説明

再生骨材改質剤

【課題】 コンクリート硬化体の強度が改善できる再生骨材改質剤の提供。
【解決手段】 アルカリ珪酸塩溶液を含有する再生骨材改質剤であって、アルカリ珪酸塩溶液が以下の要件1及び2を具備する再生骨材改質剤。
要件1:ケイ素原子(Si)及びリチウム原子(Li)を含有し、ナトリウム原子(Na)を含有してもよく、ナトリウム原子とリチウム原子のモル比(Na/Li)が0〜0.3、ケイ素原子とリチウム原子の酸化物換算のモル比(SiO/LiO)が3.0〜4.0である。
要件2:該アルカリ珪酸塩溶液の乾燥物の29Si−NMR測定で得られるQ構造(n=2、3、4)に対応するシグナルの面積Qnの比(Q/Q及びQ/Q)について、Q/Qが0.1〜0.35以下、かつ、Q/Qが2〜10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生骨材改質剤、該再生骨材改質剤を使用した改質再生骨材、該再生骨材の製造方法及び該再生骨材を使用した水硬性組成物の硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保全の観点から、廃材となったコンクリートに代表される水硬性組成物硬化体の再利用を図るため、水硬性組成物硬化体の廃材を破砕分級して再生骨材として利用することが試みられている。
【0003】
再生骨材の原骨材の周りに付着したセメントペースト・モルタル部分は、品質が低下し、脆弱な部分やポーラスな部分を有している場合が多い。したがって、再生骨材の吸水率は一般的に大きく、再生コンクリートとする場合には十分にプレウェッティングして使用することが前提である。このため、かかる再生骨材はバージン骨材を使用した場合に比べ、水硬性組成物硬化体としたときの強度が低下するとともに、乾燥収縮が増大することが大きな課題である。この課題を解決するための1つの方法として、シリカ組成物で再生骨材を処理することが検討されている。
【0004】
非特許文献1には、コロイダルシリカ溶液に浸漬処理した再生骨材を使用したコンクリートが開示されている。
【0005】
特許文献1には、特定のシリカ分散液に浸漬処理した骨材を使用したモルタルの強度が向上することが記載されている(段落〔0129〕)。
【0006】
【非特許文献1】コンクリート工学、Vol.37、No.11、pp27-32、1999
【特許文献1】特開2004−315343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等が、非特許文献1に開示されたコロイダルシリカ及び特許文献1に開示された特定のシリカ分散液に含浸処理した再生骨材を使用してコンクリートの強度を確認したところ、バージン骨材を使用したコンクリートと比べて、強度の点において改善の余地が大きいことが判明した。
【0008】
そこで、本発明は、水硬性組成物の硬化体に乾燥収縮抵抗性を低下させずに良好な強度を与えるための、アルカリ珪酸塩溶液を含有する再生骨材改質剤、該再生骨材改質剤により処理された改質再生骨材、該再生骨材の製造方法及び該再生骨材を使用した水硬性組成物の硬化体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、アルカリ珪酸塩溶液を含有する再生骨材改質剤であって、アルカリ珪酸塩溶液が以下の要件1及び2を具備する再生骨材改質剤を提供する。
【0010】
要件1:ケイ素原子(Si)及びリチウム原子(Li)を含有し、ナトリウム原子(Na)を含有してもよく、ナトリウム原子とリチウム原子のモル比(Na/Li)が0〜0.3、ケイ素原子とリチウム原子の酸化物換算のモル比(SiO/LiO)が3.0〜4.0である。なお、本発明において、「原子」にはイオンも含まれる。
【0011】
要件2:アルカリ珪酸塩溶液の乾燥物の29Si−NMR測定で得られるQ構造(n=2、3、4)に対応するシグナルの面積Qの比(Q/Q及びQ/Q)が、Q/Qが0.1〜0.35であり、かつ、Q/Qが2〜10である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の再生骨材改質剤を用いて改質された改質再生骨材は、水硬性組成物の骨材として用いることにより、乾燥収縮抵抗性を低下させることなく、水硬性組成物の硬化体の圧縮強度を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<再生骨材改質剤>
〔アルカリ珪酸塩溶液〕
本発明の再生骨材改質剤は、特定のアルカリ珪酸塩溶液を用いた点に大きな特徴がある。アルカリ珪酸塩溶液とは、酸化ケイ素とアルカリとを水の存在下で溶解させて得られる水を含む溶液をいう。
【0014】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液は、酸化ケイ素を含む成分を溶液状にしたことで、従来の無機微粒子の分散液であるコロイダルシリカに比べ、再生骨材への含浸性に優れ、再生骨材に付着したケイ素化合物による硬化反応の効率が向上すると考えられる。
【0015】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液は、要件1及び2を具備する。以下、各要件について説明する。
【0016】
要件1:ケイ素原子(Si)及びリチウム原子(Li)を含有し、ナトリウム原子(Na)を含有してもよく、ナトリウム原子とリチウム原子のモル比(Na/Li)が0〜0.3、ケイ素原子とリチウム原子の酸化物換算のモル比(SiO/LiO)が3.0〜4.0である。
【0017】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液は、リチウム原子を必須とすることで、アルカリ珪酸塩溶液に含浸処理等させた再生骨材の表面に付着した酸化ケイ素の耐水性を向上させ、コンクリート製造時の水との接触において、再生骨材の改質効果の安定性を向上させるものと考えられる。
【0018】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液では、アルカリ珪酸塩溶液の粘性増大を抑制し、アルカリ珪酸塩溶液の再生骨材への含浸性を向上させる観点から、ナトリウム原子が混在していることが好ましい。さらにリチウム原子によるコンクリート強度向上効果を損なわせないことを考慮すると、ナトリウム原子とリチウム原子のモル比(Na/Li)は、0〜0.3であり、好ましくは0.001〜0.25、より好ましくは0.01〜0.20である。
【0019】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液では、ケイ素原子とリチウム原子の酸化物換算のモル比(SiO/LiO)は、リチウム原子によるコンクリート強度向上効果を損なわせず、アルカリ珪酸塩溶液の再生骨材への含浸性を確保する観点から、3.0〜4.0であり、好ましくは3.1〜3.9、より好ましくは3.2〜3.8である。
【0020】
要件2:アルカリ珪酸塩溶液の乾燥物の29Si−NMR測定で得られるQ構造(n=2、3、4)に対応するシグナルの面積Qの比(Q/Q及びQ/Q)が、Q/Qが0.1〜0.35であり、かつ、Q/Qが2〜10である。
【0021】
/Q及びQ/Qが小さいほどアルカリ珪酸塩溶液の粘性が低下して再生骨材への含浸性に優れていることを示すものである。
/Qは、耐水性を確保する観点から、0.1〜0.35であり、0.15〜0.30が好ましく、0.20〜0.30がより好ましい。Q/Qは、耐水性を確保する観点から、2〜10であり、5〜8がより好ましい。
【0022】
(Qの測定方法)
(1)アルカリ珪酸塩溶液を、熱風乾燥機中で30℃、72時間静置して乾燥させる。
(2)該乾燥物について、29Si−NMR測定を行う。
(3)29Si−NMRで得られた以下の化学シフト域(TMS基準)に対応する各シグナルの面積(但し、複数のシグナルの一部が重なるときは、各シグナルをガウス型関数とローレンツ型関数の線形和で近似したときの各シグナルの面積)を「Q構造(n=2、3、4)」と呼ぶ。
化学シフト 構 造
−85〜−90ppm Q構造
−92〜−100ppm Q構造
−105〜−115ppm Q構造
(4)Q構造とQ構造との比をQ/Q、Q構造とQ構造の比をQ/Qとする。
【0023】
(Qの物理的意義)
構造とは、次のような物理的意義があると考えられる。即ち、Q構造は、アルカリ珪酸塩乾燥物中のケイ素と酸素による構成単位であるSiO四面体単位の酸素原子のうちの架橋酸素原子(二つのケイ素原子と結合している酸素原子)の数に対応した化学的構造に相当し、Q構造のnは架橋酸素原子の数に相当し、SiO単位の結合度に相当する。
【0024】
構造がQ構造よりも相対的に大きいと、SiO単位を架橋する酸素原子数が多く、SiO単位がネットワーク構造を形成するため、酸化ケイ素の耐水性が向上すると考えられる。
【0025】
但し、Q構造及びQ構造のみではネットワーク構造が過剰となり、アルカリ珪酸塩溶液の粘性及び親水性が損なわれ、アルカリ珪酸塩溶液の再生骨材への含浸性が確保できないと考えられる。
【0026】
そこで、線状ないしは環状の結合でQ構造及びQ構造によるネットワーク構造間を弱く結合すると考えられるQ構造を組み込むことで、アルカリ珪酸塩溶液の耐水性、粘性及び親水性が調和し、アルカリ珪酸塩溶液に適度な含浸性が確保されると考えられる。即ち、本発明では、QがQよりも相対的に大きいと耐水性が低下して、相対的に小さいと浸透性が低下するので、Q/Q及びQ/Qを適度にバランスさせることで、好適な耐水性、粘性及び親水性を確保できる。
【0027】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液は、再生骨材を含浸処理するのに適した作業性、耐水性を確保し、過剰な粘性により含浸性を損なわせない観点から、アルカリ珪酸塩溶液中のケイ素原子、リチウム原子、ナトリウム原子を、水量を加減する等により、所望の含有量に調整することができる。
【0028】
かかる観点から、本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液中のケイ素原子、リチウム原子、ナトリウム原子の含有量は、さらに要件3を具備することが好ましい。
【0029】
要件3:アルカリ珪酸塩溶液中のケイ素原子及びリチウム原子の総含有量が酸化物(SiO、LiO)換算で1重量%以上30重量%以下であって、ケイ素原子及びリチウム原子を含むアルカリ原子(M)の総含有量が、酸化物(SiO、MO)換算で30重量%以下である。
【0030】
要件3において、ケイ素原子及びアルカリ原子(M)の含有量は、酸化物換算で28重量%以下がより好ましく、25%重量%以下がさらに好ましく、ケイ素原子及びリチウム原子の含有量は酸化物換算で5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましい。
【0031】
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液の粘度は、含浸性を確保する観点から、3000mPa・sを超えないことが好ましく、1000mPa・sを超えないことがより好ましく、100mPa・sを超えないことがさらに好ましい。
【0032】
〔アルカリ珪酸塩溶液の製造方法〕
本発明で用いるアルカリ珪酸塩溶液の製造方法として、(1)イオン交換法、(2)コロイダルシリカ法、(3)水熱処理法等を適用することができるが、これらの中でもイオン交換法が好ましい。
【0033】
(イオン交換法)
リチウム原子を含まないアルカリ珪酸塩溶液(例えば、珪酸ナトリウム溶液)に対し、陽イオン交換樹脂による処理又は電解透析処理することにより、ナトリウム原子量を減少又は除去する(脱ナトリウム処理)。その後、要件1を満たすように所定量のリチウム塩を添加することで得られる。また、濃度調整にあたって、濃縮工程を行うこともできる。
【0034】
本発明で用いられる脱ナトリウム処理前のリチウム原子を含まないアルカリ珪酸塩溶液は特に限定されるものではなく、市販のものであっても、公知の方法により製造したものであってもよい。
【0035】
市販品としては、珪酸ナトリウム溶液(JIS規格1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラス又は4号水ガラス)が挙げられる。
【0036】
陽イオン交換樹脂を用いて製造したものとしては、例えば、脱ナトリウム処理しようとする珪酸ナトリウム溶液を撹拌しながら、該珪酸ナトリウム溶液に陽イオン交換樹脂を添加し、珪酸ナトリウム溶液と樹脂とを接触させて、珪酸ナトリウム溶液中のナトリウムオンを除去した後、所定量のリチウムを添加したものが挙げられる。その他、円柱状のカラム中に陽イオン交換樹脂を充填して、この中へ珪酸ナトリウム溶液を通過させて脱ナトリウム処理をする方式、さらに加圧空気の圧入等により樹脂との接触を促進する方式を適用して製造したものが挙げられる。
【0037】
例えば、陽イオン交換樹脂による処理により珪酸ナトリウム溶液の脱ナトリウム処理を行う場合、陽イオン交換樹脂と処理しようとする珪酸ナトリウム溶液との量比は、処理しようとする珪酸ナトリウム溶液の組成等にもよるが、一般には、陽イオン交換樹脂100重量部に対し、好ましくは珪酸ナトリウム溶液50〜400重量部、より好ましくは80〜320重量部である。
また、珪酸ナトリウム溶液と陽イオン交換樹脂との接触時間は、好ましくは1〜60分間程度である。両者の接触は、例えば、該樹脂を含んだ珪酸ナトリウム溶液を濾過して該樹脂を除去することにより終了させることができる。脱ナトリウム処理後のpHが10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3.2以下になるように処理を行うのがよい。
【0038】
電解透析処理は、陰、陽イオン交換膜が交互に配列された、両端に一対の電極を挿入した電解透析層に珪酸ナトリウム溶液を充填し、直流電流を通電することにより珪酸ナトリウム溶液中のナトリウムオンを除去する処理をいう。当該処理は、例えば、市販の電解透析処理装置を使用して行うことができる。
【0039】
電解透析処理により珪酸ナトリウム溶液の脱ナトリウム処理を行う場合は、処理開始後、処理された珪酸ナトリウム溶液の一部を経時的にサンプリングし、そのSiO/NaO比を求め、所望の値となったところで処理を終了すればよい。
【0040】
脱ナトリウム処理液を攪拌しながらリチウム塩を添加後、さらに熟成として30分〜数日間攪拌を継続する。リチウム塩は特に限定されないが、溶解性、溶解後の珪酸溶液の透明性の観点から、水酸化リチウムが好ましい。
【0041】
濃縮工程は、室温以上の加熱下で行うことができる。但し、珪酸溶液のゲル化防止の観点から、60℃以下の温度で、減圧濃縮を行うことが望ましい。
【0042】
(コロイダルシリカ法)
コロイド状シリカとナトリウム塩、リチウム塩を所定モル比になるように混合、熟成を行う方法である。コロイド状シリカとして、種々の粒径を有するものが使用可能である。
【0043】
混合当初は、白濁しているが、数時間〜数日間、室温〜100℃の加熱下で、透明液を得ることができる。
【0044】
(水熱処理法)
シリカゲル、シリカゾル、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、結晶性シリカ等をシリカ原として、水、ナトリウム塩、リチウム塩と混合後、水熱処理を行う方法である。
(その他の方法)
市販の珪酸リチウム溶液に水酸化ナトリウム等を添加し、さらに、数時間〜数日間、室温〜100℃の加熱下で、熟成を行う方法でも得られる。
【0045】
本発明の再生骨材改質剤は、アルカリ珪酸塩溶液のみからなるものでもよく、必要に応じて、さらに他の添加剤を含有するものでもよい。本発明の再生骨材改質剤をアルカリ珪酸塩溶液と他の添加剤からなるものにする場合は、再生骨材改質剤中のアルカリ珪酸塩溶液の含有量が85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
添加剤としては、さらに含浸性を向上させるため、耐水性を阻害しない範囲で、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、再生骨材改質剤中、有効分で、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜2.5重量%添加することができる。
【0047】
界面活性剤としては、ラウリルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、無水マレイン酸共重合物塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン・スチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレントリベンジル化オルソフェニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤及びココナットベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0048】
また、本発明の再生骨材改質剤を繰返し再生骨材の改質処理に使用する観点から、さらに安定化剤として金属イオンに対するキレート能を有する化合物を添加することが好ましい。安定化剤は、再生骨材改質剤中、有効分で、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.5〜1重量%添加することができる。
【0049】
安定化剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸)エチレンジアミン、及びこれらの塩類、脂肪族オキシカルボン酸、縮合リン酸塩等が挙げられる。脂肪族オキシカルボン酸としては、酒石酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、ジヒドロキシエチルグリシン等が挙げられる。縮合リン酸塩としては、ピロリン酸、トリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸等のポリリン酸の塩が挙げられ、具体的にはピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム又はこれらのカリウム塩等が挙げられる。
【0050】
<改質再生骨材>
本発明の改質再生骨材は、上記した再生骨材改質剤と再生骨材を接触させて(好ましくは再生骨材改質剤に再生骨材を含浸させて)得られるものである。再生骨材としては、粗骨材、細骨材等、各種骨材が利用できる。
【0051】
本発明の再生骨材改質剤と接触させて得られた改質再生骨材は、従来のシリカを含む組成物により処理された改質再生骨材に比べて、コンクリートの圧縮強度に優れ、バージン骨材と同等以上の低乾燥収縮性を有する。
【0052】
再生骨材は、吸水率増大の原因となる微細孔を多く有し、一般に材齢が数十年と長く、セメントとの反応は不活性であるが、本発明の再生骨材改質剤と接触させて得られた再生骨材は、サブミリサイズの微細孔の多くが消失するとともに、反応活性なアルカリ珪酸塩をその細孔内部に保持することから、セメントとの反応活性が高くなるものと推定される。
【0053】
また、本発明の再生骨材改質剤は、再生骨材の最表層だけでなく、微細孔内表面も改質することで、吸水率が低下し、乾燥収縮の低減効果が発揮されるものと推定される。
【0054】
<改質再生骨材の製造方法>
本発明の改質再生骨材の製造方法は、本発明の再生骨材改質剤と再生骨材を接触させる工程(I)、工程(I)で再生骨材改質剤と接触させた再生骨材を濾過して湿潤再生骨材を得る工程(II)及び工程(II)の濾過後の湿潤再生骨材を乾燥する工程(III)を有する。
【0055】
工程(I)において、本発明の再生骨材改質剤と再生骨材を接触させる方法としては、
(a)ベルトコンベアで再生骨材を運搬中に再生骨材改質剤を噴霧する方法、
(b)カゴ状の容器に再生骨材を投入したものを、より大きな容器に満たした再生骨材改質剤中に浸漬する方法、
(c)レディーミクストコンクリート運搬車(生コン車)のドラム内に再生骨材及び再生骨材改質剤を投入する方法等が挙げられ、改質効果の発現効率が良いという観点から、(b)の方法が好ましい。
【0056】
(b)の方法を適用した場合は、浸漬時間は処理量やその他の条件によって任意に選択してよく、浸漬時間は数秒〜数日にわたってもよいが、充分な含浸作用を発揮させ、再生骨材表面のおける再生骨材改質剤のゲル化反応を防止する観点から、数分〜24時間が好適である。
【0057】
さらに、(b)の方法を適用した場合は、含浸作用を向上させる目的から、加圧含浸法を用いることがより好ましい。加圧含浸法とは、減圧空間内に再生骨材を投入し、一定時間、減圧乾燥状態とし、そこに再生骨材改質剤を吸引して入れた後、圧力を開放して含浸させる方法である。
【0058】
次に工程(II)において、工程(I)で再生骨材改質剤と接触させた(好ましくは含浸させた)再生骨材を濾過する。
【0059】
濾過材としては、織金網をカゴ状に成形した容器を用いることが好ましい。織金網として、線材(硬鋼線、ステンレス鋼線等)を織り合わせて作った網目を利用して篩い分けを行う金網を用いることが経済的であり、その織型の種類には、プレーンウェーブ、アーチクリンプ、フラットトップ、トンキャップが好ましく使用できる。濾過する対象の再生骨材の最小寸法や濾過量、或いは全体の改質処理システムの中で最適な材質・形状を選択すればよい。再生骨材の場合、その網目の開きは2.5mm以下であればよいが、0.3mm以下となると濾過材の中に骨材同士の摩擦等で生じた微粉粒等が溜まるため、網目の開きは0.3超〜2.5mmの範囲であることが望ましい。
【0060】
次に、工程(III)において、工程(II)で濾過した後の残存物を乾燥する。乾燥は、0℃〜105℃で行うことができ、乾燥時間は、室温であれば1日、105℃であれば1時間程度が好ましい。
【0061】
乾燥後における改質再生骨材中の再生骨材改質剤の重量割合は、改質効果を安定して発現させる観点から、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0062】
工程(II)及び(III)の処理により、再生骨材改質剤と再生骨材周辺のペースト・モルタルに含まれるセメント成分における改質に寄与する反応時間を確保すると共に、表面の水分を蒸発させ、再生コンクリートとして練り混ぜたときに再生骨材改質剤が逸散しないようにすることができる。
【0063】
<水硬性組成物の硬化体>
本発明の水硬性組成物の硬化体は、水硬性粉体(セメント等)、骨材及び水を含有する水硬性組成物の硬化体であり、前記骨材として、本発明の改質再生骨材を含有するものである。
【0064】
骨材は、粗骨材及び細骨材の両方又は一方の全部又は一部として本発明の改質再生骨材を用いることができる。粗骨材及び/又は細骨材の一部として本発明の改質再生骨材を用いる場合、本発明の改質再生骨材の含有量は、全骨材中の10重量%以上、さらに30重量%以上、さらに50重量%以上、さらに70重量%以上、さらに90重量%以上が好ましい。なお、残部の骨材は、公知の骨材(粗骨材及び細骨材)を用いることができる。
【0065】
公知の骨材としては、川砂利、山砂利、海砂利等の天然粗骨材、川砂、山砂、海砂等の天然細骨材、砕石、高炉スラグ粗骨材等の人工粗骨材、砕砂、高炉スラグ細骨材等の人工細骨材、人工軽量骨材、重量骨材等のその他の人工骨材を使用できる。再生改質効果が特に大きいJIS A5005に適合する砕石及び砕砂を使用することが好ましい。
【0066】
本発明の水硬性組成物の硬化体の原料として本発明の改質再生骨材を用いる場合は、通常の天然骨材と同様の計量、練混ぜにより、骨材として使用することができる。
【0067】
本発明の水硬性組成物の硬化体の原料として本発明の改質再生骨材を用いる場合、改質再生骨材には本発明の再生骨材改質剤(水分を含有している)が付着しているため、水硬性組成物に含まれる水の量は、本発明の再生骨材改質剤に含まれる水の量を考慮して補正を行う必要がある。
【実施例】
【0068】
(1)再生骨材改質剤(アルカリ珪酸塩溶液)の製造
製造例1
3号珪酸ナトリウム(日本化学工業製)10kgに水60kgを添加混合した。前記混合液を攪拌しながら、イオン交換樹脂:アンバーライトIR120B(H)(オルガノ製)15kgを添加し、30分間攪拌を継続した。上澄み溶液のpHが3.2まで低下したことを確認後、イオン交換樹脂をSUS製メッシュにて濾過分離した。分離した溶液に水酸化リチウム(一水和物)(和光純薬製)1kgを添加後、液全体が透明になるまで25℃で3時間攪拌を継続した。その後、本液を減圧濃縮器にて、40℃加温下で濃縮前の16重量%にまで濃縮を行った。
【0069】
製造例2
製造例1の操作において、イオン交換樹脂を12kg使用した。上澄み液のpHは4.87であった。
【0070】
製造例3
製造例1の操作において、イオン交換樹脂を20kg使用した。上澄み液のpHは3.45であった。
【0071】
製造例4
製造例1の操作において、イオン交換樹脂を25kg使用した。上澄み液のpHは2.92であった。
【0072】
製造例5
製造例1の操作において、イオン交換樹脂を25kg使用した。攪拌時間を90分とした。上澄み液のpHは2.88であった。
【0073】
製造例6
製造例1の操作において、イオン交換樹脂を9kg使用した。上澄み液のpHは9.80であった。イオン交換樹脂をSUS製メッシュにて濾過分離した溶液に水酸化リチウム(一水和物)(和光純薬製)1.065kgを添加後、液全体が透明になるまで25℃で3時間攪拌を継続した。その後、本液を減圧濃縮器にて、40℃加温下で濃縮前の16重量%にまで濃縮を行った。
【0074】
製造例7(加圧含浸法)
真空槽〔容積10.3L,(内径205mm,深さ312mm)〕内に気乾状態の再生骨材を投入後、ロータリーポンプで6.7×10−2Paまで減圧した。減圧中、再生骨材改質剤を全骨材が没するまで真空槽内に注入し、大気圧に開放後、10分間放置した。その後、濾過及び乾燥を行った。
【0075】
比較製造例1
市販のコロイダルシリカ溶液(日産化学工業社スノーテックス20L、シリカ濃度20%)をそのまま使用した。
【0076】
比較製造例2
市販の珪酸ナトリウム溶液(JIS3号規格水ガラス:日本化学工業社製)を水で2倍希釈して使用した(アルカリ珪酸塩固形分20%)。
【0077】
比較製造例3
市販の珪酸リチウム溶液(珪酸リチウム45:日本化学工業社製)をそのまま使用した(アルカリ珪酸塩固形分20%)。
【0078】
比較製造例4
製造例1の操作において、イオン交換樹脂を7kg使用した。上澄み液のpHは10.90であった。イオン交換樹脂をSUS製メッシュにて濾過分離した溶液に水酸化リチウム(一水和物)(和光純薬製)1.424kgを添加後、液全体が透明になるまで25℃で3時間攪拌を継続した。その後、本液を減圧濃縮器にて、40℃加温下で濃縮前の16重量%にまで濃縮を行った。
【0079】
(2)測定方法
[ケイ素原子、リチウム原子及びナトリウム原子の重量分析、モル比]
ケイ素の分析はICP分析、アルカリ金属の分析は、原子吸光分析により行った。各元素の測定検量線を予め作成し、測定元素の発光強度(ケイ素)、吸光強度(リチウム、ナトリウム)から元素濃度を定量(重量%)した。検量線の作成にあたっては、関東化学製1000ppm標準溶液を希釈して使用した。
ICP測定装置は、堀場製作所(株)JY238 ULTRACEを使用した。原子吸光分析装置は、バリアン(株)Spectr AA220を使用した。各元素(ケイ素、リチウム、ナトリウム)の定量値(重量%)から、各原子のモル比、及び酸化物重量%を換算した。
【0080】
[ケイ素原子、リチウム原子及びナトリウム原子の含有量の算出]
製造例1について例示する。他の製造例も同様にして算出できる。上記分析の結果、ケイ素の定量値8.27重量%、リチウム1.21重量%、ナトリウム0.47重量%を得た。これより各原子の酸化物重量%を次式により換算した。
各原子の酸化物(重量%)=各原子の定量値(重量%)×(酸化物の分子量/原子量)
最後に、ケイ素、リチウム、ナトリウムの酸化物重量%(SiO:17.73%、LiO:2.60%、NaO:0.63%)の総和として21.0%を算出した。
【0081】
〔粘度〕
粘度の測定は、B型粘度計(株式会社東京計器製、型番B8L)を用いた。アルカリ珪酸塩溶液約100mlをスクリュー管(マルエムNo.8)に入れ、ローターの回転後、2分経過後の指針値を計測し、測定値とした。測定は20℃で行った。
【0082】
〔耐水性〕
アルカリ珪酸塩溶液5gをガラスシャーレ(フラットシャーレ、品番:70、直径75mm)に入れ、乾燥機(ADVANTEC社製、型番:FC−410)中で50℃にて1日乾燥することで、乾燥硬化体を得た。この硬化体の重量(g)を電子天秤(METTLER社製、型番:AB204−S)を用いて測定(W)した後、イオン交換水50mlに12時間浸漬した。その後、イオン交換水をスポイドで除去し、再度乾燥機(ADVANTEC社製、型番:FC−410)中で50℃にて1日乾燥し、この硬化体の重量を測定(W)した。その後、溶解残存率(%)〔(W/W)×100〕を算出し、耐水性とした。
【0083】
<改質再生骨材>
再生骨材を恒温恒湿室で一定の気乾状態とした後(このときの重量をWとする)、表2に示す再生骨材改質剤(アルカリ珪酸塩溶液)に浸漬し、恒温恒湿室にて24時間以上乾燥させ、気乾状態とした(このときの重量をWとする)。浸漬状態によるコンクリート性状への影響を検討するため、浸漬時間は10分、60分及び24時間の3ケースとした。WのWに対する増加率((W−W)/W)×100は、実施例、比較例のいずれにおいても1〜2%の範囲であった。
【0084】
<コンクリート硬化体>
[材料]
再生骨材コンクリートの使用材料は、以下のとおりとし、粗骨材として再生粗骨材の市販品(東京地区入手品)、改質した再生粗骨材及び比較のための砕石を用いた。
粗骨材(G):再生粗骨材 表乾密度2.35g/cm、吸水率7.66%
改質再生粗骨材 表乾密度2.35g/cm、吸水率5.5%
砕石(青梅産硬質砂岩砕石) 表乾密度2.71g/cm、吸水率0.66%
セメント(C):普通ポルトランドセメント 密度3.16g/cm
細骨材(S):山砂 表乾密度2.64g/cm、吸水率1.51%
混和剤:AE減水剤、AE剤
練混ぜ水(W):上水道水
[配合]
配合は、改質再生骨材及び砕石を用いたいずれの場合においても、強度と乾燥収縮に及ぼす影響を検討するため、下表に示すとおり単位水量及び粗骨材絶対容積を同一とした。
【表1】

単位量は、JIS A0203−3506に定義される。
【0085】
[試験方法]
製造したコンクリートに対して、強度試験(JIS A 1108−1999に準拠)及び乾燥収縮試験(JIS A 1129−3−2001に準拠)を実施した。結果を図1〜図3、表2に示す。
【0086】
【表2】

表2に、材齢28日における改質再生骨材使用の再生骨材コンクリートの圧縮強度を示し、図1に、材齢28日における、未処理再生骨材コンクリートの圧縮強度に対する改質再生骨材使用の再生骨材コンクリートの圧縮強度比を示す。図1から明らかなとおり、改質再生骨材を使用したコンクリートは、圧縮強度比が増加する傾向を示した。
【0087】
図2に、材齢28日における、砕石を用いたコンクリートに対する改質再生骨材使用の再生骨材コンクリートの圧縮強度比を示す。図2に示すように、改質再生骨材を使用したコンクリートでは9割以上の圧縮強度比を確保することができた。
【0088】
表2に、材齢28日における乾燥収縮ひずみの測定結果を示し、図3に参考例のコンクリート硬化体、比較例5のコンクリート硬化体及び実施例6のコンクリート硬化体の乾燥収縮ひずみの測定結果を示す。図3に示すように、砕石を使用したものに対して、未処理の再生骨材を用いたものは乾燥収縮が大きくなるが、改質再生骨材を用いたものでは改善され、砕石の場合よりも低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】未処理再生コンクリートに対する圧縮強度比を示す図。
【図2】砕石コンクリートに対する圧縮強度比を示す図。
【図3】熱乾燥収縮ひずみを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ珪酸塩溶液を含有する再生骨材改質剤であって、アルカリ珪酸塩溶液が以下の要件1及び2を具備する再生骨材改質剤。
要件1:ケイ素原子(Si)及びリチウム原子(Li)を含有し、ナトリウム原子(Na)を含有してもよく、ナトリウム原子とリチウム原子のモル比(Na/Li)が0〜0.3、ケイ素原子とリチウム原子の酸化物換算のモル比(SiO/LiO)が3.0〜4.0である。
要件2:アルカリ珪酸塩溶液の乾燥物の29Si−NMR測定で得られるQ構造(n=2、3、4)に対応するシグナルの面積Qの比(Q/Q及びQ/Q)が、Q/Qが0.1〜0.35であり、かつ、Q/Qが2〜10である。
【請求項2】
前記アルカリ珪酸塩溶液が、さらに以下の要件3を具備する請求項1記載の再生骨材改質剤。
要件3:アルカリ珪酸塩溶液中のケイ素原子及びリチウム原子の総含有量が酸化物(SiO、LiO)換算で1重量%以上30重量%以下であって、ケイ素原子及びリチウム原子を含むアルカリ原子(M)の総含有量が、酸化物(SiO、MO)換算で30重量%以下である。
【請求項3】
前記アルカリ珪酸塩溶液が、リチウム原子を含まないアルカリ珪酸塩溶液をイオン交換処理することでナトリウム原子量を減少させた後、所定量のリチウム原子を添加する方法により得られたものである請求項1又は2記載の再生骨材改質剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の再生骨材改質剤と再生骨材を接触させて得られうる改質再生骨材。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載の再生骨材改質剤と再生骨材を接触させる工程(I)、工程(I)で再生骨材改質剤と接触させた再生骨材を濾過して湿潤再生骨材を得る工程(II)及び工程(II)の濾過後の湿潤再生骨材を乾燥する工程(III)を有する改質再生骨材の製造方法。
【請求項6】
水硬性粉体、骨材及び水を含有する水硬性組成物の硬化体であって、該骨材が請求項5記載の製造方法により得た改質再生骨材を含有する水硬性組成物の硬化体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−282479(P2006−282479A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107430(P2005−107430)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】