説明

内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法

セラミックブレーキディスクロータを構成する冷却チャネルをより精密かつ容易に具現する方法に関するものである。これを実現するために本発明は、a炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する段階、bそれぞれ別個の工程を通じて製造された前記荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300を一つの構造物に組み立てる段階及びc組み立てられた前記一つの構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行する段階を包含することを特徴とする内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法を提供する。本発明によれば、冷却チャネル形状をより経済的かつ容易に具現することができ、また、冷却チャネルの寸法精度が向上するので、ディスクロータの性能が向上する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法に関するものであり、さらに詳細には、セラミックブレーキディスクロータを構成する冷却チャネルをより精密かつ容易に具現する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にブレーキシステムは走行中の自動車を減速または停止させる装置であって、殆ど運転手が足で作動させる形式の足動式ブレーキであり、運転手の操作力、すなわちペダル踏力が油圧または空気圧という中間媒体を介して車輪の制動力に変換される。このようなブレーキの油圧式ブレーキのうちのディスクブレーキはドラムの代わりにホイールと共に回転する円板ディスクロータを取り付け、その両側の外周部分に油圧ピストンで作用するブレーキパッドを押し付けてその摩擦力によりホイールが制動されるようにしたものである。
【0003】
前記したディスクブレーキの構造はディスクロータ、キャリパ、ディスクパッドなどの部品により構成される。
図1は従来のディスクロータ構造を示した斜視図である。図1に示したように、従来のディスクロータ1は制動時に運動エネルギーを熱エネルギーに換える作用を遂行するので、制動時に数百度に達する熱エネルギーを冷却させるための冷却チャネル10を形成している。また、前記冷却チャネル10はディスクロータ1の外側円周から内側円周へ貫通されるようにするチャンネルが円周方向に沿って等間隔で形成されている形態である。
【0004】
図2は従来のディスクロータを製造する方法を説明するための図面である。図2を参照すると、従来には例えば、炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータを製造する場合において、以下のような3つの方法のうちの1つの工程によりディスクロータを製造した。
【0005】
従来のディスクロータを製造する第一の方法は、図2のようなディスクロータの炭素−炭素複合材料を形成する段階において、上下対称な形態の上板20と下板30をそれぞれ製造しこの際、上板20と下板30のそれぞれには冷却チャネル10形状を形成する1/2形状が各々形成された構造、その後、結合工程により組立体を作った後この際、上板20と下板30の結合により冷却チャネル10形状が現れる、溶融珪素含浸工程を遂行することで一体型のセラミックブレーキディスクロータを製造した。
【0006】
しかし、このように製造された上板20と下板30は冷却チャネル10を形成するためには、上板20と下板30が冷却チャネル10形状を形成する正確な位置で組み立てられなければならず、特に、組立境界面の隙間が生じないようにするために冷却チャネル10形状を有している面に非常に厳格な加工公差を要求する。このような工程の特性はディスクロータの炭素−炭素複合材料を形成する段階における機械加工コスト及び加工時間を増加させる主要原因として作用する。
【0007】
従来のディスクロータを製造する第二の方法は、ディスクロータの炭素繊維強化ポリマー複合材料(Carbon Fiber Reinforced Polymer;以下、CFRPと称するを製造する工程段階において、図2に示した上下対称な形態の上板20と下板30をそれぞれ製造することによってこの際もやはり、上板20と下板30のそれぞれには冷却チャネル10を形成する1/2形状が形成された構造、ディスクロータの炭素−炭素複合材料を形成する段階においてこのような上下対称な形態の上板及び下板を形成する工程を省略するようにした製造方法を使用した。
【0008】
しかし、このような製造方法もやはり、ディスクロータの炭素−炭素複合材料を製造するための熱処理工程で反りが発生したり寸法変化が生じたりするので追加的な機械加工を必要とし、これにより前記第一の方法と類似の問題点が現れる。
【0009】
従来のディスクロータを製造する第三の方法は、前記第二の方法を改善した最近の工程技術であって、プレス成形時に内部冷却チャネル形状を有する素材を追加的に挿入し、ディスクロータの炭素−炭素複合材料を製造するための熱処理工程で燃焼してなくす方法である。具体的に、このような第三の方法はプレス成形が可能な原素材を製造し、上板20に適用される原素材をプレス金型に充たし、冷却チャネル10形状を有する素材を装入した後、下板30に適用される原素材を金型に充たして同時に成形する方法である。この方法はディスクロータの炭素−炭素複合材料を製造するための熱処理工程後の最小限の機械加工によってもディスクロータ1冷却チャネル10の正確な形状と寸法を満たすことができるので、比較的効率的な製造方法であると評価される。
【0010】
しかし、このような製造方法もやはり、冷却チャネル10形状を有する素材の選択が非常に制約的であるという短所がある。具体的に、このような製造方法のディスクロータ1の成形工程ではベーン40形状部分に低密度領域が発生しやすく、このような問題を解消するためには、成形工程時に上板20または下板30に適用される原素材の収縮する比率だけ冷却チャネル10形状を有する素材も収縮しなければならず、このような収縮現象は厚さ方向にのみなされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような従来の問題点を反映して案出されたものであって、ディスクロータの上板、下板及びベーンをそれぞれ別個の工程により製造し、これらの部品を組み立てた後、溶融珪素を含浸することにより冷却チャネルを精密かつ容易に具現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した発明の目的を達成するために本発明の第1実施例による、
内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法は、a炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する段階;bそれぞれ別個の工程を通じて製造された前記荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300を一つの構造物に組み立てる段階;及びc組み立てられた前記一つの構造物に対して溶融珪素含浸(Liquid Silicon Melt Infiltration)処理を遂行する段階を包含する。
【0013】
好ましい実施例によって、前記a段階における、前記炭素−炭素複合材料は、a1炭素繊維を補強した炭素繊維強化ポリマー複合材料(Carbon Fiber Reinforced Polymer;CFRPを製造する段階;及びa2前記炭素繊維強化ポリマー複合材料を高温熱処理または緻密化して炭素−炭素複合材料を製造する段階を包含する工程により形成することができる。
【0014】
好ましい実施例によって、前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220は同一の組成比の炭素−炭素複合材料により形成することができる。
好ましい実施例によって、前記荷重部110、210と前記ベーン300は同一の組成比の炭素−炭素複合材料により形成され、前記摩擦面120、220は前記荷重部110、210及び前記ベーン300と異なる組成比の炭素−炭素複合材料により形成することができる。
【0015】
好ましい実施例によって、前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220が同一の組成比の炭素−炭素複合材料により形成される場合には、前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用し、前記溶融珪素含浸処理を遂行した後の前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220は30〜70wt%のC成分、2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で
合成することができる。
【0016】
好ましい実施例によって、前記荷重部110、210と前記ベーン300が同一の組成比の炭素−炭素複合材料により形成され、前記摩擦面120、220は前記荷重部及び前記ベーン300と異なる組成比の炭素−炭素複合材料により形成される場合には、前記荷重部110、210及び前記ベーン300のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用し、前記摩擦面120、220のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以下の炭素繊維を補強材として適用し、前記溶融珪素含浸処理を遂行した後の前記摩擦面120、220は55〜99wt%のSiC成分と1〜45wt%のC成分の組成比で合成され、前記溶融珪素含浸処理を遂行した後の前記荷重部110、210及び前記ベーン300は30〜70wt%のC成分、2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で合成することができる。
【0017】
好ましい実施例によって、前記ベーン300の形状は、螺旋形、直線形、またはピン形のうちのいずれかの形状に製造できる。
また、前述した発明の目的を達成するために、本発明の第2実施例による、内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法は、a炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの上部荷重部110、下部荷重部210及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する段階;bそれぞれ別個の工程を通じて製造された前記上部荷重部110、下部荷重部210及びベーン300を一つの構造物に組み立てる段階;及びc組み立てられた前記構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行する段階を包含する。
【0018】
好ましい実施例によって、前記b段階における前記組立は、前記下部荷重部210と前記ベーン300の間及び前記ベーン300と前記上部荷重部110の間に黒鉛接着剤を適用して組み立てることができる。
【0019】
好ましい実施例によって、前記b段階における前記組立は、前記下部荷重部210と前記上部荷重部110に前記ベーン300が嵌められる溝部500をそれぞれ予め形成し、前記ベーン300を前記それぞれの 溝部500に嵌め込んで組み立てるとができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるセラミックブレーキディスクロータの製造方法によれば、冷却チャネル形状をより経済的かつ容易に具現することができる。
また、本発明によるセラミックブレーキディスクロータの製造方法によれば、冷却チャネルの寸法精度が向上するので、ディスクロータの性能が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のディスクロータ構造を示した斜視図。
【図2】従来のディスクロータを製造する方法を説明する断面図。
【図3】本発明の第1実施例による内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法を説明するための工程図。
【図4】本発明のディスクロータの製造方法に適用される各構成要素を示した断面図。
【図5】ディスクロータの製造方法に適用可能なベーンの形状を例示する斜視図。
【図6】ディスクロータの製造方法に適用される荷重部、ベーン、摩擦面がそれぞれ組み立てられる過程を説明する斜視図。
【図7】ディスクロータの製造方法に適用される荷重部、ベーン、摩擦面がそれぞれ組み立てられる過程を説明する斜視図。
【図8】下部荷重部と上部荷重部にベーンが嵌められる溝部を形成した状態を示す断面図。
【図9】本発明の第2実施例による内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法を説明する工程図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施例]
図3は本発明の第1実施例による内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法を説明するための順序図であり、図4は本発明であるディスクロータの製造方法に適用される各構成要素を示した図面である。
【0023】
図3及び図4を参照すれば、本発明による内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法は、炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造するS210段階;とそれぞれ別個の工程を通じて製造された荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300を一つの構造物に組み立てるS220段階;及び組み立てられた前記一つの構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行するS230段階を含んで構成する。
【0024】
本発明を構成する炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する前記S210段階は、優れた耐熱性、高温強度及び高温寸法安定性を有する炭素−炭素複合材料を用意した後、機械的加工により前記荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をディスクロータに適用される所定の形状に形成する過程である。
【0025】
好ましい実施例によって、前記S210段階における、前記炭素−炭素複合材料は炭素繊維を補強した炭素繊維強化ポリマー複合材料(Carbon Fiber Reinforced Polymer;CFRPを製造するS210−1段階;及び前記炭素繊維強化ポリマー複合材料を高温熱処理または緻密化して炭素−炭素複合材料を製造するS210−2段階を包含する工程により形成されることができる。
【0026】
また、好ましい実施例によって、機械的加工により前記荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をディスクロータに適用される所定の形状に形成する作業は前記S210−2段階炭素−炭素複合材料を製造する段階で遂行することができる。本実施例では、炭素−炭素複合材料を製造する段階S210−2段階で上板100上部荷重部110及び上部摩擦面120と下板200下部荷重部210及び下部摩擦面220を平面の円形ディスク形状に機械加工し、ベーン300部分も前記上板100及び下板200と同一の炭素−炭素複合材料を用いて所定の形状に機械加工した。平面の円形ディスク形状を有する上板100と下板200はその形状が簡単であるので、厳格な加工公差を適用しても比較的容易に加工することができる。また、ベーン300もやはり、ウォーターゼット(Water-jet)などの切削加工装置を用いて、要求されるブレーキの特性に応じ多様
な形状に製造することができる。例えば、図5に示したように、本実施例におけるベーン
300は要求されるブレーキの特性に応じ、螺旋形600、直線形700、及び円筒状のピン800などの形状に多様に製造することができた。
【0027】
本実施例における荷重部110、210、ベーン300、及び摩擦面120、220は同一の組成比の炭素−炭素複合材料に形成することもできるが、一方、荷重部110、210とベーン300は同一の組成比の炭素−炭素複合材料により形成し、摩擦面120、220は荷重部110、210及びベーン300と異なる組成比の材料により形成することもできる。
【0028】
好ましい実施例によって、荷重部110、210、ベーン300、及び摩擦面120、220を同一の組成比の炭素−炭素複合材料で形成する場合には、荷重部110、210、ベーン300、及び摩擦面120、220のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用できる。この場合、荷重部110、210、ベーン300、及び摩擦面120、220のための炭素−炭素複合材料の密度は10〜17g/?の値を有するように処理して溶融珪素含浸処理の前、後述する組み立てられた一つのディスクロータ構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行するS230段階を遂行した後の、前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220は30〜70wt%のC成分、2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で合成される。
【0029】
好ましい実施例によって、荷重部110、210とベーン300を同一の組成比の炭素−炭素複合材料で形成し、摩擦面120、220を荷重部及びベーン300と異なる組成比の炭素−炭素複合材料で形成する場合には、荷重部110、210及びベーン300のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用し、摩擦面120、220のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以下の炭素繊維を補強材として適用することができる。この場合、溶融珪素含浸前の前記荷重部110、210と前記ベーン300のための前記炭素−炭素複合材料の密度は10〜17g/?の値を有するようにし、溶融珪素含浸前の前記摩擦面120、220のための前記炭素−炭素複合材料の密度は05〜15g/?の値を有するように処理して溶融珪素含浸処理の前、後述する組み立てられた一つのディスクロータ構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行するS230段階を遂行した後の、前記摩擦面120、220は55〜99wt%のSiC成分と1〜45wt%のC成分の組成比で合成され、前記荷重部110、210及び前記ベーン300は30〜70wt%のC成分、2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で合成される。
【0030】
即ち、セラミックブレーキディスクロータの場合、特別に要求される制動性能耐熱性、高温強度などを満たすために荷重部またはベーンと異なる素材特性を有する摩擦面が必要な場合があり、この際は、前述したように長さ1mm以下の炭素繊維を炭素−炭素複合材料のための補強材として適用し、前記炭素−炭素複合材料の密度は05〜15g/?の値を有するように処理して、溶融珪素含浸処理により55〜99wt%のSiC成分と1〜45wt%のC成分の組成比で合成した。これにより、セラミックブレーキディスクロータの使用寿命を延長することができ、制動時のディスクロータの摩擦係数は035以上で非常に高かった。
【0031】
本発明を構成する、炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する前記S210段階では、ベーン300の形状を別途に製造するので形状に対する制約を殆ど受けず、内部冷却チャネル400を形成することができる。つまり、セラミックブレーキディスクロータのベーン300形状は制動時に発生される摩擦熱を効果的に放出するために多様かつ複雑な内部冷却チャネル形状を要求する場合が多く、本発明
ではこのようなセラミックブレーキディスクロータの内部冷却チャネル400を螺旋形600、直線形700、及び無秩序な配列800などに多様に製造することができる。
【0032】
本発明を構成する、それぞれ別個の工程を通じて製造された荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300を一つの構造物に組み立てる前記S220段階は前記荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300を一つの構造物に堅固に固定する過程である。
【0033】
また、図6及び図7は各々荷重部110、210、ベーン300、摩擦面120、220がそれぞれ組み立てられる過程を説明するための図面であり、図8は下部荷重部210と上部荷重部110にベーンが嵌められる溝部500を形成した状態を示した断面図である。
【0034】
図6及び図7を参照すると、本発明の荷重部110、210、ベーン300、及び摩擦面120、220のそれぞれの結合界面には黒鉛接着剤を適用して各々の部品を一つの構造物に堅固に固定することができる。
【0035】
さらに、好ましい実施例によって、下部荷重部210と上部荷重部110にベーンが嵌められる溝部500を各々機械加工で予め形成し図8参照、ベーン300を前記それぞれの溝部500に嵌め込んで組み立てることにより、上板100上部荷重部110及び上部摩擦面120とベーン300と下板200下部荷重部210及び下部摩擦面220を一つの構造物に堅固に固定することができる。
【0036】
本発明を構成する、組み立てられた前記一つの構造物に対して溶融珪素含浸(Liquid Silicon Melt Infiltration;SMI処理を遂行する前記S230段階は前記S210段階で炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの各部品の形状を製造し、前記S220段階で各部品の形状が組み立てられたディスクロータ構造物の、炭素−炭素複合材料の気孔に液状珪素を浸透させる過程である。
【0037】
このようなS230段階の過程溶融珪素含浸により、ディスクロータの各部品間の組立界面には各部品自体よりも多くの量のSiC成分が合成される。
また、このようなS230段階の過程溶融珪素含浸により、ディスクロータの各部品間の組立界面と各部品自体では、完全なる一体型のディスクロータを形成する化学反応が起こり、これにより最終的なセラミックブレーキディスクロータが製造される。
【0038】
好ましい実施例によって、このような溶融珪素含浸S230段階処理はディスクロータの特性に応じ1回以上繰り返して遂行することができる。
[第2実施例]
本発明の第2実施例による内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法は、前記第1実施例の荷重部110、210が摩擦面120、220機能を有すると共に摩擦面120、220を省略した構成を除いては、前記第1実施例の構成と同一である。また、本発明の第2実施例で、前記第1実施例と同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付与し、その説明を省略することにする。
【0039】
図9は本発明の第2実施例による内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法を説明するための順序図である。
図9を参照すると、本発明の第2実施例による、内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法は、炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの上部荷重部110、下部荷重部210及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造するS610段階;それぞれ別個の工程を通じて製造された前記上部
荷重部110、下部荷重部210及びベーン300を一つの構造物に組み立てるS620段階;及び組み立てられた前記構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行するS630段階を含んで構成する。
【0040】
本発明の第2実施例を構成する、炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの上部荷重部110、下部荷重部210及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する前記S610段階は、優れた耐熱性、高温強度及び高温寸法安定性を有する炭素−炭素複合材料を用意した後、機械的加工により上/下部荷重部110、21
0及びベーン300をディスクロータに適用される所定の形状に形成する過程である。
【0041】
好ましい実施例によって、前記S610段階における、前記炭素−炭素複合材料は、炭素繊維を補強した炭素繊維強化ポリマー複合材料(Carbon Fiber Reinforced Polymer;CFRPを製造するS610−1段階;及び前記炭素繊維強化ポリマー複合材料を高温熱処理または緻密化して炭素−炭素複合材料を製造するS610−2段階を包含する工程により形成されることができる。
【0042】
また、好ましい実施例によって、機械的加工により上/下部荷重部110、210及び
ベーン300をディスクロータに適用される所定の形状に形成する作業は前記S610−2段階炭素−炭素複合材料を製造する段階で遂行することができる。本実施例では、炭素−炭素複合材料を製造する段階S610−2段階で上板100即ち、上部荷重部110と下板200即ち、下部荷重部210を平面の円形ディスク形状に機械加工し、ベーン300部分も前記上板100及び下板200と同一の炭素−炭素複合材料を用いて所定形状に機械加工した。平面の円形ディスク形状を有する上板100と下板200はその形状が簡単であるので、厳格な加工公差を適用しても比較的容易に加工することができた。また、ベーン300もやはり、ウォータージェット(Water-jet)などの切削加工装置を用いて、
要求されるブレーキの特性に応じ多様な形状に製造することができた。例えば、図5に示したように、ベーン300は要求されるブレーキの特性に応じ、螺旋形600、直線形700、及び円柱状のピン800などの形状に多様に製造することができた。
【0043】
本実施例では、上/下部荷重部110、210とベーン300を同一の組成比の炭素−
炭素複合材料で形成した。
本実施例において、荷重部110、210及びベーン300のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用した。この場合、上/下部荷重部1
10、210及びベーン300のための炭素−炭素複合材料の密度は10〜17g/cm
の値を有するように処理して溶融珪素含浸処理の前、後述する組み立てられた一つのディスクロータ構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行するS630段階を遂行した後の、前記上/下部荷重部110、210及び前記ベーン300は30〜70wt%のC成分、
2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で合成される。
【0044】
本実施例において、炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの上/下部荷重部110、210、及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造す
る前記S610段階では、ベーン300の形状を別途に製造するので形状に対する制約を殆ど受けず、内部冷却チャネル400を形成することができる。つまり、セラミックブレーキディスクロータのベーン300形状は制動時に発生される摩擦熱を効果的に放出するために多様かつ複雑な内部冷却チャネル400形状を要求する場合が多く、本発明ではこのようなセラミックブレーキディスクロータの内部冷却チャネル400を螺旋形600、直線形700、及び無秩序な配列形800などで多様に製造することができる図5参照。
【0045】
本実施例において、それぞれ別個の工程を通じて製造された上/下部荷重部110、2
10及びベーン300を一つの構造物に組み立てる前記S620段階は前記上/下部荷重
部110、210及びベーン300を一つの構造物に堅固に固定する過程である。
【0046】
本発明の上/下部荷重部110、210の各々及びベーン300の結合界面には黒鉛接
着剤を適用してそれぞれの部品を一つの構造物に堅固に固定することができる。
また、好ましい実施例によって、下部荷重部210と上部荷重部110にベーン300が嵌められる溝部500を各々機械加工で予め形成し図8参照、ベーン300を前記それぞれの溝部500に嵌め込んで組み立てることにより、上板100即ち、上部荷重部110とベーン300と下板200即ち、下部荷重部210を一つの構造物に堅固に固定することができる。
【0047】
本発明を構成する、組み立てられた前記一つの構造物に対して溶融珪素含浸(Liquid Silicon Melt Infiltration;SMI処理を遂行する前記S630段階は前記S610段階で炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの各部品の形状を製造し、前記S620段階で各部品の形状が組み立てられたディスクロータ構造物の、炭素−炭素複合材料の気孔に液状珪素を浸透させる過程である。
【0048】
このようなS630段階の過程溶融珪素含浸により、ディスクロータの各部品間の組立界面には各部品自体炭素−炭素複合材料の内部よりも多くの量のSiC成分が合成される。
【0049】
また、このようなS630段階の過程溶融珪素含浸により、ディスクロータの各部品間の組立界面と各部品では、完全なる一体型のディスクロータを形成する化学反応が起こり、これにより最終的なセラミックブレーキディスクロータが製造される。
【0050】
好ましい実施例によって、このような溶融珪素含浸S630段階処理はディスクロータの特性に応じて1回以上繰り返して遂行することができる。
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したことに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能である。従って、本発明に開示された実施例らは本発明の技術思想を限定するためのものでなくて説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるのではない。本発明の保護範囲は以下の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれると解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0051】
100:上板、110:上部荷重部、120:上部摩擦面、200:下板、210:下部荷重部、220:下部摩擦面、300:ベーン、400:冷却チャネル、500:溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する段階;
bそれぞれ別個の工程を通じて製造された前記荷重部110、210、摩擦面120、220及びベーン300を一つの構造物に組み立てる段階;及び
c組み立てられた前記一つの構造物に対して溶融珪素含浸(Liquid Silicon Melt Infiltration)処理を遂行する段階を包含することを特微とする内部冷却チャネルを有するセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項2】
前記a段階における、前記炭素−炭素複合材料は、
a1炭素繊維を補強した炭素繊維強化ポリマー複合材料(Carbon Fiber Reinforced Polymer;CFRPを製造する段階;及び
a2前記炭素繊維強化ポリマー複合材料を高温熱処理または緻密化して炭素−炭素複合材料を製造する段階を包含する工程により形成されることを特徴とする内部冷却チャネルを有する、請求項1記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項3】
前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220は同一の組成比の炭素−炭素複合材料により形成されることを特徴とする、請求項2記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項4】
前記荷重部110、210と前記ベーン300は同一の組成比の炭 素−炭素複合材料
により形成され、前記摩擦面120、220は前記荷重部110、210及び前記ベーン300と異なる組成比の炭素−炭素複合材料により形成されることを特徴とする、請求項2記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項5】
前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用し、
前記溶融珪素含浸処理を遂行した後の前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220は30〜70wt%のC成分、2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で合成されることを特徴とする、請求項3記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項6】
前記荷重部110、210及び前記ベーン300のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以上の炭素繊維を補強材として適用し、前記摩擦面120、220のための炭素−炭素複合材料には長さ1mm以下の炭素繊維を補強材として適用し、
前記溶融珪素含浸処理を遂行した後の前記摩擦面120、220は55〜99wt%のSiC成分と1〜45wt%のC成分の組成比で合成され、
前記溶融珪素含浸処理を遂行した後の前記荷重部110、210及び前記ベーン300は30〜70wt%のC成分、2〜15wt%のSi成分及び35〜65wt%のSiC成分の組成比で合成されることを特徴とする、請求項4記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項7】
前記ベーン300の形状は、螺旋形、直線形、またはピン形のうちのいずれかの形状に製造されることを特徴とする、請求項1記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項8】
溶融珪素含浸処理前の前記荷重部110、210、前記ベーン300、及び前記摩擦面120、220のための前記炭素−炭素複合材料の密度は10〜17g/?の値を有するこ
とを特徴とする、請求項3記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項9】
溶融珪素含浸前の前記荷重部110、210と前記ベーン300のための前記炭素−炭素複合材料の密度は10〜17g/?の値を有し、溶融珪素含浸前の前記摩擦面120、220のための前記炭素−炭素複合材料の密度は05〜15g/?の値を有することを特徴とする、請求項4記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項10】
a炭素繊維を補強した炭素−炭素複合材料を用いてディスクロータの上部荷重部110、下部荷重部210及びベーン300をそれぞれ別個の工程を通じて製造する段階;
bそれぞれ別個の工程を通じて製造された前記上部荷重部110、下部荷重部210及びベーン300を一つの構造物に組み立てる段階;及び
c組み立てられた前記構造物に対して溶融珪素含浸処理を遂行する段階を包含することを特徴とするセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項11】
前記b段階における前記組み立ては、
前記下部荷重部210と前記ベーン300の間及び前記ベーン300と前記上部荷重部110の間に黒鉛接着剤を適用して組み立てることを特徴とする、請求項10記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項12】
前記b段階における前記組み立ては、
前記下部荷重部210と前記上部荷重部110に前記ベーン300が嵌められる溝部500をそれぞれ予め形成し、前記ベーン300を前記
それぞれの溝部500に嵌め込んで組み立てることを特徴とする、請求項10記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項13】
上部荷重部110と上部摩擦面120の間及び下部荷重部210と下部摩擦面220の間に各々黒鉛接着剤を適用して上板100及び下板200をそれぞれ組み立てた後に、組み立てられたそれぞれの上板100及び下板200にベーン300を最終的に組み立てることを特徴とする、請求項4記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項14】
上部荷重部110と下部荷重部210に前記ベーン300が嵌められる溝部500をそれぞれ予め形成し、前記ベーン300を前記それぞれの溝部500に嵌め込んで前記最終的に組み立てることを特徴とする、請求項13記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項15】
組み立てられた前記一つの構造物に対して前記溶融珪素含浸処理を遂行することにより、組立界面と炭素−炭素複合材料内部における化学反応を通じて完全なる一体型のディスクロータに製造されることを特徴とする、請求項1記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。
【請求項16】
前記溶融珪素含浸処理により、前記組立界面には炭素−炭素複合材料内部よりも多くの量のSiC成分が合成されることを特徴とする、請求項15記載のセラミックブレーキディスクロータの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−501955(P2012−501955A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526797(P2011−526797)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007456
【国際公開番号】WO2010/038924
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(506365669)ダック カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DACC CO.LTD.
【Fターム(参考)】