説明

再生可能エネルギーの蓄電システム

【課題】再生可能エネルギー由来の発電電力の平準化対策を発電側で分担することができ、相対取引を可能とするシステムの提供。
【解決手段】再生可能エネルギー発電装置と、再生可能エネルギー由来の電力を蓄電する蓄電装置と、再生可能エネルギー発電装置からの出力電力を所定電圧に変換する発電装置用DC−DCコンバータと、蓄電装置および発電装置用DC−DCコンバータが接続される直流母線と、蓄電装置からの直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に逆変換し負荷および電力系統に供給するインバータを有する系統連系装置と、発電量の予想データを受信可能な制御装置と、を備えた蓄電システムであって、前記制御装置が、発電量の予想データおよび消費電力予想に基づき充電残量の目標値を設定し、充電残量の目標値と実績値に基づき系統連系装置の出力を一定時間単位で変化させる制御を行うことを特徴とする再生可能エネルギーの蓄電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅等で発電された太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーの蓄電システムにおいて、送電電力や配電線電圧を制御し、また、相対取引を行うことを可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策として再生可能エネルギーの導入促進が進められており、戸建て住宅等においても小型(数kW)の太陽光発電やマイクロ風力発電装置(1kW程度)の導入が進められている。これらの再生可能エネルギー発電装置は通常電力会社の配電線に接続して運転され、発電量が消費量を上回る場合は、電力会社へ売電が行われる。
【0003】
現状の電気料金制度においては、変動の大きい(電力の品質が低い)再生可能エネルギーによる発電電力であっても、電力会社に無条件で高価に売電することができる。このような条件下においては、再生可能エネルギーにより発電を行う者は、その出力変動や配電線への影響は一切考えず、全量電力会社に引き取ってもらうことが最も経済的であるので、配電線事故時に発電装置を切り離す保護継電器の設置以外は特段の対策が取られていない。しかし、多数台の再生可能エネルギー発電装置が電力会社の配電線に接続されるようになると、下記のような配電線の電圧および送電容量に関する問題が発生することが知られている。
【0004】
・再生可能エネルギー発電装置は発電量の変動が大きく、配電線の電圧変動(フリッカ)の原因になる。
・再生可能エネルギー発電装置からの配電線への送電が多くなると、配電線電圧が上昇し許容値を逸脱するとともに、現状の発電装置では送電が自動で抑制され、発電装置が有効に活用できない。
・再生可能エネルギー発電装置からの配電線への送電があまりに多くなると、配電線の送電容量を超えるため送電ができなくなり、場合によっては停電する。また、電力会社の周波数調整能力を逸脱する場合は周波数が不安定になる。
【0005】
現時点では再生可能エネルギーによる発電量が少ないため大きな問題は生じていないが、近い将来、政府関連機関が試算する如く再生可能エネルギーの発電量が数十倍以上となった場合には、電力会社の設備投資への影響は甚大である。すなわち、再生可能エネルギー発電の大量送電は、発電量の変動による配電線電圧変動、大量送電による配電線電圧上昇、再生可能エネルギー発電量の過剰による需給調整能力不足等を発生させるが、これらの対策は電力会社に委ねられると考えられるからである。かかる場合、電力会社は、電圧調整用静止型無効電力補償装置(SVC)の設置、需給調整用大型蓄電装置の設置、配電線の増強(2万V配電、低圧系の3相4線化)等を行う必要が生じることとなる。
【0006】
他方、スマートグリッドと称して再生可能エネルギー発電装置が大量導入された際の負荷平準化対策が検討されている。再生可能エネルギー発電装置からの配電線への送電があまりに多い場合に、中央司令所などの外部から発電抑制指令を出すことが検討されている(例えば、特許文献1)。しかし、外部からの通信手段として全戸に光ファイバなどの専用回線を敷設し、個々の発電装置に発電抑制指令を送信する場合には、インフラ整備に膨大な費用が必要となる。
【0007】
現在実用化されている戸建て住宅等の再生可能エネルギー発電装置および蓄電装置の構成は、図1のとおりである。
太陽光発電装置1は、パワーコンディショナー4で発電量が最大になるよう制御(MPPT制御)され、送電量は太陽光強度の変動がそのまま反映される。パワーコンディショナー4は、太陽電池出力電圧を調整するDC−DCコンバータと電流制御型インバータで構成され、このインバータは通常力率100%で運転される(後述する無効電力制御機能はない。)。
【0008】
風力発電装置2は、出力電圧が定格電圧になるよう系統連系インバータと接続され、風の強度をそのまま反映した(発電量は風速の三乗に比例)送電量となる。また、戸建て住宅等で用いられる小型の風力発電装置は一般に永久磁石発電機を使用しており、出力は周波数の変動する交流(〜100Hz程度)であるため、コンバータ6で整流され直流出力とされる。系統連系装置5は、発電装置出力電圧を調整するDC−DCコンバータと電流制御型インバータで構成され、インバータは通常力率100%で運転される(後述する無効電力制御機能はない。)。
蓄電装置3は、夜間の深夜電力で蓄電し、昼間や夕刻の電力消費量の多い時間帯に放電する。蓄電装置3の充放電は双方向インバータ7により充放電が制御され、このインバータは通常力率100%で運転される(後述する無効電力制御機能はない。)。なお、系統電力で充電した蓄電池からの送電は禁止されているため、同一場所の負荷に見合う出力に制御される。
【0009】
これまで、太陽光発電装置1、風力発電装置2、蓄電装置3は、それぞれ単独で運転し、蓄電装置3を使った送電量の調整など協調した運転制御は行われていない。これは現状の再生可能エネルギー買い取り制度では、蓄電するよりそのまま送電した方が経済的に有利(買電単価より売電単価が約2倍高価)であり、また、現状の装置構成では各発電装置と蓄電装置3の協調制御が難しいためである。したがって、大きく変動する電気をそのまま配電線に垂れ流しており、電圧も成り行きまかせになっている。しかし、このような運用は、配電線の電圧変動や電力会社の需給調整能力不足を招く原因となることは上記で指摘したとおりである(すでに大型風力発電所は電力会社の需給調整能力を超え新規導入が困難になっている。)。
【0010】
従来知られている太陽光発電装置の変動抑制装置の一例を図2に示す(特許文献2参照)。この装置は、太陽光発電量の変動を小型の蓄電装置3で吸収しようとするもので、太陽光発電量に合わせて蓄電装置3の充放電量を制御している。これは秒オーダの早い変動を吸収することを目的としている。しかし、この変動抑制装置は速度の早い変動は吸収し電圧の変動抑制には寄与するものではあるが、電圧上昇抑制や発電量抑制には寄与するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−327080号公報
【特許文献2】特開2009−033802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
再生可能エネルギーの発電量の増加に伴い既存の電力インフラを全面的に見直すことは、電力会社に過度の設備投資を強いることとなるが、これに伴う電気料金の改定は国民にも経済的負担を課することになりかねない。本発明は、既存の配電インフラを利用して安定して再生可能エネルギー由来の電力を送電することができる蓄電システムを提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、再生可能エネルギー由来の発電電力の平準化対策を発電側(ユーザーサイド)で分担することができる蓄電システムを提供することを目的とする。
【0013】
また、再生可能エネルギー発電電力を相対取引で売電することも提案されているが、売電のためには契約した電力を確実に送電する必要があるところ、発電量が変動し予想ができない再生可能エネルギー発電でどのように確実に送電するかその手法は明らかになっていない。再生可能エネルギー発電電力の相対取引を可能とすることも、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した再生可能エネルギー由来の発電電力の平準化対策を発電側(ユーザーサイド)でそれ程費用をかけないでできる範囲で行えれば、インフラ設備投資などの対策費を大幅に減らすことができ、トータルで見た対策費用を大幅に削減することができる。
また、発電者(ユーザ)にとっても発電した再生可能エネルギー由来の電力を相対取引で高く売電する機会を得ることができることとなれば、そのメリットは非常に大きい。発電側(ユーザーサイド)での対策の具体的な手段としては、例えば次の手段が考えられる。
・再生可能エネルギー発電装置の発電量の変動を、蓄電装置を使って平準化する。
・再生可能エネルギー発電装置の系統連系装置(インバータ)に電圧制御機能(無効電力制御機能)を設け、配電線電圧が目標値を逸脱する場合は系統連系装置で無効電力を調整し、配電線電圧を目標値の範囲内に収める。
・配電線の電圧が異常な場合や送電容量を逸脱する場合は、再生可能エネルギー発電装置からの配電線への送電を抑制し、余った発電電力は蓄電装置に蓄電する。蓄電装置の充電可能量が少なくなった場合は発電量を抑制する。
・配電線の電圧や送電量の監視を電力会社で行い、電圧調整や送電抑制指令を送信し、系統連系装置は指令に応じて無効電力や送電量を調整する。
・蓄電装置の運転を支援するため、電力会社は太陽光発電量や風力発電量を予想し、予想データを送信する。蓄電装置の制御装置は、予想データと設置箇所の消費電力予想に基づき蓄電装置の蓄電量を調整する。
【0015】
以上の手段を備えることで、次の効果を奏することが可能となる。
・蓄電装置にすでに蓄電している電力を一定出力で安定的に送電することが可能となる。これにより、再生可能エネルギー発電電力を相対取引で売電することが可能となる。送電中に発電が行われると、蓄電装置の蓄電量は当初予想した送電処理終了後の量より増え、さらに先の時間での送電が可能となる。このように蓄電量を見ながら先の時間帯の送電量を決めることができる。
・相対取引で売電する場合は入札情報のやりとりが必要なため、インターネット等の通信回線が必要である。一方、電力会社に売電するだけの場合は、電力会社からの電圧調整、送電量調整などの指令を一方的に受けるだけ(片方向通信)でよいため、あえて専用回線を用意しなくても例えば無線データ放送などで指令を送信することで十分用が足り、通信インフラ投資も大幅に削減できる。
【0016】
従来、蓄電装置は高価なため戸建て住宅等への大量導入は不可能と考えられており、政府関連機関のスマートグリッド検討においても検討されていなかった。しかしながら、近年、電気自動車の普及が見込まれ、電気自動車で使用済みの蓄電池を蓄電装置用に二次利用する(電気自動車用としては寿命となった蓄電池が、蓄電装置用途には十分な性能を有していることがすでに確認されている)ことでコストの課題を解決することができるので、蓄電装置の大量導入による実用的なシステムの構築も十分実現可能である。
【0017】
また、将来的には再生可能エネルギーによる発電電力の買い取り条件が見直されることも考えられる。例えば、再生可能エネルギーによる発電電力の品質により価値(価格)差を設ける状況が生じることが考えられ、この場合、再生可能エネルギー発電を行う者は、その電力の品質が高い(安定出力)と高価格で販売でき、品質が低い(変動が大きい)場合は安価で販売するしかないため、蓄電装置に蓄電し送電量を平準化する動機が発生する。この際、配電線の電圧対策や電力需給調整対策についても、発電側(ユーザーサイド)の貢献に応じて、これを売電価格に反映させることが公平である。具体的には送電量の平滑化による電圧変動防止、系統連系装置の無効電力制御機能付加によるSVC代替、送電量調整による需給運用への協力などが考えられる。
【0018】
本発明はこのような背景のもとなされたものであり、以下の技術手段から構成される。
第1の発明は、再生可能エネルギー発電装置と、再生可能エネルギー由来の電力を蓄電する蓄電装置と、再生可能エネルギー発電装置からの出力電力を所定電圧に変換する発電装置用DC−DCコンバータと、蓄電装置および発電装置用DC−DCコンバータが接続される直流母線と、蓄電装置からの直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に逆変換し負荷および電力系統に供給するインバータを有する系統連系装置と、発電量の予想データを受信可能な制御装置と、を備えた蓄電システムであって、前記制御装置が、発電量の予想データおよび消費電力予想に基づき充電残量の目標値を設定し、充電残量の目標値と実績値に基づき系統連系装置の出力を一定時間単位で変化させる制御を行うことを特徴とする再生可能エネルギーの蓄電システムである。
第2の発明は、第1の発明において、さらに、蓄電装置の異常を検出する手段と、蓄電装置の異常検出時に蓄電装置を分離し、発電装置用DC−DCコンバータと系統連系装置を直結する切替機構と、を備えることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記発電装置用DC−DCコンバータが、出力電流を所定電流に保つ定出力電流制御機能、および、直流母線が所定電圧以上となった場合に出力を制限する出力電圧制限機能を備えることを特徴とする。
第4の発明は、第2または3の発明において、前記系統連系装置が、直流母線が所定電圧以下となった場合に出力を絞り込む入力電流制限機能を備えることを特徴とする。
【0019】
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、前記制御装置が、制御指令信号を受信する手段と、受信した制御指令信号に基づき系統連系装置から電力系統への送電量を制御する手段と、を備えることを特徴とする。
第6の発明は、第5の発明において、前記系統連系装置が、電力系統へ供給する無効電力を調整する機能を備え、前記制御装置が、受信した制御指令信号に基づき系統連系装置が電力系統へ供給する無効電力を一定時間単位で段階的に調整する手段を備えることを特徴とする。
第7の発明は、第6の発明において、前記系統連系装置が、単相インバータを備え、単相インバータの出力電流の位相を配電線電圧より進ませて無効電力を消費させることにより無効電力を調整することを特徴とする。
第8の発明は、第5ないし7のいずれかの発明において、前記制御装置が、受信した制御指令信号に基づき系統連系装置から電力系統への供給を停止する転送遮断機能を備えることを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第1ないし8のいずれかの発明において、前記制御指令信号を受信する手段が、放送電波による制御指令信号を受信する手段であることを特徴とする。
第10の発明は、第1ないし9のいずれかの発明において、前記制御装置が、有線回線を介して双方向通信を行う手段を備えることを特徴とする。
第11の発明は、第1ないし10のいずれかの発明において、さらに、通信網を介して再生可能エネルギー由来の電力の売電情報を電力取引所に送信する手段と、通信網を介して電力取引所から落札情報を受信する手段と、受信した落札情報に基づき蓄電装置から指定された時間帯に指定された電力量を送電する手段を備えることを特徴とする。
【0021】
第12の発明は、再生可能エネルギー発電装置と、再生可能エネルギー由来の電力を蓄電する蓄電装置と、再生可能エネルギー発電装置からの出力電力を所定電圧に変換する発電装置用DC−DCコンバータと、蓄電装置および発電装置用DC−DCコンバータが接続される直流母線と、蓄電装置からの直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に逆変換し負荷および電力系統に供給するインバータを有する系統連系装置と、制御装置と、を備えた蓄電システムであって、通信網を介して再生可能エネルギー由来の電力の売電情報を電力取引所に送信する手段と、通信網を介して電力取引所から落札情報を受信する手段と、受信した落札情報に基づき蓄電装置から指定された時間帯に指定された電力量を送電する手段を備えることを特徴とする再生可能エネルギーの蓄電システムである。
第13の発明は、第1ないし12のいずれかの発明において、前記再生可能エネルギー発電装置が、太陽光発電および/または風力発電の発電装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、再生可能エネルギーの発電量の変動を、蓄電装置を使って平準化することができるので、再生可能エネルギー由来の電力を品質を確保して送電することが可能となる。
また、系統連系装置に電圧制御機能を設けることにより、配電線電圧が目標値を逸脱する場合は系統連系装置により無効電力を調整し、配電線電圧を目標値の範囲内に収めることが可能である。
【0023】
また、受信した太陽光発電量や風力発電量の予想データと設置箇所の消費電力予想に基づき蓄電装置の蓄電量を調整することが可能である。
また、配電線の電圧が異常な場合や送電容量を逸脱する場合には、電力会社等からの指令に基づき再生可能エネルギー発電電力の配電線への送電を抑制することも可能となる。
さらには、再生可能エネルギー由来の電力を相対取引することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の戸建て住宅等の再生可能エネルギー発電装置および蓄電装置の構成図である。
【図2】従来の太陽光発電装置の変動抑制装置の構成図である。
【図3】本発明に係る再生可能エネルギーの蓄電システムの一例を示す構成図である。
【図4】系統連系インバータの出力制御例を示す図である。
【図5】本発明に係る蓄電装置の運転制御例を示す図である。
【図6】本発明に係る系統連系装置の単相インバータの進み力率運転の制御例を示す図である。
【図7】配電線を監視するための設備の構成例を示す図である。
【図8】配電線電圧の調整状況の例を示す図である。
【図9】配電線異常時の系統連系インバータの制御方法の例を示す図である。
【図10】制御信号の一例を示す図である。
【図11】蓄電装置接続時の各DC−DCコンバータの運転方法を示す図である。
【図12】蓄電装置切り離し時の各DC−DCコンバータの運転方法を示す図である。
【図13】蓄電装置切り離し時の発電−送電のバランス機能を説明するための図である。
【図14】発電量の予想例を示す図である。
【図15】太陽光発電特性の一例を示す図である。
【図16】蓄電装置蓄電残量(SOC)目標値の例を示す図である。(a)晴〜曇 風なし、(b)雨 風なし、(c)晴〜曇→雨 風なし。
【図17】蓄電装置蓄電残量(SOC)目標値の例を示す図である。(a)雨→晴〜曇 風なし、(b)晴〜曇 風弱、(c)雨 風弱。
【図18】蓄電装置蓄電残量(SOC)目標値の例を示す図である。(a)晴〜曇→雨 風弱、(b)雨→晴〜曇 風弱、(c)晴〜曇 風中〜強。
【図19】蓄電装置蓄電残量(SOC)目標値の例を示す図である。(a)雨 風中〜強、(b)晴〜曇→雨 風中〜強、(c)雨→晴〜曇 風中〜強。
【図20】蓄電装置蓄電残量(SOC)目標値の例を示す図である。(a)晴 風なし 送電抑制予報あり、(b)晴 風弱 送電抑制予報あり、(c)晴 風中〜強 送電抑制予報あり。
【図21】発電量・送電量の例を示す図である。(a)晴 風なし、(b)曇 風なし、(c)晴→曇 風なし。
【図22】発電量・送電量の例を示す図である。(a)晴→曇 風中、(b)晴 風なし 昼間送電抑制あり。
【図23】実施例2に係る蓄電システムの構成図である。
【図24】実施例2に係る蓄電システムにおける入札手順を示す流れ図である。
【図25】相対取引がなされた場合における発電量、送電量および蓄電量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る再生可能エネルギーの蓄電システムの実施形態の一例を、図3ないし12を参照しながら説明する。
【0026】
[1]以下に説明する本発明の蓄電システムは、再生可能エネルギー発電装置として、太陽光発電装置1および風力発電装置2をそれぞれ1台備えている。太陽光発電装置1および風力発電装置2は、DC−DCコンバータ11,21で電圧調整の上、直流で直接蓄電装置3に接続する(図3参照)。これにより、従来発電装置の数と同数以上必要であったインバータの数を削減することが可能となった。また、再生可能エネルギーの発電量の変動は、蓄電装置3に吸収されるため、太陽光発電装置、風力発電装置などの再生可能エネルギー発電装置の接続台数および組み合わせを自由に設定することが可能である。
蓄電装置3は、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、リチウムイオン蓄電池など任意の蓄電池を用いることができるが、電気自動車で使用済みのリチウムイオン二次電池を用いることが費用対効果の観点からは好ましい。蓄電装置3には再生可能エネルギー由来の電力のみを蓄電し、系統電力からの充電は行わない。
全体制御装置10は、蓄電装置3、DC−DCコンバータ11,21、系統連系装置50等の監視制御を行うと共に、電力会社からの制御信号を受信する。
配電線との接続部位に買電・売電の電力量を検出する電力量計17が設けられている。なお、送受電電力(kW)を計測するため、電力量計はパルス発信装置付とする。
【0027】
[2]蓄電装置3に直結した系統連系装置50で配電線と接続する。従来は蓄電装置にDC−DCコンバータを接続していたが、本発明ではDC−DCコンバータを省略することにより蓄電装置の応答性を速くして、発電の変動を吸収させている。ただし、バッテリは直接充放電負荷を負担する(DC−DCコンバータの電流制限機能がない)ため、バッテリは比較的高性能なものを使用する必要がある。
系統連系装置50は、系統連系が可能となるように出力周波数および出力電圧を調節する機能を有している。さらに、本発明の系統連系装置50は、その出力を蓄電装置3の充電残量(SOC)が目標値に近くなるよう制御する点に特徴を有する。ただし、目標値になるよう通常のフィードバック制御を行うと出力がハンチングするため、一定時間毎(例えば10分毎)に充電残量(SOC)の目標値と実績値を比較して、その偏差と充電残量の変化速度に応じて系統連系装置50のインバータ出力を階段状に変化させる制御を行う(図4参照)。これにより一定時間の間(例えば10分間)系統連系装置50は一定出力となり、再生可能エネルギー発電の送電量の変動は大幅に緩和される。また、蓄電装置3の充電残量に応じて系統連系装置50の出力をさらに長時間(例えば30分〜1時間)一定出力とすることも可能であり、これにより蓄電した電力を相対取引で売電することも可能となる。系統電力から充電した蓄電装置からの送電は禁止されており、系統送電用の蓄電装置3に系統電力からの充電はできないこととの関係から、系統連系装置50においては双方向インバータでなく汎用インバータを用いる。
【0028】
また、系統連系装置50の運転状況を監視するため、インバータ交流出力の有効電力、無効電力(力率でも良い)、電圧、電流データを計測し全体制御装置10に取り込む。コストダウンのため、センサ16は系統連系装置制御用センサを共用している。保護継電器53は国の系統連系技術要件ガイドラインで決められたもの(単独運転検出継電器を含む)を設置するとともに、動作状況データを全体制御装置に取り込み、保護継電器動作時は異常復旧が確認され手動でリセット操作が行われるまで系統連系装置50は運転しない。
【0029】
また、発電量が極端に多く充電残量(SOC)が既定値(例えば75%)を超えた場合は、充電電圧が規定値を超えないよう充電電流を制限する必要が生じることから、DC−DCコンバータ11,21の出力を調整して発電量を抑制し、超過量に合わせて発電出力を最大0%まで階段状に抑制する。同様に蓄電残量が既定値(例えば30%)を下回った場合は、放電電圧が規定値を下回らないよう放電電流を制限する必要が生じることから、系統連系装置50の出力を調整して送電量を最大0%まで階段状に抑制する。さらに、蓄電装置3が異常の場合は切り離し、再生可能エネルギー発電用のDC−DCコンバータ11,21と系統連系装置50を直結する。このような蓄電装置の運転制御方法の例を図5に示す。
【0030】
[3]系統連系装置50は、無効電力調整機能を有している。
三相交流で配電線と接続されている場合は、インバータはすでに確立したp,q2軸理論により有効電力と無効電力を独立して制御可能である。すなわち、系統連系インバータ52を電力系統に接続し、無効電力指令に基づき電力系統へ無効電力を供給あるいは消費することで、配電線電圧の調整が可能である。なお、再生可能エネルギー発電装置が多数設置される場合は、配電線電圧は上昇するため、無効電力調整は無効電力を消費すること(配電線電圧を下げる)のみでよい。すでに三相インバータを用いる大型太陽光発電所等で無効電力調整による配電線電圧調整の実験が行われており、本発明でも同様の手法を用いればよい。
一方、単相交流で配電線と接続される場合は、インバータの有効電力と無効電力を独立して制御する理論は確立されていない。このため単相インバータで配電線と連系される小型の発電装置で無効電力調整が行われた例はない。そこで、本発明では系統連系インバータ52の出力電流の位相を配電線電圧より進ませることで無効電力を消費させる構成とした(図6参照)。ここで、国の系統連系技術要件ガイドラインによれば力率は80%以上とされているので、進み角は37°までとなる。
このように、本発明の蓄電システムは、系統連系インバータが三相交流出力、単相交流出力のいずれの場合にも配電線電圧調整に対応可能である。
【0031】
出力電流位相調整による無効電力制御は、無効電力だけを制御することはできず有効電力出力に比例した無効電力消費となる。また、皮相電流は大きくなるため有効電力出力が安定してないとかえって大きな電圧変動の原因となるため、有効電力出力が安定していることが必須である。また、インバータを進み力率運転可能にすると供給する電流は大きくなるため、インバータの電流容量は37°の進み運転(力率80%)を行う場合で25%大きくする必要があるが、装置のコスト増はわずかである。なお、単相インバータは三相にうまく配分して接続されないと相間の不平衡の原因となり、特に無効電力調整を行う場合は皮相電力が大きくなる分影響が大きくなるため、配電線各相への配分には注意が必要である。
【0032】
本発明は、所定区間内に設置された多数の系統連系装置50の無効電力調整を同時に行うことにより配電線電圧調整を行うことを特徴とする。配電線には小型の系統連系インバータが多数接続されることから、個々の調整能力はわずかであるが、同一配電線の同一区間内の全ての系統連系インバータを同じように無効電力を調整することで、電圧調整効果を得ることができる。すなわち、配電線電圧全体を監視している制御センターが各戸の系統連系装置50を同じ進み力率(例えば10°)に制御することにより電圧調整効果を得ることができる。ここで、個々の系統連系インバータで細かく配電線電圧調整を行うことはできないため、電圧調整は制御センターからステップ状に無効電力を調整する指令を送信することにより行う。すなわち、一定時間単位で無効電力の調整を段階的に行い、所望の電圧調整効果が得られた場合には、無効電力の調整を終了する。三相で配電線に接続している場合でも単相の場合と同様に無効電力をステップ状に変化させる。
なお、最終的な細かい電圧調整は、従来どおり電力会社の変圧器タップ調整や静止型無効電力補償装置(SVC)で行う必要がある。図7に配電線を監視するための設備の構成例を、図8に配電線電圧の調整状況の例を示す。
【0033】
[4]蓄電装置3の充電残量(SOC)目標値は、電力会社の制御センターから伝送される当日の太陽光発電・風力発電予想(図14参照)、および自所での消費パターンからいくつかある充電残量(SOC)目標値から選択する。充電残量目標値は、太陽光発電装置、風力発電装置および蓄電装置のそれぞれの容量によって調整する必要はあるが、基本的な考え方は下記のとおりである。
・夜間は極力送電を控える。したがって、風力発電量が多い場合は夜間に蓄電を行うこととなる。
・昼間は送電を行う。送電量をフラット化するため正午前後は蓄電し、朝夕は放電する。
・朝夕に消費が多い場合は、昼間に蓄電を行い朝夕の放電量を増やす。
・太陽光発電量が多く、昼間送電抑制が予想される場合は、朝方の蓄電量を減らし昼間の蓄電量を極力増やす。
【0034】
[5]配電線の異常時などには、所定区間内にある多数の全体制御装置10に電力会社の制御センターから一斉に制御指令を伝送し、それぞれ系統連系装置50は下記のような制御を行う(図9参照)。
【0035】
・配電線電圧が高い場合
配電線電圧が高い場合は、電圧が高い地域およびその上流の近傍装置に無効電力消費指令を出す。指令を受けた系統連系装置50は、通常の力率100%運転から進相運転を行う。進相運転の程度は3〜4ステップ程度用意し、1分程度の周期で調整を行い、調整が足らない場合にステップを進める。電圧が低下してきた場合は同様に1分程度の周期でステップを戻す。
【0036】
・配電線事故で配電線が系統分離した場合
個々の系統連系装置50は、単独運転防止保護継電器53を設置しており、単独運転を独自検出し系統連系インバータの運転を停止する。ここで、配電線内の発電量と消費量がバランスし、変電所からの電力供給がほとんど無く、同じ配電線内にディーゼルエンジン発電機のような同期発電機が存在する場合には、単独運転の検出感度が悪くなることが知られている。したがって、制御センターは配電線が系統分離した場合は即座に転送遮断指令を出し、系統連系装置50を確実に停止させる。
【0037】
・送電量が多すぎる場合
発電出力が多すぎて配電線容量を超過する場合や電力会社の周波数調整能力を超える場合は、系統連系装置50の出力を抑制する。まず、系統連系インバータ52は運転するが配電線には送電しない(自己消費分とバランスさせる)状態とし、さらに逼迫する場合はインバータ52を停止する。送電できず余った電力は蓄電装置3に蓄電され、蓄電装置3の充電残量が多くなった場合は発電を抑制し、最終的に蓄電装置3の充電能力に余裕がなくなれば発電を停止する。
【0038】
[6]再生可能エネルギーで発電した電力を相対取引で売電する場合、電力会社の配電線を使って買い手まで電力を託送する必要がある。現状の託送ルールでは、30分間単位で数時間先までの送電量を電力会社に連絡し、送電側は連絡した送電量を安定的に送電する義務を負い、受電側は連絡した送電量を受電する。仮に連絡した送電量を送電できなかった場合、送電側は電力会社にペナルティーを支払う必要がある。このため、従来は、太陽光発電や風力発電のように変動して量も確定しない電力は託送できなかった。この点、本発明のように蓄電装置3を備える構成であれば、蓄電された再生可能エネルギー電力の範囲内で安定的に送電を行うことができる。また、送電中に発電がされた場合にも、蓄電装置3に蓄電することができ、追加された電力をさらに先の時間帯の送電に利用することもできる。なお、自己消費がある場合は、系統連系装置50の出力は送電量と自己消費分を加えた電力とする必要があり、送電量が規定値になるよう系統連系装置50の出力を調整する。また、蓄電量は自己消費分を確保しておく。
蓄電した再生可能エネルギー電力の相対取引の方法として、売り手、買い手が入札に参加して価格が折り合った順に売買契約を結び、送電量を決定していくことが考えられる。相対取引が可能な蓄電システムの詳細については、実施例2の箇所で説明する。
【0039】
[7]配電線電圧全体を監視している制御センターから各戸の全体制御装置10への制御指令伝達を、専用回線を各戸に敷設して行うことも当然可能である。しかし、制御指令の伝達は、センターから各系統連系装置50への片方向通信で十分足りるため、設備および運用コスト削減の観点からは、放送方式を利用するのが好ましい。放送設備は専用の小電力無線機を利用しても良いし、デジタル一般放送(デジタル化AM放送やFM放送)の文字データ領域を利用しても良い。故意の妨害を防ぐため暗号化も必要である。
系統連系装置50が接続されている配電線名、配電線の区間名、制御信号が識別できれば良く、放送が受信できる範囲の対象配電線データを繰り返して送信する。繰り返すことで受信失敗の確率を減らすことができる。受信側では自己の配線線名、区間名を登録しておき、必要なデータのみ抽出する。また、制御信号として太陽光発電、風力発電の3〜6時間毎の予想も併せて送信する。図10に、系統連系装置50への制御指令信号例を示す。
【0040】
以下では、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
実施例1に係る再生可能エネルギーの蓄電システムは、太陽光発電装置1および風力発電装置2をそれぞれ1台備える図3に示す構成を有するものであり、既に説明した内容についてはここでは繰り返さない。以下では、実施例1に係る蓄電システムの制御方法およびシミュレーション結果について説明する。
[1]DC−DCコンバータ11,21およびインバータ52の運転制御
従来の系統連系装置では、配電線電圧が安定しているため太陽光発電等の発電電力をDC−DCコンバータを使って一定電圧に昇圧し、系統連系インバータで交流に変換して配電線に送電している。系統連系インバータは電流位相を配電線電圧に一致させ(力率100%運転)、系統連系インバータの出力電流を制御し、出力電力をフィードバックして発電量に応じた定出力運転を行っている(配電線電圧の変動にあわせて出力電流が変動する)。
【0042】
一方、実施例1の蓄電システムでは、次の手段が必要である。
・直流母線の電圧が蓄電装置3の蓄電残量(SOC)により大きく(25%程度)変動するため、発電装置用DC−DCコンバータ11,21の出力電圧を蓄電装置電圧に合わせて可変とできること。
・蓄電装置3が故障した場合、蓄電装置3を切り離し、各発電装置1,2と系統連系装置50を直結して運転できること。この際、複数の大きく変動する発電装置1,2の出力と系統連系装置50の出力をバランスさせることができること。
【0043】
上記に対応させるために、発電装置用DC−DCコンバータ11,21を出力電圧可変の定出力型とし、さらに蓄電装置3の過電圧充電を防止するため、所定電圧以上では急激に出力を絞り込む出力電圧制限機能を付加した。また、蓄電装置3の過放電を防止するため、系統連系DC−DCコンバータ51に、所定電圧以下では急激に出力を絞り込む入力電流制限機能を付加した。
【0044】
図11に示すように、通常運転時には、発電装置用DC−DCコンバータ11,21の運転点は、その時の蓄電装置3の電圧と太陽光発電装置1、風力発電装置2の出力により確定する。系統連系DC−DCコンバータ51の出力(系統連系インバータ52の出力に等しい)は制限内で任意に決めることができ、各発電装置1,2とインバータの出力の差が蓄電装置3の充放電量となる。
【0045】
図12に示すように、故障などにより蓄電装置3が切り離された場合、系統連系インバータ52の出力は、直流母線の電圧が一定になるよう制御する。発電装置用DC−DCコンバータ11,21は、その時の発電量に応じて定出力で運転される。
【0046】
図13に、蓄電装置3が切り離された場合の発電−送電のバランス機能の説明図を示す。
(1)通常時(発電量と送電量がバランスしている場合)は、発電装置用DC−DCコンバータ11,21は、その時点での発電量に応じて定出力運転(出力電流制御型コンバータで出力電力を計測して出力電力が目標値になるよう出力電流を制御する)を行う。系統連系装置50は、直流母線電圧が一定になるように系統連系インバータ52の出力(系統連系DC−DCコンバータ51の出力に等しい)を調整することで、DC−DCコンバータ11,21の出力の和と系統連系インバータ52の出力をバランスさせる。
【0047】
(2)系統連系インバータ52の出力が多い場合(発電量に対して送電量が多くなった場合)、系統連系DC−DCコンバータ51の入力電流にバランスさせるため、発電装置用DC−DCコンバータ11,21の出力電流が増加し直流母線電圧が低下する。やがて母線電圧が系統連系DC−DCコンバータ51の入力電流制限にかかり、DC−DCコンバータ51の出力が制限されて、発電出力とインバータ52の出力はバランスする。
【0048】
(3)系統連系インバータ52の出力が少ない場合(発電量に対して送電量が少なくなった場合)、系統連系DC−DCコンバータ51の入力電流にバランスさせるため、発電装置用DC−DCコンバータ11,21の出力電流が減少し直流母線電圧が上昇する。やがて母線電圧が発電用DC−DCコンバータ11,21の出力電圧制限にかかり、DC−DCコンバータ11,21の出力が制限されて、発電出力とインバータ52の出力はバランスする。
ただし、これでは直流母線電圧がハンチングするため、この機能は最終の入出力バランス機能とし、通常は電圧変動がここまで大きくなる前にインバータ52の出力を調整することが好ましい。このためには直流母線の電圧変動をインバータ52の制御速度より十分遅くすることが必要であり、その対策として系統連系DC−DCコンバータ51の入力側に設置されるコンデンサーを通常より大きくする。DC−DCコンバータ11,21間の電流アンバランスが発生すると、このコンデンサーから電流が供給あるいは吸収されバランスが取れるが、直流母線電圧は変動する。その変動を打ち消すようインバータ52の出力を調整することで発電出力とインバータ出力をバランスさせることが好ましい。
【0049】
[2]系統連系インバータ52の制御
配電線の異常時などには、系統連系装置50は図9に示す制御を行う。図9中、発電側が電力系統と分離され単独系統となった場合に、系統連系を停止させる転送遮断の機能がある。ここで、配電線内の発電量と消費量がバランスし変電所からの電力供給がほとんど無く、同じ配電線内に電圧源となるディーゼルエンジン発電機のような同期発電機が存在する場合には単独運転の検出感度が悪くなることが知られており、確実に系統連系インバータを停止させるには全てのインバータに転送遮断装置を設置する必要があるとされてきた。そして、国の系統連系技術要件ガイドラインでは、転送遮断は専用回線で伝送することになっている。そのため、放送で送られる転送遮断信号は正式には転送遮断信号とは認められないので、別途単独運転検出継電器の設置が必要となる。
【0050】
放送による転送遮断と単独運転検出継電器とを組み合わせによれば、確実に系統連系装置50を停止させることが可能となる。仮に放送による転送遮断指令が完全でなく若干の系統連系装置50が停止しない場合でも、大部分の系統連系装置50が転送遮断指令で停止することで配電線内の発電量と消費量のバランスが大幅に崩れるので(消費量が多くなる)、周波数や電圧の急変により単独運転検出継電器が確実に動作し、指令漏れがあった系統連系装置50を全て停止することができる。このようにコストのかかる専用回線を使用した正式な転送遮断指令を用意しなくても、放送による完全でない転送遮断指令で必要十分な機能を果たすことができる。
同様に送電停止指令や電圧抑制指令に関しても放送による指令が完全でなく、若干の指令もれが発生することが予想される。しかし、この場合でも、系統連系装置50の1台あたりの送電量や電圧抑制量はごくわずかであるため、若干の指令もれが発生しても全体に与える影響はほとんどなく実用上問題にならないと考えられる。
【0051】
[3]送電量の制御方法
本実施例では、太陽光発電、風力発電の発電量予想値そのものは利用せず、当該予想値に応じて蓄電装置充電残量(SOC)目標値を変更することにより送電量を制御する。充電残量目標値は通常の昼間に極力安定して送電する[通常ケース]と、家庭等で朝夕の自己消費分を極力自前でまかなう[朝夕シフトケース]を用意した。なお、ここでの充電残量目標値は相対取引を想定しておらず、安定的に配電線に送電することを目的として設定している。充電残量目標値は、太陽光発電は4kW級、風力発電は1kW級、蓄電装置は10kWh級(SOC運用範囲30〜75%)、系統連系インバータは4kW級を想定しているが、極端に容量比が変わらなければそのまま利用可能である。
【0052】
充電残量目標値の基本的な考え方は、下記のとおりである。
・太陽光発電の多い正午付近で蓄電し、朝夕は蓄電量抑制および放電することで送電量を平準化する。
・朝夕シフトケースでは、夜間の蓄電量を多めにして朝方放電する。また、夕刻用に昼間の蓄電量を極力多くする。
・風力発電は、深夜時間帯の送電を極力抑制するため、深夜時間帯は極力蓄電する。昼間はそのまま発電した電力を送電する。
・太陽光発電量が多く、昼間送電抑制(10時〜14時)が予想される場合は、朝方の蓄電量を減らし昼間の蓄電量を極力増やす。蓄電しても余剰が発生する場合は発電抑制する。
以上の考え方に基づいた蓄電装置蓄電残量(SOC)目標値の例を図16〜図20に示す。なお、風力発電装置がなく、太陽光発電装置のみを有する構成の場合は無風時の目標値を使用する。
【0053】
本実施例に係る送電量の制御方法のシミュレーション例を説明する。
図14は、太陽光発電、風力発電の予想の具体例である。太陽光発電は太陽高度や気温の影響を受けるため、その月の最大発電量カーブを基準とし、それとの比率を予想する。図15に、南向きの太陽光発電の代表的な例を示す。
送電量の具体例として、太陽光発電は4kW、風力発電は1kW、蓄電装置は10kWh(SOC運用範囲30〜75%)、系統連系インバータ出力4kW、送電効率90%に設定した。SOC目標値は図16〜図20を、系統連系インバータ等の制御方法は図4,5に示す方法を使って送電量のシミュレーションを行った。
【0054】
シミュレーション結果として、図21に晴れで無風時の例を、図22に曇りで無風時の例を、図23に晴れ後曇りで無風(若干の発電有り)の例を、図26に晴れ後曇りでかなり風がある(中風)の例を、図27に晴れ無風で送電抑制がある場合の例を示す。
図23〜27のシミュレーション結果から、上記の充電残量目標値の考え方に沿った送電制御が行われており、変動の大きい太陽光発電や風力発電を安定化して高品質で送電できること、送電抑制時に発電抑制量をある程度減少させることができることが確認できた。
【実施例2】
【0055】
実施例2は、再生可能エネルギー由来電力の相対取引を行うための蓄電システムに関する。
相対取引を行うための蓄電システムは、太陽光発電装置および/または風力発電装置と、蓄電装置および系統連系装置を備えており、例えば図3に示す構成を有する。売電は、蓄電装置に蓄電した電力を対象とするので、短時間(例えば数時間)であれば安定的に電力供給を行うことが可能である。
【0056】
相対取引には、電力売買取引所、売電者(発電者)および買電希望者(需要者)が参加し、電力売買取引所の提供する相対取引用サーバに、売電者および買電希望者がインターネット経由でアクセスして約定送電量と約定金額などの情報のやり取りが行われる(図23参照)。すなわち、売電者は相対取引入札装置から電力売買取引用サーバに提供電力量と提供金額などの売電情報を入力することにより売電入札を行い、受電者もPC等の需用者端末から電力売買取引用サーバに希望電力量と希望金額などの買電情報を入力することにより買電入札を行う。
【0057】
相対取引用サーバは、相対取引入札装置から通信網を介して売電情報を取得する手段と、需要者端末から通信網を介して買電情報を取得する手段と、落札となる買電情報を決定する手段と、落札情報を通信網を介して相対取引入札装置および需要者端末に送信する手段と、電力会社等の送電網提供者に託送指示を送信する手段を備えている。相対取引用サーバは、記憶装置に記憶された所定の時間帯における各入札情報に基づき売り買いの調整(マッチング)を行い、所定の時間における約定送電量および約定金額を確定させ、売り手買い手に落札情報を送信するとともに、電力会社等の送電網提供者に送電電力の託送指示を出す。当該所定の時間になると発電者側は決定された送電量を配電線に送電し、需用者側は決定された受電量を受電する。
【0058】
図24に、30分単位で2時間先まで売買を決定する場合の相対取引の手順例を示す。ここでは、蓄電装置の蓄電量を超える売電入札は、電力の安定供給の点から問題があるので排除している。また、配電線の制約で電力会社から送電規制(送電抑制)がなされている場合は送電できないため入札を行わないようにしている。本実施例では2時間先まで入札し送電量を決定する仕様としているが、どの程度先の時間まで入札できるようにするかは適宜変更することができる。
表1および図25に送電量決定例を示す。ここでは、送電効率は90%とし自己消費分は考慮していない。蓄電装置に蓄電した電力を売電するため、表1に示すような単純な方法では発電と売電には時間遅れを生じるが、蓄電量を多くすればさらに広い範囲の時間帯での売電も可能となるし、蓄電しておいて売電価格が高い時間帯に集中的に送電することも可能である。
【0059】
【表1】

【0060】
以上に説明した本実施例の蓄電システムによれば、蓄電装置に蓄電した電力を系統連系に使うので、再生可能エネルギー発電電力の相対取引(売電者−買電者の1対1取引、電力会社による電力の託送)を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 太陽光発電装置
2 風力発電装置
3 蓄電装置
4 (太陽光発電装置用)系統連系装置
5 (風力発電装置用)系統連系装置
6 AC−DCコンバータ
7 双方向インバータ
10 全体制御装置
11 (太陽光発電装置用)DC−DCコンバータ
12,13 電流計
14,15 電圧計
16 センサ
17 電力量計
20 直流母線
21 (風力発電装置用)DC−DCコンバータ
22 (風力発電装置用)インバータ
30 交流母線
50 系統連系装置
51 (系統連系)DC−DCコンバータ
52 (系統連系)インバータ
53 保護継電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置と、再生可能エネルギー由来の電力を蓄電する蓄電装置と、再生可能エネルギー発電装置からの出力電力を所定電圧に変換する発電装置用DC−DCコンバータと、蓄電装置および発電装置用DC−DCコンバータが接続される直流母線と、蓄電装置からの直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に逆変換し負荷および電力系統に供給するインバータを有する系統連系装置と、発電量の予想データを受信可能な制御装置と、を備えた蓄電システムであって、
前記制御装置が、発電量の予想データおよび消費電力予想に基づき充電残量の目標値を設定し、充電残量の目標値と実績値に基づき系統連系装置の出力を一定時間単位で変化させる制御を行うことを特徴とする再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項2】
さらに、蓄電装置の異常を検出する手段と、蓄電装置の異常検出時に蓄電装置を分離し、発電装置用DC−DCコンバータと系統連系装置を直結する切替機構と、を備えることを特徴とする請求項1の再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項3】
前記発電装置用DC−DCコンバータが、出力電流を所定電流に保つ定出力電流制御機能、および、直流母線が所定電圧以上となった場合に出力を制限する出力電圧制限機能を備えることを特徴とする請求項2の再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項4】
前記系統連系装置が、直流母線が所定電圧以下となった場合に出力を絞り込む入力電流制限機能を備えることを特徴とする請求項2または3の再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項5】
前記制御装置が、制御指令信号を受信する手段と、受信した制御指令信号に基づき系統連系装置から電力系統への送電量を制御する手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項6】
前記系統連系装置が、電力系統へ供給する無効電力を調整する機能を備え、
前記制御装置が、受信した制御指令信号に基づき系統連系装置が電力系統へ供給する無効電力を一定時間単位で段階的に調整する手段を備えることを特徴とする請求項5の再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項7】
前記系統連系装置が、単相インバータを備え、単相インバータの出力電流の位相を配電線電圧より進ませて無効電力を消費させることにより無効電力を調整することを特徴とする請求項6の再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項8】
前記制御装置が、受信した制御指令信号に基づき系統連系装置から電力系統への供給を停止する転送遮断機能を備えることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかの再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項9】
前記制御指令信号を受信する手段が、放送電波による制御指令信号を受信する手段であることを特徴とする請求項5ないし8のいずれかの再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項10】
前記制御装置が、有線回線を介して双方向通信を行う手段を備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項11】
さらに、通信網を介して再生可能エネルギー由来の電力の売電情報を電力取引所に送信する手段と、通信網を介して電力取引所から落札情報を受信する手段と、受信した落札情報に基づき蓄電装置から指定された時間帯に指定された電力量を送電する手段を備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項12】
再生可能エネルギー発電装置と、再生可能エネルギー由来の電力を蓄電する蓄電装置と、再生可能エネルギー発電装置からの出力電力を所定電圧に変換する発電装置用DC−DCコンバータと、蓄電装置および発電装置用DC−DCコンバータが接続される直流母線と、蓄電装置からの直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に逆変換し負荷および電力系統に供給するインバータを有する系統連系装置と、制御装置と、を備えた蓄電システムであって、
通信網を介して再生可能エネルギー由来の電力の売電情報を電力取引所に送信する手段と、
通信網を介して電力取引所から落札情報を受信する手段と、
受信した落札情報に基づき蓄電装置から指定された時間帯に指定された電力量を送電する手段を備えることを特徴とする再生可能エネルギーの蓄電システム。
【請求項13】
前記再生可能エネルギー発電装置が、太陽光発電および/または風力発電の発電装置であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかの再生可能エネルギーの蓄電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−75224(P2012−75224A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216621(P2010−216621)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】