説明

冷却庫

【課題】簡単な構成で、容器に入れられた液体を過冷却状態とすることのできる冷却庫を提供すること。
【解決手段】冷却庫1は、外側ケーシング2と、外側2ケーシングの内側に設けられ、液体飲料Lが入れられた容器Bを収納する内側ケーシング3と、外側ケーシング2と内側ケーシング3との間に形成された流路4と、流路4内の冷気を冷却する冷却手段5と、内側ケージング3の底部に形成され、冷却手段5によって冷却された流路4内の冷気が内側ケーシング内3に吹き出す吹出口6と、内側ケーシング3の上部に形成され、内側ケーシング3内の冷気を流路4内へ吸い込む吸込口7と、冷気を流路4および内側ケーシング3内で循環させる循環手段8とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アルコールを含む飲料、お茶類、コーヒー類などの液体飲料を過冷却するための冷却庫に関する。
【背景技術】
【0002】
液体飲料が入れられた容器を、液体の凝固点以下の温度で、かつ液体飲料が未凍結を維持する過冷却状態で保存することのできる冷却庫として、例えば、特許文献1に記載の冷却装置が知られている。
【0003】
特許文献1の冷却装置は、容器を収納する冷却庫と、冷却庫内の温度を制御する制御手段とを有している。そして、このような冷却装置は、容器を冷却庫に収納した状態で、制御手段によって冷却庫内の温度を制御することにより、冷却庫内の冷気によって容器を冷却し、容器内の液体飲料を過冷却状態とする。
【0004】
しかしながら、特許文献1には、容器を収納する冷却庫の構成が不明である。液体飲料を過冷却状態とするには、液体飲料(容器)の温度制御(温度管理)が非常に重要である。具体的には、液体飲料(容器)をその全周からほぼ均一な温度で、かつ液体内に大きな温度差が生じないように冷却することが必要である。
【0005】
そのため、冷却庫の構成が不明な特許文献1の冷却装置では、液体飲料を過冷却状態とするのが困難である。
【0006】
なお、仮に、一般的に知られる冷蔵庫や冷凍庫のような冷却庫を用いたとすると、冷気の流れにムラが生じたり、冷却庫内の内壁付近と、中央付近とで比較的大きな温度が生じたりするため、冷却庫内の温度が不均一となる。そのため、容器の設置位置や、容器の形状によっては、容器を全体にわたって均一に冷却することが困難となり、容器内の液体飲料を過冷却状態とすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−9739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成で、容器に入れられた液体を過冷却状態とすることのできる冷却庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
(1)外側ケーシングと、
前記外側ケーシングの内側に設けられ、液体が入れられた容器を収納する内側ケーシングと、
前記外側ケーシングと前記内側ケーシングとの間に形成された流路と、
前記流路内の冷気を冷却する冷却手段と、
前記内側ケージングの底部に形成され、前記流路と前記内側ケーシングの内側とを連通する第1貫通孔と、
前記内側ケーシングの上部であって前記底部に対向する部位に形成され、前記流路と前記内側ケーシングの内側とを連通する第2貫通孔と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の一方から前記冷却手段によって冷却された前記流路内の前記冷気を前記内側ケーシング内に吹き出し、他方から、前記内側ケーシング内の前記冷気を前記流路内へ吸い込むように、前記冷気を前記流路および前記内側ケーシング内で循環させる循環手段とを有し、
前記内側ケーシングに前記容器を収納した状態で、前記冷却手段によって冷却された前記冷気を前記循環手段によって循環させることにより、前記容器を、前記液体の凝固点以下の温度で、かつ前記液体が未凍結を維持する過冷却状態で保存することを特徴とする冷却庫。
【0010】
(2)前記第1貫通孔は、前記冷気が前記内側ケーシング内に吹き出す吹出口であり、
前記第2貫通孔は、前記内側ケーシング内の前記冷気を前記流路内へ吸い込む吸込口である上記(1)に記載の冷却庫。
【0011】
(3) 前記吸込口の面積は、前記吹出口の面積よりも大きい上記(2)に記載の冷却庫。
【0012】
(4) 前記吹出口は、前記底部の全域にわたって形成され、
前記吸込口は、前記上部の全域にわたって形成されている上記(2)または(3)に記載の冷却庫。
【0013】
(5) 前記冷却手段は、前記外側ケーシングに埋設された冷媒配管を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の冷却庫。
【0014】
(6) 前記冷媒配管は、前記外側ケーシングの内壁と接触している上記(5)に記載の冷却庫。
【0015】
(7) 前記外側ケーシングの前記内壁は、金属材料で構成されている上記(5)または(6)に記載の冷却庫。
【0016】
(8) 前記外側ケーシングと前記内側ケーシングとの間に設けられ、前記外側ケーシングに対して前記内側ケーシングを支持する支持部材を有し、前記支持部材は、前記外側ケーシングに発生した振動を吸収する防振材で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の冷却庫。
【0017】
(9) 前記循環手段は、前記流路内に設けられたファンを有している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の冷却庫。
【0018】
(10) 前記液体の最も温度の高い部位の温度をTmaxとし、最も温度の低い部位の温度をTminとしたとき、前記液体が該液体の凝固点以下となっている場合には、Tmax−Tminが0.1℃以下を満足するように前記液体を冷却する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の冷却庫。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成で、容器に入れられた液体を過冷却状態とすることのできる冷却庫を提供することができる。具体的には、下方に位置する吹出口から上方に位置する吸込口へ向けて冷気の流れを発生させることができるため、自然対流等による冷気の沈降を防止することができ、内側ケーシング内の各部位における温度のバラツキを小さくすることができる。また、内側ケーシング内を直接冷却するのではなく、流路内で冷却された冷気を吹出口から吹き出す構成とすることにより、内側ケーシング内を冷却することにより、内側ケーシング内の各部位における温度のバラツキを小さくすることができる。これにより、容器を全体にわたって均一に冷却することができるため、確実に容器に入れられた液体を過冷却状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の冷却庫の好適な実施形態を示す模式的全体図である。
【図2】図1に示す冷却庫の模式的断面図である。
【図3】図1に示す冷却庫の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の冷却庫の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の冷却庫の好適な実施形態を示す模式的全体図、図2は、図1に示す冷却庫の模式的断面図、図3は、図1に示す冷却庫の正面図である。なお、以下の説明では、図1〜図3中の上側を「上」、下側を「下」と言いう。
【0023】
各図に示すように、冷却庫1は、外側ケーシング2と、外側ケーシング2の内側に設けられ、液体飲料(液体)Lが入れられた容器Bを収納する内側ケーシング3と、外側ケーシング2と内側ケーシング3との間に形成された流路4と、流路4内の気体を冷却する冷却手段5と、内側ケーシング3に形成され、冷却手段5によって冷却された流路4内の気体(冷気)が内側ケーシング3内に吹き出す吹出口6と、内側ケーシング3に形成され、内側ケーシング3内の気体を流路4内へ吸い込む吸込口7と冷気を流路4および内側ケーシング3内で循環させる循環手段8と、外側ケーシング2に対して内側ケーシング3を支持する支持部材9とを有している。
【0024】
このような冷却庫1は、内側ケーシング3内に容器Bを収納した状態で、冷却手段5によって冷却された気体を循環手段8によって循環させることにより、容器Bを液体飲料Lの凝固点以下の温度で、かつ液体飲料Lが未凍結を維持する過冷却状態で保存することができる冷却庫である。
【0025】
凝固点以下で未凍結を維持する過冷却状態の液体飲料Lは、例えば、冷却庫1から取り出して、振動を与えるか、またはコップなどに注ぐと、瞬時にシャーベット状に凍結する。
【0026】
液体飲料Lとしては、特に限定されず、例えば、お茶類(ウーロン茶、緑茶、麦茶など)、コーヒー類、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、乳酸飲料(牛乳など)等の清涼飲料や、発泡酒、ビール、ワイン、日本酒、焼酎等のアルコール飲料などが挙げられる。前述したような清涼飲料の凝固点は、約−9〜−4℃であり、アルコール飲料の凝固点は、約−15〜−12℃である。
【0027】
また、容器Bの容量としては、特に限定されないが、80〜1000mlであるのが好ましく、100〜600mlであるのがより好ましい。このような容量とすることにより、冷却時に発生する液体飲料L内の温度差を小さくすることができるため、液体飲料Lをより確実に過冷却状態とすることができる。
【0028】
冷却庫1では、容器B内の液体飲料Lの最も温度の高い部位の温度をTmaxとし、最も温度の低い部位の温度をTminとしたとき、Tmax−Tminが0〜0.1℃以下を満足するように容器Bを冷却することが好ましく、Tmax−Tminが0〜0.05℃以下を満足するように容器Pを冷却することがより好ましい。これにより、より確実に、液体飲料Lを過冷却状態とすることができる。
【0029】
なお、液体飲料Lの温度が当該液体飲料Lの凝固点以下のときに、液体飲料L内の温度差がほとんど生じないように容器Bを冷却すればよく、液体飲料Lの温度が当該液体飲料Lの凝固点より高いときには、液体飲料L内に比較的大きい温度差(例えば、1〜2℃程度)が生じていてもよい。
【0030】
図1に示すように、外側ケーシング2は、前面が開口するようになっている。具体的には、外側ケーシング2は、前面に開口を有する本体21と、本体21に対して回動可能に設けられ、前記開口を開閉することのできる扉22とを有している。
【0031】
図2に示すように、本体21は、外壁211と内壁212とを有し、これらの間に断熱材213を充填した構造となっている。また、本体21には、冷却手段5が有する冷媒配管51が埋設されている。また、本体21には、機械室214が設けられており、この機械室214には、冷却庫1を駆動するために必要な各種機械類が収容されている。このような機械類としては、例えば、電源や、冷却手段5が有する蒸発器53、圧縮器54、凝縮器55などが挙げられる。
【0032】
外壁211は、例えば、各種プラスチックで構成することができる。前記プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
内壁212は、熱伝導率の高い材料で構成されているのが好ましい。これにより、後述するように、流路4内の冷気(空気)を、効率的かつムラなく冷却することができる。このような材料としては、例えば、ニッケル、コバルト、金、白金、銀、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、錫、チタン、タングステン等の各種金属、ステンレス鋼(例えば、SUS303、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS318、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等)等の合金が挙げられる。
【0034】
断熱材213としては、特に限定されず、例えば、発泡体等の多孔質材や、各種セラミックス等が挙げられる。
【0035】
このような構成の外側ケーシング2内には、内側ケーシング3が設置されており、この内側ケーシング3内に容器Bを収納する。内側ケーシング3は、前方が開口しており、外側ケーシング2の扉22を開けると、内側ケーシング3内に容器Bを簡単に収納できるようになっている。
【0036】
このような内側ケーシング3の内部空間のサイズは、特に限定されないが、例えば、縦×横×奥行きを30〜50cm×30〜50cm×30〜50cm程度とすることができる。このようなサイズとすることにより、内側ケーシング3の内部空間を適度な広さとすることができ、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキが小さくなり、より安定した状態で液体飲料Lを冷却することができる。これにより、より確実に、液体飲料Lを過冷却状態とすることができる。
【0037】
ここで、前述したように、液体飲料Lを過冷却状態とするには、容器Bをその全周からほぼ均一な温度で、かつ液体飲料L内に大きな温度差が生じないように冷却することが重要となる。そのため、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキを小さくすることにより、液体飲料Lをより確実に過冷却状態とすることができる。なお、内側ケーシング3内の最も温度の高い部分と、最も温度の低い部分との温度差は、1℃以下程度であることが好ましい。このような温度差に収まっていれば、液体飲料Lをより確実に過冷却状態とすることができる。
【0038】
また、内側ケーシング3は、外側ケーシング2に対して非接触で設けられている。また、本実施形態では、内側ケーシング3は、複数の支持部材9を介して外側ケーシング2に固定されている。なお、支持部材9の数や設置位置は、外側ケーシング2に対して内側ケーシング3を支持することができれば、特に限定されない。
【0039】
各支持部材9は、振動を吸収する防振材で構成されている。このような構成とすることにより、外側ケーシング2に生じた振動(例えば、扉22の開閉により生じる振動や、機械室214に収容されている各種機械類の駆動により発生する振動)が内側ケーシング3に伝わり難くなる。液体飲料Lの過冷却状態は、振動等によって容易に崩れ、それにより液体飲料Lが凍結してしまう。そのため、本実施形態のように、内側ケーシング3に振動が伝わり難い構造とすることにより、液体飲料Lの過冷却状態をより確実に維持することができる。
【0040】
支持部材9の構成は、その機能を発揮することができれば、特に限定されないが、例えば、図3に示すように、一対のゴム部材91、92の間に金属板93を介在させた構成とすることができる。このような構成とすることにより、支持部材9によって、より効果的に外側ケーシング2で発生した振動を吸収することができる。また、支持部材9としては、公知の振動吸収ゲル等を用いてもよい。
【0041】
内側ケーシング3は、熱伝導率の高い材料(例えば、熱伝導率が50W/(m・k)以上の材料)で構成されているのが好ましい。これにより、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキをより小さくすることができる。前述した熱伝導率の高い材料としては、特に限定されず、例えば、前述した内壁212の構成材料と同様の材料が挙げられる。
【0042】
また、内側ケーシング3の底面(底部)には、吹出口6が形成されており、この吹出口6から内側ケーシング3内に冷気が吹き出すようになっている。また、内側ケーシング3の上面(上部)には、吸込口7が形成されており、この吸込口7から内側ケーシング3内の冷気を吸い込むようになっている。
【0043】
吹出口6および吸込口7は、内側ケーシング3の内部空間を介して上下に対向するように形成されており、これにより、内側ケーシング3内にて冷気を下側から上側へ流すことができる。そのため、例えば、自然対流によって冷気が下方へ流れて留まってしまうのが防止され、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキをより小さくすることができる。
【0044】
本実施形態では、吹出口6は、内側ケーシング3の内側と流路4とを連通する複数の貫通孔(第1貫通孔)61で構成されている。また、複数の貫通孔61は、内側ケーシング3の底面のほぼ全域にわたって均一に形成されている。複数の貫通孔61は、比較的小さい開口面積を有し、かつ、狭ピッチで形成されている。これにより、吹出口6を介して内側ケーシング3内の全域へ冷気をムラなく均一に送り込むことができる。そのため、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキをより小さくすることができる。
【0045】
貫通孔61の開口面積(横断面積)としては、特に限定されないが、1〜10mm程度であるの好ましい。また、貫通孔61のピッチ(隣り合う貫通孔61の離間距離)としては、1〜5mm程度であるのが好ましい。これにより、上記効果がより顕著なものとなる。
【0046】
また、吸込口7は、内側ケーシング3の内側と流路4とを連通する複数の貫通孔(第2貫通孔)71で構成されている。複数の貫通孔71は、内側ケーシング3の上面のほぼ全域にわたって均一に形成されている。複数の貫通孔71は、比較的小さい開口面積を有し、かつ、狭ピッチで形成されている。貫通孔71の開口面積やピッチは、前述した貫通孔61と同様である。このような構成とすることにより、吸込口7を介して内側ケーシング3内の冷気をムラなく均一に吸い込むことができる。そのため、例えば、内側ケーシング3内に長時間留まる冷気がなくなり、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキをより小さくすることができる。
【0047】
また、吸込口7が形成される領域は、吹出口6が形成される領域よりも広いことが好ましい。これにより、内側ケーシング3内にて、下側から上側への冷気の流れをよりスムーズに発生させることができる。そのため、例えば、内側ケーシング3内に長時間留まる冷気がなくなり、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキをより小さくすることができる。
【0048】
図2に示すように、内側ケーシング3内には、容器Bを載置する載置棚31が設けられている。載置棚31は、内側ケーシング3内の冷気の流れをなるべく阻害しないように設計される。
【0049】
本実施形態では、内側ケーシング3の前面から見たときに略「Y」字状をなす部材311が内側ケーシング3の奥行き方向に複数(2つ)並んでなる載置棚31が複数設けられている。このような載置棚31では、その上部に容器Bを寝かせて載置することで、容器Bを内側ケーシング3内に安定的に収納することができる。
【0050】
このように、容器Bを寝かせて収納することにより、容器Bの側面に冷気が積極的に接触するため、容器Bの冷気との接触面積をより大きくすることができる。そのため、容器Bをその周囲から均一に冷却することができ、より簡単に、液体飲料Lを過冷却状態とすることができる。
【0051】
また、本実施形態の載置棚31によれば、内側ケーシング3内の決まった場所に、決まった数の容器Bが収納されるため、例えば、冷却条件(冷気の温度、流速等)の設定を簡単に行うことができる。そのため、より確実に、液体飲料Lを過冷却状態とすることができる。
【0052】
また、載置棚31は、吹出口6に対して、容器Bがある程度離間するように設計されている。吹出口6の直近は、冷気が吹き出している部分と、冷気が吹き出していない部分との存在により、冷気が直接当たる部分と当たらない部分とが存在する。このような領域は、温度ムラが比較的生じ易い領域であるため、このような領域を避けて容器Bを収納することにより、より確実に、液体飲料Lを過冷却状態とすることができる。
【0053】
吹出口6と容器B(最も吹出口6側に位置する容器B)との離間距離としては、吹出口6の構成や、吹き出す冷気の量および速度等によっても異なるが、5〜10cm程度であるのが好ましい。前記数値程度離間していれば、各貫通孔61か吹き出した複数の冷気の流れが合流し、1つの大きな冷気の流れとなっているため、液体飲料Lをムラなく冷却することができ、より確実に、過冷却状態とすることができる。
【0054】
図2に示すように、以上のような構成の内側ケーシング3と外側ケーシング2(本体21)との間には、冷気の流路4が形成されている。流路4は、吸込口7から吸い込んだ冷気を吹出口6へ案内する。流路の厚さ(内側ケーシング3と外側ケーシング2との離間距離)Tとしては、特に限定されないが、10cm以下であるのが好ましく、5cm以下であるのがより好ましい。これにより、冷却手段5によって冷気をムラなく冷却することができる。
【0055】
また、流路4の途中には、冷気を流路4および内側ケーシング3内で循環させる循環手段8を有している。循環手段8は、流路4内に設けられたファン81、82を有しており、これらファン81、82により、吹出口6−内側ケーシング3内−吸込口7−流路4−吹出口6の順に冷気を循環させる。これにより、冷気が吹出口6から吹き出し、吹き出した冷気が吸込口7から吸い込まれると言った冷気の流れが発生する。
【0056】
ファン81、82によって発生する冷気の流れの速さ(流速)としては、特に限定されないが、吹出口6近傍にて、0.01〜2.0m/秒程度であるのが好ましく、0.05〜0.5m/秒程度であるのがより好ましい。冷気の流速をこのような範囲とすることにより、吹出口6から吹き出す冷気が内側ケーシング3内に位置する時間を充分に短くすることができるとともに、冷気の流れを穏やかなものとすることができる。その結果、より確実に、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキをより小さくすることができる。
【0057】
ファン81、82によって吸込口7から流路4内に吸い込まれた冷気は、冷却手段5によって冷却された後、吹出口6から内側ケーシング3内に吹き出すように構成されている。
【0058】
図2に示すように、冷却手段5は、外側ケーシング2の本体21に埋設された冷媒配管51と、機械室214に収納された蒸発器53、圧縮器54および凝縮器55を有している。蒸発器53と圧縮器54、圧縮器54と凝縮器55は、それぞれ冷媒配管51で接続されており、冷媒配管51には冷媒が充填されている。
【0059】
このような冷却手段5は、流路4の内部と外部との間で熱交換を行うことにより、流路4内の冷気を冷却するように構成されている。すなわち、冷却手段5は、冷媒配管51内に充填された冷媒が蒸発器53において流路4内の熱を奪い、圧縮器54において圧縮され、凝縮器55において外気に熱を排出することにより、流路4内の冷気を冷却するように構成されている。
【0060】
このように、冷却手段5によって流路4内の冷気を冷却し、冷却した冷気を用いて内側ケーシング3内を冷却するように構成することにより、内側ケーシング3内の各部位を均等に冷却することができ、内側ケーシング3内の各部位における温度のバラツキを小さくすることができる。
【0061】
ここで、冷媒配管51は、外側ケーシング2の内壁212に接触しているのが好ましい。これにより、効率的に、内壁212を介して冷媒配管51内を流れる冷媒と、流路4内を流れる冷気との間で熱交換を行うことができる。前述したように、内壁212は、熱伝導率の高い材料(例えば、アルミニウム)で構成されているため、上述のような熱交換を効率的に行うことができる。また、冷媒によって、内壁212の全域がムラなく冷却されるため、流路4を流れる冷気に対してムラなく熱交換を行うことができる。すなわち、温度にムラのない冷気を生成し、生成した冷気を吹出口6から内側ケーシング3内に吹き出すことができる。そのため、内側ケーシング3の各部位における温度のバラツキが小さくなり、より安定した状態で液体飲料Lを冷却することができる。これにより、より確実に、液体飲料Lを過冷却状態とすることができる。
【0062】
特に本実施形態では、冷媒配管51が、本体21の上面部21a、背面部21b、底面部21cにそれぞれ配置されているため、流路4のほぼ全域にて冷気を冷却することができる。そのため、より温度ムラのない冷気を生成することができる。なお、冷媒配管51の配置としては、流路4内の冷気を冷却することができれば、特に限定されず、例えば背面部21bのみに配置されていてもよい。また、本体21に埋設する必要もなく、流路4内に露出して配置されていてもよい。
【0063】
冷却手段5は、液体飲料Lの種類によっても異なるが、例えば、液体飲料Lがアルコール飲料の場合には、内側ケーシング3内の温度が−15〜−12℃程度となるように冷気を冷却し、液体飲料Lが清涼飲料の場合には内側ケーシング3内の温度が−9〜−4℃程度となるように冷気を冷却する。なお、冷却手段5は、例えば、内側ケーシング3内の温度検知する温度検知手段を有しており、温度検知手段の検知結果に基づいて、冷気の冷却度合いを調整するように構成されていてもよい。
【0064】
以上、本発明の冷却庫について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の冷却庫では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0065】
また、前述した実施形態では、内側ケーシングの底面に吹出口を形成し、上面に吸込口を形成した構成について説明したが、これに限定されず、内側ケーシングの底面に吸込口を形成し、上面に吹出口を形成してもよい。
【0066】
また、冷却手段の構成は、前述した実施形態に限定されず、例えば、エアブラスト方式を採用するものであってもよい。
【0067】
また、容器に入れられた液体としては、清涼飲料やアルコール飲料に限定されず、例えば、石鹸水、消毒液、液体洗剤、保存液、薬液のような飲料用以外の液体であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 冷却庫
2 外側ケーシング
21 本体
211 外壁
212 内壁
213 断熱材
214 機械室
21a 上面部
21b 背面部
21c 底面部
22 扉
3 内側ケーシング
31 載置棚
311 部材
4 流路
5 冷却手段
51 冷媒配管
53 蒸発器
54 圧縮器
55 凝縮器
6 吹出口
61 貫通孔
7 吸込口
71 貫通孔
8 循環手段
81、82 ファン
9 支持部材
91 ゴム部材
92 ゴム部材
93 金属板
L 液体飲料
B 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ケーシングと、
前記外側ケーシングの内側に設けられ、液体が入れられた容器を収納する内側ケーシングと、
前記外側ケーシングと前記内側ケーシングとの間に形成された流路と、
前記流路内の冷気を冷却する冷却手段と、
前記内側ケージングの底部に形成され、前記流路と前記内側ケーシングの内側とを連通する第1貫通孔と、
前記内側ケーシングの上部であって前記底部に対向する部位に形成され、前記流路と前記内側ケーシングの内側とを連通する第2貫通孔と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の一方から前記冷却手段によって冷却された前記流路内の前記冷気を前記内側ケーシング内に吹き出し、他方から、前記内側ケーシング内の前記冷気を前記流路内へ吸い込むように、前記冷気を前記流路および前記内側ケーシング内で循環させる循環手段とを有し、
前記内側ケーシングに前記容器を収納した状態で、前記冷却手段によって冷却された前記冷気を前記循環手段によって循環させることにより、前記容器を、前記液体の凝固点以下の温度で、かつ前記液体が未凍結を維持する過冷却状態で保存することを特徴とする冷却庫。
【請求項2】
前記第1貫通孔は、前記冷気が前記内側ケーシング内に吹き出す吹出口であり、
前記第2貫通孔は、前記内側ケーシング内の前記冷気を前記流路内へ吸い込む吸込口である請求項1に記載の冷却庫。
【請求項3】
前記吸込口の面積は、前記吹出口の面積よりも大きい請求項2に記載の冷却庫。
【請求項4】
前記吹出口は、前記底部の全域にわたって形成され、
前記吸込口は、前記上部の全域にわたって形成されている請求項2または3に記載の冷却庫。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記外側ケーシングに埋設された冷媒配管を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の冷却庫。
【請求項6】
前記冷媒配管は、前記外側ケーシングの内壁と接触している請求項5に記載の冷却庫。
【請求項7】
前記外側ケーシングの前記内壁は、金属材料で構成されている請求項5または6に記載の冷却庫。
【請求項8】
前記外側ケーシングと前記内側ケーシングとの間に設けられ、前記外側ケーシングに対して前記内側ケーシングを支持する支持部材を有し、前記支持部材は、前記外側ケーシングに発生した振動を吸収する防振材で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の冷却庫。
【請求項9】
前記循環手段は、前記流路内に設けられたファンを有している請求項1ないし8のいずれかに記載の冷却庫。
【請求項10】
前記液体の最も温度の高い部位の温度をTmaxとし、最も温度の低い部位の温度をTminとしたとき、前記液体が該液体の凝固点以下となっている場合には、Tmax−Tminが0.1℃以下を満足するように前記液体を冷却する請求項1ないし9のいずれかに記載の冷却庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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