説明

内視鏡システム

【課題】管腔について管腔の長手軸に略直交する方向の大きさを正確に計測することを可能とするような観察画像を得るための内視鏡システムを提供する。
【解決手段】内視鏡システムは、長手軸を有し管腔内に挿入される挿入部32、及び、挿入部32に設けられ観察画像を得るための画像取得部41l,41r、を有する内視鏡31と、挿入部32の長手軸方向について画像取得部41l,41rよりも先端側から、少なくとも、長手軸に略直交する平面である出射面内の第1の方向、及び、出射面内の第1の方向とは異なる第2の方向に、管腔内面にマーキングを形成するためのマーキング手段を出射可能な出射ユニット54と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内の対象物の大きさを計測するために管腔内の観察画像を得る内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の内視鏡システムでは、管腔内に内視鏡を挿入し、内視鏡の先端部の撮像系によって管腔内の対象物を撮像し、モニターに観察画像を表示している。このようにして得られる観察画像は、平面的であり、対象物の立体形状を把握しにくい。これに対して、立体視内視鏡システムでは、左画像用及び右画像用の一対の撮像系によって視差を有する左画像及び右画像を得て、モニターに左画像及び右画像を夫々表示して立体観察を行うことで、対象物の立体形状を把握するようにしている。
【0003】
特許文献1及び2には、計測用立体視内視鏡システムが開示されている。計測用立体視内視鏡システムでは、左画像及び右画像を利用して計測対象物の大きさを計測する。即ち、左画像及び右画像において対応する点を指定することにより、三角測量の原理によって、当該点の実際の三次元座標を算出することが可能である。このため、観察画像において、互いに異なる二点を指定することにより、当該二点の三次元座標を計測して、当該二点間の長さを計測することが可能であり、また、閉曲線を指定して閉曲線によって囲まれる領域を指定することにより、当該閉曲線の三次元座標を計測して、当該領域の面積を計測することが可能である。換言すれば、観察画像において、対象物の外縁上の互いに対向する二点を指定することにより対象物の長さを計測することが可能であり、対象物の外縁を指定することで対象物の面積を計測することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−7289号公報
【特許文献2】特開平6−339454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管腔について、管腔の長手軸に略直交する方向の大きさを計測しようとする場合には、観察画像において、管腔内面について、管腔の長手軸に略直交する同一平面内の部分を指定する必要がある。しかしながら、観察画像において、管腔内面について、管腔の長手軸に略直交する同一平面内にある部分を正確に指定することは難しく、管腔について、管腔の長手軸に略直交する方向の大きさを正確に計測することは困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、管腔について管腔の長手軸に略直交する方向の大きさを正確に計測することを可能とするような観察画像を得るための内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1実施態様では、内視鏡システムは、長手軸を有し管腔内に挿入される挿入部、及び、前記挿入部に設けられ観察画像を得るための画像取得部、を有する内視鏡と、前記挿入部の長手軸方向について前記画像取得部よりも先端側から、少なくとも、前記長手軸に略直交する平面である出射面内の第1の方向、及び、前記出射面内の前記第1の方向とは異なる第2の方向に、前記管腔内面にマーキングを形成するためのマーキング手段を出射可能な出射ユニットと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1実施態様の内視鏡システムでは、内視鏡の挿入部の長手軸を管腔の長手軸に略平行に配置することで、管腔の長手軸に略直交する所定の平面内で互いに異なる少なくとも2つの方向にマーキング手段を出射して、管腔内面において当該平面内の互いに異なる少なくとも2つの位置にマーキングを形成することができる。また、挿入部の長手軸方向について画像取得部よりも先端側からマーキング手段が出射されるため、観察視野内にマーキングが配置されることになり、観察画像においてマーキングを視認することができる。このため、管腔について、管腔の長手軸に略直交する方向の大きさを計測する場合には、観察画像において、マーキングを基準として指定を行うことで、管腔内面において、管腔の長手軸に略直交する同一平面内の部分を正確に指定することができる。従って、管腔について、管腔の長手軸に略直交する方向の大きさを正確に計測することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の内視鏡システムを示す概略図。
【図2】本発明の第1実施形態の内視鏡の先端部及びレーザープローブを示す縦断面図。
【図3】本発明の第1実施形態のレーザープローブの先端部を示す横断面図。
【図4】本発明の第1実施形態の内視鏡システムを示すブロック図。
【図5】本発明の第1実施形態の表示画像を示す模式図。
【図6A】本発明の第1実施形態の三次元座標計測の原理をxz平面について示す模式図。
【図6B】本発明の第1実施形態の三次元座標計測の原理をyz平面について示す模式図。
【図7】本発明の第1実施形態の管腔内径の計測方法を示す模式図。
【図8】本発明の第2実施形態のレーザープローブの先端部を示す横断面図。
【図9】本発明の第2実施形態の演算装置を示すブロック図。
【図10】本発明の第2実施形態の表示画像を示す模式図。
【図11】本発明の第2実施形態の面積計測の原理を示す模式図。
【図12】本発明の第2実施形態のステントの留置方法を示す模式図。
【図13】本発明の第3実施形態のレーザープローブを示す縦断面図。
【図14】本発明の第3実施形態の表示画像を示す縦断面図。
【図15】本発明の第4実施形態の表示画像における処置前の状態を示す模式図。
【図16】本発明の第4実施形態の表示画像における拡張処置を示す模式図。
【図17】本発明の第4実施形態の表示画像における処置後の状態を示す模式図。
【図18】本発明の第4実施形態の表示画像における面積計測を示す模式図。
【図19】本発明の第5実施形態の内視鏡の先端部を示す斜視図。
【図20】本発明の第5実施形態の光出射ユニットを示す横断面図。
【図21】本発明の第6実施形態の内視鏡の先端部を示す斜視図。
【図22】本発明の第6実施形態の光出射ユニットを示す横断面図。
【図23】本発明の第7実施形態の散布ユニットによるマーキングの形成を示す模式図。
【図24】本発明の第7実施形態の第1変形例の点墨ユニットによるマーキングの形成を示す模式図。
【図25】本発明の第7実施形態の第2変形例の留置ユニットによるマーキングの形成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の各実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1乃至図7を参照し、本発明の第1実施形態を説明する。
【0012】
図1乃至図5を参照し、計測用立体視内視鏡システムについて説明する。
【0013】
内視鏡システムは立体視内視鏡31を有する。内視鏡31は、体内に挿入される長尺で可撓性を備える内視鏡挿入部32を有する。内視鏡挿入部32の基端部には、操作者に保持、操作される内視鏡操作部33が連結されている。内視鏡操作部33からユニバーサルケーブル34が延出されており、ユニバーサルケーブル34はビデオプロセッサ36及び光源装置37に接続されている。光源装置37で発生された照明光は、内視鏡31を挿通されている内視鏡ライトガイド38を介して、内視鏡挿入部32の先端部の照明レンズ39まで導光され、照明レンズ39から観察対象物へと照射される。内視鏡挿入部32の先端部には画像取得部としての撮像ユニット41l,41rが配設されており、観察対象物の光学像は、撮像ユニット41l,41rの対物レンズ42l,42rによって結像され、撮像素子43l,43rにより撮像されて画像信号へと変換される。画像信号は、内視鏡31を挿通されている信号ケーブル44l,44rを介して、ビデオプロセッサ36の信号処理部46l,46rへと出力される。信号処理部46l,46rは、画像信号を信号処理して、観察画像を生成する。ここで、立体視内視鏡システムでは、視差を有する左画像49l及び右画像49rを取得するために、左画像用及び右画像用の一対の撮像素子43l,43r、信号ケーブル44l,44r、信号処理部46l,46rが用いられている。左画像用及び右画像用の信号処理部46l,46rによって生成された左画像49l及び右画像49rは画像合成部47によって合成されて、モニター48に表示される。図5に示されるように、表示画像においては、左画像49lが左側に、右画像49rが右側に互いに並列して表示されるようになっており、当該左画像49l及び右画像49rを立体視することで立体観察が可能である。
【0014】
内視鏡操作部33には処置具挿入口51が配設されている。内視鏡挿入部32の先端部には処置具突出口52が形成されている。処置具挿入口51と処置具突出口52とは、内視鏡31内に延設されている処置具チャンネル53によって互いに接続されている。処置具チャンネル53の長手軸は内視鏡挿入部32の長手軸に略平行になっている。
【0015】
また、内視鏡システムは、マーキング装置としてのレーザープローブ54を有する。レーザープローブ54はマーキング手段としてのガイド光55を出射する光出射ユニットからなる。即ち、レーザープローブ54は長尺で可撓性を備えるプローブ挿入部57を有する。プローブ挿入部57の基端部は、操作者に保持、操作されるプローブ操作部58へと挿入されている。プローブ操作部58には点灯スイッチ59が配設されている。点灯スイッチ59を押下操作することにより、電源60から電力が供給されて、発光回路部61によって発光部62が作動され、発光部62においてガイド光55が生成される。本実施形態では、発光部62として半導体レーザーが用いられている。発光部62はプローブ挿入部57の基端面に対面して配置されている。プローブ挿入部57では全長にわたって円管状のシース63が延設されており、シース63内にはシース63の基端部から先端部の手前までライトガイド64が延設されている。本実施形態では、ライトガイド64として単一のファイバーが用いられている。発光部62で発生されたガイド光55は、ライトガイド64の基端面に入射され、ライトガイド64を導光されて、ライトガイド64の先端面から先端向きにプローブ挿入部57の中心軸に略平行に出射される。シース63の先端部は閉塞されており、シース63の先端壁内面には先端ミラー66が基端向きに突設されている。先端ミラー66は頂角が略90°の直円錐状をなし、先端ミラー66の中心軸はプローブ挿入部57の中心軸と一致しており、先端ミラー66の円錐面が反射面をなしている。ライトガイド64の先端面からプローブ挿入部57の中心軸に略平行に出射されたガイド光55は、先端ミラー66の反射面によって、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に反射される。シース63の先端部の外周壁には複数の出射口67がプローブ挿入部57の中心軸の径方向に貫通形成されている。複数の出射口67は、プローブ挿入部57の中心軸の軸方向について互いに同じ位置に、周方向について互いに異なる位置に配置されている。先端ミラー66によってプローブ挿入部57の中心軸の径方向に反射されたガイド光55は、出射口67を介して、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に出射される。即ち、プローブ挿入部57の中心軸が出射中心軸となり、出射中心軸に略直交する平面内で、当該出射中心軸の径方向であって周方向について互いに異なる複数の方向に、夫々、複数のガイド光55が出射される。このように、プローブ挿入部57の先端部には、複数のガイド光55を互いに異なる複数の方向に夫々出射する複数の出射部68が形成されている。本実施形態では、プローブ挿入部57の中心軸の周方向に等間隔だけ離間して第1乃至第8の出射口67が配置されており、プローブ挿入部57の中心軸の径方向であって周方向について等間隔だけ離間した第1乃至第8の方向に夫々第1乃至第8のガイド光55が出射される。
【0016】
また、プローブ挿入部57は、内視鏡31の処置具挿入口51に挿入され、処置具チャンネル53に挿通され、処置具突出口52から突出される。プローブ挿入部57が処置具チャンネル53に挿通される場合には、プローブ挿入部57の長手軸は処置具チャンネル53の長手軸即ち内視鏡挿入部32の長手軸に略平行に配置される。プローブ挿入部57の先端部が内視鏡31の処置具突出口52から突出される場合には、プローブ挿入部57の突出部分について、プローブ挿入部57の長手軸は内視鏡挿入部32の長手軸に略平行に配置される。従って、プローブ挿入部57の先端部から出射される第1乃至第8のガイド光55は、内視鏡挿入部32の長手軸に略直交する平面である出射面内で出射されることになる。
【0017】
図4乃至図7を参照し、管腔内径の計測方法について説明する。
【0018】
図4乃至図6Bを参照し、管腔内径の計測方法の前提となる立体視内視鏡システムによる長さの計測方法について説明する。
【0019】
演算装置69のカーソル生成部71によってカーソル画像が生成され、ビデオプロセッサ36の画像合成部47によって右画像49rにカーソル画像が合成され、モニター48において右画像49rにカーソルが表示される。演算装置69に接続されているマウス76によってカーソルを操作して、右画像49rにおいて所定の一点を指定点tとして指定する。対象点設定部72によって、左画像49lにおいて指定点tに対応する対応点uを検出し、左画像49l及び右画像49rにおいて対象点を設定する。対応点uの検出には、パターンマッチング等に基づく所定の検出プログラムが用いられる。なお、左画像49lにおいて指定点tを指定し、右画像49rにおいて対応点uを検出するようにしてもよく、また、対応点uをマニュアル操作により指定するようにしてもよい。対象点の設定は繰り返し行われ、第1及び第2の対象点が設定される。長さ算出部70では、第1の対象点と第2の対象点との間の長さが算出される。算出された長さ情報は、適宜、外部記憶装置73に記憶される。
【0020】
長さの算出について詳細に説明すると、図6A及び図6Bに示されるように、対象点vの三次元座標(X,Y,Z)は,三角測量の原理により、以下の式により算出される。
【0021】
X=e・(Lx−R)/(L+R
Y=2e・L/(L+Rx)
Z=2e・f/(L+R
ここで、座標系としては、左画像用対物レンズ42lの中心点と右画像用対物レンズ42rの中心点との中点を原点とし、両対物レンズ42l,42rの中心点を通る直線をX軸、両対物レンズ42l,42rの光軸に平行で原点を通る直線をZ軸、X軸及びZ軸に直交し原点を通る直線をY軸とする。そして、両対物レンズ42l,42rの中心点間の距離を2e、両対物レンズ42l,42rの焦点距離をfとする。また、左画像用撮像ユニット41lについて、撮像素子43lにおける光軸Olから対象点vの結像位置までのX軸方向、Y軸方向の距離をL,L、右画像用撮像ユニット41rについて、撮像素子43rにおける光軸Orから対象点vの結像位置までのX軸方向、Y軸方向の距離をR,Rとする。e,fについては既知であり、L,L,R,Rについては対象点vを設定することにより決定される。以上により、対象点vの三次元座標(X,Y,Z)を算出することが可能である。算出した第1及び第2の対象点の三次元座標から、第1の対象点と第2の対象点との間の長さを算出する。
【0022】
図5及び図7を参照し、管腔内径の計測方法について説明する。
【0023】
体内の管腔内に内視鏡挿入部32を挿入する。管腔内に内視鏡挿入部32を挿入していく過程で、管腔の長手軸Kに略平行に内視鏡挿入部32の長手軸が配置されることになる。続いて、内視鏡31の処置具チャンネル53にレーザープローブ54のプローブ挿入部57を挿通し、内視鏡挿入部32の処置具突出口52からプローブ挿入部57の先端部を突出させて、管腔の長手軸方向について、プローブ挿入部57の出射口67を計測対象位置に位置決めする。ここで、プローブ挿入部57の先端部は内視鏡31の観察視野内に収められる。続いて、プローブ操作部58の点灯スイッチ59を押下操作することにより、プローブ挿入部57の出射口67からガイド光55が出射され、ガイド光55によって管腔内面にスポット状のマーキングMが形成される。ガイド光55は出射面内で出射され、マーキングMは出射面と管腔内面との交線上に配置されることになり、出射面は内視鏡挿入部32の長手軸に略直交し、従って管腔の長手軸Kに略直交することになるため、マーキングMは管腔内面において管腔の長手軸Kに略直交する所定の計測基準面P内に配置されることになる。当該マーキングMはモニター48に表示されている観察画像において視認可能である。上述したように、モニター48に表示されている右画像49rにおいて第1及び第2の指定点t1,t2を指定することで、第1及び第2の対象点が設定されて、第1の対象点と第2の対象点との間の長さが算出される。本実施形態では、計測基準面P内で管腔内径dを計測するため、複数のマーキングMを結び計測基準面P内に配置される仮想的な円周n上で、管腔の中心軸に対して互いに対向する2つの位置に夫々第1及び第2の指定点t1、t2を指定し、当該2つの位置間の長さを算出する。なお、計測基準面P内の点を正確に指定するためには、マーキングMの位置に指定点を指定することが好ましい。マーキングMが適切な位置に配置されていない場合には、内視鏡挿入部32に対してプローブ挿入部57を回転操作することにより、マーキングMを計測基準面P内で周方向に移動させて、適切な位置に再配置することが可能である。このようにして、管腔の長手軸Kに略直交する計測基準面Pにおいて管腔内径の計測が行われる。
【0024】
なお、上述した仮想的な円周n上で適宜2つの位置に指定点を指定することで、管腔の長手軸Kに略直交する計測基準面P内において、管腔内径以外の様々な管腔の長さを計測することが可能である。
【0025】
本実施形態の計測用立体視内視鏡システムでは、内視鏡挿入部32の長手軸を管腔の長手軸Kに略平行に配置することで、管腔の長手軸Kに略直交する計測基準面P内で互いに異なる多数の方向にガイド光55を出射して、管腔内面において当該計測基準面P内の互いに異なる多数の位置にマーキングMを形成することができる。また、内視鏡挿入部32の長手軸方向について撮像ユニット41l,41rよりも先端側からガイド光55が出射され、観察視野内にマーキングMが配置されることになり、観察画像においてマーキングMを視認することができる。管腔内径dを計測する場合には、観察画像において多数のマーキングMを結ぶ仮想的な円周n上の点を指定することで、管腔内面において管腔の長手軸Kに略直交する計測基準面P内の点を正確に指定することができる。従って、管腔について、管腔の長手軸Kに略直交する方向の内径dを正確に計測することが可能となっている。
【0026】
また、左画像49lと右画像49rとの内の一方の画像において指定点tを指定し、他方の画像において対応点uを検出あるいは指定する際、指定点tが指定される位置とその周囲との間で形状、色彩等の相違が小さい場合には、対応点uを正確に検出あるいは指定することが難しくなる。通常、生体組織の表面は形状、色彩等の変化が少なく、指定点tとその周囲との間で形状、色彩等の相違が小さくなるため、対応点uの検出あるいは指定は困難である。これに対して、本実施形態において、ガイド光55によって生体組織の表面にマーキングMを形成し、当該マーキングMの位置に指定点tを指定する場合には、指定点tの位置の色彩がその周囲の色彩と顕著に相違することになり、マーキングMが対応点uの検出あるいは指定のためのランドマークとして機能することになるため、対応点uを容易かつ正確に検出あるいは指定することが可能となる。
【0027】
図8乃至図12を参照し、本発明の第2実施形態を説明する。
【0028】
図8を参照し、本実施形態のレーザープローブ54は第1実施形態のレーザープローブ54と同様な構成を有する。但し、プローブ挿入部57の先端部には、ガイド光55を透過する出射窓74がプローブ挿入部57の周方向に全周にわたって形成されている。即ち、プローブ挿入部57の中心軸が出射中心軸となり、出射中心軸の径方向に全周にわたってガイド光55が出射されることになる。
【0029】
図9乃至図11を参照し、ステント内径の決定方法の前提となる立体視内視鏡システムによる面積の計測方法について説明する。
【0030】
マウス76によるカーソルの移動に伴い、演算装置69のライン生成部75によってライン画像が生成され、画像合成部47によって右画像49rにライン画像が合成され、右画像49rにおいてカーソルの移動に沿ってラインが表示される。マウス76によってカーソルを移動し、右画像49rにおいてラインによって閉曲線cを指定することにより、閉曲線cによって囲まれる領域を指定領域sとして指定する。図11に示されるように、分割点設定部77によって、右画像49rにおける閉曲線c上において所定の間隔で多数の分割点gを設定し、左画像49lにおいて各分割点gに対応する各対応点を検出し、右画像49r及び左画像49lにおいて多数の分割点を設定する。面積算出部78では、多数の分割点gを直線で順に連結した多角形Iの面積を算出し、当該多角形の面積を指定領域sの面積とみなす。多角形Iの面積については、当該多角形Iを3つの分割点gを頂点とする多数の三角形Jに分割し、各三角形Jについて3つの頂点の三次元座標を算出して面積を算出し、多数の三角形Jの面積を積算することで算出する。
【0031】
図10及び図12を参照し、ステント内径の決定方法について説明する。
【0032】
体内の管腔では、各種病変により閉塞部79が形成されて、管腔を介した流通が阻害される場合がある。このような場合には、管腔内に筒状のステント80を留置して閉塞部79を押し広げ、管腔を介した流通を確保する手技が行われる。閉塞部79の残存開口81の面積をS、残存開口81の拡張倍率をk、ステント内径をDとすると、D=(4kS/π)1/2となる。従って、閉塞部79の残存開口81の面積を計測することで、所望の拡張率を与えるステント内径を決定することが可能である。
【0033】
残存開口81の面積の測定は以下のように行われる。即ち、内視鏡31の内視鏡挿入部32を管腔内に挿入し、閉塞部79の残存開口81を内視鏡31の視野内に収める。ここで、内視鏡挿入部32の長手軸は管腔の長手軸Kに平行に配置される。そして、レーザープローブ54のプローブ挿入部57を閉塞部79の残存開口81に挿入し、プローブ挿入部57の出射窓74を閉塞部79の最閉塞位置に配置する。続いて、プローブ挿入部57の出射窓74からガイド光55を全周にわたって出射して、ガイド光55によって開口内面に環状のマーキングMを形成する。ガイド光55は出射面内で出射され、環状のマーキングMは出射面と開口内面との交線上に形成されることになる。出射面は内視鏡挿入部32の長手軸に略直交し、従って管腔の長手軸Kに略直交することになるため、環状のマーキングMは開口内面において管腔の長手軸Kに略直交する所定の計測基準面P内に配置されることになる。上述したように、モニター48に表示されている右画像49rにおいて閉曲線cを指定することで、閉曲線cによって囲まれる領域が指定領域sとして指定され、指定領域sの面積が算出される。本実施形態では、環状のマーキングMに沿ってカーソルを移動させて、マーキングM上に閉曲線cを指定し、マーキングMによって囲まれる領域を指定領域sとして指定する。この結果、マーキングMによって囲まれる領域の面積が算出される。このようにして、残存開口81について、管腔の長手軸Kに略直交する断面積Sが算出される。
【0034】
本実施形態の計測用立体視内視鏡システムでは、内視鏡挿入部32の長手軸を管腔の長手軸Kに略平行に配置することで、管腔の長手軸Kに略直交する計測基準面P内で全周にわたってガイド光55が出射され、開口内面において当該計測基準面Pと開口内面との交線上に環状のマーキングMが形成されるようになっている。このため、観察画像においてマーキングM上に閉曲線cを指定することで、残存開口81について管腔の長手軸Kに略直交する断面積Sを正確に計測することが可能となっている。
【0035】
特に、従来のステント内径の決定方法では、残存開口についての一方向の長さのみに基づいてステント内径を決定している。当該長さについても、X線を用いて測定されたり、残存開口においてバルーンを膨張させ、予め作成しておいたバルーンへの流体の注入量とバルーンの膨張量との相関表に基づいて決定されたりする他、単に、内視鏡の観察画像から感覚的に目測されたりしている。このように、従来のステント内径の決定方法では、特に残存開口がいびつな形状を有する場合には、ステント内径の正確な決定が困難である。これに対して、本実施形態のステント内径の決定方法では、残存開口81がいびつな形状を有する場合であっても、残存開口81の断面積Sを正確に計測することができ、ステント内径Dを正確に決定することが可能となっている。
【0036】
なお、第1実施形態において、本実施形態のようなレーザープローブを用いることも可能である。この場合には、環状のマーキングM上の任意の2つの位置に夫々第1及び第2の指定点を指定することで、当該2つの位置間の長さが計測される。
【0037】
図13及び図14は、本発明の第3実施形態を示す。
【0038】
図13を参照し、本実施形態のレーザープローブ54では、プローブ挿入部57において、円管状の外シース88に円棒状の回転体82が共軸に挿通されている。外シース88の基端部はプローブ操作部58に連結されており、回転体82の基端部はプローブ操作部58内に挿入されている。回転体82では、内シース89の基端部に環状の平歯車である従動歯車83が共軸に連結されており、従動歯車83には平歯車である駆動歯車84が噛合されており、駆動歯車84は駆動モータ86の出力軸に連結されている。点灯スイッチ59を押下操作することにより、発光部62においてガイド光55が生成されると共に、電源60から電力が供給されて、モータ制御部87によって駆動モータ86が駆動される。駆動モータ86によって駆動歯車84が回転され、駆動歯車84によって従動歯車83が回転されて、回転体82全体が外シース88に対してプローブ挿入部57の中心軸を中心として回転される。また、速度調節スイッチ91によって駆動モータ86の回転速度を調節して、回転体82の回転速度を調節することが可能である。
【0039】
回転体82では、回転体82の基端部から先端部の手前まで、従動歯車83及び内シース89にライトガイド64が挿通されている。発光部62で生成されたガイド光55は、ライトガイド64の基端面に入射され、ライトガイド64を介して導光されて、ライトガイド64の先端面から先端向きにプローブ挿入部57の中心軸に略平行に出射される。内シース89の先端部は閉塞されており、内シース89の先端部には先端ミラー66が内蔵されている。先端ミラー66の反射面は、基端向きで、プローブ挿入部57の中心軸に対して略45°の角度をなしている。ライトガイド64の先端面から出射されたガイド光55は、先端ミラー66の反射面によって、プローブ挿入部57の長手軸方向に略直交する方向に反射される。内シース89の周壁には、先端ミラー66の反射面に対面して、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に内側出射口92が貫通形成されている。先端ミラー66の反射面によって反射されたガイド光55は、内側出射口92を介して、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に出射される。外シース88の先端部には、プローブ挿入部57の長手軸方向について内側出射口92と同じ位置に、ガイド光55を透過する外側出射窓93がプローブ挿入部57の中心軸の周方向の全周にわたって形成されている。内シース89の内側出射口92から出射されたガイド光55は、外シース88の外側出射窓93を介して、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に出射される。第1実施形態と同様に、プローブ挿入部57の長手軸は内視鏡挿入部32の長手軸に略平行に配置されるため、ガイド光55は、内視鏡挿入部32の長手軸に略直交する出射面内で、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に出射される。
【0040】
外シース88に対して回転体82がプローブ挿入部57の中心軸を中心として回転されるため、ガイド光55の出射方向はプローブ挿入部57の中心軸の周方向に変位されることになる。プローブ操作部58の速度調節スイッチ91を操作して回転体82の回転速度を調節することにより、ガイド光55の出射方向の変位速度を調節することが可能である。
【0041】
このように本実施形態では、回転体82の先端部にガイド光55を出射する出射部68が形成されており、回転体82及び駆動モータ86によって、第1の方向にガイド光55を出射する第1の位置と、第1の方向と異なる第2の方向にガイド光55を出射する第2の位置とに出射部68を移動させる移動機構が形成されている。
【0042】
図14を参照し、管腔の計測方法について説明する。
【0043】
内視鏡挿入部32を管腔内に挿入し、内視鏡挿入部32の処置具突出口52からプローブ挿入部57の先端部を突出させ、管腔の長手軸方向について、プローブ挿入部57の先端部の出射窓74を計測対象位置に位置決めする。続いて、プローブ操作部58の点灯スイッチ59を押下操作する。この結果、プローブ挿入部57の出射窓74から、内視鏡挿入部32の長手軸に略直交する出射面内で、プローブ挿入部57の中心軸の径方向に、ガイド光55が出射され、ガイド光55の出射方向はプローブ挿入部57の中心軸の周方向に変位される。ガイド光55によって管腔内面にスポット状のマーキングMが形成され、マーキングMは出射面と管腔内面との交線上で当該交線に沿って周方向に移動される。ガイド光55の出射面は内視鏡挿入部32の長手軸に略直交し、従って管腔の長手軸に略直交するため、マーキングMは管腔内面において管腔の長手軸に略直交する所定の計測基準面内に配置され、当該計測基準面内で移動されることになる。実際のマーキングMはスポット状であるが、観察画像上では、マーキングMは、観察画像を取得する際の露光時間及びスポット状のマーキングMの実際の移動速度に応じて、所定の長さを備える帯形状をなす。プローブ操作部58の速度調節スイッチ91を操作して、ガイド光55の出射方向の変位速度を調節し、マーキングMの移動速度を調節することにより、観察画像上の帯状のマーキングMの長さを調節することが可能である。管腔のどのような長さを計測したいかに応じて、観察画像において帯状のマーキングM上で2つの位置を選択し、選択した2つの位置に夫々第1及び第2の指定点t1,t2を指定することにより、第1実施形態と同様に、当該2つの位置間の長さLを算出することが可能である。また、露光時間に対して回転体82の回転速度を充分に速く設定することにより、環状のマーキングを得ることが可能であり、環状のマーキング上に閉曲線を指定し、マーキングによって囲まれる領域を指定領域として指定することにより、第2実施形態と同様に、環状のマーキングによって囲まれる領域の面積を算出することが可能である。本実施形態でも、長さ、面積の測定は、管腔の長手軸に略直交する計測基準面において行われることになる。
【0044】
本実施形態の計測用立体視内視鏡システムでは、回転体82の回転速度を調節することにより、観察画像上に表示される帯状のマーキングMの長さを調節することができ、計測対象に応じた最適なマーキングMを形成することが可能となっている。
【0045】
なお、回転体82を互いに異なる複数の回転位置に配置し、各回転位置でスポット状のマーキングMを形成して、各回転位置において観察画像を得た上で、各回転位置における複数の観察画像を合成して、複数のマーキングMを含む観察画像を得るようにしてもよい。
【0046】
図15乃至図18は、本発明の第4実施形態を示す。
【0047】
本実施形態の計測用立体視内視鏡システムでは、処置具として、経内視鏡的に体内に挿入され、生体組織の一部分を削り取り吸引除去するマイクロデブリッター94が用いられる。マイクロデブリッター94の先端部には、第2実施形態と同様に、内視鏡挿入部の長手軸に直交する出射面内で、マイクロデブリッター94の中心軸の径方向に全周にわたってガイド光55を出射する出射部68が形成されている。
【0048】
図15乃至図18を参照し、開口部の拡張方法について、副鼻腔手術を例として説明する。
【0049】
副鼻腔手術では、副鼻腔炎の治療として、副鼻腔を閉塞している腫脹粘膜及び鼻茸をマイクロデブリッター94により削り取り吸引除去して、閉塞された開口部96を拡張し、鼻腔と副鼻腔との流通を確保する。
【0050】
図15を参照し、内視鏡挿入部を鼻腔内に挿入し、副鼻腔の開口部96を観察視野内に収める。内視鏡挿入部の長手軸は開口部96の長手軸と略平行となるように配置される。処置前には、副鼻腔の開口部96は腫脹粘膜及び鼻茸によって閉塞されており、開口部96の幅、断面積は比較的小さな幅wf、断面積Sfとなっている。続いて、図16を参照し、マイクロデブリッター94を経内視鏡的に鼻腔内に挿入し、マイクロデブリッター94により、開口部96を閉塞している腫脹粘膜及び鼻茸を削り取り吸引除去して、閉塞された開口部96を拡張していく。図17を参照し、開口部96の幅、断面積が目標とする幅we、断面積Seに達した場合には処置を終了する。
【0051】
ここで、図18に示されるように、処置前、並びに、処置中に適宜、開口部96の幅、断面積の計測を行う。即ち、開口部96にマイクロデブリッター94を挿入して、マイクロデブリッター94の出射部68を計測対象位置に位置決めし、出射部68からガイド光を出射して、開口部96内面に環状のマーキングMを形成する。観察画像において、環状のマーキングM上で、幅方向に最も離間し互いに対向する2つの位置を選択し、選択した2つの位置に夫々第1及び第2の指定点を指定することにより、第1実施形態と同様に、当該2つの位置間の長さが算出され、開口部96の幅が計測される。また、環状のマーキング上に閉曲線を指定し、マーキングMによって囲まれる領域を指定領域として指定することにより、第2実施形態と同様に、環状のマーキングMによって囲まれる領域の面積が算出され、開口部96の断面積が計測される。
【0052】
本実施形態の計測用立体視内視鏡システムでは、開口部96の拡張方法において、開口部96の幅、断面積等の大きさを適宜測定して、開口部96の大きさを定量的に評価することができ、適切な処置を行うことが可能となっている。
【0053】
図19及び図20は、本発明の第5実施形態を示す。
【0054】
内視鏡挿入部32の中心軸に直交し互いに直交する二方向を上下方向、左右方向とする。内視鏡挿入部32の先端面において、左右の位置に左画像用及び右画像用の対物レンズ42l,42rが配設されており、上下の位置に夫々照明レンズ39u,39dが配設されている。また、内視鏡挿入部32の先端面の中心部に光出射ユニット56が突設されている。光出射ユニット56は、内視鏡挿入部32の長手軸方向に先端向きに延出され、上下方向に略直交する板状をなし、上下方向にみて先端部が幅広のT字状をなしている。光出射ユニット56の先端部には収容部97が形成されている。収容部97内には、上下の位置に、夫々、一対のLEDユニット98u,98dが配設されている。上位置のLEDユニット98uでは、上下方向に直交するLED基板99uの上面に、複数のLED101uが左右方向に並設されている。上位置のLEDユニット98uの各LED101uは上方向にガイド光55を出射する。同様に、下位置のLEDユニット98dでは、上下方向に直交するLED基板99dの下面に、複数のLED101dが左右方向に並設されている。下位置のLEDユニット98dの各LED101dは下方向にガイド光55を出射する。収容部97の外装部100には、上壁及び下壁に、各LED101u,101dに対面して、出射口67u,67dが上下方向に貫通形成されている。各出射口67u,67dは、内視鏡挿入部32の長手軸に直交する同一平面内に配置されている。同該同一平面が出射面となる。LED101u,101dから出射されたガイド光55は、対応する出射口67u,67dを介して出射される。上位置の各出射口67u,67dから出射面内で上方向にガイド光55が出射され、下位置の各出射口67u,67dから出射面内で下方向にガイド光55が出射される。即ち、内視鏡挿入部32の長手軸に直交する上下方向軸が出射基準軸となり、ガイド光55は出射面内で出射基準軸に平行に出射される。このように、光出射ユニット56の先端部には、上方向にガイド光55を出射する第1乃至第4の出射部68u、下方向にガイド光55を出射する第5乃至第8の出射部68dが形成されている。
【0055】
本実施形態の管腔の計測方法では、内視鏡挿入部32を管腔内に挿入した後、さらに内視鏡挿入部32を進退させて、光出射ユニット56の先端部の出射口67u,67dを計測対象位置に位置決めする。続いて、光出射ユニット56の出射口67u,67dから出射面内でガイド光55を出射して、管腔内面にスポット状のマーキングを形成する。第1実施形態と同様に、内視鏡挿入部32の長手軸は管腔の長手軸に略平行に配置されるため、出射面は管腔の長手軸に略直交することになり、マーキングは管腔内面において管腔の長手軸に略直交する所定の計測基準面内に配置されることになる。観察画像において、複数のマーキングを結ぶ仮想的な円周上、好ましくはマーキング上の2つの位置に夫々第1及び第2の指定点を指定することにより、第1実施形態と同様に、当該2つの位置間の長さが算出される。本実施形態でも、長さの測定は、管腔の長手軸に略直交する計測基準面内において行われることになる。
【0056】
図21及び図22は、本発明の第6実施形態を示す。
【0057】
本実施形態の内視鏡31の構成は第5実施形態の内視鏡31の構成と同様である。但し、光出射ユニット56の収容部97では、上壁及び下壁に出射スリット102u,102dが形成されている。上位置あるいは下位置の出射スリット102u,102dは、上壁あるいは下壁を上下方向に貫通し、左右方向に延び、上位置あるいは下位置の全てのLED101u,101dに対面している。両出射スリット102u,102dは内視鏡挿入部32の長手軸に直交する同一平面内に配置されており、当該同一平面が出射面をなす。また、上位置あるいは下位置の出射スリット102u,102dの両側壁は、上方向あるいは下方向に向かって上位置あるいは下位置の出射スリット102u,102dが広がるように傾斜している。上位置あるいは下位置の出射スリット102u,102dから、出射面内で、上方向あるいは下方向に向かって左右方向に広がるようにガイド光55が出射される。
【0058】
本実施形態の管腔の計測方法では、光出射ユニット56の上位置及び下位置の出射スリット102u,102dから、出射面内で、夫々、上方向及び下方向に向かって左右方向に広がるようにガイド光55が出射され、管腔内面に2つの帯状のマーキングが形成される。観察画像において、2つの帯状のマーキングを含む仮想的な円周上、好ましくは2つの帯状のマーキング上の2つの位置に夫々第1及び第2の指定点を指定することにより、第1実施形態と同様に、当該2つの位置の間の長さを算出することが可能である。本実施形態でも、長さの測定は、管腔の長手軸に略直交する計測基準面において行われることになる。
【0059】
なお、第5及び第6実施形態において、光出射ユニットを内視鏡の長手軸方向に進退可能としてもよい。この場合、内視鏡を進退させることなく、光出射ユニットを進退させることで、光出射ユニットの出射口を計測対象位置に位置決めすることが可能である。
【0060】
図23乃至図25を参照し、本発明の第7実施形態及びその変形例を説明する。
【0061】
図23を参照し、本実施形態では、マーキング手段として染料103を用い、マーキング手段を出射する出射ユニットとして染料出射ユニットとしての散布ユニットを用いる。即ち、内視鏡31の先端部に先端向きに支持部が突設されており、支持部には、内視鏡挿入部32の長手軸に直交する少なくとも2方向に染料103を散布する少なくとも2つのノズル104が配設されている。染料103としては、生体組織に周囲の生体組織と区別しやすい色彩を付与するものが用いられ、例えば、メチレンブルーが用いられる。散布ユニットによって生体組織の表面に染料103を散布し、生体組織の表面に周囲の生体組織と識別可能な少なくとも2つの染色領域106を形成し、マーキングとする。
【0062】
図24を参照し、本変形例では、マーキング手段として墨汁105を用い、マーキング手段を出射する出射ユニットとして点墨ユニットを用いる。即ち、点墨ユニットは、経内視鏡的に体内に挿入され先端部から墨汁105を滴下する長尺な滴下具108を有する。また、第7実施形態と同様の支持部に滴下具108を突出する処置具突出口が形成されており、処置具突出口には内視鏡挿入部の長手軸に直交する方向に滴下具108を突出させる起上台が配設されている。内視鏡挿入部を内視鏡挿入部の中心軸を中心として回転させつつ、点墨ユニットによって生体組織の表面に墨汁105を滴下して少なくとも2つの点墨109を形成して、マーキングとする。
【0063】
図25を参照し、本変形例では、マーキング手段としてクリップ等のマーキング部材111を用い、マーキング手段を出射する出射ユニットとして留置ユニットを用いる。即ち、留置ユニットはマーキング部材111を留置する留置具112を有する。また、第7実施形態と同様の支持部に処置具突出口が形成されており、処置具突出口には内視鏡の長手軸に直交する方向に留置具112を突出させる起上台が配設されている。内視鏡挿入部を内視鏡挿入部の中心軸を中心として回転させつつ、留置ユニットによって生体組織の表面に少なくとも2つのマーキング部材111を留置して、マーキングとする。
【0064】
本実施形態及びその変形例でも、上述した実施形態と同様に、マーキングは右画像と左画像との対応付けにおいてランドマークとして用いられると共に、管腔の長手軸に直交する計測基準面内での管腔の大きさの計測に利用される。本実施形態及びその変形例のマーキングは、ガイド光によって形成されるマーキングと異なり、一旦形成した後はそのまま維持されるため、同一の部分の計測を繰り返し行うような場合に適したものとなっている。
【0065】
なお、本願では、ガイド光が空間的に互いに異なる2つの方向を含む所定の方向範囲に出射される場合については、ガイド光が空間的に互いに異なる2つの方向に出射されているものと解釈する。また、2つのガイド光が互いに平行かつ同じ向きに出射される場合であっても、当該2つのガイド光の出射点が互いに異なっていれば、2つのガイド光は互いに異なる2つの方向に出射されていると解釈する。例えば、第5実施形態において、上位置の2つの出射部から出射される2つのガイド光はいずれも上方向に出射されているが、2つの出射部は別の位置に配置されており、出射点が互いに異なるため、互いに異なる2つの方向に出射されていることになる。さらに、ガイド光が所定の時点で所定の方向に出射され、異なる時点で当該所定の方向とは異なる方向に出射される場合についても、ガイド光が互いに異なる2つの方向に出射されているものと解釈する。
【符号の説明】
【0066】
31…内視鏡、32…挿入部、41l,41r…画像取得部(撮像ユニット)、53…チャンネル、54…出射ユニット(光出射ユニット)、マーキング装置(レーザープローブ)、55,103,105,111…マーキング手段、55…ガイド光、103…染料、105…墨汁、111…マーキング部材、68,68u,68d…出射部、82,86…移動機構、82…回転体、86…駆動モータ、94…処置装置(マイクロデブリッター)、104…染料出射ユニット(散布ユニット、ノズル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸を有し管腔内に挿入される挿入部、及び、前記挿入部に設けられ観察画像を得るための画像取得部、を有する内視鏡と、
前記挿入部の長手軸方向について前記画像取得部よりも先端側から、少なくとも、前記長手軸に略直交する平面である出射面内の第1の方向、及び、前記出射面内の前記第1の方向とは異なる第2の方向に、前記管腔内面にマーキングを形成するためのマーキング手段を出射可能な出射ユニットと、
を具備することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記出射ユニットは、前記マーキング手段を前記第1の方向である一方向に出射する第1の出射部と、前記マーキング手段を前記第2の方向である別の一方向に出射する第2の出射部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記出射ユニットは、前記マーキング手段を前記第1の方向と前記第2の方向とを含む所定の方向範囲に出射する出射部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記出射ユニットは、前記マーキング手段を一方向に出射する出射部と、前記出射部を前記マーキング手段を前記第1の方向に出射する第1の出射位置及び前記マーキング手段を前記第2の方向に出射する第2の出射位置に配置可能な移動機構と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記出射ユニットは、前記挿入部の長手軸に略平行な出射中心軸を有し、前記出射面内で前記出射中心軸の径方向に前記マーキング手段を出射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記出射ユニットは、前記出射面内で前記出射中心軸の径方向に全周にわたって前記マーキング手段を出射する、
ことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記出射ユニットは、前記挿入部の長手軸に略直交する出射基準軸を有し、前記出射面内で前記出射基準軸に略平行に前記マーキング手段を出射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記出射ユニットは、前記マーキング手段として光を出射する光出射ユニットを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記出射ユニットは、前記マーキング手段として染料を出射する染料出射ユニットを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記内視鏡システムは、前記出射ユニットを有するマーキング装置を具備し、
前記内視鏡は、前記マーキング装置を挿通可能なチャンネルを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
請求項10に記載のマーキング装置。
【請求項12】
前記内視鏡システムは、前記出射ユニットを有し生体組織を処置するための処置装置を具備し、
前記内視鏡は、前記処置装置を挿通可能なチャンネルを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
請求項12に記載の処置装置。
【請求項14】
前記内視鏡は、前記内視鏡に一体的に設けられている前記出射ユニットを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−259582(P2010−259582A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112037(P2009−112037)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】