説明

冷凍庫

【課題】冷凍する対象物を収容する冷凍室を形成し、冷凍室を冷却する冷却装置と、冷凍室に超音波を放射する超音波装置とを備えた冷凍庫であって、超音波を放射するタイミングを適切に制御することによって、効率的に対象物を冷却可能な冷凍庫を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、冷凍する対象物を収容する冷凍室8を形成し、冷凍室8を冷却する冷却装置3と、冷凍室8に超音波を放射する超音波装置4とを備え、対象物を冷凍する冷凍庫であって、冷却装置3の作動を制御するとともに、超音波装置4の作動を制御する制御部34を備え、該制御部34は、超音波装置4を作動させずに冷却装置3を作動させる通常冷却モードと、超音波装置4および冷却装置3を作動させる急速冷却モードとを有し、通常冷却モードを実行して冷凍室8を冷却した後に急速冷却モードを実行するように前記制御部34を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍室を冷却する冷却装置と、冷凍室に超音波を放射する超音波装置とを備えた冷凍庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍する対象物を収容する冷凍室を形成し、冷凍室を冷却する冷却装置を備えた冷凍庫が従来公知であるが、この冷凍庫を改良したものとして、冷凍室に超音波を放射する超音波装置を設置し、対象物をより効率的に冷凍する特許文献1に示す冷凍庫が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−195493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の冷凍庫においては、状況によって、超音波の放射により対象物を効率的に冷却できる場合と、超音波によっても対象物を効率的に冷却できない場合とがあり、無作為に超音波装置を作動させて冷凍室に超音波を放射しても、超音波装置を作動させるエネルギーが無駄になる場合がある。
【0005】
本発明は、冷凍する対象物を収容する冷凍室を形成し、冷凍室を冷却する冷却装置と、冷凍室に超音波を放射する超音波装置とを備えた冷凍庫であって、超音波を放射するタイミングを適切に制御することによって、効率的に対象物を冷却可能な冷凍庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、冷凍する対象物を収容する冷凍室8を形成し、冷凍室8を冷却する冷却装置3と、冷凍室8に超音波を放射する超音波装置4とを備え、対象物を冷凍する冷凍庫であって、冷却装置3の作動を制御するとともに、超音波装置4の作動を制御する制御部34を備え、該制御部34は、超音波装置4を作動させずに冷却装置3を作動させる通常冷却モードと、超音波装置4および冷却装置3を作動させる急速冷却モードとを有し、通常冷却モードを実行して冷凍室8を冷却した後に急速冷却モードを実行するように前記制御部34を構成したことを特徴としている。
【0007】
第2に、対象物が凍結したことを検知する凍結検知手段37を設け、制御部34は、急速冷却モードの実中、前記凍結検知手段37によって対象物が凍結したことを検知した場合には、超音波装置4の作動を停止させて急速冷却モードを終了させることを特徴としている。
【0008】
第3に、冷凍室8の開閉を検知する開閉検知手段38を設け、制御部34は、急速冷却モードの実中、前記開閉検知手段38によって冷凍室8が開状態であることを検知した場合には、超音波装置4の作動を停止させることを特徴としている。
【0009】
第4に、制御部34は、急速冷却モードの実中に超音波装置4の作動を停止させた後、前記開閉検知手段38によって冷凍室8の閉状態を検知した場合には、超音波装置4を作動させることを特徴としている。
【0010】
第5に、冷凍室8に電界を発生させる電界装置6を、制御部34によって作動制御可能に設け、制御部34は、少なくとも急速冷却モードを実行している際には、電界装置6によって冷凍室8に電界を形成することを特徴としている。
【0011】
第6に、通常冷却モードの実行中も電界装置6によって冷凍室8に電界を形成するように制御部34を構成したことを特徴としている。
【0012】
第7に、冷凍室8の開閉を検知する開閉検知手段38を設け、制御部34は、前記開閉検知手段34によって冷凍室8が開状態であることを検知した場合には、電界装置6の作動を停止させることを特徴としている。
【0013】
第8に、制御部34は、電界装置6の作動を停止させた後、前記開閉検知手段34によって冷凍室8の閉状態を検知した場合には、電界装置6を再び作動させることを特徴としている。
【0014】
第9に、対象物が保持可能であって冷凍室8から搬入・搬出が可能なラック19を、通電可能な金属製部材によって構成し、冷凍室8の内壁1bに対してラック19を絶縁せしめる絶縁体27を設け、電界装置6が有する一対の電極17A,17B一方をラック19側に形成し、他方を冷凍室8の内壁1bに形成してなることを特徴としている。
【0015】
第10に、ラック19が冷凍室8に搬入された際に、該ラック19と接触して電気的に接続される接続装置21を設け、該接続装置21と冷凍室8の内壁1bとの間に電圧を印加するように電界装置6を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、冷却装置の作動を制御するとともに超音波装置の作動を制御する制御部によって、通常冷却モードを実行して冷凍室を冷却した後に、超音波を作動させる急速冷却モードを実行することにより、ある程度冷却された状態の冷凍室に超音波が放射され、冷気が均一化され、エネルギーのロスを少なくして、効率的に対象物を冷却可能になる。
【0017】
また、対象物が凍結したことを検知する凍結検知手段を設け、制御部は、急速冷却モードの実中、前記凍結検知手段によって対象物が凍結したことを検知した場合には、超音波装置の作動を停止させて急速冷却モードを終了させるため、対象物が冷凍されて長期保存が可能になった後も、無駄に超音波装置が作動し、エネルギーをロスすることが防止される。
【0018】
また、冷凍室の開閉を検知する開閉検知手段を設け、制御部は、急速冷却モードの実中、前記開閉検知手段によって冷凍室が開状態であることを検知した場合には、超音波装置の作動を停止させるので、冷凍室が開放され、効率的な冷却ができなくなっている状態で、超音波装置が作動し、エネルギーをロスすることを防止できる。
【0019】
さらに、制御部は、急速冷却モードの実中に超音波装置の作動を停止させた後、前記開閉検知手段によって冷凍室の閉状態を検知した場合には、超音波装置を作動させるため、超音波装置が適切なタイミングで迅速に再作動され、効率的に対象物を冷却可能になる。
【0020】
なお、冷凍室に電界を発生させる電界装置を、制御部によって作動制御可能に設け、制御部が、少なくとも急速冷却モードを実行している際には、電界装置によって冷凍室に電界を形成すれば、該電界によって、対象物をさらに効率的に冷却可能になる。
【0021】
また、通常冷却モードの実行中も電界装置によって冷凍室に電界を形成するように制御部を構成すれば、該電界によって、冷凍室を迅速に冷却可能になる。
【0022】
さらに、冷凍室の開閉を検知する開閉検知手段を設け、制御部は、前記開閉検知手段によって冷凍室が開状態であることを検知した場合には、電界装置の作動を停止させるので、冷凍室が開放され、効率的な冷却ができなくなっている状態で、電界装置が作動し、エネルギーをロスすることを防止できる。
【0023】
一方、制御部は、電界装置の作動を停止させた後、前記開閉検知手段によって冷凍室の閉状態を検知した場合には、電界装置を再び作動させるため、超音波装置が適切なタイミングで迅速に再作動され、効率的に対象物を冷却可能になる。
【0024】
なお、対象物が保持可能であって冷凍室から搬入・搬出が可能なラックを、通電可能な金属製部材によって構成し、冷凍室の内壁に対してラックを絶縁せしめる絶縁体を設け、電界装置が有する一対の電極一方をラック側に形成し、他方を冷凍室の内壁に形成し、ラックが冷凍室に搬入された際に、該ラックと接触して電気的に接続される接続装置を設け、該接続装置と冷凍室の内壁との間に電圧を印加するように電界装置を構成すれば、簡易且つ迅速に、冷凍室に電界を形成可能になるため、利便性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した冷凍庫の構成を示す正面図である。
【図2】本発明を適用した冷凍庫の構成を示す側断面図である。
【図3】ラックの部分断面図である。
【図4】接続装置の側面図である。
【図5】制御装置のブロック図である。
【図6】制御部の処理手順を示すフロー図である。
【図7】通常冷却モードのサブルーチンの処理手順を示すフロー図である。
【図8】急速冷却モードのサブルーチンの処理手順を示すフロー図である。
【図9】冷凍保存モードのサブルーチンの処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1,2は、本発明を適用した冷凍庫の構成を示す正面図及び側断面図である。冷凍庫は、直方体形状のボックス状に成形された本体1と、本体1が位置決め載置される基台2と、冷却装置3と、超音波装置4と、電界装置6と、制御装置7とを備えている。
【0027】
上記本体1は内部に冷凍室8が形成される他、正面には冷凍室8を開放させる開放口1aが形成されており、この開放口1aを介して、冷凍する対象である生鮮食品等の対象物を出し入れするように冷凍庫が構成されている。ちなみに本体1のサイズは、図示する例では、縦が1800mm、横が1800mm、高さが2500mm程度のサイズに設定されている。
【0028】
この開放口1aは、正面視において冷凍室8の横方向一方側(図1における右側)半部(冷却スペース8a)を開放するように配置構成され、この開放口1aには、開閉ドア9によって開閉自在に閉塞されている。具体的には、開閉ドア9の左右一方側端部に設置されたヒンジ部(図示しない)によって、この開閉ドア9が本体1に水平回動可能に支持されており、この水平回動によって、開閉ドア9は、開放口1aを閉塞する閉姿勢と、開放口1aを開放する開姿勢とに切換可能に構成される。ちなみに、開閉ドア9を閉姿勢でロックするロック機構が設けられている。
【0029】
上記基台2は、絶縁体よりなる方形プレート状部材であって、この基台2の上面側に本体1が載置固定されることにより、本体1と地面との電気的接続が遮断される。
【0030】
上記冷却装置3は、主に、本体1の外壁側に設置される室外機11と、冷凍室8に配置される上下一対の冷却器12,13とから構成されている。室外機11側には、図示しないコンプレッサ及びコンデンサが配置されるとともに、冷却器12,13側には、図示しないエバポレータが配置される。
【0031】
気化された冷媒は、コンプレッサにより圧縮された後にコンデンサによって液化され、この液化された冷媒がエバポレータにより気化され、再びコンプレッサに戻される。以下、コンデンサ→エバポレータ→コンプレッサ→コンデンサ→・・・の循環を繰返し、この循環中、エバポレータ側において、気化熱による吸熱によって、冷却器12,13内の空気が冷却される。
【0032】
一対の冷却器12,13は、冷凍室8における冷却スペース8aと反対側の半部に配置されており、さらに詳しくは、下側の冷却器12が、吹込みファン12aを備えた吹込み側冷却器となる一方で、上側の冷却器13が、吹出しファン13aを備えた吹出し側冷却器となる。
【0033】
冷凍室8の空気は、吸込みファン12aによって、吹込み側冷却器12に吹込まれ、上述した気化熱による冷却によって冷されながら吹出し側冷却器13内に流入する。吹出し側冷却器13内に流入した空気は、吹出しファン13aによって、冷却スペース8aに吹出され、冷却スペース8aを下方側に流動して再び吹込みファン12a側に戻される。以下、吹込み側冷却器12→吹出し側冷却器13→冷却スペース8a→吹込み側冷却器12→・・・の順に循環し、この循環過程で空気が冷却される。
【0034】
上記超音波装置4は、電気的な高周波を発生させる発振器14と、発振器14からの高周波によって超音波振動する振動子(図示しない)と、振動子の振幅を増大させるホーン16とを備えている。ホーン16は、冷凍室8における冷却スペース8a天井側に設置され、下方側に向かって超音波を放射するように構成されている。ちなみに、図示する例では、この超音波装置4の電源としては、家庭一般で使用される交流電圧(具体的には、周波数が50〜60Hz、電圧の実行値が100Vの交流電圧)が用いられ、出力は150wで、振動数は28kHzに設定されている。
【0035】
上記電界装置6は、一対の電極17A,17Bと、一対の電極17A,17Bに印加する電圧を発生させる電圧発生装置18とを備えている。
【0036】
電圧発生装置18は、家庭一般で使用される交流電圧を、変圧器等によって、所定周波数を有する高電圧に変圧するように構成されており、具体的に発生させる電圧は、周波数が500Hz以上(さらに好ましくは1000Hz以上)、電圧の実行値が500〜1500Vに設定される。ちなみに、場合によっては、この電圧発生装置18によって、直流電圧を発生させてもよい。
【0037】
一対の電極17A,17Bの一方を、冷凍室8を形成する本体1の内壁1bに形成し、他方を、冷凍室8内に収容可能なラック19に形成している。具体的には、冷凍室8の内壁1bを通電可能な金属性部材によって構成し、該内壁1bと電圧発生装置18とを電気的に接続する一方で、対象物を載置して保持させるラック19を通電可能な金属製部材によって構成し、この金属製ラック19と電圧発生装置18とを、接続装置21を介して、電気的に接続可能にしている。
【0038】
図3は、ラックの部分断面図である。図1および図3に示すようにラック19は、キャスタ22付きの台車23に載置固定され且つ前後左右上下が開放された直方体状の骨組からなる金属性の枠体24と、この枠体24内の上下のスペースに設置された上下複数の載置棚26とを備えており、台車23とラック19を含めた全体のサイズは、開放口1aを介して、冷凍室8に搬入・搬出可能な大きさに設定されている。
【0039】
台車23は、上面側に枠体24を載置固定する方形状の可動台であり、可動台の四隅にそれぞれキャスタ22が設置されている。台車23と、枠体24との間には両者を電気的に切断する絶縁体27を介在させる。ちなみに、該構成により、この絶縁体27は、ラック19と、冷凍室8の内壁1bとの電気的接続も遮断している他、上記台車23によってラック19は可動式ラックであるカートになる。
【0040】
各載置棚26は、通電可能な金網よりなる板状部材であって、枠体24内の横方向両端部にそれぞれ設置された金属製の保持片28,28の間にスライド挿入され、該一対の保持片28,28によって、係脱可能に係合保持される。具体的には、一対の保持片28,28が、互いに近づく側及び上方側に屈曲されて上記スライド方向に延びるアングル状部材であって、この一対の保持片28,28の上面側に、スライド方向に沿う載置棚26の一対の対向辺部が、それぞれ載置される。この載置によって、枠体24と保持片28,28と載置棚26とが電気的に接続される。
【0041】
ちなみに、載置棚26は上述したように網状部材であり、ある程度の通気性が確保されているため、冷却された空気の下方への流動を妨げることが防止されるが、冷凍する対象物の量が少ない場合には、複数の載置棚26のうち、一または複数を取外して、通気性を向上させてもよい。
【0042】
図4は、接続装置の側面図である。接続装置21は、横方向の延びる支持フレーム29と、支持フレーム29に複数の支持アーム31を介して上下動可能に支持された横方向の接続端子部32と、支持フレーム29を冷却スペース8a天井側に取付固定する複数の固定具33とから構成されている。上下方向に延びる円柱状に形成された各固定具33は、支持フレーム29と、冷却スペース8aの天井面との間に介挿されることにより、冷凍室8の天井面を含む内壁1bと、接続端子部32とを電気的に遮断している。
【0043】
この接続端子部32は、電圧発生装置18と電気的に接続され、図示しない弾性部材によって下方側に付勢されている。該構成により、開放口1aを介して冷却スペース8aにラック19全体が搬入された場合には、ラック19の上面に接続端子部32が押圧され、接続端子部32とラック19とが電気的に接続される一方で、開放口1aを介して冷却スペース8aからラック19全体が外側に搬出された場合には、ラック19と接続端子部32との接触が解除され、両者が電気的に切断される。
【0044】
すなわち、電圧発生装置18は、冷凍室8の内壁1bと、接続装置21との間に電圧を印加するように構成され、この接続装置21とラック19との接続によって、電圧発生装置18で発生させた電圧を、一対の電極間17A,17Bに印加することが可能になる。なお、ラック19が冷却スペース8aに搬入された際には、ラック19の真上側にホーン16が位置する状態になる。
【0045】
上記制御装置7は、本体1の正面側の開放口1aが形成されていない側に設置されている。この制御装置7は、マイコン等を有する制御基盤よりなる制御部34(図5参照)を備えている。
【0046】
図5は、制御装置のブロック図である。制御部34の入力側には、冷凍室8の温度を検知する温度センサ(室温検知手段)36と、冷凍室8のラック19に載置保持された対象物の温度を検知する赤外線センサ等よりなる品温センサ(対象物温度検知手段,凍結検知手段)37と、開閉ドア9の開閉を検知する開閉センサ(開閉検知手段)38と、対象物を保持したラック19が冷凍室8の冷却スペース8aに入庫されたか否かを検知する入庫センサ(搬入検知手段)39と、各種情報を入力するタッチパネル等からなる情報入力手段41とが接続されている。
【0047】
ちなみに、開閉センサ38は、開閉ドアの回動角度を検知するポテンショメータ又は開閉ドア9との接触によって上記閉姿勢を検知するタッチセンサ等からなる。入庫センサ39は、接続装置21の支持アーム31の揺動角を検知するポテンショメータ等からなり、ラック19が接続端子部32と接触して冷凍スペース8aに入庫されていることを支持アーム31の揺動角の変化から検知することが可能なように構成されている。なお、この搬入検知手段を、入庫センサ39では無く、上述の品温センサ37によって構成してもよい。
【0048】
また、情報入力手段41を介した入力操作によって、制御部34による制御を「マニュアル」または「オート」の何れで実行するかを選択する他、「マニュアル」制御の実行時に利用する冷凍室9の室温手動設置値x1及び冷却時間手動設置値y1を設定する。この他、情報入力手段41を介して、冷凍する対象物の種類等を入力することも可能である。
【0049】
制御部34の出力側には、冷却装置3の作動を制御する冷却用回路(冷却制御手段)42と、超音波装置4の作動を制御する超音波用回路(超音波制御手段)43と、電界装置6の作動を制御する電界用回路(電界制御手段)44と、状態表示等を行う表示ランプ46と、ブザー音や音声によって各種報知を行う報知装置(報知手段)47とが接続されている。すなわち、制御部34は、冷却装置3の作動を制御する機能と、超音波装置4の作動を制御する機能と、電界装置6の作動を制御する機能とを有している。
【0050】
ちなみに、表示ランプ46は、その点灯状態によって、現在のモードが、後述する通常冷却モードと、急速冷却モードと、冷凍保存モードとの何れであるかが分かるように構成されている他、この他の各種状態もその点灯状態から作業者が把握できるように構成されている。
【0051】
図6は、制御部の処理手順を示すフロー図である。冷凍庫の電源が入操作(ON)されると、制御部34は、ステップS1に移行する。ステップS1では、通常冷却モードのサブルーチンを実行し、これが終了すると、ステップS2に処理を進める。ステップS2では、急速冷却モードのサブルーチンを実行し、これが終了すると、ステップS3に処理を進める。ステップS3では、冷凍保存モードのサブルーチンを実行し、これが終了すると、ステップS1に処理を戻す。
【0052】
図7は、通常冷却モードのサブルーチンの処理手順を示すフロー図である。通常冷却モードの処理が開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、「マニュアル」と「オート」の何れで制御が実行されているかを検出し、「マニュアル」で制御が実行されている場合には、ステップS12に進む。ステップS12では、読込まれた上記室温手動設置値x1を目標室温Xとして、ステップS13に進む。一方、ステップS11において、「オート」で制御が実行されている場合には、ステップS14に進む。ステップS14では、算出された室温演算値x2を目標室温XとしてステップS13に進む。ちなみに、目標室温Xは、室温演算値x2と室温手動設置値x1の何れかによっても、概ね−30℃〜−15℃の範囲に設定される。
【0053】
ステップS13では、開閉センサ38によって開閉ドア9の開閉を検知し、開閉ドア9の閉姿勢が検出された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、冷却装置3および電界装置6を作動させるとともに、超音波装置4の作動は停止させ、冷凍室8を電界を併用して効率的に冷却し、ステップS16に進む。
【0054】
ステップS16では、室温センサ36によって冷凍室8の室温を検知し、この検知された室温が、上記目標室温X以下になっているか否かを判断し、冷凍室8の室温が目標室温X以下になっていれば、該サブルーチンを終了し、処理を図6に示すメインルーチンに戻す一方で、冷凍室8の室温が目標室温Xよりも高温であれば、ステップS13に処理を戻す。
【0055】
ステップS13において、開閉ドア9が開かれていること(閉姿勢でないこと)が検出された場合には、ステップS17に進む。ステップS17では、冷却装置3を作動させるとともに、超音波装置4および電界装置6の作動は停止させ、ステップS18に進む。ステップS18では、報知装置47によって開閉ドア9が開状態であることを報知し、ステップS16に処理を進める。
【0056】
すなわち、通常冷却モードの実行中に、開閉ドア9が開かれて、冷凍室8が開状態である場合には、電界装置6の作動を停止させる。さらにその後、通常冷却モードの実行中において開閉ドア9が閉じられ、冷凍室8が閉状態になると、ステップS17→ステップS18→ステップS16→ステップS13→ステップS15と処理が進み、再び、電界装置6を作動させる。
【0057】
図8は、急速冷却モードのサブルーチンの処理手順を示すフロー図である。急速冷却モードの処理が開始されると、ステップS21に処理を進める。ステップS21では、入庫センサ39によって対象物がラック19を介して冷凍室8に搬入されているか否かを検出し、搬入されていない場合には、ステップS22に進む。ステップS22では、対象物が冷凍室8に入庫されていない旨を報知装置47によって報知し、ステップS21に処理を戻す。すなわち、ステップS21→ステップS22の処理が繰返され、これによって、対象物が冷凍庫に入庫されるまで急速冷却モードの実行が停止される待ち状態になる。
【0058】
ステップS21において、対象物が冷凍室8に搬入されていることが検出されると、ステップS23に進む。ステップS23では、「マニュアル」と「オート」の何れで制御が実行されているかを検出し、「マニュアル」で制御が実行されている場合には、ステップS24に進む一方で、「オード」で制御が実行されている場合には、ステップS25に進む。
【0059】
ステップS24では、制御部34内のタイマーをリセットして(零に戻して)、フラグをONにセットし、ステップS26に進む。ステップS26では、冷凍時間Yを上述した冷却時間手動設置値y1として、タイマーをスタートさせカウントが開始し、ステップS27に進む。一方、ステップS25では、上記フラグをOFFにセットし、ステップS27に進む。
【0060】
ステップS27では、開閉センサ38によって開閉ドア9の開閉を検知し、開閉ドア9の閉姿勢が検出された場合には、ステップS28に進む。ステップS28では、冷却装置3、超音波装置4および電界装置6を全て作動させ、ステップS29に進む。
【0061】
ステップ27において、開閉ドア9が開かれていることが検出された場合には、ステップS30に進む。ステップS30では、冷却装置3を作動させるとともに、超音波装置4および電界装置6の作動は停止させ、ステップS31に進む。ステップS31では、報知装置47によって開閉ドア9が開状態であることを報知し、ステップS29に処理を進める。
【0062】
ステップS29では、フラグの検出を行い、フラグがONの場合(制御が「マニュアル」で実行されている場合)には、ステップS32に進む一方で、フラグがOFFの場合(制御が「オート」で実行されている場合)には、ステップS33に進む。
【0063】
ステップS33では、品温センサ37による対象物の温度検知によって、対象物が冷凍されたか否かを検出し、対象物の冷凍が完了していれば、このサブルーチンを終了し、処理を、図6に示すメインルーチンに戻す一方で、対象物の冷凍がまだ未完了であれば、ステップS27に処理を戻す。すなわち、「オート」制御では、対象物の温度をフィードバックすることによって、冷凍完了の検知し、この冷凍完了によって急速冷凍モードを終了させる。
【0064】
ステップS32では、タイマーによるカウント開始から、上述の冷凍時間Yが経過しているか否かを検出し、開始から冷凍時間Yが経過していれば、このサブルーチンを終了し、処理を、図6に示すメインルーチンに戻す一方で、開始からまだ冷凍時間Yが経過していなければ、ステップS27に処理を戻す。すなわち、「マニュアル」制御では、設定した冷却時間手動設置値y1の時間経過によって、冷凍完了とし、この冷凍完了によって急速冷凍モードを終了させる。
【0065】
該構成の急速冷却モードのサブルーチンによれば、ステップS28の処理において、通常冷却モードにより十分に冷却された冷凍室8に保持された対象物が、電界及び超音波の併用によって、効率的且つ迅速に冷却され、対象物の温度が最大氷結生成温度域に留まる時間が最大限抑制された状態で、冷凍されるため、対象物内における氷結晶の粗大化が防止されて冷凍時の細胞破壊等が抑制され、対象物を高鮮度のまま長期に冷凍保存することが可能になる。
【0066】
また、ステップS21の処理によって、対象物が冷凍室8に搬入されていない状態で、急速冷却モードが実行され(超音波装置4および電界装置6が作動され)、エネルギーが無駄を消費することが防止される。
【0067】
また、急速冷却モードのサブルーチンを「オート」で実行している最中、ステップS33において、対象物の凍結が品温センサ37によって検出された場合には、このサブルーチンが終了し、後述する冷凍保存モードによって、超音波装置4の作動が停止されるため、対象物が凍結した後も、超音波装置4によって超音波を発生させ続け、無駄にエネルギーを消費することが防止される。
【0068】
さらに、ステップS27→ステップ28→ステップS29と、ステップS27→ステップ30→ステップS31→ステップS29との処理分岐によって、急速冷却モードの実行中に、開閉ドア9が開かれて冷凍室8が開状態になった場合には、超音波装置4および電界装置6の作動が停止される一方で、さらにその後、急速冷却モードの実行中に、開閉ドア9が閉じられて冷凍室8が閉状態になった場合には、超音波装置4および電界装置6が再び作動される。
【0069】
図9は、冷凍保存モードのサブルーチンの処理手順を示すフロー図である。冷凍保存モードの処理が開始されると、ステップS41に処理を進める。ステップS41では、開閉センサ38によって開閉ドア9の開閉を検知し、開閉ドア9の閉姿勢が検出された場合には、ステップS42に進む。ステップS42では、冷却装置3および電界装置6を作動させるとともに、超音波装置4の作動を停止させ、ステップS43に進む。
【0070】
ステップ41において、開閉ドア9が開かれていることが検出された場合には、ステップS44に進む。ステップS44では、冷却装置3を作動させるとともに、超音波装置4および電界装置6の作動は停止させ、ステップS45に進む。ステップS45では、報知装置47によって開閉ドア9が開状態であることを報知し、ステップS43に処理を進める。
【0071】
ステップS43では、冷凍された対象物が冷凍室8から搬出されているか否かを、入庫センサ39によって検出し、対象物が冷凍室8から未だ搬出されていない場合(対象物が冷凍室8に保持されている場合)には、ステップS41に処理を戻す一方で、対象物が冷凍室8から既に搬出されている場合には、このサブルーチンを終了し、処理を、図6に示すメインルーチンに戻す。
【0072】
該構成の冷凍保存モードのサブルーチンによれば、ステップS43の処理によって、対象物が冷凍室8から搬出されると、自動的に冷凍保存モードが終了されるので、利便性が高い。
【0073】
また、ステップS41→ステップ42→ステップS43と、ステップS41→ステップ44→ステップS45→ステップS43との処理分岐によって、冷却保存モードの実行中に、開閉ドア9が開かれて冷凍室8が開状態になった場合には、電界装置6の作動が停止される一方で、さらにその後、急速冷却モードの実行中に、開閉ドア9が閉じられて冷凍室8が閉状態になった場合には、電界装置6が再び作動される。
【0074】
以上のように構成される冷凍庫によれば、通常冷却モードと、急速冷凍モードと、冷凍保存モードとのそれぞれにおいて、超音波装置4の作動・作動停止(冷凍室8での超音波放射の有無)と、電界装置6の作動・作動停止(冷凍室8での電界形成の有無)とが、適切に制御されるため、対象物の効率的な冷却を行うことができる。なお、上述した超音波装置4の作動タイミング及び電界装置6の作動タイミングは、本願発明者の鋭利検討と、それに基づく検討の結果とに基づいて決定したものである。
【0075】
なお、制御部34の入力側には、スタートボタンを設け、図8に示すステップS21において、スタートボタンの入操作によってステップS23に処理を進め、スタートボタンの切操作状態によってステップS22に処理を進めるように構成してもよい。
【0076】
また、この際には、図9に示すステップS43において、スタートボタンの切操作によって冷凍保存モードのサブルーチンを終了する一方、スタートボタンの入操作状態によってステップS41に処理を戻すようにしてもよい。
【0077】
さらに、ステップS3のサブルーチン実行中に、所定条件によって、再度ステップS2のサブルーチンを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1b 内壁
3 冷却装置
4 超音波装置
6 電界装置
8 冷凍室
17A,17B 電極
19 ラック(カート)
21 接続装置
27 絶縁体
34 制御部
37 品温センサ(凍結検知手段,対象物温度検知手段)
38 開閉センサ(開閉検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍する対象物を収容する冷凍室(8)を形成し、冷凍室(8)を冷却する冷却装置(3)と、冷凍室(8)に超音波を放射する超音波装置(4)とを備え、対象物を冷凍する冷凍庫であって、冷却装置(3)の作動を制御するとともに、超音波装置(4)の作動を制御する制御部(34)を備え、該制御部(34)は、超音波装置(4)を作動させずに冷却装置(3)を作動させる通常冷却モードと、超音波装置(4)および冷却装置(3)を作動させる急速冷却モードとを有し、通常冷却モードを実行して冷凍室(8)を冷却した後に急速冷却モードを実行するように前記制御部(34)を構成した冷凍庫。
【請求項2】
対象物が凍結したことを検知する凍結検知手段(37)を設け、制御部(34)は、急速冷却モードの実中、前記凍結検知手段(37)によって対象物が凍結したことを検知した場合には、超音波装置(4)の作動を停止させて急速冷却モードを終了させる請求項1の冷凍庫。
【請求項3】
冷凍室(8)の開閉を検知する開閉検知手段(38)を設け、制御部(34)は、急速冷却モードの実中、前記開閉検知手段(38)によって冷凍室(8)が開状態であることを検知した場合には、超音波装置(4)の作動を停止させる請求項1又は2の何れかに記載の冷凍庫。
【請求項4】
制御部(34)は、急速冷却モードの実中に超音波装置(4)の作動を停止させた後、前記開閉検知手段(38)によって冷凍室(8)の閉状態を検知した場合には、超音波装置(4)を作動させる請求項3の冷凍庫。
【請求項5】
冷凍室(8)に電界を発生させる電界装置(6)を、制御部(34)によって作動制御可能に設け、制御部(34)は、少なくとも急速冷却モードを実行している際には、電界装置(6)によって冷凍室(8)に電界を形成する請求項1乃至4の何れかに記載の冷凍庫。
【請求項6】
通常冷却モードの実行中も電界装置(6)によって冷凍室(8)に電界を形成するように制御部(34)を構成した請求項5の冷凍庫。
【請求項7】
冷凍室(8)の開閉を検知する開閉検知手段(38)を設け、制御部(34)は、前記開閉検知手段(34)によって冷凍室(8)が開状態であることを検知した場合には、電界装置(6)の作動を停止させる請求項5又は6の何れかに記載の冷凍庫。
【請求項8】
制御部(34)は、電界装置(6)の作動を停止させた後、前記開閉検知手段(34)によって冷凍室(8)の閉状態を検知した場合には、電界装置(6)を再び作動させる請求項7の冷凍庫。
【請求項9】
対象物が保持可能であって冷凍室(8)から搬入・搬出が可能なラック(19)を、通電可能な金属製部材によって構成し、冷凍室(8)の内壁(1b)に対してラック(19)を絶縁せしめる絶縁体(27)を設け、電界装置(6)が有する一対の電極(17A),(17B)一方をラック(19)側に形成し、他方を冷凍室(8)の内壁(1b)に形成してなる請求項1乃至8の何れかに記載の冷凍庫。
【請求項10】
ラック(19)が冷凍室(8)に搬入された際に、該ラック(19)と接触して電気的に接続される接続装置(21)を設け、該接続装置(21)と冷凍室(8)の内壁(1b)との間に電圧を印加するように電界装置(21)を構成した請求項9の冷凍庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−42126(P2012−42126A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183670(P2010−183670)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(593044654)マルシェマシナリー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】