説明

内視鏡システム

【課題】先端部に高精度なクロックを安定的に供給することができる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】逓倍回路42は、水晶発振器41からのクロックを逓倍する。LD44はクロックを光信号に変換し、光信号を先端部20に送信する。PD21は光信号を受信し、電気信号に変換する。TG24は、電気信号に変換されたクロックに基づいてタイミング信号を生成する。水晶発振器41からのクロックを先端部20に光信号で伝送することによって、先端部20に高精度なクロックを安定的に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像部が物体内に挿入される内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な回路システムにおいては、回路のタイミング信号を生成するTG(タイミングジェネレータ)の近くに発振器(水晶発振器等で構成された高精度なクロックを出力する発振器)を配置し、TGの基になる基本クロックにこの発振器のクロックを用いる。発振器をTGの近くに配置することで、基本クロックを高精度に保ち、安定したタイミング信号を生成することができるからである。
【0003】
これに対し、電子内視鏡システムでは、生体内に挿入する部分(先端部)を細くしたい、また、先端部(先端部回路)の消費電力を小さくして発熱を抑えたいという考えから、実装規模や電力の消費が大きい発振器を先端部に配置せず、発振器と先端部を離して配置し、細線同軸ケーブルで発振器のクロックを先端部に伝送し、このクロックを先端部のTGの基本クロックに用いるのが一般的である。
【0004】
しかし、近年の撮像素子の高精細化に伴い、先端部で必要とされるタイミング信号の周波数が高くなり、先端部のTGの源振クロックの周波数を高くする必要が生じ、これに伴い、伝送する発振器のクロックの周波数が高くなってきた。このため、発振器のクロックを細線同軸ケーブルで伝送していたのでは、先端部に届くまでにクロックの信号品質が劣化し、システムの動作が不安定になる問題が生じてきた。また、高調波によるノイズの放射が増大するという問題も無視できなくなってきた。
【0005】
そこで、特許文献1では、ツイストペアケーブルを用い、差動デジタル信号で高速な発振器のクロックを伝送する手法が提案されている。この方式によれば、信号の振幅が小さいので、ある程度高速な信号も伝送でき、ノイズの放射も低減することができる。
【0006】
しかしながら、例えば特許文献2に示すような、先端部で映像信号をA/D変換し、デジタル信号にして伝送する方式への適用を考えた場合には、先端部の回路内で必要になるタイミング信号が格段に高速になり、このタイミング信号を生成する基になる基本クロックに非常に高い精度が求められる為、ツイストペアケーブルにより伝送された発振器のクロックでは、その精度が十分ではない。また、伝送された発振器のクロックで必要な速度のクロックを得られない場合には、先端部のTGに逓倍回路を設け、伝送された基本クロックから高速なクロックを生成することになるが、その逓倍回路のタイプによっては更にクロックの信号品質が悪化する。
【0007】
逓倍回路は、一般的にPLL(フェーズロックドループ)やDLL(ディレイロックドループ)等を用いたフィードバック機構を有する位相同期化回路(例えば特許文献3の図7、特許文献4の図12)で構成される。この位相同期化回路は、フィードバック機構を構成する全ての系を同一の集積回路内に構成するタイプ(オールデジタルタイプ)と、フィードバック機構の系の一部を別のデバイスで構成して高精度な信号を得るタイプ(外付けタイプ)とに分けられる。また、この位相同期化回路は、フィードバック系の配線(フィードバックループを形成する配線)にノイズ等が重畳して信号の周期性が乱れると、ロックが外れて回路の動作が不安定になり、安定した動作への復帰に時間がかかるという特徴がある。
【0008】
オールデジタルタイプは、フィードバック系の全てが同一の集積回路内に構成される為、サイズが小さく、フィードバック系の配線が集積回路の外に出ないので、ノイズの影響を低減できる。ただし、オールデジタルタイプは一般的に発振特性が悪く、ジッタが大きくなる。例えば、オールデジタルタイプのPLLでは、一般的に電圧制御発振器(VCO)にリング発振器(RO)を用いるが、ROはジッタ特性が悪く、基本クロックの精度が高くなければ高い周波数の信号には対応できない。
【0009】
外付けタイプは、例えば、PLLにおいて、VCOに高精度な外付けの電圧制御水晶発振器(VCXO)を採用することで、発振特性を大幅に改善することができる。ただし、別のデバイスを使用することでサイズが大きくなり、フィードバック系を繋ぐ配線も集積回路の外に出るため、ノイズの影響が大きくなる。サイズの面から強固な電磁シールドを設置できず、周囲のノイズ源の影響を避け難い先端部にこの外付けタイプの逓倍回路を設置することは、システムの不安定性を招くことになる。なお、内視鏡を使用する医療現場においては、電気メス等の過大なノイズを発する装置が同時に動作する為、通常の環境には存在しないレベルのノイズが飛び交うことになり、その影響は極めて大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−45113号公報
【特許文献2】特開2008−154934号公報
【特許文献3】特開2004−221962号公報
【特許文献4】特開平10−215153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、従来の電子内視鏡システムにおいては、先端部で必要なクロックを安定的に供給することが課題になっている。
【0012】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、先端部に高精度なクロックを安定的に供給することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、映像信号を生成する撮像部と、前記撮像部からの前記映像信号を処理する映像信号処理部と、前記映像信号処理部が処理した前記映像信号を送信する映像送信部と、前記撮像部、前記映像信号処理部、又は、前記映像送信部の駆動に必要なタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、前記タイミング信号の基になる基本クロックを光信号で受信し、受信した前記光信号を電気信号に変換する基本クロック受信部と、を有し、物体の内部に挿入される先端部と、前記先端部を前記物体の内部に導く挿入部と、前記映像信号を表示するモニタと、前記先端部からの前記映像信号を処理して前記モニタに出力するビデオプロセッサと、を有し、前記物体の外部に配置される外部装置と、を備える内視鏡システムであって、前記外部装置は、フィードバック機構を有する位相同期化回路を用いて前記基本クロックを生成する基本クロック生成部と、前記基本クロックを光信号に変換し、前記基本クロック受信部に送信する基本クロック送信部とを含み、前記位相同期化回路は、前記外部装置内にのみ含まれることを特徴とする内視鏡システムである。
【0014】
また、本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、映像信号を生成する撮像部と、前記撮像部からの前記映像信号を処理する映像信号処理部と、前記映像信号処理部が処理した前記映像信号を送信する映像送信部と、前記撮像部、前記映像信号処理部、又は、前記映像送信部の駆動に必要なタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、前記タイミング信号の基になる基本クロックを光信号で受信し、受信した前記光信号を電気信号に変換する基本クロック受信部と、を有し、物体の内部に挿入される先端部と、前記先端部を前記物体の内部に導く挿入部と、前記映像信号を表示するモニタと、前記先端部からの前記映像信号を処理して前記モニタに出力するビデオプロセッサと、を有し、前記物体の外部に配置される外部装置と、を備える内視鏡システムであって、前記外部装置は、前記基本クロックを生成する基本クロック生成部と、前記基本クロックを光信号に変換し、前記基本クロック受信部に送信する基本クロック送信部とを含み、前記先端部は、フィードバック機構を有する位相同期化回路を含み、該フィードバック機構を構成する全ての系は、同一の集積回路内に構成されることを特徴とする内視鏡システムである。
【0015】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記映像信号処理部は前記撮像部からの前記映像信号をデジタル信号に変換し、前記映像送信部は、前記映像信号をデジタルの光信号で送信することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記基本クロックの周波数を、前記タイミング信号の最大周波数と略同一または略2分の1に設定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記外部装置は、前記挿入部に繋がり前記ビデオプロセッサ部と脱着可能なコネクタ部を更に備え、前記基本クロック送信部が前記コネクタ部に配置されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記基本クロック生成部が前記コネクタ部に配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記外部装置は、前記挿入部に、前記先端部を操作する操作部を更に備え、前記基本クロック送信部が前記操作部内に配置されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記基本クロック生成部が前記操作部内に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外付けタイプの位相同期化回路を先端部に配置することなく、高精度なタイミング信号を生成することができる為、安定性が高い内視鏡システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの外観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの概略機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの詳細機能を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る接続構造を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る接続構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る接続構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るタイミング信号の生成方法を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムの概略機能を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムの詳細機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る内視鏡システム100の概略構成を示している。図1に示すように、内視鏡システム100は、内視鏡スコープ1と、内視鏡スコープ1で取得された映像信号を処理するビデオプロセッサ60と、ビデオプロセッサ60で処理された映像信号を画像として表示するモニタ70とを備えている。
【0025】
本実施形態の内視鏡スコープ1は、医療用スコープであり、被検物である体腔内に挿入されるものである。内視鏡スコープ1は、体腔内に挿入され、体腔内の目的部位の映像を撮影してビデオプロセッサ60に映像信号を伝送する先端部20と、先端部20を体腔内の目的部位に導く可撓性のあるコードを有する挿入部10と、挿入部10とビデオプロセッサ60とを接続するためのコネクタ部40とを備えている。
【0026】
また、挿入部10は、先端部20に繋がる可撓性のあるコードである先端側挿入部11と、先端側挿入部11を介して先端部20の動きを操作するための操作部12と、操作部12とコネクタ部40を繋ぐ可撓性のあるコードであるコネクタ側挿入部13とを備えている。先端部20は、後述する各種機構を好適に保護するため、例えば金属等を用いてその外面が硬質に構成されており、先端側挿入部11よりも低い可撓性を有する。
【0027】
図2は、内視鏡システム100の機能ブロックとそれらの信号の流れを示している。ここで、図2を参照して各機能ブロック間の信号の流れを説明する。
【0028】
ビデオプロセッサ60からの制御信号CTRLに基づき、コネクタ部40において、先端部20で必要となるタイミング信号の最大周波数(後述する先端部20から出力される映像信号S1のサンプリングクロックSYNC_S1と同一の周波数)のクロックCLK1が生成される。生成されたクロックCLK1は、E/O変換(電気信号を光信号に変換)された後、挿入部10に挿通された光ファイバを介して先端部20に光伝送される。
【0029】
先端部20では、O/E変換(光信号を電気信号に変換)されたクロックCLK1に基づき撮像部等が駆動され、シリアル化されたデジタル映像信号S1と、デジタル映像信号S1と同期した、デジタル映像信号S1をサンプリングするためのサンプリングクロックSYNC_S1が生成され、デジタル映像信号S1とサンプリングクロックSYNC_S1がE/O変換後に、挿入部10に挿通された光ファイバを介してコネクタ部40に光伝送される。
【0030】
コネクタ部40では、O/E変換されたサンプリングクロックSYNC_S1に基づき、シリアル化されたデジタル映像信号S1がサンプリングされ、これをパラレル信号に戻したバス信号S2と、バス信号S2と同期した、バス信号S2をサンプリングするためのサンプリングクロックSYNC_S2とが生成され、バス信号S2とサンプリングクロックSYNC_S2が細線同軸ケーブルを介してビデオプロセッサ60に伝送される。
【0031】
ビデオプロセッサ60は、サンプリングクロックSYNC_S2に基づきバス信号S2をサンプリングし、映像をモニタ70に表示する。
【0032】
図3は、図2の機能ブロック内を詳細に示したブロック図であり、図3を参照して本実施形態の動作を詳しく説明する。先端部20は、PD(フォトダイオード)21と、TIA(トランスインピーダンスアンプ)22と、リミットアンプ23と、TG24と、撮像部25と、A/D変換回路26と、シリアライザ27と、LD(レーザダイオード)ドライバ28、29と、LD30、31とを備えている。コネクタ部40は、水晶発振器41と、逓倍回路42と、LDドライバ43と、LD44と、PD45、46と、TIA47、48と、リミットアンプ49、50と、デシリアライザ51とを備えている。先端部20及びコネクタ部40の動作の詳細については後述する。
【0033】
ビデオプロセッサ60は、内視鏡システム100全体の制御を行う制御部61を備えており、制御部61は、コネクタ部40及びモニタ70にそれぞれ接続されている。ここで、LD30とPD45は、挿入部10に挿通された光ファイバを介して繋がっているが、その接続構造としては、例えば、図4〜図6に示す構造が考えられる。
【0034】
図4は、LD30と光ファイバが繋がる第一接続部300と、PD45と光ファイバが繋がる第二接続部400の接続構造を示す平面図であり、図5は、図4に示されたB−B線における断面図である。そして、図6は、図4のA−A線における断面図である。なお、第一接続部300及び第二接続部400内の構成は、実際には外部から視認できるものではないが、ここでは構成をわかりやすくするために図4を透過図として示している。
【0035】
図4に示すように、第一接続部300は、LD30からの光信号を伝送する板状の光導波路301と、光導波路301に接続された光ファイバ350の端部を固定するガイドブロック304とを備えている。光導波路301は、光が通過するコア303を有し、図5に示すように、光導波路301の上面に露出したコア303の一方の端面303AにLD30が接続されている。
【0036】
また、光導波路301には、コア303の他方の端面303Bに連通するようにV溝301Aが形成されており、図5及び図6に示すように、光ファイバ350の一方の端部350AがV溝301A内に収容される。そして、光ファイバ350は、V溝301Aによってコア303と光軸が一致するように位置決めされ、コア303の端面303Bと光ファイバ350の端面350Aが接続されている。ガイドブロック304は、V溝301Aとほぼ同様のV溝304Aを有し、図6に示すように、V溝301Aに収容された光ファイバ350の端部350Aの上側を覆うように光導波路301に接合されている。このようにして、光ファイバ350の端部350Aは、コア303に対して光軸がずれないように支持される。
【0037】
第二接続部400の構成は第一接続部300とほぼ同様であり、光導波路401及びガイドブロック404を備えている。そして、光導波路401の上面に露出したコア403の一方の端面403AにPD45が接続されており、光ファイバ350の他方の端部350Bが、光導波路401に形成されたV溝401A内に収容されてコア403の他方の端面403Bと同軸に接続されている。光ファイバ350の端部350Bの上側は、V溝404Aを有するガイドブロック404に覆われている。
【0038】
上記のように構成された第一接続部300では、LD30から発せられた光信号は、コア303の端面303Aから進入し、途中、反射面303Cで90度曲げられて端面303Bに達する。そして、光ファイバ350を通って第二接続部400に進入する。第二接続部400では、コア403の端面403Bから光信号が進入し、反射面403Cで90度曲げられて端面403Aに達し、PD45に到達する。
【0039】
尚、本説明ではLD30とPD45間の接続構造の例を示したが、LD31とLD46間、LD44とPD21間の構造も同様の構造が考えられる。
【0040】
上記のように構成された内視鏡システム100の使用時の動作について図3を参照して説明する。
【0041】
内視鏡システム100が映像信号を出力する際、制御部61はコントロール信号CTRLを出力する。コネクタ部40において、コントロール信号CTRLを受けて、前述した外付けタイプの位相同期化回路を備えた逓倍回路42は、水晶発振器41の源振クロックを所定の周波数に逓倍し、高精度な基本クロックCLK1を生成する。LDドライバ43は、基本クロックCLK1を受けてLD44を駆動し、LD44は基本クロックCLK1をE/O変換し、光ファイバを介して先端部20に光伝送する。
【0042】
先端部20において、PD21は、光信号である基本クロックCLK1を受信し、光信号を電流に変換する。TIA22は基本クロックCLK1に基づく電流をI/V変換(電流電圧変換)し、リミットアンプ23はこの信号を2値化してTG24に出力する。TG24は、前述したフィードバック機構を有する位相同期化回路を含まず、この電気信号に変換された基本クロックCLK1に基づき、先端部20の他の回路で必要なタイミング信号(例えば、撮像部25の水平同期信号や垂直同期信号等)を生成し、各回路に出力する。
【0043】
基本クロックCLK1の周波数は、TG24で生成するタイミング信号の最大周波数と略同一または2分の1に設定される。基本クロックCLK1の周波数がTG24で生成するタイミング信号の最大周波数の2分の1である場合、TG24は、基本クロックCLK1から、例えば、以下のようにして最大周波数のタイミング信号を生成する。図7は、基本クロックCLK1から最大周波数のタイミング信号を生成する様子を示している。まず、遅延回路によって、基本クロックCLK1を周期Tの4分の1だけ遅延させたクロックCLK1'が生成される。続いて、基本クロックCLK1とクロックCLK1' とのXOR演算によって最大周波数のタイミング信号が生成される。このように処理することで、フィードバック機構を有する位相同期化回路を用いることなく、最大周波数のタイミング信号を生成することができる。
【0044】
また、TG24は、例えば、カウンタ回路を用いた分周回路を採用することにより、フィードバック機構を有する位相同期化回路を用いることなく、低い周波数のタイミング信号も生成することができる。
【0045】
このように、TG24は、生成するタイミング信号の最大周波数と略同一または2分の1の基本クロックを得ることで、PLL,DLLのようなフィードバック機構を有する位相同期化回路を用いることなく、必要なタイミング信号を生成することができる。
【0046】
TG24からのタイミング信号で駆動された撮像部25は、映像のアナログバス信号S3と、この信号に同期したサンプリングクロックSYNC_S3とを生成し、出力する。A/D変換回路26は、サンプリングクロックSYNC_S3に基づきサンプリングしたアナログバス信号S3をデジタルバス信号S4に変換し、この映像のデジタルバス信号S4と、デジタルバス信号S4に同期したサンプリングクロックSYNC_S4とを出力する。シリアライザ27は、サンプリングクロックSYNC_S4に基づきサンプリングしたデジタルバス信号S4をシリアルのデジタル映像信号S1に変換し、このデジタル映像信号S1と、デジタル映像信号S1に同期したサンプリングクロックSYNC_S1とを出力する。そして、LDドライバ28、29とLD30、31は、デジタル映像信号S1とサンプリングクロックSYNC_S1をE/O変換し、光ファイバを介してコネクタ部40に光伝送する。
【0047】
コネクタ部40において、PD45、46はデジタル映像信号S1、サンプリングクロックSYNC_S1を光信号から電流に変換する。その後、TIA47、48は電流をI/V変換し、リミットアンプ49、50はこれらの信号を2値化し、電気信号に変換する。そして、デシリアライザ51において、シリアルのデジタル映像信号S1はデシリアライズされて映像のデジタルバス信号S2に戻され、これに同期したサンプリングクロックSYNC_S2と共にビデオプロセッサ60に出力される。ビデオプロセッサ60において、制御部61は、サンプリングクロックSYNC_S2に基づきサンプリングしたデジタルバス信号S2をビデオ信号に変換し、モニタ70に映像を出力する。
【0048】
以上のように構成された内視鏡システム100は、先端部のTG24で必要な基本クロックを光伝送する。基本クロックを電気信号で伝送すると、信号の減衰や反射によるジッタが発生するが、光信号で伝送することにより、減衰や反射の影響が極めて小さくなり、また、ノイズの影響も低減できるため、基本クロックを精度良く伝送することができる。そして先端部では、伝送された高精度なクロックに基づき、高精度なタイミング信号を生成することが可能となり、これにより、先端部からも高い伝送レートで映像信号を伝送することが可能となる。本実施形態に示すように、この映像信号の伝送をも光信号を用いて実現することにより、減衰、反射、及びノイズの影響を抑え、高画質な映像を出力する内視鏡システムを実現することができる。
【0049】
また、ノイズ等の影響でロックが外れると動作が不安定になり安定動作への復帰に時間がかかるフィードバック機構を有する位相同期化回路を、周囲のノイズ源の影響を避け難い先端部に配置することなくタイミング信号を生成することができる為、安定性が高い内視鏡システムを実現することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、TG24は、フィードバック機構を有する位相同期化回路を含まないが、フィードバック機構を構成する全ての系が同一の集積回路内に構成される前述したオールデジタルタイプの位相同期化回路をTG24に用いても良い。この場合、先端部にノイズの影響を抑えた逓倍回路を構成することが可能となり、低い周波数の基本クロックから所望の周波数のタイミング信号を容易に生成することができるようになる。なお、オールデジタルタイプの位相同期化回路はジッタが大きくなるが、本実施形態においては前述したように基本クロックの精度が向上する為、その影響を相殺することができる。
【0051】
また、光伝送では光軸調整が容易ではなく、光伝送路中にコネクタ部のような脱着部を設けると、その箇所には非常に高い勘合精度が要求されるが、コネクタ部に光送受信部を配置したことで、コネクタ部とビデオプロセッサとの脱着箇所(以降、脱着箇所)に光伝送路が挿通することを避け、脱着箇所を電気接点化することができ、コネクタ部の勘合精度要件を緩和することができる。また、水晶発振器41と逓倍回路42から成る基本クロック生成部もコネクタ部に配置したことで、基本クロックが脱着箇所を通らず、脱着箇所で生ずる信号劣化の影響を受けることがなくなる為、基本クロックをより高精度に保つことができる。
【0052】
また、本実施形態においては、デジタル映像信号S1に、デジタル映像信号S1と同期した、デジタル映像信号S1をサンプリングするためのサンプリングクロックSYNC_S1を並走させているが、クロック・データ・リカバリ(CDR)の技術をもってデジタル映像信号にサンプリングクロックを埋め込み、デジタル映像信号S1とサンプリングクロックSYNC_S1を統合してもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図8、図9を参照して説明する。図8、図9において、第1の実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。また、本実施形態の内視鏡システム110の概略構成は、第1の実施形態の内視鏡システム100の概略構成(図1)と同様である。
【0054】
図8は、第2の実施形態に係る内視鏡システム110の機能ブロックと、それらの信号の流れを示している。ここで、図8を参照して各機能ブロック間の信号の流れを説明する。第1の実施形態に係る図2の内視鏡システム100との大きな違いは、操作部12とコネクタ部40間の信号伝送方式を、光伝送からLVDS伝送に変更した点である。
【0055】
コネクタ部40において、ビデオプロセッサ60からの制御信号CTRLに基づき、発振器のクロックCLK0がLVDS信号(差動デジタル信号)に変換され、ツイストペアケーブルを介して操作部12に伝送される。操作部12では、受信したクロックCLK0に基づき、先端部20で必要となるタイミング信号の最大周波数のクロックCLK1が生成され、E/O変換後に光ファイバを介して先端部20に光伝送される。
【0056】
先端部20では、O/E変換したクロックCLK1に基づき撮像部等が駆動され、シリアル化されたデジタル映像信号S1と、デジタル映像信号S1と同期した、デジタル映像信号S1をサンプリングするためのサンプリングクロックSYNC_S1とが生成され、デジタル映像信号S1とサンプリングクロックSYNC_S1はE/O変換後に光ファイバを介して操作部12に光伝送される。
【0057】
操作部12では、O/E変換したサンプリングクロックSYNC_S1に基づき、シリアル化されたデジタル映像信号S1がサンプリングされ、これをパラレル信号に戻したバス信号S2と、バス信号S2と同期した、バス信号S2をサンプリングするためのサンプリングクロックSYNC_S2とが生成され、バス信号S2とサンプリングクロックSYNC_S2はLVDS信号S5、SYNC_S5に変換され、ツイストペアケーブルを介してコネクタ部40に伝送される。
【0058】
コネクタ部40では、LVDS信号S5、SYNC_S5が単信号S2、SYNC_S2に戻され、細線同軸ケーブルを介してビデオプロセッサ60に伝送される。ビデオプロセッサ60は、サンプリングクロックSYNC_S2に基づきデジタル映像信号S2をサンプリングし、映像をモニタ70に表示する。
【0059】
図9は、図8の機能ブロック内を詳細に示したブロック図であり、第1の実施形態に係る図3のコネクタ部40内のブロックを、水晶発振器41を除き操作部12内に移動し、操作部12とコネクタ部40間をツイストペアケーブルで繋ぎ、信号をLVDSで伝送する構成にしている。
【0060】
すなわち、コネクタ部40において、水晶発振器41で生成されたクロックCLK0は、LVDSドライバ52によってLVDS信号として操作部12に伝送される。操作部12において、このLVDS信号は、LVDSレシーバ53によって受信される。また、操作部12において、バス信号S2、サンプリングクロックSYNC_S2は、LVDSドライバ54、55によってLVDS信号S5、SYNC_S5に変換され、コネクタ部40に伝送される。コネクタ部40において、LVDS信号S5、SYNC_S5は、LVDSレシーバ56、57によって受信される。
【0061】
以上のように構成された内視鏡システム110は、光信号の送受信部を操作部12に配置することで、高価な光ファイバを先端側挿入部11にだけ設置すればよく、挿入部10全体に光ファイバを設置した場合に比べ、コストを低減することができる。なお、上で述べたように、本実施形態においては、コネクタ部40と操作部12の間のコネクタ側挿入部13の信号伝送にLVDS伝送を採用しているが、挿入部10全体をLVDS伝送するより距離が短く、また、コネクタ側挿入部13は体内に挿入しないためコードを太くすることも可能であることから、この部分での信号品質の劣化を抑えることは比較的容易である。
【0062】
また、本実施形態においては、水晶発振器41と逓倍回路42を、コネクタ部40と操作部12に分離して配置しているが、これらを纏めて操作部12に配置しても良い。これにより、コネクタ部から操作部への信号伝送で生ずる信号の劣化を防ぐことができ、基本クロックをより高精度に保つことができる。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記では本発明を医療用の内視鏡システムに適用した例を説明したが、本発明を、パイプ等の工業製品を観察するための工業用の内視鏡システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1・・・内視鏡スコープ、10・・・挿入部、11・・・先端側挿入部、12・・・操作部、13・・・コネクタ側挿入部、20・・・先端部、21・・・PD(基本クロック受信部)、22・・・TIA、23・・・リミットアンプ、24・・・TG(タイミング信号生成部)、25・・・撮像部、26・・・A/D変換部(映像信号処理部)、27・・・シリアライザ、28,29・・・LDドライバ、30,31・・・LD(映像送信部)、40・・・コネクタ部、41・・・水晶発振器、42・・・逓倍回路(基本クロック生成部)、43・・・LDドライバ、44・・・LD(基本クロック送信部)、45,46・・・PD、47,48・・・TIA、49,50・・・リミットアンプ、51・・・デシリアライザ、52,54,55・・・LVDSドライバ、53,56,57・・・LVDSレシーバ、60・・・ビデオプロセッサ、61・・・制御部、70・・・モニタ、100,110・・・内視鏡システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を生成する撮像部と、前記撮像部からの前記映像信号を処理する映像信号処理部と、前記映像信号処理部が処理した前記映像信号を送信する映像送信部と、前記撮像部、前記映像信号処理部、又は、前記映像送信部の駆動に必要なタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、前記タイミング信号の基になる基本クロックを光信号で受信し、受信した前記光信号を電気信号に変換する基本クロック受信部と、を有し、物体の内部に挿入される先端部と、
前記先端部を前記物体の内部に導く挿入部と、前記映像信号を表示するモニタと、前記先端部からの前記映像信号を処理して前記モニタに出力するビデオプロセッサと、を有し、前記物体の外部に配置される外部装置と、
を備える内視鏡システムであって、
前記外部装置は、フィードバック機構を有する位相同期化回路を用いて前記基本クロックを生成する基本クロック生成部と、前記基本クロックを光信号に変換し、前記基本クロック受信部に送信する基本クロック送信部とを含み、
前記位相同期化回路は、前記外部装置内にのみ含まれることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
映像信号を生成する撮像部と、前記撮像部からの前記映像信号を処理する映像信号処理部と、前記映像信号処理部が処理した前記映像信号を送信する映像送信部と、前記撮像部、前記映像信号処理部、又は、前記映像送信部の駆動に必要なタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、前記タイミング信号の基になる基本クロックを光信号で受信し、受信した前記光信号を電気信号に変換する基本クロック受信部と、を有し、物体の内部に挿入される先端部と、
前記先端部を前記物体の内部に導く挿入部と、前記映像信号を表示するモニタと、前記先端部からの前記映像信号を処理して前記モニタに出力するビデオプロセッサと、を有し、前記物体の外部に配置される外部装置と、
を備える内視鏡システムであって、
前記外部装置は、前記基本クロックを生成する基本クロック生成部と、前記基本クロックを光信号に変換し、前記基本クロック受信部に送信する基本クロック送信部とを含み、
前記先端部は、フィードバック機構を有する位相同期化回路を含み、該フィードバック機構を構成する全ての系は、同一の集積回路内に構成されることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡システムにおいて、
前記映像信号処理部は前記撮像部からの前記映像信号をデジタル信号に変換し、前記映像送信部は、前記映像信号をデジタルの光信号で送信することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡システムにおいて、
前記基本クロックの周波数を、前記タイミング信号の最大周波数と略同一または略2分の1に設定することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡システムにおいて、
前記外部装置は、前記挿入部に繋がり前記ビデオプロセッサ部と脱着可能なコネクタ部を更に備え、
前記基本クロック送信部が前記コネクタ部に配置されていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項6】
請求項5に記載の内視鏡システムにおいて、
前記基本クロック生成部が前記コネクタ部に配置されていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡システムにおいて、
前記外部装置は、前記挿入部に、前記先端部を操作する操作部を更に備え、
前記基本クロック送信部が前記操作部内に配置されていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項8】
請求項7に記載の内視鏡システムにおいて、
前記基本クロック生成部が前記操作部内に配置されていることを特徴とする内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−250835(P2011−250835A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124663(P2010−124663)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】