合成キャパシタンスCrとで決定される。合成インダクタンスLrは、Lr=L1+L2で求められる。また、合成キャパシタンスCrは、Cr=C30・C32/(C30+C32)で求められる。これより、共振周波数frは、
fr=(1/2π)(1/LrCr)1/2
となる。
【0037】
また、負荷側から見た電力供給源インピーダンスは電力伝送タイミング(FETオフ)におけるこの共振回路の(|電圧|/|電流|)であり(Lr/Cr)1/2となる。
【0038】
供給源インピーダンスの設計は伝送電力、周波数、部品の電流・電圧定格など多くの要素から決められるが、例えば200V入力インバータの一次共振回路を700V/12Aで設計すると58Ωなどとなる。
【0039】
図2において、(A)はFET26のスイッチングを行うゲート電圧VGS、(B)はドレイン−ソース間電圧Vds、(C)は共振コンバータ14への入力電流、即ち、コイル11,12に流れる電流ILである。
【0040】
FET26のゲート電圧源電圧VGSのオンまたはオフのタイミングは、共振周波数frに同期して行われる。
【0041】
図1において、直流電源10からの出力電流は共振コバータ14と平衡結合回路16を通過した後は、インピーダンス変換回路18に入力され第二の共振周波数fmの正弦波となる。
【0042】
インピーダンス変換回路18は、コンデンサ34を並列に、コイル36を直列に接続した回路である。インピーダンス変換は、入力側の高周波電源と出力側の負荷とのインピーダンスマッチングを行い、また共振波形の歪を少なくして電力損失を軽減する。
【0043】
インピーダンス変換回路18はコンデンサ34を並列に、コイル36を直列に接続した回路であり、コンデンサ34のキャパシタンスとコイル36のインダクタンスで決まる共振周波数を有するため、LC共振回路ともなっている。このLC共振回路において、インダクタンスとキャパシタンスにより、共振コンバータ14におけるFET26のゲート電圧VGSがオンのときに入力コイル巻線11,12に電流を蓄え、オフのときに平衡コンデンサ30,32と共振させながら、二次側のインピーダンス変換回路18を電流励振して倍電流整流回路20へ電力を送る。
【0044】
図2(D)及び(E)は、インピーダンス変換回路18におけるコンデンサ34の電圧Vmの波形と電流Imの波形である。
第二の共振周波数fmは、
fm=(1/2π)(1/LmCm)1/2
となる。電圧Vmと電流Imは共振周波数fmの正弦波となっている。
【0045】
続いて分流用コンデンサ38を、インピーダンス変換回路18と並列に接続する。インピーダンス変換回路18から、直接的に倍電流整流回路20に接続してもよいが、一般に電流整流回路は、コイル又はコンデンサと整流用のダイオードを組み合わせた非線形回路であるために、電流波形の歪が生じてしまうこと、また、極端な低インピーダンスの負荷に対しては、共振電流が過大となり共振現象そのものに影響を与えて歪波成分が増大することによる電力変換効率の低下を招く。
【0046】
これらの現象による電力変換効率の低下を防ぐために、分流用コンデンサ38を挿入している。ここで分流用コンデンサ38とは、静的インピーダンス設計された直列LC共振の共振電流出力に対し、チョークインプット型整流の被電流入力値が、共振整流のタイミングで大きく変化するダイナミック特性を持っているため、両者の瞬時電流変移差を、電流を吸収・放出する性質を利用したコンデンサなどで代表される部品により、静的インピーダンスと動的インピーダンスとの間の変換を行う機能を目的とするものである。
【0047】
図1に示した電源回路では、負荷はチョークインプット型の倍電流整流回路20である。従って、分流用コンデンサ38により、電流波形のひずみを調整している。分流用コンデンサ38は、負荷に依存したインピーダンスの変動に対して効率を向上させるために、可変コンデンサとして適宜調整するようにしてもよい。
【0048】
負荷に電力を供給する倍電流整流回路20は、チョークコイル40,42を接続する中点に負荷48を接続し、チョークコイル40,42の直列接続した他の端子は、分流用コンデンサ38に接続している。一方、チョークコイル40,42と並列に接続したダイオード44,46は、分流用コンデンサ38の両端子側からそれぞれ負荷48に接続している。この様な構成により、ダイオード44,46を介して負荷48には倍電流が流れる。電流はチョークコイル40,42に蓄えられたエネルギで平滑化されている。
【0049】
図2(F)は、ダイオード44,46の両端電圧VD44及びVD46と、チョークコイル40,42の電流IL40及びIL42である。チョークコイル40,42に蓄積されたエネルギ放出による電流平滑化作用により失われたエネルギは、インピーダンス変換回路18から印加される電圧(VD44及びVD46から負荷48の電圧を差し引いた電圧)がチョークコイル40,42に加わり、再び電流IL40及びIL42の増加でエネルギ補充されながら一定の電流を流す。ダイオード44、46の両端電圧VD44及びVD46が発生しないタイミングでは、チョークコイル40,42にフライバック電圧として負荷48の電圧が生ずる波形となる。
【0050】
電流IL40、IL42はチョークコイル40,42に流れる電流であり、負荷48では重畳され、整流回路に流入する電流の2倍となっている。また整流回路に印加される電圧はチョークコイル40,42にエネルギ蓄積のため負荷48両端電圧の2倍以上必要である。このことから、電力源から見た倍電流整流回路の入力インピーダンスは、少なくとも負荷48の4倍以上の値であるダイナミックインピーダンスとして表現され、例えば出力が5V60Aであれば0.34Ω以上となる。
【0051】
図1における制御回路28は、負荷48に印加される電圧または電流を検知して一次共振周期と二次共振周期の同期を取りつつ変調された制御用信号で、FET26のゲート電圧を制御している。この場合、一次インバータ側共振周波数frと、二次共振整流側共振周波数fmをスイッチング動作でタイミングを合わせ電力伝送しているため、同一共振周波数を前提とした整合の一般式は使えず、周波数fmを基軸とするイミタンスチャートで入出力の静的インピーダンス整合を行う。
【0052】
図3は、図1の電源回路の等価回路と、インピーダンス変換回路18において、インピーダンスマッチングを行うために、コンデンサ34及びコイル36の値を求める方法としてのイミタンスチャート220を示している。
【0053】
図3(A)で示した等価回路は、図1に示した電源回路における分流用コンデンサ38は除いている。分流用コンデンサ38は、波形の歪を補正する機能であり、インピーダンスマッチングを考える場合には必要ないからである。
【0054】
図3(A)に示した等価回路において、高周波入力部50は、直流電源10と入力コイル巻線11,12と共振コンバータ14及び平衡結合回路の合成インピーダンスを等価回路としたものである。電源は交流電源200とし、等価抵抗Ri202、等価インダクタンスLr204と等価キャパシタンスCr206を直列に接続し、高周波源入力部50の等価回路とした。インピーダンス変換回路部52は、実際の回路構成と同様であり、コンデンサCm208とインダクタンスLm210をインピーダンスマッチングにより求めることになる。負荷出力部54は、倍電流整流回路と負荷の合成インピーダンスであり、抵抗Ro212である。
【0055】
図3(B)は、イミタンスチャート220である。イミタンスチャートは、インピーダンスとアドミタンスを極座標上に同時に表現できる図表であり、インピーダンス整合等における回路定数を求めるために使用されている。イミタンスチャート上のインピーダンスは、共振周波数fmによる角周波数2π・fmを乗じた値としてプロットする。インピーダンスマッチングの方法は次の通りである。
【0056】
まず、図3(A)の等価回路から、入力側の等価抵抗Riの値を、イミタンスチャートの等レジスタンス円222と中心線との交点226に記入する。次に等価インダクタンスLmの等リアクタンス円224との交点228まで移動する(矢印1参照)。さらに、等価キャパシタンスCmだけ、等レジスタンス円222に沿って、半時計方向に移動する(矢印2参照)。この点232が高周波入力部50の等価インピーダンスとなる。
出力負荷Ro212は等価抵抗である。従って、インピーダンス変換回路部52の等価キャパシタンスCm208と等価インダクタンスLm210により、出力負荷Ro212の等価レジスタンス円236と中心線との交点238になるようにすれば、インピーダンスマッチングが図れることになる。
【0057】
高周波源入力部50の等価インピーダンスは点232であり、インピーダンス変換部52の等価キャパシタンスCmは平行に接続されているから、等価抵抗Riの等コンダクタンス円230を考え、等価抵抗Riの等コンダクタンス円230に沿って、出力負荷Ro212の等レジスタンス円236との交点234まで移動させる(矢印3参照)。次に、等価インダクタンスLmは直列接続だから、出力負荷Ro212の等レジスタンス円236に沿って、中心線との交点238まで移動させる(矢印4参照)。
【0058】
ここで、矢印3の移動距離が、等価キャパシタンスCm208となり、矢印4の移動距離が、等価インダクタンスLm210となる。
【0059】
等価キャパシタンスCm208及び等価インダクタンスLm210は周波数に依存した値だから、実際に使用するキャパシタンスとインダクタンスは共振周波数fmを用いて、キャパシタンスC=2π・fm・Cmで、インダクタンスL=Lm/(2π・fm)で求められる。
【0060】
図1に示した電源回路は、メガヘルツオーダの高い動作周波数において電力変換効率のよいインバータを実現する電源であり、入力コイルと平衡コンデンサで生じる共振した半波状正弦波とのタイミングを最適設定することにより、Eクラスの動作条件を満足するスイッチング動作が可能である。動作周波数は高く、負荷出力部側から、インピーダンス変換回路部52での等価キャパシタンスCmと等価インダクタンスLmとで決まる共振周波数であり、高周波入力部50を見ると容量性の電力源となっている。
【0061】
インピーダンス変換回路18は、入出力回路間でインピーダンスのマッチングを図るものであり、図1に示した回路だけでなく、他の回路構成でもよい。
【0062】
図4は、インピーダンス変換回路の他の回路構成の例を示している。図4(A)は、インダクタンス60を平行に接続し、キャパシタンス62を直列に接続した回路である。さらに(B)は、(A)のキャパシタンスの容量Cを2倍として、2端子対回路に分割接続している。
【0063】
図5は本発明による第2の実施形態であり、図1に示した電源回路において、インピーダンス変換回路18のコイル36に対して、インダクタンスを1/2として分割し、分割したコイル36A、36Bを2端子対回路に接続した回路図である。
【0064】
回路の動作は、図1で示した電源回路と同様であるが、コイル36を2分割してコイル36A、36Bとして2端子回路に平行に接続しているから、コイル36Aとコイル36Bとでは逆極性の電圧、電流とする不平衡平衡変換によりコモンモードノイズを低減し、漏れ電流の低減も図ることができるため、出力電圧が高い場合に有効である。
【0065】
図6は本発明による第3の実施形態であり、図5に示した電源回路において、全波整流を行って倍電流としている倍電流整流回路20を、半波整流とした半波整流回路21とした電源回路である。半波整流回路21では、ダイオード68をインピーダンス変換回路18に平行に接続して、チョークコイル70は負荷72に直列接続している。基本的な動作原理は図1に示した電源回路と同様であるが、出力部の平滑化は半波整流により行われており、整流部の部品数が少なく簡単な回路とすることができる。
【0066】
図7は本発明による第4の実施形態であり、図5に示した電源回路において、分流用としてのコンデンサを、倍電流整流回路20における各ダイオード44,46と平行に接続して、分流コンデンサ38A、38Bとしている。分流用としてのコンデンサ36A,36Bの機能は、波形歪みの是正であり、各ダイオード44,46に平行に接続しても同様の機能が得られる。この場合には、さらにノイズ除去機能を兼用することができる効果を有する。分流コンデンサ38A,38Bは、負荷48にあわせて調整可能としており、また効率とノイズを考慮して最適になる容量値で固定すれば部品数が少なくなる。
【0067】
図8は本発明による第5の実施例で、相対的に入力電圧が低く出力電圧が高い電力変換に向く形態である。
【0068】
入力側の共振コンバータは、プッシュプル型を使用したプッシュプル共振コンバータ74として、平衡結合回路76とコンデンサ結合し、インピーダンス変換回路78に接続している。インピーダンス変換は、コイル98とコンデンサ100の平行接続回路である。
【0069】
出力側は、コンデンサインプット型の倍電圧整流回路80である。倍電圧整流回路80は、コンデンサ104,106を平行にして負荷112の両端子に接続し、ダイオード108,110をそれぞれが逆になる方向に負荷112の両端子側に接続される。負荷側の倍電圧整流回路80はコンデンサインプット型であるため、分圧用チョークコイル102を直列に接続している。ここで分圧用チョークコイル102とは、静的インピーダンス設計された並列LC共振の共振電圧出力に対し、コンデンサインプット型整流の被電圧入力値が、共振整流のタイミングで大きく変化するダイナミック特性を持っているため、両者の瞬時電圧変移差を、斯かる電圧を吸収・放出する性質を利用したチョークコイルなどで代表される部品でもって、静的インピーダンスと動的インピーダンスとの間の変換を行う機能を目的とするものである。
【0070】
プッシュプル共振コンバータ74は、転流コイル92の中点に共振コイル88を介して直流電源10を接続し、直流電源10の他方の端子を2つのFET84,86をスイッチング用として転流コイル92の両端に接続している。転流コイル92から平衡結合回路76により、平衡結合コンデンサ94,96を介してインピーダンス変換回路78に接続している。
【0071】
共振周波数はプッシュプル共振コンバータ74で決定され、平衡結合コンデンサ94,96は絶縁接続を行っている。インピーダンス変換回路78で平行に接続されたコイル98とコンデンサ100は、入力側と出力側のインピーダンスをマッチングさせており、図1で説明したインピーダンス変換回路18と同様の機能を有している。
【0072】
さらに、分圧用チョークコイル102が直列接続され、コンデンサインプット型の倍電圧整流回路80で全波整流による電圧の平滑化が行われている。
【0073】
図9は、図8の電源回路の等価回路とインピーダンス変換によりインピーダンスのマッチングを図るための回路定数を決めるイミタンスチャートであり、分圧用チョークコイル102は除いている。
【0074】
図9(A)は等価回路であり、高周波入力部114、インピーダンス変換回路部116、コンデンサインプット型負荷回路の等価回路としての負荷出力部118よりなっている。高周波入力部114は、共振周波数を入力源とする交流電源250と等価抵抗Ri252の直列回路に、等価インダクタンスLi254と等価キャパシタンスCi256が並列に接続され、等価結合キャパシタンスCc258が直列に接続されている。
【0075】
インピーダンス変換回路部116は、図8に示す実際の回路と同様であり、等価インダクタンスLm260と等価キャパシタンスCm262の並列接続である。負荷出力部118は、等価抵抗Ro264としている。
【0076】
図9(A)で示した等価回路から、等価結合キャパシタンスCcとインピーダンス変換回路部116の等価インダクタンスLm、等価キャパシタンスCmを求めることができる。
【0077】
図9(B)は、(A)での等価回路からインピーダンスマッチングを図るためのスミスチャート280である。まず、図9(B)のスミスチャート280に、入力等価抵抗Riを中心線上の点284に記入する。
【0078】
高周波入力部114は回路素子が並列接続された等価回路であるから、等コンダクタンス円282を考える。そして、等価インダクタンスLmの等サセプタンス円286との交点288まで等コンダクタンス円282に沿って移動させる(矢印1参照)。
【0079】
次に、並列に接続された等価キャパシタンスCiのサセプタンス分だけ、時計方向に点290まで移動させる(矢印2参照)。等価結合コンデンサCcは直列接続だから、点290の等レジスタンス円298に沿って反時計方向に移動させ、等価出力抵抗Roによる等コンダクタンス円296と等レジスタンス円292の交点294まで移動させる(矢印3参照)。
【0080】
そして、等価出力抵抗Roの等コンダクタンス円296に沿って、インピーダンス変換回路部78の等価インダクタンスLmに相当する点292まで、反時計方向に移動させる(矢印4参照)。最後に、等価キャパシタンスCmのサセプタンス相当分を点300の出力抵抗Roまで移動させる(矢印5参照)。
【0081】
これにより、インピーダンスマッチングが実現されるから、等価キャパシタンスCcは矢印3の移動によるキャパシタンス分から、等価インダクタンスLmは矢印4の移動によるインダクタンス分から、そして等価キャパシタンスCmは矢印5の移動によるキャパシタンス分から求めることができる。
【0082】
結合コンデンサ258は、分割して接続されているから、分割後のキャパシタンスは等価キャパシタンスCcの2倍とする。
【0083】
実施の値は、高周波入力源におけるスイッチング周波数fSWから、図3で説明したと同様の計算で求めることができる。
【0084】
分圧用コイル102は、インピーダンスマッチングされた回路状態での電圧波形の歪みを抑制するために挿入されるものであり、負荷に応じて容量は調整されることとなる。
【0085】
図10は第6の実施例あり、図8における電源回路における回路において、分圧用コイル102を、分圧コイル102A,102Bに分割して、倍電圧整流回路80におけるダイオード108,109に直列に接続している。分圧コイル102A,102Bによりダイオード108,110でのリカバリ電流を抑制しノイズの発生も抑止している。
【0086】
図11は第7の実施形態であり、図8に示した実施形態での負荷112に対する整流回路を全波整流としたものである。全波整流回路130は、ダイオード132と負荷112とダイオード138を接続した回路部と、ダイオード134と負荷112とダイオード136を直列に接続した回路部とを平行にしたブリッジ回路を構成し、全波整流による電圧をコンデンサ140で平滑化して、負荷112に電力供給している。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0088】
10:直流電源
11,12:入力コイル巻線
14:共振コンバータ
16,76:平衡結合回路
18,78:インピーダンス変換回路
20:倍電流整流回路
21:半波整流回路
22,90:共振コンデンサ
24,88:共振コイル
26,84,86:FET
28,82:制御回路
30,32,94,96:平衡用コンデンサ
36,36A,36B,60,98:コイル
34,62,62A,62B,100,104,106:コンデンサ
38,38A,38B:分流用コンデンサ
40,42,70:チョークコイル
44,46,68,108,110,132,134,136,138:ダイオード
48,72,112:負荷
50,114:高周波入力部
52,116:インピーダンス変換回路部
54,118:負荷出力部
74:プッシュプル共振コンバータ
80:倍電圧整流回路
92:転流コイル
102,102A,102B:分圧用チョークコイル
130:全波整流回路
140:平滑コンデンサ
220,280:イミタンスチャート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路はLC直列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項2】
入力した直流電圧または商用交流電圧をコンバータで高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路はLC並列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電圧源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をコンデンサインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分圧用チョークコイルを直列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項3】
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路は入力端と出力端の間に変換必要値の1/2の値をもつ一対のインダクタンスを直列に平衡接続すると共に入力端の間にコンデンサを並列接続したLC直列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項4】
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路は一対の入力端と出力端の間に変換必要値の2倍の値をもつ一対のコンデンサを直列に平衡接続すると共に入力端の間にインダクタンスを並列接続したLC直列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の共振型スイッチング電源装置に於いて、前記高周波電流源は共振コンバータであることを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項1】
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路はLC直列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項2】
入力した直流電圧または商用交流電圧をコンバータで高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路はLC並列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電圧源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をコンデンサインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分圧用チョークコイルを直列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項3】
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路は入力端と出力端の間に変換必要値の1/2の値をもつ一対のインダクタンスを直列に平衡接続すると共に入力端の間にコンデンサを並列接続したLC直列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項4】
入力した直流電圧または商用交流電圧を高周波電流に変換して出力する高周波電流源と、
前記高周波電流源から出力される高周波電流を2次側に伝送する平衡コンデンサと、
前記平衡コンデンサを介して入力された高周波電流をインピーダンス変換して出力するインピーダンス変換回路と、
前記インピーダンス変換回路から変換出力された高周波電流を整流して直流出力に変換するリアクタンス整流平滑回路と、
を備え、
前記インピーダンス変換回路は一対の入力端と出力端の間に変換必要値の2倍の値をもつ一対のコンデンサを直列に平衡接続すると共に入力端の間にインダクタンスを並列接続したLC直列共振回路であり、前記リアクタンス整流平滑回路から見て共振電流源を構成し、前記リアクタンス整流平滑回路をチョークインプット型とした場合、前記インピーダンス変換回路と前記リアクタンス整流平滑回路との結合点に分流用コンデンサを並列に接続したことを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の共振型スイッチング電源装置に於いて、前記高周波電流源は共振コンバータであることを特徴とする共振型スイッチング電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−176973(P2011−176973A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40098(P2010−40098)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
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