説明

冷却システム

【課題】 開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機の目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供する。
【解決手段】 店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて求めた店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中の最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを設定する。各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたと判定されたときは先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却システムは、店内に設置された複数のショーケースと、複数のショーケースで共用の冷凍機を備える。各ショーケースは蒸発器と該蒸発器に冷媒を取り込むための電磁弁と実庫内温度を検出するための温度センサを有し、実庫内温度が設定庫内温度となるように電磁弁の開閉を制御する。共用冷凍機は能力可変型の圧縮機と該圧縮機の実吸入圧力を検出するための圧力センサを有し、実吸入圧力が別途設定された目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する。
【特許文献1】特開平9−217974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従前の冷却システムでは、前記目標吸入圧力を電磁弁の運転率や温度降下速度や電磁弁の平均オンオフ周期等に基づいて設定しているため、省エネルギーにはある程度貢献できるものの、各ショーケースから特殊な運転データを収集する必要があると共に制御装置に複雑な処理等が必要になるためコスト面で難点がある。
【0004】
また、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等では、閉店後にショーケースにナイトカバーを装着したりショーケースの照明器を消灯することによる負荷低減策を講じているが、非営業時間帯は営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少するため、営業時間帯と同様の手法によって前記目標吸入圧力を設定すると該目標吸入圧力が低すぎる値となって圧縮機の運転にエネルギーロスを生じる難点がある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機の目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムであって、店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中で最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を設定する手段と、設定された目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する手段と、ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段と、ナイトカバー装着と判定されたときに前記目標吸入圧力を高値に補正する手段とを備える、ことをその特徴とする、
この冷却システムによれば、店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中の最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を的確に設定できるので、換言すれば、各ショーケースから特殊な運転データを収集することなく、且つ、制御装置に複雑な処理等を要することなく圧縮機の目標吸入圧力を的確に設定できるので、コスト面での難点を解消し、且つ、省エネルギーを図ることができる。また、ショーケースにナイトカバーが装着されたと判定されたときに先に設定された目標吸入圧力をこれよりも高値に補正する処理を行っているので、営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少する非営業時間帯において目標吸入圧力が低すぎる値となって圧縮機の運転にエネルギーロスを生じる難点を解消して省エネルギーを図ることができる。つまり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機の目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することができる。
【0007】
また、本発明は、照明器を有する蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムであって、店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中で最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を設定する手段と、設定された目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する手段と、ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段と、照明器消灯と判定されたときに前記目標吸入圧力を高値に補正する手段とを備える、ことをその特徴とする。
【0008】
この冷却システムによれば、店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中の最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を的確に設定できるので、換言すれば、各ショーケースから特殊な運転データを収集することなく、且つ、制御装置に複雑な処理等を要することなく圧縮機の目標吸入圧力を的確に設定できるので、コスト面での難点を解消し、且つ、省エネルギーを図ることができる。また、ショーケースの照明灯が消灯されたと判定されたときに先に設定された目標吸入圧力をこれよりも高値に補正する処理を行っているので、営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少する非営業時間帯において目標吸入圧力が低すぎる値となって圧縮機の運転にエネルギーロスを生じる難点を解消して省エネルギーを図ることができる。つまり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機の目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することができる。
【0009】
さらに、本発明は、蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムであって、店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中で最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を設定する手段と、設定された目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する手段と、ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段と、ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段と、ナイトカバー装着と照明器消灯の少なくとも一方と判定されたときに前記目標吸入圧力を高値に補正する手段とを備える、ことをその特徴とする。
【0010】
この冷却システムによれば、店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中の最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を的確に設定できるので、換言すれば、各ショーケースから特殊な運転データを収集することなく、且つ、制御装置に複雑な処理等を要することなく圧縮機の目標吸入圧力を的確に設定できるので、コスト面での難点を解消し、且つ、省エネルギーを図ることができる。また、ショーケースにナイトカバーが装着されたと判定されたとき及び/またはショーケースの照明灯が消灯されたと判定されたときに先に設定された目標吸入圧力をこれよりも高値に補正する処理を行っているので、営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少する非営業時間帯において目標吸入圧力が低すぎる値となって圧縮機の運転にエネルギーロスを生じる難点を解消して省エネルギーを図ることができる。つまり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機の目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機の目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供できる。
【0012】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1〜図6は本発明の第1実施形態を示す。図1は冷却システムの全体構成図、図2は図1に示したショーケースの側面図、図3は目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを示す図、図4は店内エンタルピを求める際に用いられるデータテーブルを示す図、図5は目標吸入圧力を設定する際に用いられるデータテーブルを示す図、図6は目標吸入圧力を補正する際に用いられるデータテーブルを示す図である。
【0014】
以下に、図1及び図2を参照して、冷却システムの全体構成について説明する。図1中の1〜4はショーケース、5は共用冷凍機、6は制御装置、RP1は冷媒往き管、RP2は冷媒戻り管、SL1,SL2は信号線である。
【0015】
各ショーケース1〜4は商品出し入れ用の開口1h〜4h(図2参照)を有するタイプのショーケースであり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店内の所定位置に設置されている。各ショーケース1〜4は、蒸発器1a〜4aと、蒸発器1a〜4aの入口側に設けられた膨張弁1b〜4bと、膨張弁1b〜4bの入口側に設けられた電磁弁1c〜4cと、冷却空気を循環するための庫内ファン1d〜4dと、実庫内温度(吹き出し温度)TA1〜TA4を検出するための庫内温度センサ1e〜4eと、コントローラ1f〜4fと、設定庫内温度TS1〜TS4を定めるための庫内温度設定器1g〜4gとを少なくとも備える。因みに、蒸発器(1a〜4a)への冷媒取り込みを制御する電磁弁(1c〜4c)と膨張弁(1b〜4b)の構成は、両者の機能を併せ持つ電子式膨張弁で代用することもできる。各ショーケース1〜4の蒸発器1a〜4aは冷媒往き管RP1及び冷媒戻り管RP2を介して共用冷凍機5の冷媒用出口及び冷媒用入口に並列に接続されている。
【0016】
各コントローラ1f〜4fはマイクロコンピュータ構成の制御部と通信部と検知部とを有し、各通信部は信号線SL1を介して制御装置6に接続され、各検知部には庫内温度センサ1e〜4eが接続されている。各コントローラ1f〜4fの制御部のメモリには、設定庫内温度(TS1〜TS4)と実庫内温度(TA1〜TA4)との温度偏差(ΔT1〜ΔT4)に基づいて実庫内温度(TA1〜TA4)が設定庫内温度(TS1〜TS4)となるように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御するための電磁弁開閉プログラムと、設定庫内温度(TS1〜TS4)と実庫内温度(TA1〜TA4)と温度偏差(ΔT1〜ΔT4)等を制御装置6に伝送するための通信プログラム等が格納されている。
【0017】
また、図2に示すように、各ショーケース1〜4には開口1h〜4hを非密閉状態で覆うロールタイプのナイトカバーNCが設けられている。このナイトカバーNCはバネ付勢力に抗して引き下ろしてその下端NCaをケース本体に係合することによって各ショーケース1〜4への装着を可能としており、下端NCaの係合を解除することによる自動巻き上げを可能としている。さらに、各ショーケース1〜4の収納室SCには複数の棚板SBが上下に間隔をおいて設置され、各棚板SBの下面前端及び収納室SCの上面には陳列商品を照明するための蛍光灯等の照明器ILが設けられている。
【0018】
共用冷凍機5は、モータ回転数の増減によって能力可変するタイプの圧縮機5aと、凝縮器5bと、圧縮機5aの実吸入圧力PAを検出するための圧力センサ5cと、コントローラ5dとを少なくとも備える。共用冷凍機5の冷媒用出口(凝縮器5bの出口側)には冷媒往き管RP1の基端が接続され、冷媒用入口(圧縮機5aの入口側)には冷媒戻り管RP2の終端が接続されている。
【0019】
コントローラ5dはマイクロコンピュータ構成の制御部と通信部と検知部とを有し、通信部は信号線SL2を介して制御装置6に接続され、検知部には圧力センサ5cが接続されている。コントローラ5dの制御部のメモリには、制御装置6で設定された目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づいて実吸入圧力PAが目標吸入圧力PSとなるように圧縮機5aの回転数を制御する回転数可変プログラムと、実吸入圧力PAと圧力偏差ΔP等を制御装置6に伝送するための通信プログラム等が記憶されている。
【0020】
制御装置6は、マイクロコンピュータ構成の制御部6aと、入力キーやディスプレイを含む設定部6bと、検知部6cと、店内温度TIを検出するための店内温度センサ6dと、店内湿度UIを検出するための店内湿度センサ6eと、通信部6fと、通信部6fに接続されたコネクタ6gとを少なくとも備える。店内温度センサ6dと店内湿度センサ6eは各ショーケース1〜4及び店内空調機からの熱的影響を受け難い店内位置に設置されており、検知部6cに接続されている。また、コネクタ6gには信号線SL1,SL2の端が接続されている。さらに、制御部6aのメモリには、目標吸入圧力を設定及び補正するための後述のプログラムと、設定後または補正後の目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送するための通信プログラム等が格納されている。
【0021】
以下に、図3〜図6を参照して、制御装置6で実行される目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを、システム全体の動作を交えて説明する。
【0022】
システム起動後は、店内温度センサ6dと店内湿度センサ6eで検出された今現在の店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて店内エンタルピEを求める(図3のステップS11)。ここでは、店内温度TIと店内湿度UIとの関係に基づいて予め用意した図4のデータテーブルを利用し、該当する店内温度TIと店内湿度UIとから店内エンタルピEを設定する。勿論、この店内エンタルピEは、図4のデータテーブルを利用せずに、店内温度TIと店内湿度UIとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0023】
店内エンタルピEを求めた後は、この店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中で最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを設定する(図3のステップS12)。ここでは、店内エンタルピEと設定庫内温度Tとの関係に基づいて予め用意した図5のデータテーブルを利用し、該当する店内エンタルピEと設定庫内温度Tとから目標吸入圧力PSを設定する。勿論、この目標吸入圧力PSは、図5のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと設定庫内温度Tとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0024】
目標吸入圧力PSを設定した後は、該目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送する(図3のステップS13)。
【0025】
共用冷凍機5のコントローラ5dは、この目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づき、実吸入圧力PAが目標吸入圧力PSとなるように圧縮機5aの回転数を制御する。即ち、コントローラ5dは、実吸入圧力PA>目標吸入圧力PSのときに圧縮機5aの回転数を増加させて実吸入圧力PAが下がるようにフィードバック制御し、且つ、実吸入圧力PA<目標吸入圧力PSのときに圧縮機5aの回転数を減少させて実吸入圧力PAが上がるようにフィードバック制御する。
【0026】
一方、各ショーケース1〜4のコントローラ1f〜4fは、設定庫内温度(TS1〜TS4)と実庫内温度(TA1〜TA4)との温度偏差(ΔT1〜ΔT4)に基づき、実庫内温度(TA1〜TA4)が設定庫内温度(TS1〜TS4)となるように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御する。即ち、各コントローラ1f〜4fは、実庫内温度(TA1〜TA4)>設定庫内温度(TS1〜TS4)のときに電磁弁(1c〜4c)を開放して冷媒を蒸発器(1a〜4a)に取り込み、且つ、実庫内温度(TA1〜TA4)<設定庫内温度(TS1〜TS4)のときに電磁弁(1c〜4c)を閉じて蒸発器(1a〜4a)への冷媒の取り込みを抑止するように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御する。
【0027】
目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送した後は、各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたか否かを判定する(図3のステップS14)。
【0028】
ナイトカバーNCの装着判定方法には、
(1)現在時刻が予め設定したナイトカバー装着時刻(閉店時刻或いは閉店時刻から所定 時間後の時刻)に達し、且つ、各ショーケースの冷却継続時間が予め設定した基準冷却 継続時間よりも短いときに各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたと判 定する方法
(2)各ショーケース1〜4に設けられたナイトカバー装着検知センサ(図示省略)が閉 塞を検知したときに各ショーケース1〜4にナイトカバNCーが装着されたと判定する 方法
の何れかが採用できる。
【0029】
(1)の判定方法は、ナイトカバーNCが装着された後は冷却継続時間が通常よりも短くなることを利用してナイトカバーNCの装着し忘れを認識する方法であり、ここでの冷却継続時間は、実庫内温度TA1〜TA4の降下継続時間や、電磁弁1b〜4bの開放継続時間等によって把握することができる。また、電磁弁と膨張弁の代わりに電子式膨張弁が用いられている場合には、該電子式膨張弁の平均開度が通常よりも小さくなっていることで同様の把握を行うことができる。
【0030】
ステップS14でナイトカバー装着と判定されたときは、先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行う(図3のステップS15)。ここでは、店内エンタルピEと目標吸入圧力PSとの関係に基づいて予め用意した図6のデータテーブルを利用し、今現在の店内エンタルピEから補正後の目標吸入圧力PSを設定する。図6中の最も下側の実線は4台のショーケース1〜4の中で最も低い設定庫内温度TSL に準拠した目標吸入圧力値を示し、その上側の実線はナイトカバー装着時の目標吸入圧力値を示す。
【0031】
例えば、ナイトカバー装着と判定されたときの店内エンタルピEがE11のときには、TSL 準拠の圧力値P11(ステップS12で設定された目標吸入圧力値PSに相当)をナイトカバー装着時の圧力値P12に置き換え、該圧力値P12を補正後の目標吸入圧力値PSとして設定する。勿論、この補正後の目標吸入圧力値PSは、図6のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと目標吸入圧力値PSとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0032】
補正後の目標吸入圧力PSを設定した後は、補正後の目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送する(図3のステップS16)。
【0033】
共用冷凍機5のコントローラ5dは、この補正後の目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づき、前記と同様に、実吸入圧力が補正後の目標吸入圧力となるように圧縮機5aの回転数を制御する。
【0034】
ステップS14でナイトカバー非装着と判定されたとき、また、ナイトカバー装着と判定された後にステップS14でナイトカバー非装着と判定されたときは、ステップS11〜S13の処理が繰り返される。
【0035】
このように、前述の冷却システムによれば、店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて店内エンタルピEを求め、該店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中の最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを的確に設定できるので、換言すれば、各ショーケース1〜4から特殊な運転データを収集することなく、且つ、制御装置6に複雑な処理等を要することなく圧縮機5aの目標吸入圧力PSを的確に設定できるので、コスト面での難点を解消し、且つ、省エネルギーを図ることができる。
【0036】
また、前述の冷却システムによれば、各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたと判定されたときに先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行っているので、営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少する非営業時間帯において目標吸入圧力PSが低すぎる値となって圧縮機5aの運転にエネルギーロスを生じる難点を解消して省エネルギーを図ることができる。
【0037】
つまり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機5aの目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することができる。
【0038】
尚、前述の第1実施形態では、ナイトカバー装着後にステップS14でナイトカバー非装着と判定されたときにステップS11〜S13の処理を実行するものを示したが、補正後の目標吸入圧力PSに基づいて圧縮機5aの回転数を制御している状態で少なくとも1つのショーケースの庫内温度が設定庫内温度を超えたときに補正後の目標吸入圧力PSを補正前の目標吸入圧力PSに戻す処理ステップを図3のフローに追加してもよい。
【0039】
また、前述の第1実施形態では、全てのショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着された場合を例として説明したが、4台のショーケース1〜4が例えば3℃と5℃の2つの設定庫内温度で区分けされていて3℃のショーケースのみにナイトカバーNCが装着されたときには、図6に示した3℃準拠の目標吸入圧力値P11を同図に破線で示す5℃準拠の圧力値P13(P12よりも低い値)に置き換える補正を行って、5℃のショーケースに冷却不足が生じないようにしてもよい。
【0040】
さらに、前述の第1実施形態では、4台のショーケース1〜4を備えた冷却システムを例示したが、ショーケースの台数が5以上の冷却システムであっても本発明を適用することで前記同様の作用効果が得られる。
【0041】
[第2実施形態]
図7及び図8は本発明の第2実施形態を示す。図7は目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを示す図、図8は目標吸入圧力を補正する際に用いられるデータテーブルを示す図である。尚、冷却システムの全体構成,ショーケースの側面,店内エンタルピを求める際に用いられるデータテーブル及び目標吸入圧力を設定する際に用いられるデータテーブルは図1,図2,図4及び図5に示したものと同じであるため、ここでの説明では同図を引用し個別説明を省略する。
【0042】
以下に、図7及び図8を参照して、制御装置6で実行される目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを、システム全体の動作を交えて説明する。
【0043】
システム起動後は、店内温度センサ6dと店内湿度センサ6eで検出された今現在の店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて店内エンタルピEを求める(図7のステップS21)。ここでは、店内温度TIと店内湿度UIとの関係に基づいて予め用意した図4のデータテーブルを利用し、該当する店内温度TIと店内湿度UIとから店内エンタルピEを設定する。勿論、この店内エンタルピEは、図4のデータテーブルを利用せずに、店内温度TIと店内湿度UIとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0044】
店内エンタルピEを求めた後は、この店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中で最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを設定する(図7のステップS22)。ここでは、店内エンタルピEと設定庫内温度Tとの関係に基づいて予め用意した図5のデータテーブルを利用し、該当する店内エンタルピEと設定庫内温度Tとから目標吸入圧力PSを設定する。勿論、この目標吸入圧力PSは、図5のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと設定庫内温度Tとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0045】
目標吸入圧力PSを設定した後は、該目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送する(図7のステップS23)。
【0046】
共用冷凍機5のコントローラ5dは、この目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づき、実吸入圧力PAが目標吸入圧力PSとなるように圧縮機5aの回転数を制御する。即ち、コントローラ5dは、実吸入圧力PA>目標吸入圧力PSのときに圧縮機5aの回転数を増加させて実吸入圧力PAが下がるようにフィードバック制御し、且つ、実吸入圧力PA<目標吸入圧力PSのときに圧縮機5aの回転数を減少させて実吸入圧力PAが上がるようにフィードバック制御する。
【0047】
一方、各ショーケース1〜4のコントローラ1f〜4fは、設定庫内温度(TS1〜TS4)と実庫内温度(TA1〜TA4)との温度偏差(ΔT1〜ΔT4)に基づき、実庫内温度(TA1〜TA4)が設定庫内温度(TS1〜TS4)となるように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御する。即ち、各コントローラ1f〜4fは、実庫内温度(TA1〜TA4)>設定庫内温度(TS1〜TS4)のときに電磁弁(1c〜4c)を開放して冷媒を蒸発器(1a〜4a)に取り込み、且つ、実庫内温度(TA1〜TA4)<設定庫内温度(TS1〜TS4)のときに電磁弁(1c〜4c)を閉じて蒸発器(1a〜4a)への冷媒の取り込みを抑止するように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御する。
【0048】
目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送した後は、各ショーケース1〜4の照明器ILが消灯されたか否かを判定する(図7のステップS24)。
【0049】
照明器ILの消灯判定方法には、
(1)現在時刻が予め設定した点灯時刻に達して各ショーケース1〜4に消灯信号が入力 されたときに各ショーケース1〜4の照明器ILが消灯されたと判定する方法
(2)各ショーケース1〜4に設けられた照明スイッチ(図示省略)が消灯に切り換えら れたときに各ショーケース1〜4の照明器ILが消灯されたと判定する方法
の何れかが採用できる。
【0050】
(1)の判定方法を実現するには、現在時刻が予め設定した点灯時刻に達したときに各ショーケース1〜4に点灯信号を出力し現在時刻が予め設定した消灯時刻に達したときに各ショーケース1〜4に消灯信号を出力する手段を制御装置6に設けると共に、点灯信号の入力に基づいて照明器ILを点灯させ消灯信号の入力に基づいて照明器ILを消灯させる手段を各ショーケース1〜4に設ければよい。
【0051】
(2)の判定方法を実現するには、各ショーケース1〜4が照明器ILを点灯または消灯に切り換えるための照明スイッチ(図示省略)を有する必要があるが、通常のショーケースには同スイッチが予め設けられているので既設のスイッチ及びその信号を利用すればよい。
【0052】
ステップS24で照明器消灯と判定されたときは、先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行う(図7のステップS25)。ここでは、店内エンタルピEと目標吸入圧力PSとの関係に基づいて予め用意した図8のデータテーブルを利用し、今現在の店内エンタルピEから補正後の目標吸入圧力PSを設定する。図8中の最も下側の実線は4台のショーケース1〜4の中で最も低い設定庫内温度TSL に準拠した目標吸入圧力値を示し、その上側の実線は照明器消灯時の目標吸入圧力値を示す。
【0053】
例えば、照明器消灯と判定されたときの店内エンタルピEがE21のときには、TSL 準拠の圧力値P21(ステップS22で設定された目標吸入圧力値PSに相当)を照明器消灯時の圧力値P22に置き換え、該圧力値P22を補正後の目標吸入圧力値PSとして設定する。勿論、この補正後の目標吸入圧力値PSは、図8のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと目標吸入圧力値PSとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0054】
補正後の目標吸入圧力PSを設定した後は、補正後の目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送する(図7のステップS26)。
【0055】
共用冷凍機5のコントローラ5dは、この補正後の目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づき、前記と同様に、実吸入圧力が補正後の目標吸入圧力となるように圧縮機5aの回転数を制御する。
【0056】
ステップS24で照明器非消灯と判定されたとき、また、照明器消灯と判定された後にステップS24で照明器非消灯と判定されたときは、ステップS21〜S23の処理が繰り返される。
【0057】
このように、前述の冷却システムによれば、店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて店内エンタルピEを求め、該店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中の最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを的確に設定できるので、換言すれば、各ショーケース1〜4から特殊な運転データを収集することなく、且つ、制御装置6に複雑な処理等を要することなく圧縮機5aの目標吸入圧力PSを的確に設定できるので、コスト面での難点を解消し、且つ、省エネルギーを図ることができる。
【0058】
また、前述の冷却システムによれば、各ショーケース1〜4の照明灯ILが消灯されたと判定されたときに先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行っているので、営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少する非営業時間帯において目標吸入圧力PSが低すぎる値となって圧縮機5aの運転にエネルギーロスを生じる難点を解消して省エネルギーを図ることができる。
【0059】
つまり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機5aの目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することができる。
【0060】
尚、前述の第2実施形態では、照明器消灯後にステップS24で照明器非消灯と判定されたときにステップS21〜S23の処理を実行するものを示したが、補正後の目標吸入圧力PSに基づいて圧縮機5aの回転数を制御している状態で少なくとも1つのショーケースの庫内温度が設定庫内温度を超えたときに補正後の目標吸入圧力PSを補正前の目標吸入圧力PSに戻す処理ステップを図7のフローに追加してもよい。
【0061】
また、前述の第2実施形態では、4台のショーケース1〜4を備えた冷却システムを例示したが、ショーケースの台数が5以上の冷却システムであっても本発明を適用することで前記同様の作用効果が得られる。
【0062】
[第3実施形態]
図9及び図10は本発明の第3実施形態を示す。図9は目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを示す図、図9は目標吸入圧力を補正する際に用いられるデータテーブルを示す図である。尚、冷却システムの全体構成,ショーケースの側面,店内エンタルピを求める際に用いられるデータテーブル及び目標吸入圧力を設定する際に用いられるデータテーブルは図1,図2,図4及び図5に示したものと同じであるため、ここでの説明では同図を引用し個別説明を省略する。
【0063】
以下に、図9及び図10を参照して、制御装置6で実行される目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを、システム全体の動作を交えて説明する。
【0064】
システム起動後は、店内温度センサ6dと店内湿度センサ6eで検出された今現在の店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて店内エンタルピEを求める(図9のステップS31)。ここでは、店内温度TIと店内湿度UIとの関係に基づいて予め用意した図4のデータテーブルを利用し、該当する店内温度TIと店内湿度UIとから店内エンタルピEを設定する。勿論、この店内エンタルピEは、図4のデータテーブルを利用せずに、店内温度TIと店内湿度UIとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0065】
店内エンタルピEを求めた後は、この店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中で最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを設定する(図9のステップS32)。ここでは、店内エンタルピEと設定庫内温度Tとの関係に基づいて予め用意した図5のデータテーブルを利用し、該当する店内エンタルピEと設定庫内温度Tとから目標吸入圧力PSを設定する。勿論、この目標吸入圧力PSは、図5のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと設定庫内温度Tとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0066】
目標吸入圧力PSを設定した後は、該目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送する(図9のステップS33)。
【0067】
共用冷凍機5のコントローラ5dは、この目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づき、実吸入圧力PAが目標吸入圧力PSとなるように圧縮機5aの回転数を制御する。即ち、コントローラ5dは、実吸入圧力PA>目標吸入圧力PSのときに圧縮機5aの回転数を増加させて実吸入圧力PAが下がるようにフィードバック制御し、且つ、実吸入圧力PA<目標吸入圧力PSのときに圧縮機5aの回転数を減少させて実吸入圧力PAが上がるようにフィードバック制御する。
【0068】
一方、各ショーケース1〜4のコントローラ1f〜4fは、設定庫内温度(TS1〜TS4)と実庫内温度(TA1〜TA4)との温度偏差(ΔT1〜ΔT4)に基づき、実庫内温度(TA1〜TA4)が設定庫内温度(TS1〜TS4)となるように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御する。即ち、各コントローラ1f〜4fは、実庫内温度(TA1〜TA4)>設定庫内温度(TS1〜TS4)のときに電磁弁(1c〜4c)を開放して冷媒を蒸発器(1a〜4a)に取り込み、且つ、実庫内温度(TA1〜TA4)<設定庫内温度(TS1〜TS4)のときに電磁弁(1c〜4c)を閉じて蒸発器(1a〜4a)への冷媒の取り込みを抑止するように電磁弁(1c〜4c)の開閉を制御する。
【0069】
目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送した後は、各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたか否かと、各ショーケース1〜4の照明器ILが消灯されたか否かを判定する(図9のステップS34〜S36)。
【0070】
ナイトカバーNCの装着判定方法には、
(1)現在時刻が予め設定したナイトカバー装着時刻(閉店時刻或いは閉店時刻から所定 時間後の時刻)に達し、且つ、各ショーケースの冷却継続時間が予め設定した基準冷却 継続時間よりも短いときに各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたと判 定する方法
(2)各ショーケース1〜4に設けられたナイトカバー装着検知センサ(図示省略)が閉 塞を検知したときに各ショーケース1〜4にナイトカバNCーが装着されたと判定する 方法
の何れかが採用できる。
【0071】
(1)の判定方法は、ナイトカバーNCが装着された後は冷却継続時間が通常よりも短くなることを利用してナイトカバーNCの装着し忘れを認識する方法であり、ここでの冷却継続時間は、実庫内温度TA1〜TA4の降下継続時間や、電磁弁1b〜4bの開放継続時間等によって把握することができる。また、電磁弁と膨張弁の代わりに電子式膨張弁が用いられている場合には、該電子式膨張弁の平均開度が通常よりも小さくなっていることで同様の把握を行うことができる。
【0072】
一方、照明器ILの消灯判定方法には、
(3)現在時刻が予め設定した点灯時刻に達して各ショーケース1〜4に消灯信号が入力 されたときに各ショーケース1〜4の照明器ILが消灯されたと判定する方法
(4)各ショーケース1〜4に設けられた照明スイッチ(図示省略)が消灯に切り換えら れたときに各ショーケース1〜4の照明器ILが消灯されたと判定する方法
の何れかが採用できる。
【0073】
(3)の判定方法を実現するには、現在時刻が予め設定した点灯時刻に達したときに各ショーケース1〜4に点灯信号を出力し現在時刻が予め設定した消灯時刻に達したときに各ショーケース1〜4に消灯信号を出力する手段を制御装置6に設けると共に、点灯信号の入力に基づいて照明器ILを点灯させ消灯信号の入力に基づいて照明器ILを消灯させる手段を各ショーケース1〜4に設ければよい。
【0074】
(4)の判定方法を実現するには、各ショーケース1〜4が照明器ILを点灯または消灯に切り換えるための照明スイッチ(図示省略)を有する必要があるが、通常のショーケースには同スイッチが予め設けられているので既設のスイッチ及びその信号を利用すればよい。
【0075】
ステップS34〜S36でナイトカバー装着と照明器消灯の少なくとも一方と判定されたときは、先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行う(図9のステップS37)。ここでは、店内エンタルピEと目標吸入圧力PSとの関係に基づいて予め用意した図10のデータテーブルを利用し、今現在の店内エンタルピEから補正後の目標吸入圧力PSを設定する。図10中の最も下側の実線は4台のショーケース1〜4の中で最も低い設定庫内温度TSL に準拠した目標吸入圧力値を示し、その上側の実線は照明器消灯時の目標吸入圧力値を示し、その上側の実線はナイトカバー装着時の目標吸入圧力値を示す、その上側の実線はナイトカバー装着時&照明器消灯時の目標吸入圧力値を示す。
【0076】
例えば、照明器消灯と判定されたときの店内エンタルピEがE31のときには、TSL 準拠の圧力値P31(ステップS32で設定された目標吸入圧力値PSに相当)を照明器消灯時の圧力値P32に置き換え、該圧力値P32を補正後の目標吸入圧力値PSとして設定する。勿論、この補正後の目標吸入圧力値PSは、図10のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと目標吸入圧力値PSとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0077】
また、ナイトカバー装着と判定されたときの店内エンタルピEがE31のときには、TSL 準拠の圧力値P31(ステップS32で設定された目標吸入圧力値PSに相当)をナイトカバー装着時の圧力値P33に置き換え、該圧力値P33を補正後の目標吸入圧力値PSとして設定する。勿論、この補正後の目標吸入圧力値PSは、図10のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと目標吸入圧力値PSとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0078】
さらに、照明器消灯&ナイトカバー装着と判定されたときの店内エンタルピEがE31のときには、TSL 準拠の圧力値P31(ステップS32で設定された目標吸入圧力値PSに相当)をナイトカバー装着時&照明器消灯時の圧力値P34に置き換え、該圧力値P34を補正後の目標吸入圧力値PSとして設定する。勿論、この補正後の目標吸入圧力値PSは、図10のデータテーブルを利用せずに、店内エンタルピEと目標吸入圧力値PSとを変数とした計算式によって求めることも可能である。
【0079】
補正後の目標吸入圧力PSを設定した後は、補正後の目標吸入圧力PSを共用冷凍機5に伝送する(図9のステップS37)。
【0080】
共用冷凍機5のコントローラ5dは、この補正後の目標吸入圧力PSと実吸入圧力PAとの圧力偏差ΔPに基づき、前記と同様に、実吸入圧力が補正後の目標吸入圧力となるように圧縮機5aの回転数を制御する。
【0081】
ステップS34〜S36でナイトカバー装着と照明器消灯の少なくとも一方と判定されたとき、また、ナイトカバー装着と照明器消灯の少なくとも一方と判定された後にステップS34〜S36でナイトカバー非装着及び照明器非消灯と判定されたときは、ステップS31〜S33の処理が繰り返される。
【0082】
このように、前述の冷却システムによれば、店内温度TIと店内湿度UIとに基づいて店内エンタルピEを求め、該店内エンタルピEと4台のショーケース1〜4の中の最も低い設定庫内温度TSL とに基づいて圧縮機5aの目標吸入圧力PSを的確に設定できるので、換言すれば、各ショーケース1〜4から特殊な運転データを収集することなく、且つ、制御装置6に複雑な処理等を要することなく圧縮機5aの目標吸入圧力PSを的確に設定できるので、コスト面での難点を解消し、且つ、省エネルギーを図ることができる。
【0083】
また、前述の冷却システムによれば、各ショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着されたと判定されたとき及び/または各ショーケース1〜4の照明灯ILが消灯されたと判定されたときに先に設定された目標吸入圧力PSをこれよりも高値に補正する処理を行っているので、営業時間帯に比べて外乱による負荷変動が著しく減少する非営業時間帯において目標吸入圧力PSが低すぎる値となって圧縮機5aの運転にエネルギーロスを生じる難点を解消して省エネルギーを図ることができる。
【0084】
つまり、開店時刻及び閉店時刻を定めているスーパーマーケット等の店舗にシステムが設置された場合でも、営業時間帯並びに非営業時間帯における圧縮機5aの目標吸入圧力をそれぞれ適切に設定してシステム全体の省エネルギーを図ることができる冷却システムを提供することができる。
【0085】
尚、前述の第3実施形態では、ナイトカバー装着と照明器消灯の少なくとも一方と判定された後にステップS34〜S36でナイトカバー非装着及び照明器非消灯と判定されたときにステップS31〜S33の処理を実行するものを示したが、補正後の目標吸入圧力PSに基づいて圧縮機5aの回転数を制御している状態で少なくとも1つのショーケースの庫内温度が設定庫内温度を超えたときに補正後の目標吸入圧力PSを補正前の目標吸入圧力PSに戻す処理ステップを図9のフローに追加してもよい。
【0086】
また、前述の第3実施形態では、全てのショーケース1〜4にナイトカバーNCが装着された場合を例として説明したが、4台のショーケース1〜4が例えば3℃と5℃の2つの設定庫内温度で区分けされていて3℃のショーケースのみにナイトカバーNCが装着されたときには、図10に示した3℃準拠の目標吸入圧力値P31を同図に破線で示す5℃準拠の圧力値P35(P33よりも低い値)に置き換える補正を行って、5℃のショーケースに冷却不足が生じないようにしてもよい。
【0087】
さらに、前述の第3実施形態では、4台のショーケース1〜4を備えた冷却システムを例示したが、ショーケースの台数が5以上の冷却システムであっても本発明を適用することで前記同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷却システムの全体構成図である。
【図2】図1に示したショーケースの側面図である。
【図3】目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを示す図である。
【図4】店内エンタルピを求める際に用いられるデータテーブルを示す図である。
【図5】目標吸入圧力を設定する際に用いられるデータテーブルを示す図である。
【図6】目標吸入圧力を補正する際に用いられるデータテーブルを示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを示す図である。
【図8】目標吸入圧力を補正する際に用いられるデータテーブルを示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る目標吸入圧力の設定及び補正に係る処理フローを示す図である。
【図10】目標吸入圧力を補正する際に用いられるデータテーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1〜4…冷蔵冷凍機器、1a〜4a…蒸発器、1b〜4b…膨張弁、1c〜4c…電磁弁、1e〜4e…庫内温度センサ、1f〜4f…コントローラ、1h〜4h…開口、NC…ナイトカバー、IL…照明器、5…共用冷凍機、5a…圧縮機、5c…圧力センサ、5d…コントローラ、6…制御装置、6a…制御部、6d…店内温度センサ、6e…店内湿度センサ、RP1…冷媒往き管、RP2…冷媒戻り管、SL1,SL2…信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムであって、
店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中で最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を設定する手段と、
設定された目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する手段と、
ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段と、
ナイトカバー装着と判定されたときに前記目標吸入圧力を高値に補正する手段とを備える、
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段は、現在時刻が予め設定したナイトカバー装着時刻に達し、且つ、ショーケースの冷却継続時間が予め設定した基準冷却継続時間よりも短いときにショーケースにナイトカバーが装着されたと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段は、ショーケースに設けられたナイトカバー装着検知センサが装着を検知したときにショーケースにナイトカバーが装着されたと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
補正後の目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御している状態で少なくとも1つのショーケースの庫内温度が設定庫内温度を超えたときに補正後の目標吸入圧力を補正前の目標吸入圧力に戻す手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の冷却システム。
【請求項5】
照明器を有する蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムであって、
店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中で最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を設定する手段と、
設定された目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する手段と、
ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段と、
照明器消灯と判定されたときに前記目標吸入圧力を高値に補正する手段とを備える、
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項6】
現在時刻が予め設定した点灯時刻に達したときに各ショーケースに点灯信号を出力し現在時刻が予め設定した消灯時刻に達したときにショーケースに消灯信号を出力する手段をさらに備え、
各ショーケースは、点灯信号の入力に基づいて照明器を点灯させ消灯信号の入力に基づいて照明器を消灯させる手段を有し、
ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段は、ショーケースに消灯信号が入力されたときにショーケースの照明器が消灯されたと判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の冷却システム。
【請求項7】
各ショーケースは、照明器を点灯または消灯に切り換えるための照明スイッチを有し、
ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段は、ショーケースに設けられた照明スイッチが消灯に切り換えられたときにショーケースの照明器が消灯されたと判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の冷却システム。
【請求項8】
補正後の目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御している状態で少なくとも1つのショーケースの庫内温度が設定庫内温度を超えたときに補正後の目標吸入圧力を補正前の目標吸入圧力に戻す手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の冷却システム。
【請求項9】
蒸発器内蔵の複数のショーケースと圧縮機内蔵の共用冷凍機とを備えた冷却システムであって、
店内温度と店内湿度とに基づいて店内エンタルピを求め、該店内エンタルピと複数のショーケースの中で最も低い設定庫内温度とに基づいて圧縮機の目標吸入圧力を設定する手段と、
設定された目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御する手段と、
ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段と、
ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段と、
ナイトカバー装着と照明器消灯の少なくとも一方と判定されたときに前記目標吸入圧力を高値に補正する手段とを備える、
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項10】
ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段は、現在時刻が予め設定したナイトカバー装着時刻に達し、且つ、ショーケースの冷却継続時間が予め設定した基準冷却継続時間よりも短いときにショーケースにナイトカバーが装着されたと判定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の冷却システム。
【請求項11】
ショーケースにナイトカバーが装着されたことを判定する手段は、ショーケースに設けられたナイトカバー装着検知センサが装着を検知したときにショーケースにナイトカバーが装着されたと判定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の冷却システム。
【請求項12】
現在時刻が予め設定した点灯時刻に達したときに各ショーケースに点灯信号を出力し現在時刻が予め設定した消灯時刻に達したときに各ショーケースに消灯信号を出力する手段をさらに備え、
各ショーケースは、点灯信号の入力に基づいて照明器を点灯させ消灯信号の入力に基づいて照明器を消灯させる手段を有し、
ショーケースの照明器が消灯されたことを判定する手段は、ショーケースに消灯信号が入力されたときにショーケースの照明器が消灯されたと判定する、
ことを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載の冷却システム。
【請求項13】
各ショーケースは、照明器を点灯または消灯に切り換えるための照明スイッチを有し、
ショーケースの照明器が消灯したことを判定する手段は、ショーケースに設けられた照明スイッチが消灯に切り換えられたときにショーケースの照明器が消灯されたと判定する、
ことを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載の冷却システム。
【請求項14】
補正後の目標吸入圧力と圧縮機の実吸入圧力との圧力偏差に基づき実吸入圧力が目標吸入圧力となるように圧縮機の回転数を制御している状態で少なくとも1つのショーケースの庫内温度が設定庫内温度を超えたときに補正後の目標吸入圧力を補正前の目標吸入圧力に戻す手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項9〜13の何れか1項に記載の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−107731(P2007−107731A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296032(P2005−296032)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】